(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6068066
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】蛍光表示装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01J 31/15 20060101AFI20170116BHJP
H01J 9/39 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
H01J31/15 A
H01J9/39 A
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-194385(P2012-194385)
(22)【出願日】2012年9月4日
(65)【公開番号】特開2014-49423(P2014-49423A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年7月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】株式会社ノリタケカンパニーリミテド
(73)【特許権者】
【識別番号】000117940
【氏名又は名称】ノリタケ伊勢電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100251
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 操
(74)【代理人】
【識別番号】100174090
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 光
(72)【発明者】
【氏名】岡本 崇弘
(72)【発明者】
【氏名】山中 美沙
(72)【発明者】
【氏名】前田 忠己
【審査官】
佐藤 仁美
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−111202(JP,A)
【文献】
特開2012−028140(JP,A)
【文献】
特開2005−190883(JP,A)
【文献】
実開昭59−173967(JP,U)
【文献】
実開平07−007055(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/00− 9/46、
H01J 9/00− 9/18、 9/24− 9/50、
29/10−29/34、29/46、29/86−31/06、
31/10−31/24、
H01L 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面板および基板がそれぞれスペーサ部材を介して封着接合される真空容器と、この真空容器内の前記基板上に設けられた陽極および蛍光体層と、この蛍光体層の上方で前記前面板側に架設されたフィラメント状陰極と、前記フィラメント状陰極を張り渡す張架部が形成された一対のフレームと、該フレームに支持されるゲッターと、前記蛍光体層と前記フィラメント状陰極との間に配置されたグリッドとを備えてなる蛍光表示装置であって、
前記一対のフレームは、前記前面板に沿って配置され、その一部が前記前面板と前記スペーサ部材との間に挟持されて固定されており、
前記一対のフレームの少なくとも一方が、該フレームの前記基板側で前記ゲッターを支持するゲッター支持部を有し、該ゲッター支持部により、前記ゲッターが該フレームと前記フィラメント状陰極との間に潜り込んだ状態で支持されていることを特徴とする蛍光表示装置。
【請求項2】
前記ゲッター支持部は、前記フレームと一体に形成された突状部を、前記基板側に略垂直に折り曲げた後、該垂直部分の高さが前記フレームと前記フィラメント状陰極との中間位置となる高さで、さらに前記フレーム側に略垂直に折り曲げて構成され、その先端部で前記ゲッターを支持することを特徴とする請求項1記載の蛍光表示装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の蛍光表示装置の製造方法であって、
前記ゲッターを前記フィラメント状陰極に干渉しない位置で前記ゲッター支持部に固着した後に、前記ゲッター支持部を変形させて前記ゲッターを前記フレームと前記フィラメント状陰極との間に潜り込ませて配置することを特徴とする蛍光表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蛍光表示装置(VFD:Vacuum Fluorescent Display)に関し、特に薄型構造を可能とする蛍光表示装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家電製品、計測器、医療機器、車載用表示器などの表示部に所定のパターンあるいはグラフィックを表示する表示素子や、バックライト、プリンタヘッド、複写機用光源などの各種光源、平面テレビ等に蛍光表示装置(蛍光表示管)が多用されている。蛍光表示装置は、互いに平行に配置された基板と、透光性平板部(前面板)と、それらの間に位置する矩形枠状の周壁部(スペーサ部材)とによって真空容器が構成され、その真空容器内に、基板の表示面において複数個の陽極(アノード)の各々の上に設けられた複数個の蛍光体層と、その表示面の上方に両端部をアンカおよびサポートに支持されて架設されたフィラメント状陰極とを備え、真空空間内においてそのフィラメント状陰極から発生させられた電子を、それら蛍光体層とフィラメント状陰極との間に設けられたグリッド電極で制御して蛍光体層を選択的に発光させる構造等を有している。
【0003】
蛍光表示装置には、内部の残留ガスを吸着する蒸着膜を前面板等の内面に形成するためのゲッターが備えられている。ゲッターは、例えば、ニッケルめっきが施された鉄製のリング状容器内に、アルミニウム−バリウム合金およびニッケルの混合物からなるゲッター剤が充填されたものである。蛍光表示装置の製造工程においては、基板、前面板、およびスペーサ部材を相互に気密封着して真空容器を構成し、内部から排気した後、ゲッターを高周波誘導等によって加熱することでゲッター剤を蒸発(ゲッタ・フラッシュ)させ、例えばアルミニウム−バリウム合金からなる蒸着膜を形成する。そのため、観視側に位置する前面板に形成される蒸着膜が、ゲッター剤蒸発の際に表示領域まで広がって表示の妨げとなることのないように、ゲッターはフィラメント状陰極よりも上側で、前面板の内面近傍の高さ位置に配置されている。
【0004】
ゲッターは、上記のフィラメント状陰極を支持するアンカやサポート等が形成された金属フレームに、一体に形成(切り起こし)された、または、別部材として接合されたゲッター支持部により支持されている。従来の金属フレーム構造の一例を
図4に示す。
図4に示すように、金属フレーム21の一部に、ゲッター支持部22が一体に形成されている。このゲッター支持部22は、ゲッターシールド22aとゲッターリボン22bとからなる。ゲッターシールド22aが、金属フレーム21の前面板25側(表側)に略垂直に折り曲げられ、さらに、ゲッターリボン22bがゲッターシールド22aに対して略垂直に折り曲げられ、このゲッターリボン22bにゲッター23が固着されている。VFD側面図に示すように、金属フレーム21は、基板26に設置されている。ゲッター23は、フィラメント状陰極24に干渉せず、かつ、蒸着膜が前面板25の表示領域に広がることを防止できるよう、ゲッター支持部22によりフィラメント状陰極24の上側(前面板25の近傍)に配置されている。
【0005】
このような構造の蛍光表示装置において、ゲッタ・フラッシュに起因する金属フレームの熱変形を抑制し得るものとして、金属フレームとゲッター支持部とが一体的に備えられた複合部品とし、上記金属フレームとゲッター支持部との中間部が真空容器外に位置するように基板上に配置して、基板と周壁部とを封着した後、上記中間部で複合部品を切断した蛍光表示装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
また、蛍光表示装置の表示部となる前面板の内面に外部電界の影響を遮断するために透明導電膜(ネサ膜やITO膜)を設け、この透明導電膜にカソードまたはグリッドの電位を与えてシールドを行なうことが知られている。透明導電膜に電位を与えるため、上記金属フレームにネサコンタクトを垂直に取り付け、基板側にある該金属フレームから前面板内壁までこのネサコンタクトを延ばし、電気的に接触させている。
【0007】
また、蛍光表示装置では、発光表示を制御させるためのIC(半導体素子)を備えている。半導体素子を内蔵した蛍光表示装置は、外部引出し線が省略でき、全体としての小型化や表示密度を向上できるなどの利点があるが、外部光やフィラメントから放射される電子、蒸発物質の堆積等による誤動作を防ぐため、半導体素子に遮蔽部分を設ける必要があった。この場合、遮蔽部分がデッドスペースとなり、該部分だけ蛍光表示装置の外形寸法が大きくなってしまう。この問題解消のため、従来、金属フレームに凸状絞込み部を形成したもの(特許文献2参照)や、ブリッジ状に形成した金属フレームを基板上に設置したもの(特許文献3参照)などが提案されている。
【0008】
その他、広い表示エリアを実現できるものとして、外部取り出しリードピンがいわゆるつり下げ型となる蛍光表示装置が提案されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−208049号公報
【特許文献2】特開2004−134149号公報
【特許文献3】特開平8−31351号公報
【特許文献4】特開2005−190883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1〜3の蛍光表示装置(蛍光表示管)では、ゲッターをフィラメント状陰極よりも高い位置に配置することから、蛍光表示管の高さ(管厚)が高くなってしまうという問題がある。また、管厚を低くするためには、蛍光表示管縦寸法(B寸)を広げる必要がある。また、これらの蛍光表示装置は、金属フレームを基板上に設置するため、前面板内壁に十分な接触をとれるようネサコンタクトの長さを確保する必要がある。
【0011】
一方、特許文献4の蛍光表示装置は、金属フレームを前面板側に設置することで、ネサコンタクトの問題は解消し得るが、ゲッターについては特許文献1〜3と同様にフィラメント状陰極よりも基板側の位置(フレームからみて高い位置)に配置され、このゲッター配置により管厚を低くすることが困難である。
【0012】
また、特許文献3の蛍光表示装置では、アンカ部材の板バネ高さを変えることなくフィラメント高さの調節が可能である。しかし、蛍光体−フィラメント間距離(P−Kgap)を短くしたい場合には、ブリッジ状金属フレームの成形金型を、その都度設計する必要があり、製造コストアップになる。また、特許文献4の場合は、ゲッターの配置位置を考慮して、蛍光体−フィラメント間距離(P−Kgap)を調整する必要があり、ゲッター支持部が金属フレームに一体に形成されている場合等、特許文献4と同様に成形金型の設計が必要になる。
【0013】
本発明は、このような問題に対処するためになされたものであり、ゲッターとフィラメント状陰極との干渉を避けつつ表示装置全体のサイズを小さくでき、新規にフレーム成形金型を設計せずに、蛍光体−フィラメント間距離を短くすることが可能である蛍光表示装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の蛍光表示装置は、前面板および基板がそれぞれスペーサ部材を介して封着接合される真空容器と、この真空容器内の上記基板上に設けられた陽極および蛍光体層と、この蛍光体層の上方に架設されたフィラメント状陰極と、上記フィラメント状陰極を張り渡す張架部が形成された一対のフレームと、該フレームに支持されるゲッターと、上記蛍光体層と上記フィラメント状陰極との間に配置されたグリッドとを備えてなる蛍光表示装置であって、上記一対のフレームは、上記前面板に沿って配置され、その一部が上記前面板と上記スペーサ部材との間に挟持されて固定されており、上記一対のフレームの少なくとも一方が、該フレームの上記基板側で上記ゲッターを支持するゲッター支持部を有し、該ゲッター支持部により、上記ゲッターが該フレームと上記フィラメント状陰極との間で支持されていることを特徴とする。
【0015】
上記ゲッター支持部は、上記フレームと一体に形成された突状部を、上記基板側に略垂直に折り曲げた後、該垂直部分の高さが上記フレームと上記フィラメント状陰極との中間位置となる高さで、さらに上記フレーム側に略垂直に折り曲げて構成され、その先端部で上記ゲッターを支持することを特徴とする。
【0016】
本発明の蛍光表示装置の製造方法は、上記本発明の蛍光表示装置の製造方法であって、上記ゲッターを上記フィラメント状陰極に干渉しない位置で上記ゲッター支持部に固着した後に、上記ゲッター支持部を変形させて上記ゲッターを上記フレームと上記フィラメント状陰極との間に潜り込ませて配置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の蛍光表示装置は、前面板および基板がそれぞれスペーサ部材を介して封着接合される真空容器と、この真空容器内の基板上に設けられた陽極および蛍光体層と、この蛍光体層の上方に架設されたフィラメント状陰極と、フィラメント状陰極を張り渡す張架部が形成された一対のフレームと、該フレームに支持されるゲッターと、蛍光体層とフィラメント状陰極との間に配置されたグリッドとを備えてなり、上記一対のフレームは、前面板に沿って配置され、その一部が前面板とスペーサ部材との間に挟持されて固定されており、この一対のフレームの少なくとも一方が、該フレームの基板側でゲッターを支持するゲッター支持部を有し、該ゲッター支持部により、ゲッターが該フレームとフィラメント状陰極との間で支持されているので、フィラメント状陰極とゲッターの干渉を避けつつ、蛍光表示装置内の省スペース化が図れ、表示装置全体のサイズ(特に管厚)を小さくできる。
【0018】
また、前面板側にフレームが固定される構造で、かつ、ゲッターがフレームとフィラメント状陰極との間に収納されているので、蛍光体−フィラメント間距離(P−Kgap)がスペーサ部材の高さのみで調節可能となる。このため、新規にフレーム成形金型を設計せずに、蛍光体−フィラメント間距離を短くすることが可能となる。
【0019】
さらに、前面板側にフレームが固定される構造であるので、容易に最小限の長さでネサコンタクトを前面板内壁に接触することが可能となる。また、フレームをブリッジ状に成型することなく、ICとの接触を避けることができる。
【0020】
本発明の蛍光表示装置の製造方法は、ゲッターをフィラメント状陰極に干渉しない位置でゲッター支持部に固着した後に、ゲッター支持部を変形させてゲッターをフレームとフィラメント状陰極との間に潜り込ませて配置するので、作業性に優れ、従来のフレーム製造工数と同様の工数で製造が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の蛍光表示装置の正面図および断面図である。
【
図2】フレームのゲッター支持部の構造を示す図である。
【
図4】従来のフレームのゲッター支持部の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の蛍光表示装置(蛍光表示管)の一例を
図1に示す。
図1(a)は平面図を、
図1(b)は短辺側からみた断面図を、それぞれ示す。蛍光表示管1は、前面板2と基板3とがスペーサ部材4を介して封着部13において封着接合されて真空容器を構成している。前面板2は透光性のカバー・ガラス板等で、基板3はガラス、セラミックス、琺瑯などの絶縁体材料等で、スペーサ部材4は枠状に形成されたガラス材料等でそれぞれ形成されている。前面板2および基板3がスペーサ部材4を介して相互に封着部13においてガラス封着されることにより長手平箱状の気密な真空容器が構成され、その内部にそれらの部材により囲まれた真空空間が形成される。
【0023】
蛍光表示管1は、この真空容器内の基板3上にアノード電極およびこのアノード電極上に形成された蛍光体層からなる陽極5が設けられ、この陽極5と、蛍光体層の上方に架設されたフィラメント状陰極6と、蛍光体層とフィラメント状陰極6との間に配置されたメッシュグリッド7とを備えている。アノード電極および蛍光体層からなる複数の陽極5は、文字や記号等を表示するための発光単位を構成しており、蛍光表示管1の表示面として機能する。陽極5は、発光単位毎に設けられたメッシュグリッド7によりそれぞれ囲まれている。陽極5とメッシュグリッド7とは基板3内の配線パターンを経由して形成されている電極パッド8と、外部取り出しリードピン9の先端とが接触することにより電気的に接続されている。外部取り出しリードピン9は前面板2とスペーサ部材4との間に挟持されて封着されている。
【0024】
その他、蛍光表示管1には、製造時の排気・封止工程において排気するための排気管や排気孔(図示省略)が設けられている。また、蛍光表示装置の表示部となる前面板2の内面には、外部電界の影響を遮断するために透明導電膜(図示省略)が設けられている。
【0025】
真空容器内部の前面板2の両端部には、前面板2とスペーサ部材4との間に挟持されて封着されることで固定される一対のフレーム10、10’がそれぞれ設けられている。該構造では、フレーム10が前面板2側に設置されている。前面板2側にフレーム10が設置される構造であるので、フレームと透明導電膜とを電気的に導通させるためのネサコンタクトを最小限の長さでフロント内壁に接触させることができる。また、フレームをブリッジ状に成型することなく、基板3上のICとの接触を避けることができる。
【0026】
フレーム10、10’は、例えば426合金(Ni42、Cr6、残部Fe)等からなる金属フレームである。このフレーム10と10’の間に、直熱型陰極として機能する細線状のフィラメント状陰極6が、基板3の長手方向に平行で、メッシュグリッド7上方で、基板3の表示面から離隔した所定の高さ位置となるように張設されている。フィラメント状陰極6は、例えば、表面に電子放出層として(Ba、Sr、Ca)O等の仕事関数の低いアルカリ土類金属の酸化物固溶体がコーティングされたタングステンワイヤから構成される。
【0027】
一対のフレーム10、10’は、フィラメント状陰極6を張り渡す張架部として、一方のフレームにフィラメント状陰極6を弾性的に支持するアンカが、他方のフレームにそれを非弾性的に支持するサポートが、それぞれ形成されている。フィラメント状陰極6は、両端部がこれらアンカおよびサポートにそれぞれ溶着等によって固定されている。アンカおよびサポートは、SUS430等の別部材をプレスによる折曲加工で所定の形状に成形した後、フレームにスポット溶接等によって固着したものや、フレームに直接折曲加工を施すことによってフレームと一体に形成したものとできる。
【0028】
フレーム10は、基板3側(裏側)に、ゲッター11を支持するゲッター支持部12を有する。このゲッター支持部12により、ゲッター11が、フレーム10とフィラメント状陰極6との間で支持されている。このゲッター支持部12は、いずれか一方のフレームに設けておけばよく、フレーム10’側に設けてもよい。また、ゲッター支持部12は、ゲッター11をフレームとフィラメント状陰極との間で支持できる構造であれば、各フレームにおいて任意の位置に形成できる。
図1では、フレーム10のリードピン側(上側)に形成しているが、反対側(下側)に形成してもよい。
【0029】
ゲッター支持部12の構造を
図2に基づいて詳細に説明する。
図2は、フレームのゲッター支持部の構造(成形前、成形後)と、この支持部構造を用いた場合の蛍光表示管の側面図である。フレーム10の一部に、ゲッター支持部12が突状部として一体に形成されている。このゲッター支持部12は、ゲッターシールド12aとゲッターリボン12bとからなる。ゲッターシールド12aが、フレーム10の基板3側(裏側)に略垂直に折り曲げられ、さらに、ゲッターリボン12bがゲッターシールド12aに対して略垂直に折り曲げられ、このゲッターリボン12bにゲッター11が固着されている。ゲッターシールド12aの幅は、フレーム10とフィラメント状陰極6との距離の半分である。このため、ゲッター支持部12を構成する突状部は、フレーム10から略垂直に折り曲げた垂直部分(ゲッターシールド12a)の高さが、フレーム10とフィラメント状陰極6との中間位置となる高さで、さらにフレーム10側に略垂直に折り曲げられることになる。ゲッターリボン12bは、この最終的に折り曲げられた部分であり、突状部の先端部である。
【0030】
ゲッターシールド12aの幅(折り曲げた際の高さ)は、最終的にゲッター11が、フィラメント状陰極6に対して物理的に干渉することを避けられる高さであればよい。例えば、上記のように、ゲッターシールド12aの幅を、フレーム10とフィラメント状陰極6との距離の半分とすることで、ゲッター11の取付後において、ゲッター11とフィラメント状陰極6との接触を避けることができる。また、各部位の折り曲げについても同様に、最終的にゲッター11が、フィラメント状陰極6に対して物理的に干渉することを避けられる程度であればよく、完全に垂直な折り曲げでなくてもよい。
【0031】
VFD側面図に示すように、フレーム10は、前面板2側に設置されている。ゲッター11は、フィラメント状陰極6に直接接触することはなく物理的には干渉しない。ゲッター11による蒸着膜は、基板3側の陽極5等に干渉しない部分に形成される。また、ゲッター11による蒸発物は、フィラメント状陰極6にも一部堆積するが、表示品質等に対して悪影響を与えることはない。
【0032】
ゲッター11が、フレーム10とフィラメント状陰極6との間で支持されているので、フィラメント状陰極6とゲッター11の干渉を避けつつ、蛍光表示管内の省スペース化が図れ、表示装置全体のサイズを小さくできる。特に、前面板2側にフレーム10が設置される構造で、かつ、ゲッター11がフレーム10とフィラメント状陰極6との間に収納されているため、蛍光表示装置の輝度設計において重要なファクターである蛍光体−フィラメント間距離(P−Kgap)が、スペーサ部材4の高さのみで調節可能となり、新規にフレーム成形金型を設計せずにP−Kgapを短くすることができる。
【0033】
本発明の蛍光表示装置において、ゲッター支持部にゲッターを取り付ける工程を
図3に基づいて説明する。
図3は、
図2おけるゲッター支持部の拡大図であり、
図2とは反対のフレーム面を示している。
図3(a)(b)に示すように、まず、ゲッター11をフィラメント状陰極6に干渉しない位置で、ゲッター支持部12のゲッターリボン12bに固着する。ゲッター支持部12における、ゲッターシールド12aとゲッターリボン12bの折り曲げ手順は
図2の場合と同様である。次に、
図3(b)の状態から、ゲッター11を図中下側に押し込み、ゲッター支持部12の一部を塑性変形させつつ、フレーム10とフィラメント状陰極6との間に潜り込ませて配置する。なお、本発明の蛍光表示装置において、このゲッター取付工程以外の製造工程は、通常の蛍光表示装置における製造工程を採用できる。
【0034】
上記工程により製造することで、折り曲げからゲッター固着まではフィラメント状陰極と干渉せずにゲッターを容易に配置でき作業性に優れる。そして、最終的にゲッターをフレームとフィラメント状陰極との間に配置することで、蛍光表示装置内の省スペース化が可能になる。なお、上述のとおり、この状態においても、ゲッターからの蒸発物がフィラメント状陰極に接触するのみで、ゲッターとフィラメント状陰極とが物理的に干渉することはない。
【0035】
本発明の蛍光表示装置のゲッター支持部として、上記した実施例では、フレームと一体に形成した場合を説明したが、特にこれに限定されるものではない。例えば、前面板にフレームを設置する態様において、ゲッターをフレームとフィラメント状陰極との間で支持できる構造であれば、フレームとは別部材として形成したゲッター支持部を溶接等により接合したものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の蛍光表示装置は、ゲッターとフィラメント状陰極との干渉を避けつつ表示装置全体のサイズを小さくでき、新規にフレーム成形金型を設計せずに、蛍光体−フィラメント間距離を短くすることが可能であるので、家電製品、計測器、医療機器、車載用表示器などの表示部に所定のパターンあるいはグラフィックを表示する表示素子として、特に薄型・小型用途において好適に利用できる。
【符号の説明】
【0037】
1 蛍光表示管
2 前面板
3 基板
4 スペーサ部材
5 陽極
6 フィラメント状陰極
7 メッシュグリッド
8 電極パッド
9 リードピン
10、10’ フレーム
11 ゲッター
12 ゲッター支持部
13 封着部
21 金属フレーム
22 ゲッター支持部
23 ゲッター
24 フィラメント状陰極
25 前面板
26 基板