(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について
図1乃至
図4を参照して説明する。
図1は、実施形態の画像形成装置の一例であるMFP(Multi-Function Peripherals)10を示す。MFP10は、例えば、スキャナ12、コントロールパネル13、給紙カセット部16、手差し給紙トレイ17、プリンタ部18および排紙部20を備える。
【0009】
スキャナ12は、プリンタ部18で画像形成するための原稿画像を読み取る。コントロールパネル13は、例えばユーザによる入力を受け付け、或いはユーザへの表示を行う。
【0010】
給紙カセット部16は、記録媒体であるシートPを収納する給紙カセット16a及び給紙カセット16aからシートPを取り出すピックアップローラ16bを備える。シートPは、未使用のシート或いはリユースのシート(例えば画像を消色処理により消色したシート)等を含む。手差し給紙トレイ17は、ピックアップローラ17aにより未使用或いはリユースのシートPを給紙可能である。
【0011】
プリンタ部18は、中間転写ベルト21を備える。プリンタ部18は、駆動部を備えるバックアップローラ40、従動ローラ41及びテンションローラ42で中間転写ベルト21を支持して、矢印m方向に回転する。
【0012】
プリンタ部18は中間転写ベルト21の下側に沿って並列に配置される、Y(イエロ)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の4組の画像形成ステーション22Y、22M、22C及び22Kを備える。プリンタ部18は、各画像形成ステーション22Y、22M、22C及び22Kの上方に、補給用のトナーを夫々収納する補給カートリッジ23Y、23M、23C及び23Kを備える。
【0013】
例えばY(イエロ)の画像形成ステーション22Yは、矢印n方向に回転する感光体ドラム24の周囲に、帯電チャージャ26、露光走査ヘッド27、現像装置28、及び感光体クリーナ29を備える。Y(イエロ)の画像形成ステーション22Yは、中間転写ベルト21を介して、感光体ドラム24と対向する位置に1次転写ローラ30を備える。
【0014】
M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の3組の画像形成ステーション22M、22C及び22Kは、Y(イエロ)の画像形成ステーション22Yと同様の構成を備える。M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の3組の画像形成ステーション22M、22C及び22Kの構成についての詳細な説明を省略する。
【0015】
各画像形成ステーション22Y、22M、22C或いは22Kでは、感光体ドラム24を帯電チャージャ26で帯電後、露光走査ヘッド27により露光して、感光体ドラム24上に夫々静電潜像を形成する。現像装置28は、夫々Y(イエロ)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)のトナーと、キャリアからなる二成分の現像剤を用いて感光体ドラム24上の静電潜像を現像する。現像に用いるトナーは、例えば非消色のトナーを用いても良いし、或いは例えば所定の消色温度以上に加熱することにより消色可能な消色トナーを用いる等しても良い。
【0016】
1次転写ローラ30は、感光体ドラム24に形成されるトナー像を中間転写ベルト21に1次転写する。各画像形成ステーション22Y、22M、22C或いは22Kは、1次転写ローラ30により、中間転写ベルト21上に、Y(イエロ)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)のトナー像を順次重ねてカラートナー像を形成する。感光体クリーナ29は、1次転写後に感光体ドラム24に残留するトナーを除去する。
【0017】
プリンタ部18は、中間転写ベルト21を介してバックアップローラ40と対向する位置に2次転写ローラ32を備える。2次転写ローラ32は、シートPに、中間転写ベルト21上のカラートナー像を一括2次転写する。シートPは、中間転写ベルト21上のカラートナー像に同期して、搬送路33に沿って給紙カセット部16或いは手差し給紙トレイ17から給紙される。ベルトクリーナ43は、2次転写後に中間転写ベルト21に残留するトナーを除去する。
【0018】
プリンタ部18は、搬送路33に沿って、レジストローラ33a、定着装置34及び排紙ローラ36を備える。プリンタ部18は、定着装置34の下流に分岐部37及び反転搬送部38を備える。分岐部37は、定着後のシートPを、排紙部20或いは反転搬送部38に分岐する。両面プリントであれば、反転搬送部38は、分岐部37に分岐されるシートPを、レジストローラ33a方向に反転搬送する。
【0019】
中間転写ベルト21、画像形成ステーション22Y、22M、22C及び22K及び2次転写ローラ32は、画像形成部を構成する。
【0020】
これらの構成によってMFP10はプリンタ部18で、シートPに定着トナー画像を形成して、排紙部20に排紙する。
【0021】
画像形成装置はMFP10に限らない。画像形成装置は、タンデム方式に限らないし、現像装置の数も限定されない。画像形成装置は、感光体から直接記録媒体にトナー像を転写するものであっても良い。
【0022】
次に定着装置34について詳述する。
図2に示すように定着装置34は、発熱層である導電層61を備えるエンドレスの定着ベルト50、加圧部である加圧ローラ51及び磁束発生部である電磁誘導加熱コイルユニット(以下IHコイルユニットと略称する。)52を備える。
【0023】
定着ベルト50は、内部に支持部である加圧パッド53、整磁合金70、アルミ部材からなるシールド71を備える。定着ベルト50は、内部に定着ベルト50の温度を検知する温度センサ72及び、定着ベルト50の異常発熱を検知するサーモスタット73を備える。定着ベルト50は、内部に加圧パッド53を支持するフレーム74を備える。フレーム74は、シールド71を位置調整する支持バネ76を支持する。
【0024】
加圧パット53は、定着ベルト50を挟んで加圧ローラ51と対向する位置にある。加圧パッド53は定着ベルト50の内周面を支持する。加圧ローラ51は、加圧パット53が支持する定着ベルト50を押圧して定着ベルト50と加圧ローラ51の間にニップ54を形成する。加圧パッド53は、例えば耐熱性のポリフェニレンサルファド樹脂(PPS)等で形成する。加圧パッド53は、例えばガラス繊維にフッ素樹脂を表面コートしたすべりシートを定着ベルト50との間に配置して、定着ベルト50と加圧パッド53の間の摩擦抵抗を小さくしても良い。
【0025】
整磁合金70は、磁性特性が温度によって変化する。整磁合金70は、キュリー点温度以上になると透磁率が低下し、定着ベルト50を透過する磁束密度を減少し、定着ベルト50の発熱量を低減する。整磁合金70は、定着ベルト50の発熱量を低減して例えば非通紙領域の定着ベルト50の温度上昇を抑制する。整磁合金70は、キュリー点温度に達しない低温領域であれば、IHコイルユニット52からの磁束により発熱して、定着ベルト50の加熱を補助する。
【0026】
加圧ローラ51は、例えば芯金51aの周囲に、耐熱性のゴム層等の弾性層51bを備え、表面にフッ素系樹脂等からなる離型層51cを備える。加圧ローラ51は加圧バネ56の加圧力により定着ベルト50に加圧接触する。
図3に示すように、定着装置34は、ギア57aを介しモータ57により加圧ローラ51を駆動して、定着ベルト50を加圧ローラ51に従動する。
【0027】
定着ベルト50は、定着ベルト50の形状をほぼ円形に保つホイール58を端部の内周に備える。ホイール58は、ベアリング58aを介して、フレームシャフト74aを支持する。加圧パット53位置で加圧ローラ51に加圧接触する定着ベルト50は加圧ローラ51に従動して、ホイール58と一体に回転する。定着ベルト50は、加圧ローラ51と独立して駆動回転しても良い。定着ベルト50を駆動回転する場合は、定着ベルト50と加圧ローラ51との速度差を生じないように、例えばワンウェイクラッチを介在させても良い。
【0028】
定着ベルト50の長手方向(回転方向と平行な方向)の中間領域は、フリーであり無張力状態である。定着ベルト50の長手方向の中間領域は、加圧パット53位置で加圧ローラ51と加圧接触して変形する。
【0029】
長手方向における定着ベルト50の幅(L1)、加圧パット53の幅(L2)、及び加圧ローラ51の幅(L3)は、それぞれ例えばL1=368mm、L2=355mm、L3=332mmである。例えば、加圧パット53の幅(L2)は、定着装置34による最大定着幅より少し大きくする。
【0030】
IHコイルユニット52は、コイル52aとコイルの外周を覆って、コイル52aの磁束を規制するコア52bを備える。IHコイルユニット52は、コイル52aに高周波電流を印加して、磁束を定着ベルト50方向に発生する。IHコイルユニット52からの磁束により定着ベルト50の導電層61は、渦電流を発生し、発熱し、定着ベルト50を加熱する。
【0031】
定着ベルト50は、導電層61を備える多層構造である。
図4に示すように、定着ベルト50は、内周側から外周側に向かって、例えば、エンドレスの基材60、発熱層である導電層61、弾性層62、トナー離型層63を備える。定着ベルト50は、導電層61を備えていれば、層構造を限定されない。基材60は、例えば厚さ70μmのポリイミドスリーブである。
【0032】
導電層61は、例えば厚さ10μmの銅(Cu)層64を備える。導電層61は、銅(Cu)層64を挟んで、例えば厚さ1μmのニッケル(Ni)層66aと厚さ8μmのニッケル(Ni)層66bを備える。導電層は、IHコイルユニット52からの磁束により発熱するものであれば、鉄(Fe),ニッケル(Ni)、銅(Cu)等の単層であっても良い。弾性層62は、例えば厚さ200μmのシリコン(Si)ゴム層であり、トナー離型層63は、例えば厚さ30μmのフッ素系樹脂(例えばPFA樹脂)のチューブである。定着ベルト50は急速なウォーミングアップを可能にするために、導電層61を薄層化し低熱容量化する。
【0033】
導電層61の長手方向における幅(W)は、例えば加圧ローラ51の幅L3と同じ幅である。導電層61は、定着ベルト50に対する加圧ローラ51の接触領域(幅L3)すなわちニップ54の幅より外側の領域αには延在しない。導電層61は、ニップ54(幅L3)より外側に延在せず且つ定着ベルト50の発熱性を損なわなければ、幅(W)を限定されない。導電層61をニップ領域より外側に延在しないことにより、ホイール58により端部にて円形を保つ定着ベルト50の中間領域が、加圧パット53位置で変形を受けた場合でも、導電層61が変形をうけるのを防止する。導電層61は、例えば蒸着或いは鍍金等により基材60表面に形成する場合に、基材60の両側の領域αをマスキングして形成する。
【0034】
加圧ローラ51を矢印x方向に回転すると、定着ベルト50は、矢印y方向に従動回転する。ニップ54を通過する場合に、ホイール58と加圧ローラ51端部との間の定着ベルト50の領域αには、加圧ローラ51端部による圧接応力が集中して、領域αは屈曲する。ニップ54を抜けると、定着ベルト50は加圧ローラ51端部による圧接応力を開放されて、領域αは伸張する。
【0035】
矢印y方向に従動回転する間、定着ベルト50の領域αは、加圧ローラ51端部との圧接応力による屈曲と伸張を繰り返す。但し領域αより内側にある導電層61は、加圧ローラ51端部との圧接応力による影響を受けず、クラックを生じない。定着ベルト50は、ニップ54端部にあっても良好な発熱を維持する。定着装置34は、ニップ54端部で定着不良を生じることなく、シートPの最大幅の全長に渡り良好な定着を得る。
【0036】
比較例として、長手方向の端部まで導電層を形成した定着ベルトを用いてライフ試験を行った。比較例では、ニップ端部の加圧ローラ端部による圧接応力により、定着ベルト端部が屈曲と伸張を繰り返す間に、導電層にクラックを生じた。更に定着ベルト端部の屈曲と伸張を繰り返すと、導電層に生じたクラックは定着領域にまで進行し、定着ベルトの発熱特性の低下を生じた。比較例では、加圧ローラとの接触端部から導電層にクラックを生じて、発熱不良による定着不良を生じた。
【0037】
実施形態によれば、定着ベルト50の導電層61は、加圧ローラ51との接触領域より外側の領域αには延在しない。定着ベルト50の端部の領域αが、加圧ローラ51端部との圧接応力により、屈曲と伸張を繰り返す場合でも、導電層61は、加圧ローラ51端部による圧接応力による影響を受けない。定着ベルト50は導電層61にクラックを生じるのを防止する。定着装置34は、定着ベルト50の導電層61に生じるクラックを原因とする定着不良を防止して、良好な定着を得る。
【0038】
この発明は上記実施形態に限られるものではなく種々変更が可能である。実施形態では定着ベルトを、ホイールにより端部が円形に保持される形状としたがこれに限定されない。定着ベルトは、例えば複数のローラに掛け渡されるタイプであっても良い。また、加圧部もローラ形状に限らず、ベルト形状等としてもよい。
【0039】
この発明の実施形態を説明したが、実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことが出来る。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。