特許第6068033号(P6068033)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6068033
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】ポリアニオン活物質及びその形成方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/58 20100101AFI20170116BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   H01M4/58
   H01M4/36 C
【請求項の数】8
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-165711(P2012-165711)
(22)【出願日】2012年7月26日
(65)【公開番号】特開2013-30484(P2013-30484A)
(43)【公開日】2013年2月7日
【審査請求日】2015年6月10日
(31)【優先権主張番号】13/191,028
(32)【優先日】2011年7月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507342261
【氏名又は名称】トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(74)【代理人】
【識別番号】100102990
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良博
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(72)【発明者】
【氏名】ソン ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】松井 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】谷 俊彦
【審査官】 結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−146773(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/034821(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/019988(WO,A1)
【文献】 特開2012−048865(JP,A)
【文献】 NULI Yanna,et.al.,Electrochemical Intercalation of Mg2+ in Magnesium Manganese Silicate and Its Application as High-Energy Rechargeable Magnesium Battery Cathode,J.Phys.Chem.,2009年,Vol.113 No.28,p.12594-12597
【文献】 Zhenzhen Feng,et.al.,Sol-gel synthesis of Mg1.03Mn0.97SiO4 and its electrochemical intercalation behavior,Journal of Power Sources,2008年,184,p.604-609,DOI:10.1016/j.jpowsour.2008.05.021
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00−4/62
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素源を用意する工程、
可動イオン源を用意する工程、
活性金属材料を用意する工程、
網状構造材料を用意する工程、
フラックス材料を用意する工程、
炭素源、可動イオン源、活性金属材料、フラックス材料、及び網状構造材料を混合する混合工程、
混合物を非酸化性雰囲気中で所定の温度に加熱して反応生成物を形成する工程、並びに
反応生成物を洗浄して炭素でコーティングされたポリアニオン活物質を形成する工程
を含み、可動イオン源が、MgO、Mg(OH)2、MgCl2、MgBr2、MgI2、Mg(NO32、MgCO3、MgSO4、Mg3(PO42、及びMg(COOCH32からなる群より選択され、
活性金属材料が、MnO、MnCO3、MnSO4、MnCl2、MnBr2、MnI2、及びMn(COOCH32からなる群より選択され、
網状構造材料がSiO2であり、
フラックス材料が、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の塩化物、臭化物及びヨウ化物、並びにそれらの混合物からなる群より選択され、
炭素でコーティングされたポリアニオン活物質が炭素でコーティングされたマグネシウムマンガンシリケートである、ポリアニオン活物質の形成方法。
【請求項2】
炭素源が、炭水化物、芳香族炭化水素、炭素、水素及び酸素を含む有機化合物、又はグラファイトである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
炭素でコーティングされたポリアニオン活物質が15nm〜50μmの平均直径を有する結晶の形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
混合工程が材料を均一な微細混合物に砕くことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
炭素でコーティングされたポリアニオン活物質がその場で形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
混合物がフラックス材料の溶融温度よりも高い温度に加熱される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
フラックス材料がKClであり、可動イオン源がMgOであり、活性金属材料がMnCO3であり、炭素源がグルコースである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
炭素でコーティングされたマグネシウムマンガンシリケートが式Mg1.03Mn0.97SiO4/Cを有する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電式電池のための活物質及びその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ポリアニオン系活物質は、網状構造内に可動イオンと遷移金属を含むことができる。金属酸化物系材料と比較して、ポリアニオン材料は、より高いセル電圧、より低いコスト、並びに向上した安定性を有する活物質を提供することができる。しかしながら、ポリアニオン系材料の電子伝導性は、ポリアニオン系材料の絶縁特性のために低い。
【0003】
それゆえ、向上した電子伝導性を有しかつ製造が容易なポリアニオン系活物質に関して当技術分野でニーズがある。また、多数の手順を要することなしにコスト効率がよくかつ簡単な方法において製造することができるポリアニオン活物質に関して当技術分野でニーズがある。
【発明の概要】
【0004】
1つの態様では、炭素源を用意する工程、可動イオン源を用意する工程、活性金属材料を用意する工程、網状構造(ネットワーク)材料を用意する工程、フラックス材料を用意する工程、炭素源、可動イオン源、活性金属材料、フラックス材料、及び網状構造材料を混合する工程、次いで混合物を非酸化性雰囲気中で所定の温度に加熱して反応生成物を形成する工程、並びに反応生成物を洗浄して炭素でコーティングされたポリアニオン活物質を形成する工程を含むポリアニオン活物質の形成方法が開示される。
【0005】
別の態様では、炭素源、可動イオン源、活性金属材料、網状構造材料、及びフラックス材料のその場(in situ)反応生成物を含むポリアニオン活物質であって、その上に形成された炭素コーティングを含むポリアニオン活物質が開示される。
【0006】
さらなる態様では、アノード、電解質、及びカソードを含む電池であって、該カソードが、炭素源、可動イオン源、活性金属材料、網状構造材料、及びフラックス材料のその場(in situ)反応生成物を有するポリアニオン活物質を含み、該ポリアニオン活物質がその上に形成された炭素コーティングを含む電池が開示される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】例1で詳細に記載された炭素コーティングを有するマグネシウム−マンガン−ケイ素酸化物の反応生成物のSEM−EDS画像である。
図2】例1で製造された材料のXRDプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1つの態様では、ポリアニオン活物質の形成方法が開示される。ポリアニオン活物質は、電池システムにおいて使用することができる。1つの態様では、当該活物質は、リチウム又はマグネシウム系電池システムのいずれかにおいてカソード活物質として使用することができる。
【0009】
炭素源を用意する工程、可動イオン源を用意する工程、活性金属材料を用意する工程、網状構造材料を用意する工程、フラックス材料を用意する工程、及び種々の材料を混合する工程を含むポリアニオン活物質の形成方法が開示される。1つの態様では、混合工程は、材料を均一な微細混合物に砕くか又は粉砕することを含むことができる。1つの態様では、ボールミルを利用して構成要素を混合することができる。
【0010】
材料の混合に続いて、混合物は反応生成物を形成するための非酸化性雰囲気中で所定の温度に加熱される。1つの態様では、混合物はフラックス材料の溶融温度よりも高い温度に加熱される。このようにして、フラックス材料は、種々の反応体が反応して所望の反応生成物を形成することができる媒体を提供する。混合物の加熱に続いて、反応生成物は洗浄され、炭素でコーティングされたポリアニオン活物質が形成される。
【0011】
種々の炭素源を本方法において利用することができる。例えば、炭素源は、炭水化物、芳香族炭化水素、炭素、水素及び酸素を含む有機化合物、並びにグラファイトから選択することができる。
【0012】
種々の可動イオン源を本方法において利用することができる。可動イオン源は、利用される電池システムのタイプに基づいて選択することができる。例えば、リチウム系可動イオン源はリチウム電池のために使用することができ、一方で、マグネシウムイオン源は、マグネシウム電池のために利用することができる。1つの態様では、可動イオン源は、LiOH、LiCl、LiBr、LiI、LiNO3、Li2CO3、Li2SO4、Li3PO4、LiH2PO4、LiCOOCH3、MgO、Mg(OH)2、MgCl2、MgBr2、MgI2、Mg(NO32、MgCO3、MgSO4、Mg3(PO42、及びMg(COOCH32を含むことができる。リチウムイオン及びマグネシウムイオンを含む可動イオンの種々の他の供給源も同様に利用することができる。
【0013】
本方法で利用される活性金属材料は、酸化物、硫酸塩、及び炭酸塩を含む遷移金属化合物から選択することができる。酸化還元活性な種々の遷移金属化合物を利用することができる。例えば、MnO、MnCO3、MnSO4、MnCl2、MnBr2、MnI2、Mn(COOCH32、FeSO4、FeCl2、FeBr2、FeI2、Fe(COOCH32、FeC24、FeC687、Fe(NO33、Cr23、Cr2(CO33、CrCl3、CrBr3、CrI3、V25、V23、NiO、NiCO3、NiCl2、NiBr2、NiI2、Ni(OH)2、Ni(NO32、Co34、CoCO3、CoCl2、CoBr2、CoI2、Co(OH)2を含む遷移金属化合物を活性材料として利用することができる。
【0014】
網状構造材料は硬い骨格又は網状構造を提供し、式XOmn-を有することができ、式中、Xは、リン、ケイ素、モリブデン、ベリリウム、W、Ge及び硫黄から選択することができる。1つの態様では、網状構造材料は二酸化ケイ素及びH3PO4を含むことができる。
【0015】
上記のとおり、フラックス材料は、反応体が溶解及び反応して所望の反応生成物を形成する溶媒又は媒体を提供する。1つの態様では、フラックス材料は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の塩化物、臭化物及びヨウ化物、並びにそれらの混合物を含むことができ、溶融塩に基づく合成方法を提供する。上記のとおり、本方法は、混合物をフラックス材料の溶融温度よりも高い所定の温度に加熱することを含む。例えば、塩化カリウムがフラックス材料として利用される場合には、加熱温度は、塩化カリウムに関する760℃の融点よりも高いことが必要である。上記のように、溶融フラックス材料は、種々の反応体が反応する媒体を提供し、炭素コーティングが反応生成物の外表面上に形成することを可能にして、ポリアニオン活物質の改善された電子伝導性を提供する。1つの態様では、洗浄された反応生成物は、15nm〜50μmの平均直径を有する結晶の形態であることができる。
【0016】
また、炭素源、可動イオン源、活性金属材料、網状構造材料、及びフラックス材料のその場(in situ)反応生成物であるポリアニオン活物質であって、その上に形成された炭素コーティングを含むポリアニオン活物質が開示される。先に述べたように、溶融塩合成法は、複雑でかつ多くの手順を必要としない現場(in situ)法を提供する。ポリアニオン活物質は、当該活物質の用途に応じて種々の材料から形成することができる。上記のように、種々の可動イオン源並びに金属材料が様々な電池用途に利用できる。1つの態様では、電池は、アノード、電解質、及び当該電解質によってアノードから隔てられたカソードを含むことができ、カソードは、炭素源、可動イオン源、活性金属材料、網状構造材料、及びフラックス材料のその場(in situ)反応生成物であるポリアニオン活物質を含み、該ポリアニオン活物質がその上に形成された炭素コーティングを含む。リチウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム及びカルシウムを含む種々の電池システムが利用できる。このような電池用途では、種々の可動イオン並びに酸化還元活性な遷移金属が利用できる。
【実施例】
【0017】
炭素でコーティングされたマグネシウムマンガンシリケートを形成するための原料が記載される。この例では、溶融塩合成技術を用いた反応生成物のその場合成が詳述される。酸化マグネシウム1.245g、炭酸マンガン3.346g及び二酸化ケイ素1.80gの原料を塩化カリウム26.64gのフラックス材料及びグルコース6.606gの炭素源とともに混合した。混合物を乳鉢と乳棒で砕き、次いで坩堝に入れた。化学反応体はアルドリッチ・ケミカルカンパニーから購入し、それらは分析グレードの材料である。次いで、混合物を含む坩堝を非酸化性雰囲気中において2℃/分の速度で800℃まで加熱し、800℃の温度で6時間保持した。加熱に続いて、坩堝を自然放熱によって室温まで冷却した。次いで、反応生成物を脱イオン水で洗浄して塩化カリウムを除去し、続いて減圧下において100℃で2時間乾燥した。次いで、生成物の形態及び組成をSEM−EDS及びXRD分析によって特性評価した。
【0018】
図1を参照すると、例1における詳細な手順によって製造された生成物のSEM−EDS画像が示される。図において知ることができるように、反応生成物の構成成分の種々の画像が提供され、その上に炭素コーティングを有するマグネシウムマンガンシリケートの反応生成物が示されている。1つの態様において、この例では、0.3モルのMg1.03Mn0.97SiO4/Cの合成が説明される。SEM−EDS画像から知ることができるように、種々の構成成分の形態は、上記の15nm〜50μmの範囲内の粒子を提供している。加えて、図2のXRDのグラフでは、上記式の炭素でコーティングされたマグネシウムマンガンシリケートの組成が示される。
【0019】
本発明は、上記の実施例に限定されるものではない。記載された実施例は本発明の範囲を限定することを意図するものではない。当業者であれば、それらの変更、他の構成要素の組み合わせ及び他の使用を思い付くであろう。本発明の範囲は特許請求の範囲において記載されそしてそれによって規定される。
図2
図1