【実施例1】
【0016】
まず、本発明である雪止め部材の構造について説明する。なお、建物から外側を向いている面(外側から見える面)を表面とし、その反対側を裏面とする。また、屋根の大棟側を上、軒先側を下とする。
図1は、雪止め部材を屋根に設置した建物の斜視図である。
図2は、雪止め部材を設置した屋根の斜視図である。
図3(a)は、雪止め部材の屋根への取付位置を説明するための斜視図であり、
図3(b)は、その断面図である。
【0017】
図1に示すように、雪止め部材200は、建物100の屋根110に設置される。雪止め部材200は、屋根110に積もった雪が落下しないように、軒先側に取り付けられる。屋根110の表面にはスレート瓦などの屋根材130が葺かれており、雪止め部材200が、屋根材130に直接固定される。なお、屋根110にソーラーパネル等の設置物120がある場合でも、雪止め部材200は設置物120の下側に、設置物120とは独立して取り付けられる。
【0018】
図2に示すように、雪止め部材200は、支持プレート300、U字板400、留具500、及びL字アングル600等を有する。支持プレート300は、複数が所定の間隔を置いて屋根材130の表面に貼着される。U字板400は、支持プレート300の表面にそれぞれ貼着される。L字アングル600は、複数の支持プレート300及びU字板400の表面側を跨ぐように載置される。留具500は、複数のU字板400とL字アングル600とを固定する。
【0019】
図3に示すように、支持プレート300及びU字板400は、屋根材130を貫通させて屋根110の垂木170までビス等の固定具550を通すことにより固定される。
図3(a)に示すように、支持プレート300は、垂木170の位置に合わせて、屋根材130の表面に取り付けられる。垂木170は、屋根110の大棟から軒先まで渡された構造材であり、屋根110の左端から右端まで一定間隔ごとに配置される。
【0020】
図3(b)に示すように、支持プレート300及びU字板400は、屋根材130への貼着に加え、垂木170への固定により、雪止め部材200の雪の重みに対する強度を向上させる。
【0021】
次に、雪止め部材の各構成について説明する。
図4(a)は、支持プレートの通穴が直線状の場合の平面図であり、
図4(b)は、支持プレートの通穴がジグザグ状の場合の平面図である。
図5(a)は、U字板の表面側の斜視図であり、
図5(b)は、U字板の裏面側の斜視図である。
図6(a)は、U字板に留具を通した状態の表面側の斜視図であり、
図6(b)は、U字板に留具を通した状態の裏面側の斜視図である。
図7は、L字アングルの斜視図である。
【0022】
図4に示すように、支持プレート300は、屋根110に設置した雪止め部材200を支持するための金属等の板材である。支持プレート300の材質として、例えば、縦及び横の長さが約20cm、厚さが約2mmの金属板を使用する。具体的には、亜鉛、アルミニウム及びマグネシウムを溶融メッキした鋼板などを用いれば良い。
【0023】
支持プレート300には、上から下へ縦に並ぶ複数の通穴310が空けられる。通穴310は、例えば、中央を避けて、中央より上側に2つ、下側に2つ貫通させれば良い。通穴310は、
図4(a)に示すように、通穴310を一直線上に揃えて空けても良い。なお、通穴310は、屋根110の垂木170にビス止めする位置に空けるので、垂木170の割れを防ぐために、
図4(b)に示すように、ジグザグ状にずらして空けても良い。
【0024】
支持プレート300の表面には、U字板400が載置される。U字板400は通穴310に被せるように配置されるので、U字板400の位置を固定するために、支持プレート300の表面に突起320を設ける。突起320は、一番上の通穴310の上側と、一番下の通穴310の下側に、それぞれ突出させて、U字板400を係止させれば良い。
【0025】
支持プレート300は、複数が横方向に一直線上に並ぶように間欠的に配置されるので、例えば、隣と縦方向にずれがないように位置を合わせるための位置決め線などを屋根材130に引く。支持プレート300には、位置決め線などに合わせるために、左右両端にそれぞれ横方向の目印330を付ける。
【0026】
また、支持プレート300は、屋根110に一定間隔ごとに並んでいる垂木170の位置に取り付けることで、それぞれが等間隔で配置される。支持プレート300には、垂木170の位置に合わせるために、上下両端にそれぞれ縦方向の目印330aを付ける。
【0027】
支持プレート300を屋根110に取り付けると、支持プレート300の厚みの分だけ屋根材130から段差が生じる。雨や雪が溶けたときの水が下へ流れやすくなるように、支持プレート300の左上及び右上の角をそれぞれ斜めに切り欠いて傾斜辺340を形成する。傾斜辺340は、例えば、約15度の傾きで設ければ良い。
【0028】
支持プレート300は、金属板であるので、左上、右上、左下及び右下の各角が尖っていると設置作業時に作業者やその他の物を傷付けるおそれがある。支持プレート300の各角を面取りして丸め角350にすることにより安全性を確保する。
【0029】
支持プレート300は、屋根材130に接着材などで貼着される。支持プレート300の裏面には、ブチルゴムなどの防水テープを付ける。なお、支持プレート300を屋根材130に貼着することにより、屋根110の垂木170へのビス止めを補強する。
【0030】
図5に示すように、U字板400は、支持プレート300とL字アングル600との間に介在し、L字アングル600を屋根材130から浮かせて保持するための金属等の板材である。U字板400の材質は、支持プレート300と同じものを使用すれば良い。
【0031】
U字板400には、上から下へ縦に並ぶ複数の留穴410が空けられる。留穴410は、屋根110の垂木170にビス止めする位置に空けるので、支持プレート300の通穴310と対応した位置に空けられる。すなわち、U字板400を支持プレート300の表面に載置したときに、全ての留穴410が通穴310と位置が合い、U字板400の表面から支持プレート300の裏面まで貫通すれば良い。
【0032】
また、U字板400を支持プレート300の表面に載置するに際して、位置ずれが生じないように支持プレート300に設けた突起320に合わせて、U字板400に切欠き420を形成する。切欠き420は、上下両端にそれぞれ突起320が係止され、U字板400の位置が固定されるように設ければ良い。
【0033】
U字板400には、L字アングル600を固定するための留具500の軸を通すための中穴430が空けられる。中穴430は、通穴310及び留穴410を空けるのを避けた場所であるU字板400の中央に空ければ良い。なお、中穴430の周囲の穴縁440は、
図5(a)に示すように、表面側が盛り上がっており、
図5(b)に示すように、裏面側が窪んでいる。
【0034】
U字板400は、縦長の板材の左右両端側にそれぞれ長手方向に延びる折目450に沿って、両端が表面側に突出するように折り曲げられることで、断面形状が高さの低いU字状になるように、両側にそれぞれ折曲片460が形成される。折曲片460の高さだけL字アングル600が屋根材130から浮かされる。
【0035】
図6に示すように、U字板400には留具500が通される。留具500は、軸と頭を有するボルト510、ナット520、環状のワッシャー530やスプリングワッシャー540等からなる。留具500の材質としては、ステンレス等を用いれば良い。U字板400の裏面側から表面側に向けてボルト510の軸を中穴430に通し、表面側からワッシャー530やスプリングワッシャー540等を介した上で、L字アングル600を通してナット520で締めることにより固定する。
【0036】
ボルト510の頭は中穴430を通らず、ボルト510の頭が裏面側に出ることになるので、
図6(b)に示すように、U字板400を支持プレート300に載置する際の邪魔とならないように、裏面側で窪んでいる穴縁440にボルト510の頭を収める。U字板400の裏面側の平坦さが維持される。なお、U字板400と支持プレート300の間も、接着材などで貼着しても良い。
【0037】
ボルト510にL字アングル600を通した上でナット520を螺合するが、L字アングル600は折曲片460と接することになる。
図6(a)に示すように、表面側に盛り上がる穴縁440や、留穴410に通すビス止めする際の固定具の頭などが折曲片460の高さ以内に収まるようにする。
【0038】
表面側に盛り上がる穴縁440とL字アングル600との間にワッシャー530やスプリングワッシャー540等を介在させることで、L字アングル600の固定を安定させる。特に、スプリングワッシャー540を使用することで、ナット520で締めたときに緩みにくくする。
【0039】
図7に示すように、L字アングル600は、雪を受け止めるための金属等の板材である。L字アングル600の材質は、支持プレート300と同じものを使用すれば良い。L字アングル600は、横長の板材の長手方向に延びる折目610に沿って折り曲げることで縦片620と横片630とが形成される。
【0040】
L字アングル600は、縦片620又は横片630の何れか一方がU字板400の表面に載置され、他方が屋根材130に対して垂直となるように表面側に立てられる。折目610から縦片620又は横片630の端まで(短手方向)の幅は、縦片620と横片630とで異なる。垂立させる高さを4段階で選択する場合は、例えば、L字アングル600の長さを約3mとしたとき、縦片620の幅が5cm、横片630の幅が6cmのL字アングル600と、縦片620の幅が7cm、横片630の幅が8cmのL字アングル600を予め用意すれば良い。
【0041】
1本のL字アングル600に対して、複数の支持プレート300及びU字板400を使用して固定する。L字アングル600の縦片620及び横片630には、留具500を通すための長穴640が貫通する。長穴640は、支持プレート300及びU字板400と同じ間隔で複数設けられる。例えば、屋根110の垂木170の間隔である455mmごとに空けられる。留具500は一定間隔でU字板400から表面側に突出しているが、ズレを微調整するために、長穴640は横方向に長くする(例えば、約3cm)。
【0042】
次に、雪止め部材の屋根への設置について説明する。
図8(a)は、雪止め部材を屋根に設置する準備として、屋根材に貫通孔を空ける工程を示す図であり、
図8(b)は、貫通孔を空けた状態を示す図である。
図9(a)は、屋根材に支持プレート及びU字板を取り付ける工程を示す図であり、
図9(b)は、支持プレート及びU字板を取り付けた状態を示す図である。
図10(a)は、支持プレート及びU字板にL字アングルを配置する工程を示す図であり、
図10(b)は、L字アングルを配置した状態を示す図である。
【0043】
図8に示すように、雪止め部材200を屋根110に設置する準備工程として、支持プレート300を取り付ける位置を決め、屋根110の垂木170にビス止めをするための貫通孔150を屋根材130に空ける。支持プレート300の代わりに、支持プレート300と同じサイズで、軽量な樹脂製などのプレート型370を使用しても良い。
【0044】
まず、複数の支持プレート300を一直線上に揃えるために、位置決め線140を屋根材130に引く。
図8(a)に示すように、垂木170の位置ごとにプレート型370の位置合わせ用目印380を位置決め線140に合わせて、プレート型370を屋根材130の表面に当てる。プレート型370の通穴390からドリル等を使用して、
図8(b)に示すように、屋根材130に貫通孔を空ける。
【0045】
図9に示すように、雪止め部材200を屋根110に設置する取付工程として、支持プレート300とU字板400を屋根材130に取り付ける。U字板400には留具500が表面側に突出するように通しておき、U字板400を支持プレート300の表面に載置する。U字板400の切欠き420に支持プレート300の突起320を嵌合することで、U字板400の留穴410と支持プレート300の通穴310とが貫通する。
【0046】
図9(a)に示すように、支持プレート300の目印330を位置決め線140に合わせて、支持プレート300を屋根材130の表面に載置すると、U字板400の留穴410と支持プレート300の通穴と貫通孔150とが繋がった状態となる。支持プレート300の裏面の接着材360を使用して、支持プレート300を屋根材130に貼着する。
【0047】
さらに、ビス等の固定具550を留穴410及び通穴310から貫通孔150を通して垂木170にネジ留めする。
図9(b)に示すように、支持プレート300の縁が屋根材130に接する部分には、変成シリコン等のコーキング材160を隙間に充填することにより防水する。U字板400と支持プレート300の間についても同様である。
【0048】
図10に示すように、雪止め部材200を屋根110に設置する配置工程として、L字アングル600を支持プレート300及びU字板400に固定する。
図10(a)に示すように、複数の支持プレート300及びU字板400を垂木170の位置ごとに一直線上に並ぶように屋根材130に配置する。留具500は、ボルト510の軸からナット520を外しておく。
【0049】
図10(b)に示すように、ボルト510の軸にL字アングル600の縦片620又は横片630の何れか一方の長穴640を通してから、ナット520で締結する。なお、屋根110に対して垂立している他方については、一方の上側に来ていることが好ましい。複数のU字板400から垂立する各ボルト510を、L字アングル600に複数空いている長穴640にそれぞれ通して固定することにより、L字アングル600を屋根材130の表面に配置する。
【0050】
L字アングル600と支持プレート300との間には、U字板400が介されているので間隙650が生じる。まとまった雪はL字アングル600で受け止められ、間隙650からすり抜けるものは少ない。雨や雪溶け水が屋根110に溜まってしまうと逆に屋根110を痛めることになるので、間隙650を通して流す。
【0051】
1棟の建物100に設置するときに複数のL字アングル600を使用する場合は、隣接するL字アングル600の端同時を一部重ねて固定しても良い。例えば、横幅が8170mmの屋根110に垂木170が455mmの間隔で配置されている場合、455mmの間隔で長穴640を7つ空けた約3mのL字アングル600を3本用意すれば良い。
【0052】
このように、屋根110に積もった雪の落下を抑制するとともに屋根110への負担も抑制することができる。雪止め部材200が設置物120を介さず屋根110に直接固定されるので、屋根110への負担を軽減することができる。雪止め部材200の設置地域の積雪状況に応じて、雪止め部材200の高さや設置物120からの位置を任意に決められるので、効果的に雪の落下を抑制することができる。それによって、屋根110の下を通行する人や屋根の下に存在する物への被害も無くすことができる。
【0053】
以上、本発明の実施例を述べたが、これらに限定されるものではない。例えば、支持プレート300には、雪止め部材200を支持するために屋根材130又は垂木170に固定するものであれば含まれる。U字板400には、雪止め部材200を屋根材130から浮かせて保持するものであれば、U字状以外の形状のものであっても含まれる。L字アングル600には、雪に滑落を受け止めるものであれば、L字状以外の形状のものであっても含まれる。留具500には、L字アングル600をU字板400又は支持プレート300に固定するものであれば含まれる。
【0054】
また、L字アングル600が屋根材130から浮いていなくても、L字アングル600と支持プレート300の間に間隙650が存在すれば、本発明に含まれる。支持プレート300、U字板400、L字アングル600の全部又は一部が一体成形されている場合も本発明に含まれる。