【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2012年6月25日、ラスベガス コンベンション センター(アメリカ合衆国ネバダ州ラスベガス)において開催されたIFT 12 アニュアル ミーティング+フード エキスポで発表
【文献】
高麗人参料理を作ってみよう,健康食 韓国料理[online],2012年 8月17日,検索日2016年 3月 3日,URL,https://web.archive.org/web/20120817021648/http://www.ajinomoto.co.jp/cookdo/korea/m01/03before/03.htm
【文献】
Plant Cell, Tissue and Organ Culture,2009年,Vol. 98,pp. 25-33
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記タンパク質が、プロトパナキサジオール(PPD)-タイプのギンセノシドのC-3番位置に糖転移活性を持つ請求項1に記載の単離されたUDP-糖転移酵素タンパク質。
前期グリコシル化されたギンセノシドの製造が、ギンセノシドRh2からギンセノシドRg3への転換又はギンセノシドF2からギンセノシドRdへの転換を含む請求項7に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
一態様として、本発明は、チョウセンニンジン由来の新規ウリジン二リン酸(UDP)-糖転移酵素(UGT)を提供する。
【0018】
本発明における用語「ウリジン二リン酸(UDP)-糖転移酵素」とは、グリコシル供与体からグリコシル受容体分子に単糖類モイエティの伝達を触媒する酵素で、具体的に、UDP-糖をグリコシル供与体として使用する酵素を意味する。本発明において、前記UDP-糖転移酵素は、UGTと混用され得る。前記UDP-糖転移酵素は、プロトパナキサジオール(PPD)及びプロトパナキサトリオール(PPT)の様々なグリコシル化を触媒して様々な種類のギンセノシドを生産すると考えられる。しかし、これらの酵素がUDP-糖転移酵素活性を有しても、酵素の種類によって、異なる基質特異性及び位置選択性を持つ。従って、前記酵素が、チョウセンニンジンのサポニンであるギンセノシドに特異的に作用するUDP-糖転移酵素であるか否かを解明する必要がある。前記PPD-タイプのギンセノシドのC-3番位置のO-グリコシドに特異的に作用し、糖モイエティを伝達してギンセノシドRh2又はF2からギンセノシドRg3又はRdを生産するチョウセンニンジン由来のUDP-糖転移酵素に関する報告はなされておらず、前記UDP-糖転移酵素は、本発明者らによって初めて解明された。
【0019】
本発明の目的上、前記UDP-糖転移酵素は、チョウセンニンジン由来のUDP-糖転移酵素であり、好ましくは、コウライニンジン(panax ginseng)由来のUDP-糖転移酵素であり、より好ましくは、配列番号1のアミノ酸配列で表されるUDP-糖転移酵素であってもよいが、それらに制限されるものではない。本発明の一実施例において、配列番号1のアミノ酸配列で表されるUDP-糖転移酵素を、PgUGT94B1と命名した。
【0020】
前記UDP-糖転移酵素は、配列番号1のアミノ酸配列を持つタンパク質で、また、配列番号1のアミノ酸配列に対して、70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上及び最も好ましくは99%以上の配列相同性を持つアミノ酸配列を意味する。しかし、実質的に糖をチョウセンニンジンのギンセノシドに伝達可能なUDP-糖転移酵素活性を持つタンパク質であれば、制限なく使用できる。さらに、実質的にUDP-糖転移酵素と同程度又はそれに相応する生理活性を有する前記のような配列相同性を持つ前記タンパク質の場合は、アミノ酸配列の一部が、欠失、修飾、置換又は付加された部分を持つタンパク質の変異体であっても、本発明の範囲内に含まれる。
【0021】
本発明における用語「相同性」とは、天然型タンパク質又はそれをコードするヌクレオチド配列のアミノ酸配列に対する類似性の程度を示し、本発明のアミノ酸配列又は塩基配列を持つ前記のようなパーセンテージ以上の相同性を持つ配列を含む。相同性の比較は、肉眼又は容易に利用可能な配列比較プログラムによって行うことができる。
【0022】
好ましくは、本発明の前記UDP-糖転移酵素は、PPD-タイプのギンセノシドをグリコシル化されたギンセノシドに転換する活性を持つタンパク質を意味するが、それらに制限されるものではない。
【0023】
本発明における用語「PPD-タイプのギンセノシド」とは、ダンマラン-タイプのサポニンであり、その非糖部分(アグリコン)に2つのヒドロキシ基(-OH)を持つギンセノシドを意味し、その例として、PPD(プロトパナキサジオール)、Rb1、Rb2、Rb3、Rc、Rd、Ra3、Rg3、Rh2、Rs1、C-O、C-Y、C-Mc1、C-Mc、F2、C-K、ギペノシドXVII、ギペノシドLXXV及びRs2を含む。本発明の目的上、前記PPD-タイプのギンセノシドは、本発明のUDP-糖転移酵素によってグリコシル化され得るギンセノシドであれば、制限されることなく、任意のギンセノシドであってもよい。前記PPD-タイプのギンセノシドは、好ましくは、β1,2-グリコシル化され得るギンセノシドであり、より好ましくは、C-3番位置のO-グリコシドにグリコシル化され得るギンセノシドであり、最も好ましくは、ギンセノシドRh2又はF2であるが、それらに制限されるものではない。本発明の一実施例において、本発明のUDP-糖転移酵素であるPgUGT94B1によってグリコシル化され得る代表的なPPD-タイプのギンセノシドとしてギンセノシドRh2及びギンセノシドF2を使用した。ギンセノシド構造の概略図を
図1に示す。
【0024】
本発明における用語「グリコシル化されたギンセノシド」とは、ギンセノシドを構成する非糖部分(アグリコン)のヒドロキシ基に付着した単糖類又はより大きい糖分子を持つギンセノシドを意味し、その例として、ギンセノシドRg3又はRdがあるが、それらに制限されるものではない。本発明の目的上、グリコシル化されたギンセノシドは、本発明のUDP-糖転移酵素によってグリコシル化されるギンセノシドであれば、制限されることなく、任意のグリコシル化されたギンセノシドを含む。前記グリコシル化されたギンセノシドは、好ましくは、β1,2-グリコシド結合を持つギンセノシドを意味し、さらに好ましくは、C-3番位置の二糖類以上の糖類の糖を持つギンセノシドであるが、それらに制限されるものではない。本発明の一実施例において、ギンセノシドRh2及びF2は、PgUGT94B1の活性によって、グリコシル化されたギンセノシドであるRg3及びRdにそれぞれ転換される。
【0025】
特に、本発明の前記UDP-糖転移酵素は、糖モイエティを糖供与体であるUDP-糖から糖受容体である3-O-グリコシル化されたギンセノシドに伝達する活性を持つため、β1,2-グリコシド結合を形成して、3-O-グリコシル化されたギンセノシドをグリコシル化されたギンセノシドに転換する。
【0026】
具体的に、UDP-糖転移酵素の糖受容体は、3-O-グリコシル化されたギンセノシドであり、前期糖受容体は、好ましくはギンセノシドRh2又はF2であるが、それらに制限されるものではない。つまり、糖転移酵素は、ギンセノシドRh2のC-3番位置のO-グリコシドにβ1,2グリコシド結合を形成することによって糖転移活性を持つため、ギンセノシドRh2をギンセノシドRg3に転換することができる。さらに、前期糖転移酵素は、ギンセノシドF2のC-3番位置のO-グリコシドにβ1,2グリコシド結合を形成することによって糖転移活性を持つため、ギンセノシドF2をRdに転換することができる。
【0027】
前期UDP-糖転移酵素は、C-3番位置のO-グリコシドに作用してグリコシル化を触媒するが、C-K又はギンセノシドF2のC-20番位置におけるO-グリコシドのグリコシル化は触媒しない。本発明の前期UDP-糖転移酵素は、PPD-タイプのギンセノシド、特に、ギンセノシドRh2又はF2のC-3番位置のO-グリコシドに対する基質特異性及び位置選択性を持つため、特定のギンセノシド、好ましくはギンセノシドRh2からギンセノシドRg3、又はギンセノシドF2からギンセノシドRdへの転換に利用することができる。
【0028】
本発明の一実施例において、新規UDP-糖転移酵素であるPgUGT94B1は、チョウセンニンジンから新たに単離され(実施例1)、前記配列分析の結果から、前記糖転移酵素がUGT94ファミリーのクラスターであることを確認した(実験例1及び
図2)。さらに、糖転移酵素は、位置選択的にPPD-タイプのギンセノシドに作用し、1つのグルコースをC-3番位置のO-グリコシドに伝達するため、グリコシル化されたギンセノシドを生産することができる(実験例3及び4;及び
図4及び5)。PgUGT94B1タンパク質の酵素活性は、
図7に示す。
【0029】
他の態様として、本発明は、前記UDP-糖転移酵素をコードするポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含む発現ベクター及び前記発現ベクターが導入された形質転換体を提供する
【0030】
前記UDP-糖転移酵素は、前述のとおりである。
【0031】
前記UDP-糖転移酵素をコードするポリヌクレオチドは、配列番号2のヌクレオチド配列に対して、配列番号2のヌクレオチド配列で表されるポリヌクレオチドであることが好ましく、さらに、70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上及び最も好ましくは98%以上の配列相同性を持つ任意のヌクレオチド配列で、実質的に、UDP-糖転移酵素活性を持つタンパク質をコードすることができるものであれば、制限されることなく含まれる。
【0032】
本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクターは、適切な宿主細胞内で目的のタンパク質を発現させることができるベクターであり、核酸挿入物が、発現可能な必須の調節要素を含むDNAコンストラクトを意味する。前記目的のタンパク質は、前記製造した組み換えベクターを宿主細胞に形質転換又は形質移入することによって獲得することができる。
【0033】
本発明のポリヌクレオチドを含む前記発現ベクターは、それらに制限されないが、大腸菌由来のプラスミド(pYG601BR322、pBR325、pUC118及びpUC119)、枯草菌(Bacillus subtilis)由来のプラスミド(pUB110及びpTP5)、酵母由来のプラスミド(YEp13、YEp24及びYCp50)及びアグロバクテリウム(Agrobacterium)を介した形質転換に用いられるTiプラスミドを含む。ファージDNAの具体的な例としては、λファージ(Charon4A、Charon21A、EMBL3、EMBL4、λgt10、λgt11及びλZAP)を含む。さらに、レトロウィルス、アデノウィルス又はワクチニアウイルスなどの動物ウィルス、バキュロウイルスなどの昆虫ウィルス、二本鎖植物ウィルス(例、CaMV)、一本鎖ウィルス又はジェミニウイルスから由来するウィルスベクターが使用され得る。
【0034】
さらに、本発明のベクターとして、B42を結合させた融合プラスミド(例、pJG4-5)などの転写活性化
因子を使用してもよい。本発明で獲得した目的のタンパク質の精製を容易にするために、前記プラスミドベクターは、必要に応じてさらに他の配列を含んでもよい。前記融合プラスミドは、GST、GFP、 Hisタグ(His-tag)、Mycタグ(Myc-tag)などのタグを含んでもよいが、本発明の融合プラスミドは、これらの実施例に制限されるものではない。本発明の一実施例において、GST遺伝子が融合されたベクターであるpGEX4T-1が、UDP-糖転移酵素をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターのコンストラクションとして使用された。
【0035】
さらに、融合配列を含むベクターによって発現される前記融合タンパク質は、親和性クロマトグラフィーにより精製してもよい。例えば、グルタチオン-S-トランスフェラーゼが、他の配列に融合される場合、この酵素の基質であるグルタチオンを使用してもよい。ヘキサヒスチジンが目的のタンパク質に対するタグとして使用される場合、前記目的のタンパク質は、Ni-NTA His-結合レジンカラム(Novagen社製、アメリカ)を用いることで、容易に精製することができる。
【0036】
本発明のポリヌクレオチドをベクターに挿入するために、精製したDNAを、適切な制限酵素を使用して切断し、適切なベクターDNAの制限部位又はクローニング部位に挿入してもよい。
【0037】
本発明のUDP-糖転移酵素をコードするポリヌクレオチドは、ベクターに作動可能に連結され得る。本発明のベクターは、本発明のプロモーター及び核酸以外に、エンハンサーなどのシス要素、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、リボソーム結合配列(SD配列)などをさらに含んでもよい。選択マーカーの例として、クロラムフェニコール耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ジヒドロ葉酸レダクターゼ、ネオマイシン耐性遺伝子などが使用され得るが、作動可能に連結された追加的な要素の種類は、これらの例で制限されるものではない。
【0038】
本発明における用語「形質転換」とは、DNAを宿主細胞に挿入し、DNAが染色体外因子として又は染色体組込によって複製可能なことを意味する。すなわち、形質転換は、外来のDNAを細胞に導入することによる遺伝子の合成的変化を意味する。
【0039】
本発明の形質転換は、任意の形質転換方法によって行ってもよく、以下のように当分野に公知の通常の方法によって容易に行うことができる。一般的に、形質転換方法の例としては、CaCl
2沈澱法、還元物質としてDMSO(ジメチルスルホキシド)を用いることによってCaCl
2法を改善させたHanahan法、エレクトロポレーション(electroporation)、リン酸カルシウム沈殿法、原形質体融合法、シリコンカーバイド繊維(silicon carbide fiber)を用いた攪拌法、アグロバクテリウムを介した形質転換法、PEGを介した形質転換法、デキストラン硫酸-、リポフェクタミン-及び乾燥/抑制を介した形質転換を含む。本発明のUDP-糖転移酵素をコードするポリヌクレオチドを含むベクターの形質転換方法は、これらの例で制限されるものではなく、また、前記形質転換又は形質移入法は、制限されることなく、当分野において通常用いられる。
【0040】
本発明において、宿主細胞の種類は、本発明のポリヌクレオチドを発現できるものであれば、特に制限されない。本発明で使用可能な宿主細胞の具体的な例としは、大腸菌(E.coli)などのエシェリヒアコリ属(genus Escherichia)に属するバクテリア;枯草菌(Bacillus subtilis)などのバチルス属(genus Bacillus)に属するバクテリア;シュードモナス‐プチダ(Pseudomonas putida)などの緑膿菌属(genus Pseudomonas)に属するバクテリア;サッカロマイセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)及びシゾサッカロミセスポンベ(Schizosaccharomyces pombe)などの酵母;動物細胞、植物細胞及び昆虫細胞を含む。本発明で使用され得る大腸菌株の具体的な例としては、CL41(DE3)、BL21及びHB101を含み、枯草菌株の具体的な例としては、WB700及びLKS87を含む。本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクターが導入された植物の形質転換体の種類は、本発明の糖転移酵素を発現できるものであれば、特に制限されない。それらの例としては、タバコ(tobacco)、シロイヌナズナ、ポテト(potato)、チョウセンニンジン、ゴマ(sesame)、シトロン(citron)、ヒナギク(Bellis)などを含むが、それらに制限されるものではない。
【0041】
本発明のプロモーターとして、宿主細胞で本発明の核酸を発現できるものであれば、任意のプロモーターも使用され得る。例えば、trpプロモーター、lacプロモーター、PLプロモータ及びPRプロモーターなどの大腸菌又はファージ由来のプロモーター;T7プロモーター、CaMV35S、MAS又はヒストンプロモーターなどの大腸菌感染ファージ由来のプロモーターが使用可能である。tacプロモーターなどの合成的に修飾されたプロモーターも使用することができる。
【0042】
前記の方法による本発明のUDP-糖転移酵素タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターが導入された形質転換体は、PPD-タイプのギンセノシドのC-3番位置にβ-1,2-グリコシド結合を形成することでグルコースを伝達する生物学的活性を持つ。好ましくは、前記形質転換体は、ギンセノシドRh2からギンセノシドRg3への転換又はギンセノシドF2からギンセノシドRdへの転換可能な能力を持つ形質転換体を意味するが、それらに制限されるものではない。
【0043】
他の態様として、本発明は、UDP-糖転移酵素タンパク質を製造する方法を提供する。
【0044】
前記UDP-糖転移酵素は、前述のとおりである。
【0045】
好ましくは、前記製造方法は、UDP-糖転移酵素をコードするポリヌクレオチドを含むベクターが導入された形質転換体を培養する(a);前記培養した形質転換体からUDP-糖転移酵素を生産する(b);及び前記生産したUDP-糖転移酵素を回収することを含む。
【0046】
前記形質転換体の培養は、当分野で使用される以下の通常の方法で行うことができる。形質転換体の増殖培地に含まれる炭素源は、形質転換体の種類に応じて当分野の当業者によって選択される。そして、培養時期と量を調節するために、好適培養条件が選択される。
【0047】
他の様態として、本発明は、前記UDP-糖転移酵素、前記形質転換体又はその培養物を用いてPPD(プロトパナキサジオール)-タイプのギンセノシドを転換して、グリコシル化されたギンセノシドを製造する方法を提供する。
【0048】
前記UDP-糖転移酵素、形質転換体、PPD-タイプのギンセノシド及びグリコシル化されたギンセノシドは前述のとおりである。
【0049】
より具体的に、前記方法は、PPD-タイプのギンセノシドが、配列番号1のアミノ酸配列で表されるUDP-糖転移酵素タンパク質、前記タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターが導入された形質転換体又はUDP-糖の存在下で形質転換体の培養物と反応する段階を含む。
【0050】
本発明における用語「形質転換体の培養物」とは、微生物を培養する公知の方法によって形質転換体を培養して獲得した生成物を意味する。前記培養物は、本発明の配列番号1のUDP-糖転移酵素を含むため、PPD-タイプのギンセノシドをグリコシル化されたギンセノシドに転換し、例えば、ギンセノシドRh2からRg3への転換又はギンセノシドF2からRdへの転換が可能である。
【0051】
本発明の出発物質として用いたPPD-タイプのギンセノシドとして、単離及び精製したギンセノシド又はチョウセンニンジンの粉末、或いは抽出物に含まれるギンセノシドを使用することができる。すなわち、ギンセノシドを含むチョウセンニンジンの粉末、或いは抽出物は、本発明の方法を行うための出発物質として直接使用してもよい。本発明で使用されるチョウセンニンジンには、コウライニンジン(Panax ginseng)、アメリカニンジン(P. quiquefolius)、サンシチニンジン(P. notoginseng)、トチバニンジン(P. japonicus)、三葉参(P. trifolium)、ヒマラヤ参(P. pseudoginseng)及びベトナム人参(P. vietnamensis)などのチョウセンニンジンの公知の様々な種類を含むが、それらに制限されるものではない。
【0052】
好ましくは、前記転換は、本発明のUDP-糖転移酵素、前記UDP-糖転移酵素をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターが導入された形質転換体又は前記転換体の培養物によって、PPD-タイプのギンセノシドからグリコシル化されたギンセノシドへの生物変換反応を通じて起こり、糖をギンセノシドのC-3番位置のO-グリコシドに伝達することで達成できる。本発明の配列番号1のアミノ酸配列で表される前記タンパク質は、C-3番位置のO-グリコシドを持つPPD-タイプのギンセノシド、好ましくはギンセノシドRh2又はRdをグリコシル化されたギンセノシドに転換することができる。本発明の配列番号1のアミノ酸配列で表されるタンパク質による生物変換反応は、ギンセノシドRh2からRg3への転換及びギンセノシドF2からRdへの転換を含む。従って、本発明の前記方法は、グリコシル化されたギンセノシド、特に、ギンセノシドRg3又はRdは、必要とされる分野で使用することができる。
【0053】
グリコシル化されたギンセノシドを製造する方法は、PPD-タイプのギンセノシドが、配列番号1のUDP-糖転移酵素、配列番号1のUDP-糖転移酵素をコードするポリヌクレオチドを含むベクターが導入された形質転換体又は前記形質転換体の培養物と反応する段階において、配列番号3のアミノ酸配列で表される前記UDP-糖転移酵素タンパク質、前記タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターが導入された形質転換体又は前記形質転換体の培養物が、PPD-タイプのギンセノシドと反応する段階をさらに含んでもよい。
【0054】
本発明のおける用語「配列番号3のアミノ酸配列で表されるUDP-糖転移酵素」とは、O-グリコシド結合を形成することで、糖モイエティをUDP-糖からC-3番位置にヒドロキシ基を持つギンセノシドに伝達できる酵素を意味する。配列番号3のアミノ酸配列で表される前記UDP-糖転移酵素は、糖モイエティをUDP-糖などの糖供与体からC-3番位置にヒドロキシ基を持つギンセノシドのような糖受容体に伝達する能力を持つため、O-グリコシド結合の形成が生じる。すなわち、C-3番位置にヒドロキシ基を持つギンセノシドを3-O-グリコシドを持つギンセノシドに転換する。配列番号3のアミノ酸配列で表されるUDP-糖転移酵素は、本発明者らによって初めて単離されたチョウセンニンジン由来の糖転移酵素であり、本発明のPgUGT74A1と混用され得る。
【0055】
配列番号3のアミノ酸配列で表されるUDP-糖転移酵素の糖受容体は、ギンセノシドのC-3番位置のヒドロキシ基であり、好ましくは、PPD又はC-Kであるが、それらに制限されるものではない。従って、糖転移酵素は、PPDのC-3番位置のヒドロキシ基にO-グリコシド結合を形成することで、糖モイエティを伝達する活性を持つため、PPDをギンセノシドRh2に転換することができる。同様に、糖転移酵素は、C-KのC-3番位置のヒドロキシ基にO-グリコシド結合を形成することで、糖モイエティを伝達する活性を持つため、C-KをギンセノシドF2に転換することができる。
【0056】
従って、PPD-タイプのギンセノシドのC-3番位置のO-グリコシドに特異的に作用するUDP-糖転移酵素及び配列番号3のアミノ酸配列で表されるUDP-糖転移酵素の両方のUDP-糖転移酵素を使用する場合、PPDは、ギンセノシドRh2に転換され、その次にRg3に転換される。これらのプロセスを通じて、PPDをギンセノシドRg3に転換することができる。C-Kを出発物質として使用する場合、C-Kは、本発明の転移酵素によってギンセノシドF2に転換され、その次にギンセノシドRdに転換される。これらのプロセスを通じて、C-KをギンセノシドRdに転換することができる。本発明の一実施例において、PgUGT74A1及びPgUGT94B1の両方を、PPDからギンセノシドRg3への転換及びC-KからギンセノシドRdへの転換に使用し、前記の両酵素を、ギンセノシドRg3及びRdを高効率で生産するのに使用できることを確認した(
図5)。
【0057】
他の態様として、本発明は、配列番号1のアミノ酸配列で表されるUDP-糖転移酵素タンパク質、前記形質転換体又はその培養物を有効成分として含むPPD(プロトパナキサジオール)-タイプのギンセノシドをグリコシル化されたギンセノシドに転換する組成物を提供する。
【0058】
前記UDP-糖転移酵素タンパク質、前記形質転換体及びその培養物;及びPPD-タイプのギンセノシドからグリコシル化されたギンセノシドへの転換は、前述のとおりである。前記組成物は、配列番号3アミノ酸配列で表されるのUDP-糖転移酵素、配列番号3のUDP-糖転移酵素をコードするポリヌクレオチドを含む前記ベクターが導入された形質転換体又は前記形質転換体の培養物であるUDP-糖転移酵素をさらに含んでもよい。
【0059】
本発明の配列番号1のアミノ酸配列で表されるUDP-糖転移酵素は、PPD-タイプのギンセノシドのC-3番位置のO-グリコシドに選択的に1つの糖モイエティを伝達するため、ギンセノシドRg3又はRdなどのC-3番位置にグリコシル化されたギンセノシドを生産するのに使用することができる。
【0060】
他の態様として、本発明は、チョウセンニンジンにジャスモン酸メチル(MeJA)という化合物を処理することを含む、チョウセンニンジンの前記UDP-糖転移酵素の発現を増加させる方法を提供する。
【0061】
前記UDP-糖転移酵素は、前述のとおりである。
【0062】
本発明のおける用語「 MeJA(ジャスモン酸メチル)」とは、植物防御及び根の成長などの様々な成長経路に関与する揮発性の有機化合物である。MeJAは、メチル(1R、2R)-3-オキソ-2-(2Z)-2- ペンテニル-シクロペンタン酢酸塩と混用して使用することができ、化学構造は以下のとおりである。
〔化学式1〕
【0063】
本発明の目的上、MeJAは、PgUGT94B1の発現を増加させることができる化合物を意味する。MeJAをチョウセンニンジンの葉に噴射すると、PgUGT94B1の発現が増加する。従って、チョウセンニンジンにMeJAを噴射することで、本発明のPgUGT94B1の発現が増加するため、MeJAを、ギンセノシドの生産に有用に利用することができる。本発明の一実施例において、MeJA処理でPgUGT94B1の発現が大幅に増加することを確認した(
図6B)。
【0064】
他の態様として、本発明は、有効成分としてMeJAを含むUDP-糖転移酵素の発現を増加させる組成物を提供する。
【0065】
MeJA及びUDP-糖転移酵素は、前述のとおりである。
【0066】
さらに、MeJAが、本発明のPgUGT94B1の発現を増加させることができることから、有効成分としてMeJAを含む本発明の組成物は、PgUGT94B1の発現を増加させるために使用することができ、好ましくは、チョウセンニンジンに適用してPgUGT94B1の発現を増加させることができる。
【0067】
本発明は、以下に提供する実施例を通じてより詳しく説明する。しかし、これらの実施例は、例示するためのものであって、請求項の発明を限定するためのものではない。
【0068】
実施例1:チョウセンニンジンのUDP-糖転移酵素(PgUGT)のクローニング及び精製
チョウセンニンジンのESTライブラリーから同定した2種類のUGT遺伝子は、以下の表1(配列番号5及び6、配列番号7及び8)で表したプライマーセットを用いてpGEX4T-1ベクターにクローニングし、それぞれをPgUGT74A1及びPgUGT94B1と命名した。
【0070】
前記組み換えタンパク質であるPgUGT74A1及びPgUGT94B1を形質移入した前記大腸菌細胞(E.coli BL21-CodonPlus(DE3)-RIL)を50μg/mLのアンピシリン及び34μg/mLのクロラムフェニコールが供給されたLB培地で培養した。その後、細胞培養物から前記タンパク質を精製した。
【0071】
目的の遺伝子の発現は、0.1mMのIPTGで誘導した。その後、細胞培養物を4℃で15分間、2,500gで遠心分離して前記細胞のペレットを分離した。前記回収した細胞ペレットを10mMのPBS緩衝溶液(pH7.0)に懸濁し、前記細胞を超音波処理により破砕した(Vibra-cell、Sonics&Matreials、CT)。破砕されてない細胞及び細胞破壊片は、前記サンプルを4℃で15分間、10,000gで遠心分離して除去し、上清液(Resulting supernatant)を0.45μmの細孔サイズのシリンジフィルターに通してさらに精製した。前記組み換え体タンパク質を無細胞抽出物からグルタチオン-セファロース親和性クロマトグラフィー(GE Healthcare)により精製した。
【0072】
実施例2:In vitro 酵素アッセイ
糖転移酵素アッセイは、精製したPgUGT74A1又はPgUGT94B1(30μg)、ギンセノシド化合物(5mM)及びUDP-グルコース(50mM)を含む反応緩衝溶液(10mMのPBS緩衝溶液、pH 7)で行った。これらのアッセイのために、PPD(プロトパナキサジオール)、PPT(プロトパナキサトリオール)、化合物K(C-K)、ギンセノシドRg3、Rh2、F2、Rd、Rg2、Rh1及びF1を含む異なる10種類のギンセノシドを使用した。前記ギンセノシドの構造を
図1に示す。
【0073】
反応混合物を35℃で12時間培養した後、その生成物を薄層クロマトグラフィー(TLC)又は高速液体クロマト
グラフィー(HPLC)により分析した。
【0074】
TLC分析は、移動相(アセトン:メタノール:DDW=65:35:10(vol/vol)及び60F
254シリカゲルプレート(Merck, ドイツ)を使用して行った。TLCプレートに溶解された生成物は、TLCプレートに10%(vol/vol)硫酸(H
2SO
4)を噴射して検出し、110℃で5分間加熱した。
【0075】
HPLC分析は、ODS(2)C18カラム(Phenomenex社製 、アメリカ)を用いて行った。水及びアセトニトリルの勾配適用時間;及び成分比率は、以下のとおりである:分当たり1mLの流速で、68%水及び32%アセトニトリル;8分、35%水及び65%アセトニトリル;12分、0%水及び100%アセトニトリル;20分、0%水及び100%アセトニトリル;20.1分、68%水及び32%アセトニトリル;及び28分、68%水及び32%アセトニトリル。
【0076】
ギンセノシドは、UV検出器(Younglin、韓国)を用いて203nmの波長で検出した。
【0077】
実施例3:RNA分離及びReal-time PCRの分析
全RNAは、スペクトラム植物の全RNAキット(シグマアルドリッチ)を用いて15ヶ月齢のチョウセンニンジンの葉又は根から分離した。200μMのジャスモン酸メチル(MeJA)を5日間毎日チョウセンニンジンの葉に噴射し、サンプルを6日目に回収した。全RNAの1μgをcDNA合成に用いた。
【0078】
異なる遺伝子の発現レベルは、下記の表2で表すプライマーセットを用いて定量的RT-PCRにより確認し、その結果をチューブリンの発現レベルで標準化
した。
【0080】
実験例1:UDP-糖転移酵素であるPgUGT74A1及びPgUGT94B1の配列分析
ギンセノシドの生合成に関与するUDP-糖転移酵素(UGT)の役割を解明するために、まず、ESTデータベースの分析を行い、実験例1に記述した方法によりコウライニンジン(Panax ginseng)からUGT遺伝子をクローニングした。その中で、PgUGT74A1及びPgUGT94B1と命名した2種類のUGTの機能を解明するために調査した。
【0081】
配列分析の結果、シロイヌナズナ(A. thaliana)からUGTを含む他の植物由来のUGTと配列相同性で特定されないことが示された(
図2)。より具体的に、PgUGT74A1は、シロイヌナズナのUGT74ファミリーとクラスターを形成する。シロイヌナズナのUGT74ファミリーは、5つのサブファミリー(UGT74B、C、D、E1及びF)に分類され得る7種類のUGTから構成される。PgUGT74A1は、シロイヌナズナのUGT74ファミリーとクラスターを形成するが、いずれの5つのサブファミリーにも属さないため、本発明のPgUGT74A1は、シロイヌナズナの他のサブファミリーとは異なる新しいUGT74サブファミリーに分類される。シロイヌナズナのUGT74ファミリーの中で、UGT74B1は、グリコシルチオエステル(glycosyl thioester)連結を形成して、グルコシノレート(glucosinolate)の前駆体であるフェニルアセト
チオヒドロキシム酸(phenylacetothiohydroximate)をグリコシル化するが、それに対して、UGT74E2は、グリコシルエステル連結を形成して、
インドールブチレート(indole butylate)をグリコシル化する。同様に、UGT74F1及びUGT74F2もグリコシルエステル連結を形成して、サリチラー(salicyclate)及びアントラニレート(anthranilate)をそれぞれグリコシル化する。一方で、UGT74ファミリーのメンバーは、グリコシルエステル連結以外にも、O-グリコシド結合も形成することができる。UGT74F1は、2-O-グリコシド結合を形成して、サリチラート(glycosylate)をグリコシル化することが知られている。さらに、UGT74F1及びUGT74F2は、O-グリコシド結合を形成して、サリチラート及びアントラニレートの両方をグリコシル化することが知られている。
【0082】
従って、シロイヌナズナのUGT74ファミリーに属するUGTでも、グリコシル化を形成させるためのそれらの基質及び結合の種類を同定するために調査する必要がある。
【0083】
さらに、前記分析の結果、PgUGT94B1は、シロイヌナズナのUGT94ファミリーとクラスターを形成しないが、その代わりに、BpUGT94B1(Bellis perennis、ヒナギク)、SiUGT94D1(Sesamumindicum L.、ゴマ)、CaUGT3(Catharanthus roseus、ニチニチソウ)及びCm1,2RhaT(Citrus maxima、晩白柚)のUGT94サブファミリーとはクラスターを形成することが示唆された。その中で、BpUGT94B1は、β1,6結合を形成して、グルクロノシルモイエティをシアニジンの3-O-グルコシドに付加するが、それに対して、SiUGT94D1は、β1,6結合を形成して、グルコースをセサミノールの2-O-グルコシドに付加する。CaUGT3は、β1,6結合を形成して、グルコース分子をケルセチン-3-O-グルコシドに付加するが、それに対して、Cm1,2RhaTは、β1,6結合を形成して、ラムノースをフラボン7-O-グルコシドに付加する。
【0084】
総合的に、前記結果から、PgUGT94B1が属する全てのUGT94ファミリーメンバーが、糖供与体及び受容体の種類に関係なく、2つ目の糖分子をO-グリコシル化された受容体に付加するグリコシル化を触媒することを確認した。
【0085】
これらの結果は、PgUGT74A1が、O-グリコシド結合又はグリコシルエステル連結を形成して、ギンセノシドのグリコシル化を触媒することを示唆するが、それに対して、PgUGT94B1は、β-グリコシド結合を形成して、グリコシル化されたギンセノシドに2つ目の糖を付加するため、グリコシル化を触媒する。
図1のギンセノシド構造に示すように、PPD-タイプのギンセノシドは、C-3又はC-20番位置、或いは両方の位置でO-結合を介してグリコシル化され得るが、それに対して、PPT-タイプのギンセノシドは、C-6又はC-20番位置、或いは両方の位置でO-結合を介してグリコシル化され得る。さらに、ギンセノシドRb1、化合物Y及び化合物Oを含む1つ以上の糖基を持つギンセノシドは、β-1,6結合を介してさらにグリコシル化され得る。
【0086】
配列分析の結果に基づいて、PgUGT74A1及びPgUGT94B1の実際の活性が、以下の実施例によって確認された。
【0087】
実験例2:PgUGT74A1によるPPD及びC-KからギンセノシドRh2及びギンセノシドF2への転換
実験例1の分析結果に基づいて、PgUGT74A1及びPgUGT94B1の基質特異性及び位置選択性が、以下のように確認された。
【0088】
まず、実施例1の組み換えPgUGTであるPgUGT74A1は、UDP-グルコースの存在下で、異なる10種類のギンセノシド(PPD、C-K、Rh2、F2、Rg3、Rd、Rg2、Rh1、F1及びPPT)と共に培養し、組み換えPgUGTによって転換された前記生成物をTLCにより分析した。その結果を
図3aに示した。
【0089】
その結果、PgUGT74A1は、PPD及びC-K以外のギンセノシドを転換しないことから、PgUGT74A1が、高い受容体特性を持つことが示された(
図3a)。前記の結果は、TLCプレート上の移動したスポットで確認された。その結果、PgUGT74A1は、PPD及びC-KをそれぞれギンセノシドRh2及びギンセノシドF2に転換した。
【0090】
前記結果は、
図3bに示すように、高速
液体クロマトグラフィー(HPLC)によりさらに確認した。HPLCの結果は、TLC分析の結果で示すように、本発明のPgUGT74A1が、PPD及びC-KをそれぞれギンセノシドRh2及びF2に転換したことを示した。実施例1のPgUGT94B1は、PgUGT74A1と違って、PPD及びC-Kを他のギンセノシドに転換しなかった(
図3b)。
【0091】
TLC及びHPLCの結果で示すように、PgUGT74A1が、PPD-タイプのギンセノシドであるPPD及びC-KのみをそれぞれギンセノシドRh2及びギンセノシドF2に転換することから、基質特異性を持つことが示された。さらに、グリコシル化される炭素番号を確認すると、O-結合を介してPPD-タイプのギンセノシドのC-3番位置が特異的にグリコシル化されたが、それに対して、PPDのC-12及びC-20番位置のヒドロキシ基(-OH)などの他の位置及びPPTのC-3、C-6、C-12及びC-20番位置のヒドロキシ基(-OH)は、グリコシル化されなかったことから、PgUGT74A1は、PPD-タイプのギンセノシドのC-3番位置に位置選択性を持つことが示唆された。これらの結果から、PgUGT74A1は、O-グリコシド結合を形成してグリコシル化を誘導することが示された。
【0092】
総合的に、前記の結果は、PgUGT74A1が、PPD-タイプのギンセノシドに特異的に作用し、PPD及びC-Kに対して強い基質特異性、並びにC-3番位置のグリコシル化に対して位置選択性を持つことが示された。
【0093】
実験例3:PgUGT94B1によるギンセノシドRh2及びF2からギンセノシドRg3及びRdへの転換
実施例1でクローニングされたPgUGT94B1もPgUGT74A1のような基質特異性及び位置選択性を持つか否かを検討した。
【0094】
まず、実施例1の組み換えPgUGTであるPgUGT94B1を、UDP-グルコースの存在下で、異なる10種類のギンセノシド(PPD、C-K 、Rh2、F2、Rg3、Rd、Rg2、Rh1、F1及びPPT)と共に培養した後、組み換えPgUGTによって転換された前記生成物をTLCにより分析した。その結果を
図4aに示した。
【0095】
その結果、本発明のPgUGT94B1が、ギンセノシドRh2及びF2以外のギンセノシドは転換しなかったことから、PgUGT94B1が、高い受容体特異性を持つことが示唆された(
図4a)。これらの結果は、TLCプレート上の移動したスポットで確認された。その結果、PgUGT94B1は、ギンセノシドRh2及びギンセノシドF2をそれぞれギンセノシドRg3及びギンセノシドRdに転換した。
【0096】
その結果は、
図4bに示すように、HPLCによりさらに確認した。そのHPLCの結果、TLC分析の結果で示したように、PgUGT94B1が、ギンセノシドRh2及びF2を、ギンセノシドRg3及びRdに転換したことが示された。一方で、PgUGT74A1は、実験例2の結果で示したように、ギンセノシドRh2及びF2を転換しなかった(
図4b)。
【0097】
これらの結果によると、PgUGT94B1は、β-1,2結合を形成してRh2及びF2のC-3番位置のO-グリコシドを特異的にグリコシル化するが、C-K及びF2のC-20番位置のO-グリコシドはグリコシル化しなかった。前記の結果から、本発明のPgUGT94B1は、Rh2及びF2に対して基質特異性、並びにC-3番位置のO-グリコシドに対して位置選択性を持つことが示された。
【0098】
実験例4:PgUGT74A1及びPgUGT94B1によるPPD及びC-KからギンセノシドRg3及びRdへの転換
実験例2及び3の結果に基づいて、2種類のPgUGTを同時に使用する場合、チョウセンニンジンのPPDは、ギンセノシドRh2に転換されて、その次にRg3に転換されるため、結果的にPPDからRg3を生産することができる。同様に、両方の酵素を使用する場合、C-Kは、ギンセノシドF2に転換され、その次にRdに転換されるため、結果的にC-KからRdを生産することができる。
【0099】
これらを確認するために、1つの反応チューブでPPDを基質とし、前記の2つの酵素と反応させた。その結果、PPDは見事にRg3に転換されることが示された(
図5の上パネル)。さらに、1つの反応チューブでC-Kを基質とし、2つの酵素と反応させた。その結果、C-Kも見事にRdに転換されることが示された(
図5の下パネル)。
【0100】
前記の結果から、本発明のPgUGT74A1及びPgUGT94B1の組み合わせを用いることで、in vitroにおける1つの反応チューブで、PPD及びC-Kを、それぞれRg3及びRdに転換できることが示された。従って、PgUGT74A1及びPgUGT94B1は、Rg3及びRdの効率的な生産に使用され得る。
【0101】
実験例5:MeJA(ジャスモン酸メチル)によるPgUGT74A1及びPgUGT94B1の発現の増加
本発明のPgUGT74A1及びPgUGT94B1が、伝統的に治療目的で使用されてきたチョウセンニンジンの根で主に発現するか否かを検討した。また、PgDS(dammarenediol-II synthase)、PgPPDS(protopanaxadiol synthase)及びPgPPTS(protopanaxatriol synthase)などの異なる3種類のギンセノシドの生合成遺伝子に加えて、本発明の2種類のPgUGTの器官特異的な発現パターンを測定した。15ヶ月齢のチョウセンニンジンの葉と根を発現分析に使用した。
【0102】
その結果、前記ギンセノシドの生合成遺伝子の全てが、チョウセンニンジンの葉と根で発現し、特にグリコシル化が活性化された根で発現していた(
図6a)。
【0103】
図6aに示すように、目的の5つの遺伝子の全てが、チョウセンニンジンの葉と根で発現していたが、それらの発現レベルは異なっていた。本発明のPgUGT74A1及びPgUGT94B1の発現は、葉より根でより高かった。ギンセノシドの生合成に関するPgDS及びPgPPDS遺伝子は、チョウセンニンジンの葉でより高い発現レベルを示したが、それに対して、PgPPTSは、チョウセンニンジンの根と葉の両方で同程度の発現レベルを示した。これらの結果から、ギンセノシドは、チョウセンニンジンの葉と根の両方で合成されるが、グリコシル化は葉に比べて根でより活発に起こることが示された。
【0104】
ジャスモン酸メチル(MeJA)は、毛状根培養でギンセノシドの生合成遺伝子の発現を増加させることが報告されている。MeJAの効果から理解できるように、本発明のUDP-糖転移酵素の発現が、MeJAによって増加するか否かを測定した。
【0105】
LD条件下において生育箱で15ヶ月齢に成長したチョウセンニンジンを回収し、MeJAを5日間毎日葉に噴射した。ギンセノシドの生合成遺伝子の発現レベルを分析するために、6日目にサンプルを回収した。本発明の2種類のPgUGTは、MeJAで処理したチョウセンニンジンの葉でより高い発現レベルを示したことから、MeJAは、本発明のUGTの発現を促進する能力を持つことが示唆された(
図6b)。前記PgUGTに加えて、 MeJAもPgDS及びPgPPDSの発現を増加させた。しかし、PgPPTSの発現は、本発明の条件下で、MeJAによって誘導されなかった。
【0106】
総合的に、発現分析の結果、ギンセノシド濃度は、MeJAの添加により増加することが示唆された。このことから、チョウセンニンジンの葉にMeJAを噴射した後に4つの主要なギンセノシドの濃度を測定した。MeJAの処理は、2つのPPD-タイプのギンセノシドであるRd及びRb1の濃度をそれぞれ1.55及び1.14倍に増加させた(
図6c)。さらに、MeJAの処理は、2つのPPT-タイプのギンセノシドであるRg1及びReの濃度をそれぞれ2.61及び1.45倍に増加させた。
【0107】
これらの結果は、チョウセンニンジン植物へのMeJAの添加が、様々なギンセノシドの生合成遺伝子の発現を促進することから、チョウセンニンジンにおけるギンセノシドの生産を増加できることを示す。前記結果は、MeJAが、本発明の代表的な糖転移酵素であるPgUGT74A1及びPgUGT94B1の発現を増加させることから、PgUGT74A1及びPgUGT94B1の発現を増加させるのにおいても有用であることを示す。
【0108】
前記の説明に基づいて、当分野の当業者は、本発明の具体例における様々な修正及び変更が、本発明の範囲と思想から逸脱することなく、発明を実施し得ることを理解できるであろう。これと関連して、前述の実施例は、あらゆる面において例示的なものであり、請求項における発明を限定するものではない。本発明の範囲は、前記の詳細な説明よりは、後述の請求項の意味、範囲及び等価概念から導出される全ての変更又は修正を含むものとして理解されるべきである。