(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6067669
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】冷凍惣菜用調味液
(51)【国際特許分類】
A23L 29/256 20160101AFI20170116BHJP
A23L 17/60 20160101ALI20170116BHJP
【FI】
A23L29/256
A23L17/60 101
【請求項の数】3
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2014-266854(P2014-266854)
(22)【出願日】2014年12月27日
(65)【公開番号】特開2016-123349(P2016-123349A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2015年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006770
【氏名又は名称】ヤマサ醤油株式会社
(72)【発明者】
【氏名】冨成 浩静
(72)【発明者】
【氏名】向山 信
【審査官】
川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−289971(JP,A)
【文献】
特開2006−304789(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3119751(JP,U)
【文献】
特開平07−203855(JP,A)
【文献】
田畑 和広,低凝固性寒天の特性と応用,ニューフードインダストリー ,1993年,Vol.35 No.7,10−16
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 29/256
A23L 17/60
A23L 33/21
A23B 4/06,501
JSTPlus(JDreamIII)
CAplus/FSTA/FROSTI/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼリー強度が1.5%寒天濃度で250g/cm2以下の寒天を0.01〜0.5%(w/w)含むことを特徴とする、冷凍惣菜用食品調味液。
【請求項2】
醤油を含有する、請求項1に記載の食品調味液。
【請求項3】
ゼリー強度が1.5%寒天濃度で250g/cm2以下の寒天を0.01〜0.5%(w/w)含有する冷凍惣菜用食品調味液を用いて具材を調理し、当該食品調味液と具材とを一体として冷凍処理に処することを特徴とする、冷凍惣菜の製造法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍惣菜用調味液および当該調味液を用いた冷凍惣菜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
調味済みの惣菜を冷凍することで得られる冷凍惣菜は、長期保存が可能であり、また電子レンジなどを用いた簡易調理や常温解凍でそのまま喫食できるものなど、様々な種類のものが流通している。
【0003】
一方で冷凍食品は、冷凍状態から解凍する際に、離水(ドリップ)が生じたり、や水分あるいは調味液の具材への移行など、種々の要因によって食材の食感や食味が劣化する場合があり、これらの課題を解決すべく各種の対策がとられてきた。
【0004】
具体的には、煮汁を含む具材入り惣菜にジェランガム及び澱粉を添加、分散、加熱、溶解し、ゲル化させることで、凍結・解凍後にも保形性を有し、離水がなく、素材の味・風味を損なうことのないゲル化食品を得る方法(特許文献1)や、デンプン等を添加することによってC型粘度計で測定した粘度1000〜8000cPである調味液の上に、一部を接触させて主食を配置し、冷凍することで、主食中に調味液の水分が移行するのを防ぐ方法(特許文献2)、畜肉惣菜生地にイヌリン粉末を含有せしめることで冷凍保存中の団子化を防ぎ、食感を向上させる方法(特許文献3)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−215797
【特許文献2】特開2006−20630
【特許文献3】特開2007−20521
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、冷凍食品を喫食時に解凍すると、水分あるいは調味液が食材中に移行することによって食感が著しく劣化したり、本来具材の表面に付着して風味を付与するための調味液が具材中に移行してしまうために、調味液の味を感じられず、望ましい風味が得られなくなったりするため、品質が劣化してしまうという問題があった。
【0007】
そこで、冷凍惣菜を解凍した時に食感や風味が劣化することを防ぐため、調味液等の粘度を高くして水分の移行を防ぐ方法や、特殊な原料を添加する方法が知られてきたが、これらの方法はそもそもの使用原料が特殊であったり、添加原料が惣菜の性状や食味に影響を与えてしまう恐れがあったりするなど、汎用性の高い方法であるとは言えなかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者らは鋭意検討を重ねた結果、冷凍惣菜を製造するにあたり、寒天を含有する食品調味液で具材を調理し、その後に具材と当該調味液を一体として冷凍させることによって、解凍時に具材への水分の移行が生じにくく、食感や味が劣化しなくなることを新たに見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0009】
本発明の食品調味液を冷凍惣菜の調味に用いると、喫食時に解凍しても、具材への水分の移行が生じにくくなり、食感の悪化、
味・風味の劣化を抑制することができるため、品質の高い冷凍惣菜を得ることができる。しかも本発明の調味液は、その性状が著しくゲル化していたり、特殊な原料を用いたりするものではないため、様々な惣菜類の調味に広く用いることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明における冷凍惣菜とは、魚・肉の蒲焼のような焼き物、味つきフライ等の揚げ物、肉・野菜・豆類などの煮物、具入りスープ食品、納豆など、調味液を用いて調味を行う惣菜であって、調理を行った後に具材と調味液を一体として冷凍保存し、喫食時に解凍して提供されるものをいう。
【0011】
本発明の調味液は、冷凍惣菜の調味に用いる液体調味料を言い、原料に寒天を含有することを特徴とする。調味液中の寒天の含有量としては、0.01〜0.5%(w/w)が好ましく、0.1〜0.3%(w/w)がより好ましい。寒天の含有量がこれより少ないと望むような食味・食感の劣化防止効果が得られず、逆に寒天の含有量が多すぎると液が凝固してしまい、調味液の性状として好ましくなくなる。
【0012】
本発明の調味液に用いる寒天としては、ゼリー強度が1.5%寒天濃度で250g/cm
2以下、より好ましくは150g/cm
2以下となるような低強度寒天であることが望ましい。このような低強度寒天の具体例としては、伊那食品工業社製のウルトラ寒天イーナ、ウルトラ寒天UX−30、ウルトラ寒天AX−30、ウルトラ寒天BX−30、ウルトラ寒天UX−100、ウルトラ寒天AX−100、ウルトラ寒天BX−100、ウルトラ寒天UX−200、ウルトラ寒天AX−200、ウルトラ寒天BX−200などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
本発明の食品調味液は、主要な調味成分のひとつとして醤油を含んでもよい。醤油の種類としては濃口醤油、淡口醤油、たまり醤油、濃縮醤油、しろ醤油など通常用いられる任意の醤油を用いることができる。また本発明の食品調味液には、醤油の他にも、味噌、みりん、酒等の発酵食品や、食塩、砂糖、液糖、グルタミン酸ソーダ、アミノ酸調味料、核酸調味料などの各種調味料、魚節・こんぶ・しいたけ等のだし類やエキス類、果実・野菜由来のエキス類、油脂、香料、保存料など、惣菜の種類に応じて任意の原料を使用することができる。
【0014】
冷凍惣菜の調製においては、肉、魚介、豆類、野菜等の具材を事前に上記食品調味液を用いて調理し、しかる後に食品調味液と具材とを一体として冷凍処理に処することにより製造することができる。
【実施例】
【0015】
以下、実施例をあげて具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
(実施例1)冷凍納豆の製造
【0016】
(1−1 冷凍納豆の製造)
下記表1に示すような原料を調合することによって試験液1〜6からなる冷凍納豆用のタレを調製した。ゲル化剤としては寒天、化工デンプン、キサンタンの3種を用いた。なお試験液2、3、5については、それぞれの粘度が同程度となるようゲル化剤の添加量を調整した。なお、表1内の単位はすべて重量%を示す。
【0017】
【表1】
【0018】
上記試験例1〜6のタレを、それぞれ納豆40gに対して4mlずつ添加し、よく混ぜた後、容器に収容して−20℃で24時間冷凍保管した。冷凍保管後、常温(約20℃)で自然解凍させて、その食感および食味を評価した。
【0019】
(1−2 冷凍納豆の官能評価)
冷凍納豆の食感、食味について下記のような指標のもとに官能評価を行った。評価は、十分に訓練されたパネラーによって行われた。
<食感>
対照である試験液1と比べて、
±0:相違なし
+ :豆の食感が残っている
++:豆の食感が良く残っている
【0020】
<食味>
対照である試験液1と比べて、
±0:相違なし
+ :たれの味を感じる。
++:たれの味を良く感じる
【0021】
【表2】
【0022】
結果、上記表2に示すように、原料として寒天を含有する試験例5、6において、解凍後も食感・食味とも改善できることが明らかになった。
【0023】
すなわち、ゲル化剤として寒天を添加した本発明の調味液は、他のゲル化剤によって同程度の粘度を与えた調味液と比較して、解凍時における具材の食味・食感の劣化をより十分に抑制できるものであることが明らかになった。