(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
支持体上に、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、炭酸マグネシウム、非晶質合成シリカ、アルミナ、アルミナ水和物から選ばれる微粒子と樹脂バインダーを含有する多孔質層と、該多孔質層の上にイオン結合により分子内にハロゲンを有する化合物、有機微粒子、水溶性セルロース類、およびフッ素系界面活性剤を含有し、有機微粒子と水溶性セルロースの比率(有機微粒子の質量:水溶性セルロースの質量)が0.94:1〜5:1である層を有する事を特徴とする導電性パターン形成用基材。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明における導電性パターン形成用基材とは、金属超微粒子を含有するインクを印刷や塗布等の各種手法を用いてパターン化し、導電性パターンを形成するために用いられる基材である。
【0016】
本発明における導電性パターン形成用基材は、支持体の上に微粒子と樹脂バインダーを含有する多孔質層と、さらに該多孔質層の上にイオン結合により分子内にハロゲンを有する化合物、有機微粒子、水溶性セルロース類、およびフッ素系界面活性剤を含有する層を有する。これらの多孔質層と該多孔質層の上に設けられる層(以下上層と記載する。)は逐次塗布により設けられても良いし、同時重層塗布であっても良い。また、上記した多孔質層と上層は支持体の両面に設けられていても良い。
【0017】
多孔質層は金属超微粒子を含有するインクに含まれる分散媒を速やかに吸収する役目を担い、これにより印刷あるいは塗布された導電性パターンのにじみやハジキを抑制する。濡れ広がり易いインクの場合には、にじみによる配線間の誤接続(所謂ブリッジ)を抑制し、逆に濡れ広がりにくいインクの場合には、ハジキによる断線を抑制する事が出来る。
【0018】
本発明の導電性パターン形成用基材が有する支持体としては、例えば、ポリエチレン・ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル・塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリイミド、フッ素樹脂、フェノキシ樹脂、トリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリフェニレンスルファイド、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、セロファン、ナイロン、ポリスチレン系樹脂、ABS樹脂等の各種樹脂類よりなるフィルム、石英ガラス、無アルカリガラス、結晶化透明ガラス、パイレックス(登録商標)等の各種ガラス、紙、不織布、布、各種金属、各種セラミックス等を挙げる事が出来る。また用途に応じこれら支持体を適宜組み合わせる事が出来、例えば、銅箔とポリイミドを積層したフレキシブルプリント基板材料や、紙とポリオレフィン樹脂を積層したポリオレフィン樹脂被覆紙を用いる事が出来る。更には、これらの樹脂等を使用し、立体形状に成型された物体も支持体として使用可能である。
【0019】
これらの中でもコスト、汎用性の観点から、紙、ポリオレフィン樹脂被覆紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、トリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネートから選ばれる支持体が好ましい。
【0020】
上記した支持体の中でも、各種樹脂からなるフィルム、ガラス、ポリオレフィン樹脂被覆紙等の非吸液性支持体を用いる場合には、多孔質層を形成する塗液の塗布性と多孔質層の支持体に対する接着性を改善するために、支持体と多孔質層との間に、ゼラチンや各種ウレタン樹脂、ポリビニルアルコール等からなる公知の下塗層を設ける事が好ましい。また、例えばポリエチレンテレフタレートフィルムでは易接着処理品として下塗層をあらかじめ設けた状態で市販されており、これを用いても良い。また、コロナ処理あるいはプラズマ処理により支持体表面の濡れ性を改善することも好ましい。
【0021】
下塗層の固形分塗布量としては、0.5g/m
2以下であることが好ましく、より好ましくは0.3g/m
2以下、さらに好ましくは0.1g/m
2以下である。
【0022】
本発明の導電性パターン形成用基材が有する多孔質層は微粒子と樹脂バインダーとを含有するが、微粒子と微粒子に対し80質量%以下の樹脂バインダーを含有する層であることが、分散媒の吸収が速やかになる観点からより好ましい。用いられる微粒子としては、公知の微粒子を広く用いる事が出来る。例えば軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、非晶質合成シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、アルミナ水和物、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、水酸化マグネシウム等の無機微粒子、アクリルあるいはメタクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン/アクリル系樹脂、スチレン/ブタジエン系樹脂、スチレン/イソプレン系樹脂、メチルメタクリレート/ブチルメタクリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、シリコーン系樹脂、尿素樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂等の少なくとも1種以上の樹脂からなる真球状、あるいは不定型の無孔質、あるいは多孔質の有機微粒子等を挙げることが出来る。無論、上記した無機微粒子の1種以上と有機微粒子の1種以上を混合して用いることもできる。上記の中でも、吸収性の観点からは無機微粒子を用いる事が好ましく、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、炭酸マグネシウム、非晶質合成シリカ、アルミナ、アルミナ水和物がより好ましく、非晶質合成シリカ、アルミナ、アルミナ水和物が特に好ましい。また、導電性パターン形成用基材に可撓性が要求される場合には、アルミナ水和物を用いる事が特に好ましい。
【0023】
非晶質合成シリカは、製造法によって湿式法シリカ、気相法シリカ、及びその他に大別することができる。
【0024】
湿式法シリカは、更に製造方法によって沈降法シリカ、ゲル法シリカ、ゾル法シリカに分類される。沈降法シリカは珪酸ソーダと硫酸をアルカリ条件で反応させて製造され、粒子成長したシリカ粒子が凝集・沈降し、その後濾過、水洗、乾燥、粉砕・分級の工程を経て製品化される。沈降法シリカとしては、例えば東ソーシリカ(株)からニップシールとして、(株)トクヤマからトクシール、ファインシールとして、水澤化学工業(株)からミズカシルとして市販されている。ゲル法シリカは珪酸ソーダと硫酸を酸性条件下で反応させて製造する。熟成中に微小粒子は溶解し、他の一次粒子同士を結合するように再析出するため、明確な一次粒子は消失し、内部空隙構造を有する比較的硬い凝集粒子を形成する。例えば、東ソーシリカ(株)からニップゲルとして、グレースジャパン(株)からサイロイド、サイロジェットとして、水澤化学工業(株)からミズカシルとして市販されている。ゾル法シリカは、コロイダルシリカとも呼ばれ、珪酸ソーダの酸などによる複分解やイオン交換樹脂層を通して得られるシリカゾルを加熱熟成して得られ、例えば日産化学工業(株)からスノーテックスとして市販されている。ゾル法シリカは球状の粒子であり多孔質層を形成し難いため沈降法シリカあるいはゲル法シリカが好ましく、沈降法シリカがより好ましい。
【0025】
本発明に用いられる湿式法シリカ粒子としては、平均一次粒子径50nm以下、好ましくは3〜40nmであり、かつ平均凝集粒子径が1〜50μmである湿式法シリカ粒子が好ましい。
【0026】
平均凝集粒子径が5〜50μmである湿式法シリカ粒子を、平均二次粒子径500nm以下に分散する事がより好ましい。平均二次粒子径を500nm以下に分散する事により、形成される多孔質層中の細孔径が分散を行わない場合よりも微細となるため、金属超微粒子が細孔中に入り込み非導通状態となる事が少なくなり、得られる導電性が良好となる。分散された湿式法シリカの平均二次粒子径は、より好ましくは10〜300nm、導電性パターン形成用基材に透明性が要求される場合には、透明性の観点から更に好ましくは10〜200nmであることが好ましい。分散方法としては、水性媒体中に分散したシリカを機械的に粉砕する湿式分散法が好ましく使用され、これにはビーズミルなどのメディアミルを用いることが好ましい。ビーズミルは密閉されたベッセル内に充填されたビーズとの衝突により顔料粉砕を行うものであり、(株)シンマルエンタープライゼスよりダイノミルとして、浅田鉄工(株)よりグレンミルとして、アシザワ・ファインテック(株)よりスターミルとして市販されている。メディアミル等を用いて分散した後、更に高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等の圧力式分散機、超音波分散機、及び薄膜旋回型分散機等を用いて分散することが好ましい。
【0027】
なお、本発明でいう平均一次粒子径とは、微粒子の電子顕微鏡観察により一定面積内に存在する100個の一次粒子各々の投影面積に等しい円の直径を粒子径として平均粒子径を求めたものである。また平均二次粒子径とは、透過型電子顕微鏡による写真撮影で求めることが出来るが、簡易的にはレーザー散乱式の粒度分布計(例えば、(株)堀場製作所製、LA910)を用いて、個数メジアン径として測定することが出来る。また、平均凝集粒子径とは、粉体として供給される湿式シリカの平均粒子径を示し、例えばコールターカウンター法で求めることが出来る。
【0028】
気相法シリカは、湿式法に対して乾式法とも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって作られる。具体的には四塩化ケイ素を水素及び酸素と共に燃焼して作る方法が一般的に知られているが、四塩化ケイ素の代わりにメチルトリクロロシランやトリクロロシラン等のシラン類も、単独または四塩化ケイ素と混合した状態で使用することができる。気相法シリカは日本アエロジル(株)からアエロジル、(株)トクヤマからQSタイプとして市販されている。
【0029】
導電性パターン形成用基材に透明性が要求される場合には、本発明に用いられる気相法シリカの平均一次粒子径は40nm以下が好ましく、15nm以下がより好ましい。更に好ましくは平均一次粒子径が3〜15nmでかつBET法による比表面積が200m
2/g以上(好ましくは250〜500m
2/g)のものを用いることである。
【0030】
本発明でいうBET法とは、気相吸着法による粉体の表面積測定法の一つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、即ち比表面積を求める方法である。通常吸着気体としては、窒素ガスが多く用いられ吸着量を被吸着気体の圧、または容積の変化から測定する方法が最も多く用いられている。多分子吸着の等温線を表すのに最も著名なものは、Brunauer、Emmett、Tellerの式であってBET式と呼ばれ表面積決定に広く用いられている。BET式に基づいて吸着量を求め、吸着分子1個が表面で占める面積を掛けて表面積が得られる。
【0031】
気相法シリカを用いた場合においても、湿式法シリカと同様に、平均二次粒子径500nm以下に分散する事が好ましい。分散された気相法シリカの平均二次粒子径は、より好ましくは10〜300nm、更に好ましくは20〜200nmである。分散方法としては、通常のプロペラ撹拌、タービン型撹拌、ホモミキサー型撹拌等で気相法シリカと水を主体とする分散媒を予備混合し、次にボールミル、ビーズミル、サンドグラインダー等のメディアミル、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等の圧力式分散機、超音波分散機、及び薄膜旋回型分散機等を使用して分散を行うことが好ましい。
【0032】
平均二次粒子径500nm以下の湿式法シリカあるいは気相法シリカのスラリーを製造する際に、スラリーの高濃度化や分散安定性を向上させるため、公知の種々の方法を用いても良い。例えば、特開2002−144701号公報、特開2005−1117号公報に記載されているが如くアルカリ性化合物の存在下で分散する方法、カチオン性化合物の存在下で分散する方法、シランカップリング剤存在下で分散する方法等を挙げることが出来、カチオン性化合物の存在下で分散する方法がより好ましい。
【0033】
上記湿式法シリカあるいは気相法シリカの分散に使用するカチオン性化合物としては、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミン、ポリアリルアミン、アルキルアミン重合物、1〜3級アミノ基、4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好ましく用いられる。特に、カチオン性ポリマーとしてジアリルアミン誘導体が好ましく用いられる。分散性および分散液粘度の面で、これらのカチオンポリマーの分子量は、2,000〜10万程度が好ましく、特に2,000〜3万程度が好ましい。
【0034】
本発明に使用するアルミナとしては、酸化アルミニウムのγ型結晶であるγ−アルミナが好ましく、中でもδグループ結晶が好ましい。γ−アルミナは一次粒子を10nm程度まで小さくすることが可能であるが、通常は数千から数万nmの二次粒子結晶を超音波や高圧ホモジナイザー、対向衝突型ジェット粉砕機等で平均二次粒子径を500nm以下、好ましくは20〜300nm程度まで粉砕したものが使用できる。
【0035】
本発明のアルミナ水和物はAl
2O
3・nH
2O(n=1〜3)の構成式で表される。アルミナ水和物は、一般にアルミニウムイソプロポキシド等のアルミニウムアルコキシドの加水分解、アルミニウム塩のアルカリによる中和、アルミン酸塩の加水分解等の公知の製造方法により得られる。本発明に使用されるアルミナ水和物の平均二次粒子径は500nm以下、好ましくは20〜300nmである。
【0036】
本発明に用いられる上記のアルミナ、及びアルミナ水和物は、酢酸、乳酸、ぎ酸、硝酸等の公知の分散剤によって分散された分散液の形態から使用されることが好ましい。
【0037】
本発明において、多孔質層を構成する微粒子と共に用いられる樹脂バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、酸化澱粉、エーテル化澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体、カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、シリル変性ポリビニルアルコールなど、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体などの共役ジエン系共重合体ラテックス、あるいはこれらの各種重合体のカルボキシル基などの官能基含有単量体による官能基変性重合体ラテックス、メラミン樹脂、尿素樹脂などの熱硬化合成樹脂系などの水性接着剤、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂などの合成樹脂系接着剤等を挙げることが出来、これらを単独あるいは混合して用いることができる。この他、公知の天然、あるいは合成樹脂バインダーを単独であるいは混合して用いることは特に限定されない。
【0038】
これらの内、ポリビニルアルコールあるいはシラノール変性ポリビニルアルコールが好ましく、特に好ましいのは、ケン化度が80%以上の部分ケン化または完全ケン化したポリビニルアルコールあるいはシラノール変性ポリビニルアルコールである。平均重合度は200〜5000のものが好ましい。
【0039】
微粒子に対する樹脂バインダーの含有量は特に限定されないが、微粒子を用い多孔質層を形成するためには、樹脂バインダーの含有量は前述の通り、微粒子に対して80質量%以下とすることが好ましいが、更には3〜80質量%の範囲が好ましく、より好ましくは5〜60質量%の範囲であり、特に好ましくは10〜40質量%の範囲である。
【0040】
本発明は、多孔質層を構成する上記樹脂バインダーと共に必要に応じ硬膜剤を用いることもできる。硬膜剤の具体的な例としては、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドの如きアルデヒド系化合物、ジアセチル、クロルペンタンジオンの如きケトン化合物、ビス(2−クロロエチル)尿素、2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、米国特許第3,288,775号記載の如き反応性のハロゲンを有する化合物、米国特許第3,635,718号記載の如き反応性のオレフィンを持つ化合物、米国特許第2,732,316号記載の如きN−メチロール化合物、米国特許第3,103,437号記載の如きイソシアナート類、米国特許第3,017,280号、同2,983,611号記載の如きアジリジン化合物類、米国特許第3,100,704号記載の如きカルボジイミド系化合物類、米国特許第3,091,537号記載の如きエポキシ化合物、ジヒドロキシジオキサンの如きジオキサン誘導体、ホウ砂、ホウ酸、ホウ酸塩類の如き無機架橋剤等があり、これらを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。硬膜剤の使用量は特に限定されないが、樹脂バインダーに対して、50質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下であり、特に好ましくは30質量%以下である。
【0041】
樹脂バインダーとしてケン化度が80%以上の部分ケン化または完全ケン化したポリビニルアルコールあるいはシラノール変性ポリビニルアルコールを用いる場合には、ホウ砂、ホウ酸、ホウ酸塩類が好ましく、ホウ酸が特に好ましく、使用量はポリビニルアルコールに対し、40質量%以下が好ましく、より好ましくは30質量%以下であり、特に好ましくは20質量%以下である。
【0042】
多孔質層は2層以上から構成されていてもよく、この場合、それらの多孔質層の構成はお互いに同じであっても異なっていても良い。例えば湿式法シリカによる多孔質層の上に、アルミナ水和物による多孔質層が形成されていても良い。
【0043】
多孔質層の固形分塗布量は、微粒子の固形分量で1〜100g/m
2が好ましく、5〜50g/m
2がより好ましい。
【0044】
多孔質層は、微粒子と樹脂バインダー等を適当な溶媒に溶解または分散させて塗布液を調製し、該塗布液をスライドカーテン方式、スライドビード方式、スロットダイ方式、ダイレクトグラビアロール方式、リバースグラビアロール方式、スプレー方式、エアナイフ方式、ブレードコーティング方式、ロッドバーコーティング方式、スピンコート方式等による塗布、スクリーン印刷、インクジェット印刷、ディスペンサー印刷、オフセット印刷、反転オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷等によるパターンの形成等、公知の各種塗布あるいは印刷方法を利用して、支持体表面の全面、あるいは必要とされる部位への選択的な塗布を行い、形成することができる。また、塗布を行った後、鏡面ロールに圧接するキャスト処理を行い表面を平滑にする事や、カレンダー処理を行い表面を平滑にする事も出来る。また、支持体が立体である場合には、ディップ方式や曲面に対応したスクリーン印刷、タンポ印刷(パッド印刷とも言う)等を用いる事が出来る。
【0045】
本発明において上層が含有するイオン結合により分子内にハロゲンを有する化合物としては、ハロゲン化水素、無機塩類、無機高分子ハロゲン化物、有機高分子ハロゲン化物等を挙げることが出来る。ハロゲン化水素として、塩酸、臭化水素酸等を挙げることが出来る。無機塩類として、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、ジルコニウム塩、アルミニウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩等を挙げることが出来る。例えば、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化アンモニウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化カルシウム、臭化アンモニウム、沃化リチウム、沃化ナトリウム、沃化カリウム等を挙げる事が出来る。無機高分子ハロゲン化物としては、塩基性で高分子の多核縮合イオンを安定に含んでいるポリ水酸化アルミニウムを挙げることが出来、カウンターイオンとしてハロゲンを持つものを用いる。これは、多木化学(株)よりポリ塩化アルミニウム(PAC)として、(株)理研グリーンよりピュラケムWTの名で、また他のメーカーからも同様の目的を持って上市されており、各種グレードの物を容易に入手できる。有機高分子ハロゲン化物としては、カウンターイオンにハロゲンを持つ、カチオン性の高分子化合物を広く用いる事が出来る。なお組成、重合度は任意である。例えば、カチオン性ポリビニルアルコール、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−二酸化硫黄共重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−ジアリルアミン塩酸塩誘導体共重合物、ジアリルアミン塩酸塩−二酸化硫黄共重合物、ジアリルメチルアミン塩酸塩重合物、ポリアリルアミン塩酸塩等のジアリルアミン系重合物やアリルアミン系重合物の塩酸塩類、アンモニウム塩類、ポリアミン系重合物、アリル系重合物、アルキルアミン系重合物、ジメチルアミンエピクロルヒドリン重縮合物、ポリアミドエピクロルヒドリン重合物等を挙げることが出来る。例示したイオン結合により分子内にハロゲンを有する化合物は、1種または2種以上組み合わせて用いる事が出来る。特に好ましく用いられるイオン結合により分子内にハロゲンを有する化合物は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、ポリ塩化アルミニウムである。
【0046】
上層が含有するイオン結合により分子内にハロゲンを有する化合物は、多孔質層に含ませておくことも出来る。また、上層が含有するイオン結合により分子量内にハロゲンを有する化合物の含有量は、使用する金属微粒子を含有するインクの種類や粒径、導電性発現の速度、目標とする導電性等に応じて、適宜調整することが出来るが、例えば、印字部の面積内において印字されるインクに含まれる金属超微粒子のモル/m
2に対して、含有するハロゲンの量が0.001モル/m
2〜1モル/m
2であることが好ましく、より好ましくは0.01モル/m
2〜0.1モル/m
2の範囲である。
【0047】
上層が含有する有機微粒子としては、水によって分散状態にあるポリマー微粒子のことであり、各種ラテックスとして容易に入手出来る。材質としては、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、酢酸ビニル−アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、エチレン−塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル−アクリル等の多元樹脂、SBR、NBR、MBR、カルボキシル化SBR、カルボキシル化NBR、カルボキシル化MBR、ビニルピリジン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ウレタン樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸メチル樹脂、エポキシ樹脂等、従来公知のものから広く選ぶ事が出来る。ガラス転移点温度(Tg)が室温以上の有機超微粒子を用いる場合には、金属超微粒子を含むインクあるいはペーストを印刷あるいは塗布した後に、ガラス転移点温度(Tg)以上に加熱することが好ましい。また、有機微粒子の粒子径としては0.01μm〜1μmが好ましく、より好ましくは0.1〜0.3μmである。
【0048】
また、有機微粒子としてモノマー組成、粒子径、重合度の異なる複数の重合体が混合されて単一粒子内に存在する異相構造粒子を使用することもできる。
【0049】
異相構造微粒子としては、特にその構造は限定しない。異相構造粒子の構造例及び調整方法は「合成ラテックスの応用(杉村孝明・片岡靖男・鈴木聡一・笠原啓司編集(株)高分子刊行会発行(1993))」に記載されている。例として、コア−シェル構造、複合構造、局在構造、だるま状構造、ラズベリー状構造、多粒子複合構造、みずかき構造、IPN(相互貫入網目構造)などがあるが、本発明においてそれらの構造は特に限定はしない。
【0050】
使用する有機微粒子は1種類であっても良いし、2種以上混合して用いても良く、好ましい有機微粒子としては、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、酢酸ビニル−アクリル樹脂、エチレン−塩化ビニル樹脂の様にモノマー単位としてアクリル基やビニル基を有する樹脂、ウレタン結合を有するウレタン樹脂がより好ましい。
【0051】
上層が含有する水溶性セルロース類としては、水溶性セルロースの誘導体であって、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、アミノエチルセルロース等が挙げられるが、これらに限定させるものではない。
【0052】
上層が含有する有機微粒子と水溶性セルロースの全固形分塗布量としては0.01〜5g/m
2が好ましく、0.03〜1g/m
2がより好ましい。0.01g/m
2未満では導電性パターンの導電性パターン形成用基材に対する密着性の改善が不十分となる場合があり、5g/m
2を超えると、導電性パターン形成用基材表面に強い接着性が発生し、取り扱いが困難となる場合や、金属超微粒子を含むインクあるいはペーストに含まれる分散媒の多孔質層への吸収を阻害する場合がある。その中でも有機微粒子の固形分量としては、0.02〜0.3g/m
2がより好ましく、水溶性セルロース類の固形分塗布量としては0.02〜0.1g/m
2がより好ましい。また、耐熱保存性の観点から、有機微粒子:水溶性セルロースの比率は、0.3〜15:1が好ましく、0.94〜5:1がより好ましい。とりわけ好ましくは1.5〜3.4:1の範囲である。
【0053】
上層が含有するフッ素系界面活性剤の具体例としては、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルアミンオキサイド化合物等が挙げられ、市販品も使用できる。
【0054】
市販品のフッ素系界面活性剤としては、例えば、サーフロンS−111、S−112、S−113、S−121、S−131、S−132、S−141、S−145、S−211、S−221、S−241、S−242、S242L、S−243(いずれもAGCセイミケミカル社製)、フルラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129、FC−135、FC−170C、FC−430、FC−431、FC−4430、FC−4432(いずれも住友スリーエム社製)、メガファックF−444、F−470、F1405、F−474、EXP.TF−2149(いずれも大日本インキ化学工業社製)、Zonyl TBS、FSP、FSA、FSN−100、FSN、FSO−100、FSO、FS−300、UR(いずれもDuPont社製)、FT−110、FT−250、FT−251、FT−400S、FT−150、FT−400SW(いずれもネオス社製)、PF−151N(オムノバ社製)などが挙げられる。
【0055】
本発明の多孔質層の上層に用いるフッ素系界面活性剤の使用量としては0.001〜0.1g/m
2が好ましく、0.01〜0.03g/m
2がより好ましい。
【0056】
上層の形成に用いる塗液は、スライドカーテン方式、スライドビード方式、スロットダイ方式、ダイレクトグラビアロール方式、リバースグラビアロール方式、スプレー方式、エアナイフ方式、ブレードコーティング方式、ロッドバーコーティング方式、スピンコート方式、インクジェット方式等による塗布、スクリーン印刷、インクジェット印刷、ディスペンサー印刷、オフセット印刷、反転オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷等によるパターンの形成等、公知の各種塗布あるいは印刷方法を利用して、あらかじめ支持体上に作製された多孔質層表面の全面、あるいは必要とされる部位への選択的な塗布を行い、上層を形成することができる。また、多孔質層が形成された支持体が立体である場合には、多孔質層の形成と同様の方式を用いて多孔質層の上層を形成する事が出来る。
【0057】
本発明の多孔質層の形成、および上層の形成に用いられる塗液はスライドカーテン方式、スライドビード方式、スロットダイ方式等による多層同時塗布によって形成することも出来る。
【0058】
本発明において導電性部材の作製に用いられる、金属超微粒子を含有するインクとは、詳細には水及び/または有機溶媒中に金属超微粒子がコロイドとして分散されているインクであり、金属種としては、金、銀、銅、ニッケル等を例示する事が出来る。特に高い導電性、価格、生産性、扱いやすさ等の点から主に銀からなる事が好ましい。主に銀からなるとは、金属超微粒子を含むインク中に含まれる全金属超微粒子の50質量%以上が銀である事であり、好ましくは70質量%以上であり、特に好ましくは90質量%以上であり、銀のみであってもよい。分散している金属超微粒子の平均一次粒子径は、金属超微粒子がコロイドとして安定した分散状態を保持する観点より、平均一次粒子径が200nm以下であることが好ましく、100nm以下である事がより好ましく、更に50nm以下である事が特に好ましい。ここで平均一次粒子径とは、金属超微粒子の電子顕微鏡観察により一定面積内に存在する100個の粒子各々の投影面積に等しい円の直径を粒子径として平均し求めたものである。
【0059】
本発明における金属超微粒子を含有するインク中に含まれる金属超微粒子の含有量は、金属超微粒子を含有するインク全体の質量に対して1質量%から95質量%が好ましく、より好ましくは、3質量%から90質量%である。
【0060】
金属超微粒子を含有するインクに用いられる金属超微粒子の分散媒は水及び/または有機溶媒であり、水のみ、水と有機溶媒の混合物、有機溶媒のみの構成を挙げることが出来る。水と有機溶媒の混合物の構成としては、有機溶媒として、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン等の水溶性の低沸点溶媒や、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等の水溶性の高沸点有機溶媒を添加することが出来る。有機溶媒のみの構成としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等のアルコール系高沸点有機溶媒、ジアセトンアルコール、イソホロン、γ−ブチルラクトン等のケトン系高沸点有機溶媒、2−フェノキシエタノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系高沸点有機溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エトキシエトキシエチルアセテート等のエステル系高沸点有機溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の非プロトン性アミド系高沸点有機溶媒、テレピン油、α−テルピネオール、ミネラルスピリット等が使用される。
【0061】
金属超微粒子は、不活性ガス中で金属を蒸発させガスとの衝突により冷却・凝縮し回収するガス中蒸発法、真空中で金属を蒸発させ有機溶剤と共に回収する金属蒸気合成法、レーザー照射のエネルギーにより液中で蒸発・凝縮させ回収するレーザーアブレーション法、水溶液中で金属イオンを還元し生成・回収する化学的還元法、有機金属化合物の熱分解による方法、金属塩化物の気相中での還元による方法、酸化物の水素中還元法、紫外線や超音波、マイクロウェーブ等のエネルギーを利用する方法等、公知の種々の方法により製造された金属超微粒子を好ましく用いることが出来る。
【0062】
金属超微粒子を含有するインクには増粘剤、帯電防止剤、UV吸収剤、可塑剤、高分子バインダー等の各種添加剤を目的に応じて添加してもよく、例えば、UV硬化樹脂成分を含ませることにより、UV印刷あるいはUVインクジェット方式によるパターン形成に適した特性(UV硬化特性)をもたせることも出来る。
【0063】
本発明において、金属超微粒子を含有するインクは、低粘度の溶液状態から高粘度のペースト状態まで任意の形態に調整される。具体的には、導電性パターン形成用基材上に金属超微粒子を付与する方法に適した粘度、表面張力、金属超微粒子の大きさ・含有率等が調整される。例えば、グラビア印刷、インクジェット方式を用いる場合には、粘度を1〜100mPa・sの範囲に調整することが好ましく、凸版印刷やスクリーン印刷を用いる場合には、1〜500Pa・sの範囲に調整することが好ましい。なお、金属超微粒子を含有するインクはペーストと呼ばれることもある。
【0064】
高粘度のペースト状態に調整する場合には、金属超微粒子の濃度を高くするだけでは所望の粘度を得ることは困難であるため、高分子バインダーあるいは増粘剤を添加することが好ましい。高分子バインダーとしては、セルロース樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂等、公知の各種高分子バインダーを使用することが出来る。増粘剤としてヒドロキシルプロピルセルロースやカルボキシメチルセルロース、ペクチン、ポリスチレンスルホン酸塩類、ポリアクリル酸等、公知の各種増粘剤を使用することが出来る。
【0065】
本発明に用いられる金属超微粒子を含有するインクには、公知あるいは市販の導電性パターンを形成するために供されている金属超微粒子が含まれるコロイド、インクあるいはペーストを広く用いることが出来る。また、製造方法が簡便であり、下記の導電性発現剤を用いた場合における導電性にも優れている事から、例えばExperiments in Colloid Chemistry,1940,p.19,Hauser,E.A.and Lynn,J.E.に記載される方法の如く、デキストリンを用いて作製される銀超微粒子を用いることが好ましい。
【0066】
本発明において、金属超微粒子を含有するインクは、様々な印刷方法あるいは塗布方式によりパターンが形成される。例えば線状の塗布を行う事が出来るディスペンサー印刷方法を用いた任意の線状のパターン形成、サーマル、ピエゾ、マイクロポンプ、静電気等の各種方式のインクジェット印刷方法を用いた任意の線状あるいは面状のパターン形成、凸版印刷方法、フレキソ印刷方法、平版印刷方法、凹版印刷方法、グラビア印刷方法、反転オフセット印刷方法、枚葉スクリーン印刷方法、ロータリースクリーン印刷方法等の公知の各種印刷方法により任意のパターンを形成する事ができる。また、グラビアロール方式、スロットダイ方式、スピンコート方式等、公知の各種塗布方式を用い、導電性パターン形成用基材の全面あるいは一部に連続した面としてパターンを形成する事、間欠塗工ダイコーター等を用い導電性パターン形成用基材の全面あるいは一部に断続した面としてパターンを形成する事、あるいは浸漬塗布方法(ディップ方式とも言われる)を用い、導電性パターン形成用基材全体に金属超微粒子を含有するインクを付着させる事も出来る。より好ましい印刷方法としては、インクジェット印刷方法、フレキソ印刷方法、グラビア印刷方法、反転オフセット印刷方法、枚葉スクリーン印刷方法、ロータリースクリーン印刷方法を挙げることが出来る。
【0067】
本発明の導電性パターン形成基材への金属超微粒子を含有するインクの付与量は特に限定されないが、例えばインクジェット方式の場合は得られる導電性の観点から15〜30mL/m
2が好ましく、20〜25mL/m
2が特に好ましい。
【実施例】
【0068】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。
【0069】
<導電性パターン形成用基材1の作製>
水に硝酸(2.5部)とアルミナ水和物(平均一次粒子径15nm)を添加し、のこぎり歯状ブレード型分散機を用いて、固形分濃度30質量%の無機微粒子分散液を得た。無機微粒子分散液中に分散しているアルミナ水和物の平均二次粒子径は160nmであった。この無機微粒子分散液を用い、下記組成の多孔質層形成塗液を作製した。
【0070】
<多孔質層形成塗液>
無機微粒子分散液(アルミナ水和物固形分として) 100g
ポリビニルアルコール 12g
(ケン化度88%、平均重合度3,500、分子量約150,000)
ホウ酸 0.5g
ノニオン性界面活性剤 0.3g
(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)
固形分濃度が16質量%になるように水で調整した。
【0071】
支持体として、易接着処理がなされた厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製)を用い、支持体上に前述した多孔質層形成塗液をアルミナ水和物の固形分として30g/m
2となるようにスライドビード方式にて塗布を行い、乾燥機により乾燥し、多孔質層を形成した。支持体上に形成された多孔質層の水銀ポロシメーターを用いて測定された空隙容量は23ml/m
2であった。
【0072】
この様にして得た多孔質層上に、下記組成の上層形成塗液1を、斜線グラビアロールを用いた塗布方式にて塗布を行い、乾燥機により乾燥し、導電性パターン形成用基材1を得た。ここで用いた斜線グラビアロールは、直径60mm、斜線角度45度、線数90線/インチ、溝深さ110μmのグラビアロールであり、リバース回転で用いた。層形成塗液1の湿分塗布量は、斜線グラビアロールの回転数を調整し15g/m
2に設定した。
【0073】
<上層形成塗液1>
塩化ナトリウム 1.44g
ヒドロキシエチルセルロース 0.4g
ポリエステル系ウレタン樹脂有機微粒子水分散体(濃度45質量%) 1.6g
(ハイドランAPX−101H、DIC株式会社、平均粒子径200nm、Tg17℃)
フッ素系界面活性剤(濃度50質量%) 0.2g
(サーフロンS−242L、AGCセイミケミカル株式会社)
水 146.36g
【0074】
<導電性パターン形成用基材2の作製>
前記導電性パターン形成用基材1の作製において、上層形成塗液1を下記組成の上層形成塗液2へ変更した以外は同様に作製し、導電性パターン形成用基材2を得た。
【0075】
<上層形成塗液2>
ピュラケムWT(株式会社 理研グリーン) 2.00g
ヒドロキシエチルセルロース 0.4g
ポリエステル系ウレタン樹脂有機微粒子水分散体(濃度45質量%) 1.6g
(ハイドランAPX−101H、DIC株式会社、平均粒子径200nm、Tg17℃)
フッ素系界面活性剤(濃度50質量%) 0.2g
(サーフロンS−242L、AGCセイミケミカル株式会社)
水 145.8g
【0076】
<導電性パターン形成用基材3の作製>
前記導電性パターン形成用基材1の作製において、上層形成塗液1を下記組成の上層形成塗液3へ変更した以外は同様に作製し、導電性パターン形成用基材3を得た。
【0077】
<上層形成塗液3>
塩化ナトリウム 1.44g
カルボキシメチルセルロース 0.4g
ポリエステル系ウレタン樹脂有機微粒子水分散体(濃度45質量%) 1.6g
(ハイドランAPX−101H、DIC株式会社、平均粒子径200nm、Tg17℃)
フッ素系界面活性剤(濃度50質量%) 0.2g
(サーフロンS−242L、AGCセイミケミカル株式会社)
水 146.36g
【0078】
<導電性パターン形成用基材4の作製>
前記導電性パターン形成用基材1の作製において、上層形成塗液1を下記組成の上層形成塗液4へ変更した以外は同様に作製し、導電性パターン形成用基材4を得た。
【0079】
<上層形成塗液4>
塩化ナトリウム 1.44g
ヒドロキシエチルセルロース 0.4g
エチレン塩化ビニル樹脂有機微粒子水分散体(濃度50質量%) 1.44g
(スミエリート1010、住友化学株式会社、平均粒子径200nm、Tg0℃)
フッ素系界面活性剤(濃度50質量%) 0.2g
(サーフロンS−242L、AGCセイミケミカル株式会社)
水 146.52g
【0080】
<導電性パターン形成用基材5の作製>
前記導電性パターン形成用基材1の作製において、上層形成塗液1を下記組成の上層形成塗液5へ変更した以外は同様に作製し、導電性パターン形成用基材5を得た。
【0081】
<上層形成塗液5>
塩化ナトリウム 1.44g
ポリビニルアルコール 0.4g
(ケン化度88%、平均重合度3500、分子量約150,000)
ポリエステル系ウレタン樹脂有機微粒子水分散体(濃度45質量%) 1.6g
(ハイドランAPX−101H、DIC株式会社、平均粒子径200nm、Tg17℃)
フッ素系界面活性剤(濃度50質量%) 0.2g
(サーフロンS−242L、AGCセイミケミカル株式会社)
水 146.36g
【0082】
<導電性パターン形成用基材6の作製>
前記導電性パターン形成用基材1の作製において、上層形成塗液1を下記組成の上層形成塗液6へ変更した以外は同様に作製し、導電性パターン形成用基材6を得た。
【0083】
<上層形成塗液6>
塩化ナトリウム 1.44g
ヒドロキシエチルセルロース 0.4g
ポリエステル系ウレタン樹脂有機微粒子水分散体(濃度45質量%) 1.6g
(ハイドランAPX−101H、DIC株式会社、平均粒子径200nm、Tg17℃)
フッ素系界面活性剤(濃度100質量%) 0.1g
(ノベックFC−4432、住友スリーエム社)
水 146.46g
【0084】
<導電性パターン形成用基材7の作製>
前記導電性パターン形成用基材1の作製において、上層形成塗液1を下記組成の上層形成塗液7へ変更した以外は同様に作製し、導電性パターン形成用基材7を得た。
【0085】
<上層形成塗液7>
塩化ナトリウム 1.44g
ヒドロキシエチルセルロース 0.4g
ポリエステル系ウレタン樹脂有機微粒子水分散体(濃度45質量%) 1.6g
(ハイドランAPX−101H、DIC株式会社、平均粒子径200nm、Tg17℃)
ノニオン性界面活性剤(濃度100質量%) 0.1g
(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)
水 146.46g
【0086】
<導電性パターン形成用基材8の作製>
前記導電性パターン形成用基材1の作製において、上層形成塗液1を下記組成の上層形成塗液8へ変更した以外は同様に作製し、導電性パターン形成用基材8を得た。
【0087】
<上層形成塗液8>
塩化ナトリウム 1.44g
エチレン塩化ビニル樹脂有機微粒子水分散体(濃度50質量%) 1.44g
(スミエリート1010、住友化学株式会社、平均粒子径200nm、Tg0℃)
水 147.12g
【0088】
<導電性パターン形成用基材9の作製>
前記導電性パターン形成用基材1の作製において、上層形成塗液1を下記組成の上層形成塗液9へ変更した以外は同様に作製し、導電性パターン形成用基材9を得た。
【0089】
<上層形成塗液9>
塩化ナトリウム 1.44g
ヒドロキシエチルセルロース 0.4g
エチレン塩化ビニル樹脂有機微粒子水分散体(濃度50質量%) 1.44g
(スミエリート1010、住友化学株式会社、平均粒子径200nm、Tg0℃)
水 146.72g
【0090】
<導電性パターン形成用基材10の作製>
前記導電性パターン形成用基材1の作製において、上層形成塗液1を下記組成の上層形成塗液10へ変更した以外は同様に作製し、導電性パターン形成用基材10を得た。
【0091】
<上層形成塗液10>
塩化ナトリウム 1.44g
ヒドロキシエチルセルロース 0.6g
ポリエステル系ウレタン樹脂有機微粒子水分散体(濃度45質量%) 1.0g
(ハイドランAPX−101H、DIC株式会社、平均粒子径200nm、Tg17℃)
フッ素系界面活性剤(濃度50質量%) 0.2g
(サーフロンS−242L、AGCセイミケミカル株式会社)
水 146.76g
【0092】
<導電性パターン形成用基材11の作製>
前記導電性パターン形成用基材1の作製において、上層形成塗液1を下記組成の上層形成塗液11へ変更した以外は同様に作製し、導電性パターン形成用基材11を得た。
【0093】
<上層形成塗液11>
塩化ナトリウム 1.44g
ヒドロキシエチルセルロース 0.4g
ポリエステル系ウレタン樹脂有機微粒子水分散体(濃度45質量%) 1.0g
(ハイドランAPX−101H、DIC株式会社、平均粒子径200nm、Tg17℃)
フッ素系界面活性剤(濃度50質量%) 0.2g
(サーフロンS−242L、AGCセイミケミカル株式会社)
水 146.96g
【0094】
<導電性パターン形成用基材12の作製>
前記導電性パターン形成用基材1の作製において、上層形成塗液1を下記組成の上層形成塗液12へ変更した以外は同様に作製し、導電性パターン形成用基材12を得た。
【0095】
<上層形成塗液12>
塩化ナトリウム 1.44g
ヒドロキシエチルセルロース 0.4g
ポリエステル系ウレタン樹脂有機微粒子水分散体(濃度45質量%) 2.0g
(ハイドランAPX−101H、DIC株式会社、平均粒子径200nm、Tg17℃)
フッ素系界面活性剤(濃度50質量%) 0.2g
(サーフロンS−242L、AGCセイミケミカル株式会社)
水 145.96g
【0096】
<導電性パターン形成用基材13の作製>
前記導電性パターン形成用基材1の作製において、上層形成塗液1を下記組成の上層形成塗液13へ変更した以外は同様に作製し、導電性パターン形成用基材13を得た。
【0097】
<上層形成塗液13>
塩化ナトリウム 1.44g
ヒドロキシエチルセルロース 0.3g
ポリエステル系ウレタン樹脂有機微粒子水分散体(濃度45質量%) 3.0g
(ハイドランAPX−101H、DIC株式会社、平均粒子径200nm、Tg17℃)
フッ素系界面活性剤(濃度50質量%) 0.2g
(サーフロンS−242L、AGCセイミケミカル株式会社)
水 145.06g
【0098】
<導電性パターン形成用基材14の作製>
前記導電性パターン形成用基材1の作製において、上層形成塗液1を下記組成の上層形成塗液14へ変更した以外は同様に作製し、導電性パターン形成用基材14を得た。
【0099】
<上層形成塗液14>
塩化ナトリウム 1.44g
ヒドロキシエチルセルロース 0.25g
ポリエステル系ウレタン樹脂有機微粒子水分散体(濃度45質量%) 3.0g
(ハイドランAPX−101H、DIC株式会社、平均粒子径200nm、Tg17℃)
フッ素系界面活性剤(濃度50質量%) 0.2g
(サーフロンS−242L、AGCセイミケミカル株式会社)
水 145.11g
【0100】
<導電性パターン形成用基材15の作製>
前記導電性パターン形成用基材1の作製において、上層形成塗液1を下記組成の上層形成塗液15へ変更した以外は同様に作製し、導電性パターン形成用基材15を得た。
【0101】
<上層形成塗液15>
塩化ナトリウム 1.44g
ヒドロキシエチルセルロース 0.1g
ポリエステル系ウレタン樹脂有機微粒子水分散体(濃度45質量%) 3.0g
(ハイドランAPX−101H、DIC株式会社、平均粒子径200nm、Tg17℃)
フッ素系界面活性剤(濃度50質量%) 0.2g
(サーフロンS−242L、AGCセイミケミカル株式会社)
水 145.26g
【0102】
この様にして得られた導電性パターン形成用基材1〜15を210mm×297mmのシート状に加工した。
【0103】
<銀超微粒子分散液の作製>
10Lのステンレスビーカーに焙焼デキストリン(日澱化学(株)製、デキストリンNo.3)653gと純水5772gを加え、約30分間撹拌し溶解した。その後、硝酸銀1582gを加え、約30分間撹拌し溶解した。この液を氷浴中にて約5℃まで冷却し、水酸化カリウム730gを純水1007gに溶解した10℃の液を添加し、氷浴中で撹拌しながら1時間の還元反応を行った。得られた溶液に酢酸を添加し、pH=5.6に調整後、恒温水槽を用いて45℃に昇温し、ビオザイムF10SD(天野エンザイム(株)製)を3.0g添加し1時間撹拌した。得られた液を遠心分離法により精製した後、全銀超微粒子分散液中に占める銀固形分の割合が50質量%になるように純水を加え再分散し、銀超微粒子分散液を得た。含まれる銀超微粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡下での観察により求めたところ23nmであった。
【0104】
<銀超微粒子を含有するインクの作製>
銀超微粒子分散液1を30g取り、エチレングリコールを20g、アニオン性界面活性剤としてジアルキルスルホコハク酸ナトリウムを0.10g加え、全銀超微粒子含有組成物中に占める銀固形分の割合が15質量%となるよう純水で調整し銀超微粒子を含有するインクを作製した。
【0105】
<導電性部材1〜15の形成>
ピエゾ方式のインクジェットヘッドを有するインクジェットプリンタに上記の様にして作製した銀超微粒子を含有するインクを充填し、導電性パターン形成用基材1〜15に対し、幅1mm、長さ100mmの直線で両端に5mm×5mm角が付いた直線状導電性パターンと100mm×100mm角のベタ様導電性パターンをそれぞれ印刷し、導電性部材1〜15を得た。印刷部分における銀超微粒子を含有するインクの1m
2あたりの塗布量は約23mlであった。
【0106】
<導電性の評価>
導電性部材1〜15について、ベタ様導電性パターンのシート抵抗値(単位:Ω/□)を測定器((株)ダイアインスツルメンツ製 ロレスターGP)を用いて測定した結果を表1に示す。
【0107】
<密着性の評価>
導電性部材1〜15について、ベタ様導電性パターンをJIS K 5600−5−6に規定されるクロスカット法にて、ベタ様の金属超微粒子含有部の導電性パターン形成用基材に対する密着性を確認した。密着性は前述したJISの評価と同様に0〜5の6段階で評価した。(0:どの格子の目にもはがれがない。5:はがれの程度が65%以上である。)この結果を表1に示す。
【0108】
<耐熱保存性の評価>
上記作製した導電性部材1〜15の直線状導電性パターンの両端間の抵抗値(単位:Ω)をテスターにて測定した後に、−30℃と80℃の状態を1時間ごとに繰り返すヒートサイクル試験を100回実施した。その後、直線状導電性線パターンの両端間の抵抗値(単位:Ω)をテスターにて再度測定した。この結果を表1に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
表1の結果より、耐熱保存性試験であるヒートサイクル後の抵抗値が比較例では上昇してしまい劣化しているのに対して、本発明では抵抗値が更に焼成が進んだごとく低下して、良化していることがわかる。また、本発明において有機微粒子と有機セルロースのより好ましい比率範囲内における抵抗値がより低下しており、好ましいことがわかる。以上の結果から本発明によって、密着性が高く、かつ優れた導電性と耐熱保存性を有する導電性部材が得られることが判る。