(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記演算回路は、絶縁型/非絶縁型の別に応じて、前記調整係数に前記スイッチのスイッチング周期とオフ期間との比を含むか否かを決定することを特徴とする請求項1に記載の負荷駆動装置。
前記演算回路は、力率改善制御の有効/無効に応じて、前記調整係数に力率改善係数を含むか否かを決定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の負荷駆動装置。
前記ADコンバータは、異なるタイミングで入力値をサンプル/ホールドする第1及び第2サンプル/ホールド回路と、各々の出力値を順次AD変換する単一のAD変換回路とを含むことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の負荷駆動装置。
前記演算回路は、乗算器と除算器を1つずつ含み、前記スイッチのスイッチング周期毎に前記乗算器及び前記除算器のタイミングシェアリングを行いながら前記電流ピーク設定信号の信号値を算出することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の負荷駆動装置。
前記演算モード設定信号は、前記ロジック部の端子処理によってパッケージ内部で設定されることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の負荷駆動装置。
前記演算回路は、電流連続モード/疑似共振モードの別に応じて、前記演算式の右辺第2項を有効とするか否かを決定することを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載の負荷駆動装置。
前記演算回路は、前記スイッチのスイッチング周波数がゼロ値に設定されているか否かに応じて、電流連続モード/疑似連続モードの別を認識することを特徴とする請求項11に記載の負荷駆動装置。
前記ロジック部は、調光信号に応じて前記発光ダイオードのバースト調光またはリニア調光を行う調光制御回路を含むことを特徴とする請求項14に記載の負荷駆動装置。
前記調光制御回路は、前記調光信号として、PWM[pulse width modulation]調光信号、リニア調光信号、及び、位相調光信号の入力を受け付けることを特徴とする請求項15に記載の負荷駆動装置。
前記調光制御回路は、バースト調光時には前記調光係数を1に設定した上で前記調光信号に応じたオンデューティで前記発光ダイオードの点消灯制御を行う一方、リニア調光時には前記調光係数を前記調光信号に応じた値に設定した上で前記発光ダイオードをフルオンさせることを特徴とする請求項15または請求項16に記載の負荷駆動装置。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<LED照明機器>
図1〜
図4は、それぞれ、LED照明機器の第1構成例(非絶縁型(Buck型)、力率改善制御なし)、第2構成例(非絶縁型(Buck型)、力率改善制御あり)、第3構成例(絶縁型(Fly−back型)、力率改善制御なし)、及び、第4構成例(絶縁型(Fly−back型)、力率改善制御あり)を示す図である。第1〜第4構成例のLED照明機器Xは、いずれも、発光ダイオード駆動装置1と発光ダイオード2を有する。
【0030】
発光ダイオード駆動装置1は、負荷である発光ダイオード2に流れる出力電流ILEDをスイッチング制御する負荷駆動装置の一形態であり、半導体装置10と、これに外付けされた複数のディスクリート部品から成る。
【0031】
半導体装置10は、第1〜第4構成例の全てで共通に用いられるモノリシック半導体集積回路装置(いわゆるLEDドライバIC)であり、外部との電気的な接続を確立するための手段として、外部端子T1〜T8を有する。なお、半導体装置10の内部構成や動作については、後ほど詳細に説明する。
【0032】
次に、半導体装置10に外付けされるディスクリート部品について、第1〜第4構成例を個別に見ながら説明する。
【0033】
まず、
図1を参照しながら、第1構成例について説明する。第1構成例では、Nチャネル型MOS[metal oxide semiconductor]電界効果トランジスタN1、ダイオードブリッジDB、抵抗R1〜R6、コンデンサC1〜C3、ダイオードD1及びD2、ツェナダイオードZD1、並びに、コイルL1及びL2が半導体装置10に外付けされている。
【0034】
トランジスタN1のドレインは、コイルL1の第1端とダイオードD2のアノードに接続されている。コイルL1の第2端は、発光ダイオード2のカソードに接続されている。ダイオードD2のカソードは、発光ダイオード2のアノードに接続されている。トランジスタN1のソース及びバックゲートは、外部端子T5に接続されている。トランジスタN1のゲートは、外部端子T4に接続されている。
【0035】
ダイオードブリッジDBの第1入力端は、商用交流電源PWの第1端(交流電圧Vacの印加端に相当)に接続されている。ダイオードブリッジDBの第2入力端は、商用交流電源PWの第2端に接続されている。ダイオードブリッジDBの第1出力端(入力電圧Vinの印加端に相当)は、発光ダイオード2のアノードに接続されている。ダイオードブリッジDBの第2出力端は、接地電圧GNDの印加端に接続されている。
【0036】
コンデンサC1の第1端と抵抗R1の第1端は、いずれもダイオードブリッジDBの第1出力端に接続されている。コンデンサC1の第2端は、接地電圧GNDの印加端に接続されている。抵抗R1の第2端、ダイオードD1のカソード、ツェナダイオードD1のカソード、及び、コンデンサC2の第1端は、いずれも外部端子T1に接続されている。ツェナダイオードD1のアノードとコンデンサC2の第2端は、いずれも接地電圧GNDの印加端に接続されている。ダイオードD1のアノードは、抵抗R2の第1端とコイルL2の第1端に接続されている。抵抗R2の第2端と抵抗R3の第1端は、いずれも外部端子T3に接続されている。抵抗R3の第2端とコイルL2の第2端は、いずれも接地電圧GNDの印加端に接続されている。コンデンサC3の第1端は、外部端子T2に接続されている。コンデンサC3の第2端は、接地電圧GNDの印加端に接続されている。抵抗R4の第1端は、外部端子T5に接続されている。抵抗R4の第2端は、接地電圧GNDの印加端に接続されている。抵抗R5の第1端は、外部端子T7に接続されている。抵抗R5の第2端は、接地電圧GNDの印加端に接続されている。抵抗R6の第1端は、第2電源電圧Vdd2の印加端に接続されている。抵抗R6の第2端は、外部端子T8に接続されている。外部端子T6は、接地電圧GNDの印加端に接続されている。
【0037】
上記構成から成る発光ダイオード駆動装置1において、トランジスタN1は、発光ダイオード2に流れる出力電流ILEDをスイッチング制御するためのスイッチに相当する。トランジスタN1がオンされているときには、入力電圧Vinの印加端から発光ダイオード2、コイルL1、トランジスタN1、及び、抵抗R4を介して接地電圧GNDの印加端に向けた出力電流ILED(センス電流Isに相当)が流れる。一方、トランジスタN1がオフされているときには、コイルL1、ダイオードD2、及び、発光ダイオード2を介してループ状に出力電流ILEDが流れる。
【0038】
ダイオードブリッジDBは、交流電圧Vacを全波整流して入力電圧Vinを生成する全波整流回路である。コンデンサC1は、入力電圧Vinを平滑化する平滑素子である。コンデンサC1としては、電解コンデンサ(例えば10μF)を好適に用いることができる。なお、ダイオードブリッジDBの前段に、ノイズやサージを除去するためのフィルタ回路を設けてもよい。
【0039】
抵抗R1、ツェナダイオードZD1、ダイオードD1、コンデンサC2、及び、コイルL2は、半導体装置10に外部電圧Vauxを印加する電源回路である。半導体装置10の起動時には、入力電圧Vinの印加端から抵抗R1を介してコンデンサC2の充電電流を引き込むことにより、外部電圧Vauxが生成される。一方、半導体装置10の起動後には、コイルL1と共にトランスを形成するコイルL2からダイオードD1を介してコンデンサC3の充電電流を引き込むことにより、外部電圧Vauxが生成される。なお、コイルL1及びL2の巻線比については、半導体装置10の動作に必要な外部電圧Vauxを鑑みて適宜設定すればよい。
【0040】
なお、第1構成例の発光ダイオード駆動装置1は、例えば、低出力(25W以下)のLED照明機器(電球や電飾など)に好適である。
【0041】
次に、
図2を参照しながら、第2構成例について説明する。第2構成例において、半導体装置10に外付けされるディスクリート部品(N1、DB、R1〜R5、R7、R8、C1〜C4、D1、D2、ZD1、L1、L2)は、その大部分が第1構成例と同一である。ただし、第2構成例には、第1構成例に対して3つの相違点がある。
【0042】
第1の相違点は、入力電圧Vinを平滑するためのコンデンサC1として、電解コンデンサではなくセラミックコンデンサ(例えば0.1μF)が用いられている点である。第2の相違点は、発光ダイオード2の両端間に、出力電圧Vout(発光ダイオード2の両端間電圧)を平滑するためのコンデンサC4が接続されている点である。なお、コンデンサC4としては、電解コンデンサ(例えば10μF)を用いることができる。第3の相違点は、外部端子T8を第2電源電圧Vdd2にプルアップするための抵抗R6に代えて、入力電圧Vinを分圧して外部端子T8に印加するための抵抗R7及びR8が半導体装置10に外付けされている点である。なお、抵抗R7及びR8の分圧比については、入力電圧Vinの振幅レベルとコンパレータ15やADコンバータ19の入力ダイナミックレンジを考慮して適宜調整すればよい。
【0043】
なお、第2構成例の発光ダイオード駆動装置1は、例えば、中出力(25〜100W)のLED照明機器(室内照明や室外照明など)に好適である。
【0044】
次に、
図3を参照しながら、第3構成例について説明する。第3構成例において、半導体装置10に外付けされるディスクリート部品(N1、DB、R1〜R6、R9、C1〜C3、C5、C6、D1、D3、ZD1、L3〜L5)は、その大部分が第1構成例と同一である。ただし、第3構成例では、出力段の構成が第1構成例と根本的に異なり、コイルL1及びL2とダイオードD2に代えて、コイルL3〜L5、抵抗R9、コンデンサC5及びC6、並びに、ダイオードD3が半導体装置10に外付けされている。
【0045】
コイルL3の第1端は、入力電圧Vinの印加端に接続されている。コイルL3の第2端は、トランジスタN1のドレインに接続されている。抵抗R9とコンデンサC5は、コイルL3の両端間に直列接続されている。コイルL4の第1端は、ダイオードD3のアノードに接続されている。コイルL4の第2端は、接地電圧GND2の印加端に接続されている。ダイオードD3のカソードは、発光ダイオード2のアノードに接続されている。発光ダイオード2のカソードは、接地電圧GND2の印加端に接続されている。コンデンサC6は、発光ダイオード2の両端間に接続されている。なお、コンデンサC6としては、セラミックコンデンサ(例えば0.1μF)を用いることができる。コイルL5の第1端は、ダイオードD1のアノードに接続されている。コイルL5の第2端は、接地電圧GNDの印加端に接続されている。
【0046】
上記構成から成る発光ダイオード駆動装置1において、トランジスタN1がオンされているときには、入力電圧Vinの印加端からコイルL3、トランジスタN1、及び、抵抗R4を介して接地電圧GNDの印加端に向けた一次電流(センス電流Isに相当)が流れる。一方、トランジスタN1がオフされているときには、コイルL3と共にトランスを形成するコイルL4に誘起電力が発生し、コイルL4からダイオードD3と発光ダイオード2を介して接地電圧GND2の印加端に向けた二次電流(出力電流ILEDに相当)が流れる。一方、コイルL3と共にトランスを形成するコイルL5は、コイルL1に流れる一次電流を利用してコンデンサC3の充電電流を生成する。このような構成を採用することにより、一次側の接地電圧GNDと二次側の接地電圧GND2を絶縁することができる。
【0047】
なお、第3構成例の発光ダイオード駆動装置1は、例えば、中出力(25〜100W)のLED照明機器(室内照明や室外照明など)に好適である。
【0048】
次に、
図4を参照しながら、第4構成例について説明する。第4構成例において、半導体装置10に外付けされるディスクリート部品(N1、DB、R1〜R5、R7〜R9、C1〜C3、C5、C6、D1、D3、ZD1、L3〜L5)は、その大部分が第3構成例と同一である。ただし、第4構成例には、第3構成例に対して3つの相違点がある。
【0049】
第1の相違点は、入力電圧Vinを平滑するためのコンデンサC1として、電解コンデンサではなくセラミックコンデンサ(例えば0.1μF)が用いられている点である。第2の相違点は、出力電圧Voutを平滑するためのコンデンサC6として、セラミックコンデンサではなく電解コンデンサ(例えば10μF)が用いられている点である。第3の相違点は、外部端子T8を第2電源電圧Vdd2にプルアップするための抵抗R6に代えて、入力電圧Vinを分圧して外部端子T8に印加するための抵抗R7及びR8が半導体装置10に外付けされている点である。なお、抵抗R7及びR8の分圧比については、入力電圧Vinの振幅レベルとコンパレータ15やADコンバータ19の入力ダイナミックレンジを考慮して適宜調整すればよい。
【0050】
なお、第4構成例の発光ダイオード駆動装置1は、例えば、高出力(100W以上)のLED照明機器(道路照明など)に好適である。
【0051】
次に、第1〜第4構成例の全てで共通に用いられる半導体装置10の内部構成について説明する。半導体装置10には、レギュレータ11と、ロジック部12と、オシレータ13と、ドライバ14と、コンパレータ15〜17と、DA[digital/analog]コンバータ18と、AD[analog/digital]コンバータ19と、が集積化されている。
【0052】
レギュレータ11は、外部端子T1に印加される外部電圧Vauxから第1電源電圧Vdd1(例えば12V)と第2電源電圧Vdd2(例えば3.3V)を生成し、各々を半導体装置10の各部に供給する。第2電源電圧Vdd2は、外部端子T2に印加されている。また、レギュレータ11には、温度保護部機能や減電圧保護機能が具備されている。
【0053】
ロジック部12は、半導体装置10の動作を統括的に制御する論理回路である。ロジック部12には、トランジスタN1のスイッチング制御機能や出力電流ILEDの平均電流制御機能が具備されているほか、各種異常保護機能(過電圧保護機能、過電流保護機能、LEDショート保護機能、LEDオープン保護機能など)も具備されている。なお、ロジック部12の内部構成や動作については、後ほど詳細に説明する。
【0054】
オシレータ13は、ロジック部12の駆動に必要なマスタクロック信号MCLK(例えば10MHz)を生成する。また、オシレータ13は、外部端子T7に外付けされる抵抗R5の抵抗値に応じてトランジスタN1のスイッチング周波数Fswを可変制御するための周波数設定電圧Voscを生成する機能も備えている。
【0055】
ドライバ14は、ロジック部12から入力されるスイッチ制御信号SWONに応じてゲート電圧Vgを生成し、これを外部端子T4からトランジスタN1のゲートへ印加することにより、トランジスタN1のオン/オフ制御を行う。なお、ドライバ14には、スイッチ制御信号SWON(H:Vdd2、L:GND)からゲート電圧Vg(H:Vdd1、L:GND)を生成するためのレベルシフト機能や、ゲート電圧Vgの電圧値を緩やかに変化させるためのソフトスイッチング機能が具備されている。
【0056】
コンパレータ15は、外部端子T8から反転入力端(−)に印加される入力監視電圧Vhvと、非反転入力端(+)に印加される所定の基準電圧Vref1(<Vdd2)とを比較して、入力監視信号S1を生成し、これをロジック部12に送出する。入力監視信号S1は、入力監視電圧Vhvが基準電圧Vref1よりも高いときにローレベルとなり、入力監視電圧Vhvが基準電圧Vref1よりも低いときにハイレベルとなる。入力監視信号S1は、位相角検出などに用いられる。ただし、
図1の第1構成例や
図3の第3構成例では、外部端子T8が抵抗R6を介して第2電源電圧Vdd2の印加端にプルアップされているので、入力監視信号S1は常にローレベルとなっている。なお、入力監視電圧Vhvは、コンパレータ15だけでなくADコンバータ19にも入力されている。
【0057】
コンパレータ16は、外部端子T3から反転入力端(−)に印加される出力監視電圧Vdet2と、非反転入力端(+)に印加される所定の基準電圧Vref2とを比較して、入力監視信号S1を生成し、これをロジック部12に送出する。出力監視信号S2は、出力監視電圧Vdet2が基準電圧Vref2よりも高いときにローレベルとなり、出力監視電圧Vdet2が基準電圧Vref2よりも低いときにハイレベルとなる。出力監視信号S2は、ゼロクロス検出、過電圧検出、LEDオープン検出、及び、LEDショート検出などに用いられる。
【0058】
コンパレータ17は、外部端子T5から非反転入力端(+)に印加される電流検出電圧Vdet1と、DAコンバータ18から反転入力端(−)に印加される電流ピーク設定電圧Vthとを比較して、電流ピーク検出信号IPEAKDETを生成し、これをロジック部12に送出する。電流検出電圧Vdet1は、トランジスタN1に流れるセンス電流Isを抵抗R4で電流/電圧変換することにより生成される。従って、電流検出電圧Vdet1の電圧値(=Is×R4)は、センス電流Isの電流値に応じて変化する。電流ピーク検出信号IPEAKDETは、電流検出電圧Vdet1が電流ピーク設定電圧Vthよりも高いときにハイレベルとなり、電流検出電圧Vdet1が電流ピーク設定電圧Vthよりも低いときにローレベルとなる。電流ピーク検出信号IPEAKDETは、トランジスタN1のオフタイミング検出などに用いられる。
【0059】
DAコンバータ18は、ロジック部12から入力されるデジタルの電流ピーク設定信号IPEAKSETをアナログの電流ピーク設定電圧Vthに変換し、これをコンパレータ17の非反転入力端(+)に出力する。
【0060】
ADコンバータ19は、外部端子T5から入力されるアナログの電流検出電圧Vdet1をデジタルの電流検出信号ISENSEに変換し、これをロジック部12に出力する。また、ADコンバータ19には、電流検出電圧Vdet1だけでなく、入力監視電圧Vhvや周波数設定電圧Voscなどが並列に入力されており、ADコンバータ19は、タイミングシェアリングを行いながら、複数系統の入力信号を順次AD変換する。
【0061】
上記構成から成る半導体装置10において、ロジック部12には、発光ダイオード駆動装置1における絶縁型/非絶縁型の別を設定するためのISOパッドと、力率改善制御の有効/無効を設定するためのPFCパッドが設けられており、各パッドの印加電圧(演算モード設定信号の一形態)に応じた演算式を用いて、電流ピーク設定信号IPEAKSETの信号値を算出する。
【0062】
より具体的に述べると、ISOパッドの印加電圧がローレベルであるときには、非絶縁型(Buck型)の発光ダイオード駆動装置1に適合した演算式を用いて、電流ピーク設定信号IPEAKSETの信号値が算出される。一方、ISOパッドの印加電圧がハイレベルであるときには、絶縁型(Fly−back型)の発光ダイオード駆動装置1に適合した演算式を用いて、電流ピーク設定信号IPEAKSETの信号値が算出される。
【0063】
また、PFCパッドの印加電圧がローレベルであるときには、力率改善制御なしの発光ダイオード駆動装置1に適合した演算式を用いて、電流ピーク設定信号IPEAKSETの信号値が算出される。一方、PFCパッドの印加電圧がハイレベルであるときには、力率改善制御ありの発光ダイオード駆動装置1に適合した演算式を用いて、電流ピーク設定信号IPEAKSETの信号値が算出される。
【0064】
上記を踏まえて、第1構成例(非絶縁型(Buck型)、力率改善制御なし)では、ISOパッドとPFCパッドの印加電圧がいずれもローレベルとされている、また、第2構成例(非絶縁型(Buck型)、力率改善制御あり)では、ISOパッドの印加電圧がローレベルとされており、PFCパッドの印加電圧がハイレベルとされている。また、第3構成例(絶縁型(Fly−back型)、力率改善制御なし)では、ISOパッドの印加電圧がハイレベルとされており、PFCパッドの印加電圧がローレベルとされている。また、第4構成例(絶縁型(Fly−back型)、力率改善制御あり)では、ISOパッドとPFCパッドの印加電圧がいずれもハイレベルとされている。
【0065】
<平均電流制御>
図5〜
図8は、それぞれ、第1〜第4構成例における平均電流制御を説明するための図である。各図左側には、それぞれ、交流電圧Vac、交流電流Iac、及び、出力電流ILEDの挙動が描写されている。一方、各図右側には、それぞれ、トランジスタN1のスイッチング周期Tにおける電流検出電圧Vdet1の挙動が描写されている。なお、各図右側のハッチング領域は、発光ダイオード2の出力電流ILEDとして消費されるエネルギー量を示している。また、以下では、特に断らない限り、トランジスタN1のオフ期間に出力電流ILEDがゼロ値まで低下することのない電流連続モード(CCM[continuous current mode])であることを前提として説明を行う。
【0066】
第1〜第4構成例のいずれにおいても、トランジスタN1は、周波数設定電圧Voscによって決定された所定のスイッチング周期T(=1/Fsw)毎にオンされる。トランジスタN1のオン期間Tonには、センス電流Isの増大に伴って電流検出電圧Vdet1が上昇する。そして、電流検出電圧Vdet1が電流ピーク設定電圧Vthを上回った時点でトランジスタN1がオフされる。電流ピーク設定電圧Vthの電圧値は、ロジック部12で生成された電流ピーク設定信号IPEAKSETに応じて決定される。
【0067】
ここで、電流検出信号ISENSEの入力を受けて電流ピーク設定信号IPEAKSETを生成するロジック部12は、電流ピーク設定信号IPEAKSETの信号値(電流ピーク設定電圧Vthの電圧値に相当)をY1とし、出力電流ILEDの平均電流設定値をAVEとし、平均電流設定値AVEの調整係数をαとし、トランジスタN1のオン期間をTonし、トランジスタN1のオン期間Tonにおける電流検出信号ISENSE(延いては電流検出電圧Vdet1)の変化率をΔとしたときに、次の(1)式で表される演算式を用いて電流ピーク設定信号IPEAKSETの信号値Y1を算出する演算回路122(
図15を参照、詳細は後述)を含む。
【0068】
Y1=AVE×α+Δ×Ton/2…(1)
【0069】
なお、上記の変化率Δは、トランジスタN1のオン期間Tonにおいて、時刻t0で検出された電流検出信号ISENSEの信号値(電流検出電圧Vdet1の電圧値に相当)をy0とし、時刻t1で検出された電流検出信号ISENSEの信号値をy1としたときに、次の(2)式で表される演算式を用いて算出することができる。
【0070】
Δ=(y1−y0)/(t1−t0)…(2)
【0071】
上記の(1)式を用いた演算は、トランジスタN1のオン期間Tonにおいて、電流検出信号ISENSEの平均信号値をAVE×αに一致させつつ、電流検出信号ISENSEの変化率Δからオン期間Tonの終了時点における電流検出信号ISENSEの外挿値(ピーク値)を算出し、これを電流ピーク設定信号IPEAKSETの信号値Y1として設定することに等しいと言える。
【0072】
ここで、演算回路122は、ロジック部12に入力される演算モード設定信号(例えばISOパッドとPFCパッドの各印加電圧)に応じて、平均電流設定値AVEに乗算される調整係数αを決定することにより、第1〜第4構成例の各々に適合した演算式を用いて電流ピーク設定信号IPEAKSETの信号値Y1を算出する。以下では、
図5〜
図8を順次参照しながら、第1〜第4構成例の各々について、個別具体的な説明を行う。
【0073】
図5で示した第1構成例(非絶縁型(Buck型)、力率改善制御なし)の平均電流制御において、ロジック部12は、次の(1a)式で表される演算式を用いて、電流ピーク設定信号IPEAKSETの信号値Y1を算出する。
【0074】
Y1=AVE+Δ×Ton/2…(1a)
【0075】
すなわち、第1構成例では、平均電流設定値AVEの調整係数αとして、1が乗算される。第1構成例では、上記の(1a)式を用いることにより、非絶縁型の発光ダイオード駆動装置1において、出力電流ILEDを平均電流設定値AVEに応じた一定値に維持することができる。ただし、第1構成例では、力率改善制御が無効とされており、交流電圧電圧Vacと交流電圧Iacは必ずしも同相で変化しないので、発光ダイオード駆動装置1の力率は低くなる。
【0076】
図6で示した第2構成例(非絶縁型(Buck型)、力率改善制御あり)の平均電流制御において、ロジック部12は、次の(1b)式で表される演算式を用いて、電流ピーク設定信号IPEAKSETの信号値Y1を算出する。
【0077】
Y1=AVE×PF+Δ×Ton/2…(1b)
【0078】
すなわち、第2構成例では、平均電流設定値AVEの調整係数αとして、力率改善係数PFが乗算される。力率改善係数PFは、入力電圧Vin(延いては交流電圧Vac)と同一の挙動で変化する可変値である。第2構成例では、上記の(1b)式を用いることにより、トランジスタN1のスイッチング周期T毎に、入力電圧Vinの変化に追従して出力電流ILEDの平均電流値が変化する。従って、交流電圧電圧Vacと交流電圧Iacを同相で変化させることができるので、非絶縁型の発光ダイオード駆動装置1において、その力率を改善することが可能となる。ただし、上記の力率改善制御に伴い、出力電流ILEDには、交流周波数の2倍に相当する発振周波数(100Hz/120Hz)のリップル成分が生じる。従って、力率改善制御を有効とする場合には、出力電圧Voutを平滑化するための電解コンデンサ(
図2のコンデンサC4)を設けることが望ましい。
【0079】
図7で示した第3構成例(絶縁型(Fly−back型)、力率改善制御なし)の平均電流制御において、ロジック部12は、次の(1c)式で表される演算式を用いて、電流ピーク設定信号IPEAKSETの信号値Y1を算出する。
【0080】
Y1=AVE×{T/(T−Ton)}+Δ×Ton/2…(1c)
【0081】
発光ダイオード駆動装置1が絶縁型(Fly−back型)である場合には、トランジスタN1のオフ期間Toff(=T−Ton)にのみ、出力電流ILEDが流れる(
図7中のハッチング領域を参照)。この事実に鑑みて、第3構成例では、平均電流設定値AVEの調整係数αとして、スイッチング周期Tとオフ期間Toff(=T−Ton)との比{T/(T−Ton)}が乗算される。第3構成例では、上記の(1c)式を用いることにより、絶縁型の発光ダイオード駆動装置1において、出力電流ILEDを平均電流設定値AVEに応じた一定値に維持することができる。ただし、第3構成例では、第1構成例と同様、力率改善制御が無効とされており、交流電圧電圧Vacと交流電圧Iacは必ずしも同相で変化しないので、発光ダイオード駆動装置1の力率は低くなる。
【0082】
図8で示した第4構成例(絶縁型(Fly−back型)、力率改善制御あり)の平均電流制御において、ロジック部12は、次の(1d)式で表される演算式を用いて、電流ピーク設定信号IPEAKSETの信号値Y1を算出する。
【0083】
Y1=AVE×{T/(T−Ton)}×PF+Δ×Ton/2…(1d)
【0084】
第4構成例では、平均電流設定値AVEの調整係数αとして、{T/(T−Ton)}×PFが乗算される。第4構成例では、上記の(1d)式を用いることにより、絶縁型の発光ダイオード駆動装置1において、その力率を改善することが可能となる。ただし、第4構成例では、第2構成例と同様、出力電流ILEDにリップル成分が生じるので、出力電圧Voutを平滑化するための電解コンデンサ(
図4のコンデンサC6)を設けることが望ましい。
【0085】
第1及び第2構成例(非絶縁型)と第3及び第4構成例(絶縁型)とを比較すれば分かるように、演算回路122は、絶縁型/非絶縁型の別に応じて、調整係数αにスイッチング周期Tとオフ期間Toff(=T−Ton)との比{T/(T−Ton)}を含むか否かを決定する。
【0086】
また、第1及び第3構成例(力率改善制御なし)と第2及び第4構成例(力率改善制御あり)とを比較すれば分かるように、演算回路122は、力率改善制御の有効/無効に応じて、調整係数αに力率改善係数PFを含むか否かを決定する。
【0087】
すなわち、ロジック部12を第4構成例(絶縁型、力率改善制御あり)に対応した回路として設計しておけば、ロジック部12に入力される演算モード設定信号(例えばISOパッドとPFCパッドの各印加電圧)に応じて、平均電流設定値AVEに乗算される調整係数αを決定することにより、第1〜第4構成例の全てに対応することが可能となる。
【0088】
図9は、出力電流ILEDの入力電圧特性を示す図(実線:本発明に係る平均電流制御方式、破線:従来のピーク電流制御方式)である。
図9で示したように、本発明に係る平均電流制御方式であれば、従来のピーク電流制御方式と比べて、出力電流ILEDの入力電圧特性を向上させることができる。従って、入力電圧Vinが変動しても出力電流ILEDを一定値に維持することが可能となるので、発光ダイオード2の輝度揺らぎやフリッカを抑制することが可能となる。
【0089】
図10は、出力電流ILEDの出力電圧特性を示す図(実線:本発明に係る平均電流制御方式、破線:従来のピーク電流制御方式)である。
図10で示したように、本発明に係る平均電流制御方式であれば、従来のピーク電流制御方式と比べて、出力電流ILEDの出力電圧特性を向上させることができる。従って、
図11で示したように、発光ダイオード2の直列段数が異なる場合であっても出力電流ILEDを一定値に維持することができるので、LED照明機器Xのアプリケーション設計が容易となる。
【0090】
図12は、出力電流ILEDの製造ばらつきを示すヒストグラムである。ロジック部12を用いたデジタル信号処理によって出力電流ILEDの平均電流制御を行う構成であれば、出力電流ILEDの製造ばらつきを小さく抑えることが可能となる。
【0091】
また、本発明に係る平均電流制御方式によれば、従来のピーク電流制御方式と異なり、コイルL1のインダクタンス値に依存せず、出力電流ILEDを一定値に維持することも可能となる。
【0092】
さらに、本発明に係る平均電流制御方式によれば、従来のフィードバック制御方式と異なり、半導体装置10に外付けされるディスクリート部品を抵抗R4(例えば1.5Ω)のみに削減することができるので、回路規模の縮小を実現することが可能となる。特に、LED照明機器Xが絶縁型でも二次側から一次側への信号伝達は不要であることから、寿命の短いフォトカプラを用いる必要がなくなる。従って、LED照明機器Xのメンテナンス性向上やコストダウンを実現することが可能となる。
【0093】
<力率改善(PFC[power factor correction])制御>
図13は、力率改善制御を説明するための図であり、上から順に、入力電圧Vin(入力監視電圧Vhv)、力率改善係数PF、及び、出力電流ILED(平滑なし/あり)が描写されている。
【0094】
発光ダイオード駆動装置1では、ロジック部12による力率改善制御を有効とすることにより、出力電流ILEDを入力電圧Vinと同相で変化させて、発光ダイオード駆動装置1の力率を改善することができる。ただし、入力電圧Vinの変動に追従して単純に力率改善係数PFを変化させるだけでは、
図13中の破線で示したように、入力電圧Vinが変動したときに出力電流ILEDまで変動してしまい、リップル成分が大きくなる。
【0095】
そこで、力率改善係数PFは、入力電圧Vinの変動に依ることなく、常にその平均値が1となるように可変制御することが望ましい。このような構成とすることにより、
図13中の実線で示したように、入力電圧Vinが変動しても出力電流ILEDを一定値に維持することが可能となる。
【0096】
なお、上記の力率改善係数PFは、次の(3)式で表される演算式を用いて算出することができる。
【0097】
PF=(AVE
2−Vin
2)/Vin
2_ave…(3)
【0098】
上記(3)式において、Vin
2_aveは、入力電圧Vinの2乗平均値であり、
図14で示したように、所定のサンプリング期間(例えば入力電圧Vinの10パルス分)に複数回(例えば1024回)サンプリングされた入力電圧Vin(実際には、入力監視電圧VhvをAD変換して得られるデジタル値)に基づいて算出することが望ましい。
【0099】
<ロジック部>
図15は、ロジック部12とADコンバータ19の一構成例を示すブロック図である。ロジック部12は、スイッチ制御回路121と、演算回路122と、ADC/DAC制御回路123と、を含む。一方、ADコンバータ19は、サンプル/ホールド回路191及び192と、AD変換回路193と、入力選択回路194と、を含む。
【0100】
スイッチ制御回路121は、電流ピーク検出信号IPEAKDETの入力を受けてスイッチ制御信号SWONを出力する回路ブロックであり、タイミングコントローラ121aと、NORゲート121bと、Dフリップフロップ121cと、を含む。
【0101】
タイミングコントローラ121aは、マスタクロック信号MCLKに同期して、セットクロック信号SETCLKやデューティロック信号DUTYLOCKを生成する。
【0102】
NORゲート121bは、電流ピーク検出信号IPEAKDETとデューティロック信号DUTYLOCKとの否定論理和演算を行うことにより、スイッチリセット信号SWRSTを生成する。従って、スイッチリセット信号SWRSTは、電流ピーク検出信号IPEAKDETとデューティロック信号DUTYLOCKの少なくとも一方がハイレベルであるときにローレベルとなり、電流ピーク検出信号IPEAKDETとデューティロック信号DUTYLOCKの両方がローレベルであるときにハイレベルとなる。
【0103】
Dフリップフロップ121cは、セットクロック信号SETCLKの立上りエッジをトリガとしてスイッチ制御信号SWONをハイレベルにセットし、スイッチリセット信号SWRSTの立下りエッジをトリガとしてスイッチ制御信号SWONをローレベルにリセットする。Dフリップフロップ121cは、セット優先型であり、セットクロック信号SETCLKのハイレベル期間には、スイッチリセット信号SWRSTによるスイッチ制御信号SWONのリセット動作を行わない。
【0104】
演算回路122は、乗算器122aと除算器122bを1つずつ含み、トランジスタN1のスイッチング周期T毎に、乗算器122aと除算器122bのタイミングシェアリングを行いながら、電流ピーク設定信号IPEAKSETの信号値Y1を算出する。なお、演算回路122には、信号値Y1の算出処理に必要な情報として、電流検出信号ISENSEのほかに、スイッチング周期Tやオン期間Tonに関する情報が入力されている。
【0105】
ADC/DAC制御回路123は、ADコンバータ19やDAコンバータ18との間でデジタル信号の入出力を行う。例えば、ADC/DAC制御回路123は、ADコンバータ19から入力される電流検出信号ISENSEを演算回路122に出力する一方、演算回路122から入力される電流ピーク設定信号IPEAKSETをDAコンバータ18に出力する。また、ADC/DAC制御回路123は、ADコンバータ19に対して各種の動作制御信号(サンプリング制御信号SMP1及びSMP2、並びに、入力選択信号ADCSEL)を出力する。
【0106】
サンプル/ホールド回路191及び192は、それぞれ、サンプリング制御信号SMP1及びSMP2に応じて、入力選択回路194で選択された電圧信号(Vdet1、Vhv、Voscなど)を異なるタイミングでサンプル/ホールドする。
【0107】
AD変換回路193は、サンプル/ホールド回路191及び192の各出力値を順次AD変換してロジック部12に出力する。
【0108】
入力選択回路194は、入力選択信号ADCSELに応じて、複数系統の電圧信号(Vdet1、Vhv、Voscなど)から一つを選択して出力する。
【0109】
図16は、ロジック部12による平均電流制御を説明するためのタイミングチャートであり、上から順に、マスタクロック信号MCLK、セットクロック信号SETCLK、スイッチリセット信号SWRST、電流ピーク検出信号IPEAKDET、デューティロック信号DUTYLOCK、スイッチ制御信号SWON、サンプリング制御信号SMP1及びSMP2、ADコンバータ19の動作状態、乗算器122aの動作状態、除算器122bの動作状態、電流ピーク設定信号IPEAKSET、ゲート電圧Vg、電流検出電圧Vdet1(センス電流Isに相当)、及び、動作ステートSWSTATE(SAMPLE/ADC/CALC)が描写されている。
【0110】
なお、
図16では、先出の(1d)式で表される演算式を用いて、電流ピーク設定信号IPEAKSETの信号値Y1を算出する構成を例に挙げて説明を行う。
【0111】
セットクロック信号SETCLKがハイレベルに立ち上がると、スイッチ制御信号SWONがハイレベルにセットされて、ゲート電圧Vgがハイレベルとなる。その結果、トランジスタN1がオンとなり、電流検出電圧Vdet1が上昇し始める。トランジスタN1がオンするとき、電流検出電圧Vdet1にはスイッチングノイズが重畳する。そこで、上記のスイッチングノイズを検出しないように、セットクロック信号SETCLKは、所定のマスク期間(例えば400ns)に亘ってハイレベルに維持することが望ましい。
【0112】
電流検出電圧Vdet1が電流ピーク検出電圧Vthを上回り、電流ピーク検出信号IPEAKDETがハイレベルに立ち上がると、スイッチ制御信号SWONがローレベルにリセットされて、ゲート電圧Vgがローレベルとなる。その結果、トランジスタN1がオフとなり、電流検出電圧Vdet1がゼロ値まで低下する。
【0113】
なお、デューティロック信号DUTYLOCKは、例えば、スイッチング周期Tの75%に相当するタイミングでハイレベルに立ち上がるように設定されている。従って、トランジスタN1のオン期間Tonは、最大でもスイッチング周期Tの75%に制限される。
【0114】
トランジスタN1のオン期間Tonには、サンプリング制御信号SMP1及びSMP2が順次ハイレベルに立ち上がり、サンプル/ホールド回路191及び192による電流検出電圧Vdet1のサンプル/ホールド処理(y0及びy1の取得処理)が実施される。なお、サンプル/ホールド処理を行うタイミングとしては、例えば、オン期間Tonの1/4に相当する時点と3/4に相当する時点に設定することが望ましい。
【0115】
また、演算回路122は、トランジスタN1のスイッチング周期T毎に、乗算器122a及び除算器122bのタイミングシェアリングを行いながら、電流ピーク設定信号IPEAKSETを生成(更新)する。例えば、
図16の動作例では、スイッチング周期T毎に3つの動作ステートSWSTATE(SAMPLE/ADC/CALC)がループされており、トランジスタN1を3回スイッチングする毎に電流ピーク設定信号IPEAKSETが1回更新されている。
【0116】
具体的に述べると、サンプルステート(SAMPLE)では、乗算器122aを用いて平均電流設定値AVEと力率改善係数PFとが乗算される。
【0117】
次に、AD変換ステート(ADC)では、乗算器122aを用いて先の乗算結果(=AVE×PF)とスイッチング周期Tとが乗算された後、さらに除算器122bを用いて先の乗算結果(=AVE×PF×T)がオフ期間(T−Ton)で除算される。この時点で(1d)式の右辺第1項(=AVE×PF×{T/(T−Ton})が確定する。
【0118】
次に、演算ステート(CALC)では、乗算器122aを用いて電流検出電圧Vdet1の上昇値(y1−y0)とオン期間Tonとが乗算された後、さらに、除算器122bを用いて先の乗算結果(=(y1−y0)×Ton)が電流検出電圧Vdet1のサンプリング間隔(t1−t0)で除算される。この時点で(1d)式の右辺第2項(=Δ×Ton/2)が確定する。なお、Δ×Tonを2で除算する演算処理については、除算器122bを用いるまでもなく、除算器122bの最終出力値(=Δ×Ton)のビット列を一桁右に算術シフトさせれば足りる。
【0119】
そして、次のサンプルステート(SAMPLE)では、先に述べた乗算処理と共に、電流ピーク設定信号IPEAKSETのアップロード処理(更新処理)が行われる。なお、トランジスタN1を3回スイッチングする毎に電流ピーク設定信号IPEAKSETを1回更新する場合、DAコンバータ18のセトリング時間は、電流ピーク設定信号IPEAKSETがアップロードされてからセットクロック信号SETCLKがハイレベルに立ち上がるまでの猶予期間(例えば500ns)よりも短くなければならない。
【0120】
上記のように、乗算器122a及び除算器122bのタイミングシェアリングを行う構成であれば、演算回路122の回路規模を縮小することが可能となる。なお、トランジスタN1のスイッチング周期Tは、入力電圧Vinのパルス周期に比べて十分に短いので、複数回(例えば3回)のスイッチング毎に電流ピーク設定信号IPEAKSETを1回更新する構成を採用しても、出力電流ILEDの平均電流制御に支障を生じることはない。
【0121】
次に、ロジック部12における演算モード設定信号(ISOパッド及びPFCパッドの端子電圧)の入力形式について説明する。
図17は、ロジック部12における端子処理の一例を示す図である。
【0122】
第1の入力形式としては、先出の
図1〜
図4で示したように、演算モード設定信号は、ロジック部12の端子処理によって、半導体装置10のパッケージ内部で設定される構成が考えられる。このような構成とすることにより、半導体装置10の外部端子数を不要に増大せずに済む。
【0123】
なお、第1の入力形式を採用する場合には、
図17の上段で示したように、電源パッドと接地パッドとの間にISOパッドとPFCパッドを配置した上で、各パッドに接続される配線層WL1〜WL4を共通に形成しておき、電源パッド及び接地パッドに各々接続される配線層WL1及びWL2と、ISOパッド及びPFCパッドに各々接続される配線層WL3及びWL4との間を配線層WLa及びWLbで適宜接続する構成にするとよい。このような構成とすることにより、ロジック部12の配線パターニング工程を変更するだけで、ロジック部12の端子処理を完了することができるので、工程数を増大せずに済む。
【0124】
また、第2の入力方式としては、
図17の中段で示したように、演算モード設定信号の外部入力を受け付けるための外部端子を設ける構成が考えられる。このような構成とすることにより、半導体装置10のパッケージ後においても、演算モード設定信号を任意に入力することが可能となる。
【0125】
また、第3の入力方式としては、
図17の下段で示したように、半導体装置10の構成要素として、外部との信号授受を行うインタフェイス部(I
2Cインタフェイス部など)20と、インタフェイス部20を介して外部入力される演算モード設定信号を格納するメモリ部(レジスタなど)21とを追加し、インタフェイス部20を介して演算モード設定信号を受け付ける構成が考えられる。このような構成とすることにより、第2の入力方式と同様、半導体装置10のパッケージ後においても、演算モード設定信号を任意に入力することが可能となる。特に、演算モード設定信号以外にも、ロジック部12が外部と種々の信号授受を行う必要がある場合には、第3の入力方式が好適であると言える。
【0126】
<調光モード>
図18は、ロジック部12の一変形例(調光機能を追加した構成)を示すブロック図である。本変形例のロジック部12は、PWM調光信号、リニア調光信号、及び、位相調光信号の入力を受け付け、いずれかの調光信号に応じて発光ダイオード2のバースト調光またはリニア調光を行う調光制御回路124を含む。
【0127】
なお、PWM調光では、PWM調光信号のデューティを検出して発光ダイオード2の輝度が設定される。リニア調光では、リニア調光信号の信号値(アナログ電圧値)を検出して発光ダイオード2の輝度が設定される。位相調光では、位相調光信号の信号値(入力電圧Vinの位相角)を検出して発光ダイオード2の輝度が設定される。
【0128】
ここで、調光制御回路124を追加したことに伴い、演算回路122は、調光制御の有効/無効に応じて、平均電流設定値AVEの調整係数αに調光係数IDACを含むか否かを決定する構成とされている。
【0129】
例えば、先に説明した第1〜第4構成例において、それぞれロジック部12に調光制御回路124が付加された場合を考える。この場合、演算回路122は、調光制御回路124による調光制御が無効であれば、先出の(1a)〜(1d)式で表される演算式を用いて、電流ピーク設定信号IPEAKSETの信号値Y1を算出する。一方、演算回路122は、調光制御が有効であれば、次の(1e)〜(1h)式で表される演算式を用いて、電流ピーク設定信号IPEAKSETの信号値Y1を算出する。
【0130】
Y1=AVE×IDAC+Δ×Ton/2…(1e)
Y1=AVE×PF×IDAC+Δ×Ton/2…(1f)
Y1=AVE×{T/(T−Ton)}×IDAC+Δ×Ton/2…(1g)
Y1=AVE×{T/(T−Ton)}×PF×IDAC+Δ×Ton/2…(1h)
【0131】
なお、調光制御回路124は、バースト調光時には、上記の調光係数IDACを1に設定した上で、入力される調光信号に応じたオンデューティで発光ダイオード2の点消灯制御を行う。一方、調光制御回路124は、リニア調光時には、上記の調光係数IDACを調光信号に応じた値に設定した上で、発光ダイオード2をフルオンさせる。
【0132】
このような構成とすることにより、これまでに説明した平均電流制御方式の特長を全て享受しつつ、発光ダイオード2の調光制御を実現することが可能となる。
【0133】
<疑似共振モード>
次に、上記で説明した電流連続モード(CCM)と、疑似共振モード(QRM[quasi resonant mode])との切替機能について説明する。
【0134】
図19は、CCM(上段)とQRM(下段)との違いを説明するための図であり、上段及び下段には、それぞれ、ゲート電圧Vg、出力監視電圧Vdet2、及び、出力電流ILEDが描写されている。
【0135】
CCMでは、トランジスタN1が一定のスイッチング周期Tでオンとされており、トランジスタN1のオフ期間に出力電流ILEDがゼロ値まで低下することはない。これに対して、QRMでは、トランジスタN1のスイッチング周期Tが固定されておらず、出力監視電圧Vdet2のゼロクロス点でトランジスタN1がオンされる。つまり、QRMでは、コイルL1に蓄えられたエネルギーが全て消費されたときにトランジスタN1がオンされるので、CCMと比べてエネルギーロスが少ないという利点がある。
【0136】
そこで、ロジック部12におけるCCM/QRMの切替機能を実現すべく、演算回路122は、CCM/QRMの別に応じて、先の(1)式で表される演算式の右辺第2項(=Δ×Ton/2)を有効とするか否かを決定する。
【0137】
例えば、先に説明した第1〜第4構成例において、それぞれ、ロジック部12にCCM/QRMの切替機能が付加された場合を考える。この場合、演算回路122は、CCMが選択されている場合、先出の(1a)〜(1d)式で表される演算式を用いて、電流ピーク設定信号IPEAKSETの信号値Y1を算出する。一方、演算回路122は、QRMが選択されている場合、次の(1w)〜(1z)式で表される演算式を用いて、電流ピーク設定信号IPEAKSETの信号値Y1を算出する。
【0138】
Y1=2×AVE…(1w)
Y1=2×AVE×PF…(1x)
Y1=2×AVE×{T/(T−Ton)}…(1y)
Y1=2×AVE×{T/(T−Ton)}×PF…(1z)
【0139】
このような構成とすることにより、必要に応じてQRMによる出力電流制御を行うことが可能となる。なお、先述の調光制御機能をさらに付加する場合には、平均電流設定値AVEに対してさらに調光係数IDACを乗算するように、上記の(1w)〜(1z)式を書き換えればよい。
【0140】
ところで、トランジスタN1のスイッチング周波数Fswは、
図20で示したように、外部端子T7に接続される抵抗R5の抵抗値によって調整することができる。ただし、このスイッチング周波数設定機能は、CCMによる出力電流制御を行う場合に必要となる機能であり、QRMによる出力電流制御を行う場合には、スイッチング周波数Fswがゼロ値に設定される。
【0141】
そこで、ロジック部12にCCM/QRMの切替機能を付加する場合、演算回路122は、トランジスタN1のスイッチング周波数Fswがゼロ値に設定されているか否かに応じて、CCM/QRMの別を認識する構成にするとよい。なお、トランジスタN1のスイッチング周波数Fswをゼロ値に設定するためには、例えば、抵抗R5の抵抗値設定範囲(RL〜RH)を外れるように、外部端子T7を接地電圧GNDの印加端にショートすればよい。このような構成とすることにより、外部端子T7に周波数設定端子として機能だけでなくCCM/QRM切替端子としての機能を持たせることができるので、外部端子を不要に増大させずに済む。
【0142】
<LED照明機器の具体的な適用例>
図21A〜
図21Cは、それぞれ、LED照明機器Xの第1〜第3適用例を示す外観図である。
図21Aには、電球形LEDランプX1、環形LEDランプX2、及び、直管形LEDランプX3が示されている。また、
図21Bには、LEDシーリングライトX4が示されており、
図21Cには、LEDダウンライトX5が示されている。これらの図示はいずれも例示であり、LED照明機器Xは、多種多様な形態で用いることが可能である。
【0143】
<その他の変形例>
なお、上記実施形態では、発光ダイオードに流れる出力電流をスイッチング制御する発光ダイオード駆動装置を例に挙げて説明を行ったが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、その他の負荷(例えば有機EL[electro-luminescence]素子)に流れる出力電流をスイッチング制御する負荷駆動装置にも広く適用することが可能である。
【0144】
また、本発明は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。