(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1ないし
図10に本発明に係る実施の形態を示す。
図1は本発明に係る手摺装置を在宅介護される被看護者の寝室の天井と床を利用して設置した場合を示すもので、この実施の形態において手摺装置は、
図1に示すように、伸縮自在に形成された支柱部11と、この支柱部11に取り付けられる手摺部12と、上記支柱部11の伸縮動作を操作、制御するための操作部13とを有する。設置状態において、上記支柱部11は、天井面(設置面1)と床面(設置面1’)の間に架設され、また、上記操作部13の配置高さHは、被看護者が白内障であるときにもその歩行の邪魔にならないように、被看護者の目線よりやや上の位置に設定される。なお、説明の理解を容易にするために、
図1に示す設置状態を基準にして上下を定義する。
【0018】
上述した支柱部11は、支柱材3の両端に天井側受け部材(端部受け部材7)と床側受け部材14を取り付けて形成される。上記支柱材3は、
図1、
図7、および
図9(a)等に示すように、大径パイプ15と、この大径パイプ15内を摺動自在な小径パイプ16とを有し、テレスコープ状に小径パイプ16を大径パイプ15から引き出し、あるいは大径パイプ15内に収容することにより伸縮自在に形成される。上記大径パイプ15と小径パイプ16は、表面を樹脂被覆、あるいはメッキ処理した直管状の鋼管からなる。大径パイプ15が下側に配置されるこの実施の形態において、支柱部11の伸縮は、大径パイプ15から上方に引き出される小径パイプ16の長さを調整してなされる。
【0019】
上記天井側受け部材7は、
図2および
図3に示すように、図外の野縁や桟の間に跨がることで天井板ではなく野縁等によって応力負担できるようにするために、野縁等の配置間隔よりも長尺の長手寸法Lを備えた略矩形ブロック状、より具体的には細長の略ブロック状に形成される。この天井側受け部材7には、
図2(a)に示すように、上述した小径パイプ16の端部4に嵌合可能な嵌合孔(挿入孔5)が長手方向に沿って所定間隔で凹設される。3個の嵌合孔5A、5B、5Cを設けるこの実施の形態において、中央の嵌合孔5Bは天井側受け部材7の長手方向の中央に配置され、この中央からの線対称位置に残余の2個が配置される。また、各嵌合孔5は、嵌入された小径パイプ16を回り止めできる断面形状に形成され、具体的には六角形断面に形成される。
【0020】
したがって
図2(b)に示すように、小径パイプ16の端部4を嵌入する嵌合孔5を選択することにより、天井側受け部材7における支柱材3との組み付け位置を変更することができる。また、同図において支柱材3の位置を実線で示した位置から二点鎖線で示した位置に変更することにより、同図(a)に示すように、上述の組み付け位置の天井側受け部材7周縁6からの最長距離D、言い換えれば、天井側受け部材7の長手方向端縁6aからの最短距離DをD2からD1に変更することができる。なお、上述した嵌合孔5は、妄りに支柱材3と嵌合解除しない程度の深さに形成される。
【0021】
さらに、上記天井側受け部材7には、
図3(a)に示すように、裏面に当接調整面8が形成される。この当接調整面8は、長手方向の中心側に行くに従って漸次表面側に向かう傾斜面、すなわち側面視で略V字状の傾斜面により構成される。なお、
図3(a)において二点鎖線は当接調整面8の形状を判別しやすくするための仮想天井面、すなわち平坦面を示すものである。
【0022】
以上の天井側受け部材7は、
図2(c)に示すように、受け部材本体17の裏面に板状の当接材18を固定して形成される。この当接材18は、天井側当接材7の長手方向の各端部に対応する2個で構成され、固定状態で受け部材本体17の周囲からはみ出して美観を損ねないように受け部材本体17の裏面に重合する形状、サイズに形成される。
【0023】
上記当接材18は、
図2において部分拡大した箇所に示すように、スポンジ層18aとゴム層18bを有し、具体的には板状のスポンジの一方の表面にゴム板を接着剤等で貼り付けることにより形成される。以上の当接材18は、上述したスポンジ層18aのゴム層18b反対面において受け部材本体17の裏面に接着剤等で貼り付けられ、これにより天井側受け部材7の裏面にクッション性に優れるスポンジ層18aを介して摩擦性に優れるゴム層18bが露出する。
【0024】
一方、上記受け部材本体17は、
図2および
図3に示すように、合成樹脂材を射出成形して略矩形ブロック状に形成される。具体的には、上述した3個の嵌合孔5、5、5の配置領域、より正確には嵌合孔5の開放端寄りの適宜深さ範囲の配置領域に対応して略矩形ブロック状に形成される頭部19と、この頭部19の基端から頭部19とは反対方向に、かつ外側に向かって漸次広がるように延設される拡幅裾部20とを有し、その重量の軽減や成形時のヒケの抑制に加え、所定の強度を確保して表裏方向に適宜撓むことができるようにするために、
図3(b)ないし(e)に示すように、上記頭部19および拡幅裾部20は全域に渡って裏面側から肉盗み21が施されて薄肉に形成されるとともに、上述した挿入孔5、5、5周りを中心にこれらの全体を適宜補強するリブ22の適数が裏面側に向かって立設される。上述のように拡幅裾部20が頭部19の反対方向に外側に向かって漸次広がるように延設され、スカート状をなすことにより、受け部材本体17は固定状態で天井面1に馴染みやすい外観となる。
【0025】
また、受け部材本体17は、上述した当接調整面8を形成するための調整面形成部23を備える。この調整面形成部23は、拡幅裾部20やリブ22の先端縁を頭部19の反対側に向かって延設して形成されるもので、これらの先端縁が上述した当接調整面8に平行な面上に位置するようにその延設長さが設定される。これにより、上述した当接材18の裏面を当接調整面8と平行な面上で支持し、その表面を当接調整面8として機能させる。
【0026】
また、上述した床側受け部材14は、
図5に示すように、床面1’上に載置される板状部材24と、この板状部材24から立設されて支柱材3に連結される連結部25とを有する。上記板状部材24は、支柱材3の設置状態の安定性をより高めることができるように適宜の面積を確保して形成され、この実施の形態においては、平面視略矩形形状に形成される。
【0027】
この板状部材24は、例えば、
図5(b)に示すように、2枚の金属等からなるほぼ同じサイズの平面視略矩形形状の板材24a、24bを重ね、これらの周縁部を周縁処理部材24cで一体にまとめて形成される。このような周縁処理部材24cとしては、断面コ字形状からなる円環状のゴム等を利用することが可能であり、具体的には、コ字形状の開放部内に上述した2枚の板材24aの周縁部を全周に渡って緊密に呑み込ませることにより、2枚の板材24a、24bを重なる位置に保持する。
【0028】
また、上述した連結部25は以上の板状部材24とは別体からなり、このため上記板状部材24には、連結部25の取り付けを可能にするための取付開口26が開設される。この取付開口26は板状部材24の四隅近傍、および長辺の辺縁近傍の中央に配置され、これにより、上述した天井側受け部材7同様、連結部25を介してなされる床側受け部材14への支柱材3の組み付け位置を選択できるようにされる。
【0029】
一方、上記連結部25は、上述した大径パイプ15の外径よりも大きい内径を備えて筒状に形成され、側壁に適数のネジ穴27a、具体的には
図5(b)に示すように7個のネジ穴27aが長手方向に沿って穿孔された筒状部27と、上記ネジ穴27aにねじ込まれるイモネジ28Aとを有し、筒状部27内に挿入した大径パイプ15の下端部4をイモネジ28Aで筒状部27内壁に押し付け、止めネジとして機能させることにより支柱材3と連結される。なお、上記イモネジ28Aに代えて例えばタッピングスクリューで筒状部27と大径パイプ15を貫通して締結させることも可能である。
【0030】
また、
図5(b)に示すように、上記筒状部27の下方には、支柱材3の下端を支承する支承部27bが形成される。この支承部27bは、上述したイモネジ28Aよりも長尺のイモネジ28Bを上述したネジ穴27aに螺入して形成される。上述したイモネジ28Aの2個によって大径パイプ15を長手方向に沿って略線状に押すために、長尺のイモネジ28Bは、上述した筒状部27において下方寄りの5個のネジ穴27aのいずれかを選択して螺入され、これにより支柱材3の長さが床側受け部材14との連結位置によって微調整可能にされる。
【0031】
さらに、上記筒状部27の下端内壁には、上述した板状部材24との連結のための雌ネジ27cが刻設され、この雌ネジ27にはスチール等からなる固定具29が螺合される。この固定具29は、キャップ状に形成されて上部に雄ネジ29aが刻設されるとともに、下部には外側に張り出す係止片29bが形成され、この係止片29bを上述した取付開口26の周縁に係止して板状部材24を貫通し、上述の雌ネジ27cに螺合することにより、板状部材24と連結部25を連結する。なお、
図5(a)においては支柱材3、および手摺部12の後述する支持脚部30との連結のために、上述した連結部25が板状部材24において2箇所のみ設けられる場合を示している。
【0032】
したがって以上の支柱部11は、大径パイプ15の下端部4を床側受け部材14の筒状部27内にイモネジ28Aで固定し、また、大径パイプ15の上端から引き出した小径パイプ16の上端部4を天井側受け部材7の嵌合孔5に嵌合させて形成される。小径パイプ16の大径パイプ15からの引き出し長さを調節すれば、床面1’と天井面1に床側受け部材14と天井側受け部材7を圧接させることが可能であり、この状態で上述した操作部13によって小径パイプ16と大径パイプ15の相対移動を禁止すれば、床と天井の間に支柱部11を突っ張り固定することができる。
【0033】
また、天井側受け部材7は、その長手寸法を利用して複数の野縁あるいは桟に跨がることで天井面1に強固に固定することが可能であり、さらに、天井側受け部材7を天井面1に圧接させる前に支柱材3を手で持って回転させれば、天井側受け部材7の長手方向を天井面1上で任意の方向に向けることができるために、上述したように複数の野縁等に跨がる位置に容易に合わせることができる。加えて、小径パイプ16の先端を挿入させる天井側受け部材7の挿入孔5を選択することにより、支柱材3と天井側受け部材7との組み付け位置を変更することが可能であり、上述した天井側受け部材7の回転をも利用することで、
図4(b)および(c)に示すように、部屋の隅近傍に支柱材3を立設することもできる。なお、
図4において31、31’は横壁の壁面であって直交方向に位置するものである。加えてさらに、
図4(a)および(b)に示すように、支柱材3を伸長させて天井面1と圧接させる際には、当接調整面8によって天井面1から天井側受け部材7に撓み方向の力を与えることができることから、小径パイプ16を天井側受け部材7の長手方向端部寄りの位置に組み付けても、天井面1との圧接状態を良好に確保することができる。
【0034】
一方、床側受け部材14もその面積を利用して床面1’側で支柱材3を強固に支えることが可能であり、また、上述した天井側受け部材7同様、板状部材24において固定具29を介して嵌合筒部27cを固定する取付開口26を選択することにより、板状部材24、すなわち床側受け部材14の支柱材3との組み付け位置を選択することができる上に、床面1’上で板状部材24を回転させれば、部屋の隅近傍への支柱材3の立設も可能になる。例えば、面積の広い板状部材24の大部分を被看護者のベッドの下に潜り込ませてベッド脇に支柱材3を立設させれば、床側受け部材14が看護者の邪魔にならないようになる。
【0035】
また、上述した手摺部12は、
図1に示すように、一端部4が上記支柱部11に取り付けられて該支柱部11に対して直交する方向、すなわち水平方向に延びる手摺体(手摺2)を有する。この手摺体2は、上述した大径パイプ15と同様に直管状の鋼管に樹脂被覆を施して形成されたもので、支柱部11に対してジョイント材32により締結される。上記ジョイント材32はいわゆるT型ジョイントであり、大径パイプ15が貫通する図外の支柱貫通孔と、この支柱貫通孔に直交する方向に凹溝状に形成されて手摺体2の一端部が挿入される図外の手摺挿入部とを有し、大径パイプ15と手摺体2の双方にボルト止めされる。また、上述したように支柱部11をベッド脇に立設した際に、被看護者のベッドからの立ち上がり動作を良好に補助できるようにするために、上記手摺体2は、この実施の形態においては支柱部11の下部に上下3列をなすように所定間隔で3本設けられる。
【0036】
また、以上の手摺体2を支持するために、上述した手摺部12は鉛直方向に延びる支持脚部30を備える。この支持脚部30は、上述した手摺体2と同様に直管状の鋼管に樹脂被覆を施して形成されたもので、手摺体2の支柱部11反対端部を支承する。以上の支持脚部30は、その上端が最上段の手摺体2とコーナージョイント材33により連結される。このコーナージョイント材33は、いわゆるエルボジョイントであり、手摺体2の反対端部と、支柱脚部30の上端部とが嵌入される一対の嵌入凹部を直交方向に備え、手摺体2と支柱脚部30の双方に嵌合する。また、支柱脚部30と残余の手摺体2との連結は上述同様ジョイント材32を利用してなされる。
【0037】
さらに、支持脚部30の下端は、
図1に示すように、支柱材3同様、上述したように床側受け部材14に連結される。この連結は、上述したように支持脚部30が大径パイプ15と同じ径寸法であることから、上述した連結部25を利用して大径パイプ15と同様にしてなされ、これにより支持脚部30、すなわち手摺体2がしっかりと固定される。
【0038】
一方、上述した操作部13は、
図1に示すように、ハンドル部34と、このハンドル部34を支柱部11に取り付けるための取付ベース35とを有する。上記取付ベース35は、
図6、
図7、および
図9(a)等に示すように、上述した大径パイプ15よりもひとまわり大きい略C字断面の円筒近似形状に形成された筒部35aを有し、この筒部35aの側壁面には貫通状に適数のネジ穴35bが形成される。取付ベース35の支柱部11への取り付けは、上記筒部35a内に大径パイプ15の上端部4を挿入した後、
図7(a)に示すように、上記ネジ穴35bにねじ込まれるイモネジ35cによって大径パイプ15外周面を押圧することによりなされる。また、筒部35aの長手方向中間部の側壁面には、外周側から内周側に向かって大径パイプ15の外径よりも内方まで押し込むように凸状に変形させることにより、後述するガイド体47を介して大径パイプ15を上方に抜け止めするための抜け止め部35dが形成される。なお、発明の理解を容易にするために
図7(a)等においてはハンドルカバー31が省略されている。
【0039】
さらに、上記筒部35aの下部には、
図6、および
図7に示すように、その長手方向に沿って一対の突片35e、35eが上述したC字断面の開放端縁から平行に突設される。この一対の突片35eには、上下方向に長い長孔35fが水平方向に連通して穿孔される。また、筒部35aの上部は下部に比べてより開放面積が大きくしたC字断面にされ、後述するクランプ装置36の収容部35gが形成される。
【0040】
上記ハンドル部34は、
図6および
図7に示すように、レバー状のハンドル本体37の外側をハンドルカバー38で覆って形成される。上記ハンドル本体37は、短冊状の天井壁37aの両側縁からハンドル横壁37bを、その一端縁からハンドル先端壁37cを直交方向に垂下して中空状に形成され、その内部には底面側に開放するストッパ収容部37dが形成される。
【0041】
また、上記ハンドル横壁37bは、ハンドル先端壁37cの反対方向、すなわち終端方向に天井壁37aを越えて延設され、その終端部4には貫通孔37eが連通して穿孔される。さらに、ハンドル横壁37bの上記貫通孔37eよりもややハンドル先端壁37c寄りの位置には連結孔37fが穿孔される。一方、ハンドル先端壁37cには、天井壁37a寄りの位置に開口37gが開設される。
【0042】
上記ハンドルカバー38は、操作部13の操作感触を良好にする以外に、被看護者が誤ってハンドル部34に衝突しても大怪我にならないようにもするためのもので、合成樹脂材により形成される。
図6等において38aは、上述した貫通孔37eや連結孔37fに挿入されるボルト等の締結具の頭部19やナットを覆うための締結具覆い部である。また、上述したハンドル本体37の開口に対応する部位には透孔38bが開設される。
【0043】
以上のハンドル部34の上述した取付ベース35との連結は、
図6に示すように、リンク39を介してなされる。リンク39は、両端にボルト孔39aを有し、その一方にハンドル本体37の連結孔37fに挿入されたボルト40Aを通すことによりハンドル部34と回転自在に連結され、また、その他方に取付ベース35の長孔35fに挿入されたボルト40Bを通すことにより取付ベース35にクランクスライダ状に連結され、ハンドル部34を取付ベース35、すなわち大径パイプ15に自由度を持って回転自在に連結する。このリンク39は、ハンドル本体37のストッパ収容部37dの幅寸法よりもやや狭く、かつ、一対の突片35e、35eの幅方向寸法よりもやや幅広に配置された一対のリンク片39b、39bの中央部を連結片39cで連結して形成され、上述した挿入孔10aは各リンク片10bの両端部に開設される。なお、
図6において41A、41Bはナットである。
【0044】
また、上述した小径パイプ16の大径パイプ15からの引き出し等を操作、制御するために、上記ハンドル部34には、
図6、および
図9に示すように、小径パイプ16をクランプ可能なクランプ装置36が装着される。このクランプ装置36は、上述した小径パイプ16の外径よりもやや大きい断面の中空部を備えたクランプ部42と、このクランプ部42に装着されるハンドル受け43とを有する。
【0045】
上記クランプ部42は、小径パイプ16よりも内径がやや大きい断面C字の筒近似形状に形成されて径方向に拡縮変形自在なクランプ本体42aと、上記C字断面の開放端縁から外周側に向かって所定間隔を隔てて延設された一対の挟持片42b、42bとを有し、上記C字断面の開放間隔は、この開放部を閉塞するように円筒状に弾性変形させたときのクランプ本体42aの内径が小径パイプ16の外径よりもやや小さくなる程度にされる。また、上記挟持片42bの一対には、連通状に貫通する貫通孔42cが穿孔され、さらに、各挟持片42bのクランプ本体42a長手方向における両端には、リブ状の回転規制片42dが突設される。
【0046】
上記ハンドル受け43は、上述した挟持片42bの各々における開放部反対面に装着されてハンドル部34の装着面を提供するもので、合成樹脂材によりブロック状に形成される。各ハンドル受け43には、
図6および
図7に示すように、上述した挟持片42bの貫通孔42cに連通する貫通孔43aが穿孔され、また、上述した回転規制片42dに当接する受け面43bが形成されてこれらの当接によりクランプ本体42aの貫通孔42c周りでの回転が規制される。
【0047】
さらに、各ハンドル受け43の挟持片42bとの当接面に対する反対面には、
図9(c)および(d)に示すように解除位置受け面44と、連結位置受け面45と、これら解除位置受け面44と連結位置受け面45との境界部に配置されるカム面46とが形成される。上記解除位置受け面44は、各ハンドル受け43をクランプ本体42aに装着して背向させたときに、その一対の間隔が、上述したハンドル本体37におけるハンドル横壁37b、37b間の間隔と同じになる高さに形成される。また、上記連結位置受け面45は、解除位置受け面44に比べて上記当接面からの高さが高く形成されており、上記カム面46は、当接面からの高さを漸次変更して、すなわち傾斜面により構成されて解除位置受け面44と連結位置受け面45をスムーズに接続する。これら解除位置受け面44、カム面46、連結位置受け面45は、後述するように貫通孔43a周りにハンドル部34を回転させたときに、ハンドル横壁37bに順次接触することができる位置に配置される。
【0048】
以上のクランプ装置36とハンドル部34との連結は、
図6に示すように、挟持片42bとハンドル受け43のそれぞれの貫通孔42c、43aと、ハンドル本体37の貫通孔37eとにボルト40Cを一連に貫通させてなされ、これによりハンドル部34にクランプ装置36が回転自在に連結される。連結状態において、
図7(b)に示すようにハンドル横壁37bが連結位置受け面45に接しているときには、一対のハンドル横壁37b、37bによって一対の挟持片42b、42bが近接方向に押し込まれるために、クランプ本体42aが縮径変形する。この状態からハンドル部34をクランプ装置36に対して回転させ、ハンドル横壁37bがカム面46の形成領域に至ると、
図9(b)および(d)に示すように、回転に伴って挟持片42b、42bの近接方向への押し込みが次第に解除され、これに伴ってクランプ本体42aが漸次弾性復帰し、さらに回転してハンドル横壁37bが解除位置受け面44に至れば、
図9(a)および(c)に示すように、挟持片42b、42bの押圧が開放されてクランプ本体42aは縮径変形が解消される。なお、
図6等において41Cはナットである。
【0049】
以上のクランプ装置36のクランプ本体42a内に小径パイプ16を挿入すれば、ハンドル部34の回転操作によって小径パイプ16をクランプしたり、クランプ解除したりすることができ、これによりハンドル部34を小径パイプ16の長手方向所定位置に固定したり、小径パイプ16の長手方向に相対移動可能にしたりすることができる。上述した様にクランプ本体42aが筒近似形状に形成されて小径パイプ16の長手方向に沿ってある程度の長さを備えることにより、小径パイプ16のクランプ状態が安定する。
【0050】
また、ハンドル部34は、クランプ装置36以外にも、上述したように取付ベース35、すなわち大径パイプ15に対してもリンク39を介して回転自在に連結されるために、小径パイプ16をクランプ部42でクランプさせたときには、小径パイプ16と大径パイプ15の相対移動が原則として禁止され、支柱部11が所定の長さに維持されやすくなるし、クランプを解除すれば、支柱部11の長さを変更しやすくなる。一方、ハンドル部34は、上述したように取付ベース35、すなわち大径パイプ15にクランクスライダ状に連結されるリンク39を介して大径パイプ15に連結されているために、上述したようにクランプ部42で小径パイプ16をクランプすれば、ハンドル部34、リンク39、支柱部11がリンク39機能を果たすことによってクランクスライダ機構が構成される。
【0051】
したがってクランプ本体42aに小径パイプ16を挿入すると、ハンドル部34は、
図8(a)に示すように支柱部11に対してほぼ直交する位置(連結解除位置)から、上述したクランクスライダ機構におけるスライド移動を伴うリンク39の時計回りの回転によって
図8(b)に示すように下方に向かって少し回転する位置(初動位置)まで回転することができる。このとき、リンク39を取付ベース35に接続するボルト40Bの軸は、回転するハンドル部34によってリンク39が押し込まれることにより、
図8(b)に示すように長孔35fの上端部近傍の位置から下方に移動する。上記連結解除位置においては、ハンドル横壁37bは解除位置受け面44に接しており、クランプ装置36はクランプ解除状態にあるために小径パイプ16をクランプ装置36に対して相対移動させることが可能であり、したがって小径パイプ16を手で把持して大径パイプ15に対して進退動させることにより、支柱部11を自由に伸縮させることができる。
【0052】
一方、上記初動位置においては、ハンドル横壁37bは解除位置受け面44を外れてカム面46に対してある程度乗り上げており、これに伴ってクランプ本体42aも縮径変形していることでクランプ装置36がクランプ状態に移行している。ここからハンドル部34をさらに下方に回転操作すると、今度は小径パイプ16を大径パイプ15から引き出す方向への動作、すなわち、上述した支柱部11の伸長駆動を伴ってリンク39が回転する。ハンドル部6が最下方である支柱部11に沿う位置(連結位置)まで回転したときには、
図7に示すように、ハンドル横壁37bは連結位置受け面45に到達し、リンク39は支柱部11にほぼ沿う姿勢になり、上述した長孔35f内では、その中央近傍にボルト40Bの軸が位置する。また、このときハンドル本体37と取付ベース35とは、上述したストッパ収容部37d内に上述した突片35eを収容する位置をとる。なお、以上のように支柱部11が伸長駆動される際には、クランプ装置36の下部が取付ベース35の収容部35g内に位置しており、クランプ装置36が取付ベース35の筒部35aに支えられることにより、ハンドル部34の回転に伴って大径パイプ15や小径パイプ16に過度の応力が生じてしまうことが防止される。
【0053】
また、再度、ハンドル部34を上記連結位置から連結解除位置まで戻すと、以上とは逆に支柱部11が縮退駆動されるとともに、長孔35f内をボルト40Bの軸が上昇し、また、クランプ装置36がクランプ解除状態になって支柱部11を手で把持して伸縮できるようになる。したがって手摺装置は、ハンドル部34を連結解除位置にしておいて予め手動により支柱部11の両端、すなわち天井側受け部材7と床側受け部材14を天井面1と床面1’に接触するように合わせておき、次いで、ハンドル部34を連結位置まで回転操作すれば、支柱部11の伸長によって天井側受け部材7と床側受け部材14を天井面1と床面1’に圧接させ、これにより支柱部11を天井と床の間に突っ張り状にしっかりと立設させることができる。また、この後、ハンドル部34を連結解除位置まで戻せば、天井側受け部材7等の天井面1等への圧接を解除して支柱部11を天井と床の間から容易に取り外すことができる。また、ハンドル部34を連結解除位置まで戻す際には、クランプ装置36もクランプ解除状態に移行するために、自重を利用して小径パイプ16を大径パイプ15内に収容することも可能であり、そのまま支柱部11を短縮させることが可能になる。
【0054】
また、手摺装置は、上述した小径パイプ16の大径パイプ15内での摺動をスムーズにするために、小径パイプ16の軸心を大径パイプ15の軸心に位置合わせするガイド体47を備える。このガイド体47は、具体的には
図7(a)に示すように、小径パイプ16の外径にほぼ近似する内径を備えた筒状に形成されるとともに、外周面が段付き形状にされ、その上部には上述した抜け止め部35dの内方に嵌合可能な外径を備えた小径部47aが、一方、その下部には、上述した取付ベース35の筒部35aの内径とほぼ近似する外径を備えた大径部47bが形成される。
【0055】
以上のガイド体47の手摺装置への組付けは、取付ベース35内に下方からガイド体47を挿入した後、さらに大径パイプ15を挿入してガイド体47の大径部47bを抜け止め部35dに係止させ、この状態で
図7に示すようにイモネジ35cにより取付ベース35に大径パイプ15を取り付ける。これによりガイド体47は抜け止め部35dと大径パイプ15の上端とに挟持され、以後、ガイド体47に挿入することで小径パイプ16を大径パイプ15と軸心を合わせるように保持することができる。
【0056】
また、以上のようにガイド体47の組み付けが完了すると、後は、クランプ部42を取付ベース35の近傍に位置させ、ハンドル受け43を介してハンドル部34をクランプ部42にボルト止めするとともに、リンク39を取付ベース35とハンドル部34にボルト止めすると、操作部13が完成する。この際、ハンドル部34を上述した連結解除位置に合わせることにより、クランプ部42が小径パイプ16の長手方向に移動自在になるために、上述したクランプ部42の位置合わせやボルト止め作業を簡単に行うことができる。
【0057】
また、上述した支柱部11には、天井側受け部材7と床側受け部材14の天井面1、床面1’への圧接力を良好に管理にするために、その伸縮を吸収して上記圧接力を生じさせる弾性伸縮部48が支柱材3の端部4に形成される。この弾性伸縮部48は、上述した圧接力となる適宜の弾力を備えた圧縮バネ49を支柱部11に組み込むことにより構成されるもので、具体的には、小径パイプ16の伸縮方向に進退自在に装着されるソケット50に圧縮バネ49を組み込むことにより形成される。
【0058】
上記ソケット50は、
図10(a)に示すように、天井部50aの周縁6から周壁50bを垂下して形成され、天井部50aの下方に上述した圧縮バネ49を収容するバネ収容部50cを備える。上記天井部50aの上面にはボルト収容凹部50dが凹設され、ソケット50は、上記ボルト収容凹部50dに頭部51aを収容して天井部50aに穿孔されたボルト穴50eを貫通するボルト51の先端部を小径パイプ16の上端側にナット52で締結することにより小径パイプ16に取りつけられる。
【0059】
また、このようにボルトの先端部をナット52を利用して小径パイプ16の上端側に拘束するとともに、圧縮バネ49をソケット50内に安定して保持するために、
図10(a)に示すように、小径パイプ16の上端にはホルダ53が固定される。ホルダ53は、底壁53aの周縁から表裏方向にほぼ直交して縦壁53bを延設して形成され、底壁53aの上面側に上述した圧縮バネ49を収容するバネ格納部53cを、下面側に小径パイプ16の上端部4が挿入されるパイプ挿入部53dを備える。このホルダ53の縦壁53bの外径寸法は、ソケット50のバネ収容部35gの内径寸法よりもやや小さくなるように設定される。また、上記底壁53aの中央には、ボルト穴53eが穿孔される。
【0060】
以上の弾性伸縮部48は、底壁53a上面側に圧縮バネ49を挿入したホルダ53にソケット50を被せた後、ソケット50のボルト収容凹部50dに頭部51aを収容したボルト51の先端をホルダ53のボルト穴53eに通してナット52を螺着することにより形成される。このナット52を螺着する際、ホルダ53の縦壁53b上面とソケット50の天井部50a下面との間に適宜の隙間が確保されることにより、この隙間を利用することでソケット50とホルダ53が近接、離隔方向に移動できるようにされる。なお、上記隙間は、ホルダ53の底壁53a表面側における縦壁53bの高さと同じ程度にされる。また、以上の弾性伸縮部48は、ホルダ53のパイプ挿入部53dに小径パイプ16の上端部を挿入した上で、縦壁53bを貫通させた押しネジ53fで小径パイプ16の外面を押圧することにより小径パイプ16に固定される。
【0061】
さらに、このように押しネジ53fで小径パイプ16に相対回転不能に装着されるホルダ53に対して上述したソケット50を相対回転不能に連結するために、弾性伸縮部48は回転規制具54を有する。この実施の形態において、回転規制具54は、上述したボルト51を囲む筒状に形成されてホルダ53とソケット50の双方のボルト穴53e、50e内に嵌入することによりこれらの相対回転を規制するもので、具体的には
図10(b)および(c)に示すように、四角筒状に形成され、この回転規制具54に嵌合できるように、上述したホルダ53およびソケット50のボルト穴53e、50eは四角断面形状に形成される。
【0062】
したがって上述したようにハンドル部34を回転操作して支柱部11を伸長駆動させ、天井側受け部材7等を天井面1等に圧接させる際には、圧縮バネ49が圧縮されることで天井側受け部材7等の天井面1等への過剰な圧接が回避されるとともに、このように圧縮された圧縮バネ49によって良好な圧接力が確保されることから、支柱部11を天井面1と床面1’の間に良好に突っ張り状に立設させることができる。また、突っ張り状態で、支柱材3には天井側受け部材7、床側受け部材14の双方を相対回転不能に固定することができる。
【0063】
さらに、手摺装置は、支柱部11の設置状態を解消させてしまうハンドル部34の連結位置からの妄りな移動操作を防止するために、ストッパ55を備える。このストッパ55は、
図6に示すように、その一端部に係止部55aを、他端部に板材をS字状に折曲して形成された弾性変形脚55bを備えて合成樹脂材により一体形成される。また、ストッパ55の中間部には、
図7(a)に示すように、上述した取付ベース35の長孔35fと合致する長穴部55cと、この長穴部55cの一端部に長穴部55cと連続して開設され、長穴部55cの幅方向を拡幅するようにして長穴部55cの長手方向に所定長の範囲に渡って形成されるガイド穴部55dとが形成される。
【0064】
以上のストッパ55は、幅寸法が上述した取付ベース35に形成される一対の突片35e、35e間の間隔よりもやや狭い程度にされ、
図7(b)に示すように突片35e、35e間に挿入される。このストッパ55の保持は、リンク39のボルト孔39aと取付ベース35の長孔35fとに挿入されるボルト40Bを
図7(a)に示すように上記長穴部55cに貫通させることによりなされる。また、上記突片35eには、上記ガイド穴部55dの周縁に摺接してストッパ55の進退動方向をガイドするガイドネジ56と、上記弾性変形脚55bの先端側に係止部55a反対方向から当接する抑えネジ57がねじ込まれる。さらに、上述した取付ベース35による保持状態において、ストッパ55の係止部55aは突片35eよりも下方に突出し、この係止部55aの位置は、連結位置をとるハンドル本体37の開口37g内の位置に一致する。
【0065】
したがってストッパ55は、上記ガイドネジ56によって支柱部11の長手方向にほぼ平行に進退移動可能で、また、抑えネジ57によって上述した係止部55aが突片35eから突出する方向に付勢される。この付勢により、ハンドル部34が連結位置を取るときには係止部55aが開口37gに進入する位置(係止位置)をとり、これによりハンドル部34の連結位置からの移動が規制される。このときストッパ55は突片35eとともにハンドル部34のストッパ55収容部37d内に収容される。上述した開口37gからの係止部55aの脱離は、上述したハンドルカバー38の透孔38bを介して開口37g内に向かって鍵等の適宜棒状のものを挿入し、係止部55aを開口37gから押し出す方向に押せばよく、これにより弾性変形脚55bが撓んで係止部55aが開口37gから外れる位置(係止解除位置)に移動し、ハンドル部34の連結位置からの移動規制が解除される。
【0066】
また、このようにして係止部55aを係止解除した後、ハンドル部34を連結解除位置に移動させた状態で係止部55aの押し込み操作が解除されていれば、係止部55aは係止位置に復帰する。この係止部55aは、
図7等に示すように、支柱部11に対峙して開口37gの周縁6に係止する係止面58に加え、支柱部11の反対側に位置して先端に行くに従って支柱部11に漸次近接する傾斜面59を備えるために、この後さらにハンドル部34を連結位置に向かって移動させると、ハンドル先端壁37cの下端に傾斜面59が押され、これにより生じる分力によって弾性変形脚55bが撓んで係止部55aが係止解除位置に移動する。この後、ハンドル部34が連結位置に移動すると、係止部55aは開口37gを臨む位置になるために、弾性変形脚55bの付勢力によって係止位置に移動する。
【0067】
図11に本発明の変形例を示す。なお、以下の変形例において上述した実施の形態と同一の要素は同一の符号を付して説明を省略する。この変形例は天井側受け部材7と支柱材3との連結状態をより安定的にしたもので、上述した弾性伸縮部48と天井側受け部材7の嵌合孔5には被係合部60と係合部61が形成される。
【0068】
具体的には、
図11に示すように、弾性伸縮部48は、上述したソケット50がほぼ天井部50aのみからなるような円盤状に形成され、ホルダ53の縦壁53bに段付き形状の被係合部60が形成される。また、天井側受け部材7には、受け部材本体17と合成樹脂材で一体成形され、嵌合孔5の上縁を内方に向かって突起状に突出させて係合部61が形成される。上述した天井部50aの外径寸法は、嵌合孔5に挿入したときに係合部61をかわせる程度に小さく形成されており、弾性伸縮部48を嵌合孔5に挿入すると、外径寸法の小さいソケット50、圧縮バネ53が係合部61をかわし、係合部61は、縦壁53bの外周に衝接すると内方に弾性変形し、被係合部53bの形成領域に至ると弾性復帰して被係合部60に弾発的に係止する。
【0069】
上記被係合部60と係合部61との係合は圧縮バネ49が圧縮されない状態でなされるため、例えば支柱部11が天井と床の間に突っ張り固定されて圧縮バネ49が圧縮すると係合解除されるが、突っ張り固定状態が解除されれば係合状態に復帰できるために、このように取り外した状態で天井側受け部材7が支柱部11から妄りに分離してしまうことはない。
【0070】
なお、以上においては支柱部11が単一である場合を示したが、複数にして支柱部11、11間に手摺体2を架設することも可能である。また、この実施の形態においては支柱部11自体の太さが手摺体2の太さと同じ程度にされることから、そのまま縦方向の手摺として利用することが可能である。さらに、手摺装置は室内に設置する以外に、軒先等の屋外に設置することも可能あり、この場合、例えば屋根の下面と靴脱ぎ石の表面を天井面1、床面1’の代替として機能させることが可能である。加えて、以上においては天井側受け部材7と支柱材3との連結を嵌合孔5への支柱材3の端部4の嵌合のみによって実現する場合を示したが、これらをねじ止め等して連結しても足りる。