(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施の形態による電磁接触器について
図1から
図6を用いて説明する。まず、本実施の形態による電磁接触器1の概略構成について
図1を用いて説明する。
図1は、本実施の形態による電磁接触器1の断面図である。本実施の形態による電磁接触器1は直流及び交流のいずれにも適用できる。
図1に示すように、電磁接触器1は外装ケース(収納ケース)20を有している。外装ケース20は例えば不透明な合成樹脂で形成されている。このため、外装ケース20内に配設された一対の接点33(詳細は後述)は外部から視認できないようになっている。外装ケース20は、下端面が開放された有底筒体20aと、有底筒体20aの下端面を閉塞する底板20bとで構成されている。
【0011】
外装ケース20内には、接点機構を配置した接点装置2と、接点装置2を駆動する電磁石装置としての電磁石ユニット3とが収納されている。電磁石ユニット3は底板20b上に配置され、接点装置2は電磁石ユニット3上に配置されている。接点装置2及び電磁石ユニット3は、外装ケース20内に直列に収納されている。接点装置2は、接点収納ケース4を有している。接点収納ケース4は、セラミックス、合成樹脂等で形成されて下端を開放した桶状体4aと、桶状体4aの開放端面に密着固定された金属製の接合部材4bと、桶状体4aの側面を覆う金属筒体4cとで構成されている。接合部材4bは、電磁石ユニット3の上部磁気ヨーク22の上面にロー付け又は溶接等によって気密状態で固定されている。
【0012】
桶状体4aの上面には、長手方向に所定間隔を保って断面円形の貫通孔24a,24bが設けられている。貫通孔24a,24b内に例えば銅製の一対の固定接触子6a,6bが挿通されている。一対の固定接触子6a,6bは貫通孔24a,24bに接着剤等によって固定されている。固定接触子6a,6bのそれぞれは、上部側の大径頭部7と大径頭部7と同軸的に連接された下部側の小径円柱部8とで構成されている。
【0013】
固定接触子6a,6bは、小径円柱部8を貫通孔24a,24b内に挿通した状態で桶状体4aに接着剤等によって固定されている。固定接触子6a,6bは、小径円柱部8によって貫通孔24a,24bを密封するようになっている。また、接点装置2は、固定接触子6a,6bの小径円柱部8の下端面に比較的狭い所定のギャップを隔てて対向配置された可動接触子11を有している。可動接触子11は小径円柱部8の下端面に対して接離可能に対向配置されている。可動接触子11は接触子ホルダ13に接触スプリング14によって上方に付勢されて装着されている。接触子ホルダ13は、後述する電磁石ユニット3の可動プランジャ25に連結されて上下方向に駆動される。固定接触子6a,6bと可動接触子11とにより、接離可能、すなわち接触状態及び離間状態のいずれか一方の状態を取り得る一対の接点33が構成されている。例えば一対の接点33の一方は固定接触子6a,6bであり、他方は可動接触子11である。
固定接触子6a,6bの大径頭部7には外部接続端子板15a,15bがビス止めされている。
【0014】
電磁石ユニット3は、側面から見てU字形状の磁気ヨーク21を有している。磁気ヨーク21の底板部21aの中央部には、下端を開放した円筒部21bが形成されている。磁気ヨーク21の上面側は上部磁気ヨーク22によって連接されている。
磁気ヨーク21の円筒部21bの外周面には励磁コイル(電磁石のコイル)23を巻装したコイルホルダ32が装着されている。円筒部21bの内周面には可動プランジャ25を摺動可能に内装した有底円筒状のキャップ26が配設されている。キャップ26の底面には、可動プランジャ25の底面と接触して可動プランジャ25の下降時の衝撃を吸収するゴム座27が配設されている。
【0015】
可動プランジャ25の中心部には連結軸28が嵌合されている。連結軸28の頭部は上部磁気ヨーク22に形成された貫通孔29を通じて上方に延長され、接触子ホルダ13に連結されている。可動プランジャ25の連結軸28の周囲にはスプリング挿通孔30が形成されている。スプリング挿通孔30と上部磁気ヨーク22との間に可動プランジャ25を下方に付勢する復帰スプリング31が装着されている。
【0016】
桶状体4a、接合部材4b及び金属筒体4cで構成される接点収納ケース4、上部磁気ヨーク22及びキャップ26で構成される密封空間内に水素ガス、窒素ガス、水素及び窒素の混合ガス、空気、SF6等のアーク消弧ガスが封入されている。
電磁接触器1は、例えば外部接続端子板15a,15b上に配置された制御回路基板9を有している。制御回路基板9には、電磁石ユニット3を制御する電磁石コイル制御回路34(
図1では不図示)を有している。制御回路基板9は、外部接続端子板15a,15b上に設けられた基板ケース35内に収納されている。
【0017】
次に、電磁接触器1の回路構成について
図2から
図6を用いて説明する。
図2は、電磁接触器1の回路構成の要部を電磁接触器1に接続された主回路基板9とともに示している。
図2に示すように、電磁接触器1に設けられた制御回路基板9は、電磁石コイル制御回路34と電圧検出回路17とを有している。電磁石コイル制御回路34は、電磁石ユニット3に備えられた励磁コイル23に供給する電流を制御するスイッチング素子16と、スイッチング素子16のオン/オフを制御するスイッチング素子駆動回路18とを有している。スイッチング素子駆動回路18は、パルス幅変調(pulse width modulation:PWM)回路(不図示)を有している。スイッチング素子駆動回路18は、励磁コイル3に所定量の電流を流すために、PWM駆動によりスイッチング素子16のオン状態の時間とオフ状態の時間とを調整するようになっている。
【0018】
スイッチング素子16は例えばNチャネル型の電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)で構成されている。スイッチング素子16のドレイン端子Dは励磁コイル23の一端子に接続され、ソース端子Sはグラウンドに接続(接地)されている。スイッチング素子16のゲート端子Gは、PWM駆動信号が出力されるスイッチング素子駆動回路18の信号出力端子(不図示)に接続されている。励磁コイル23の他端子は電磁接触器1に設けられた電源回路10に接続されている。励磁コイル23及びスイッチング素子16は、電源回路10とグラウンド間に直列に接続されている。
【0019】
電圧検出回路17は入力端子17a,17bを有している。入力端子17aにはドレイン端子Dが接続され、入力端子17bにはソース端子Sが接続されている。電圧検出回路17は、スイッチング素子16の端子間電圧、すなわちソース端子Sとドレイン端子Dとの間のソースドレイン間電圧Vdsを検出するようになっている。詳細は後述するが、電圧検出回路17は特に、ソースドレイン間電圧Vdsに変極点が生じたか否かを検出するようになっている。
電源回路10は、励磁コイル23に印加される電圧や供給される電流の供給源である。電源回路10は、例えばDC−DCコンバータ回路(不図示)を有し、励磁コイル23が所望の磁場を発生するために必要な電圧や電流を主回路5の電源電圧VDDから生成するようになっている。
【0020】
また、主回路5は、電磁接触器1によって開閉が制御される負荷5cと、一対の接点33と、外部接続端子板15a,15bと、負荷5cに印加される電圧や供給される電流の供給源となる電源回路5dとを有している。外部接続端子板15aは電源回路5dの出力端子5aに接続され、外部接続端子板15bは負荷5cの入力端子5bに接続されている。電源回路5dは、例えばDC−DCコンバータ回路(不図示)を有し、電源回路10に印加されるのと同じ電源電圧VDDから負荷5cに必要な電圧や電流を生成するようになっている。一対の接点33が接触状態(閉状態)になると、負荷5cの入力端子5bは、外部接続端子板15b、一対の接点33及び外部接続端子板15aを介して電源回路5dの出力端子5aに接続される。これにより、電磁接触器1は、負荷5cに電圧を印加したり電流を供給したりする電力供給状態となる。一方、一対の接点33が離間状態(開状態)になると、負荷5cは一対の接点33によって電源回路5dから切断される。これにより、電磁接触器1は、負荷5cに電圧を印加したり電流を供給したりしない電力供給停止状態となる。
【0021】
次に、電圧検出回路17が検出するソースドレイン間電圧Vdsについて
図2を参照しつつ
図3を用いて説明する。
図3は、スイッチング素子16がオフ状態からオン状態に切り替わる際のソースドレイン間電圧Vdsの実測波形を電圧の上昇途中から示している。図中上段には、負荷5cの入力端子5bとグラウンドとの間の端子電圧V5bの電圧波形が示され、図中下段には、ソースドレイン間電圧Vdsの電圧波形が示されている。図中縦軸は電圧を表し、横軸は時間を表し、図中左から右に向かって時間の経過を示している。端子電圧V5bにおける縦軸の電圧スケールは、1V/divであり、ソースドレイン間電圧Vdsにおける縦軸の電圧波形の電圧スケールは0.1V/divであり、両電圧波形における横軸の時間スケールは10msec/divである。
【0022】
スイッチング素子16がオン状態になると、
図3に示すように、ソースドレイン間電圧Vdsは上昇する。これにより、励磁コイル23に電流が流れ始め、励磁コイル23に流れる電流の電流値が所定値に到達すると(図中の時刻t)、一対の接点33が離間状態から接触状態に移行して、端子電圧V5bの電圧値は例えば0Vから2.5Vになる。一対の接点33が離間状態から接触状態に移行すると、開放状態にあった、電源回路5dの出力端子5aと負荷5cの入力端子5bとは一対の接点33により短絡される。このため、一対の接続端子5a,5b間のインピーダンスは、相対的に高い値(例えば、無限大と看做せる値)からそれよりも低い値(例えば、0Ωと看做せる値)に変化する。このインピーダンスの変化により、出力端子5aの電圧値は瞬間的に低下する。この瞬間的な電圧降下は、電源電圧VDD、電源回路10の出力電圧及びソースドレイン間電圧Vdsに順次影響し、電源電圧VDD、当該出力電圧及びソースドレイン間電圧Vdsのそれぞれの電圧値が瞬間的に低下する。これにより、
図2の図中に仮想円αで囲んで示すように、ソースドレイン間電圧Vdsには、この瞬間的な電圧低下に基づいて生じる変極点が生じる。この変極点は一対の接点33が接触状態となった場合に生じるので、一対の接点33が離間状態から接触状態に移行を開始した後に、この変極点が生じるか否かを電圧検出回路17で検出することにより、一対の接点33の接離状態、すなわち固定接触子6a,6bと可動接触子11とが接触しているか離間しているかを判定することができる。
【0023】
次に、電圧検出回路17の回路構成について
図4から
図6を用いて説明する。
図4は、電圧検出回路17の回路構成のブロック図である。電圧検出回路17は、サージ電圧除去回路41と、高周波ノイズ除去回路43と、増幅回路45と、微分回路47と、比較回路49とを有している。高周波ノイズ除去回路41は、入力されたスイッチング素子16のソースドレイン間電圧Vdsに重畳するサージ電圧を除去し、電圧検出回路17に高電圧が印加されるのを防止するようになっている。高周波ノイズ除去回路43は、サージ電圧除去回路41が出力した出力電圧に重畳する高周波ノイズ信号を除去し、高周波ノイズ信号を変極点として検出してしまうのを防止するようになっている。増幅回路45は、高周波ノイズ除去回路43が出力した出力電圧の電圧レベルを増幅するようになっている。
図3に示すように、変極点における電圧変化は50mV程度と電圧変動量が小さいため、電圧検出回路17は、発生した変極点を検出し損ねてしまう可能性がある。このため、電圧検出回路17は、高周波ノイズ除去回路43からの出力電圧を増幅回路45により約20倍に増幅することにより、変極点の検出誤りを防止できるようになっている。微分回路47は増幅回路45が出力した出力電圧を微分して、変極点を抽出するようになっている。比較回路49は、微分回路47が出力した出力電圧と、所定の閾値電圧とを比較して、当該出力電圧が所定の閾値電圧を下回ったらそれまで出力していた電圧とは異なる電圧値の電圧を出力し、その後に当該出力電圧が所定の閾値電圧を越えたら出力電圧の電圧値を元に戻すようになっている。
【0024】
次に、電圧検出回路17の具体的な回路構成について
図5を用いて説明する。
図5は、電圧検出回路17の具体的な回路構成の一例であって、電圧検出回路17の動作シミュレーションに用いた回路図である。
図5に示すように、電圧検出回路17に備えられたサージ電圧除去回路41は、ツェナーダイオード41aを有している。ツェナーダイオード41aの陰極は、入力端子17aに接続されている。ツェナーダイオード41aの陽極は、入力端子17b及びグラウンドに接続(接地)されている。当該陰極は、入力端子17aを介してスイッチング素子16のドレイン端子D(不図示)に接続され、当該陽極は入力端子17bを介してスイッチング素子16のソース端子S(不図示)に接続されている。サージ電圧除去回路41は、ツェナーダイオード41aのツェナー電圧以上の印加電圧が入力端子17a,17bに印加されると、当該印加電圧の電圧値をツェナーダイオード41aの順電圧まで低下させる。これにより、サージ電圧除去回路41は、電圧検出回路17に設けられた、サージ電圧除去回路41以外の各回路43〜49に高電圧が印加されるのを防止するようになっている。
【0025】
高周波ノイズ除去回路43は、抵抗43aとコンデンサ43bとで構成された低域通過フィルタを有している。抵抗43aの一端子は入力端子17a及びツェナーダイオード41aの陰極に接続され、他端子はコンデンサ43bの一方の電極に接続されている。コンデンサ43bの他方の電極は、入力端子17b、ツェナーダイオード41aの陽極及びグラウンドに接続(接地)されている。抵抗43aの抵抗値とコンデンサ43bの容量値は、当該低域通過フィルタの遮断周波数がソースドレイン間電圧Vdsに生じる変極点の周期の逆数よりも高くなるように設定される。これにより、高周波ノイズ除去回路43は、ソースドレイン間電圧Vdsに生じる変極点を残したまま高周波ノイズのみを除去した電圧を出力することできる。本実施の形態では、高周波ノイズ除去回路43は、受動型低域通過フィルタを有しているが、オペアンプ等を用いた能動型低域通過フィルタを有していてももちろんよい。
【0026】
増幅回路45は、オペアンプ45aと、オペアンプ45aの出力端子OUTとグラウンド間に直列接続された抵抗45b,45cとを有している。抵抗45bの一端子はオペアンプ45aの出力端子OUTに接続され、他端子は抵抗45cの一端子に接続されている。抵抗45cの他端子はグラウンドに接続(接地)されている。オペアンプ45aの非反転入力端子(+)は、高周波ノイズ除去回路43の抵抗43aの他端子及びコンデンサ43bの一方の電極に接続されている。オペアンプ45aの反転入力端子(−)は、抵抗45bの他端子及び抵抗45cの一端子に接続されている。抵抗45b,45cのそれぞれの抵抗値は、オペアンプ45aの増幅度が約20となるように設定される。増幅回路45は、非反転増幅回路として機能し、高周波ノイズ除去回路43から出力された出力電圧の位相を反転せずに増幅して出力するようになっている。
【0027】
微分回路47は、コンデンサ47aと抵抗47bとで構成された高域通過フィルタを有している。コンデンサ47aの一方の電極は、増幅回路45のオペアンプ45aの出力端子OUTと抵抗45bの一端子とに接続され、他方の電極は抵抗47bの一端子に接続されている。抵抗47bの他端子は、比較回路49のオペアンプ49a(詳細は後述)の反転入力端子(−)と、閾値電圧生成回路48のツェナーダイオード48b(詳細は後述)の陰極とに接続されている。コンデンサ47aの容量値と抵抗47bの抵抗値は、当該高域通過フィルタの遮断周波数がソースドレイン間電圧Vdsに生じる変極点の周期の逆数よりも低くなるように設定される。これにより、微分回路47は、ソースドレイン間電圧Vdsに生じる変極点の変化、すなわち変極点におけるソースドレイン電圧Vdsの電位変動を喪失せずに出力することができる。本実施の形態では、微分回路47は、受動型高域通過フィルタを有しているが、オペアンプ等を用いた能動型高域通過フィルタを有していてももちろんよい。
【0028】
電圧検出回路17は、微分回路47の出力バッファとして機能するバッファアンプ67を有している。バッファアンプ67はオペアンプ67aを有している。オペアンプ67aの非反転入力端子(+)は微分回路47のコンデンサ47aの他方の電極及び抵抗47bの一端子に接続されている。オペアンプ67aの反転入力端子(−)と出力端子OUTとは接続されている。バッファアンプ67は、ボルテージフォロワ回路構成を有し、微分回路47から入力した入力電圧を増幅せず(増幅度は1)に出力する。
【0029】
比較回路49はバッファアンプ67の出力電圧が入力するようになっている。すなわち、微分回路47の出力電圧はバッファアンプ67を介して比較回路49に入力するようになっている。比較回路49はバッファアンプ67の出力電圧の電圧レベルと、閾値電圧生成回路48で生成した閾値電圧の電圧レベルとを比較する。比較回路49は、オペアンプ49aと抵抗49b,49cとを有している。抵抗49bの一端子はバッファアンプ67のオペアンプ67aの反転入力端子(−)及び出力端子OUTに接続され、他端子はオペアンプ49aの非反転入力端子(+)及び抵抗49cの一端子に接続されている。オペアンプ49aの出力端子OUTは抵抗49cの他端子に接続されている。比較回路49は、ヒステリシスコンパレータである。比較回路49は、オペアンプ49aの非反転入力端子(+)に入力する入力電圧の上昇時と下降時とで閾値の電圧レベルが異なるように、閾値にヒステリシスを設けている。これにより、比較回路49は、当該入力電圧に重畳するノイズ信号による誤動作を防止するようになっている。当該ヒステリシスの幅、すなわち入力電圧の上昇時の閾値(閾値電圧の下限値)と、下降時の閾値(閾値電圧の上限値)との差は、抵抗49b,49cの抵抗値で決定され、変極点における微分波形の電圧変動よりも小さくなるように設定される。
【0030】
電圧検出回路17は、比較回路49に備えられたオペアンプ49aの反転入力端子(−)に入力される閾値電圧を生成する閾値電圧生成回路48を有している。閾値電圧生成回路48は、抵抗48aとツェナーダイオード48bとを有している。抵抗48aの一端子はアナログ用のアナログ電源Va(例えば、12V)の電圧出力端子に接続され、他端子はツェナーダイオード48bの陰極と、微分回路47bの抵抗47bの他端子と、オペアンプ49aの反転入力端子(−)に接続されている。ツェナーダイオード48bの陽極はグラウンドに接続(接地)されている。比較回路49に入力される閾値電圧は、アナログ電源Vaの電圧値を、抵抗48aの抵抗値とツェナーダイオード48bの抵抗値とで抵抗分割した値となる。
【0031】
微分回路47の抵抗47bの他端子は、抵抗48aとツェナーダイオード48bとが接続された接続部に接続されている。このため、微分回路47の出力電圧は全体的に、閾値電圧の電圧レベルにレベルシフトされる。
増幅回路45のオペアンプ45b及びバッファアンプ67のオペアンプ67aの正電源入力端子は、アナログ電源Vaの電圧出力端子に接続され、負電源入力端子はグラウンドに接続(接地)されている。比較回路49のオペアンプ49aの正電源入力端子は、デジタル用のデジタル電源Vd(例えば、5V)の電圧出力端子に接続され、負電源入力端子はグラウンドに接続(接地)されている。
【0032】
図示は省略するが、電圧検出回路17は例えば、比較回路49の出力電圧が入力する発光素子駆動回路と、当該発光素子駆動回路で駆動され、外部から発光状態を視認できる発光素子とを有している。当該発光素子駆動回路は、一対の接点33が離間状態から接触状態に移行開始した時刻、すなわちスイッチング素子駆動回路18がスイッチング素子16のゲート端子Gにゲート信号の入力を開始してから所定時間内に当該出力電圧の電圧レベルに変化がないと、発光素子を点灯して一対の接点33に不具合が生じていることを電磁接触器1の使用者に報知するようになっている。このように、電圧検出回路17は、比較回路49の出力電圧を一対の接点33に不具合が生じているか否かを検出する検出信号として用いるようになっている。
【0033】
図5に示す、回路61は、スイッチング素子16のソースドレイン間電圧Vdsを模擬する模擬電圧生成回路であり、回路63は、電圧検出回路17の耐電圧検査用回路であり、回路65は、オペアンプ45bの入力保護の検査用回路であって、いずれも電圧検出回路17の動作シミュレーション用回路であるため、詳細な説明は省略する。
【0034】
次に、電圧検出回路17の動作シミュレーション結果について
図6を用いて説明する。
図6は、電圧検出回路17の各部の電圧波形のシミュレーション結果を示している。図中最上段には、ソースドレイン間電圧Vdsの電圧波形が示され、2段目には、
図5に示す回路61の出力電圧V1の電圧波形が示され、3段目には、サージ電圧除去回路41の出力電圧V2の電圧波形が示され、4段目には、高周波ノイズ除去回路43の出力電圧V3の電圧波形が示され、5段目には、微分回路47の出力電圧と同波形である、バッファアンプ67の出力電圧V4の電圧波形が示され、最終段には、比較回路49の出力電圧V5の電圧波形が示されている。各電圧Vds,V1〜V5において、縦軸は電圧を表し、横軸は時間を表している。図中左から右に向かって時間の経過を示している。なお、3段目から最終段に示す各電圧V2、V3、V4、V5は、最上段に示すソースドレイン間電圧Vdsに対して、変極点の生じるタイミングを変えずに、電圧上昇の開始タイミングが1ms遅く、かつ経過時間24msで立ち下がる電圧波形となっている。ソースドレイン間電圧Vdsに対して各電圧V2、V3、V4、V5の電圧波形を異ならせているのは、シミュレーションにおいて、出力電圧V1のスイッチングノイズによる誤検出を防止するためである。これらの電圧波形の動作タイミングは、
図5に示す回路63,65により異ならされている。
【0035】
図6の2段目に示すように、時刻t0〜t1において、回路61から出力された高電圧(例えば、200V一定)の出力電圧V1は、サージ電圧除去回路41により除去される。このため、
図6の3段目以降に示すように、時刻t0〜t1において、サージ電圧除去回路41の出力電圧V2及び高周波ノイズ除去回路43の出力電圧V3は約0V一定となり、バッファアンプ67の出力電圧V4は、レベルシフトされているので約3V一定となる。また、時刻t0〜t1の期間において、比較回路49のオペアンプ49aの非反転入力端子(+)に入力する出力電圧V4の電圧値は、反転入力端子(−)に入力する閾値電圧の下限値よりも高いので、比較回路49の出力電圧V5はハイレベル(例えば、約3V一定)となる。なお、本例では、閾値電圧は、時刻t0〜t1の期間の出力電圧V4と同電圧であり、下限値は、当該期間の出力電圧V4よりも例えば数mVから数十mV低い値となる。
【0036】
本シミュレーションでは、時刻t1以降において、回路61は、図中上段に示すソースドレイン間電圧Vdsと同波形の出力電圧V1を出力するように設定されているので、サージ電圧除去回路41の出力電圧V2は、出力電圧V1と同波形となり、高周波ノイズ除去回路43の出力電圧V3は、出力電圧V2から高周波ノイズを除去した電圧波形となり、バッファアンプ67の出力電圧V4は出力電圧V3の微分波形となる。また、時刻t1〜t2の期間において、比較回路49のオペアンプ49aの非反転入力端子(+)に入力する出力電圧V4の電圧値は、反転入力端子(−)に入力する閾値電圧の上限値よりも高いので、比較回路49の出力電圧V5はハイレベルが維持される。なお、本例では、閾値電圧の上限値は、時刻t0〜t1の期間の出力電圧V4よりも例えば数mVから数十mV高い値となる。
【0037】
時刻t2〜t5の期間において、回路61の出力電圧V1に変極点が生じる。変極点の開始時刻t2において、それまで上昇していた出力電圧V3の電圧値は低下し始める。このため、一定電圧に収束し始めていた出力電圧V4は、時刻t2から再び低下し始め、時刻t3において、比較回路49のオペアンプ49aの非反転入力端子(+)に入力する出力電圧V4の電圧値が反転入力端子(−)に入力する閾値電圧の上限値よりも低くなる。これにより、時刻t3において、比較回路49の出力電圧V5はロウレベルに移行する。
【0038】
低下した出力電圧V3は再び上昇し始める。このため、出力電圧V4も上昇し始め、時刻t4において、比較回路49のオペアンプ49aの非反転入力端子(+)に入力する出力電圧V4の電圧値が反転入力端子(−)に入力する閾値電圧の下限値よりも高くなる。これにより、時刻t4において、比較回路49の出力電圧V5はハイレベルに移行する。
その後、回路61の出力電圧V1が0Vになるまで、比較回路49のオペアンプ49aの非反転入力端子(+)に入力する出力電圧V4の電圧値は、反転入力端子(−)に入力する閾値電圧の下限値よりも高いので、比較回路49の出力電圧V5はハイレベルが維持される。
【0039】
このように、電圧検出回路17は、一対の接点33が離間状態から接触状態に移行する際にスイッチング素子16のソースドレイン間電圧Vdsに生じる変極点を検出することができる。このため、電磁接触器1は、一対の接点33が離間状態から接触状態に移行を開始した時刻(本例では、時刻t1)から所定期間内(本例では、時刻t1から6〜7.5ms程度の期間)に出力電圧V5がロウレベルにならない場合には、一対の接点33に不具合が生じていると判定することができる。
【0040】
次に、本実施の形態による電磁接触器1の動作について
図1から
図6を再度用いて説明する。電磁石ユニット3における励磁コイル23が非通電状態にあって、電磁石ユニット3で可動プランジャ25を可動させる励磁力を発生していないものとする。この状態では、可動プランジャ25が復帰スプリング31によって、上部磁気ヨーク22から離れる下方向に付勢されて、ゴム座27に当接した状態となる。このため、可動プランジャ25に連結軸28を介して連結された接触子ホルダ13に支持された可動接触子11は、固定接触子6a,6bの小径円柱部8の下端面から所定のギャップを挟んで対向しており、接点装置2が開極(釈放)状態となっている。
【0041】
接点装置2の開極状態において、電磁石コイル制御回路34のスイッチング素子駆動回路18を駆動してスイッチング素子16がオン状態になると、電源回路10から電流が流れ、電磁石ユニット3の励磁コイル23は通電される。これにより、電磁石ユニット3で発生した励磁力は可動プランジャ25を復帰スプリング31に抗して上方に押し上げる。これに応じて、可動プランジャ25に連結軸28を介して連結されている接触子ホルダ13が上方に移動し、可動接触子11が固定接触子6a,6bの小径円柱部8の底面に接触スプリング14の接触圧で接触し、一対の接点33が接触状態になる。これにより、接点装置2は、電源回路5dから出力端子5a、外部接続端子板15a、固定接触子6a、可動接触子11、固定接触子6b、外部接続端子板15b及び入力端子5bを通じて電流が負荷5cに供給される閉極(投入)状態となる。
【0042】
接点装置2の閉極状態から負荷5cへの電流供給を遮断する場合には、スイッチング素子駆動回路18を非駆動状態としてスイッチング素子16をオフ状態とし、電磁石ユニット3の励磁コイル23への電圧印加及び電流供給を停止する。これにより、電磁石ユニット3で可動プランジャ25を上方に移動させる励磁力がなくなることにより、可動プランジャ25が復帰スプリング31の付勢力によって下降する。可動プランジャ25が下降することにより、連結軸28を介して連結された接触子ホルダ13が下降し、これに応じて接触スプリング14で接触圧を与えている間は可動接触子11が固定接触子6a,6bに接触している。その後、接触スプリング14の接触圧がなくなった時点で可動接触子11が固定接触子6a,6bから下方に低下し、接点装置2は一対の接点33を離間状態とする開極状態となる。
【0043】
接点装置2が開極状態となると、固定接触子6a,6bと可動接触子11との間にアークが発生する。このアークは、図示しないアーク消弧用永久磁石によって大きく引き伸ばされて消弧される。
このようにして、電磁石ユニット3の励磁コイル23を非通電状態及び通電状態に制御することにより、接点装置2が一対の固定接触子6a,6bから可動接触子11が所定ギャップを保って離間している開極状態と、一対の固定接触子6a及び6bに可動接触子11が接触する閉極状態とに動作される。
【0044】
一対の接点33が接触状態となると、
図3に示すように、スイッチング素子16のソースドレイン間電圧Vdsに変極点が生じる。
図5及び
図6を用いて説明したように、電圧検出回路17は、当該変極点を検出したら、例えば不図示の発光素子の非点灯状態を維持して一対の接点33が正常に動作していることを電磁接触器1の使用者に報知する。一方、一対の接点33に異常が生じて離間状態のままであると、スイッチング素子16のソースドレイン間電圧Vdsには変極点が生じない。このため、電圧検出回路17は、一対の接点33が離間状態から接触状態に移行開始した時刻から所定時間内に当該変極点を検出できないので、例えば不図示の発光素子を点灯して一対の接点33に不具合が生じていることを電磁接触器1の使用者に報知する。
【0045】
以上説明したように、本実施の形態による電磁接触器1は、接離可能に対向配置された一対の接点33と、一対の接点33の接離を制御する励磁コイル23と、励磁コイル23に直列に接続され、励磁コイル33に供給する電流を制御するスイッチング素子16と、スイッチング素子16の端子間電圧(ソースドレイン間電圧Vds)を検出する電圧検出回路17とを有している。これにより、電磁接触器1の外装ケース20が不透明であって一対の接点33が外部から視認できない場合や、外装ケース30が透明であっても、電磁接触器1が所定箇所に取り付けられて一対の接点33が外部から視認できない場合であっても、一対の接点33の導通を検出することができる。また、本実施の形態による電磁接触器1によれば、一対の接点33の目視での確認や主回路5の例えば負荷5cに流れる電流を測定する必要がなくなる。
【0046】
また、電磁接触器1に備えられた電圧検出回路17は、一対の接点33が接触することに基づいて発生するスイッチング素子16のソースドレイン間電圧Vdsに生じる変極点を検出するようになっている。当該構成を備えた電磁接触器1によれば、一対の接点33を目視できない場合であっても、一対の接点33の導通を検出することができる。
また、電圧検出回路17は、一対の接点33が離間状態から接触状態に移行を開始してから所定期間内に変極点が生じるか否かを検出することができる。当該構成を備えた電磁接触器1によれば、一対の接点33が接触状態となるように駆動されているにも関わらず、固定接触子6a,6bと可動接触子11とが接触していないことを検出できる。
【0047】
また、電圧検出回路17は、ソースドレイン間電圧Vdsに重畳するサージ電圧を除去するサージ電圧除去回路41と、サージ電圧除去回路41が出力した出力電圧に重畳する高周波ノイズ信号を除去する高周波ノイズ除去回路43と、高周波ノイズ除去回路43が出力した出力電圧の電圧レベルを増幅する増幅回路45と、増幅回路45が出力した出力電圧を微分する微分回路47と、微分回路47が出力した出力電圧と、所定の閾値電圧とを比較する比較回路49とを有している。当該構成を備えた電磁接触器1によれば、ソースドレイン間電圧Vdsからサージ電圧やノイズ信号を除去するとともに、ソースドレイン間電圧Vdsに生じる変極点における数十mV程度の電圧変動を増幅して検出することができる。
【0048】
また、電磁接触器1は、一対の接点33を収容する不透明な収容ケース(外装ケース20)を有している。当該構成を備えた電磁接触器1によれば、一対の接点33が不透明な外装ケース20に収容されて視認できない状態であっても、一対の接点33が導通しているか否かを検出することができる。
また、一対の接点33の一方は、電流路に介挿され、外装ケース33内に所定間隔を保って固定配置された一対の固定接触子6a,6bであり、一対の接点33の他方は、一対の固定接触子6a,6bに対して接離可能に配設された可動接触子11である。当該構成を備えた電磁接触器1によれば、固定接触子6a,6b及び可動接触子11が外部から視認できない状態であっても、固定接触子6a,6bと可動接触子11と接触状態であるか離間状態であるかを検出することができる。