特許第6067912号(P6067912)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6067912
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】靴
(51)【国際特許分類】
   A43B 13/14 20060101AFI20170116BHJP
   A43B 23/02 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   A43B13/14 Z
   A43B23/02 101Z
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-101210(P2016-101210)
(22)【出願日】2016年5月20日
【審査請求日】2016年5月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513058460
【氏名又は名称】株式会社弥次右エ門
(74)【代理人】
【識別番号】100114535
【弁理士】
【氏名又は名称】森 寿夫
(74)【代理人】
【識別番号】100075960
【弁理士】
【氏名又は名称】森 廣三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155103
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 厚
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194755
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀明
(72)【発明者】
【氏名】中山 憲太郎
【審査官】 伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2003/0131499(US,A1)
【文献】 特開昭48−004041(JP,A)
【文献】 特開平11−225804(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3199174(JP,U)
【文献】 実公昭08−006322(JP,Y1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0079377(US,A1)
【文献】 特開2015−144694(JP,A)
【文献】 特開2008−086820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 1/00−23/30
A43C 1/00−19/00
A43D 1/00−999/00
B29D 35/00−35/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
甲被と本底とを接合し、本底に中敷を載せて構成される靴であって、
甲被は、予め足型に倣った外形状に成形され、
本底は、上面の外周縁から前記甲被の厚み以上内側に、甲被のつま先及び踵に対応する前側及び後側を相対的に厚く、前記前側及び後側に挟まれる左側及び右側を相対的に薄くした環状の接合壁を設け、
本底に被せた甲被の下縁部を前記接合壁の外面に接面させた状態で前記甲被の下縁部を接合壁に接合し、
中敷は、本底に載せて甲被及び接合壁の接合部分内側を隠したことを特徴とする靴。
【請求項2】
本底は、上面の外周縁と平行に延びるガイド条を外周面に設けた請求項1記載の靴。
【請求項3】
本底は、接合壁の外面と上面の外周縁との間又は前記接合壁の外面に、基準マークを設けた請求項1又は2いずれか記載の靴。
【請求項4】
本底は、接合壁の内面が外側から内側に下り勾配のテーパ面を有する請求項1〜いずれか記載の靴。
【請求項5】
本底は、上面より低い嵌合平面を接合壁の内側に有し、接合壁及び前記嵌合平面に囲まれる範囲を満たす中敷を前記嵌合平面に載せて前記中敷により甲被及び接合壁の接合部分内側を隠した請求項1〜いずれか記載の靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者の足に適合させやすく、オーダーメイドにも適した靴に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばレディーメイドされた靴は、足の甲を覆う甲被を釣り込んで中底と一体化し、前記中底の下面に本底を貼り付けて製造される。甲被は、底面に中底を取り付けた足型に被せ、前記足型に倣った形状に外形状を整える釣り込みを経て、下縁部を前記中底の外周部上面又は外周部下面に接面して縫着させる。縫着した甲被の下縁部と中底の外周部とは、外向きに曲げられたり(特許文献1・[0002]〜[0005][図4]〜[図6]、いわゆるステッチダウン構造)、中底の内側に曲げて本底で隠したりする(特許文献2・[請求項1][0005][図1]及び[図2]、例えばセメント構造)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-137004号公報
【特許文献2】特開2001-095605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
甲被を縫着した中底に本底を貼り付ける靴は、甲被の釣り込みに際し、中底を足型の底面に取り付けることから、多くの場合、中底の表面が足型の底面に倣った形状になる。ここで、靴が利用者の足に適合するには、甲被が足の甲に倣った形状になるほか、中底の表面が足の裏に倣った形状になることが望ましい。しかし、従来の靴は、中底の表面を決定付ける足型を利用者の足の裏に合わせて個々に製造することが難しく、汎用の足型の底面に合わせて中底の表面を成形せざるを得ない。このため、靴を利用者の足に適合させる場合、利用者の足の裏に倣った形状に成形した中敷を別途挿入していた。
【0005】
また、甲被を縫着した中底に本底を貼り付ける靴は、甲被の下縁部と中底の外周部とを縫着した後、縫着部分を外側に向けて甲被の折れ具合を整えたり、前記縫着部分を内が向けて本底に隠したりすることから、甲被を利用者の足に合わせて成形しづらい問題があった。これは、甲被を縫着した中底に本底を貼り付ける靴がオーダーメイドに適していないことを意味する。そこで、利用者の足に適合させやすく、オーダーメイドにも適した靴を提供するため、検討した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
検討の結果、甲被と本底とを接合し、本底に中敷を載せて構成される靴であって、甲被は、予め足型に倣った外形状に成形され、本底は、上面の外周縁から前記甲被の厚み以上内側に、甲被のつま先及び踵に対応する前側及び後側を相対的に厚く、前記前側及び後側に挟まれる左側及び右側を相対的に薄くした環状の接合壁を設け、本底に被せた甲被の下縁部を前記接合壁の外面に接面させた状態で前記甲被の下縁部を接合壁に接合し、中敷は、本底に載せて甲被及び接合壁の接合部分内側を隠したことを特徴とする靴を開発した。本発明の靴は、男性用の靴(例えば紳士靴)や女性用の靴(例えばパンプス)の別なく適用できる。
【0007】
本発明の靴は、甲被と本底とを接合し、本底の上面又は別途形成された嵌合平面(後述参照)に中敷を載せる。甲被は、予め足型に倣って成形され、本底の接合壁に接合した後、接合部分を折り曲げることがない。これにより、甲被は、利用者の足を模した足型に倣って外形状を成形すれば、前記利用者の足に適合させやすい。また、中敷は、甲被と接合した本底の上面に載せるだけなので、足型の底面に関係なく、利用者の足の裏に倣った形状に成形できる。しかも、中敷は、甲被及び接合壁の接合部分内側を隠す程度の厚みを有するため、成形自由度が高く、足の裏に倣った形状にしやすい。接合壁の外側に接面して甲被の下縁部を接合する構造は、甲被及び接合壁の接合部分を下向きに開放させる。また、甲被及び接合壁の接合部分内側が中敷に隠される構造は、前記接合部分を利用者の足に当てない。
【0008】
甲被は、本底の上面の外周縁からはみ出す部分を余剰として切除した下縁部を接合壁と接合し、本底の上面の外周縁からはみ出す部分を余剰として切除し、利用者の足に適合した外形状に調整する。本底は、上面の外周縁と平行に延びるガイド条を外周面に設け、前記ガイド条に沿って甲被の下縁部と接合壁とを縫着により接合する。また、本底は、甲被のつま先及び踵に対応する接合壁の前側及び後側を相対的に厚く、前記前側及び後側に挟まれる接合壁の左側(例えば靴が右足用であれば足の内側)及び右側(例えば靴が右足用であれば足の外側)を相対的に薄くする。そして、本底は、接合壁の外面と上面の外周縁との間又は前記接合壁の外面に基準マークを設ける。基準マークは、接合壁の周方向の位置を特定できるものであれば何でもよい。また、基準マークは、接合壁の外面に前後一対設けて、両者を結ぶ方向を前後方向と定義してもよい。
【0009】
本底は、接合壁の内面が外側から内側に下り勾配のテーパ面を有すると、接合壁の内面に囲まれた平面視形状に等しい平面形状の中敷でも、前記接合壁の内側に嵌め込みやすくなる。この場合、中敷は、接合壁のテーパ面の転写形状である逆テーパ面を形成し、前記テーパ面及び逆テーパ面を密着させたり、自身を弾性変形又は塑性変形させたりして、テーパ面に対する隙間の発生を防ぐとよい。甲被の下縁部と接合壁とを縫着する場合、テーパ面より下方で縫着すれば、接合壁の強度を確保できる。更に、本底は、上面より低い嵌合平面を接合壁の内側に有し、接合壁及び前記嵌合平面に囲まれる範囲を満たす中敷を前記嵌合平面に載せて前記中敷により甲被及び接合壁の接合部分内側を隠す構成であると、中敷を本底に嵌め込めるようになり、中敷の横ずれをよりよく防止できる。また、接合壁の高さより厚い中敷が利用できるので、中敷の成形自由度が増す。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、利用者の足に適合し、オーダーメイドに適した靴を提供する。これは、予め足型に倣った外形状に成形された甲被を変形させることなく利用できることのほか、甲被と接合する必要のない中敷を厚くして利用者の足の裏に倣った形状に成形できることの効果である。接合壁の外側に接面して甲被の下縁部を接合する構造は、甲被及び接合壁の接合部分を下向きに開放させるから、埃や水を侵入させにくい効果がある。また、甲被及び接合壁の接合部分内側が中敷に隠される構造は、前記接合部分を利用者の足に当てないので、不快感を与えない効果がある。
【0011】
余剰を切除した甲被の下縁部を接合壁と接合する構造は、接合壁に対する甲被の下縁部の長さを調整して、甲被を利用者の足に適合した外形状に成形できる効果をもたらす。ガイド条は、甲被の下縁部と接合壁とを縫合して接合する際、ミシンの軌道を提供し、縫着線を奇麗に仕上げる効果や、本底の審美性を向上させる効果がある。前側及び後側を左側及び右側より相対的に厚くした接合壁は、甲被のつま先及び踵の変形を抑制しながら、足の動きに従って甲被の左右を変形しやすくし、全体的な靴の保形性と部分的な靴の柔軟性をとを両立させ、履き心地に優れた靴の提供を実現する。基準マークは、本底に対する甲被の向きを把握させ(例えば本底に対する甲被の中心ずれの把握)、本底の上面の外周縁からはみ出す余剰を正確に切除させる効果をもたらす。
【0012】
内面が外側から内側に下り勾配のテーパ面を有する接合壁は、接合壁と甲被との境界に段差が形成されることをなくして履き心地を損なわないようにするほか、中敷を嵌め込みやすくして、例えば利用者の足の裏に合わせて成形した中敷を接合壁の内側へ密に嵌合することも容易にする効果をもたらす。また、上面より低い嵌合平面に中敷を載せて接合壁の内側に嵌合させる構造は、接合壁の高さより厚い中敷の横ずれを防止する効果がある。このようして、本発明の靴は、甲被の外形状が調整自在であり、利用者の足の裏に合わせて中敷が成形自在でありながら、位置ずれさせることなく接合壁の内側へ容易に嵌合させることができる等、オーダーメイドに適した靴にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明を適用した靴の一例を表す分解斜視図である。
図2】本例の本底を表す平面図である。
図3】本例の本底を表す側面図である。
図4図2中A-A断面図である。
図5図2中B-B断面図である。
図6】余剰のある甲被を本底に被せる状態を表す側面図である。
図7】甲被の下縁部と接合壁とを縫着した状態を表す側面図である。
図8】中敷を嵌合平面に載せる状態を表す図4相当断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。本発明の靴1は、図1に見られるように、セミオーダー仕様で、大きく甲被2、本底3及び中敷4から構成される。本例の靴1は、説明のため、右足用のみを例示する。左足用は、本例の靴1と左右対称に製造される。しかし、後述するように、甲被2の下縁部21は適当量切除して、利用者の足に合わせて断面形状を整形できるため、実際に製造される左右の靴1は、外形状が異なることもある。
【0015】
甲被2は、予め足型(図示略)に倣った外形状に成形されている。しかし、本例の甲被2は、利用者の足に倣って断面形状を整形できるように、下縁部21のうち、左右に余剰211(後掲図6参照)を形成している。甲被2は、前記余剰211を適当量切除した後、本底3の上面に下縁部21を突き当て、接合壁32の外面321に前記下縁部21の内側を宛てがった状態で前記接合壁32に縫着する。甲被2と接合壁32との縫着線22は、本底3の上面31と平行に現れる。
【0016】
甲被2の素材は限定されない。甲被2の素材は、予め足型に倣って成形された外形状を保持し、断面形状の成形のために有する余剰211を比較的容易に切除できるものであればよい。また、本例の靴1は、甲被2の下縁部21を本底3の接合壁32に縫着する例であるが、接合強度が十分で分離し難い接合手段であれば、接着でも構わない。接合手段として接着を利用する場合、接着剤を用いるほか、樹脂製の甲被2及び接合壁32を熱融着又は超音波融着することも考えられる。
【0017】
甲被2は、下縁部21の全周にわたって余剰211が形成され、甲被2の前後左右すべてで整形してもよい。しかし、甲被2の調整が必要な部分は、主に足5(後掲図6参照。以下、同じ)の甲の部分で、前後のつま先や踵を調整する必要は少ない。むしろ、甲被2の前後はそのままとして、前記前後を基準に左右の下縁部21を調整できるようにして、利用者の足5の甲に対応した断面形状を形成する方が好ましい。本例の余剰211は、前後の下縁部21に連続した輪郭を有する略三日月状であるが、外観上、下縁部21の連続性が保たれるように余剰211を切除できれば、例えば前後の下縁部21に対して段差のある略長方形状の突片でもよい。
【0018】
本底3は、図1図5に見られるように、上面31の外周縁から前記甲被の厚み以上内側に環状の接合壁32を設けたゴム製の一体成形品である。本例の本底3は、上面31の外周縁に沿って外周面33にガイド条331が形成されている。また、本例の本底3は、接合壁32に囲まれた内側を、上面31より深い嵌合平面34にしている。本例の嵌合平面341は、本底3が前後に曲がりやすくするため、前後中間から前方寄りに、左右に延びる3条の凹溝341を前後方向均等間隔で設けている。本底3は、前記凹溝341を設けて付近が前後に比べて相対的に前後に曲がりやすくなる。
【0019】
本例の接合壁32は、内側に上面31より低い嵌合平面341を設けているため、上面31から立つ外面321より前記嵌合平面34より立つ内面322が長くなっている。中敷4は、上面が接合壁32の上縁に倣った厚みで、前記接合壁32のテーパ面323の転写構造となる逆テーパ面41を有することにより、テーパ面323及び内面322に密着して両者を隠す。接合壁32の上縁は、利用者の足5の重みで中敷4が変形すると、利用者の足5に触れる虞もある。テーパ面323は、甲被2の内側に対する環状壁32の上縁の段差を小さくし、前記上縁の接触による違和感を軽減している。
【0020】
接合壁32は、本底3の平面視輪郭形状に相似な環状壁である(図2参照)。本例の接合壁32は、厚さ(外面321及び内面322の間隔)が周方向に一様でなく、前側及び後側の厚さFth,Bthが相対的に厚く、内側(左側)及び外側(右側)の厚さIth,Othが相対的に薄い(図4及び図5を比較対照)。厚さの変化は、周方向に連続しており、周方向に段差がない。本例の接合壁32は、厚い前側及び後側で変形しにくく、甲被2との接合が安定し、薄い内側及び外側で変形しやすく、甲被2の変形を妨げないようにする。
【0021】
このほか、本例の接合壁32は、前側及び後側の外面321それぞれに前側基準マーク324及び後側基準マーク325を設けている。本例の前側基準マーク324及び後側基準マーク325は、接合壁32の上縁から本底3の上面31に至る縦条で、厚みがほとんどなく、外見上線として認識される。前側基準マーク324及び後側基準マーク325は、それぞれ甲被2の前側及び後側の基準となるほか、両者を結ぶ直線から本底3に対する甲被2の横ずれを確認させる。
【0022】
本発明に基づく靴1の製造手順を説明する。甲被2及び本底3は、利用者の足5の大きさに合わせて、予め製造されていた大きさの異なる半既製品の中から選択する。甲被2は、下縁部21の内側及び外側に余剰211を有しており、利用者の足5に合わせて前記余剰211を切除する。甲被2から切除する余剰211の位置及び大きさは、本底3の接合壁32に設けた前側基準マーク324及び後側基準マーク325に合わせて甲被2の向きを調整することにより確定する。
【0023】
具体的には、利用者の足5の裏に倣った形状に成形した中敷4を本底3の嵌合平面34に仮置きし、前記中敷4に利用者の足5を載せた状態で、図6に見られるように、選択した甲被2を前記本底3の接合壁32の外側に被せ、接合壁32に設けた前側基準マーク324及び後側基準マーク325に合わせて甲被2の向きを調整した後、利用者の足5に倣って整形した甲被2の下縁部21が本底3の上面31からはみ出す余剰211を特定する。中敷4は、余剰211の特定に際してずれないように、接着剤等で仮止めしてもよいが、余剰211の特定後、甲被2を本底3に縫着する際は一時的に取り除く。余剰211は、特定後そのまま切除したり、本底3から外した甲被2から切除したりする。
【0024】
余剰211を切除した甲被2は、図7に見られるように、全周にわたって本底3の上面31に突き当てて接合壁32の外面321に接面させた下縁部21を、前記接合壁32に縫着する。中敷4は、縫着作業の邪魔になるので、一旦抜き取っておく。甲被2の下縁部21と本底3の接合壁32とは、専用のミシン(例えばイタリアCMCI社製BC20/9)を用いて縫着される。専用のミシンは、本底3の外周面33に設けたガイド条331に沿って針を移動させることにより、全周にわたって同じ高さで。甲被2の下縁部21と本底3の接合壁32とを縫着でき、縫着線22を奇麗に仕上げることができる。縫着線22は、接合壁32のテーパ面323の下縁から本底3の上面31との間(テーパ面323より厚みのある部分)に形成され、縫着による接合強度が担保される。
【0025】
甲被2と本底3とを縫着により接合した後、図8に見られるように、別途成形しておいた中敷4を甲被2内に挿入し、本底3の嵌合平面34に載せると、靴1が完成する。中敷4は、予め利用者の足5の裏に合わせた凹凸を形成したオーダーメイドタイプで、交換可能にするため、本底3に接着しない。オーダーメイドタイプの中敷4は、従来公知の各種装置(例えばシダス社製HDVAC2)を用いて製造できる。本例の中敷4は、本底3の接合壁32の内側に形成された嵌合平面34に載せることから、前記接合壁32の内面322及びテーパ面323の合計高さに等しい厚さとしている。このため、中敷4は、表面の形成に自由度があり、利用者の足5の裏に合わせた凹凸のある表面を容易に形成できる。
【0026】
このように厚さのある中敷4は、甲被2の下縁部21と本底3の接合壁32との縫着線22の内側(接合部分内側)を隠す。本例の中敷4は、接合壁32のテーパ面323の転写形状である逆テーパ面41を有し、前記テーパ面323に逆テーパ面41を密着させて隠すため、隙間を作ることなく、接合壁32全体を隠すことができる(図8拡大部分参照)。これにより、縫着線22の内側が利用者の足5に接触して、違和感を与える虞がなくなる。既述したように、中敷4が弾性変形して接合壁32の上縁が中敷4の表面より露出しても、接合壁32に設けられたテーパ面323により甲被2の内側から接合壁32の内側にかけて段差が感じられず、利用者の足5に違和感を与える虞が少ない。むしろ、本発明の靴1は、甲被2の断面形状や中敷4の表面が利用者の足5に合っているため、良好な履き心地を提供できる。
【0027】
このように、本発明の靴1は、甲被2を本底3に接合して、中敷4を挿入する手順で完成する。中敷4は、既述したように、交換可能にするため、本底3に対して接着しない。甲被2は、予め足型に倣った外形状が整えられており、下縁部21の余剰211を切除する作業だけで、本底3に接合できる。また、中敷4は、オーダーメイド品として形成しておくことができる。いずれも販売店舗で可能な作業であり、時間もそれほど掛からない。これから、本発明を利用することにより、利用者の足5に合わせたオーダーメイドの靴1を提供することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 靴
2 甲被
21 下縁部
211 余剰
22 縫着線
3 本底
31 上面
32 接合壁
321 外面
322 内面
323 テーパ面
324 前側基準マーク
325 後側基準マーク
33 外周面
331 ガイド条
34 嵌合平面
341 凹溝
4 中敷
41 逆テーパ面
5 足
Fth 接合壁の前側の厚さ
Bth 接合壁の後側の厚さ
Ith 接合壁の内側(左側)の厚さ
Oth 接合壁の外側(右側)の厚さ
【要約】
【課題】利用者の足に適合させやすく、オーダーメイドにも適した靴を提供する。
【解決手段】甲被2と本底3とを接合し、本底3に中敷4を載せて構成される靴1であって、甲被2は、予め足型に倣った外形状に成形され、本底3は、上面31の外周縁から前記甲被2の厚み以上内側に環状の接合壁32を設け、本底3に被せた甲被2の下縁部21を前記接合壁32の外面321に接面させた状態で前記甲被2の下縁部21を外周壁32に接合し、中敷4は、本底3に載せて甲被2及び接合壁32の接合部分内側を隠したことを特徴とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8