(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
目的および異なる環境の増加に対応するポイントオブケア試験に対するニーズの増大により、当技術分野においては、費用と時間の効率が良い方法で生物学的試料の試験を実施するための方法およびデバイスを提供するニーズが依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
1つの実施形態において、本発明は、サンプル適用(サンプル)ゾーンおよび反応混合物が沈着される反応物-結果(反応物)ゾーンが全て、同一平面の単一の1枚のパッド上にある、ラテラルフロー(側方流動)アッセイ用の単一パッドベースのストリップを提供する。
【0005】
別の実施形態において、本発明は、以下:
単一パッド;および
乾燥形態で沈着された基質
からなる、予め選択されたアナライトのための酵素駆動式のラテラルクロマトグラフィーフローアッセイ用のストリップを提供する。
【0006】
さらに別の実施形態において、本発明は、予め選択されたアナライトのための酵素駆動式のラテラルクロマトグラフィーフローアッセイであって:
(a) 以下からなるストリップを含む試験デバイスを用意するステップ:
(i) 単一パッド;および
(ii) 乾燥形態で沈着された基質;
(b) サンプルを、基質が沈着されている単一パッドに適用するステップ;
(c) 上記サンプルを、消化パッドを通して流し、上記基質に到達させるステップ;
(d) 上記サンプルを上記基質と反応させて応答を生成するステップ;および
(e) 上記応答を同定および解釈し、サンプル中のアナライトの存在または濃度を示すステップ
を含む、上記アッセイを提供する。
【0007】
さらなる実施形態において、本発明は、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PD)の存在を検出するための酵素駆動式のラテラルクロマトグラフィーフローアッセイであって:
(a) 以下のものを含む単一パッドストリップを含む試験デバイスを用意するステップ:
(i) 溶解バッファーで前処理した消化単一パッド;
(ii) グルコース-6-リン酸、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)またはニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)、水素化物移動剤または電子移動剤、およびそれらの混合物を含むアッセイ混合物;および
(iii) テトラゾリウム塩;
(b) サンプルを上記消化単一パッドに適用するステップ;
(c) 上記サンプルを、上記消化パッドを通して流し、上記アッセイ混合物と接触させるステップ;
(d) 上記サンプルを、上記アッセイ混合物と反応させて応答を生成するステップ;ならびに
(e) 上記応答を同定および解釈し、上記サンプル中のアナライトの存在または濃度を示すステップ
を含む、上記アッセイを提供する。
【0008】
別の実施形態において、本発明は、サンプル適用ゾーンに適用されるサンプルが毛細管力によって反応ゾーンに移動し、この間上記の適用ゾーンと反応ゾーンは同一平面上にある、ドライフォーマットアッセイに基づく。上記の反応物は、酵素などの成分の組み合わせと、呈色反応を引き起こすための組成物とを含み、乾燥形態で沈着される。本発明において、サンプルは、反応物ゾーンに移動して反応物と混合する。サンプルが反応物と混合されると、結果として得られる組成物はゆっくりと移動して反応物-結果ゾーン上にとどまるが、ヘモグロビンなどのサンプル中の他の成分は、結果として得られる組成物より速く移動し、毛細管力などによって移動し続けて所望の結果物から分離する。アナライトを含むサンプルと反応すると、上記の反応物-結果ゾーンは、指示薬中の結果(例えば色)を示す。結果物の保持およびサンプルの他の成分の継続的な毛細管運動は、ヘモグロビンなどの他の成分による任意の干渉を除去し、結果の同定を改善する。
【0009】
サンプルは、サンプル中に含まれる液体(例えば血液)、またはサンプルに付加的に適用されるバッファー溶液の毛細管力によって移動する。1つの実施形態において、本発明は、ポイントオブケア試験のための、1パッドストリップ上のドライフォーマットアッセイにおける迅速な診断試験(RDT)を提供する。1パッド上のラテラルクロマトグラフィーは、安定した試験、簡単な方法および迅速な試験結果を提供する。
【0010】
別の実施形態において、本発明は、ヘモグロビンが、固相上の示差クロマトグラフィーを使用してアナライトから分離されるクロマトグラフィー方法を提供する。ヘモグロビンの色は、赤血球中のアナライトの呈色反応の目視の読み取りに干渉する場合が多い。本発明は、サンプルの差次的な移動が、サイズの相違、粘度、アナライトの反応物との沈殿、アナライトと相互作用する試薬を含浸させた多孔質マトリックスを通した電荷差によって起こる、ラテラルクロマトグラフィー方法を提供する。
【0011】
本発明の利点としては、簡単で簡易な手順、およびヘモグロビンの干渉を受けない明確な目視の読み取りを可能とすることが挙げられる。
【0012】
本出願明細書を通して、以下の用語は、下記の意味を有する。
【0013】
「生物学的材料」、「生物学的サンプル」または「サンプル」は、脊椎動物から抽出された体液または組織、例えば全血、血清、血漿、唾液、尿、および脳脊髄液を指す。
【0014】
「アナライト(検体)」は、存在、不存在または濃度などの結果の1つを同定するアッセイの目的である比活性を含む、生物学的材料、生物学的サンプル、またはサンプル中の特定の成分を指す。
【0015】
他に定義されない限り、本明細書中で用いられる全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本発明の実施および試験において、本明細書中に記載される方法および材料と類似のまたは同等の方法および材料を使用することができるが、好適な方法および材料は以下に記載される。本明細書中で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。相反する場合には、定義を含む本明細書は調整することになるだろう。さらに、材料、方法、および例は、説明の目的のみに用いられ、限定を意図するものではない。
【0016】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかであろう。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
本発明は、
単一パッド;および
乾燥形態で沈着された基質
からなる、予め選択されたアナライトのための酵素駆動式のラテラルクロマトグラフィーフローアッセイ用のストリップを提供する。
【0019】
1つの実施形態において、本発明の単一パッドは、塩化マグネシウムなどの溶解バッファーで前処理した消化パッドである。
【0020】
別の実施形態において、前記アナライトは、ヒトおよび動物の体液中のタンパク質、炭水化物、脂質、および核酸から選択される。
【0021】
別の実施形態において、前記の乾燥形態で沈着された基質は、アナライトの反応基質(例えばグルコースリン酸デヒドロゲナーゼ(G6PD)についてはグルコース-6-リン酸)を含むアッセイ混合物であり、この混合物はさらに、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)、水素化物移動剤およびそれらの混合物を含み得る。
【0022】
特定の実施形態において、前記アナライトは、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PD)、乳酸デヒドロゲナーゼ、またはアルコールから選択される。
【0023】
1つの好ましい実施形態において、前記アナライトは、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PD)である。
【0024】
さらなる実施形態において、上記の基質は、色素などの指示薬を含む。基質とアナライトとの接触によって電子的または構造的に改変され、目視で、または測定方法または測定装置を用いて検出することができる任意の形態の変化を表し得る多くの化合物は、制限なく利用することができる。このような化合物の例としては、限定するものではないが、色素が挙げられる。様々な色を表す化合物は、その構造中の任意の化学的状態または電子状態の変化によって色を変化させる場合が多い。ホルマザン色素は、脱水素酵素および還元酵素によるテトラゾリウム塩の還元から生成される発色化合物である。ホルマザン色素は、反応の基質として使用される元のテトラゾリウム塩に応じて、濃青色〜深紅〜オレンジまで多様な色を有する。テトラゾリウム塩のリストとしては、限定するものではないが、TTC (テトラゾリウム、塩化テトラゾリウムまたは2,3,5-トリフェニル-2H-テトラゾリウムクロリド)、INT (2-(4-インドフェニル)-3-(4-ニトロフェニル)-5-フェニル-2H-テトラゾリウムクロリド)、MTT (3-(4,5-ジメチル-2-チアゾリル)-2,5-ジフェニル-2H-テトラゾリウムブロミド)、XTT (2,3-ビス-(2-メトキシ-4-ニトロ-5-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム-5-カルボキシアニリド)、NBT (ニトロブルーテトラゾリウム)、MTS (3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム)、またはDCPIP (2,6-ジクロロフェノールインドフェノール)が挙げられる。一部のテトラゾリウム塩は、他のテトラゾリウム塩より水溶性である。酵素または化学的条件によって還元する(例えばニコチンアミドアデニンジヌクレオチド水素(NADH)もしくはニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)または任意の水素化物移動剤と反応させる)と、テトラゾリウム塩が変色し、さらに不溶性の沈殿物を形成し得る。この結果は、例えば、限定するものではないが、目視検査、比色計、UV検出器、分光光度計、画像解析読み取り等などの方法によって検出することができる。
【0025】
1つの実施形態において、本発明は、予め選択されたアナライトのための酵素駆動式のラテラルクロマトグラフィーフローアッセイであって、以下のステップ:
(a) 以下からなるストリップを含む試験デバイスを提供するステップ;
(i) 単一パッド;および
(ii) 乾燥形態で沈着された基質;
(b) サンプルを、基質が沈着されている単一パッドに適用するステップ;
(c) 上記サンプルを、消化パッドを通して流し、上記基質に到達させるステップ;
(d) サンプルを上記基質と反応させて応答を生成するステップ;および
(e) 上記応答を同定および解釈し、上記サンプル中のアナライトの存在または濃度を示すステップ
を含んでなる、上記アッセイを提供する。
【0026】
1つの好ましい実施形態において、上記のアナライトは、G6PDなどの酵素である。
【0027】
別の好ましい実施形態において、本発明は、
G6PDの存在を検出するための酵素駆動式のラテラルクロマトグラフィーフローアッセイであって、以下:
(a) 以下のものを含む単一パッドストリップを含む試験デバイスを提供するステップ:
(i) 溶解バッファーで前処理した消化単一パッド;
(ii) グルコース-6-リン酸、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)またはニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)、水素化物移動剤、およびそれらの混合物を含むアッセイ混合物;および
(iii) テトラゾリウム塩;
(b) サンプルを上記消化単一パッドに適用するステップ;
(c) 上記サンプルを、上記消化パッドを通して流し、上記アッセイ混合物と接触させるステップ;
(d) 上記サンプルを、上記アッセイ混合物と反応させて応答を生成するステップ;ならびに
(e) 上記応答を同定および解釈し、上記サンプル中のアナライトの存在または濃度を示すステップ
を含む、上記アッセイを提供する。
【0028】
本発明は、サンプル適用(サンプル)ゾーンと、反応混合物が沈着される反応物-結果(反応物)ゾーンが全て、同一平面の、単一の、1つのパッド上にある、ラテラルフローアッセイを提供する。
【0029】
さらに本発明は、サンプル適用ゾーンに適用されるサンプルが毛細管力によって反応ゾーンに移動し、この間適用ゾーンと反応ゾーンは同一平面上にある、ドライフォーマットアッセイに基づく。上記の反応物は、酵素を含む成分の組み合わせと、呈色反応を引き起こすための組成物とを含み、乾燥形態で沈着される。本発明において、サンプルは反応物ゾーンに移動し、反応物と混合される。
【0030】
サンプルが反応物と混合するにつれて、結果として得られる組成物は沈殿し、ゆっくり移動し、反応物-結果ゾーンにとどまるが、ヘモグロビンなどのアナライト中の他の成分は、毛細管力などによって移動し続けて所望の結果物から分離する。アナライトを含むサンプルと反応すると、反応-結果ゾーンは、目視で検出し得る指標(例えば色)による結果を示すだろう。同時に、逆読み取りも可能である:アナライトを含むサンプルと反応すると、反応-結果ゾーンの指標(例えば色)は消えるだろう。アナライトを含まないサンプル:色は結果ゾーンにとどまる。結果物の保持と、サンプルの他の成分の継続的な毛細管運動は、他のアナライト(例えばヘモグロビン)による任意の干渉を除去し、結果の同定を改善するだろう。サンプルは、該サンプルに含まれる液体(例えば血液、またはサンプルに付加的に適用し得るバッファー溶液)の毛細管力によって移動する。
【0031】
1パッドストリップ
本発明は、サンプル適用ゾーンと反応物-結果ゾーンが全て1パッド上にある、1パッドストリップデバイスを提供する。単一パッド中で実施されるアッセイは、アナライトの均一な移動を提供し、複数の層を通過するサンプルの不均一な移動を除去することによって一貫性のある結果を生成する。例えば、血液サンプルを、溶解バッファーで前処理した1パッドストリップに適用する場合、ヘモグロビンを結果物から簡単に分離することができる。
【0032】
さらに、1パッドストリップデバイスにおいては、サンプルが異なる媒体または層を通過するのではなく同一面を通って移動するため、反応物と反応するアナライトの実際量をアナライトの量より増加させることによって感度を増大させることができる。また、1パッドストリップデバイスを用いることによって、従来の多層アッセイと比較すると製造コストはより低下し、工程はより簡単になるだろう。
【0033】
例えば、BinaxNOW(登録商標)G6PD試験は、サンプルパッドと反応パッドの2つの異なるパッドからなるストリップを有する。通常のG6PD活性を有するサンプルは、明確な色変化を生じる。赤色のサンプル色は、反応パッドの上半分で茶色/黒色に変わる。血液サンプル中の反応生成物の色は、ヘモグロビンの色を除かない;その結果、上記の茶色/黒色は、血液の赤色と明確な相違を有しない。BinaxNOW(登録商標)G6PDなどの他のデバイスにおいて使用される二相または多相および非連続系とは異なり、本発明は、単相および連続クロマトグラフィーを用いる。単一パッドと連続クロマトグラフィーからなる本発明の試験ストリップは、二相クロマトグラフィーより簡単な、ストリップ上の、色素(例えばホルマザン色素)を含む結果物のヘモグロビンからの分離を提供する。
【0034】
本発明は、サンプル適用(サンプル)ゾーン、反応物ゾーンおよび結果ゾーンの3つの領域からなる。反応ゾーンは、呈色反応を引き起こすための成分の組み合わせが乾燥形態で沈着される領域であり、結果ゾーンは目視の読み取り領域であり、サンプルゾーンはサンプルが適用される領域である。これらのゾーンは同一のマトリックス(本発明の1パッド)で構成されるため、連続フォーマットはアナライトの均一な移動を可能とし、複数の層を通過するサンプルの不均一な移動の可能性を除去することによって一貫性のある結果を生成する。さらに、反応物と反応するアナライトの実際量を、多層を通過するアナライトの量より増加させることにより、感度を増大させることができる。また、本発明のフォーマットは、従来の多層アッセイよりも製造コストを低下させ、且つ製造工程を簡単にもする。
【0035】
ラテラルフロークロマトグラフィーアッセイ
本発明のアナライトは、抗体-抗原間の反応の免疫学的反応、酵素-基質反応、タンパク質-基質結合、または基質-基質複合体形成などの様々な反応を用いて反応物と反応する。
【0036】
免疫学的アッセイには、ラテラルフロークロマトグラフィーアッセイが利用されることが多かったが、ラテラルフロークロマトグラフィーアッセイは、酵素アッセイには一般的に用いられていなかった。ラテラルフロー酵素アッセイは、特定の酵素に関して、基質との反応を利用し、さらにその反応を、特定の化学物質(例えば水素化物)と反応すると酵素と基質間の反応によって生成される特定の色を表し得る色素などの指示薬を用いて検出して、その存在または不存在および濃度を同定する。
【0037】
グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PD)
本発明の1つの具体的実施形態は、色素を還元して特定の指標(例えば色)を表すことができる、酵素とその基質との反応から得られる代謝物の活性を利用した、サンプル中の酵素(例えば血液サンプル中のG6PD)の存在の直接検出などの酵素ベースのアッセイを提供する。テトラゾリウム化合物などの色素分子は、還元されて不溶性ホルマザンを形成することができる。不溶性ホルマザンは紫色を示し、任意の特定の装置を用いることなく、目視で簡単に同定することができる。
【0038】
ヒト酵素グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PD)は、ヒト生化学において重要な機能を果たす。G6PDは酸化的ペントース経路の一部であり、ここでG6PDは、還元当量を与えることにより、細胞上のフリーラジカルの酸化的攻撃を最小限に抑える役割を果たす。例えば、G6PDは、グルコース-6-リン酸を6-ホスホグルコン酸に変換し、その結果、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)をNADPH(NADPの還元型)に還元するプロトンを放出する。このNADPHは、一連の下流反応を開始し、これが最終的にはフリーラジカル酸化剤を還元し、その多くを正常なヒト生化学において無力にする。
【0039】
G6PDは、ヒト細胞の大部分に存在するが、赤血球においてより高い濃度で存在し、それらの主な機能の1つとして、酸素トランスポーターとしての役割を果たし、このため特に酸化的攻撃を受けやすい。この酵素は、赤血球を酸化的損傷および早期破壊から保護する役割を果たす。G6PD系の効率は、正常な活性の間、望ましくない酸化的反応に対抗し且つ妨げることに利用されるのはその能力の1%未満であるという事実を反映して、著しく高い。しかし、抗マラリア薬のキニーネクラスのメンバーのような強力な酸化剤を人体に導入しなければならない場合、還元剤の迅速な生成の必要性が著しく増大する。
【0040】
G6PDをコードする遺伝子のいくつかの変異が知られており、これらは、個体の生化学において、これらの個体のゲノムの両半分中のかかる変異をプロセッシングする酵素の効率を低下させ、これらの個体のG6PDの量を、正常な遺伝子を有する人々と同じレベルのままとするだけでなく、これらの個体のG6PDが著しく低下した比活性を示すようにする。これらの個体において、G6DPの低い比活性は、それらの赤血球に対する迅速な望ましくない酸化的作用を防止するのに十分な還元剤を生成することができないため、キニーネ型抗マラリア薬のクラスのメンバーのような強力な酸化剤の投与は、溶血性貧血のような重度の臨床合併症を引き起こすことがある。このため、マラリア感染症が一般的な地域でかつ更に蔓延している時点においては、G6PD活性が正常である人から比活性が低いG6PDを有する人を容易に識別する迅速で効率的な試験の必要性が存在し、これにより医療関係者は、(1)キニーネ(抗マラリア薬)が正常なG6PD比活性またはより優れたG6PD比活性を有する個体にのみ処方されること、および(2)正常なG6PD活性より低いG6PD活性を有するヒトは、代替型の抗マラリア薬によって治療されることを確保することができる。
【0041】
さらに、溶血性貧血を増加させる様々な種類の薬が知られており、そのリストとしては、限定するものではないが、抗マラリア薬(プリマキン、パマキン等)、スルホンアミド類(スルファニルアミド、スルファセタミド、スルファピリジン、スルファメトキサゾール等)、スルホン類(ダプソン等)、ニトロフラン類(ニトロフラントイン等)、およびその他(ナリジクス酸、ナフタレン、シプロフロキサシン、メチレンブルー、トルイジンブルー等)が挙げられる。
【0042】
G6PDの欠損を検査するため、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PD)を含む赤血球は、血液溶解試薬で前処理したサンプル適用ゾーンに接触すると試験ストリップ上に溶解される。溶解赤血球中のG6PDは、前処理した乾燥ストリップ中でその基質と反応し、テトラゾリウム色素および水素化物移動剤の存在下、酵素反応が起こって色形成プロセスが開始する。触媒されたG6PDは、グルコース-6-リン酸を酸化してNADPHを放出し、放出されたNADPHは、テトラゾリウム色素を還元してテトラゾリウム色素の色をホルマザン(例えば紫または青等)に変え、この色は同じパッド上で目視により検出することができる。
【0043】
1つの具体的な実施形態において、試験ストリップは単一層に構築され、そのサンプル適用領域と色形成反応領域は同一パッド上にある。試験ストリップの上端は、必要であれば、吸湿性材料を含む吸収パッドで構成される。試験ストリップは、イオン性または非イオン性界面活性剤を含む溶解試薬で前処理される。この試験ストリップは、サンプルの適用前に血液溶解ステップを必要としないため、試験を実施するための簡単な方法を提供する。前処理した試験ストリップには、以下のものを含む試薬が含浸されている:G6PDの特異的基質であるグルコース-6-リン酸、補酵素NADPまたはNAD、テトラゾリウム色素、ならびに糖部分または水溶性ポリマーとしての水素化物移動剤および安定剤。
【0044】
迅速診断試験(RDT)および二重試験
1つの実施形態において、本発明は、ポイントオブケア試験のための、1パッドストリップ上のドライフォーマットアッセイにおける迅速診断試験(RDT)を提供する。ドライフォーマットラテラルクロマトグラフィーは、安定した試験デバイス、簡単な方法および迅速な試験結果を提供する。G6PD欠損症は最も一般的なヒト酵素欠損症であり、400万人に影響を及ぼし、マラリアが風土病である地域で高度に蔓延している。この欠損は、マラリア感染からのある程度の防御を与えると考えられる。しかしまた、この欠損は、プリマキン(PRIMAQUINE)などの特定のマラリア薬を投与すると溶血を引き起こす可能性もある。従って、スクリーニングに属する分野に適した迅速診断試験(RDT)が早急に必要とされている。
【0045】
別の実施形態において、本発明は、臨床サンプルを用いたG6PD RDT試験の結果が定量的試験の結果と相関し得る試験方法を提供する。この試験は、約≦4 IU/gHb(正常値は37℃で12 ± 2.09 U/gHb)を欠損として検出することができる。カットオフは、G6PD欠損患者におけるプリマキン(PRIMAQUINE)に対する赤血球の耐性に応じて変わり得る。安定性研究の加速化により、本発明の試験ストリップは、45℃で3か月、60℃で6か月間安定していた。このG6PDのRDTは、血液1μL当たり30匹未満の寄生虫を検出し得るマラリアのRDTと組み合わせることができる。この二重試験キットは、マラリア感染とG6PD欠損症とを、少量の血液(通常は10μL未満)を使用して同時に診断することができる。アッセイ試験は、少量のサンプル(<10μLの血液)で迅速(<10分)であり、使用が簡単であり、費用効率が良く、ポータブルであり、そして野外使用のための重要な要素である特別な保存要件を必要としない。
【0046】
ラテラルフロークロマトグラフィー
多くの一般的に使用されるポイントオブケア試験は、微多孔膜の毛細管作用を利用する膜ベースの免疫クロマトグラフィーに基づくラテラルフローアッセイを用いる。ラテラルフロークロマトグラフィーアッセイにおいて、移動相試料溶液中のアナライトは、分子を固定固相に捕捉する親和性結合によって他の成分から分離される。ニトロセルロースまたはナイロンで作製される膜は、アフィニティークロマトグラフィーの固体固定相としての、また毛細管作用によって免疫複合体粒子を動かして他の液体溶質から分離させる分離クロマトグラフィーの液相としてのマトリックスを提供する。
【0047】
ナイロンまたはニトロセルロースで作製される微多孔膜は、タンパク質が膜を通して移動し得ることが最初に示された1979年程度から抗原/抗体試験に使用されてきた。ニトロセルロースは、ウェスタンブロット法およびラテラルフロー免疫診断などの研究技術においてタンパク質を固定するための表面として広く利用されてきた。微多孔性とニトロセルロースは、例えば、高結合能、タンパク質の非共有結合、および安定した長期固定化環境などの迅速な免疫クロマトグラフィーアッセイのための多くの利益を提供する。
【0048】
一般的に、酵素駆動式アッセイ(例えばG6PD欠損症試験)を含むラテラルクロマトグラフィーでは、本発明のように、乾燥基質はクロマトグラフィーストリップ(すなわち1パッドストリップなど)上のサンプル受容領域の接合部の近くおよびわずかに越えたところに予め沈着される。しかし乾燥基質は、サンプル流路において、サンプル流が止まってそこに存在する任意の過剰な体液が吸収パッドまたは備え付けられ得る他のシンクデバイスに流れ込む終点すなわち「吸収パッド」の実質的に前に配置される限り、サンプルまたは基質中の1つ以上の成分のいずれかの特定の要件に適合するようにサンプル流路の他の場所に配置されていればよい。
【0049】
乾燥基質が、サンプルの前方流によって完全に捕捉され易くなるように、1つの範囲、好ましくは限定領域内に沈着されることが重要である。また、乾燥基質を流路中に配置することは、基質の、液体サンプル内の溶解形態または分散形態の再構成が、サンプル流が止まる地点にサンプルが到達する時間までに望ましく完了することも考慮に入れなければならない。
【0050】
輸送、保存および使用の便利性のため、本発明のクロマトグラフィーストリップはそれぞれ、ストリップが横方向に配置されるように構成された好適なデバイス中に好ましく保管することができる。このようなデバイスの多くは当技術分野で周知であり、そのデバイス中に位置するクロマトグラフィーストリップ上のアッセイのパフォーマンスが、横流によって実施されるように構成されたデバイスはいずれも、適切に用いることができる。
【0051】
1つの具体的な実施形態において、本発明の1パッドストリップは、限定するものではないが、以下のものを含む特徴を提供する:
1. 本発明の1パッドストリップは、ニトロセルロース膜、グラスファイバー、セルロースまたはポリエステル等から選択される多孔マトリックスを含む。
【0052】
2. 本発明のストリップは、当該ストリップのサンプル適用領域および乾燥試薬混合物の沈着領域が、2つの領域が重なっているか否かに関わらず同一のパッド中にある1パッドストリップを含む。
【0053】
3. 本発明中のストリップは、サンプル体液を受容した後に生じる反応混合物に通じる液流の単一トラックを有する。
【0054】
4. 本発明の1パッドストリップは、場合により、イオン性(アニオン性、カチオン性および両性イオン性)または非イオン性界面活性剤と塩化マグネシウムとを含む溶解試薬で予めコーティングされていてもよく、生物学的体液を、バッファーで前溶解することなくサンプル適用領域に直接接触させることにより、当該生物学的体液の溶解を可能とする。
【0055】
5. 本発明の1パッドストリップは、熱安定性を高めるための安定剤としての、単糖、二糖、多糖または水溶性ポリマーから選択される糖部分を含む。
【0056】
6. 本発明の1パッドストリップは、中等度のG6PD欠損症(例えば:正常な活性検出の10〜60%)と重度のG6PD欠損症(例えば:正常な活性検出の10%未満)とを裸眼で識別するため、別々に作成されて、二重の試験フォーマットデバイスに組み立てられる。
【0057】
7. 反応ゾーン中の成分は、酵素基質、発色試薬および安定剤を含む。本発明の1パッド系は、ストリップ上の色変化が機器(例えば光学的分光光度計、スキャナー、リーダー、または濃度計)によって読み取り可能であるため、定量的アッセイまたは半定量的アッセイに用いることができる。
【0058】
8. また、本発明の1パッド系は、電気化学系に適用することもできる。G6PDによって生成されるNADPHまたはNADHから、酸化還元酵素または電子移動メディエーターを通じた電極への電子移動は、ドライフォーマット中の電極を使用することによって定量することができる。
【0059】
9. 本発明の1パッド系は、捕捉分子を固相上に固定する免疫アッセイに用いることができる。
【0060】
示差クロマトグラフィーによるヘモグロビンのアナライトからの分離
ラテラルクロマトグラフィーアッセイにおいてシグナル強度を制御する重量なパラメーターは、膜の毛細管流速およびタンパク質結合能である。毛細管流速と結合能は、孔のサイズ、多孔性、および膜の厚さによって決定される。膜のタンパク質結合能は、その孔のサイズおよび表面特性によって決まる。
【0061】
本発明は、固相上の示差クロマトグラフィーを用いてヘモグロビンがアナライトから分離されるクロマトグラフィーを提供する。ヘモグロビンの色は、赤血球中のアナライトの呈色反応の目視の読み取りに干渉する場合が多い。本発明は、サンプルの異なる移動が、サイズの相違、粘度、アナライトと反応物との沈殿、アナライトと相互作用する試薬を含浸させた多孔マトリックスを通した電荷の差によるものである、ラテラルクロマトグラフ法を提供する。血球細胞は、反応ゾーンに移動させるための赤血球溶解用の溶解剤で前処理されたサンプルゾーン上に適用され、必要に応じてバッファーが適用される。溶解した血球細胞は反応-結果ゾーンに移動して反応物と混合し、結果として得られる組成物は反応物-結果ゾーン上にとどまるが、ヘモグロビンは毛細管力などにより移動し続けて所望の結果物から分離される。ヘモグロビンの分離は、指標(例えば色)による結果の検出をより明確にし、さらに同定をより簡単にする。
【実施例】
【0062】
野外、家庭、医院または訓練を受けた検査技師および器具が不足している任意の場所において操作する誰でもが簡単に上手く使用することができる具体的なG6PDアッセイは、本明細書中の以下に具体的に記載され、その結果は添付の
図1〜3に示される。
【0063】
実施例1. G6PD欠損症試験ストリップ用のサンプル試験の準備および実施
本発明のパッドを溶解バッファーで前処理し、室温で乾燥させた。1パッドストリップおよび2パッドストリップの構造を
図1に示す。前処理したパッドをプラスチック支持体に取り付け、吸収パッドとして、吸湿紙をプラスチック支持体の頭部においてパッドに重ねた。グルコース-6-リン酸、NADP、テトラゾリウム、および水素化物移動剤または電子移動剤を含むアッセイ混合物を調製し、これを多孔パッドに含浸させた。アッセイ混合物含浸パッドを室温で一晩乾燥させた。
【0064】
* 1パッドの作製:アッセイ混合物-含浸パッドをプラスチック支持体上に取り付けた。
【0065】
* 2パッドの作製:サンプル適用用のパッドを、プラスチック支持体上で1〜2mm重ねることによってアッセイ混合物-含浸パッドの底部に取り付ける。
【0066】
正常サンプルまたは欠損症サンプルをストリップ上に適用した。
図2に示すとおり、結果は、正常サンプルが、本発明の1パッドストリップ系において2パッドより強く明確な紫色を確実に生じたことを示す。欠損症サンプルは、NADPHを生じるG6PDがないため、1パッドおよび2パッドのいずれにおいても何の色も生じなかった。上記の結果はさらに、1パッドにおける体液移動が2パッドにおける体液移動より均一でより速く、且つ本発明の1パッドストリップ系における血中クリアランスの完了が2パッドにおける血中クリアランスの完了より速いことを示した。
【0067】
実施例2. 乳酸デヒドロゲナーゼ試験ストリップ用のサンプル試験の準備および実施
本発明のパッドを、塩化マグネシウムを含む溶解バッファーで前処理し、室温で一晩乾燥させた。前処理したパッドをプラスチック支持体に取り付け、吸収パッドとして、吸湿紙をプラスチック支持体の頭部においてパッドに重ねた。乳酸、NADP、テトラゾリウム、およびTris-HCl バッファー(pH8.0)水素化物移動剤を含むアッセイ混合物を調製し、これを多孔パッドに含浸させた。アッセイ混合物含浸パッドを室温で一晩乾燥させた。
【0068】
* 1パッドの作製:アッセイ混合物-含浸パッドをプラスチック支持体上に取り付けた。
【0069】
* 2パッドの作製:サンプルパッドを、プラスチック支持体上で1〜2mm重ねることによってアッセイ混合物-含浸パッドの底部に取り付ける。
【0070】
2マイクロリットルの血液サンプルをストリップ上に適用した。
図4に示すとおり、結果は、血液中のLDH酵素が、本発明の1パッドストリップ系において2パッド系ストリップにおける色よりも強く明確な紫色を確実に生じたことを示す。上記の結果はさらに、1パッドにおける流体移動が2パッドにおける流体移動より均一でより速く、且つ本発明の1パッドストリップ系における血中クリアランスの完了が2パッドにおける血中クリアランスの完了より速いことを示した。表1に示すとおり、紫色の強度をaQzen Readerによって測定した。
図5に示すとおり、1パッドの強度は2パッド系の強度より高い。
【表1】
【0071】
実施例3. アルコール試験ストリップ用のサンプル試験の準備および実施
本発明のパッドを、洗浄剤を含むバッファーで前処理し、室温で一晩乾燥させた。前処理したパッドをプラスチック支持体に取り付け、吸収パッドとして、吸湿紙をプラスチック支持体の頭部においてパッドに重ねた。アルコール、NAD、テトラゾリウム、およびTris-HClバッファー(pH8.0)水素化物移動剤を含むアッセイ混合物を調製し、これを多孔パッドに含浸させた。アッセイ混合物含浸パッドを室温で一晩乾燥させた。
【0072】
* 1パッドの作製:アッセイ混合物-含浸パッドをプラスチック支持体上に取り付ける。
【0073】
* 2パッドの作製:サンプルパッドを、プラスチック支持体上で1〜2mm重ねることによってアッセイ混合物-含浸パッドの底部に取り付ける。
【0074】
2マイクロリットルの、アルコールを含む血液サンプルをストリップ上に適用した。
図6に示すとおり、結果は、血液中のアルコールの存在が、本発明の1パッドストリップ系において2パッドストリップ系における色よりも強く明確な紫色を確実に生じたことを示す。表2に示すとおり、紫色の強度をaQzen Readerによって測定した。
図7に示すとおり、1パッドの強度は2パッド系の強度より高い。
【表2】
【0075】
実施例4. 乳酸デヒドロゲナーゼ試験ストリップ用のサンプル試験の準備および実施 − 乳酸デヒドロゲナーゼの活性による
本発明のパッドを、洗浄剤を含むバッファーで前処理し、室温で一晩乾燥させた。前処理したパッドをプラスチック支持体に取り付け、吸収パッドとして、吸湿紙をプラスチック支持体の頭部においてパッドに重ねた。乳酸、NADP、テトラゾリウム、およびTris-HCl バッファー(pH8.0)水素化物移動剤を含むアッセイ混合物を調製し、これを多孔パッドに含浸させた。アッセイ混合物含浸パッドを室温で一晩乾燥させた。
【0076】
* 1パッドの作製:アッセイ混合物-含浸パッドをプラスチック支持体上に取り付けた。
【0077】
* 2パッドの作製:サンプルパッドを、プラスチック支持体上で1〜2mm重ねることによってアッセイ混合物-含浸パッドの底部に取り付ける。
【0078】
2マイクロリットルの、乳酸デヒドロゲナーゼ(0.5単位〜6単位)を含むサンプルをストリップ上に適用した。
図8に示すとおり、結果は、LDH酵素活性が、本発明の1パッドストリップ系において2パッドストリップ系における色よりも強く明確な紫色を生じたことを示す。