(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内燃機関の排気ガス中の排気微粒子を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタと、還元剤としての尿素水溶液を貯蔵タンクから還元剤噴射弁へ供給することにより前記排気ガス中に噴射して供給すると共に前記内燃機関を停止する際には供給経路内の前記尿素水溶液を前記貯蔵タンクへ回収する還元剤供給装置と、前記尿素水溶液を用いて前記排気ガス中のNOxを浄化するSCR触媒と、を排気上流側から順次に備えた排気浄化システムにおいて、
前記内燃機関を停止するためのイグニッションスイッチのオフの検出に応じて前記還元剤噴射弁の噴射弁温度を検出し、還元剤回収処理を開始するまでの待ち時間を前記噴射弁温度に基づいて算定する待ち時間算定部と、
前記待ち時間の経過を条件として前記還元剤回収処理を許可する還元剤回収処理許可部と、
を有する制御装置を備え、
前記待ち時間算定部は、前記還元剤噴射弁が備える噴射板の外部側及び内部側に付着した前記尿素水溶液の濃度及び固化温度を前記噴射弁温度に基づいて算定することにより前記待ち時間を算定することを特徴とする排気浄化システム。
内燃機関の排気ガス中の排気微粒子を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタと、還元剤としての尿素水溶液を貯蔵タンクから還元剤噴射弁へ供給することにより前記排気ガス中に噴射して供給すると共に前記内燃機関を停止する際には供給経路内の前記尿素水溶液を前記貯蔵タンクへ回収する還元剤供給装置と、前記尿素水溶液を用いて前記排気ガス中のNOxを浄化するSCR触媒と、を排気上流側から順次に備えた排気浄化システムにおいて、
前記還元剤噴射弁の噴射停止の検出に応じて前記還元剤噴射弁の噴射弁温度を検出し、還元剤回収処理を開始するまでの待ち時間を前記噴射弁温度に基づいて算定する待ち時間算定部と、
前記内燃機関を停止するためのイグニッションスイッチのオフの検出及び前記待ち時間の経過を条件として前記還元剤回収処理を許可する還元剤回収処理許可部と、
を有する制御装置を備え、
前記待ち時間算定部は、前記還元剤噴射弁が備える噴射板の外部側及び内部側に付着した前記尿素水溶液の濃度及び固化温度を前記噴射弁温度に基づいて算定することにより前記待ち時間を算定することを特徴とする排気浄化システム。
前記待ち時間の経過前に前記還元剤噴射弁の噴射が実行された場合には、前記待ち時間算定部及び前記還元剤回収処理許可部は、前記待ち時間を無効とすることを特徴とする請求項2に記載の排気浄化システム。
前記待ち時間算定部は、前記噴射板の外部側に付着した前記尿素水溶液の液滴は固化するが、前記噴射板の内部側に付着した前記尿素水溶液の液滴は固化しない程度の時間として前記待ち時間を算定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の排気浄化システム。
内燃機関の排気ガス中の排気微粒子を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタと、還元剤としての尿素水溶液を貯蔵タンクから還元剤噴射弁へ供給することにより前記排気ガス中に噴射して供給すると共に前記内燃機関を停止する際には供給経路内の前記尿素水溶液を前記貯蔵タンクへ回収する還元剤供給装置と、前記尿素水溶液を用いて前記排気ガス中のNOxを浄化するSCR触媒と、を排気上流側から順次に備えた排気浄化システムの制御方法において、
前記内燃機関を停止するためのイグニッションスイッチのオフの検出に応じて前記還元剤噴射弁の噴射弁温度を検出し、前記還元剤噴射弁が備える噴射板の外部側及び内部側に付着した前記尿素水溶液の濃度及び固化温度を前記噴射弁温度に基づいて算定することにより還元剤回収処理を開始するまでの待ち時間を算定する過程と、
前記待ち時間の経過を条件として前記還元剤回収処理を許可する過程と、
を有することを特徴とする排気浄化システムの制御方法。
内燃機関の排気ガス中の排気微粒子を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタと、還元剤としての尿素水溶液を貯蔵タンクから還元剤噴射弁へ供給することにより前記排気ガス中に噴射して供給すると共に前記内燃機関を停止する際には供給経路内の前記尿素水溶液を前記貯蔵タンクへ回収する還元剤供給装置と、前記尿素水溶液を用いて前記排気ガス中のNOxを浄化するSCR触媒と、を排気上流側から順次に備えた排気浄化システムの制御方法において、
前記還元剤噴射弁の噴射停止の検出に応じて前記還元剤噴射弁の噴射弁温度を検出し、前記還元剤噴射弁が備える噴射板の外部側及び内部側に付着した前記尿素水溶液の濃度及び固化温度を前記噴射弁温度に基づいて算定することにより還元剤回収処理を開始するまでの待ち時間を算定する過程と、
前記内燃機関を停止するためのイグニッションスイッチのオフの検出及び前記待ち時間の経過を条件として前記還元剤回収処理を許可する過程と、
を有することを特徴とする排気浄化システムの制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、還元剤供給装置においては、その構造上、還元剤即ち尿素水溶液を完全には回収できないのが通常である。
【0008】
そのため、還元剤供給経路、特に還元剤噴射弁内に残存した尿素水溶液が内燃機関の停止後に加熱されて濃縮されることにより固化温度が上昇し、その後に冷却される過程で尿素水溶液が固化してしまい、その結果、例えば、特許文献1に記載された排気浄化システムでは、内燃機関の始動時に、尿素水溶液の供給が阻害され、排気浄化効率が低下してしまうという問題があった。
【0009】
具体的に説明すると、排気浄化システムでは、内燃機関の停止時に、還元剤供給装置の還元剤供給経路に充填されていた尿素水溶液を貯蔵タンクに回収するパージ処理が一般に行われるものの、貯蔵タンク及び還元剤噴射弁を接続する還元剤通路等の構造上、還元剤供給経路内に充填された尿素水溶液を、通常は、完全には貯蔵タンクに回収し切ることができない。
【0010】
一方、内燃機関の停止とともに還元剤噴射弁の放熱機能である冷却水の循環等は停止するため、特に還元剤噴射弁の温度は上昇する。そうすると、上述の還元剤噴射弁内に残存した尿素水溶液中の水分が気化により蒸発し、その濃度は上昇する。その後、排気管や周囲の温度が低下するにつれて、尿素水溶液の温度は低下するが、通常の濃度に比べ高い濃度となっているため、固化する温度は上昇しており、残存尿素水溶液が固化して還元剤噴射弁に詰まりが発生してしまう虞がある。
【0011】
図8は、尿素水溶液の濃度と固化温度T0との関係を表したグラフである。
【0012】
還元剤供給装置において使用される還元剤としての尿素水溶液の濃度は、通常、固化温度が最も低い約−11℃となる約32.5%に調整されている。
【0013】
図8のグラフに示されるように、尿素水溶液の固化温度は、尿素水溶液の濃度が約32.5%のときに最低の約−11℃であり、尿素水溶液の濃度が約32.5%より高くなっても低くなっても、尿素水溶液の固化温度は上昇する特性を有している。
【0014】
従って、高温により水分が蒸発して濃度が高くなった還元剤噴射弁内の残存尿素水溶液は、その後に温度が低下した時に固化し易く、還元剤噴射弁の噴射板に設けられた噴射口の詰まりの原因ともなり、還元剤回収処理の実行時やその後の内燃機関の再始動に伴う還元剤噴射時に、噴射口を通じた気体や液体の流通が阻害され、最悪の場合、還元剤噴射弁の破損等が発生する可能性がある。
【0015】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、還元剤噴射弁の噴射停止後に噴射板の噴射口の詰まりを回避するための措置を取ることにより、上記問題を解決するものである。
【0016】
即ち、本発明は、還元剤噴射弁の噴射停止後に噴射板の噴射口の詰まりを回避するための制御を行うことにより、尿素水溶液の固化に起因した還元剤供給経路や還元剤噴射弁、特に噴射板の噴射口の詰まりや破損等の発生を回避することが可能であり、その結果として還元剤回収処理や排気浄化の効率の低下を防止し得る排気浄化システム及び排気浄化システムの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一態様に係る排気浄化システムは、
内燃機関の排気ガス中の排気微粒子を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタと、還元剤としての尿素水溶液を貯蔵タンクから還元剤噴射弁へ供給することにより前記排気ガス中に噴射して供給すると共に前記内燃機関を停止する際には供給経路内の前記尿素水溶液を前記貯蔵タンクへ回収する還元剤供給装置と、前記尿素水溶液を用いて前記排気ガス中のNOxを浄化するSCR触媒と、を排気上流側から順次に備えた排気浄化システムにおいて、
前記内燃機関を停止するためのイグニッションスイッチのオフの検出又は前記還元剤噴射弁の噴射停止の検出のうちのいずれか早い方の検出に応じて前記還元剤噴射弁の噴射弁温度を検出し、還元剤回収処理を開始するまでの待ち時間を前記噴射弁温度に基づいて算定する待ち時間算定部と、
前記イグニッションスイッチのオフの検出及び前記待ち時間の経過を条件として前記還元剤回収処理を許可する還元剤回収処理許可部と、
を有する制御装置を備えることを特徴とし、当該構成を備えることにより、上記課題を解決することができる。
【0018】
本発明の一態様に係る排気浄化システムは、
内燃機関の排気ガス中の排気微粒子を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタと、還元剤としての尿素水溶液を貯蔵タンクから還元剤噴射弁へ供給することにより前記排気ガス中に噴射して供給すると共に前記内燃機関を停止する際には供給経路内の前記尿素水溶液を前記貯蔵タンクへ回収する還元剤供給装置と、前記尿素水溶液を用いて前記排気ガス中のNOxを浄化するSCR触媒と、を排気上流側から順次に備えた排気浄化システムにおいて、
前記内燃機関を停止するためのイグニッションスイッチのオフの検出に応じて前記還元剤噴射弁の噴射弁温度を検出し、還元剤回収処理を開始するまでの待ち時間を前記噴射弁温度に基づいて算定する待ち時間算定部と、
前記待ち時間の経過を条件として前記還元剤回収処理を許可する還元剤回収処理許可部と、
を有する制御装置を備えることを特徴とし、当該構成を備えることにより、上記課題を解決することができる。
【0019】
本発明の一態様に係る排気浄化システムは、
内燃機関の排気ガス中の排気微粒子を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタと、還元剤としての尿素水溶液を貯蔵タンクから還元剤噴射弁へ供給することにより前記排気ガス中に噴射して供給すると共に前記内燃機関を停止する際には供給経路内の前記尿素水溶液を前記貯蔵タンクへ回収する還元剤供給装置と、前記尿素水溶液を用いて前記排気ガス中のNOxを浄化するSCR触媒と、を排気上流側から順次に備えた排気浄化システムにおいて、
前記還元剤噴射弁の噴射停止の検出に応じて前記還元剤噴射弁の噴射弁温度を検出し、還元剤回収処理を開始するまでの待ち時間を前記噴射弁温度に基づいて算定する待ち時間算定部と、
前記内燃機関を停止するためのイグニッションスイッチのオフの検出及び前記待ち時間の経過を条件として前記還元剤回収処理を許可する還元剤回収処理許可部と、
を有する制御装置を備えることを特徴とし、当該構成を備えることにより、上記課題を解決することができる。
【0020】
また、本発明の一態様に係る排気浄化システムの制御方法は、
内燃機関の排気ガス中の排気微粒子を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタと、還元剤としての尿素水溶液を貯蔵タンクから還元剤噴射弁へ供給することにより前記排気ガス中に噴射して供給すると共に前記内燃機関を停止する際には供給経路内の前記尿素水溶液を前記貯蔵タンクへ回収する還元剤供給装置と、前記尿素水溶液を用いて前記排気ガス中のNOxを浄化するSCR触媒と、を排気上流側から順次に備えた排気浄化システムの制御方法において、
前記内燃機関を停止するためのイグニッションスイッチのオフの検出又は前記還元剤噴射弁の噴射停止の検出のうちのいずれか早い方の検出に応じて前記還元剤噴射弁の噴射弁温度を検出し、還元剤回収処理を開始するまでの待ち時間を前記噴射弁温度に基づいて算定する過程と、
前記イグニッションスイッチのオフの検出及び前記待ち時間の経過を条件として前記還元剤回収処理を許可する過程と、
を有することを特徴とし、当該構成を備えることにより、上記課題を解決することができる。
【0021】
また、本発明の一態様に係る排気浄化システムの制御方法は、
内燃機関の排気ガス中の排気微粒子を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタと、還元剤としての尿素水溶液を貯蔵タンクから還元剤噴射弁へ供給することにより前記排気ガス中に噴射して供給すると共に前記内燃機関を停止する際には供給経路内の前記尿素水溶液を前記貯蔵タンクへ回収する還元剤供給装置と、前記尿素水溶液を用いて前記排気ガス中のNOxを浄化するSCR触媒と、を排気上流側から順次に備えた排気浄化システムの制御方法において、
前記内燃機関を停止するためのイグニッションスイッチのオフの検出に応じて前記還元剤噴射弁の噴射弁温度を検出し、還元剤回収処理を開始するまでの待ち時間を前記噴射弁温度に基づいて算定する過程と、
前記待ち時間の経過を条件として前記還元剤回収処理を許可する過程と、
を有することを特徴とし、当該構成を備えることにより、上記課題を解決することができ
る。
【0022】
また、本発明の一態様に係る排気浄化システムの制御方法は、
内燃機関の排気ガス中の排気微粒子を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタと、還元剤としての尿素水溶液を貯蔵タンクから還元剤噴射弁へ供給することにより前記排気ガス中に噴射して供給すると共に前記内燃機関を停止する際には供給経路内の前記尿素水溶液を前記貯蔵タンクへ回収する還元剤供給装置と、前記尿素水溶液を用いて前記排気ガス中のNOxを浄化するSCR触媒と、を排気上流側から順次に備えた排気浄化システムの制御方法において、
前記還元剤噴射弁の噴射停止の検出に応じて前記還元剤噴射弁の噴射弁温度を検出し、還元剤回収処理を開始するまでの待ち時間を前記噴射弁温度に基づいて算定する過程と
前記内燃機関を停止するためのイグニッションスイッチのオフの検出及び前記待ち時間の経過を条件として前記還元剤回収処理を許可する過程と、
を有することを特徴とし、当該構成を備えることにより、上記課題を解決することができる。
【0023】
即ち、本発明の一態様に係る排気浄化システム及び排気浄化システムの制御方法は、還元剤噴射弁の噴射停止後に噴射板の噴射口の詰まりを回避するための上記各構成を備えることにより、尿素水溶液の固化に起因した還元剤供給経路や還元剤噴射弁、特に噴射板の噴射口の詰まりや破損等の発生を回避することができ、その結果として還元剤回収処理や排気浄化の効率の低下を防止することができる。
【0024】
本発明の一態様に係る排気浄化システム及びその制御方法の上記各構成において、前記待ち時間の経過前に前記還元剤噴射弁の噴射が実行された場合には、前記待ち時間を無効とするものとするとよい。
【0025】
また、前記還元剤噴射弁が備える噴射板の外部側及び内部側に付着した前記尿素水溶液の濃度及び固化温度を前記噴射弁温度に基づいて算定することにより前記待ち時間を算定するものとするとよい。
【0026】
また、前記噴射板の外部側に付着した前記尿素水溶液の液滴は固化するが、前記噴射板の内部側に付着した前記尿素水溶液の液滴は固化しない程度の時間として前記待ち時間を算定するものとするとよい。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して、本発明に係る排気浄化システム及び排気浄化システムの制御方法の実施の形態について、具体的に説明する。
【0029】
但し、以下の実施の形態は、本発明の一態様を示すものであって本発明を限定するものではなく、本発明の範囲内で任意に変更することができる。
【0030】
尚、各図において同符号を付してあるものは同一の部材乃至部分を示しており、適宜説明が省略されている。
1.排気浄化システム
(1)全体構成
図1は、本発明の実施の一形態に係る排気浄化システム10の全体構成図である。
【0031】
この排気浄化システム10は、DPF22及びSCR触媒24を有する排気浄化ユニット20と、還元剤噴射弁43を含む還元剤供給装置40と、DPF22の強制再生制御や還元剤供給装置40の動作制御を行う制御装置60とを主たる構成要素として備えている。
【0032】
斯かる排気浄化システム10は、排気ガス中の微粒子状物質(PM)をDPF22によって捕集し、かつ、還元剤としての尿素水溶液を用いて排気ガス中のNOxをSCR触媒24中で選択的に浄化するための装置として構成されたものである。
(2)排気浄化ユニット
排気浄化ユニット20は、酸化触媒21と、DPF22と、SCR触媒24とを排気上流側から順次に備えている。
【0033】
この排気浄化ユニット20の構成要素のうち、酸化触媒21は、内燃機関5でのポスト噴射等によって排気管11内に供給された未燃燃料を酸化し、酸化熱を発生させる。これにより、DPF22に流入する排気ガスを昇温させてDPF22を加熱することができる。酸化触媒21は、公知のもの、例えば、アルミナに白金を担持させたものに所定量のセリウム等の希土類元素を添加したものを用いることができる。
【0034】
また、DPF22は、排気ガスがDPF22を通過する際に排気ガス中のPMを捕集する。
図1に示す排気浄化システム10では、DPF22がSCR触媒24よりも排気上流側に配設されており、PMがSCR触媒24に付着するおそれがない。DPF22は、公知のもの、例えば、セラミック材料から構成されたハニカム構造のフィルタを用いることができる。
【0035】
また、SCR触媒24は、還元剤噴射弁43によって排気ガス中に噴射される尿素水溶液の分解により生成されるアンモニアを吸着し、流入する排気ガス中のNOxを還元する。SCR触媒24としては、例えば、アンモニアの吸着機能を有し、かつ、NOxを選択的に還元可能なゼオライト系の還元触媒を用いることができる。
【0036】
以上に説明した排気浄化ユニット20は、DPF22の前後にそれぞれ圧力センサ51、52を備え、SCR触媒24の前後にそれぞれ温度センサ53、54を備えている。また、SCR触媒24の排気下流側にはNOxセンサ55を備えている。さらに、排気浄化ユニットの周囲には外気温度を検出する外気温度センサが配置されている。
【0037】
これらセンサのセンサ値は制御装置60に送られて、それぞれの位置での圧力や温度、NOx濃度が検出される。
【0038】
尚、演算によって推定可能であるならば、これらセンサは省略可能である。
【0039】
また、以上に説明した排気浄化ユニット20は、排気管11の第1屈曲部23aから分岐して、還元剤噴射弁43を固定するための接続管12を備えている。この接続管12を介して、排気ガスの流れ方向と略一致する方向に、還元剤噴射弁43から還元剤としての尿素水溶液が噴射される。
【0040】
従って、排気管11に還元剤噴射弁43を直接固定する場合と比較して、排気管11や排気ガス等から還元剤噴射弁43への熱を伝わり難くすることができる。
(3)強制再生手段
本実施形態の排気浄化システム10は、DPF22の強制再生制御を行うための強制再生手段を備える。DPF22を500℃乃至600℃程度に昇温させ、DPF22に堆積したPMを強制的に燃焼させる強制再生を行うためである。
【0041】
本実施形態では、内燃機関5でのポスト噴射等によって排気管11内に未燃燃料を供給する燃料噴射弁(図示せず)と、燃料噴射弁からの燃料噴射量や噴射タイミング等、燃料噴射弁の制御を指示するための制御装置60の制御部と、未燃燃料を酸化して酸化熱を発生させる酸化触媒21とが、強制再生手段を構成する。
【0042】
尚、強制再生手段は上記構成例に限られず、排気ガスを500℃乃至600℃程度に昇温させることができるものであればよい。例えば、ポスト噴射に拠らずに酸化触媒21に未燃燃料を供給する装置を利用して強制再生手段を構成してもよい。また、バーナや電熱線等の加熱装置を備え、直接DPF22を加熱するようにしてもよい。
(4)還元剤供給装置
還元剤供給装置40は、尿素水溶液を貯蔵する貯蔵タンク41と、圧送ポンプ42と、還元剤噴射弁43とを主たる構成要素として備えている。
【0043】
このうち、貯蔵タンク41及び圧送ポンプ42が第1の供給通路44によって接続され、圧送ポンプ42及び還元剤噴射弁43が第2の供給通路45によって接続されている。この第2の供給通路45には圧力センサ56が設けられており、センサ値が制御装置60に送信され、第2の供給通路45内の圧力が検出される。
【0044】
また、第2の供給通路45及び貯蔵タンク41が第3の供給通路46によって接続されており、これにより、第2の供給経路45に供給された余剰の尿素水溶液を、貯蔵タンク41に戻すことができる。
【0045】
また、還元剤供給装置40は、尿素水溶液の流路を、貯蔵タンク41から還元剤噴射弁43へ向かう順方向から、還元剤噴射弁43から貯蔵タンク41へ向かう逆方向に切り換える機能を持ったリバーティングバルブ47を備えている。即ち、本実施形態の排気浄化システム10は、内燃機関5の停止時に、還元剤供給装置40に充填されていた尿素水溶液を貯蔵タンク41に回収可能な構成を有している。
【0046】
この還元剤供給装置40の構成要素のうち、圧送ポンプ42は、第2の供給経路45内の圧力が所定値で維持されるように、貯蔵タンク41内の尿素水溶液を汲み上げて還元剤噴射弁43に圧送する。圧送ポンプ42として、代表的には電動式ポンプが用いられる。
【0047】
また、還元剤噴射弁43は、制御装置60から出力される制御信号によって還元剤噴射弁43が開かれたときに、尿素水溶液を排気管11中に噴射する。還元剤噴射弁43としては、例えばDUTY制御によって開弁のON−OFFが制御されるON−OFF弁が用いられる。
【0048】
このような還元剤噴射弁43を構成する電子部分や樹脂部分等は比較的熱に弱く、その耐熱温度T
limは140℃乃至150℃程度である一方、通常運転時における排気ガス温度は、200℃乃至300℃程度である。
【0049】
そのため、この還元剤供給装置40は、還元剤噴射弁43のハウジングに設けられた冷却水通路35と、内燃機関5の冷却水通路33から分岐して冷却水通路35に連通する冷却水循環通路33・34と、冷却水循環通路33・34を流れる冷却水の流量を調節する冷却水流量制御弁31・32とを備えている。
【0050】
これにより、内燃機関5の冷却水を還元剤噴射弁43の冷却水通路35に循環させ、還元剤噴射弁43の温度を70℃乃至80℃程度に保ち、還元剤噴射弁43の熱損傷を防止することができる。
【0051】
また、還元剤噴射弁43からの還元剤の噴射を行うために、貯蔵タンク41内の相対的に低温である尿素水溶液が還元剤噴射弁43に圧送されるので、還元剤噴射弁43から尿素水溶液への熱移動によっても、還元剤噴射弁43の放熱が促される。
【0052】
上述のエンジン冷却水の循環や、尿素水溶液への熱移動による還元剤噴射弁43の放熱は、特に、内燃機関5の運転中において行われる。
【0053】
内燃機関5の運転中にエンジン冷却水が循環し、また、内燃機関5の運転中に還元剤噴射弁43へ尿素水溶液が圧送されるためである。
2.制御装置
(1)全体構成
次に、
図2を参照して、本発明の実施の一形態に係る排気浄化システム10に備えられる制御装置60を、噴射弁動作検出部61と、温度検出部62と、強制再生制御部63と、待ち時間算定部64と、還元剤回収処理許可部65とに大別して、具体的に説明する。これらの各部は、典型的には、マイクロコンピュータによるプログラムの実行によって実現される。
【0054】
即ち、
図2は、排気浄化システム10に備えられた制御装置60のうち、還元剤噴射弁の噴射停止後における噴射板の噴射口の詰まりを回避するための制御に関する部分を、機能的なブロックで表した構成例である。
【0055】
制御装置60は、イグニッションスイッチ57の信号や各圧力センサや各温度センサをはじめとして、機関回転数Neを検出する回転数センサ、車両の車速Vを検出する車速センサ、アクセルペダルの操作量Accを検出するアクセルセンサ、ブレーキペダルの操作量Brkを検出するブレーキセンサ等の各種センサ信号が読込み可能に構成されている。また、制御装置60には、各部での演算結果や検出結果を記憶するための図示しないRAM(Random Access Memory)が備えられている。
【0056】
尚、制御装置60は、内燃機関5の運転中にあっては、第2の供給経路45内の圧力が所定値で維持されるように圧送ポンプ42の駆動を制御するとともに、機関回転数NeやSCR触媒の排気下流側に設けられたNOxセンサ55のセンサ値等に基づいて、還元剤噴射弁43の駆動を制御する。
【0057】
また、制御装置60は、内燃機関を始動及び停止するためのイグニッションスイッチ57によるオン及びオフの信号を検出し、さらに好適には、還元剤噴射弁43の動作、特に噴射開始及び噴射停止も検出し、内燃機関5の停止の際にイグニッションスイッチ57のオフの信号又は還元剤噴射弁43の噴射停止を検出したときには、それらの検出時点のうちのいずれか早い方の検出時点における還元剤噴射弁43の噴射弁温度T
udvを検出し、当該噴射弁温度T
udvに基づいて待ち時間T1を算定し、上記早い方の検出時点から当該待ち時間T1だけ待ってから還元剤回収処理を許可するように構成されている。
【0058】
さらに、制御装置60は、上記待ち時間T1だけ待った後の還元剤回収処理の許可に応じて、還元剤回収処理即ちパージ処理を実行する。即ち、尿素水溶液の流路を順方向から逆方向に切り換えるための信号を、リバーティングバルブ47に対して出力するとともに、還元剤噴射弁43を開弁させて圧送ポンプ42を駆動させるための信号を、圧送ポンプ42及び還元剤噴射弁43に対して出力することにより、還元剤噴射弁43及び還元剤供給経路の内部に存在する還元剤を貯蔵タンク41に回収する。
【0059】
本発明の実施の一形態に係る排気浄化システム10に備えられる制御装置60は、還元剤回収処理の実行前に、還元剤噴射弁43内部における噴射口近傍に付着した尿素水溶液の液滴が後述する吸水効果により還元剤噴射弁43外部へ吸い出されるための待ち時間T1を設けて、還元剤噴射弁の噴射停止後における噴射板の噴射口の詰まりを回避するための制御を行ってから還元剤回収処理を実行することにより、尿素水溶液の固化に起因した還元剤供給経路や還元剤噴射弁、特に噴射板の噴射口の詰まりや破損等の発生を回避し、その結果として還元剤回収処理や排気浄化の効率の低下を防止するものである。
(2)噴射弁動作検出部
噴射弁動作検出部61は、還元剤噴射弁43の動作、特に噴射開始及び噴射停止を検出する。
【0060】
本発明に係る排気浄化システム及び排気浄化システムの制御方法の実施の形態のうち、イグニッションスイッチ57のオフの検出に加えて還元剤噴射弁43の噴射停止の検出に基づいて制御を行う実施の形態においては、噴射停止の検出時点における噴射弁温度T
udvに基づいて待ち時間T1を算定する。従って、噴射弁動作検出部61は、還元剤噴射弁43の噴射停止を検出する。
【0061】
また、当該実施の形態において、待ち時間T1が経過するまでの間に還元剤噴射弁43の噴射が再度開始された場合には、時間Tを計測するタイマをリセットする必要があるので、噴射弁動作検出部61は、還元剤噴射弁43の噴射開始も検出する。
(3)温度検出部
温度検出部62は、温度センサ53を用いて還元剤噴射弁43の噴射弁温度T
udvを検出するためのものであるが、直接検出できない場合には、その近傍のDPF22下流側温度T
dpf等から算出乃至推測してもよい。
(4)強制再生制御部
強制再生制御部63は、DPF22の前後に設けられた圧力センサ51、52から求められる差圧に基づいて、PMの堆積量Vpmを推定する。そして、推定PM堆積量Vpmが所定の閾値Vpm0を超えたときに、DPF22の強制再生が必要であると判定し、強制再生手段に対して、強制再生を実行するための信号を送信する。
【0062】
また、強制再生制御部63は、推定PM堆積量Vpmが所定量まで低下したことをきっかけとして、強制再生手段に対して送信していた、強制再生を実行するための信号を停止する。
(5)待ち時間算定部
待ち時間算定部64は、イグニッションスイッチ57がオフされたことを検出したとき、又は、還元剤噴射弁43の噴射停止を噴射弁動作検出部61を通じて検出したときは、当該検出に応じて、それらの検出時点のうちのいずれか早い方の検出時点における還元剤噴射弁43の噴射弁温度T
udvを温度検出部62を通じて検出する。ここで、「噴射弁温度T
udvの検出」には、上述のように、噴射弁温度T
udvを直接検出することの他、例えば噴射弁43近傍のDPF22下流側温度T
dpf等から算出乃至推測することも含む。
【0063】
そして、待ち時間算定部64は、上記早い方の検出時点における還元剤噴射弁43の噴射弁温度T
udvに基づいて待ち時間T1を算定する。この待ち時間T1は、後述する制御の動作手順において、上記早い方の検出時点から還元剤回収処理を許可するまでの待ち時間として用いられる。
【0064】
本発明に係る排気浄化システム及び排気浄化システムの制御方法において、還元剤回収処理の実行前に待ち時間T1を設ける理由の概略は、上述の通り、還元剤噴射弁43内部における噴射口近傍に付着した尿素水溶液の液滴が吸水効果により還元剤噴射弁43外部へ吸い出されるのを待つことにより、還元剤噴射弁の噴射停止後における噴射板の噴射口の詰まりを回避し、その後に還元剤回収処理を実行することにより、尿素水溶液の固化に起因した還元剤供給経路や還元剤噴射弁、特に噴射板の噴射口の詰まりや破損等の発生を回避し、その結果として還元剤回収処理や排気浄化の効率の低下を防止するものである。
【0065】
ここで、本発明に係る排気浄化システム及び排気浄化システムの制御方法が基礎とする原理について、さらに詳細に説明する。
【0066】
図3は、本発明の実施の一形態に係る排気浄化システムにおける還元剤噴射弁温度及び還元剤固化温度等の変化の一例を示すグラフである。
【0067】
時刻t1においてイグニッションスイッチ57がオフされて内燃機関5が停止すると、内燃機関5の冷却水の循環も停止して還元剤噴射弁43の放熱効率が低下するので、還元剤噴射弁43の噴射弁温度T
udvはその時点からある程度の時間に亘って上昇し、最高到達温度T
udvmaxに到達した後に低下していることが見て取れる。
【0068】
このように、イグニッションスイッチ57がオフされた後、噴射弁温度T
udvは上昇するので、還元剤噴射弁43内に残存する尿素水溶液の温度も上昇し、尿素水溶液の水分が気化して濃度が上昇し、その結果、当該残存尿素水溶液の固化温度T0も上昇する。
【0069】
即ち、噴射弁温度T
udvの上昇に少し遅れて追従するようにして、残存尿素水溶液の固化温度T0も、当該水溶液の濃度の上昇に伴って上昇することも、
図3に示される通りである。
【0070】
そして、噴射弁温度T
udvが低下してきて、時刻t2において残存尿素水溶液の固化温度T0である固化ポイントまで低下すると、還元剤噴射弁43の残存尿素水溶液に固化即ち凝固が発生することとなる。
【0071】
図4は、本発明の実施の一形態に係る排気浄化システムにおける還元剤噴射弁温度及び還元剤固化温度等の変化の他の例を示すグラフである。
【0072】
図4の例においては、イグニッションスイッチ57がオフされる時刻t1より前の時刻t0において、DPF22の強制再生制御が開始されており、それに伴う噴射弁温度T
udv及びDPF22下流側温度T
dpfの上昇が見て取れるが、その他の点については、上記
図3の例とほぼ同様である。
【0073】
図3及び
図4のグラフに示される尿素水溶液の温度の上昇による濃度及び固化温度T0の上昇は、
図8のグラフに示される尿素水溶液の特性によるものであり、温度上昇が大きい場合の方が尿素水溶液の濃度及び固化温度T0の上昇も大きくなる。
【0074】
還元剤噴射弁43内部に残存する尿素水溶液についても、還元剤噴射弁43外部に付着した尿素水溶液についても、尿素水溶液の温度の上昇による濃度及び固化温度T0の上昇は発生するが、還元剤噴射弁43外部に付着した尿素水溶液の方が、排気管11,23a,23bを通過する高温の排気ガスに直接曝されるため、濃度及び固化温度T0の上昇が大きくなり、還元剤噴射弁43内部に残存する尿素水溶液と比較して高い温度で早期に固化する傾向がある。
【0075】
図5は、本発明に係る排気浄化システム及び排気浄化システムの制御方法が基礎とする、還元剤噴射弁における固化還元剤の吸水作用を説明するための模式図である。
【0076】
図5(a)に示すように、排気浄化システムが備える還元剤供給装置の還元剤噴射弁43は、貫通孔を有する狭窄部が内部に設けられた円筒状部材431と、狭窄部に嵌合する先端部432aを有し、円筒状部材431の中心軸方向に駆動されることにより貫通孔を開閉するピン部材432と、円筒状部材431とピン部材432との間の間隙及び貫通孔を通過して供給される還元剤としての尿素水溶液を噴射するための噴射口433aが設けられた噴射板(オリフィスプレート)433とを備えている。
【0077】
貯蔵タンク41から還元剤供給通路を通って供給される尿素水溶液は、還元剤噴射弁43の円筒状部材431内に送り込まれ、ピン部材432が駆動されて先端部432aが円筒状部材431の狭窄部から離隔することにより円筒状部材431とピン部材432との間の間隙及び貫通孔を通過して、噴射板433の噴射口433aから排気管23b内に噴射される。
【0078】
イグニッションスイッチ57のオフ又は内燃機関の動作状態に応じて還元剤噴射弁43による還元剤の噴射が停止される際には、
図5(b)に示すように、ピン部材432の駆動により円筒状部材431の狭窄部にピン部材432の先端部432aが嵌合されて還元剤供給経路が遮断され、これにより、還元剤の噴射が停止される。
【0079】
その際、多くの場合には、噴射板433の噴射口433a近傍における還元剤噴射弁43外部側、内部側にそれぞれ還元剤の液滴D1,D2が付着する。
【0080】
前述のように、還元剤噴射弁43外部に付着した尿素水溶液の液滴D1の方が、排気管を通過する高温の排気ガスに直接曝されるため、濃度及び固化温度T0の上昇が大きくなり、
図5(c)に示すように、還元剤噴射弁43内部に残存する液滴D2よりも早期に固化し結晶化する。
【0081】
すると、結晶の吸水作用により、
図5(d)に示すように、還元剤噴射弁43内部に残存する液滴D2が、外部で固化した液滴D1に吸収されるようにして噴射口433aから外部へ吸い出される。
【0082】
本発明に係る排気浄化システム及び排気浄化システムの制御方法は、固化還元剤の吸水作用に基づき、還元剤の噴射停止後に待ち時間T1を設けることにより、還元剤噴射弁43内部における噴射口433a近傍に残存する還元剤の液滴が噴射口433a外部へ吸い出されるのを待ち、それにより、還元剤噴射弁の噴射停止後における噴射板の噴射口の詰まりを回避し、その後に還元剤回収処理を実行することにより、尿素水溶液の固化に起因した還元剤供給経路や還元剤噴射弁、特に噴射板の噴射口の詰まりや破損等の発生を回避し、その結果として還元剤回収処理や排気浄化の効率の低下を防止するものである。
【0083】
待ち時間T1は、イグニッションスイッチ57のオフ又は還元剤噴射弁43の噴射停止の検出時点のうちのいずれか早い方の検出時点における還元剤噴射弁43の噴射弁温度T
udvに基づいて算定する。尚、イグニッションスイッチ57がオフされたときには、直ちに還元剤噴射弁43による還元剤の噴射は停止されるので、イグニッションスイッチ57のオフ又は還元剤噴射弁43の噴射停止の検出時点のうちのいずれか早い方の検出時点とは、実質的にほぼ同一の時点を意味している。
【0084】
当該検出時点における噴射弁温度T
udvに基づいて待ち時間T1を算定する理由は、還元剤噴射弁43外部に付着した尿素水溶液の液滴が固化する時間は、噴射弁温度T
udvに応じて変化するからである。即ち、噴射弁温度T
udvが低ければ尿素水溶液の濃度及び固化温度T0の上昇は小さいので、尿素水溶液の液滴が固化する時間は長くなり、噴射弁温度T
udvが高ければ尿素水溶液の濃度及び固化温度T0の上昇は大きいので、尿素水溶液の液滴が固化する時間は短くなる。
【0085】
従って、上記検出時点における還元剤噴射弁43の噴射弁温度T
udvに基づいてその後に到達すると推測される最高到達温度T
udvmaxを考慮し、かつ、噴射弁外部及び内部の温度差を考慮し、還元剤噴射弁43外部に付着した尿素水溶液の液滴は固化するが、還元剤噴射弁43内部に残存する液滴はまだ固化しない程度の待ち時間T1を算定する。
【0086】
尚、待ち時間T1の算定においては、還元剤噴射弁43の噴射弁温度T
udvの他に、実施の対象となる実機に固有の種々の条件が影響することがあり得るので、予め実機で試験を行い、上記検出時点における還元剤噴射弁43の噴射弁温度T
udvを特定するだけで最適な待ち時間T1を十分な精度で算定できるようにしておくことが望ましい。
【0087】
待ち時間T1の算定は、より具体的には、上記検出時点における還元剤噴射弁43の噴射弁温度T
udvから最高到達温度T
udvmaxを推定し、かつ、噴射弁外部及び内部の温度差を考慮して、噴射弁外部及び内部の尿素水溶液の濃度を算定し、それらの濃度に対応する噴射弁外部及び内部の尿素水溶液の固化温度T0を、
図8のグラフと同様に尿素水溶液の濃度と固化温度T0との関係を表す特性マップに基づいてそれぞれ特定し、還元剤噴射弁43外部に付着した尿素水溶液の液滴は固化するが、還元剤噴射弁43内部に残存する液滴はまだ固化しない程度の待ち時間T1を算定する。従って、待ち時間T1の値は、必ずしも厳密に特定されなければならないものではなく、ある程度の許容範囲内において算定乃至選定される。上記特性マップは、制御装置60内の所定の記憶手段に記憶されているものとするとよい。
【0088】
より高精度な算定を行うためには、還元剤噴射弁43の噴射弁温度T
udvの他に、最高到達温度T
udvmaxに到達する際の還元剤噴射弁43の温度勾配δT
udv、外気温度T
out、及び、必要に応じた他の条件を適宜組み合わせて、残存尿素水溶液の濃度及び固化温度T0並びに待ち時間T1の算定を行うようにするとよい。温度勾配δT
udvが急である場合や外気温度T
outが高い場合は、残存尿素水溶液の濃度がより高くなり、当該残存尿素水溶液の固化温度T0もより高くなる傾向があるからである。
(6)還元剤回収処理許可部
還元剤回収処理許可部65は、待ち時間算定部64により待ち時間T1が算定されたら直ちにタイマによる時間Tの計測を開始し、計測時間Tが待ち時間T1に到達したか(T≧T1?)否かに応じて、即ち、計測時間Tが待ち時間T1に到達したら、還元剤回収処理を許可し、当該許可に応じて還元剤回収処理が開始される。
【0089】
待ち時間算定部64による待ち時間T1の算定は、実際には、制御装置60を構成するマイクロコンピュータによるプログラムの実行によって瞬時に行われるので、還元剤回収処理許可部65におけるタイマによる時間Tの計測開始時点は、還元剤噴射弁43の噴射弁温度T
udvの検出時点と実質的に同一である。
3.制御方法
以下、フローチャートを用いて、本発明の実施の一形態に係る排気浄化システム及び排気浄化システムの制御方法の具体例について説明する。
【0090】
図6は、本発明の第1の実施の形態に係る排気浄化システム及び排気浄化システムの制御方法の動作手順を示すフローチャートであり、特に、イグニッションスイッチ57のオフの検出に応じて噴射弁温度T
udvを検出して待ち時間T1を算定する場合における動作手順を具体的に示すフローチャートである。
【0091】
先ず、制御装置60、特に待ち時間算定部64がイグニッションスイッチ57のオフを検出すると(ステップS1)、待ち時間算定部64は、温度検出部62を通じて還元剤噴射弁43の噴射弁温度T
udvを検出する(ステップS2)。尚、イグニッションスイッチ57がオフされると直ちに還元剤噴射弁43による還元剤噴射も停止されるので、実質的に、噴射停止時点における噴射弁温度T
udvを検出しているということができる。
【0092】
待ち時間算定部64は、検出した噴射弁温度T
udvに基づいて待ち時間T1を算定する(ステップS3)。具体的には、検出した噴射弁温度T
udvに基づいて、噴射弁外部及び内部の温度差を考慮して、噴射弁外部及び内部の尿素水溶液の濃度及び固化温度T0を算定し、還元剤噴射弁43外部に付着した尿素水溶液の液滴は固化するが、還元剤噴射弁43内部に残存する液滴はまだ固化しない程度の待ち時間T1を算定する。その過程において、必要に応じて、噴射弁温度T
udvから最高到達温度T
udvmaxを推定して、待ち時間T1を算定してもよい。
【0093】
待ち時間T1が算定されると、還元剤回収処理許可部65は、直ちにタイマによる時間Tの計測を開始する(ステップS4)。
【0094】
そして、還元剤回収処理許可部65は、計測時間Tが待ち時間T1に到達したか(T≧T1?)否かを判断し(ステップS5)、計測時間Tが待ち時間T1に到達したら、還元剤回収処理を許可する。
【0095】
還元剤回収処理許可部65により還元剤回収処理が許可されると、当該許可に応じて、還元剤供給装置40は、還元剤回収処理を開始する(ステップS6)。還元剤回収処理が終了したことが確認されると(ステップS7)、本実施の形態の動作手順が終了する。
【0096】
図7は、本発明の第2の実施の形態に係る排気浄化システム及び排気浄化システムの制御方法の動作手順を示すフローチャートであり、特に、還元剤噴射弁43の噴射停止の検出に応じて噴射弁温度T
udvを検出して待ち時間T1を算定する場合における動作手順を具体的に示すフローチャートである。
【0097】
先ず、制御装置60、特に噴射弁動作検出部61が還元剤噴射弁43の噴射停止を検出すると(ステップS11)、待ち時間算定部64は、温度検出部62を通じて還元剤噴射弁43の噴射弁温度T
udvを検出する(ステップS12)。
【0098】
待ち時間算定部64は、検出した噴射弁温度T
udvに基づいて待ち時間T1を算定する(ステップS13)。待ち時間T1の具体的な算定方法は、第1の実施の形態と同様である。
【0099】
待ち時間T1が算定されると、還元剤回収処理許可部65は、直ちにタイマによる時間Tの計測を開始する(ステップS14)。
【0100】
この第2の実施の形態においては、イグニッションスイッチ57のオフの検出以前に還元剤噴射弁43の噴射停止が検出される場合を想定しているので、待ち時間T1が算定されて時間Tの計測が開始された後に還元剤噴射弁43の噴射が再度実行されることもあり得る。
【0101】
還元剤噴射弁43の噴射が再度実行されると、当該噴射により噴射弁温度T
udvが変化し、また、還元剤噴射弁43外部及び内部における噴射板433上に付着して固化に向って状態が変化しつつあった尿素水溶液の液滴が流されたり飛ばされたりするので、算定した待ち時間T1は無効とされなければならず、タイマの計測時間Tもリセットされなければならない。
【0102】
従って、還元剤回収処理許可部65のタイマによる時間Tの計測開始後、噴射弁動作検出部61は、還元剤噴射弁43の噴射が再度行われたか否かを監視する(ステップS15)。
【0103】
噴射弁動作検出部61は、計測時間Tが待ち時間T1に到達する以前に還元剤噴射弁43の噴射を検出した場合には、当該検出を待ち時間算定部64及び還元剤回収処理許可部65に通知することにより、算定した待ち時間T1を無効とし、タイマの計測時間Tをリセットすべきことを通知する。この場合には、第2の実施の形態の動作手順は最初に戻り、還元剤噴射弁43の噴射停止が再度検出された場合には、動作手順は最初のステップS11から再度、順次実行される。
【0104】
一方、還元剤噴射弁43の噴射が検出されない場合には、イグニッションスイッチ57のオフが検出されたか否かが監視される(ステップS16)。イグニッションスイッチ57のオフが検出されることが、還元剤回収処理を実行する前提条件だからである。
【0105】
イグニッションスイッチ57のオフは、待ち時間算定部64が検出して還元剤回収処理許可部65に通知してもよいし、待ち時間算定部64及び還元剤回収処理許可部65がそれぞれ検出するようにしてもよい。
【0106】
イグニッションスイッチ57のオフが検出されるのは、計測時間Tが待ち時間T1に到達する前であっても後であってもよい。
【0107】
イグニッションスイッチ57のオフが検出されときは、還元剤回収処理許可部65は、計測時間Tが待ち時間T1に到達したか(T≧T1?)否かを判断し(ステップS17)、計測時間Tが待ち時間T1に到達していなかった場合には、計測時間Tが待ち時間T1に到達するのを待ってから還元剤回収処理を許可し、計測時間Tが待ち時間T1に既に到達していた場合には、直ちに還元剤回収処理を許可する。
【0108】
還元剤回収処理許可部65により還元剤回収処理が許可されると、当該許可に応じて、還元剤供給装置40は、還元剤回収処理を開始する(ステップS18)。還元剤回収処理が終了したことが確認されると(ステップS19)、本実施の形態の動作手順が終了する。
【0109】
以上に説明した
図6及び
図7のフローチャートに示した本発明の第1及び第2の実施の形態に係る排気浄化システム及び排気浄化システムの制御方法の斯かる動作手順によって、還元剤噴射弁43内部における噴射口433a近傍に残存する還元剤の液滴が噴射口433a外部へ吸い出されるのを待ち、それにより、還元剤噴射弁の噴射停止後における噴射板の噴射口の詰まりを回避し、その後に還元剤回収処理を実行することにより、尿素水溶液の固化に起因した還元剤供給経路や還元剤噴射弁、特に噴射板の噴射口の詰まりや破損等の発生を回避することができ、その結果として還元剤回収処理や排気浄化の効率の低下を防止することができる。