特許第6068060号(P6068060)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6068060
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】X線検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/04 20060101AFI20170116BHJP
   G01N 23/10 20060101ALI20170116BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   G01N23/04
   G01N23/10
   G06T1/00 300
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-191915(P2012-191915)
(22)【出願日】2012年8月31日
(65)【公開番号】特開2014-48177(P2014-48177A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年7月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000147833
【氏名又は名称】株式会社イシダ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】杉本 一幸
【審査官】 越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−232586(JP,A)
【文献】 特開2011−072886(JP,A)
【文献】 特開2007−263848(JP,A)
【文献】 特開2006−234423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00−23/227
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の異なる入れ物のうちいずれかの前記入れ物に収容された状態で搬送される物品の検査を行うX線検査装置であって、
前記物品の収容された前記入れ物を搬送する搬送部と、
前記搬送部で搬送される前記入れ物と前記物品とからなる集合体に対してX線を照射する照射部と、
前記集合体を透過したX線を検出する検出部と、
前記検出部によるX線の検出結果を用いてX線画像を生成する画像生成部と、
前記X線画像の、前記集合体全体に対応する部分の特徴を把握する把握部と、
それぞれの前記入れ物について、その入れ物と前記物品とからなる前記集合体全体に対応する部分の特徴に関する情報を記憶する記憶部と、
前記把握部が把握した前記特徴と、前記記憶部に記憶された前記情報とに基づいて、前記入れ物を判別し、判別した前記入れ物に対応する検査条件で、検査対象領域内の前記X線画像を用いて前記物品の検査を行う検査部と、
を備えるX線検査装置。
【請求項2】
前記把握部は、前記集合体全体に対応する前記部分の、面積、長さ、及び全周長の少なくとも1つを前記特徴として把握する、
請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記検査部は、前記検査対象領域内の前記X線画像から、マスク領域の前記X線画像を除外して前記物品の検査を行うものであって、前記特徴と前記情報とに基づいて判別された前記入れ物に対応するように、前記検査条件としての前記マスク領域を変更する、
請求項1又は2に記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記検査部は、前記特徴と前記情報とに基づいて判別された前記入れ物に対応するように、前記検査条件としての前記物品の検査のアルゴリズムを変更する、
請求項1又は2に記載のX線検査装置。
【請求項5】
前記検査部は、前記X線画像の濃度と閾値とを比較した結果を用いて前記物品の検査を行うものであって、前記特徴と前記情報とに基づいて判別された前記入れ物に対応するように、前記検査条件としての前記閾値を変更する、
請求項1又は2に記載のX線検査装置。
【請求項6】
前記入れ物には、複数の前記物品が収容されており、
前記検査部は、前記入れ物内の前記物品の入り数を検査する、
請求項1から5のいずれかに記載のX線検査装置。
【請求項7】
前記検査部は、前記物品の異物検査を行う、
請求項1から5のいずれかに記載のX線検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の異なる入れ物のいずれかに収容された状態で搬送される物品の検査を行うX線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送されてくる被検査対象をX線検査装置により検査する単一の検査ラインに、材質や形状等の異なる複数の入れ物のいずれかに収容された状態で、被検査対象としての物品が供給される場合がある。このような場合には、入れ物によって、X線の吸収量や、収容される製品の個数等が異なるため、単一の検査条件では精度のよいX線検査が困難である。
【0003】
このような問題に対し、入れ物の種類を判別する判別手段を別途設置し、入れ物の判別結果に応じて検査条件を変更するという対応が考えられる。例えば、特許文献1(特開2004−29040号公報)には、検査対象をテレビカメラで撮影し、その形状等から検査対象を判別し、判別された検査対象に応じてX線検査の検査条件を変更する事例が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のような構成では、入れ物の判別手段を別途設置する必要があり、設備費用が増大する。
【0005】
本発明の課題は、複数の異なる入れ物のいずれかに収容された物品が被検査対象として供給されるX線検査装置において、設備費用を抑制しつつ、入れ物に応じた適切な検査条件で物品を検査可能なX線検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るX線検査装置は、複数の異なる入れ物のうちいずれかの入れ物に収容された状態で搬送される物品の検査を行う。X線検査装置は、搬送部と、照射部と、検出部と、画像生成部と、把握部と、記憶部と、検査部と、を備える。搬送部は、物品の収容された入れ物を搬送する。照射部は、搬送部で搬送される入れ物と物品とからなる集合体に対してX線を照射する。検出部は、集合体を透過したX線を検出する。画像生成部は、検出部によるX線の検出結果を用いてX線画像を生成する。把握部は、X線画像の、集合体全体に対応する部分の特徴を把握する。記憶部は、それぞれの入れ物について、その入れ物と物品とからなる集合体全体に対応する部分の特徴に関する情報を記憶する。検査部は、把握部が把握した特徴と、記憶部に記憶された情報とに基づいて、入れ物を判別し、判別した入れ物に対応する検査条件で、検査対象領域内のX線画像を用いて物品の検査を行う。
【0007】
ここでは、X線画像の、入れ物及び物品からなる集合体全体に対応する部分の特徴が把握され、その特徴に応じた検査条件で物品の検査が行われる。そのため、入れ物の種類を認識するための機器を別途設けることなく、入れ物の種類に応じた適切な検査条件でX線検査を実行できる。
【0008】
また、本発明に係るX線検査装置では、把握部は、集合体全体に対応する部分の、面積、長さ、及び全周長の少なくとも1つを特徴として把握することが望ましい。
【0009】
ここでは、集合体全体に対応する部分の、面積、長さ、及び全周長の少なくとも1つを特徴として把握することで、入れ物の種類に応じた適切な検査条件でX線検査を実行できる。
【0010】
また、本発明に係るX線検査装置では、検査部は、検査対象領域内のX線画像から、マスク領域のX線画像を除外して物品の検査を行うものであって、特徴と記憶部に記憶された情報とに基づいて判別された入れ物に対応するように、検査条件としてのマスク領域を変更することが望ましい。
【0011】
これにより、入れ物の種類に応じた適切なマスク領域を検査条件として用い、精度のよいX線検査を実行することができる。
【0012】
また、本発明に係るX線検査装置では、検査部は、特徴と記憶部に記憶された情報とに基づいて判別された入れ物に対応するように、検査条件としての物品の検査のアルゴリズムを変更することが望ましい。
【0013】
これにより、入れ物の種類に応じて適切な検査アルゴリズムを用い、精度のよいX線検査を実行することができる。
【0014】
また、本発明に係るX線検査装置では、検査部は、X線画像の濃度と閾値とを比較した結果を用いて物品の検査を行うものであって、特徴と記憶部に記憶された情報とに基づいて判別された入れ物に対応するように、検査条件としての閾値を変更することが望ましい。
【0015】
これにより、入れ物の種類に応じ適切な検査基準を用いたX線検査を実行できる。
【0016】
また、本発明に係るX線検査装置では、入れ物には、複数の物品が収容されており、検査部は、入れ物内の物品の入り数を検査することが望ましい。
【0017】
これにより、複数の入れ物に収容された物品の入り数検査を、入れ物の種類に応じた適切な条件で実行できる。
【0018】
また、本発明に係るX線検査装置では、検査部は、物品の異物検査を行うことが望ましい。
【0019】
これにより、複数の入れ物に収容された物品の異物検査を、入れ物の種類に応じた適切な条件で実行できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るX線検査装置では、X線画像の、入れ物及び物品からなる集合体全体に対応する部分の特徴が把握され、その特徴に応じた検査条件で物品の検査が行われる。そのため、入れ物の種類を認識するための機器を別途設けることなく、入れ物の種類に応じた適切な検査条件でX線検査を実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係るX線検査装置の斜視図である。
図2図1のX線検査装置が用いられるシステムの概略平面図である。
図3図1のX線検査装置のブロック構成図である。
図4図1のX線検査装置のシールドボックス内の概略斜視図である。
図5】(a)図1のX線検査装置で検査される、ケースに収容された物品(第1集合体)の概略平面図である。図中の矢印は、第1集合体の搬送方向Dを示す。(b)図1のX線検査装置で検査される、ダンボールに収容された物品(第2集合体)の概略平面図である。図中の矢印は、第2集合体の搬送方向Dを示す。
図6】(a)図1のX線検査装置の画像生成部により生成された、図5(a)の第1集合体のX線画像である。(b)図1のX線検査装置の画像生成部により生成された、図5(b)の第2集合体のX線画像である。
図7】(a)図6(a)のX線画像が二値化された画像である。(b)図6(b)のX線画像が二値化された画像である。
図8図1のX線検査装置による、異物検査及び入り数検査に関する処理(X線画像生成及びX線画像の集合体全体に対応する部分の特徴把握を含む)のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係るX線検査装置10について説明する。なお、下記の実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0023】
(1)全体構成
X線検査装置10は、複数の異なる入れ物Cのいずれかに収容された状態で搬送される物品PにX線を照射し、物品PのX線検査を行う装置である。図1にX線検査装置10の斜視図を示す。
【0024】
入れ物Cは、検査工程において、物品Pが収容される入れ物である。なお、入れ物Cは、検査工程前後の輸送工程等でも使用されてもよい。入れ物Cは、樹脂製のケースC1及びダンボールC2の2種類からなる。樹脂製のケースC1及びダンボールC2には、それぞれ所定の数量の物品Pが収容される。物品Pは例えばケーキやパンなどの食品である。
【0025】
ここでは、入れ物Cと入れ物Cに収容された物品Pとを併せて集合体Gと呼ぶ。特に、ケースC1とそのケースC1に収容された物品Pとを併せて第1集合体G1と呼び、ダンボールC2とそのダンボールC2に収容された物品Pとを併せて第2集合体G2と呼ぶ。
【0026】
X線検査装置10は、例えば、図2に示すシステム内で用いられる。物品Pの収容された入れ物C(集合体G)は、前段コンベア60によってX線検査装置10まで搬送される。前段コンベア60は、第1集合体G1と第2集合体G2とのいずれかを規則性無く搬送する。X線検査装置10は、前段コンベア60によって搬送されてきたケースC1又はダンボールC2内の物品PのX線検査を行う。X線検査装置10による物品PのX線検査の結果は、X線検査装置10の下流側に配置されている振分機構70に送信される。振分機構70は、X線検査装置10において良品(検査合格)と判定された物品Pの収容された入れ物C(集合体G)を正規のラインコンベア80へと送り、X線検査装置10において不良品(検査不合格)と判定された物品Pの収容された入れ物C(集合体G)を不良品貯留コンベア90へと送る。
【0027】
X線検査装置10は、図1図3、及び図4に示すように、主として、シールドボックス11と、コンベア12と、X線照射器13と、X線ラインセンサ14と、光電センサ15と、モニタ20と、制御機器30と、から構成されている。
【0028】
(2)詳細構成
以下に、X線検査装置10のシールドボックス11と、コンベア12と、X線照射器13と、X線ラインセンサ14と、光電センサ15と、モニタ20と、制御機器30と、について詳述する。
【0029】
なお、以下では、方向や位置関係を説明する際に「前(正面)」、「後(背面)」、「上」、「下」、「左」、「右」等の表現を用いる場合があるが、特に断りのない限り、図1の矢印に従って、「前(正面)」、「後(背面)」、「上」、「下」、「左」、「右」という表現を使用する。
【0030】
(2−1)シールドボックス
シールドボックス11の左右側面には、図1のように、物品Pの収容された入れ物C(集合体G)をシールドボックス11の内外に搬入出するための開口11aが形成されている。開口11aは、シールドボックス11の外部へのX線の漏洩を防止するために、遮蔽ノレン(図示せず)によって塞がれている。遮蔽ノレンは、鉛を含むゴムで成形されており、入れ物Cが開口11aを通過する際には入れ物Cによって押しのけられるようになっている。
【0031】
シールドボックス11内には、コンベア12、X線照射器13、X線ラインセンサ14、制御機器30等が収容されている。また、シールドボックス11の正面上部には、モニタ20の他、キーの差し込み口及び電源スイッチ等が配置されている。
【0032】
(2−2)コンベア
コンベア12は、物品Pの収容された入れ物C(集合体G)を搬送する搬送部である。コンベア12は、図1に示すように、シールドボックス11の両側面に形成された開口11aを貫通するように配置されている。コンベア12は、コンベアモータ12a(図3参照)によって駆動される駆動ローラによって無端状のベルトを回転させ、ベルト上に載置された入れ物Cを搬送方向D(図1における左から右)に搬送する(図4参照)。なお、搬送方向Dは例であり、コンベア12は、逆方向(図1における右から左)に入れ物Cを搬送してもよい。
【0033】
コンベア12は、第1集合体G1及び第2集合体G2を、概ね図5(a)及び図5(b)の姿勢で搬送方向Dに搬送する。つまり、コンベア12は、ケースC1及びダンボールC2の長手方向を搬送方向Dとして、第1集合体G1及び第2集合体G2を搬送する。ただし、ケースC1及びダンボールC2の向きは例示であり、コンベア12は、ケースC1及びダンボールC2の短手方向を搬送方向Dとして、第1集合体G1及び第2集合体G2を搬送してもよい。なお、ケースC1及びダンボールC2は、上述のように、それぞれ第1集合体G1及び第2集合体G2を構成する入れ物であり、入れ物Cの下位概念である。
【0034】
コンベア12による入れ物Cの搬送速度は、後述する制御機器30によるコンベアモータ12aのインバータ制御により、後述するモニタ20からオペレータにより入力された設定どおりになるように制御される。また、コンベアモータ12aには、図3のように、コンベア12の搬送速度を検出し、制御機器30に対して送信するエンコーダ12bが設けられている。
【0035】
(2−3)X線照射器
X線照射器13は、X線を照射する照射部である。X線照射器13は、図4に示すように、コンベア12の中央上方に配置されている。X線照射器13は、コンベア12の下方に配されるX線ラインセンサ14に向けてX線を照射する。
【0036】
X線照射器13から照射されたX線は、図示しないスリットを通過して、X線照射器13を二等辺三角形の頂点とした略二等辺三角形状の照射範囲Yに広がる。なお、X線照射器13から照射されるX線は、コンベア12の搬送面に略垂直で、コンベア12の搬送方向に略直交する面上で広がる。言い換えれば、X線照射器13から照射されるX線は、コンベア12の搬送ベルトの幅方向(図1における前後方向)に広がる。検査対象である物品Pの収容された入れ物C(集合体G)は、コンベア12により搬送され、X線の照射範囲Y内を通過する。つまり、X線照射器13は、入れ物Cと物品Pとからなる集合体Gに対してX線を照射する。
【0037】
(2−4)X線ラインセンサ
X線ラインセンサ14は、X線を検出する検出部である。X線ラインセンサ14は、図4に示すように、コンベア12の下方に配置されている。X線ラインセンサ14は、主として多数の画素センサ14aから構成されている。これらの画素センサ14aは、コンベア12の搬送方向に略直交し、かつ、コンベア12の搬送面に略平行な方向に、直線状に配置されている。各画素センサ14aは、物品P及び入れ物C(集合体G)やコンベア12を透過したX線を検出し、X線透視像信号を出力する。X線透視像信号は、画素センサ14aが検出したX線の強度(透過X線量)が大きいほど、言い換えればX線照射器13と画素センサ14aとの間にX線を遮るものが少ないほど、大きな値を示す。
【0038】
(2−5)光電センサ
光電センサ15は、物品Pの収容された入れ物CがX線の照射範囲Yを通過するタイミングを検知するための同期センサである。光電センサ15は、図4のように、コンベア12を挟んで配置される一対の投光器15a及び受光器15bから構成されている。
【0039】
(2−6)モニタ
モニタ20は、液晶ディスプレイであり、X線画像等の各種データが表示される。また、モニタ20は、タッチパネル機能を有しており、オペレータから検査パラメータ等の各種データの入力を受け付ける。
【0040】
(2−7)制御機器
制御機器30は、コンベア12のコンベアモータ12a及びエンコーダ12b、X線照射器13、X線ラインセンサ14、光電センサ15、及びモニタ20を含むX線検査装置10の各部に接続されている。また、制御機器30は、X線検査装置10の後段に配置される振分機構70とも接続されている。制御機器30は、主に、X線検査装置10の各部の制御を行うと共に、X線検査装置10の各部と各種信号及び各種情報の授受を行う。
【0041】
制御機器30は、図3に示すように、記憶部31及び制御部32を含む。記憶部31は、主として、ROM、RAM、及びHDD(ハードディスク)等によって構成されている。制御部32は、主としてCPUによって構成されている。
【0042】
(2−7−1)記憶部
記憶部31には、制御部32に実行させる各種プログラムが記憶されている。また、記憶部31には、モニタ20からオペレータにより入力された検査パラメータ、デフォルト値として記憶されている検査パラメータ、及びX線検査の結果等が記憶される。
【0043】
また、記憶部31は、特徴情報記憶領域31a及び検査条件記憶領域31bを含む。
【0044】
(2−7−1−1)特徴情報記憶領域
特徴情報記憶領域31aは、後述する把握部34により把握される、X線画像の集合体G全体に対応する部分の特徴、に関する情報が記憶されている。具体的には、第1集合体G1及び第2集合体G2それぞれについて、X線画像の、集合体G全体に対応する部分の面積、長さ、及び全周長の基準値が記憶されている。X線画像の集合体G全体に対応する部分の面積、長さ、及び全周長については、後ほど詳述する。
【0045】
特徴情報記憶領域31aに記憶される面積、長さ、及び全周長の基準値は、X線検査装置10の運転開始時等に、オペレータによりモニタ20から入力される値である。ただし、これに限定されるものではない。例えば、第1集合体G1及び第2集合体G2のいずれにX線が照射されているかが明らかな状態でX線検査装置10の試運転が行われ、試運転時に実測された値(面積、長さ、及び全周長)が、特徴情報記憶領域31aに基準値として記憶されてもよい。
【0046】
(2−7−1−2)検査条件記憶領域
検査条件記憶領域31bは、第1集合体G1及び第2集合体G2別に、後述する検査部35が使用する検査条件が記憶されている。具体的には、検査条件記憶領域31bには、第1集合体G1について、閾値T1、アルゴリズムA1,a1、マスク領域M1、及び判定値B1が記憶されている。検査条件記憶領域31bには、第2集合体G2について、閾値T2、アルゴリズムA2,a2、マスク領域M2、及び判定値B2が記憶されている。
【0047】
閾値T1は、検査部35により第1集合体G1を構成する物品Pの異物検査が実行される際に、閾値T2は、検査部35により第2集合体G2を構成する物品Pの異物検査が実行される際に、それぞれ使用される値である。閾値T1,T2については、後述する。
【0048】
アルゴリズムA1は、検査部35により第1集合体G1を構成する物品Pの異物検査が実行される際に、アルゴリズムA2は、検査部35により第2集合体G2を構成する物品Pの異物検査が実行される際に、それぞれ実行される画像処理手順である。アルゴリズムa1は、検査部35により第1集合体G1を構成する物品Pの入り数検査が実行される際に、アルゴリズムa2は、検査部35により第2集合体G2を構成する物品Pの入り数検査が実行される際に、それぞれ実行される画像処理手順である。アルゴリズムA1は、後述する画像生成部33により生成された第1集合体G1のX線画像E1(図6(a)参照)に適用されることで、アルゴリズムA2は、画像生成部33により生成される第2集合体G2のX線画像E2(図6(b)参照)に適用されることで、それぞれ入れ物C1,C2に収容された物品Pの異物検査の検査精度が向上するように事前に決定された画像処理手順である。アルゴリズムa1は、画像生成部33により生成される第1集合体G1のX線画像E1に適用されることで、アルゴリズムa2は、画像生成部33により生成される第2集合体G2のX線画像E2に適用されることで、それぞれ入れ物C1,C2に収容された物品Pの入り数検査の検査精度が向上するように事前に決定された画像処理手順である。画像処理には、例えば画像の収縮処理、平滑化処理、及び、鮮鋭化処理等が含まれる。
【0049】
マスク領域M1は、検査部35により第1集合体G1を構成する物品Pの異物検査及び入り数検査が実行される際に、マスク領域M2は、検査部35により第2集合体G2を構成する物品Pの異物検査及び入り数検査が実行される際に、X線画像の検査対象領域から、検査には使用しない領域として除外される領域である。具体的には、第1集合体G1のX線画像E1(図6(a)参照)に対してマスク領域M1を用いることで、検査対象領域(X線画像全体)から、物品Pが投影された部分周辺の、ケースC1が投影された領域が除外される。つまり、第1集合体G1のX線画像E1に対してマスク領域M1を用いることで、概ね物品Pの投影された領域だけを検査することが可能になる。マスク領域M2は、ここでは何も設定されていない。つまり、第2集合体G2を構成する物品Pの異物検査及び入り数検査では、X線画像E2(図6(b)参照)のマスクは行われない。
【0050】
判定値B1,B2は、それぞれ第1集合体G1及び第2集合体G2の入り数検査の基準として使用される値である。つまり、判定値B1,B2は、それぞれ、ケースC1及びダンボールC2に本来入っているべき物品Pの個数である。
【0051】
(2−7−2)制御部
制御部32は、記憶部31に記憶された各種プログラムを呼び出して実行し、X線検査装置10の各部の制御を行う。例えば、制御部32は、X線照射器13のX線の照射タイミングやX線照射量、コンベア12の集合体Gの搬送速度等を制御する。
【0052】
また、制御部32は、記憶部31に記憶されたプログラムを呼び出して実行することで、画像生成部33、把握部34、及び検査部35として機能する。画像生成部33は、X線ラインセンサ14から出力された集合体Gを透過したX線の検出結果としてのX線透視像信号を用いてX線画像を生成する。把握部34は、画像生成部33により生成されたX線画像の、入れ物Cと物品Pとからなる集合体G全体に対応する部分の特徴を把握する。検査部35は、把握部34に把握された特徴に応じた検査条件で、検査対象領域内のX線画像を用いて物品Pの検査を行う。
【0053】
以下に画像生成部33、把握部34、及び検査部35について説明する。
【0054】
(2−7−2−1)画像生成部
画像生成部33は、X線ラインセンサ14から出力されるX線の検出結果としてのX線透視像信号を用いて、X線画像を生成する。
【0055】
より具体的には、画像生成部33は、物品Pの収容された入れ物C(集合体G)がX線照射器13のX線の照射範囲Yを通過する時に、X線ラインセンサ14の各画素センサ14aから出力されるX線透視像信号を所定の時間間隔で取得し、取得したX線透視像信号に基づいてX線画像を生成する。すなわち、画像生成部33は、X線ラインセンサ14の各画素センサ14aから得られるX線の明るさ(X線の強度)に関する所定の時間間隔毎のデータを時系列につなぎ合わせることにより、物品P及び入れ物C(集合体G)を写すX線画像を生成する。X線画像には、X線透視像信号が大きな値を示す領域ほど濃度値が小さく(明るく)、X線透視像信号が小さな値を示す領域ほど濃度値が大きく(暗く)表れる。なお、入れ物CがX線の照射範囲Yを通過するタイミングは、光電センサ15からの信号により判断される。
【0056】
画像生成部33は、図5(a)のような物品Pが収容されたケースC1(第1集合体G1)に対して図6(a)のようなX線画像E1を、図5(b)のような物品Pが収容されたダンボールC2(第2集合体G2)に対して図6(b)のようなX線画像E2を、それぞれ生成する。
【0057】
第1集合体G1のX線画像E1においては、物品P及びケースC1が投影された領域の濃度が濃く表示される。物品P及びケースC1によりX線が吸収されやすく、画素センサ14aに検出される物品P及びケースC1を透過したX線の強度は小さい(X線透視像信号が小さな値を示す)ためである。
【0058】
一方、第2集合体G2のX線画像E2においては、物品Pが投影された領域だけが、濃度が濃く表示される。ダンボールC2にはX線がほとんど吸収されず、画素センサ14aに検出されるダンボールC2を透過したX線の強度は大きい(X線透視像信号が大きな値を示す)ためである。
【0059】
(2−7−2−2)把握部
把握部34は、X線画像の、集合体G全体に対応する部分の特徴を把握する。具体的には、把握部34は、X線画像の、集合体G全体に対応する部分の面積、長さ、及び全周長を特徴として把握する。より具体的には、把握部34は、画像生成部33の生成したX線画像を二値化処理した画像を生成し、二値化された画像の集合体G全体に対応する部分の面積、長さ、全周長を、X線画像の集合体G全体に対応する部分の面積、長さ、及び全周長を特徴として把握する。以下に、詳述する。
【0060】
まず、二値化処理とは、X線画像の、濃度値が所定の閾値以上の画素を黒色に、それ以外の画素を白色に変換する処理である。
【0061】
具体的には、画像生成部33の生成したX線画像が図6(a)のX線画像E1であれば、把握部34は、X線画像E1に二値化処理を実行し、図7(a)のような二値化画像F1を生成する。二値化画像F1では、X線画像E1の、ケースC1及び物品Pの投影部分に対応する画素H1が黒色に、その他の部分は白色に変換されている(図7(a)参照)。画像生成部33の生成したX線画像が図6(b)のX線画像E2であれば、把握部34は、X線画像E2に二値化処理を実行し、図7(b)のような二値化画像F2を生成する。二値化画像F2では、X線画像E2の、物品Pの投影部分に対応する画素H2が黒色に、その他の部分は白色に変換されている(図7(b)参照)。
【0062】
X線画像の集合体G全体に対応する部分の面積は、二値化されたX線画像の黒色の画素部分の面積である。例えば、二値化画像F1では、図7(a)における黒色の画素H1部分の面積であり、二値化画像F2では、図7(b)における黒色の画素H2部分の面積である。実際には、把握部34は、二値化された画像の黒色の画素数を用いて面積を算出し、X線画像の集合体G全体に対応する部分の面積として把握する。
【0063】
X線画像の集合体G全体に対応する部分の長さとは、二値化されたX線画像の黒色の画素部分の、集合体Gの搬送方向Dの距離及び搬送方向Dに垂直な方向の距離である。例えば、図7(a)の二値化画像F1では、L1が搬送方向Dの距離であり、W1が搬送方向Dに垂直な方向の距離である。例えば、図7(b)の二値化画像F2では、L2が搬送方向Dの距離であり、W2が搬送方向Dに垂直な方向の距離である。把握部34は、例えば図7(a)の二値化画像F1中のL1を把握する場合には、図7(a)中の最右端の黒色の画素の座標と、最左端の黒色の画素の座標とを用いてL1を算出する。
【0064】
X線画像の集合体G全体に対応する部分の全周長とは、二値化されたX線画像の黒色の画素部分の周縁の長さである。実際には、把握部34は、上記の集合体Gの搬送方向Dの距離及び搬送方向Dに垂直な方向の距離を加算して2倍した値を、X線画像の集合体G全体に対応する部分の全周長として算出し、把握する。例えば、図7(a)の二値化画像F1の場合には、X線画像の集合体G全体に対応する部分の全周長TL1は(L1+W1)×2として、図7(b)の二値化画像F2の場合には、X線画像の集合体G全体に対応する部分の全周長TL2は(L2+W2)×2として、算出される。
【0065】
(2−7−2−3)検査部
検査部35は、把握部34により把握された、X線画像の集合体G全体に対応する部分の特徴に応じた検査条件で、物品Pの異物検査と入り数検査とを実行する。そして、検査部35は、集合体Gの物品Pが異物検査及び入り数検査の両方に合格した場合、検査対象となった集合体Gの物品Pは良品(検査合格)と判定する。検査部35は、検査対象となった集合体Gの物品Pが良品か否かを振分機構70に情報として送信する。
【0066】
検査部35は、物品Pの異物検査を実行する異物検査部35bと、入れ物C内に入れられている物品Pの入り数検査を実行する入り数検査部35cと、把握部34が把握したX線画像の集合体G全体に対応する部分の特徴に応じて、X線画像が第1集合体G1のX線画像E1であるか、第2集合体G2のX線画像E2であるかを判別する判別部35aとを含む。判別部35a、異物検査部35b、及び入り数検査部35cについて説明する。
【0067】
(a)判別部
判別部35aは、画像生成部33により生成されたX線画像が、第1集合体G1及び第2集合体G2のいずれのX線画像であるかを判別する。
【0068】
具体的には、判別部35aは、特徴情報記憶領域31aに記憶されたX線画像の集合体G全体に対応する部分の特徴に関する情報(面積、長さ、及び全周長の基準値)を呼び出し、把握部34により把握されたX線画像の集合体G全体に対応する部分の面積、長さ、及び全周長と比較する。その結果に基づいて、画像生成部33により生成されたX線画像が、第1集合体G1及び第2集合体G2のいずれのX線画像であるかを判別する。
【0069】
より具体的には、把握部34により把握された、X線画像の集合体G全体に対応する部分の面積、長さ及び全周長の値が、第1集合体G1及び第2集合体G2のいずれの基準値に近いかにより、第1集合体G1と第2集合体G2とのいずれのX線画像であるかを判別する。
【0070】
ここでは、X線画像の集合体G全体に対応する部分の面積、長さ、周囲長の全てについて比較が行われるが、これに限定されるものではない。例えば、面積、長さ、周囲長のいずれかについてのみ比較が行われてもよい。また、例えば、面積、長さ、周囲長のいずれかを比較しただけでは判別が困難な場合のみ、他の特徴(面積、長さ、周囲長)について比較が行われてもよい。ただし、より正確な判別を行うために、複数の特徴(面積、長さ、周囲長)について比較が行われることが望ましい。
【0071】
(b)異物検査部
異物検査部35bは、把握部34により把握された、X線画像の集合体G全体に対応する部分の特徴に応じた検査条件で、検査対象領域内のX線画像を用いて物品Pの異物検査を行う。具体的には、異物検査部35bは、判別部35aで判別された集合体Gに対応する閾値、アルゴリズム、及びマスク領域を検査条件記憶領域31bから検査条件として呼び出し、呼び出した検査条件を用いて異物検査を行う。
【0072】
判別部35aが、画像生成部33により生成されたX線画像は第1集合体G1のものであると判定した場合(画像生成部33により生成されたX線画像が、図6(a)のX線画像E1であった場合)を例にして、異物検査部35bの機能を説明する。
【0073】
異物検査部35bは、検査条件記憶領域31bから閾値T1、アルゴリズムA1、及びマスク領域M1を呼び出す。そして、異物検査部35bは、画像生成部33で作成されたX線画像E1(図6(a)参照)に対して、アルゴリズムA1に従って画像処理を実行する。その後、異物検査部35bは、アルゴリズムA1に従って画像処理された画像に対し、検査対象領域(X線画像全体)からマスク領域M1を除外した領域について、異物の検出処理(異物判定)を実行する。
【0074】
異物の検出方法としては、X線画像に含まれる画素の濃度値を閾値T1により二値化することで、所定濃度よりも暗い画素を異物として検出する、二値化処理による検出方法が用いられる。つまり、閾値T1は、異物検査の検査基準である。閾値T1が小さいほど、異物検査の検査基準が厳しくなる。
【0075】
なお、本実施形態では、閾値T1は、第2集合体G2に対する閾値T2よりも大きな値が使用される。その理由は、ケースC1に物品Pが収容された第1集合体G1においては、物品PだけではなくケースC1によってもX線が遮られるため、ケースC1の影響で物品Pの投影部分の濃度値が大きな値となりやすく、閾値T1を小さな値とすると、ケースC1を異物と誤って判定する可能性があるためである。一方、ダンボールC2に物品Pが収容された第2集合体G2においては、ダンボールC2がほとんどX線を遮らないので、厳しい検査基準(閾値T2)で検査を実行することが可能である。
【0076】
(c)入り数検査部
入り数検査部35cは、把握部34により把握された、X線画像の集合体G全体に対応する部分の特徴に応じた検査条件で、検査対象領域内のX線画像を用いて物品Pの入り数検査を行う。より具体的には、入り数検査部35cは、判別部35aで判別された集合体Gに対応するアルゴリズム、マスク領域、及び判定値を検査条件記憶領域31bから検査条件として呼び出し、呼び出した検査条件を用いて入り数検査を行う。
【0077】
判別部35aが、画像生成部33により生成されたX線画像は第1集合体G1のものであると判定した場合(画像生成部33により生成されたX線画像が、図6(a)のX線画像E1であった場合)を例にして、入り数検査部35cの機能を説明する。
【0078】
入り数検査部35cは、検査条件記憶領域31bからアルゴリズムa1、マスク領域M1及び判定値B1を呼び出す。そして、入り数検査部35cは、画像生成部33で作成されたX線画像E1(図6(a)参照)に対して、アルゴリズムa1に従って画像処理を実行する。その後、入り数検査部35cは、アルゴリズムa1に従って画像処理された画像に対し、検査対象領域(X線画像全体)からマスク領域M1を除外した領域について、入り数の判定処理を実行する。そして、入り数検査部35cは、アルゴリズムa1に従って画像処理された画像に対し、検査対象領域からマスク領域M1を除外した領域で、所定の閾値によって二値化処理を行うことで、物品Pを抽出する。さらに、入り数検査部35cは、抽出された物品Pの数量が、判定値B1と一致するか否か判定する。
【0079】
なお、ここでの二値化処理の閾値は、第1集合体G1と第2集合体G2とで共通の値が用いられるが、第1集合体G1及び第2集合体G2に対して異なる閾値が用いられてもよい。この場合、検査条件記憶領域31bに第1集合体G1及び第2集合体G2別に閾値が記憶され、入り数検査部35cは、判別部35aで判別された集合体Gに対応する閾値を検査条件記憶領域31bから呼び出す。
【0080】
(3)異物検査及び入り数検査に関する処理
制御部32による、異物検査及び入り数検査に関する処理(X線画像の生成処理及びX線画像の集合体G全体に対応する部分の特徴の把握処理を含む)について、図8に示すフローチャートを用いて説明する。
【0081】
まず、ステップS1では、画像生成部33が、X線ラインセンサ14から送信されたX線透視像信号を用いて、図6(a),図6(b)のようなX線画像を生成する。
【0082】
ステップS2では、画像生成部33により生成されたがX線画像が、把握部34により、所定の閾値に対して二値化され、図7(a),図7(b)のような画像が生成される。さらに、把握部34は、二値化された画像を用いて、X線画像の物品Pと入れ物Cとからなる集合体G全体に対応する部分の特徴、すなわち、集合体G全体の面積、長さ、全周長を把握する。
【0083】
ステップS3では、検査部35の判別部35aが、把握部34により把握されたX線画像の集合体G全体に対応する部分の面積、長さ、及び、全周長を、特徴情報記憶領域31aに記憶された第1集合体G1及び第2集合体G2についての面積、長さ、及び、全周長の基準値と比較する。その結果、判別部35aは、画像生成部33により生成されたX線画像が、第1集合体G1のもの(X線画像E1)であるか、第2集合体G2のもの(X線画像E2)であるかを判別する。X線画像が第1集合体G1のものと判別された場合にはステップS11に進む。X線画像が第2集合体G2のものと判別された場合にはステップS21に進む。
【0084】
ステップS11では、異物検査部35bは、第1集合体G1に対応する検査条件(アルゴリズムA1、マスク領域M1、閾値T1)を検査条件記憶領域31bから呼び出す。さらに、異物検査部35bは、画像生成部33により生成されたX線画像E1をアルゴリズムA1によって画像処理し、画像処理後の画像のマスク領域M1を除いた領域について、閾値T1を用いた異物判定を実行する。
【0085】
ステップS12では、入り数検査部35cは、第1集合体G1に対応する検査条件(アルゴリズムa1、マスク領域M1、判定値B1)を検査条件記憶領域31bから呼び出す。さらに、入り数検査部35cは、画像生成部33により生成されたX線画像E1をアルゴリズムa1によって画像処理し、画像処理後の画像のマスク領域M1を除いた領域について、物品Pの抽出処理を行う。そして、入り数検査部35cは、抽出された物品Pの数が判定値B1と一致するか入り数判定を実行する。
【0086】
ステップS13では、検査部35が、ステップS11及びステップS12の異物検査及び入り数検査の結果に基づき、物品Pが良品か否かの判定(両検査とも合格か否か)を行う。判定結果は、物品Pの検査結果として、振分機構70に送信される。
【0087】
一方、ステップS21では、異物検査部35bは、第2集合体G2に対応する検査条件(アルゴリズムA2、マスク領域M2、閾値T2)を検査条件記憶領域31bから呼び出す。さらに、異物検査部35bは、画像生成部33により生成されたX線画像E2をアルゴリズムA2によって画像処理し、画像処理後の画像のマスク領域M2を除いた領域について、閾値T2を用いた異物判定を実行する。なお、ここでは、第2集合体G2のX線画像についてはマスクされないので、異物検査部35bは、アルゴリズムA2による画像処理後のX線画像全体について、閾値T2を用いた異物判定を実行する。
【0088】
ステップS22では、入り数検査部35cは、第2集合体G2に対応する検査条件(アルゴリズムa2、マスク領域M2、判定値B2)を検査条件記憶領域31bから呼び出す。さらに、入り数検査部35cは、画像生成部33により生成されたX線画像E2をアルゴリズムa2によって画像処理し、画像処理後の画像のマスク領域M2を除いた領域について(ここでは、実際には除外される領域なし)、物品Pの抽出処理を行う。そして、入り数検査部35cは、抽出された物品Pの数が判定値B2と一致するか入り数判定を実行する。
【0089】
ステップS23では、検査部35が、ステップS21及びステップS22の異物検査及び入り数検査の結果に基づき、物品Pが良品か否かの判定(両検査とも合格か否か)を行う。判定結果は、物品Pの検査結果として、振分機構70に送信される。
【0090】
(4)特徴
(4−1)
上記実施形態に係るX線検査装置10は、異なる入れ物(ケースC1,ダンボールC2)のうちいずれかの入れ物Cに収容された状態で搬送される物品Pの検査を行う。X線検査装置10は、搬送部としてのコンベア12と、照射部としてのX線照射器13と、検出部としてのX線ラインセンサ14と、画像生成部33と、把握部34と、検査部35と、を備える。コンベア12は、物品Pの収容された入れ物Cを搬送する。X線照射器13は、コンベア12で搬送される入れ物Cと物品Pとからなる集合体Gに対してX線を照射する。X線ラインセンサ14は、集合体Gを透過したX線を検出する。画像生成部33は、X線ラインセンサ14によるX線の検出結果を用いてX線画像を生成する。把握部34は、X線画像の、集合体G全体に対応する部分の特徴を把握する。検査部35は、特徴に応じた検査条件で、検査対象領域内のX線画像を用いて物品Pの検査を行う。
【0091】
なお、検査部35は、物品Pの入り数検査及び異物検査を実行する。入り数検査とは、入れ物Cに収容された複数の物品Pの、入れ物C内の物品Pの入り数の検査である。異物検査とは、物品Pの異物混入を検出する検査である。
【0092】
ここでは、X線画像の、入れ物C及び物品Pからなる集合体G全体に対応する部分の特徴が把握され、その特徴に応じた条件で物品Pの検査が行われる。そのため、入れ物Cの種類を認識するための機器を別途設けることなく、入れ物Cの種類に応じた適切な条件でX線検査、より具体的には入り数検査及び異物検査を実行できる。
【0093】
(4−2)
上記実施形態に係るX線検査装置10では、把握部34は、集合体G全体に対応する部分の、面積、長さ、及び全周長を特徴として把握する。
【0094】
ここでは、集合体G全体に対応する部分の、面積、長さ、及び全周長を特徴として把握することで、入れ物Cの種類に応じた適切な条件でX線検査を実行できる。
【0095】
(4−3)
上記実施形態に係るX線検査装置10では、検査部35は、検査対象領域内のX線画像から、マスク領域M1,M2のX線画像を除外して物品Pの検査を行うものであって、把握部34により把握された特徴に応じて、検査条件としてのマスク領域M1,M2を変更する。
【0096】
より具体的には、第1集合体G1については、X線画像中のケースC1の投影部分がX線検査の妨げとなるため、検査対象領域のX線画像(X線画像全体)から、物品Pが投影された部分周りの、ケースC1が投影された領域が、マスク領域M1として除外される。一方、第2集合体G2では、物品Pの投影部分以外はX線画像にほとんど表示されないため、マスク領域は不要であり、設定されない。
【0097】
つまり、ここでは、入れ物Cの種類(ケースC1、ダンボールC2)に応じて適切なマスク領域M1,M2を設定してX線検査を実行できる。
【0098】
(4−4)
上記実施形態に係るX線検査装置10では、検査部35は、把握部34により把握された特徴に応じて、検査条件としての物品Pの検査のアルゴリズムA1,A2,a1,a2を変更する。
【0099】
これにより、入れ物Cの種類に応じ、適切な検査のアルゴリズムA1,A2を用いてX線検査を実行できる。より具体的には、第1集合体G1のX線画像E1についてはケースC1の投影部分を含むX線画像に適したアルゴリズムA1,a1を用いた画像処理が、第2集合体G2のX線画像E2については物品Pだけが投影されたX線画像に適したアルゴリズムA2,a2を用いた画像処理が実行される。その結果、第1集合体G1の物品Pについても、第2集合体G2の物品Pについても、精度のよい異物検査及び入り数検査を行うことができる。
【0100】
(4−5)
上記実施形態に係るX線検査装置10では、検査部35は、X線画像の濃度と閾値T1,T2とを比較した結果を用いて物品Pの検査を行うものであって、把握部34により把握された特徴に応じて、検査条件としての閾値T1,T2を変更する。
【0101】
これにより、入れ物Cの種類に応じ、適切な閾値T1,T2を用いてX線検査(ここでは異物検査)を実行できる。つまり、ケースC1に物品Pが収容された第1集合体G1においては、物品PだけではなくケースC1によってもX線が遮られるので、ケースC1を異物と判定しないよう、閾値T1は閾値T2よりも大きな値に設定される。一方、ダンボールC2に物品Pが収容された第2集合体G2においては、ダンボールC2がほとんどX線を遮らないので、厳しい検査基準(閾値T1よりも小さな閾値T2)で検査を実行することが可能であり、精度の高い異物検査を実行できる。
【0102】
(5)変形例
以下に本実施形態の変形例を示す。なお、複数の変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0103】
(5−1)変形例A
上記実施形態では、X線検査装置10は、ケースC1とダンボールC2との2種類の入れ物Cに収容された物品Pを検査するが、これに限定されるものではない。3種類以上の入れ物Cに収容された物品Pを検査する場合にも同様に適用可能である。
【0104】
(5−2)変形例B
上記実施形態では、把握部34は、X線画像の集合体G全体に対応する部分の長さとして、集合体Gの搬送方向Dの距離及び搬送方向Dに垂直な方向の距離を把握するが、これに限定されるものではない。
【0105】
例えば、ある基準点から、最も離れた黒色画素までの長さをX線画像の集合体G全体に対応する部分の長さとして把握してもよい。具体的な例としては、図7(a)及び図7(b)の二値化された画像において、最右端に位置する黒色の画素のうち、上端の画素を基準点とし、最も離れた黒色画素までの距離をX線画像の集合体G全体に対応する部分の長さとして把握してもよい。この場合には、概ね第1集合体G1及び第2集合体G2の対角線長さを、X線画像の集合体G全体に対応する部分の長さとして把握することになる。また、この場合には、ケースC1又はダンボールC2の長手方向が、搬送方向D又は搬送方向Dと垂直な方向でない場合にも、ケースC1及びダンボールC2の姿勢を判別することなく、X線画像の集合体G全体に対応する部分の長さを把握できる。
【0106】
(5−3)変形例C
上記実施形態では、把握部34は、X線画像の集合体G全体に対応する部分の全周長を、集合体Gの搬送方向Dの距離及び搬送方向Dに垂直な方向の距離を用いて算出したが、これに限定されるものではない。例えば、X線画像の黒色画素の輪郭を抽出し、輪郭の長さを算出することでX線画像の集合体G全体に対応する部分の全周長を把握してもよい。
【0107】
(5−4)変形例D
上記実施形態では、検査部35は、異物検査及び入り数検査を実行するが、これに限定されるものではなく、異物検査のみ、あるいは、入り数検査のみを実行するものであってもよい。
【0108】
また、検査部35は、把握部34により把握された、X線画像の集合体G全体に対応する部分の特徴に応じて検査条件を変更し、物品Pの欠品検査(例えば、物品Pの割れや欠けの検出など)を実行するものであってもよい。
【0109】
(5−5)変形例E
上記実施形態では、光電センサ15を用いて入れ物CがX線の照射範囲Yを通過するタイミングが判断されるが、これに限定されるものではなく、X線ラインセンサ14のX線の検出結果により、入れ物CがX線の照射範囲Yを通過するタイミングが判断されてもよい。
【0110】
(5−6)変形例F
上記実施形態では、異物検査部35bは、異物の検出方法として二値化処理による検出方法を用いているが、これに限定されるものではなく、その他の異物判定方法が使用されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、複数の異なる入れ物のいずれかに収容された物品が被検査対象として供給されるX線検査装置であって、設備費用を抑制しつつ、入れ物に応じて検査条件で物品を検査可能なX線検査装置として有用である。
【符号の説明】
【0112】
10 X線検査装置
12 コンベア(搬送部)
13 X線照射器(照射部)
14 X線ラインセンサ(検出部)
33 画像生成部
34 把握部
35 検査部
35b 異物検査部
35c 入り数検査部
C 入れ物
C1 ケース(入れ物)
C2 ダンボール(入れ物)
P 物品
G 集合体
G1 第1集合体(集合体)
G2 第2集合体(集合体)
E1,E2 X線画像
A1,A2,a1,a2 アルゴリズム
M1,M2 マスク領域
T1,T2 閾値
【先行技術文献】
【特許文献】
【0113】
【特許文献1】特開2004−29040号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8