特許第6067900号(P6067900)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6067900
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】改善された免疫反応を誘導するワクチン
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/02 20060101AFI20170116BHJP
   A61K 39/145 20060101ALI20170116BHJP
   A61K 39/04 20060101ALI20170116BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20170116BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20170116BHJP
   A61P 31/06 20060101ALI20170116BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20170116BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   A61K39/02
   A61K39/145
   A61K39/04
   A61K39/39
   A61P31/04
   A61P31/06
   A61P31/16
   A61P37/02
【請求項の数】4
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-35127(P2016-35127)
(22)【出願日】2016年2月26日
(62)【分割の表示】特願2013-544403(P2013-544403)の分割
【原出願日】2011年12月17日
(65)【公開番号】特開2016-145224(P2016-145224A)
(43)【公開日】2016年8月12日
【審査請求日】2016年2月26日
(31)【優先権主張番号】10-2010-0130357
(32)【優先日】2010年12月18日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】511300972
【氏名又は名称】アイジェン インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】チョ・ヤン ジェ
(72)【発明者】
【氏名】リ・ナ ギョン
(72)【発明者】
【氏名】チャン・ジン ウク
(72)【発明者】
【氏名】キム・クァン ソン
(72)【発明者】
【氏名】ユ・ウォン イル
【審査官】 長岡 真
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/121232(WO,A1)
【文献】 Vaccine,2006, vol.24, p.5862-5871
【文献】 FEMS Immunol. Med. Microbiol., 2007, vol.51, p.496-504
【文献】 International Immunopharmacology,2010年 2月,vol.10, No.2,p.169-176
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00−39/39
A61P 31/00−31/22
A61P 37/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)炭疽菌抗原、結核菌抗原、及びインフルエンザウイルスの抗原からなる群から選択される病原体由来の抗原と、
(b)大腸菌(Escherichia coli)由来のLPS(リポ多糖)のリピドAの脱アシル化により生じ、2,000Da〜4,000Daの分子量を有する脱アシル化非毒性LOS(リポオリゴ糖)と、
(c)薬剤学的に許容される担体と、
を含むことを特徴とするワクチン医薬組成物(ただし、オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)をアジュバントとして含むものを除く)。
【請求項2】
前記炭疽菌抗原は、PA(感染防御抗原)、LF(致死抗原)又はEA(浮腫抗原)である請求項1に記載のワクチン医薬組成物。
【請求項3】
前記結核菌抗原は、65kD熱ショックタンパク質(HSP65)、抗原85A(Ag85A)、抗原85B、抗原85C、ESAT−6、Desタンパク質、MPT32、MPT51、MPT63、MPT64、HspX、及びホスフェート結合タンパク質1からなる群から選択される少なくとも1種の抗原である請求項1に記載のワクチン医薬組成物。
【請求項4】
前記インフルエンザウイルスの抗原は、エンベロープ糖タンパク質HA又はNAである請求項1に記載のワクチン医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された免疫反応を誘導するワクチン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
最近免疫補助剤が新たに注目を浴びており、子宮頸部癌ワクチン、インフルエンザワクチンなどの多様のワクチンが使用されている。このような免疫補助剤のうち、バクテリアDNAは、1960年代から抗癌剤として注目を浴び、現在まで研究が続けられている。しかし、効能が微弱であって、単独では抗癌剤として使用することができない(非特許文献1)。しかし、このような欠点にも関わらず、バクテリアDNAは、重大な副作用無しに、多様な免疫細胞を活性化させることが知られており、特に、アジュバントとして多くの長所があることが確認された(非特許文献2)。
【0003】
バクテリアDNAのこのような効果について、日本のYamamotoらは、CGを含む回文構造の配列が重要な役割をすることを主張し、米国のKriegらの研究によって広く知られた(非特許文献3、4)。特に、1990年代中盤以後は、CpG関連研究の結果でDNA抗癌剤の関心が非メチル化CGを含む合成DNA(CpG−ODN)の可能性が確認され、特に、短い合成DNAの分解を抑制するためのジエステル結合におけるS置換などが研究された。このような努力により、CpG−ODN関連製品は、アジュバントだけではなく、抗癌剤としても臨床試験できるようになった(http://www.coleypharma.com)。
【0004】
しかし、CpG−ODNのジエステル結合のS置換に対する免疫原性問題、及び依然として微弱な抗癌効果などは、解決すべき問題として残っている。現在臨床に使用中であるCPG7909は、anti−DNA Abを誘発するホスホロチオエートオリゴヌクレオチドであり(非特許文献5)、これは、SLE(全身性エリテマトーデス)など、自己免疫疾患と密接な関係がある(非特許文献6)。また、ホスホロチオエート構造は、TI Agに作用し、感染に対する免疫防衛機能に混乱を与えることが知られている(非特許文献7)。
【0005】
1950年代から抗癌効果が知られたLPSの場合、ngレンジの汚染によっても敗血症による死亡を招き得る毒性により、使用が難しかった。特に、LPSとDNAの結合は、深刻な毒性を示すという意見が一般的であって、DNA関連医薬品において、LPSの除去は、非常に重要な過程と理解された(非特許文献8)。効能面において、LPSによる免疫増加は、DNAによるものよりずっと強力であるが、抗癌に重要なTh1タイプではなく、Th2タイプの応答であるため、抗癌剤として適していないと考えられた(非特許文献9)。特に、Th2タイプ免疫活性は、Th1タイプ免疫活性を抑制するため、LPSのこのような特性は、LPSを抗癌剤として利用することをさらに難しくした(非特許文献10)。
【0006】
LPSに対する弱毒化試みは絶えず研究されて、特に多糖鎖の除去又はリピドAの脱アシル基化を通じて毒性を減少させることに成功することができた(非特許文献11)。例えば、LPSの多糖鎖を除去して得たリピドAのリン酸化を通じて得られたモノホスホリルリピドA(MPL)の場合、LPSの毒性を除去した免疫抗癌剤として開発されたが、その効果が微弱であることが知られている(http://www.corixa.com)。
【0007】
一方、本出願人は、上述の免疫補助剤の短所を補完した新規な免疫補助剤を既に開発した(特許文献1(2007.07.10))。
【0008】
本明細書全体にかけて多数の論文及び特許文献が参照され、その引用が表示されている。このような論文及び特許文献の開示内容は、その全体が本明細書に参照として取り込まれ、本発明の属する技術分野の水準及び本発明の内容がより明確に説明される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】大韓民国特許登録第0740237号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Glick,J.L.The specificity of inhibition of tumor cell viability by DNA.CancerRes.27:2338,1967
【非特許文献2】McCluskie MJ,et al.CpG DNA is a potent enhancer of systemic and mucosal immune responses against hepatitis B surface antigen with intranasal administration to mice.J.Immunol.Nov1;161(9):4463−6.1998
【非特許文献3】Yamamoto S.et al.Unique palindromic sequences in synthetic oligonucleotides are required to induce IFN and augment IFN−mediated natural killer activity.J.Immunol.148:4072,1992
【非特許文献4】Krieg AM,Antitumor applications of stimulating toll−like receptor 9 with CpG oligodeoxynucleotides.Curr.Oncol.Rep.Mar;6(2):88−95.2004
【非特許文献5】Clin Immunol.2001 Aug;100(2):157−63
【非特許文献6】J.Clin Immunol.1986 July;6(4):292−8
【非特許文献7】Mol Immunol.1998 Dec;35(18):1161−70
【非特許文献8】Gao JJ. et al.,Bacterial DNA and lipopolysaccharide induce synergistic production of TNF−alpha through a post−transcriptional mechanism.J.Immunol 166(11):6855−60,2001
【非特許文献9】Lebman DA et al.Interleukin 4 causes isotype switching to IgE in T cell−stimulated clonal B cell cultures.J Exp Med.Sep 1;168(3):853−62.1988
【非特許文献10】Rengarajan J et al.Transcriptional regulation of Th1/Th2 polarization.Immunol Today.Oct;21(10):479−83.2000
【非特許文献11】Katz SS et al.Deacylation of lipopolysaccharide in whole Escherichia coli during destruction by cellular and extracellular components of a rabbit peritoneal inflammatory exudate.J Biol Chem.Dec 17;274(51):36579−84 1999
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、従来のワクチンの問題点、特にワクチンの効能を増強できる新規なワクチン組成物を開発するために鋭意研究した。その結果、本発明者らは、多様な病原体の抗原を利用する免疫化過程において、免疫補助剤として脱アシル化非毒性LOS(Lipooligosaccharide、リポオリゴ糖)を免疫補助剤として利用する場合に、従来のワクチンより大きく改善された免疫反応を誘導し、多様な疾患の予防のための優れたワクチンになり得ることを確認することにより、本発明を完成した。
【0012】
したがって、本発明の目的は、ワクチン医薬組成物を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、樹状細胞の成熟化誘導用の組成物を提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的及び利点は、発明の詳細な説明、請求の範囲及び図面により、さらに明確にされる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一様態によると、本発明は、(a)結核菌抗原、炭疽菌抗原、HAV(A型肝炎ウイルス)の抗原、HBV(B型肝炎ウイルス)の抗原、HCV(C型肝炎ウイルス)の抗原、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)の抗原、インフルエンザウイルスの抗原、HSV(単純ヘルペスウイルス)の抗原、Hib(ヘモフィルスインフルエンザb菌)の抗原、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)の抗原、コリネバクテリウムジフテリア(Corynebacterium diphtheria)の抗原、百日咳菌(Bordetella pertussis)の抗原、破傷風菌(Clostridium tetani)の抗原及びバリセラウイルスの抗原からなる群から選択される病原体由来の抗原と、(b)脱アシル化非毒性LOS(Lipooligosaccharide、リポオリゴ糖)と、(c)薬剤学的に許容される担体と、を含むワクチン医薬組成物を提供する。
【0016】
本発明者らは、従来のワクチンの問題点、特にワクチンの効能を増強できる新規なワクチン組成物を開発するために鋭意研究した。その結果、本発明者らは、多様な病原体の抗原を利用する免疫化過程において、免疫補助剤として脱アシル化非毒性LOS(リポオリゴ糖)を免疫補助剤として利用する場合に、従来のワクチンより大きく改善された免疫反応を誘導し、多様な疾患の予防のための優れたワクチンになり得ることを確認した。
【0017】
本発明は、結核を誘発する結核菌に対するワクチン(結核ワクチン)に有用である。
【0018】
本発明の結核ワクチンで利用される結核菌抗原は、従来公知の多様な結核菌由来抗原を含み、好ましくは、本発明に適した結核菌抗原は、65kD熱ショックタンパク質(HSP65)、抗原85A(Ag85A)、抗原85B、抗原85C、ESAT−6、Desタンパク質、MPT32、MPT51、MPT63、MPT64、HspX及びホスフェート結合タンパク質1からなる群から選択される少なくとも1種の抗原である。
【0019】
より好ましくは、本発明の結核ワクチンで利用される結核菌抗原は、抗原85A(Ag85A)、ESAT−6、HspX及びホスフェート結合タンパク質1からなる群から選択される少なくとも1種の抗原である
【0020】
また、本発明は、炭疽病を誘発する炭疽菌に対するワクチン(炭疽ワクチン)に有用である。
【0021】
本発明の炭疽ワクチンで利用される炭疽菌抗原は、従来公知の多様な炭疽菌由来抗原を含み、好ましくは、本発明に適した炭疽菌抗原は、PA(感染防御抗原)、LF(致死抗原)又はEA(浮腫抗原)であり、より好ましくは、PA(感染防御抗原)である。
【0022】
また、本発明は、A型肝炎を誘発するHAV(A型肝炎ウイルス)に対するワクチンに有用である。本発明のHAVワクチンで利用されるHAV抗原は、従来公知の多様なHAV由来抗原を含み、好ましくは、本発明に適したHAV抗原は、生弱毒化HAV、不活弱毒化HAV、VP1、VP2、VP3、VP4、2A、2B、2C、3A、3B、3C及び3Dタンパク質からなる群から選択される抗原であり、より好ましくは、不活弱毒化HAVである。
【0023】
本発明は、B型肝炎を誘発するHBV(B型肝炎ウイルス)に対するワクチンに有用である。本発明のHBVワクチンで利用されるHBV抗原は、従来公知の多様なHBV由来抗原を含み、好ましくは、本発明に適したHBV抗原は、HBcAg(core antigen of HBV)又はHBsAg(surface antigen of HBV)であり、より好ましくは、HBsAgである。
【0024】
本発明は、C型肝炎を誘発するHCV(C型肝炎ウイルス)に対するワクチンに有用である。本発明のHCVワクチンで利用されるHCV抗原は、従来公知の多様なHCV由来抗原を含み、好ましくは、本発明に適したHCV抗原は、E1、E2又はNS3/4a抗原であり、より好ましくは、NS3である。
【0025】
本発明は、AIDSを誘発するHIVに対するワクチンに有用である。本発明のHIVワクチンで利用されるHIV抗原は、従来公知の多様なHIV由来抗原を含み、好ましくは、本発明に適したHIV抗原は、Gag(p55gag)、Pol、Vif、Vpr、Tat、Rev、Vpu、Env又はNef抗原であり、より好ましくは、Env抗原である。
【0026】
本発明は、インフルエンザなどを誘発するインフルエンザに対するワクチンに有用である。本発明のインフルエンザワクチンで利用されるインフルエンザウイルスの抗原は、従来公知の多様なインフルエンザウイルス由来抗原を含み、好ましくは、本発明に適したインフルエンザウイルス抗原は、エンベロープ糖タンパク質HA又はNAであり、より好ましくは、エンベロープ糖タンパク質HAである。
【0027】
本発明は、単純ヘルペスなどを誘発するHSV(単純ヘルペスウイルス)に対するワクチンに有用である。本発明のHSVワクチンで利用されるHSVの抗原は、従来公知の多様なHSV由来抗原を含み、好ましくは、本発明に適したHSV抗原は、糖タンパク質gB、gD又はgHであり、より好ましくは、gB又はgDである。
【0028】
本発明は、髄膜炎などを誘発するHib(ヘモフィルスインフルエンザb菌)に対するワクチンに有用である。本発明のHibワクチンで利用されるHibの抗原は、従来公知の多様なHib由来抗原を含み、好ましくは、本発明に適したHib抗原は、PRP[ヘモフィルスb菌カプセル多糖体(ポリリボシルリビトールリン酸)]又はそのコンジュゲートであり、より好ましくは、PRPと破傷風毒素のコンジュゲートである。
【0029】
本発明は、脳髄膜炎などを誘発する脳髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)に対するワクチンに有用である。本発明のワクチンで利用される脳髄膜炎菌の抗原は、従来公知の多様な脳髄膜炎菌由来抗原を含み、好ましくは、本発明に適した脳髄膜炎菌抗原は、PI、PII、PIII、ピリン、脂質多糖、鉄結合タンパク質又はプロテオソームであり、より好ましくは、プロテオソームである。
【0030】
本発明は、ジフテリアなどを誘発するコリネバクテリウムジフテリア(Corynebacterium diphtheria)に対するワクチンに有用である。本発明のワクチンで利用されるコリネバクテリウムジフテリアの抗原は、従来公知の多様なコリネバクテリウムジフテリア由来抗原を含み、好ましくは、本発明に適したコリネバクテリウムジフテリア抗原は、ジフテリア毒素である。
【0031】
本発明は、百日咳などを誘発する百日咳菌(Bordetella pertussis)に対するワクチンに有用である。本発明のワクチンで利用される百日咳菌の抗原は、従来公知の多様な百日咳菌由来抗原を含み、好ましくは、本発明に適したの百日咳菌抗原は、百日咳毒素である。
【0032】
本発明は、破傷風などを誘発する破傷風菌(Clostridium tetani)に対するワクチンに有用である。本発明のワクチンで利用される破傷風菌の抗原は、従来公知の多様な破傷風菌由来抗原を含み、好ましくは、本発明に適した破傷風菌抗原は、破傷風毒素である。
【0033】
本発明は、水痘などを誘発するバリセラウイルスに対するワクチンに有用である。本発明のワクチンで利用されるバリセラウイルスの抗原は、従来公知の多様なバリセラウイルス由来抗原を含み、好ましくは、本発明に適したバリセラウイルス抗原は、生弱毒化バリセラウイルス、不活弱毒化バリセラウイルス、gpI又はgpIIであり、より好ましくは、生弱毒化バリセラウイルスである。
【0034】
本発明のワクチン組成物において、最も大きい特徴は、免疫補助剤として脱アシル化非毒性LOS(リポオリゴ糖)を利用することである。本明細書で最初に採択される用語‘LOS(リポオリゴ糖)’は、LPS(lipopolysaccharide)の修飾体であって、天然(natural occurring)LPSより短い糖鎖を有しており分子量が小さいものを意味する。脱アシル化前LOSは、好ましくは、分子量が5,000〜10,000Daである。用語‘脱アシル化LOS’は、このようなLOSからリピドAのグルコサミンに−C(O)O−結合を介して結合した脂肪酸が除去され、その結果、LPOと比較して毒性が大きく減少したものを意味する。脂肪酸は、リピドAのグルコサミンに−C(O)O−結合及び−C(O)NH−結合を介して結合されている。本発明の脱アシル化LOSは、リピドAの脱アシル化により−C(O)O−結合で結合された脂肪酸が除去されたものを示す。
【0035】
脱アシル化非毒性LOSは、多様な方法を通じて製造できるが、本発明者らの先行特許である大韓民国特許登録第0456681号;WO2004/039413;大韓民国特許登録第0740237号;及びWO2006/121232に開示の方法によって製造できる。例えば、LPSを強塩基(例えば、2N NaOH)で処理して脱アシル化し、リピドAから一部脂肪酸を除去して脱毒素化する。
【0036】
本発明の好ましい実施形態によると、本発明で免疫補助剤として利用される脱アシル化非毒性LOSは、LPS(リポ多糖)のアルカリ処理を介したリピドAの脱アシル化により非毒性化されたものである。前記アルカリの好ましい例は、NaOH、KOH、Ba(OH)、CsOH、Sr(OH)、Ca(OH)、LiOH、RbOH及びMg(OH)を含み、より好ましくは、NaOH、KOH、Ba(OH)、Ca(OH)、LiOH及びMg(OH)であって、さらに好ましくは、NaOH、KOH及びMg(OH)であり、最も好ましくは、NaOHである。
【0037】
LPSの毒性程度は、当業界に公知の多様な方法を通じて分析できる。例えば、LPSで処理されたTHP−1(急性単球性白血病)に分泌されるTNF−α(腫瘍壊死因子−α)の量を測定して毒性を分析することができる。本発明の脱アシル化非毒性LOSは、従来のLPSと比較し、相対的に少ない量のTNF−α分泌を誘導する。
【0038】
本発明で利用される免疫補助剤である脱アシル化非毒性LOSのまた他の特徴は、分子量が一般的に従来利用されるLPSと比較して小さいということである。好ましくは、本発明で利用される脱アシル化非毒性LOSは、1,500〜10,000Da、より好ましくは、2,000〜5,000Da、さらに好ましくは、2,000〜4,000Da、よりさらに好ましくは、3,000〜4,000Da、最も好ましくは、3,200〜3,700Daの分子量を有するものである。このような分子量は、当業界の通常の方法、例えば、MALDI−MASSを利用して測定できる。
【0039】
本発明の好ましい実施形態によると、本発明の免疫補助剤脱アシル化非毒性LOSは、大腸菌(E.coli)由来であり、最も好ましくは、本発明者らが単離した菌であるE.coli EG0021(KCCM10374)由来のものである。
【0040】
本発明で利用される脱アシル化非毒性LOSは、免疫促進(immunostimulatory)効能が従来の免疫補助剤と比較して優れているだけではなく、毒性も遥かに減少しており、本発明のワクチン組成物に非常に適している。下記の実施例で立証したように、LPSの毒性を除去するためにLPSの多糖鎖を除去して得たリピドAのリン酸化を通じて得たモノホスホリルリピドA(MPL)より、本発明の脱アシル化非毒性LOSは、毒性が遥かに少ない。
【0041】
また、下記実施例に示されたように、本発明の脱アシル化非毒性LOSを種々の病原体の抗原と共に投与した場合、免疫反応が大きく増加することが分かる。
【0042】
本発明のワクチン組成物は、その基本的な組成、病原体の抗原と脱アシル化非毒性LOSだけでも十分な免疫反応を誘導して、特定疾患に対する予防効能を奏することができる。選択的に、本発明のワクチン組成物は、他の免疫補助剤を追加的に含むことができ、例えば、Mg、Ca、Sr、Ba及びRaからなる群から選択される第2族元素、Ti、Zr、Hf及びRfからなる群から選択される第4族元素又はアルミニウムの塩又はその水和物を含むことができる。前記塩は、好ましくは、オキシド、ペルオキシド、ヒドロキシド、カーボネート、ホスフェート、ピロホスフェート、ハイドロゲンホスフェート、ジハイドロゲンホスフェート、サルフェート、又はシリケートと共に形成される。例えば、本発明のワクチン組成物で追加的に利用できる免疫補助剤は、水酸化物マグネシウムヒドロキシド、マグネシウムカーボネートヒドロキシドペンタヒドレート、チタニウムジオキシド、カルシウムカーボネート、バリウムオキシド、バリウムヒドロキシド、バリウムペルオキシド、バリウムサルフェート、カルシウムサルフェート、カルシウムピロホスフェート、マグネシウムカーボネート、マグネシウムオキシド、アルミニウムヒドロキシド、アルミニウムホスフェート及び水和された硫酸アルミニウムカリウム(Alum)を含む。最も好ましくは、本発明のワクチン組成物で追加的に利用できる免疫補助剤は、アルミニウムヒドロキシドである。
【0043】
本発明のワクチン医薬組成物に含まれる薬剤学的に許容される担体は、製剤時に標準的に利用されるものであって、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウム、及びミネラルオイルなどを含むが、これらに限定されるものではない。本発明の医薬組成物は、前記成分の他に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含むことができる。適した薬剤学的に許容される担体及び製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(19th ed.,1995)に詳細に記載されている。
【0044】
本発明の医薬組成物は、経口又は非経口で投与でき、好ましくは、非経口投与であって、非経口投与の場合は、静脈内注入、皮下注入、筋肉注入、腹腔注入、経皮投与などにより投与できる。
【0045】
本発明の医薬組成物の適合した投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性、病的状態、飲食、投与時間、投与経路、排泄速度、及び反応感応性のような要因によって多様に処方することができる。一方、本発明の医薬組成物の経口投与量は、好ましくは、1日当り0.0001〜1,000mg/kg(体重)である。
【0046】
本発明の医薬組成物は、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できる方法により、薬剤学的に許容される担体及び/又は賦形剤を利用して製剤化することにより、単位容量形態に製造されるか、又は多用量容器内に入れて製造できる。この際、剤形は、オイル又は水性媒質中の溶液、懸濁液又は乳化液の形態であるか、エキス剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤又はカプセル剤の形態であってもよく、分散剤又は安定化剤をさらに含むことができる。
【0047】
本発明のワクチン組成物は、病原体に対する免疫反応を大きく誘導し、特定疾患の予防効能に優れているだけではなく、免疫補助剤として利用される脱アシル化非毒性LOSの毒性がほとんどなく、安全性側面でも非常に優れている。
【0048】
本発明で利用される脱アシル化非毒性LOSは、多様な病原体抗原のうち、結核菌抗原、炭疽菌抗原、HAV(A型肝炎ウイルス)の抗原、HBV(B型肝炎ウイルス)の抗原、HCV(C型肝炎ウイルス)の抗原、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)の抗原、インフルエンザウイルスの抗原、HSV抗原、Hib(ヘモフィルスインフルエンザb菌)の抗原、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)の抗原、コリネバクテリウムジフテリア(Corynebacterium diphtheria)の抗原、百日咳菌(Bordetella pertussis)の抗原、破傷風菌(Clostridium tetani)の抗原及びバリセラウイルスの抗原に対して特に優れた免疫反応を促進する作用をする。脱アシル化非毒性LOSのこのような優れた免疫反応促進効果は、下記実施例に立証されている。
【0049】
本発明の他の様態によると、本発明は、脱アシル化非毒性LOSを含む樹状細胞の成熟化誘導用の組成物を提供する。
【0050】
本発明のまた他の様態によると、本発明は、脱アシル化非毒性LOSを未成熟樹状細胞に処理する工程を含む成熟化樹状細胞の製造方法を提供する。
【0051】
樹状細胞ワクチンの製造において、生体から分離した樹状細胞を成熟化させなければならない。このような過程で脱アシル化非毒性LOSは、非常に有用に利用できる。
【0052】
樹状細胞ワクチンの製造方法によると、未成熟樹状細胞は、単核球又は造血母細胞由来であって、より好ましくは、単核球由来である。単核球から樹状細胞を誘導する方法がより好ましい理由は、多能性造血幹細胞/前駆細胞を使用する方法より比較的早く、均一な性質の樹状細胞を得ることができるからである。
【0053】
本発明の好ましい実施形態によると、前記単核球は、末梢血液から採集したものである。末梢血液内の前駆細胞(例えば、単核球又は造血幹細胞)から未成熟樹状細胞を得る方法は、末梢血液における他の細胞から前記前駆細胞を分離し、樹状細胞に分化誘導させる過程で実施でき、また、末梢血液における他の細胞から分離せずに前記前駆細胞を樹状細胞に分化誘導させる過程で実施することもできる。
【0054】
次いで、末梢血液から得た単核球を樹状細胞に分化誘導する。樹状細胞に分化させるために適したサイトカインを含む培地で単核球を培養する。利用されるサイトカインは、GM−CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)、IL−4(インターロイキン−4)、IL−13又はこれらの組み合わせである。添加されるサイトカインの適した量は、樹状細胞への分化をするに十分な量であって、各研究者の実験室で実験的に選択されている量である。
【0055】
単核球から樹状細胞の分化を目的とする第1培養の期間は、サイトカインを使用して進行する場合、標準的に5日以上であり、好ましくは、6〜7日間である。
【0056】
上述の分化過程で採集した未成熟樹状細胞を利用して最終的に成熟化過程を実施する。即ち、本発明の脱アシル化非毒性LOSを含む培地を有する培養器で培養し、樹状細胞を成熟化させる。第2培養の期間は、標準的に10時間以上、好ましくは、20時間以上であり、例えば、1〜3日間である。
【0057】
本発明は、効率的に成熟化された樹状細胞ワクチンを製造できる。
【発明の効果】
【0058】
本発明の特徴及び利点を要約すると、下記の通りである:
(a)本発明のワクチン組成物は、病原体由来抗原と免疫補助剤として脱アシル化非毒性LOSを利用する。
(b)免疫補助剤である脱アシル化非毒性LOSは、特定病原体に対する免疫反応で非常に優れた免疫促進効能を奏するだけではなく、毒性がほとんどなく、安全性に非常に優れている。
(c)また、脱アシル化非毒性LOSは、効率的に成熟化された樹状細胞ワクチンを製造できるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1図1は、新規免疫補助剤CIA05が、MPLより細胞毒性(TNF−α分泌)が低いことを示すグラフである。
図2a図2aは、本発明の結核ワクチンの効能分析をした実験結果を示すグラフである。結核菌に対する抗原Ag85Aを使用した。
図2b図2bは、本発明の結核ワクチンの効能分析をした実験結果を示すグラフである。結核菌に対する抗原HspXを使用した。
図2c図2cは、本発明の結核ワクチンの効能分析をした実験結果を示すグラフである。結核菌に対する抗原ホスフェート結合タンパク質1を使用した。
図2d図2dは、本発明の結核ワクチンの効能分析をした実験結果を示すグラフである。結核菌に対する抗原ESAT−6を使用した。
図2e図2eは、Ag85A、HspX、ESAT−6及び38kDaの免疫促進能を比較した実験結果を示すグラフである。CIA05(0.5μg)及びそれぞれの抗原(各2μg)を利用した。
図3図3は、本発明の炭疽ワクチンの効能分析をした実験結果を示すグラフである。
図4図4は、本発明のA型肝炎ワクチンの効能分析をした実験結果を示すグラフである。
図5図5は、本発明のB型肝炎ワクチンの効能分析をした実験結果を示すグラフである。
図6図6は、本発明のC型肝炎ワクチンの効能分析をした実験結果を示すグラフである。
図7図7は、本発明のHIVワクチンの効能分析をした実験結果を示すグラフである。
図8図8は、本発明のインフルエンザワクチンの効能分析をした実験結果を示すグラフである。
図9a図9aは、本発明のHSV−2(単純ヘルペスウイルス2型)ワクチンの効能分析をした実験結果を示すグラフである。抗原としてgD抗原を利用した。
図9b図9bは、本発明のHSV−2(単純ヘルペスウイルス2型)ワクチンの効能分析をした実験結果を示すグラフである。抗原としてgB抗原を利用した。
図9c図9cは、gD抗原及びgB抗原の免疫促進能を比較した実験結果を示すグラフである。CIA05(0.5μg)及びそれぞれの抗原(各2μg)を利用した。
図10図10は、本発明のHib(ヘモフィルスインフルエンザb菌)ワクチンの効能分析をした実験結果を示すグラフである。
図11図11は、本発明の髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)ワクチンの効能分析をした実験結果を示すグラフである。
図12a図12aは、本発明のDPTワクチンの効能分析をした実験結果を示すグラフである。抗原としてジフテリア毒素を利用した。
図12b図12bは、本発明のDPTワクチンの効能分析をした実験結果を示すグラフである。抗原として百日咳毒素を利用した。
図12c図12cは、本発明のDPTワクチンの効能分析をした実験結果を示すグラフである。抗原として破傷風毒素を利用した。
図12d図12dは、ジフテリア毒素、百日咳毒素及び破傷風毒素の免疫促進能を比較した実験結果を示すグラフである。CIA05(0.5μg)及びそれぞれの抗原(各2μg)を利用した。
図13図13は、本発明の水痘ワクチンの効能分析をした実験結果を示すグラフである。
図14a図14aは、マウスBMDCs(骨髄由来樹状細胞)において、樹状細胞の成熟化に対するCIAO5(実施例1で製造された免疫補助剤)の効能を分析した結果を示すグラフである。
図14b図14bは、ヒトMDDCs(単球由来樹状細胞)において、樹状細胞の成熟化に対するCIAO5(実施例1で製造された免疫補助剤)の効能を分析した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明するが、これら実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれら実施例に限定されないことは、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者にとっては自明なことであろう。
【実施例】
【0061】
実施例1:新規免疫補助剤としての非常に短いリポオリゴ糖(LOS)CIA05の製造
本発明者らは、健康な人間の腸に住む大腸菌からリポ多糖鎖の長さが非常に短いLPSを有する菌株(E.coli EG0021)を既にスクリーニングし、この菌株を寄託機関韓国微生物保存センタに2002年5月2日付にて寄託し、寄託番号KCCM 10374を付与された(参照:大韓民国特許登録第0456681号;WO2004/039413;大韓民国特許登録第0740237号;WO2006/121232)。前記菌株からのLPS精製は、大韓民国特許登録第0456681号;WO2004/039413;大韓民国特許登録第0740237号;及びWO2006/121232に開示された方法にしたがって実施した。精製されたLPSの分子量をMALDI−MASS(Shimadz社、Axima−LNR V 2.3.5(Mode Liner、Power:106))で測定し、測定結果、約3,500Daの分子量を有することを確認した。精製されたLPSを大韓民国特許登録第0456681号;WO2004/039413;大韓民国特許登録第0740237号;及びWO2006/121232に開示されたプロトコールにしたがって脱毒素化した。簡単に述べると、3mg/mLの前記精製されたLPSに2N NaOHを1:1容量で混ぜた後、60℃で10分毎に1回ずつ振って140分間脱アシル化させ、初期0.2N NaOHの約1/5程度の容量の1Nアセト酸を入れてpH7.0に調整した。pH調整後、エタノール沈殿して、非毒性リポオリゴサッカライド(CIA05)を得た。
【0062】
実施例2:新規の免疫補助剤であるCIA05と従来の免疫補助剤であるMPLとの毒性比較実験
本発明のワクチンで免疫補助剤として利用される前記実施例で製造したCIA05と、既存の子宮頸部癌ワクチンに使用しているMPL(モノホスホリルリピドA)の毒性を比較分析した。健康な人間の血液を提供してもらって、PBMC(末梢血単核球)を分離し、これを24−ウェル培養ディッシュに5×10細胞/mLの濃度でシーディングした。この際、培養液は、RPMI 1640(Gibco)に10%FBS(Gibco)を混合したものを使用して、一つのウェル当り容量は、1mLに均等にした。用意したディッシュに下記のような条件でそれぞれ処理した:1)陰性対照群:BSS(平衡塩類溶液)100μL;2)脱アシル化非毒性LOS(CIA05)10μg/100μL;3)MPL(E.coli F583 MPL)10μg/100μL。
【0063】
12時間後、処理された培養液を集めて遠心分離し、酵素免疫測定法(ELISA)を利用してTHP−1(急性単球性白血病)で分泌される炎症性タンパク質であるTNF−αの量を、ELISAキット(R&D system、DY210)を使用してそれぞれ測定した。図1から分かるように、既存のワクチン補助剤として使用しているMPLより毒性が約1/3程度と小さいことを確認した。
【0064】
実施例3:本発明の結核ワクチンの効能分析
結核ワクチン抗原と免疫補助剤CIA05の免疫
結核ワクチンで免疫補助剤CIA05の効能を確認するために結核菌株(Mycobacterium tuberculosis)の4種の抗原を使用した。その4種の抗原は、Ag85A(32kDa)、HspX(16kDa)、ホスフェート結合タンパク質1(38kDa)及びESAT−6(6kDa)である。抗原(各2μg)単独、或いはAlum(アルミニウムヒドロキシド;Brenntag、Germany)100μg又はCIA05(0.5μg)の混合物(最終容量100μL)を、それぞれ6週齢Balb/cマウス(SLC、Japan)に、1週間隔で3回注射した。
【0065】
結核ワクチン抗原特異抗体の力価測定
免疫後の血清における結核抗原特異抗体の力価を測定するために、エンド−ポイント希釈ELISA法(酵素結合免疫吸着測定法)を使用した。100μLのAg85A(32kDa)、HspX(16kDa)、ホスフェート結合タンパク質1(38kDa)及びESAT−6(6kDa)をそれぞれ1μg/mLの濃度で96−ウェルプレートにコーティング(4℃、一晩中)した後、1%BSA(ウシ血清アルブミン)300μLでブロッキングをした(室温、1時間)。ブロッキング後、0.05%Tween−20を含むPBSで3回洗浄し、免疫後得られた血清100μLを反応させた(37℃、2時間)。結核抗原特異抗体を確認するために、ホースラディッシュペルオキシダーゼ結合抗マウスIgG(Zymed)を反応させた後、TMB(テトラメチルベンジジン、BD Bio science、55555214)を添加して、1N HSOで反応を停止した。実験結果は、450nmで吸光度を測定して、免疫後回収した血清における結核抗原特異抗体の量を確認した。
【0066】
結核ワクチンにおける免疫補助剤CIA05の効能分析
結核菌株の4種の抗原と免疫補助剤CIA05の効能を分析した結果、Ag85A(32kDa)抗原の場合、Alumを利用した試験群では、抗原単独で使用した試験群に比べ、結核抗原特異抗体の生成が約4倍(Alum 50μg)又は約8倍(Alum 100μg)程度増加し、CIA05を利用した場合は、抗原単独で使用した試験群に比べ、結核抗原特異抗体の生成が約16倍(CIA05 0.5μg)又は約128倍(CIA05 1μg)程度増加した(図2a)。また、CIA05を利用した場合は、結核抗原特異抗体の生成量が投与量に依存的に大いに増加し、CIA05が結核抗原Ag85Aに非常に適した免疫補助剤であることが分かる。一方、免疫補助剤としてCIA05とAlumを同時に利用した場合、0.5μgのCIA05のみを利用した場合より、抗体生成量が約2倍(Alum 50μg)又は約4倍(Alum 100μg)増加した。免疫補助剤としてCIA05とAlumを同時に利用した場合、1.0μgのCIA05のみを利用した場合より、抗体生成量が約2倍(Alum 50μg)又は約4倍(Alum 100μg)増加した。
【0067】
HspX(16kDa)抗原では、Alumを利用した試験群では、抗原単独で使用した試験群に比べ、結核抗原特異抗体の生成が約4倍(Alum 50μg)又は約8倍(Alum 100μg)程度増加し、CIA05を利用した場合は、抗原単独で使用した試験群に比べ、結核抗原特異抗体の生成が約16倍(CIA05 0.5μg)又は約128倍(CIA05 1μg)程度増加した(図2b)。また、CIA05を利用した場合は、結核抗原特異抗体の生成量が投与量に依存的に大いに増加し、CIA05が結核抗原HspX(16kDa)に非常に適した免疫補助剤であることが分かる。一方、免疫補助剤としてCIA05とAlumを同時に利用した場合、0.5μgのCIA05のみを利用した場合より、抗体生成量が約2倍(Alum 50μg)又は約4倍(Alum 100μg)増加した。免疫補助剤としてCIA05とAlumを同時に利用した場合、1.0μgのCIA05のみを利用した場合より、抗体生成量が約2倍(Alum 50μg)又は約4倍(Alum 100μg)増加した。
【0068】
ホスフェート結合タンパク質1(38kDa)抗原に対しては、Alumを利用した試験群では、抗原単独で使用した試験群に比べ、結核抗原特異抗体の生成が約4倍(Alum 50μg)又は約8倍(Alum 100μg)程度増加し、CIA05を利用した場合は、抗原単独で使用した試験群に比べ、結核抗原特異抗体の生成が約8倍(CIA05 0.5μg)又は約64倍(CIA05 1μg)程度増加した(図2c)。また、CIA05を利用した場合は、結核抗原特異抗体の生成量が投与量に依存的に大いに増加し、CIA05が結核抗原ホスフェート結合タンパク質1(38kDa)に非常に適した免疫補助剤であることが分かる。一方、免疫補助剤としてCIA05とAlumを同時に利用した場合、0.5μgのCIA05のみを利用した場合より、抗体生成量が約2倍(Alum 50μg)又は約4倍(Alum 100μg)増加した。免疫補助剤としてCIA05とAlumを同時に利用した場合、1.0μgのCIA05のみを利用した場合より、抗体生成量が約2倍(Alum 50μg)又は約4倍(Alum 100μg)増加した。
【0069】
ESAT−6(6kDa)抗原に対しては、Alumを利用した試験群では、抗原単独で使用した試験群に比べ、結核抗原特異抗体の生成が約4倍(Alum 50μg)又は約8倍(Alum 100μg)程度増加し、CIA05を利用した場合は、抗原単独で使用した試験群に比べ、結核抗原特異抗体の生成が約16倍(CIA05 0.5μg)又は約128倍(CIA05 1μg)程度増加した(図2d)。また、CIA05を利用した場合は、結核抗原特異抗体の生成量が投与量に依存的に大いに増加し、CIA05が結核抗原ESAT−6(6kDa)に非常に適した免疫補助剤であることが分かる。一方、免疫補助剤としてCIA05とAlumを同時に利用した場合、0.5μgのCIA05のみを利用した場合より、抗体生成量が約2倍(Alum 50μg)又は約4倍(Alum 100μg)増加した。免疫補助剤としてCIA05とAlumを同時に利用した場合、1.0μgのCIA05のみを利用した場合より、抗体生成量が約2倍(Alum 50μg)又は約4倍(Alum 100μg)増加した。
【0070】
結核抗原のうち、免疫促進能に最も優れた抗原を選択するための分析を実施した(図2e)。実験結果、結核菌抗原のうち、Ag85A、HspX、ESAT−6及び38kDaの順に免疫促進能があって、これにより、本発明のCIA05と最も適した抗原は、Ag85Aであることが分かった。
【0071】
結論的に、免疫補助剤としてCIA05を含む本発明の結核ワクチンは、免疫効能、即ち、ワクチン効能に非常に優れており、従来の免疫補助剤であるAlumと比較し、結核抗原に対して著しく優れた免疫促進能を有していることが分かる。
【0072】
実施例4:本発明の炭疽ワクチンの効能分析
炭疽ワクチン抗原であるPAと免疫補助剤CIA05の免疫
炭疽菌(Bacillus anthracis)は、3種のタンパク質で2種の毒素を生成するが、ここで3種のタンパク質は、PA(感染防御抗原)、LF(致死抗原)及びEA(浮腫抗原)から構成される。このうち、PAが炭疽ワクチンに使用されており、本試験では、組み換え全長PA抗原を使用した。炭疽菌のPA抗原10μgを6週齢雄性Balb/cマウスに2週間隔で3回腹腔注射した。最終容量100μLに含まれる10μgのPA抗原を投与した。最終容量100μLに含まれる0.5μg又は1μgのCIA05を投与した。最終容量100μLに含まれる50μg又は100μgのAlumを投与した。陰性対照群は、PBS(リン酸緩衝食塩水、pH7.3)を毎回100μLずつ注射した。マウスに3回注射後、マウスから全血を採取して、遠心分離を通じて血清を得た。免疫後、血清内PA特異抗体力価を測定するために、実施例3のようにエンドポイントELISA方法を使用した。
【0073】
免疫化後、血清におけるPA特異抗原を分析した結果、PA抗原を単独で免疫化した場合より、免疫補助剤としてCIA05を0.5μg投与した時、10倍、1μg投与した時、21倍、PA特異抗原が増加した(図3)。これは、炭疽ワクチンにおいて、CIA05が炭疽抗原のPAと共に免疫補助剤として役割をすることを示している。また、CIA05とAlum(アルミニウムヒドロキシド)を混合して免疫補助剤として使用した時、PA特異免疫反応を増進させることを確認することができた(図3)。
【0074】
結論的に、免疫補助剤としてCIA05を含む本発明の炭疽ワクチン、特にPA抗原とCIA05の組み合わせを利用した炭疽ワクチンは、免疫効能、即ち、ワクチン効能に非常に優れている。
【0075】
実施例5:本発明のA型肝炎(A型肝炎ウイルス;HAV)ワクチンの効能分析
抗原としては、MRC−5細胞株で培養された不活化されたHAVを使用した。6週齢Balb/cマウスに不活化されたHAVを1週間隔で3回注射した。この際、HAV単独又はCIA05を含めて注射した。3回注射1週間後、実施例3のように血清を分離して、HAV特異抗体をエンドポイントELISA方法で測定した。
【0076】
HAV抗原に対してAlumを利用した試験群では、抗原単独で使用した試験群に比べ、HAV抗原特異抗体の生成が約2倍(Alum 50μg)又は約4倍(Alum 100μg)程度増加し、CIA05を利用した場合は、抗原単独で使用した試験群に比べ、HAV抗原特異抗体の生成が約8倍(CIA05 0.5μg)又は約32倍(CIA05 1μg)程度増加した(図4)。また、CIA05を利用した場合は、HAV抗原特異抗体の生成量が投与量に依存的に大いに増加し、CIA05がHAV抗原(不活化されたHAV)に非常に適した免疫補助剤であることが分かる。一方、免疫補助剤としてCIA05とAlumを同時に利用した場合、0.5μgのCIA05のみを利用した場合より、抗体生成量が約2倍(Alum 50μg)又は約4倍(Alum 100μg)増加した。免疫補助剤としてCIA05とAlumを同時に利用した場合、1.0μgのCIA05のみを利用した場合より、抗体生成量が約2倍(Alum 50μg)又は約4倍(Alum 100μg)増加した。
【0077】
結論的に、免疫補助剤としてCIA05を含む本発明のHAVワクチン、特に不活化されたHAVとCIA05の組み合わせを利用したHAVワクチンは、免疫効能、即ち、ワクチン効能に非常に優れている。
【0078】
実施例6:本発明のB型肝炎(B型肝炎ウイルス;HBV)ワクチンの効能分析
HBV予防ワクチンにおいて、HBVの表面抗原であるHBsAg(adrサブタイプ)を、Hansenula polymorphaで組み換えHBsAgを発現、精製し、抗原として使用した。Balb/cマウスにHBV抗原であるHBsAg 2μgを1週間隔で3回注射した。この際、抗原単独又はAlumやCIA05を含めて注射した。3回注射1週間後、実施例3のように血清を分離してHBsAg特異抗体をエンドポイントELISA方法で測定した。
【0079】
HBsAg抗原に対してAlumを利用した試験群では、抗原単独で使用した試験群に比べ、HBsAg抗原特異抗体の生成が約2倍(Alum 50μg)又は約4倍(Alum 100μg)程度増加し、CIA05を利用した場合は、抗原単独で使用した試験群に比べ、HBsAg抗原特異抗体の生成が約8倍(CIA05 0.5μg)又は約16倍(CIA05 1μg)程度増加した(図5)。また、CIA05を利用した場合は、HBsAg抗原特異抗体の生成量が投与量に依存的に大いに増加し、CIA05がHBsAg抗原に非常に適した免疫補助剤であることが分かる。一方、免疫補助剤としてCIA05とAlumを同時に利用した場合、0.5μgのCIA05のみを利用した場合より、抗体生成量が約2倍(Alum 50μg)又は約4倍(Alum 100μg)増加した。免疫補助剤としてCIA05とAlumを同時に利用した場合、1.0μgのCIA05のみを利用した場合より、抗体生成量が約4倍(Alum 50μg)又は約8倍(Alum 100μg)増加した。
【0080】
結論的に、免疫補助剤としてCIA05を含む本発明のHBVワクチン、特にHBsAg抗原とCIA05の組み合わせを利用したHBVワクチンは、免疫効能、即ち、ワクチン効能に非常に優れている。
【0081】
実施例7:本発明のC型肝炎(C型肝炎ウイルス;HCV)ワクチンの効能分析
HCVワクチンにおいて、免疫補助剤CIA05の効能を確認するために、抗原としてはHCVの組み換えNS3(Z00042、GenScrpt)を購入して使用した。
【0082】
6週齢Balb/cマウスにNS3抗原2μgを1週間隔で3回注射し、抗原単独又はAlumやCIA05を含めて注射した。3回注射1週間後、実施例1のように血清を分離してNS3特異抗体をエンドポイントELISA方法で測定した。
【0083】
NS3抗原に対してAlumを利用した試験群では、抗原単独で使用した試験群に比べ、NS3抗原特異抗体の生成が約2倍(Alum 50μg)又は約4倍(Alum 100μg)程度増加し、CIA05を利用した場合は、抗原単独で使用した試験群に比べ、NS3抗原特異抗体の生成が約4倍(CIA05 0.5μg)又は約16倍(CIA05 1μg)程度増加した(図6)。また、CIA05を利用した場合は、NS3抗原特異抗体の生成量が投与量に依存的に大いに増加し、CIA05がNS3抗原に非常に適した免疫補助剤であることが分かる。一方、免疫補助剤としてCIA05とAlumを同時に利用した場合、0.5μgのCIA05のみを利用した場合より、抗体生成量が約2倍(Alum 50μg)又は約4倍(Alum 100μg)増加した。免疫補助剤としてCIA05とAlumを同時に利用した場合、1.0μgのCIA05のみを利用した場合より、抗体生成量が約2倍(Alum 50μg)又は約4倍(Alum 100μg)増加した。
【0084】
結論的に、免疫補助剤としてCIA05を含む本発明のHCVワクチン、特にNS3抗原とCIA05の組み合わせを利用したHCVワクチンは、免疫効能、即ち、ワクチン効能に非常に優れている。
【0085】
実施例8:本発明のHIVワクチンの効能分析
HIVワクチンにおいて、免疫補助剤CIA05の効能を確認するために、抗原としてはHIV−1エンベロープ(Env)抗原(H9909、Sigma)を購入して使用した。6週齢Balb/cマウスにHIV−1エンベロープ抗原2μgを1週間隔で3回注射し、抗原単独又はAlumやCIA05を含めて注射した。3回注射1週間後、実施例1のように血清を分離してHIV−1エンベロープ抗原特異抗体をエンドポイントELISA方法で測定した。
【0086】
HIV−1エンベロープ抗原に対してAlumを利用した試験群では、抗原単独で使用した試験群に比べ、HIV−1エンベロープ抗原特異抗体の生成が約4倍(Alum 50μg)又は約8倍(Alum 100μg)程度増加し、CIA05を利用した場合は、抗原単独で使用した試験群に比べ、HIV−1エンベロープ抗原特異抗体の生成が約16倍(CIA05 0.5μg)又は約64倍(CIA05 1μg)程度増加した(図7)。また、CIA05を利用した場合は、HIV−1エンベロープ抗原特異抗体の生成量が投与量に依存的に大いに増加し、CIA05がHIV−1エンベロープ抗原に非常に適した免疫補助剤であることが分かる。一方、免疫補助剤としてCIA05とAlumを同時に利用した場合、0.5μgのCIA05のみを利用した場合より、抗体生成量が約4倍(Alum 50μg)又は約8倍(Alum 100μg)増加した。免疫補助剤としてCIA05とAlumを同時に利用した場合、1.0μgのCIA05のみを利用した場合より、抗体生成量が約4倍(Alum 50μg)又は約8倍(Alum 100μg)増加した。
【0087】
結論的に、免疫補助剤としてCIA05を含む本発明のHIVワクチン、特にHIV−1エンベロープ抗原とCIA05の組み合わせを利用したHIVワクチンは、免疫効能、即ち、ワクチン効能に非常に優れている。
【0088】
実施例9:本発明のインフルエンザワクチンの効能分析
インフルエンザワクチンにおいて免疫補助剤CIA05の効能を確認するために、3種のインフルエンザウイルス株から得たHAサブユニット(CJ Co.、Incheon、Korea)を使用した。3種のインフルエンザウイルス株は、A/New Caledonia/20/99(HIN1)、A/Panama/2007/99(H3N2)、B/Shangdong/7/97である。6週齢Balb/cマウスに上記3種のインフルエンザウイルス株由来のHAサブユニット1.5μgを4週間隔で2回注射した。この際、抗原単独又はAlum 25μgやCIA05 25μgを含めて注射した。2回注射4週間後、実施例1のように、注射したマウスから血清を分離して、インフルエンザHAサブユニット特異抗体をエンドポイントELISA方法で測定した。
【0089】
インフルエンザHAサブユニット抗原に対してAlumを利用した試験群では、抗原単独で使用した試験群に比べ、インフルエンザHAサブユニット抗原特異抗体の生成が約2倍(Alum 50μg)又は約4倍(Alum 100μg)程度増加し、CIA05を利用した場合は、抗原単独で使用した試験群に比べ、インフルエンザHAサブユニット抗原特異抗体の生成が約4倍(CIA05 0.5μg)又は約8倍(CIA05 1μg)程度増加した(図8)。また、CIA05を利用した場合は、インフルエンザHAサブユニット抗原特異抗体の生成量が投与量に依存的に大いに増加し、CIA05がインフルエンザHAサブユニット抗原に非常に適した免疫補助剤であることが分かる。一方、免疫補助剤としてCIA05とAlumを同時に利用した場合、0.5μgのCIA05のみを利用した場合より、抗体生成量が約2倍(Alum 50μg)又は約8倍(Alum 100μg)増加した。免疫補助剤としてCIA05とAlumを同時に利用した場合、1.0μgのCIA05のみを利用した場合より、抗体生成量が約2倍(Alum 50μg)又は約8倍(Alum 100μg)増加した。
【0090】
結論的に、免疫補助剤としてCIA05を含む本発明のインフルエンザワクチン、特にインフルエンザHAサブユニット抗原とCIA05の組み合わせを利用したインフルエンザワクチンは、免疫効能、即ち、ワクチン効能に非常に優れている。
【0091】
実施例10:本発明のHSV−2(単純ヘルペスウイルス2型)ワクチンの効能分析
HSV−2ワクチンにおいて免疫補助剤CIA05の効能を確認するために、抗原としては、HSV−2の糖タンパク質gDとgBを使用した。この2種の抗原は、糖化が重要であるため、正確な糖化のために、動物細胞であるCHO細胞株から発現及び精製した(Boucher et al.,Detection of antibodies to herpes simplex virus type 2 with a mammalian cell line expressing glycoprotein gG−2.Clin.Diagn.Virol.1(1):29−38(1993))。CHO細胞株で発現、精製した2種の抗原を6週齢Balb/cマウスにそれぞれ2μgずつ1週間隔で3回注射し、試験群は、抗原単独又はAlumやCIA05を含めて注射した。3回注射1週間後、実施例1のように血清を分離して、HSV−2抗原であるgDとgB特異抗体をエンドポイントELISA方法で測定した。
【0092】
gD抗原に対してAlumを利用した試験群では、抗原単独で使用した試験群に比べ、gD抗原特異抗体の生成が約8倍(Alum 50μg)又は約32倍(Alum 100μg)程度増加し、CIA05を利用した場合は、抗原単独で使用した試験群に比べ、gD抗原特異抗体の生成が約24倍(CIA05 0.5μg)又は約128倍(CIA05 1μg)程度増加した(図9a)。また、CIA05を利用した場合は、gD抗原特異抗体の生成量が投与量に依存的に大いに増加し、CIA05がgD抗原に非常に適した免疫補助剤であることが分かる。一方、免疫補助剤としてCIA05とAlumを同時に利用した場合、0.5μgのCIA05のみを利用した場合より、抗体生成量が約4倍(Alum 50μg)又は約16倍(Alum 100μg)増加した。免疫補助剤としてCIA05とAlumを同時に利用した場合、1.0μgのCIA05のみを利用した場合より、抗体生成量が約2倍(Alum 50μg)又は約16倍(Alum 100μg)増加した。
【0093】
gB抗原に対しては、Alumを利用した試験群では、抗原単独で使用した試験群に比べ、gB抗原特異抗体の生成が約8倍(Alum 50μg)又は約32倍(Alum 100μg)程度増加し、CIA05を利用した場合は、抗原単独で使用した試験群に比べ、gB抗原特異抗体の生成が約16倍(CIA05 0.5μg)又は約32倍(CIA05 1μg)程度増加した(図9b)。また、CIA05を利用した場合は、gB抗原特異抗体の生成量が投与量に依存的に大いに増加し、CIA05がgB抗原に非常に適した免疫補助剤であることが分かる。一方、免疫補助剤としてCIA05とAlumを同時に利用した場合、0.5μgのCIA05のみを利用した場合より、抗体生成量が約4倍(Alum 50μg)又は約16倍(Alum 100μg)増加した。免疫補助剤としてCIA05とAlumを同時に利用した場合、1.0μgのCIA05のみを利用した場合より、抗体生成量が約4倍(Alum 50μg)又は約16倍(Alum 100μg)増加した。
【0094】
HSV−2抗原のうち、免疫促進能に最も優れた抗原を選択するための分析を実施した(図9c)。実験結果、HSV−2抗原のうち、gD抗原がgB抗原より免疫促進能に優れており、これにより、本発明のCIA05と最も適した抗原は、gD抗原であることが分かった。
【0095】
結論的に、免疫補助剤としてCIA05を含む本発明のHSV−2ワクチン、特にgD抗原とCIA05の組み合わせを利用したHSV−2ワクチンは、免疫効能、即ち、ワクチン効能に非常に優れている。
【0096】
実施例11:本発明のHib(ヘモフィルスインフルエンザb菌)ワクチンの効能分析
Hib抗原としては、ActHIB(Haemophilus b conjugate Vaccine、Tetanus Toxoid Conjugate、Sanofi Pasteur SA)を購入して使用した。Balb/cマウスにActHIBを2週間隔で2回注射した。この際、ワクチン単独又はAlumやCIA05を含めて注射した。2回注射1週間後、実施例1のように、注射したマウスから血清を分離して、Hib特異抗体をエンドポイントELISA方法で測定した。
【0097】
ActHIB抗原に対してAlumを利用した試験群では、抗原単独で使用した試験群に比べ、ActHIB抗原特異抗体の生成が約4倍(Alum 50μg)又は約16倍(Alum 100μg)程度増加し、CIA05を利用した場合は、抗原単独で使用した試験群に比べ、ActHIB抗原特異抗体の生成が約16倍(CIA05 0.5μg)又は約32倍(CIA05 1μg)程度増加した(図10)。また、CIA05を利用した場合は、ActHIB特異抗体の生成量が投与量に依存的に大いに増加し、CIA05がActHIBに非常に適した免疫補助剤であることが分かる。一方、免疫補助剤としてCIA05とAlumを同時に利用した場合、0.5μgのCIA05のみを利用した場合より、抗体生成量が約8倍(Alum 50μg)又は約16倍(Alum 100μg)増加した。免疫補助剤としてCIA05とAlumを同時に利用した場合、1.0μgのCIA05のみを利用した場合より、抗体生成量が約4倍(Alum 50μg)又は約24倍(Alum 100μg)増加した。
【0098】
結論的に、免疫補助剤としてCIA05を含む本発明のHibワクチン、特にActHIBとCIA05の組み合わせを利用したHibワクチンは、免疫効能、即ち、ワクチン効能に非常に優れている。
【0099】
実施例12:本発明の髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)ワクチンの効能分析
髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)ワクチンで免疫補助剤CIA05の効能を確認するために、弱毒化された髄膜炎菌からプロテオソームを分離して抗原として使用した(Lowell et al.,Proteosome−lipopeptide vaccines:enhancement of immunogenicity for malaria CS peptides.Science,240:800−802(1980))。6週齢Balb/cマウスに抗原を2週間隔で2回注射し、試験群は、ワクチン単独又はCIA05を含む二つの試験群を構成した。2回注射1週間後、実施例1のように血清を分離して、抗原として使用した髄膜炎菌プロテオソーム特異抗体をエンドポイントELISA方法で測定した。
【0100】
髄膜炎菌プロテオソーム抗原に対してAlumを利用した試験群では、抗原単独で使用した試験群に比べ、抗原特異抗体の生成が約4倍(Alum 50μg)又は約8倍(Alum 100μg)程度増加し、CIA05を利用した場合は、抗原単独で使用した試験群に比べ、抗原特異抗体の生成が約8倍(CIA05 0.5μg)又は約16倍(CIA05 1μg)程度増加した(図11)。また、CIA05を利用した場合は、抗原特異抗体の生成量が投与量に依存的に大いに増加し、CIA05が髄膜炎菌プロテオソーム抗原に非常に適した免疫補助剤であることが分かる。一方、免疫補助剤としてCIA05とAlumを同時に利用した場合、0.5μgのCIA05のみを利用した場合より、抗体生成量が約4倍(Alum 50μg)又は約16倍(Alum 100μg)増加した。免疫補助剤としてCIA05とAlumを同時に利用した場合、1.0μgのCIA05のみを利用した場合より、抗体生成量が約4倍(Alum 50μg)又は約16倍(Alum 100μg)増加した。
【0101】
結論的に、免疫補助剤としてCIA05を含む本発明の髄膜炎菌ワクチン、特に髄膜炎菌プロテオソームとCIA05の組み合わせを利用した髄膜炎菌ワクチンは、免疫効能、即ち、ワクチン効能に非常に優れている。
【0102】
実施例13:本発明のジフテリア、破傷風、百日咳(DPT)ワクチンの効能分析
DPTは、ジフテリア、百日咳菌、破傷風菌により誘発される疾病を予防するワクチンである。
【0103】
これら疾病のワクチンに対してCIA05の免疫補助剤効能を確認するために、ジフテリアは、コリネバクテリウムジフテリア(Corynebacterium diphtheria)由来のジフテリア毒素(D0564、Sigma)を、百日咳は、百日咳菌(Bordetella pertussis)由来の百日咳毒素(P7208、Sigma)を、破傷風は、破傷風菌(Clostridium tetani)由来の破傷風毒素(T3194、Sigma)を購入して使用した。3種の毒素を6週齢Balb/cマウスにそれぞれ2μgずつを混合して2週間隔で2回注射した。この際、抗原単独又はAlumやCIA05を含めて注射した。2回注射1週間後、実施例1のように血清を分離して、3種の毒素に対する特異抗体をエンドポイントELISA方法で測定した。
【0104】
ジフテリア毒素抗原に対してAlumを利用した試験群では、抗原単独で使用した試験群に比べ、抗原特異抗体の生成が約32倍(Alum 50μg)又は約64倍(Alum 100μg)程度増加し、CIA05を利用した場合は、抗原単独で使用した試験群に比べ、抗原特異抗体の生成が約32倍(CIA05 0.5μg)又は約128倍(CIA05 1μg)程度増加した(図12a)。また、CIA05を利用した場合は、抗原特異抗体の生成量が投与量に依存的に大いに増加し、CIA05がジフテリア毒素に非常に適した免疫補助剤であることが分かる。一方、免疫補助剤としてCIA05とAlumを同時に利用した場合、0.5μgのCIA05のみを利用した場合より、抗体生成量が約8倍(Alum 50μg)又は約16倍(Alum 100μg)増加した。免疫補助剤としてCIA05とAlumを同時に利用した場合、1.0μgのCIA05のみを利用した場合より、抗体生成量が約4倍(Alum 50μg)又は約8倍(Alum 100μg)増加した。
【0105】
百日咳毒素抗原に対してAlumを利用した試験群では、抗原単独で使用した試験群に比べ、抗原特異抗体の生成が約4倍(Alum 50μg)又は約16倍(Alum 100μg)程度増加し、CIA05を利用した場合は、抗原単独で使用した試験群に比べ、抗原特異抗体の生成が約16倍(CIA05 0.5μg)又は約24倍(CIA05 1μg)程度増加した(図12b)。また、CIA05を利用した場合は、抗原特異抗体の生成量が投与量に依存的に大いに増加し、CIA05が百日咳毒素抗原に非常に適した免疫補助剤であることが分かる。一方、免疫補助剤としてCIA05とAlumを同時に利用した場合、0.5μgのCIA05のみを利用した場合より、抗体生成量が約4倍(Alum 50μg)又は約32倍(Alum 100μg)増加した。免疫補助剤としてCIA05とAlumを同時に利用した場合、1.0μgのCIA05のみを利用した場合より、抗体生成量が約8倍(Alum 50μg)又は約32倍(Alum 100μg)増加した。
【0106】
破傷風毒素抗原に対してAlumを利用した試験群では、抗原単独で使用した試験群に比べ、抗原特異抗体の生成が約4倍(Alum 50μg)又は約8倍(Alum 100μg)程度増加し、CIA05を利用した場合は、抗原単独で使用した試験群に比べ、抗原特異抗体の生成が約16倍(CIA05 0.5μg)又は約32倍(CIA05 1μg)程度増加した(図12c)。また、CIA05を利用した場合は、抗原特異抗体の生成量が投与量に依存的に大いに増加し、CIA05が破傷風毒素抗原に非常に適した免疫補助剤であることが分かる。一方、免疫補助剤としてCIA05とAlumを同時に利用した場合、0.5μgのCIA05のみを利用した場合より、抗体生成量が約4倍(Alum 50μg)又は約8倍(Alum 100μg)増加した。免疫補助剤としてCIA05とAlumを同時に利用した場合、1.0μgのCIA05のみを利用した場合より、抗体生成量が約4倍(Alum 50μg)又は約8倍(Alum 100μg)増加した。
【0107】
DPT抗原のうち、免疫促進能に最も優れた抗原を選択するための分析を実施した(図12d)。実験結果、ジフテリア毒素、百日咳毒素及び破傷風毒素の順に免疫促進能に優れており、これにより、本発明のCIA05と最も適した抗原は、ジフテリア毒素であることが分かった。
【0108】
結論的に、免疫補助剤としてCIA05を含む本発明のDPT、特にジフテリア毒素とCIA05の組み合わせを利用したDPTワクチンは、免疫効能、即ち、ワクチン効能に非常に優れている。
【0109】
実施例14:本発明の水痘ワクチンの効能分析
水痘ワクチンにおいて、免疫補助剤CIA05の効能を確認するために、抗原として1VIA Suduvax株(1VIA Suduvax inj、ミドリ十字(株))を使用した。前記Suduvax株は、水痘の弱毒生ワクチン(live attenuated)形態の水痘ワクチンである。Suduvax株を6週齢のBalb/cマウスに2週間隔で2回注射した。この際、ワクチン単独又はCIA05を含めて注射した。2回注射1週間後、実施例1のように血清を分離して、水痘菌株特異抗体をエンドポイントELISA方法で測定した。
【0110】
水痘菌株抗原に対してAlumを利用した試験群では、抗原単独で使用した試験群に比べ、抗原特異抗体の生成が約4倍(Alum 50μg)又は約8倍(Alum 100μg)程度増加し、CIA05を利用した場合は、抗原単独で使用した試験群に比べ、抗原特異抗体の生成が約16倍(CIA05 0.5μg)又は約64倍(CIA05 1μg)程度増加した(図13)。また、CIA05を利用した場合は、抗原特異抗体の生成量が投与量に依存的に大いに増加し、CIA05が水痘菌株抗原(弱毒化水痘菌株)に非常に適した免疫補助剤であることが分かる。一方、免疫補助剤としてCIA05とAlumを同時に利用した場合、0.5μgのCIA05のみを利用した場合より、抗体生成量が約4倍(Alum 50μg)又は約8倍(Alum 100μg)増加した。免疫補助剤としてCIA05とAlumを同時に利用した場合、1.0μgのCIA05のみを利用した場合より、抗体生成量が約4倍(Alum 50μg)又は約32倍(Alum 100μg)増加した。
【0111】
結論的に、免疫補助剤としてCIA05を含む本発明の水痘ワクチン、特に弱毒化水痘菌株とCIA05の組み合わせを利用した水痘ワクチンは、免疫効能、即ち、ワクチン効能に非常に優れている。
【0112】
実施例15:樹状細胞の成熟化に対するCIA05の効能分析
ヒトMDDC(単球由来樹状細胞)とマウスBMDC(骨髄樹状細胞)の分離
健康なヒトから約80mLの血液を採取した後、Ficoll−PaqueTM gradient分離法で末梢血単核球(PBMCs)を分離した。単核球(monocyte)は、末梢血単核球(PBMCs)からanti−CD14マイクロビーズ(MACS system)を利用して分離し、24ウェルプレートに1x10細胞/ウェルの濃度で10%FBS、IL−4、GM−CSFを含むRPMI1640培地に希釈して培養し、ヒトMDDCを得た。BMDCは、雌性BALB/cマウスから骨髄細胞をIL−4、GM−CSFを含む培地で6日間培養して、7日目にanti−CD11cコートされた磁気ビーズを利用してCD11c細胞を分離した。
【0113】
免疫補助剤CIA05によるDC(樹状細胞)表面マーカー発現増加分析
上述の方法でヒトMDDCとマウスのBMDCを分離した後、LPS、MPL、CIA05をそれぞれ1μg/mLの濃度で処理し、37℃で24時間反応した。反応後、マウスBMDC表面では、CD40、CD80及びCD86を、ヒトMDDCでは、HLA−DR、CD80及びCD86をそれぞれフローサイトメトリーで確認した。マウスBMDCの場合は、LPS、MPL、CIA05の全てで、DC表面マーカーであるCD40、CD80及びCD86の発現がほぼ類似の分布を示すことが分かる(図14a)。しかし、ヒトMDDCでは、現在ワクチン免疫補助剤としてよく使用されているMPLと比較してCIA05では、MDDCの表面マーカーであるHLA−DR、CD80及びCD86の3つともがさらに多く発現することを確認できた(図14b)。これは、MPLが、マウスではLPSレベルの効能を維持するが、ヒトではその効能が制限されていることを示し、CIA05がこのような問題を解決できることを示す。
【0114】
結論的に、前記実験の結果、免疫補助剤CIA05は、種々のワクチンにおいて免疫効能、即ち、ワクチン効能を大いに増加させる作用を有し、特に、ヒト樹状細胞の成熟化にも大きい効果を示す。
【0115】
本発明の好ましい実施形態を示したが、当業者にとって、実施形態の等価物及び変形物が本願発明の精神に該当することが明らかであることが理解されるであろう。また、本願発明の範囲は、以下の請求項の範囲及びその等価物により判断されるべきである。
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9a
図9b
図9c
図10
図11
図12a
図12b
図12c
図12d
図13
図14a
図14b