【実施例】
【0035】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0036】
実施例1
酢酸5重量部、メタノール100重量部からなる凝固剤で満たされた浴槽に、繊維製手袋(13ゲージの編み機で編んだナイロン製のシームレス手袋)を被せたセラミック製手型を浸漬し、5秒後に引き上げた。
この凝固剤に浸漬された手袋を25℃で30秒間乾燥させてから、表1に示す、クラック防止剤としてTiO
2 を有する、NBRラテックス配合液の浴槽に約15秒間浸漬し、浴槽から引き上げた後、25℃で7分間乾燥させ、次いで75℃で5分間乾燥させた。その後、乾燥した手袋を50℃の温水中で2分間リーチングし、温水中から引き上げて表面の水滴がなくなるまで乾燥させ、第1層の被膜を形成させた。
第1層の被膜が形成された手袋を、NBRラテックスをLx−551に、増粘剤A−7075の量を0.3重量部に変更した他は表1に示したものと同じラテックス配合液へ5秒間浸漬してから、第1層と同様に乾燥、リーチング、乾燥を再度繰り返して第2層の被膜を形成させた。
続いて、第2層の被膜が形成された手袋を、第2層と同じラテックス配合液の浴槽に約5秒間浸漬し、浴槽から引き上げた後、表面の水滴がなくなるまで乾燥させ、第3層の被膜を形成させた。
さらに、表2に示したNBRラテックス配合液をハンドミキサーで攪拌して、容量が元の容量の1.3倍になるまで発泡させた。このラテックス配合液の浴槽に第3層の被膜が形成された手袋の掌部を約5秒浸漬し、浴槽から引き上げた後、70℃で40分間乾燥させ、その後、手袋を手型から外して25℃の水に浸漬して1時間リーチングを行った。
リーチング後、脱水し、成形用手型に被せ替えて加熱硬化を行った。加熱硬化は当初70℃で60分間加熱した後、130℃で20分間加熱することで行った。加熱硬化後、成形用手型から離型することにより、本発明の手袋を得た。
得られた手袋(発泡層部分を除く)の表面の顕微鏡写真(200倍)を
図1に示すが、クラックの発生は全く認められない。
【0037】
実施例2
酢酸5重量部、メタノール100重量部からなる凝固剤で満たされた浴槽に、繊維製手袋(13ゲージの編み機で編んだナイロン製のシームレス手袋)を被せたセラミック製手型を浸漬し、5秒後に引き上げた。
この凝固剤に浸漬された手袋を25℃で30秒間乾燥させてから、表1におけるクラック防止剤TiO
2 の部数を1.0に変更したNBRラテックス配合液の浴槽に約15秒間浸漬し、浴槽から引き上げた後、25℃で7分間乾燥させ、次いで75℃で15分間乾燥させた。
さらに、表2に示したNBRラテックス配合液をハンドミキサーで攪拌して、容量が元の容量の1.3倍になるまで発泡させた。このラテックス配合液の浴槽に手袋の掌部を浸漬し、5秒後に引き上げて加熱硬化を行った。加熱硬化は当初70℃で60分間加熱した後、130℃で20分間加熱することで行った。
加熱硬化後、成形用手型から離型することにより、本発明の手袋を得た。
得られた手袋(発泡層部分を除く)の表面の顕微鏡写真(200倍)を
図2に示すが、クラックの発生は全く認められない。
【0038】
実施例3
クラック防止剤をTiO
2 からSiO
2 に変更した以外は、実施例1と同様にして本発明の手袋を得た。
【0039】
実施例4、5
実施例2におけるNBRラテックス配合液への浸漬時間をそれぞれ10秒(実施例4)、30秒(実施例5)として第1層を形成し、表2に示したNBRラテックス配合液への浸漬を実施しなかった以外は、実施例2と同様にして本発明の手袋を得た。
【0040】
実施例6
表1に示したNBRラテックス配合液への浸漬時間を1秒とし、凝固剤中の酢酸の量を3重量部とした以外は、実施例4と同様にして本発明の手袋を得た。
【0041】
比較例1
表1におけるクラック防止剤TiO
2 の部数を0.5に変更するとともに、表2に示したNBRラテックス配合液への浸漬を実施しなかった以外は、実施例2と同様にして手袋を得た。
得られた手袋(発泡層部分を除く)の表面の顕微鏡写真(200倍)を
図3に示すが、クラックの発生が認められ、繊維製手袋の繊維が露出している。
【0042】
比較例2
有機酸系凝固剤を塩凝固剤(硝酸カルシウム5重量部、メタノール100重量部)に変更した以外は、実施例1と同様にして手袋を得た。
【0043】
比較例3
表1に示したNBRラテックス配合液への浸漬時間を30秒とし第1層を形成した他は、実施例1と同様にして手袋を得た。
【0044】
上記実施例1〜6、比較例1〜3で得られた手袋について、クラックの発生の有無を目視で観察するとともに、クラック未発生部分の被膜の厚みを測定した。厚みの測定は中指先から12cmの甲部分の断面(3cm幅)をマイクロスコープにより観察し、最も被膜厚の小さい箇所を測定することにより行った。
【0045】
また、被膜についての耐薬品性を評価するため、European Standard EN374−3「gloves for chemical protection」の規定に基づいて、硫酸の透過試験を行った。試験は、被膜の外面側を硫酸(濃度:96%)に接した状態とし、反対面側に0.1MのKClを流し、KClのpHを測定することにより行った。
具体的には、得られたpHから水素イオン濃度を算出し、さらにこの水素イオン濃度から硫酸濃度を算出し、得られた硫酸濃度から1分あたりの硫酸透過量を算出し、得られた硫酸透過量を元に、1分あたりの硫酸透過量が1μg/cm
2 を超えるまでの時間(分)を算出し、測定値とした。
【0046】
さらに、手袋を装着した際の作業性を評価するため、純曲げ試験及び官能試験を行った。
純曲げ試験は純曲げ試験機KES−FB2(カトーテック社製)を使用して、手袋甲部から切り取った5cm四方の試験片について、B値(gf・cm
2 /cm)を測定することにより行った。このB値は数値が低いほど柔らかいことを示す。B値は0.001以上1.5以下が好ましく、0.1以上1.2以下がより好ましい。0.001未満は測定限界であり、1.5を超えると作業性が悪くなる。
官能試験は、10名の被試験者に手袋を装着させて硬いか柔らかいかを判断してもらい、柔らかいと答えた人が多い場合は作業性が良いと評価し、そうでない場合は作業性が悪いと評価した。
【0047】
結果を表3に示す。実施例1〜6の結果により、クラック防止剤としてTiO
2 やSiO
2 を1.0重量部以上配合したラテックスを用い、有機酸系凝固剤を用いることにより、被覆層にクラックが発生せず、耐硫酸透過性に優れた耐薬品性手袋が得られることがわかる。
また実施例2、4、5の結果より、クラック防止剤を含むラテックス配合液への浸漬時間が長い程膜厚は大きくなるがその分硬くなり、比較例3の結果より、膜厚が300μmを超えると作業性に影響することがわかる。
更に、比較例1に示すように、クラック防止剤が1重量部より少ない場合や、比較例2に示すように、塩凝固剤を用いた場合は、いずれもクラックが発生し、従って、耐硫酸透過性が低下することがわかる。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】