特許第6067656号(P6067656)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6067656
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】造粒セメントの製造法
(51)【国際特許分類】
   C04B 7/00 20060101AFI20170116BHJP
   C04B 7/42 20060101ALI20170116BHJP
   C04B 7/44 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   C04B7/00
   C04B7/42
   C04B7/44
【請求項の数】3
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2014-236435(P2014-236435)
(22)【出願日】2014年11月21日
(65)【公開番号】特開2016-98145(P2016-98145A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2015年11月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】514298287
【氏名又は名称】株式会社ヒノデ開発
(73)【特許権者】
【識別番号】591249002
【氏名又は名称】有限会社中部植生
(73)【特許権者】
【識別番号】506043435
【氏名又は名称】株式会社ジェイエフ
(73)【特許権者】
【識別番号】507085564
【氏名又は名称】株式会社名連
(74)【代理人】
【識別番号】100073287
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 聞一
(72)【発明者】
【氏名】日野 寛
(72)【発明者】
【氏名】吉永 招平
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 潤郎
(72)【発明者】
【氏名】日出嶋 和久
【審査官】 末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−536792(JP,A)
【文献】 特開2013−147359(JP,A)
【文献】 特開平07−109154(JP,A)
【文献】 特開平07−144942(JP,A)
【文献】 特開平03−199146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/00−28/36
B28C 1/00−9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともセメント及び油脂類を含む複合材料の混練材の圧縮造粒体である造粒セメントの製造法であって、
前記複合材料の混合撹拌工程と、該混合撹拌工程による1次処理材料の粉砕・解砕工程と、該粉砕・解砕工程による2次処理材料の圧縮造粒工程と、前記圧縮造粒工程で製造された造粒セメントの焼成工程とを有することを特徴とする造粒セメントの製造法
【請求項2】
上記複合材料に増粘材を添加したことを特徴とする請求項1記載の造粒セメントの製造法
【請求項3】
上記複合材料に崩壊材を添加したことを特徴とする請求項1又2記載の造粒セメントの製造法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モルタル又はコンクリートの高強度化や流動性を向上させる様にした造粒セメント製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートは、コンクリートプラントにおいて骨材、セメント、水を配合、混練して、生コン車により現場まで運搬するのが一般的であるが、混練直後から水和反応が進行して徐々に流動性が無くなるため、生コン車からポンプに投入し該ポンプにより圧送し打設する過程で、ホース内で固化してしまうことが頻繁に発生していた。そこで、この不具合を解消するための手段として、セメントと骨材のみを予め混合した状態で運搬し、現場で水を加えて混練し製造したコンクリートを打設する、所謂ドライバッチ方式のコンクリート製造法が開発された。
【0003】
又、コンクリートの高強度化や流動性の向上には、低い水セメント比で配合することが不可欠であり、低い水セメント比のコンクリートに高い流動性を付与するには、高性能AE減水剤を使用したり、コンクリート配合を工夫する等で対応するのが一般的である。
【0004】
しかし、上記ドライバッチ方式にあっては、表面水を有する骨材とセメントが混合されることから、セメントが表面水により水和反応してしまうため、打設現場到着後に水を加えて混練しても、所要の流動性を得ることができなかった。
【0005】
そこで、セメントを、セメントの成分の少なくとも一部を溶解する溶解液、具体的には糖類(果糖、ブドウ糖、マルトース、サッカロース、ラクトース、セルロース、デンプン、デキストリン等)と水酸化物(水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等)を含有する水溶液である溶解液を、セメント粒子の表面に比較的均質に行き渡らせるように処理することで、セメント粒子の表面に、セメントの成分の溶解物によるコーティング層を形成し、セメント粒子の水との接触を防止して、ごく初期の水和反応速度を低下させて流動性を向上させる方法(例えば、特許文献1参照)が見受けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−59048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来技術にあっては、セメント粒子の内部深くまで溶解したり、セメント粒子の大部分を溶解したりするものではないものの、セメント粒子の表面を溶解させてその溶解物のコーティング層を形成することから、セメント粒子の一部を変成させてしまうことを理由に、養生硬化後のコンクリート強度が低下してしまう懸念を排除できないなど、解決せねばならない課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記従来技術に基づく、養生硬化後のコンクリートの強度低下が懸念される課題に鑑み、少なくともセメント及び油脂類を含む複合材料の混練材の圧縮造粒体である造粒セメントを使用することによって、セメント粒子の変成を完全に防止可能にして、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0009】
要するに本発明は、少なくともセメント及び油脂類を含む複合材料の混練材の圧縮造粒体であるので、該圧縮造粒体の表面側から中心側へ徐々に水が浸透し表面側から徐々に崩れていくか、ある程度浸透した段階で複数の小塊に割裂することを繰り返して、完全にセメント粒子化して通常のセメントと同じ状態になることから、各セメント粒子と水とを同時にではなく断続的に接触させることになるため、セメントの硬化スピードを抑えることが出来、かかる造粒セメントにあっては、例えドライバッチ方式でコンクリートを製造したとしても、骨材の表面水による水和反応は表面側のセメントだけに抑えることが出来るため、現場での加水混練により所要の流動性を得ることが出来、而も粒状に成形されていることから、水セメント比の低減化を図ることが出来るため、モルタル又はコンクリートの高流動化及び高強度化を図ることが出来、更に各セメント粒子の表面が変成されていないため、この造粒セメントを使用したモルタル又はコンクリートの養生硬化後の強度低下を防止することが出来る。
【0010】
而も、上記材料に増粘材を添加したので、材料をより効果的に押し固めることが出来るため、形状維持効果を向上させることが出来、よって保管時、圧送時の相互接触による割裂を抑止することが出来、更に上記材料に崩壊材を添加したので、含浸水分量が僅かであっても、内在する崩壊材の効果により、造粒セメントに亀裂が生じたり造粒セメント自体が割裂させられ小塊化されるため、造粒セメントをセメント粒子化し易くすることが出来る。
【0011】
前記複合材料の混合撹拌工程と、該混合撹拌工程による1次処理材料の粉砕・解砕工程と、該粉砕・解砕工程による2次処理材料の圧縮造粒工程とを有しているので、簡単に造粒セメントを製造することが出来、而も前記圧縮造粒工程後に焼成工程を行うので、表面が硬化した造粒セメントを製造できるため、水中で完全にセメント粒子化されるまでのスピードが極めて遅い造粒セメントを簡単に製造できる等その実用的効果甚だ大である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る造粒セメントにあつては、少なくともセメント及び油脂類を含む複合材料の混練材の圧縮造粒体で、上記複合材料に増粘材又は崩壊材の一方又は両方を添加することも可能とする。
【0013】
油脂類は、植物性、鉱物性を問わず適宜選択して使用する。
【0014】
崩壊材は、水を吸収すると、造粒セメントを内側から崩壊させる性質を有するものを使用する。
【0015】
増粘材は、混合材料の粘性を向上させて粒状化させ易くする性質を有するものを使用する。
【0016】
次に、本発明に係る造粒セメントの製造方法について説明する。
セメント、油脂類、崩壊材及び増粘材を同時又は順次混合撹拌機に投入して1次処理材料とし、次に1次処理材料を粉砕機又は混練機に投入して2次処理材料とし、2次処理材料をロール型圧縮造粒機(ブリケッティングマシン)、打錠機(タブレッティングマシン)等の圧縮造粒機に投入して所定形状の造粒セメントを連続的に圧縮造粒する。
尚、上記方法により製造された造粒セメントを焼成して、表面を硬化させても良い。
【0017】
例えば、2次処理工程及び圧縮造粒工程について具体的に説明すると、
回転軸に複数枚1組のカッターが上下方向に複数段配された回転カッターの外周にスクリーンを配設したパワーミルにより、投入された1次処理材料をカッターで粉砕し粒径の小さい粒状にし、スクリーンの穴を通過させて排出し、排出された粒状の1次処理材料、即ち2次処理材料を、ブリケッティングマシンのホッパに投入し、加圧ロールの外周面間の摩擦力により一対の加圧ロール間に複合材料が食い込み、ポケット内に詰め込まれた状態で圧縮されて、ポケットの形状と同じ造粒セメントが形成される。
【0018】
つまり、この造粒セメントによりモルタル又はコンクリートを製造すれば、水との接触により表面側のセメントから順次水和反応し、造粒セメントが徐々に崩れ、露出して水に接触したセメントから順次水和反応するという段階を経て、全てのセメント粒子が水和反応するため、通常のセメントより硬化スピードを抑えることが可能になる。
【0019】
又、水が含浸しても崩れないことも有り得るが、内在する崩壊材の効果により、造粒セメントに亀裂を入れて崩れ易い状態にするか、完全に崩れてしまう。
【0020】
よって、この造粒セメントによれば、ドライバッチ方式であっても対応可能で、現場でセメント、骨材及び水を混練する場合であっても、通常のセメントに比し隙間が多く、表面積も小さいため、ホース内を圧送させることが容易化され、増粘材が添加された造粒セメントは形状維持効果を有するため、圧送中に相互衝突しても割裂し難くすることが可能になる。