【課題を解決するための手段】
【0011】
米国特許出願第2008/0129110号明細書は、エネルギー回収を伴う制動監視方法を記述しており、次のステップを含む。
−車両が、加速度が電気制動手段の効率にのみ起因すると想定される一定の速度に達する場合の加速度の測定ステップ;
−車両の別の速度に対する加速度の測定ステップであり、このその他の速度は、加速度は油圧制動手段の効率にのみ起因すると想定され、これら2つの測定は、運転者によって適用される同一の制動設定点値に対して行われる、測定ステップ;
−測定された加速度の割合の確立によって制動効率の割合を算出するステップ;
−制動効率の割合を油圧制動制御に適用するステップ。
【0012】
そこで、この方法は、ゼロまで低減されたギャップに収束するまで反復される。
【0013】
測定の状態を得ることは難しく、収束は比較的緩やかであり、さらに、測定の状態に大いに依存している。特に測定は、この方法の汎用性に弊害をもたらす速度範囲にわたってセグメント化される。
【0014】
より制約が少なく、かつ効果的な方法が必要とされる。
【0015】
例えば電気制動手段などの回生制動手段、および油圧制動手段などの補助制動手段を備える車両の制動監視方法を提案する。この方法は、以下のステップを含む。
−少なくとも1つの加速度測定値を受信し、この少なくとも1つの測定値は、回生制動手段および/または補助制動システムが車両に制動力を与える制動推移の間に測定され、
−受信した加速度値ごとに、回生制動手段によって適用されたトルク値、および前記加速度値の測定の時点に対応する補助制動手段を対象とした補助制動設定点値を受信し、
−この少なくとも1つの受信した加速度測定値、回生制動手段によって適用されたこの少なくとも1つの受信したトルク値、およびこの少なくとも1つの受信した補助制動設定点値に基づいて補助制動手段の効率係数を推定する。
【0016】
したがって、例えば電動モータトルクなどの回生制動手段によって適用されるトルクと、補助制動設定点とを含むことによって、この方法は、制動推移の任意の時点における補助制動手段の効率係数を推定することができる。それゆえ、加速度測定の時点または複数の時点を、車両の速度とは独立して選択することができる。さらに、従来技術とは異なって、この推移の間に、運転者によるペダルの踏み込みは実際に推定に影響を与えることなく変化し得る。したがって、この方法は、従来技術より多くの測定点を使用することができるため有利である。
【0017】
効率係数が推定されると、この効率を考慮するために補助制動設定点値の補正ステップを提供することが可能になり、それゆえ、ユーザのより良い快適性を確保する。
【0018】
また、推定された効率係数に基づくブレーキパッドの摩耗検出が可能になり、交換が必要であることを示す信号への警報信号の伝送が可能になる。これにより、実際の摩耗に適した保守管理を可能にし得る。したがって、「制動の監視」は、「制動の制御」だけでなく「制動の管理」を意味すると理解することができる。
【0019】
例えば、電動モータトルク値を測定してもよい。
【0020】
あるいは、このトルク値は電気制動手段を対象とした電気制動設定点値と等しいと推定され得る。換言すれば、電気制動手段の効率は1%(または100%)であると推定される。
【0021】
他の実施形態によれば、例えばさらに加速度測定を行うことで、同様に推定されることになる回生制動の効率係数を備えることが可能になる。
【0022】
電気および補助制動設定点値は、回生制動手段と補助制動手段との間で包括制動制御を分配する装置によって判定されてもよい。この分配装置は、所与のペダルの踏み込みに対応する包括制動制御値を入力として受信し、この制御値および例えば車両の速度、インジケータ信号の安定性などその他のパラメータから回生制動設定点値および補助制動設定点値を判定する。この分配装置は、特に14km/h〜7km/hの間で、全電気制動から全油圧制動の遷移を制御することができる。
【0023】
上述の推定ステップは、力学の原理の適用に依拠してもよい。
【0024】
有利に、かつ非限定的には、少なくとも1対の、2つの加速度測定値を受信し、この少なくとも1対の加速度測定値にそれぞれ基づく少なくとも1つの加速度変動値を算出してもよい。効率係数は、この少なくとも1つの加速度変動値、回生制動手段によって適用される少なくとも1つのトルク変動値、および少なくとも1つの補助制動設定点変動値基づいて推定されてもよい。
【0025】
有利に、かつ非限定的には、少なくとも1対の加速度測定値について、この1対の値に対応する2つの測定時点は相対的に接近しており、すなわち、無視することができる車両の外側の動的パラメータの変動に対して十分に接近している。
【0026】
これら2つの測定時点の間の時間は、例えば5秒未満であってもよく、有利には2秒未満、有利には1秒未満、有利には0.5秒未満であってもよく、有利には0.0001秒を超えてもよい。
【0027】
これにより、風力および風向、道路の状態、道路勾配などの車両の加速に影響を及ぼす可能性のある任意の外部動的パラメータを考慮することなく、測定時点を選択することが可能になる。
【0028】
有利に、かつ非限定的には、複数の加速度測定値、複数の対応する補助制動設定点値、および回生制動手段によって適用された複数の対応するトルク値を受信してもよい。
【0029】
有利に、かつ非限定的には、制動係数の統計値を推定することが可能である。これにより、非常に低い値による除算ステップの実行に関連する推定の急激な変動を回避することができる。
【0030】
あるいは、所与の時点または1組の所与の時点に対応する1組の値(加速度測定値、回生制動トルク値、補助制動設定点値)に基づいて、各効率係数値を判定することを提供することが当然可能である。この方法で得られた効率係数の値は、任意の外部動的パラメータおよび/またはゼロに近い値による任意の除算によってもたらされる誤差のため、経時的に変化する可能性があるので、これらの値をフィルタリングおよび/または平均化することが可能になる。
【0031】
有利に、かつ非限定的には、推定ステップはまた、車両の物理的パラメータ、例えば車両の重量および車両のホイールの半径の関数であってもよい。
【0032】
有利に、かつ非限定的には、この方法は、複数の1対の加速度測定値の受信を含んでもよく、推定は、この複数の1対の値の関数として行われる。
【0033】
有利に、かつ非限定的には、推定ステップはまた、補助制動手段の少なくとも1つの前回の効率係数の関数であってもよい。
【0034】
有利に、かつ非限定的には、推定ステップは、最小2乗法に従って行われる。
【0035】
有利に、かつ非限定的には、推定ステップは、再帰的最小2乗法に従って行われる。
【0036】
有利に、かつ非限定的には、推定ステップは、忘却係数を含む再帰的最小2乗法に従って行われる。
【0037】
忘却係数は、有利に変化可能あるいは調整可能であってもよい。忘却係数を所望の適用に従って調整してもよい。例えば、ブレーキパッドの摩耗を推定するために、ほぼ10日程度の相対的長時定数に対応する忘却係数を選択することが可能である。油圧アクチュエータの効率を温度およびその他の条件に適応させるために、数分の時定数を選択することができる。
【0038】
有利に、かつ非限定的には、忘却係数の値を実行時間の関数として判定してもよい。忘却係数は、起動時に低く、その後に段階的に増加するように選択されてもよい。これにより、推定の収束速度を適合させることができる。
【0039】
有利に、かつ非限定的には、忘却係数の値を、補助制動手段の効率に影響を及ぼす可能性のある、車両の長い不使用期間、温度変化、パッドの交換などのその他の条件の関数としてさらに判定してもよい。
【0040】
有利に、かつ非限定的には、忘却係数は0.9〜1の間であってもよく、1の値は除外される。
【0041】
本発明は最小2乗法の選択によって限定されるものではなく、統計的方法の選択によっても限定されるものではない。
【0042】
特に、以下のステップを実行してもよい。
−少なくとも2つの連続する時点の間で、包括制動ドラッグ変動を測定し、変動は、摩擦制動トルクの変動、電動モータトルクの変動、および車両の寸法の物理的パラメータおよび外部動的パラメータの関数として確立される;
−前記少なくとも2つの連続する時点の間で、包括制動軌跡変動、電動モータトルク変動、および前記車両の外部動的パラメータの変動の一次関数に従って、摩擦制動システムによってもたらされる軌跡変動と、摩擦制動トルク設定点値および制動効率の係数との積として確立された、摩擦制動システムによってもたらされる軌跡変動を確立し;
−連続する制動推移の間に、制動係数の統計値を算出するために前回のステップを反復する。
【0043】
例えば電気制動手段などの回生制動手段および油圧制動手段などの補助制動手段を備える、車両の制動監視装置を提案する。この装置は、以下のものを含む。
−少なくとも1つの車両加速度測定値を受信する手段であって、前記少なくとも1つの測定値は、回生制動手段および/または補助制動システムが車両に制動力を与える制動推移の間に測定され、
−回生制動手段によって適用された少なくとも1つのトルク値、および補助制動手段を対象とした少なくとも1つの補助制動設定点値を受信する手段であって、前記少なくとも1つのトルク値および設定点値は、前記少なくとも1つの加速度値の測定時点に対応し、
−前記少なくとも1つの受信した加速度測定値、回生制動手段によって適用された前記少なくとも1つの受信したトルク値、および前記少なくとも1つの受信した補助制動設定点値に基づいて補助制動手段の効率係数を推定する処理手段。
【0044】
この装置は、上述の方法を実行することができるように設けられてもよい。
【0045】
この装置は、例えばマイクロコントローラ、マイクロプロセッサあるいはDSP(デジタル信号プロセッサ)などのプロセッサを含むか、このようなプロセッサに組み込まれてもよい。
【0046】
受信手段は、例えば入力ポート、第1プロセッサまたは同様のものを備えてもよく、処理手段は、例えばプロセッサコア、第2プロセッサまたは同様のものを備えてもよい。
【0047】
また、制動制御システムは、回生制動手段と補助制動手段との間の包括制動制御のための装置、および上述の監視装置を備えてもよい。
【0048】
また、提案される車両は、回生制動手段、補助制動手段、および上述の装置および/またはシステムを備える。
【0049】
本発明の目的である方法および装置が、上述の
図1に加えて、説明を読み、以下の図面を観察することでより良好に理解される。