【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0042】
実施例で用いた測定方法及び評価方法を説明する。
【0043】
<平均二次粒子径>
粒度分布測定機(日機装株式会社製「FRA9220」)を用い、レーザー回折光散乱式粒度分析測定法で粒度分布を測定し、体積累積平均粒子径d50を算出し、平均二次粒子径とした。
【0044】
<粒子の元素含有量測定>
蛍光X線分析を用いて測定した。蛍光X線分析は、島津製作所製の蛍光X線分析装置“LAB CENTER XRF−1700”を用いて、FP法による理論計算により測定した。この測定装置の概略と測定条件は、次のとおりである。
(i)測定装置の概略
測定元素範囲 4Be〜92U
X線管 4kw薄窓,Rhターゲット
分光素子 LiF,PET,Ge,TAP,SX
1次X線フィルタ 4種自動交換(Al,Ti,Ni,Zr)
視野制限絞り 5種自動交換(直径1,3,10,20,30mmφ)
検出器 シンチレーションカウンタ(重元素)、プロポーショナルカウンタ(軽元素)
(ii)測定条件
管電圧−管電流 40kw−95mA
粒子の粉体を直径30mmφ、厚さ8mmの円盤状に成形して測定した。
【0045】
<繊維の元素分析>
繊維の元素分析は、高周波プラズマ発光分析装置(ICP)を用いて行った。
【0046】
<繊維物性>
繊度及び乾湿強伸度の測定は、JIS L 1015に準じた試験で行った。
【0047】
<染着性>
染着率は、JIS L 1015 8.31に準じて測定した。
【0048】
<透過率及び反射率測定>
島津製作所製の紫外可視近赤外分光高度計UV−3600、マルチパーパス大型試料室MPC−3100を用い、紫外線、可視光線及び近赤外線の平均反射率、平均透過率を測定し、それぞれ、紫外線、可視光線及び近赤外線の反射率、透過率とした。試料としては、レーヨン繊維100質量%(目付80g/m
2)の水流交絡不織布を作製して用いた。波長範囲は、紫外線250〜380nm、可視光線380〜780nm、近赤外線780〜2500nmとした。
【0049】
<紫外線遮蔽効果>
試料の紫外線透過率を、レギュラーレーヨン繊維(比較例2)の紫外線透過率と比較し、以下の基準で紫外線遮蔽効果を評価した。
有 レギュラーレーヨン繊維に比べて透過率が減少
無 レギュラーレーヨン繊維に比べて透過率が上昇
【0050】
<近赤外線遮蔽効果>
試料の近赤外線透過率を、レギュラーレーヨン繊維(比較例2)の近赤外線透過率と比較し、以下の基準で近赤外線遮蔽効果を評価した。
有 レギュラーレーヨン繊維に比べて透過率が減少
無 レギュラーレーヨン繊維に比べて透過率が上昇
【0051】
<生産性>
生産性を以下のような基準で評価した。
A 問題なく生産可能
B 可紡性にやや問題有
C 繊維化に難有り
【0052】
<水流交絡不織布>
上記測定方法で試料として用いる水流交絡不織布を以下のように作製した。まず、カードウェブを作製した。次に、カードウェブの片面に対して、孔径0.13mmφ、孔ピッチ1mm間隔で配列されたノズルから3MPaの水圧で柱状水流を噴射し、さらに同じ面に対して5MPaの水圧で柱状水流を噴射し、裏返して5MPaの水圧で柱状水流を噴射して、水流交絡不織布を作製した。
【0053】
(実施例1)
[ビスコース原液条件]
ルチル型酸化チタン系粒子(テイカ株式会社製「JR−1000」、アルミニウム成分の含有量1.24質量%、亜鉛成分の含有量0.302質量%、ルチル型の結晶形を有する酸化チタンの含有量90質量%以上、平均粒子径0.701μm、1μm以上の粒子27%、0.5μm以下の粒子が26%)とポリカルボン酸型界面活性剤(保護剤)を、それぞれ、20質量%及び0.2質量%になるように水に添加した後、卓上型ホモミキサー(プライミクス株式会社製「T.K.MHOMOMIXER MARKII」)で撹拌、分散して酸化チタン系粒子の
水分散液を調製した。得られた酸化チタン系粒子の水分散液を酸化チタン系粒子がセルロースに対して1.8質量%となるようにビスコース原液中に添加し、混合機にて攪拌混合を行い、紡糸用ビスコース液を調製した。ビスコース原液としては、セルロースを8.5質量%、水酸化ナトリウムを5.7質量%、二硫化炭素を2.7質量%含むものを用いた。
[紡糸条件]
得られた紡糸用ビスコース液を、2浴緊張紡糸法により、紡糸速度50m/分、延伸50%で紡糸して、繊度1.4dtexの繊維を得た。第1浴(紡糸浴)としては、硫酸110g/L、硫酸亜鉛15g/L、硫酸ナトリウム350g/Lを含むミューラー浴(50℃)を用いた。また、ビスコースを吐出する紡糸口金には、孔径0.07mmのホールを4000個有するノズルを用いた。紡糸中、単糸切れ等の不都合は生じず、ビスコースの紡糸性は良好であった。
[精練条件]
得られたビスコースレーヨンの糸条を、38mmにカットし、精練処理を行った。精練工程は、熱水処理後に水洗を行い、その後圧縮ローラーで余分な水分を繊維から落とした後、水硫化ソーダにて処理し、水洗後、圧縮ローラーで水分を落とした。次いで次亜塩素酸ソーダにて処理後、硫酸にて処理し、水洗、圧縮ローラーにて水分を落とし、油剤処理後、圧縮ローラーにて水分を落とし、乾燥処理(60℃、7時間)を施して、繊維Aを得た。
【0054】
(実施例2)
酸化チタン系粒子がセルロースに対して10質量%となるようにし、繊度を1.7dtexになるようにした以外は、実施例1と同様にして繊維Bを得た。
【0055】
(比較例1)
アナターゼ型の結晶形を有する酸化チタン(Huntsman製「TIOXIDE A−HR」、平均二次粒子径0.51μm、1μm以上の粒子15%、0.5μm以下の粒子48%)15質量%と、ヘキサメタリン酸ナトリウム0.1質量%を水に添加した後、卓上型ホモミキサー(プライミクス株式会社製「T.K.MHOMOMIXER MARKII」)で撹拌、
分散して酸化チタン系粒子の分散液を調製した。得られた酸化チタン系粒子の分散液を酸化チタン系粒子がセルロースに対して1.8質量%となるようにビスコース原液中に添加し、混合機にて攪拌混合を行い、紡糸用ビスコース液を調製した。上記にようにして得られた紡糸用ビスコース液を用いた以外は、実施例1と同様にして繊維Cを得た。
【0056】
(比較例2)
紡糸用ビスコース液としてビスコース原液のみを用いた以外は、実施例1と同様にして繊維D(レギュラーレーヨン繊維)を得た。
【0057】
繊維A〜Dの元素分析、繊維物性、染着性、透過率及び反射率の測定・評価を上記のように行い、その結果を下記表1に示した。
【0058】
【表1】
【0059】
図4及び
図5に、それぞれ、実施例1(繊維A)、実施例2(繊維B)、比較例1(繊維C)及び比較例2(繊維D)の波長250〜2500nmの領域における光線透過率及び光線反射率を示した。
【0060】
表1の結果から、本発明の光線遮蔽性再生セルロース繊維は、レギュラーレーヨン繊維(繊維D)とほぼ変わらない繊維物性を有しており、染着性にも優れることが分かった。また、表1及び
図4の結果によると、本発明の光線遮蔽性再生セルロース繊維は、紫外線領域、可視光線領域及び近赤外線領域を含む波長250〜2500nmの光線領域において、レギュラーレーヨン繊維(繊維D)及び繊維C(比較例1)に比べて、透過率が低く、近赤外線を含む全ての光線に対して優れた光線遮蔽性を有することが分かった。また、表1及び
図5の結果によると、本発明の光線遮蔽性再生セルロース繊維は、可視光線領域及び近赤外線領域において、レギュラーレーヨン繊維に比べて、反射率が高く、可視光及び近赤外線を効果的に散乱していることが分かった。
【0061】
(実施例3)
実施例1で得られたレーヨン繊維(繊維A)30質量%と、ポリエステル繊維(つや消し無し、帝人ファイバー製「ブライトポリエステル」、繊度1.7dtex、繊維長51mm)70質量%を混綿し、カードウェブを作製した。次に、カードウェブの片面に対して、孔径0.13mmφ、孔ピッチ1mm間隔で配列されたノズルから3MPaの水圧で柱状水流を噴射し、さらに同じ面に対して5MPaの水圧で柱状水流を噴射し、裏返して5MPaの水圧で柱状水流を噴射して、目付が120g/m
2の水流交絡不織布を作製した。
【0062】
(実施例4)
実施例1で得られたレーヨン繊維(繊維A)50質量%と、ポリエステル繊維50質量%を混綿し、カードウェブを作製した以外は、実施例3と同様にして、目付が120g/m
2の水流交絡不織布を作製した。
【0063】
(比較例3)
比較例2で得られた繊維D(レギュラーレーヨン繊維)30質量%と、ポリエステル繊維70質量%を混綿し、カードウェブを作製した以外は、実施例3と同様にして、目付が120g/m
2の水流交絡不織布を作製した。
【0064】
実施例3〜4の水流交絡不織布と、比較例3の水流交絡不織布を用いて下記のとおり遮熱性試験Iを行い、その結果を
図6に示した。
【0065】
<遮熱性試験I>
図2は、遮熱性試験Iの試験方法を示す説明図である。この試験装置は一般財団法人日本化学繊維検査協会に置かれている。発泡スチロール製の試料台1の上に温度センサー2と、黒画用紙3をこの順番に置き、黒画用紙3の約5mm上に試料5を試料押さえ4で保持した。試料台1の上面からL=50cmの高さの位置の照射ランプ6(岩崎電気株式会社製、商品名「アイランプ・スポット」、PRS500W、100V)を試料5側から照射し、裏面の黒画用紙中央の温度を温度センサー2で経時的に測定した。照射時間15分間、試験室の温度20℃±2℃とする。
【0066】
遮熱性試験Iで測定した結果に基づいて、実施例3、4と比較例3の温度差を算出し、その結果を上記表1に示した。また、下記の基準で遮熱性を評価した。なお、評価がA又はBである場合は、遮熱性を有することを意味する。
A 温度差が1.0℃以上
B 温度差が0.5℃以上1.0℃未満
C 温度差が0.5℃未満
【0067】
図6及び表1の結果から分かるように、実施例3の水流交絡不織布は、比較例3の水流交絡不織布に比べて、温度が1.2℃抑制された。また、実施例4の水流交絡不織布は、比較例3の水流交絡不織布に比べて、温度が4.8℃抑制された。本発明の実施例品が遮熱性に優れることが確認できた。
【0068】
(実施例5)
実施例1で得られたレーヨン繊維(繊維A)100質量%でカードウェブを作製した。次に、カードウェブの片面に対して、孔径0.13mmφ、孔ピッチ1mm間隔で配列されたノズルから3MPaの水圧で柱状水流を噴射し、さらに同じ面に対して5MPaの水圧で柱状水流を噴射し、裏返して5MPaの水圧で柱状水流を噴射して、目付が120g/m
2の水流交絡不織布を作製した。
【0069】
(比較例4)
比較例1で得られたレーヨン繊維(繊維C)100質量%でカードウェブを作製した以外は、実施例5と同様にして、目付が120g/m
2の水流交絡不織布を作製した。
【0070】
(比較例5)
比較例2で得られたレーヨン繊維(繊維D)100質量%でカードウェブを作製した以外は、実施例5と同様にして、目付が120g/m
2の水流交絡不織布を作製した。
【0071】
実施例3、5の水流交絡不織布と、比較例3、4、5の水流交絡不織布を用いて下記のとおり遮熱性試験IIを行い、その結果を
図7〜
図8に示した。
【0072】
<遮熱性試験II>
図3は、遮熱性試験IIの試験方法を示す説明図である。まず、
図3Aに示しているように、黒画用紙11と試料12ではさまれた空間を発泡スチロール13(厚み1cm)で囲い、縦(W1)10cm、横(W2)10cm、厚み(H)1cmの衣服内気候の疑似的な模型14を作製した。次に、
図3Bに示しているように、試料12側から照射ランプ15(岩崎電気株式会社製、商品名「アイランプ・スポット」、PRS500W、100V)を照射し、黒画用紙11側の温度変化を温度センサー16(FLIR製「T−335」サーモグラフカメラ、)で記録した。照射距離L30cm、照射時間15分間、試験室の温度20℃±2℃、湿度65%RHとした。
【0073】
遮熱性試験IIで測定した結果に基づいて、混綿の水流交絡不織布である実施例3と比較例3の温度差、レーヨン100質量%の水流交絡不織布である実施例5と比較例4、比較例5の温度差を算出し、その結果を上記表1に示した。
【0074】
図7及び表1の結果から分かるように、比較例4の水流交絡不織布(繊維C)は、比較例5の水流交絡不織布(繊維D)に比べて温度が0.6℃しか抑制されていないが、実施例5の水流交絡不織布(繊維A)は、比較例5の水流交絡不織布(繊維D)に比べて温度が5.4℃抑制されていた。また、
図8及び表1の結果から分かるように、実施例3の水流交絡不織布(繊維A)は、比較例3の水流交絡不織布(繊維D)に比べて、温度が2.0℃抑制された。本発明の実施例品が遮熱性に優れることが確認できた。
【0075】
<反応染色後の遮熱性試験I>
実施例5の水流交絡不織布(繊維A)及び比較例5の水流交絡不織布(繊維D)を反応性染料で染色してその染色品の遮熱性能を遮熱性試験Iで評価した。その結果を
図9に示した。実施例5の水流交絡不織布(繊維A)は比較例5の水流交絡不織布(繊維D)に比べて、反応染色後でも温度が1.9℃抑制され、有意差のある温度低下が認められた。本発明の実施例品は染色後にも遮熱性に優れることが確認できた。
【0076】
本発明の光線遮蔽性再生セルロース繊維は及びそれを含む繊維構造物は、光線遮蔽性に優れるとともに遮熱性に優れていることが確認された。