(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態におけるリニアモータ装置、及び制御方法を説明する。
【0011】
図1は、本実施形態における工作装置1の構成を示す概略ブロック図である。モータ装置である工作装置1は、ロッドタイプのリニアモータ10と、リニアモータ10に取り付けられた加圧体11と、リニアモータ10を制御する制御部20とを具備している。工作装置1は、リニアモータ10に備えられているロッド101の一端に取り付けられた加圧体11を鉛直方向に移動させ、加圧対象物としてのワーク33(電子部品等)を基板31に向けて、加圧体11を用いて加圧する。これにより、工作装置1はワーク33を基板31の所定の箇所に接着剤32を介して取り付ける。
以下、リニアモータ10と制御部20との構成について説明する。
【0012】
図2は、本実施形態におけるリニアモータ10の斜視図(一部断面図)である。リニアモータ10は、コイル収容ケース102に対してロッド101が軸線方向に移動する。
コイル収容ケース102内には、コイルホルダ105に保持された複数のコイル104が積層(配列)されている。コイル収容ケース102の両端面それぞれには、エンドケース109が取り付けられている。エンドケース109には、ロッド101の直線運動を案内するための軸受であるブッシュ108が取り付けられている。
【0013】
ロッド101は、例えばステンレス等の非磁性材からなり、パイプのように中空の空間を有する。ロッド101の中空空間には、円柱状の複数のマグネット103(セグメント磁石)が互いに同極を対向させて積層されている。すなわち各マグネット103は、隣接するマグネット103の一方とN極同士を対向させ、隣接するマグネット103の他方とS極同士を対向させて積層されている。マグネット103の間には、例えば鉄等の磁性体からなるポールシュー107(磁極ブロック)が介在されている。ロッド101は、積層されたコイル104内を貫通するとともに、コイル収容ケース102に軸線方向に移動可能に支持されている。
【0014】
図3は、本実施形態におけるコイルホルダ105に保持されたコイルユニットを示す斜視図である。同図に示されるように、コイル104は銅線を螺旋状に巻いたもので、コイルホルダ105に保持されている。すなわち、複数のコイル104は、ロッド101のマグネット103が配列されている方向を中心として、ロッド101の外周に沿って銅線が巻かれたものであり、各コイル104がマグネット103の配列されている方向と同じ方向に配列されている。
隣接するコイル104を絶縁させる必要があるので、コイル104間にはリング状の樹脂製スペーサ105aが介在される。コイルホルダ105上にはプリント基板106が設けられる。コイル104の巻線の端部104aは、プリント基板106に結線される。
【0015】
本実施形態では、コイル104及びコイルホルダ105を金型にセットし、溶融した樹脂又は特殊セラミックスを金型内に注入するインサート成形によって、コイル収容ケース102をコイル104と一体に成形する。
図2に示されるように、コイル収容ケース102には、コイル104の放熱性を高めるためにフィン102aが複数形成される。なお、コイルホルダ105に保持されたコイル104をアルミ製のコイル収容ケース102に収納し、コイル104とコイル収容ケース102との間のすきまを接着剤で埋めて、コイル104及びコイルホルダ105をコイル収容ケース102に固定してもよい。
【0016】
図4は、本実施形態におけるリニアモータ10のマグネット103とコイル104の位置関係を示す図である。ロッド101内の中空空間には、円柱状の複数のマグネット103(セグメント磁石)が互いに同極が対向するように配列される。コイル104は3つでU・V・W相からなる一組の三相コイルとなる。一組の三相コイルを複数組み合わせて、コイルユニットが構成される。U・V・W相の三相に分けた複数のコイル104に120°ずつ位相が異なる三相電流を流すと、コイル104の軸線方向に移動する移動磁界が発生する。ロッド101は、駆動用磁石としての各マグネット103が生じさせている磁界と、移動磁界との作用により推力を得て、移動磁界の速さに同期してコイル104に対して相対的に直線運動を行う。
【0017】
図2に示されるように、磁気センサ収容ケースであるエンドケース109の一方には、ロッド101の位置を検出するための磁気センサ112が取り付けられる。磁気センサ112は、ロッド101から所定のすきまを開けて配置され、ロッド101の直線運動によって生ずるロッド101内に積層されている各マグネット103が生じさせる磁界の方向(磁気ベクトルの方向)の変化を検出する。
【0018】
図5に示されるように、磁気センサ112は、Si若しくはガラス基板121と、その上に形成されたNi、Feなどの強磁性金属を主成分とする合金の強磁性薄膜金属で構成される磁気抵抗素子122を有する。磁気センサ112は、特定の磁界方向で抵抗値が変化するためにAMR(Anisotropic-Magnetro-Resistance)センサ(異方性磁気抵抗素子)と呼ばれる(参考文献:「垂直タイプMRセンサ技術資料」、[online]、2005年10月1日、浜松光電株式会社、「2011年11月7日検索」、インターネット<URL;http://www.hkd.co.jp/technique/img/amr-note1.pdf>)。
【0019】
図6は、AMRセンサにおける磁界の方向と、抵抗値との関係を示すグラフである。
磁気抵抗素子122に電流を流し、抵抗変化量が飽和する磁界強度を印加し、その磁界(H)の方向を電流方向Yに対して角度変化θを与えたとする。このとき、
図6に示されるように、抵抗変化量(△R)は、電流方向と磁界の方向が垂直(θ=90°,270°)のときに最大となり、電流方向と磁界の方向が平行(θ=0°,180°)のときに最小となる。抵抗値Rは、電流方向と磁界方向の角度成分に応じて、下記の式(1)のように変化する。
なお、磁界強度が飽和感度以上であれば、△Rは定数になり、抵抗値Rは磁界の強度には影響されなくなる。
【0020】
R=R0−△Rsin2θ…(1)
R0:無磁界中の強磁性薄膜金属の抵抗値
△R:抵抗変化量
θ:磁界方向を示す角度
【0021】
図7は、磁界強度が飽和感度以上の場合においても、磁界の方向を検出する磁気センサ112の強磁性薄膜金属の形状例を示す図である。同図に示すように、縦方向に形成された強磁性薄膜金属エレメント(R1)と、横方向のエレメント(R2)が直列に結線した形状になる。
エレメント(R1)に対して最も大きな抵抗変化を促す垂直方向の磁界は、エレメント(R2)に対し最小の抵抗変化となる。抵抗値R1とR2は次式(2)、(3)で与えられる。
【0022】
R1=R0−△Rsin2θ…(2)
R2=R0−△Rcos2θ…(3)
【0023】
図8は、磁気センサの等価回路(ハーフブリッジ)を示す図である。この等価回路の出力Voutは次式(4)で与えられる。
【0024】
Vout=R1・Vcc/(R1+R2)…(4)
【0025】
式(4)に式(2)、(3)を代入し、整理すると、次式(5−1)、(5−2)が得られる。
【0026】
Vout=Vcc/2+αcos2θ …(5−1)
α=△R・Vcc/2(2R0−△R) …(5−2)
【0027】
図9は、磁界の方向を検出する磁気センサの強磁性薄膜金属の形状例を示す図である。
同図に示すように、強磁性薄膜金属の形状を形成すれば、二つの出力Vout+とVout−を用いて中点電位の安定性の向上と増幅を行うことが可能になる。
【0028】
ロッド101が直線運動するときの磁界方向の変化と磁気センサ112の出力について説明する。
図10は、磁気センサ112と、ロッド101との位置関係を示す図である。同図に示すように、磁気センサ112を、飽和感度以上の磁界強度が印加されるギャップlの位置に、かつ磁界の方向変化がセンサ面に寄与するように配置する。
このとき、磁気センサ112がロッド101に沿って位置A〜Eの距離λを相対的に移動した場合、磁気センサ112の出力は、次のようになる。
【0029】
図11は、磁気センサ112の出力する信号例を示す図である。同図に示すように、ロッド101が距離λを直線移動したとき、センサ面では磁界の方向が1回転する。このときに電圧の信号は、1周期の正弦波信号になる。より正確にいえば、式(5−1)により表される電圧Voutは、2周期分の正弦波信号となる。しかし、磁気センサ112のエレメントの延伸方向に対して45°にバイアス磁界を掛けるならば、周期が半減し、ロッド101がλを直線移動したときに1周期の出力波形が得られる。
【0030】
運動の方向を知るためには、
図12に示されるように、二組のフルブリッジ構成のエレメントを、互いに45°傾くように一つの基板上に形成すればよい。二組のフルブリッジ回路によって得られた出力VoutAとVoutBは、
図13に示されるように、互いに90°の位相差を持つ余弦波信号及び正弦波信号となる。
【0031】
本実施形態においては、
図12に示される二組のフルブリッジ構成のエレメントを互いに45°傾くように一つの基板上に形成された磁気センサ112が、ロッド101の磁界の方向の変化を検出するので、たとえ
図14に示されるように、磁気センサ112の取り付け位置が(1)から(2)にずれたとしても、磁気センサ112が出力する正弦波信号及び余弦波信号(出力VoutA及びVoutB)には変化が少ない。
【0032】
図15は、磁気センサ112の出力VoutAとVoutBにより描かれるリサージュ図形を示す図である。磁気センサ112の出力の変化が少ないので、
図15に示される円の大きさが変化しにくくなる。このため、磁気ベクトル24の方向θを正確に検出することができる。ロッド101と磁気センサ112との間のギャップlを高精度に管理しなくても、ロッド101の正確な位置を検出できるので、磁気センサ112の取り付け調整が容易になる。それだけでなく、ブッシュ108によって案内されるロッド101にガタを持たせることも可能になるし、ロッド101の多少の曲がりを許容することも可能になる。
【0033】
図16は、エンドケース109に取り付けられる磁気センサ112を示す図である。エンドケース109には、磁気センサ112を収容するための空間からなる磁気センサ収容部126が設けられている。
磁気センサ収容部126内に磁気センサ112を配置した後、磁気センサ112の周囲を充填材127で埋める。これにより、磁気センサ112がエンドケース109に固定される。磁気センサ112は温度特性を持ち、温度の変化によって出力が変化する。コイル104から受ける熱の影響を低減するため、エンドケース109及び充填材127には、コイル収容ケース102よりも熱伝導率の低い材料が使用される。例えば、コイル収容ケース102にはエポキシ系の樹脂が使用され、エンドケース109及び充填材127には、ポリフェニレンサルファイド(PPS)が使用される。
【0034】
図17は、エンドケース109に取り付けられた軸受であるブッシュ108を示す図である。エンドケース109に軸受機能を持たせることで、ロッド101と磁気センサ112との間のギャップが変動するのを防止することができる。
【0035】
図18は、本実施形態における制御部20の構成を示す概略ブロック図である。制御部20は、位置制御部201、スイッチ部202、速度制御部203、スイッチ部204、電流制御部205、電力変換器206、変流器(Current Transformer;CT)207、速度算出部208、位置算出部209、速度切替位置決定部210、位置判定部211、完了信号生成部212、電気角補正部213を備えている。
以下、ロッド101を最も上昇させた際の加圧体11の位置を、加圧体11の位置の基準となる原点にした場合について説明する。
【0036】
位置制御部201は、外部より入力される位置指令と、位置算出部209が算出するリニアモータ10に備えられているロッド101の位置を示す情報とに基づいて、速度指令を算出する。また、位置制御部201は、第1速度〜第4速度(FL1SPD〜FL4SPD)を予め記憶しており、第1速度〜第4速度に基づいた4つの速度指令(第1速度指令〜第4速度指令)を出力する。
【0037】
第1速度指令は、ロッド101が予め定められた原点から、ロッド101の一端に取り付けられている加圧体11がワーク33の近傍(FL(Force Limit)モード開始位置)まで移動するときのロッド101が移動する速度を示す指令である。第1速度指令において、ロッド101を移動させる速度の上限値は、第1速度(FL1SPD)として予め定められている。例えば、リニアモータ10がロッド101を移動させる際の最高速度を第1速度(FL1SPD)とする。
第2速度指令は、加圧体11がワーク33の近傍から、ワーク33に接触するまで移動するときのロッド101が移動する速度を示す指令である。第2速度指令において、ロッド101を移動させる速度は、第2速度(FL2SPD)として予め定められている。第2速度(FL2SPD)は、第1速度(FL1SPD)より遅い速度であり、加圧体11がワーク33に接触する際に、一定以下の圧力がワーク33に対して加えられる速度に設定される。
【0038】
第3速度指令は、加圧体11をワーク33に押し当ててワーク33を基板31に実装させた後に、ロッド101及び加圧体11をワーク33から遠ざける方向に移動させるときの速度を示す指令である。第3速度指令において、ロッド101を移動させる速度は、第3速度(FL3PSD)として予め定められている。すなわち、第3速度指令はロッド101及び加圧体11を原点に向かって移動させる際に用いる指令である。
第4速度指令は、加圧体11をワーク33に押し当ててワーク33を基板31に実装させた後に、ロッド101を原点に向かって移動させるときの速度を示す指令である。第4速度指令において、ロッド101を移動させる速度の上限値は、第4速度(FL4SPD)として予め定められている。また、第4速度(FL4SPD)は、第3速度(FL3SPD)より速い速度が設定される。例えば、第1速度(FL1SPD)と同様に、第4速度(FL4SPD)をリニアモータ10がロッド101を移動させる際の最高速度とする。
【0039】
スイッチ部202は、位置判定部211の制御に基づいて、位置制御部201が出力する4つの速度指令のうちいずれか一つを選択する。
速度制御部203には、スイッチ部202が選択した速度指令と、速度算出部208が算出するリニアモータ10に備えられているロッド101の速度を示す速度情報とが入力される。速度制御部203は、速度指令が示す速度と、速度情報とが示す速度との偏差に基づいて、ロッド101が移動する速度を速度指令が示す速度にするための電流値を算出する。
また、速度制御部203は、算出した電流値を非制限電流指令として出力するとともに、予め定められた電流制限値(FL2I)を上限値にした電流指令である制限電流指令を出力する。算出された電流値が電流制限値(FL2I)以下の場合、非制限電流指令と制限電流指令とは、同じ電流値を示す。一方、算出された電流値が電流制限値(FL2I)より大きい場合、非制限電流指令は算出された電流値を示し、制限電流指令は電流制限値(FL2I)を示す。電流制限値(FL2I)は、リニアモータ10の推力と、ワーク33を基板31に実装する際にワーク33を押し付ける力とに基づいて予め定められる。
【0040】
スイッチ部204は、位置判定部211の制御に基づいて、速度制御部203が出力する制限電流指令及び非制限電流指令のうちいずれか一方を選択する。
電流制御部205は、スイッチ部204が選択した電流指令と、変流器207が測定したリニアモータ10に流れている電流値とに基づいて、選択した電流指令と測定した電流値との偏差を小さくする電圧指令を算出する。
電力変換器206は、電気角補正部213から入力される電気角と、電流制御部205が算出した電圧指令とに基づいて、リニアモータ10のU、V、W相の各コイル104に電圧を印加する。
変流器207は、電力変換器206とリニアモータ10とを接続している電力線に取り付けられている。また、変流器207は、当該電力線に流れている電流値を測定する。また、変流器207は、電流制御部205と、速度切替位置決定部210と、完了信号生成部212とに、測定した電流値を示す信号を出力する。
【0041】
速度算出部208は、リニアモータ10に取り付けられている磁気センサ112から出力される正弦波信号及び余弦波信号(出力VoutA及びVoutB)の変化量に基づいて、リニアモータ10に備えられているロッド101の移動速度を算出する。
位置算出部209は、磁気センサ112から出力される正弦波信号及び余弦波信号(出力VoutA及びVoutB)の変化量に基づいて、ロッド101の原点からの移動量を算出する。位置算出部209は、位置制御部201、速度切替位置決定部210、及び位置判定部211にロッド101の位置を示す位置情報を出力する。
【0042】
速度切替位置決定部210は、FLモード開始位置を示す信号を位置判定部211に出力する。FLモード開始位置は、ロッド101及び加圧体11が、ワーク33及び基板31に向かって移動しているときに、速度指令を第1速度指令から第2速度指令に切り替える位置である。
また、速度切替位置決定部210は、速度切替位置(FL3POS)を示す信号を位置判定部211に出力する。速度切替位置は、ワーク33を基板31に押し付けた後にロッド101を原点に向かって移動させているときに、速度指令を第3速度指令から第4速度指令に切り替える位置である。
【0043】
また、速度切替位置決定部210は、ワーク33を押し付ける処理を最初に行うとき、予め記憶している初期切替位置(FL2POSSUB)をFLモード開始位置として位置判定部211に出力する。速度切替位置決定部210は、ワーク33を最初に押し付けた際における、ロッド101が移動する速度及び位置と、リニアモータ10に流れる電流とに基づいて、ワーク33を押し付けてワーク33を基板31に取り付ける工程に要する時間を短縮するように、FLモード開始位置を更新する。以後、速度切替位置決定部210は、更新したFLモード開始位置を位置判定部211に出力する。初期切替位置は、ワーク33の高さに応じて予め定められた位置であり、加圧体11をワーク33に接触させたときに不要な衝撃をワーク33に与えないように加圧体11(リニアモータ10のロッド101)の減速を開始する位置である。速度切替位置(FL3POS)は、例えば、初期切替位置(FL2POSSUB)と同じ位置が予め設定されている。
【0044】
移動制御部としての位置判定部211は、外部より入力される位置指令及び動作開始信号と、位置算出部209が出力する位置情報とに基づいて、位置制御部201が出力する4つの速度指令からいずれか一つをスイッチ部202に選択させる制御をする。また、位置判定部211は、位置指令及び動作開始信号と、位置情報とに基づいて、速度制御部203が出力する2つの電流指令のうちいずれか一方をスイッチ部204に選択させる制御をする。
完了信号生成部212は、加圧体11がワーク33を加圧しているときに、変流器207が測定した電流値が予め定められた電流制限値(FL2I)に到達すると、動作完了信号(UO2)を外部に出力する。
電気角補正部213は、磁気センサ112が出力する正弦波信号及び余弦波信号から電気角を算出する。また、電気角補正部213は、位置判定部211の制御に応じて、算出した電気角、又は算出した電気角に対して補正をした電気角のいずれか一方を電力変換器206に出力する。
【0045】
次に、工作装置1がワーク33を最初に押し付ける際の動作について説明する。
図19は、本実施形態における工作装置1がワーク33を最初に押し付ける際の動作を示すフローチャートである。ここで、ロッド101がワーク33及び基板31に近づく方向をCW方向とし、ロッド101がワーク33及び基板31から遠ざかる方向をCCW方向とする。
制御部20は、ワーク33の位置に基づく位置指令が外部から入力されると、リニアモータ10の駆動を開始し、加圧体11を原点に移動させる原点復帰を行う(ステップS101)。
【0046】
位置判定部211は、原点復帰が完了すると、外部から動作完了信号(UI2)がオンになっているか否かを判定し(ステップS102)、動作開始信号がオンになるまで待機する(ステップS102:NO)。
ステップS102において、動作開始信号がオンになると(ステップS101:YES)、位置判定部211は、第1速度指令をスイッチ部202に選択させるとともに、非制限電流指令をスイッチ部204に選択させ(ステップS103)、リニアモータ10のロッド101をワーク33に向かって(CW方向に)移動させる(ステップS104)。
【0047】
位置判定部211は、加圧体11の位置が初期切替位置(FL2POSSUB)に到達しているか否かを判定し(ステップS105)、加圧体11が初期切替位置(FL2POSSUB)に到達するまで第1速度指令を用いてリニアモータ10を駆動させる(ステップS105:NO)。
ステップS105において、加圧体11が初期切替位置(FL2POSSUB)に到達すると(ステップS105:YES)、位置判定部211は、スイッチ部202に第2速度指令を選択させるとともに、スイッチ部204に制限電流指令を選択させ(ステップS106)、ロッド101の移動速度を減速させる。
【0048】
速度切替位置決定部210は、第2速度指令が選択された後に、ロッド101の移動速度が第2速度(FL2SPD)以下であるか否かを判定し(ステップS107)、ロッド101の移動速度が第2速度(FL2SPD)以下になるまで判定を繰り返し行う(ステップS107:NO)。
ステップS107において、ロッド101の移動速度が第2速度以下になると(ステップS107:YES)、速度切替位置決定部210は、現在の加圧体11の位置と、初期切替位置(FL2POSSUB)との差分(FL2POSMAIN1)を算出し、算出した差分(FL2POSMAIN1)を記憶する(ステップS108)。
【0049】
電気角補正部213は、リニアモータ10の最大推力に対する「推力制限値」の比X(=「推力制限値」/「最大推力」)を算出する(ステップS109)。ここで、推力制限値とは、ワーク33及び基板31に加えてもよい圧力(荷重)の最大値に対応する。
電気角補正部213は、ステップS109において算出した推力の比Xに対応する位相角度Yを、次式(6)を用いて算出する(ステップS110)。
Y=cos
−1(X) … (6)
式(6)において「cos
−1」は逆余弦関数である。
【0050】
電気角補正部213は、磁気センサ112が出力する正弦波信号及び余弦波信号から算出した電気角に替えて、電気角に対して位相角度Yを加えて補正を行った補正電気角を電力変換器206に出力する(ステップS111)。
以降、電気角補正部213が補正電気角を出力している間、電力変換器206はロッド101の磁極位置に対して位相角度Y分進んだ位相の電圧をU、V、W相のコイル104に印加する。なお、位相角度Yを用いた補正は、電気角に対して位相角度Yを引くことにより行うようにしてもよい。この場合、電力変換器206はロッド101の磁極位置に対して位相角度Y分遅れた位相の電圧をU、V、W相のコイル104に印加することになる。
【0051】
速度切替位置決定部210は、変流器207が測定した電流値が電流制限値(FL2I)以上であるか否かを判定し(ステップS112)、測定した電流値が電流制限値(FL2I)に到達するまで待機する(ステップS112:NO)。
ステップS112において、速度切替位置決定部210は変流器207が測定した電流値が電流制限値(FL2I)に到達し、測定した電流値が電流制限値(FL2I)以上であると判定すると(ステップS112:YES)、現在の加圧体11の位置から、ステップS108において算出した差分(FL2POSMAIN1)を引いた位置を、新たなFLモード開始位置(FL2POSMAIN2)として記憶する(ステップS113)。このとき、完了信号生成部212は、動作完了信号(UO2)をオンにして外部に出力する(ステップS114)。
なお、ステップS114において、新たなFLモード開始位置(FL2POSMAIN2)を算出する際に、所定の距離Δdをマージンとして設けるようにしてもよい。具体的には、現在の加圧体11の位置から、差分(FL2POSMAIN1)と距離Δdとを引いた位置を、新たなFLモード開始位置(FL2POSMAIN2)にするようにしてもよい。
【0052】
位置判定部211は、外部から入力される動作開始信号がオフであるか否かを判定し(ステップS115)、動作開始信号がオフになるまで待機する(ステップS115:NO)。
ステップS115において、動作開始信号がオフになると(ステップS115:YES)、位置制御部201は、原点を移動先とする位置指令に応じて速度指令を算出する。電気角補正部213は、補正電気角に替えて、磁気センサ112が出力する正弦波信号及び余弦波信号から算出した電気角を電力変換器206に出力する(ステップS116)。すなわち、補正電気角を用いたリニアモータ10の駆動を終了する。
位置判定部211は、第3速度指令をスイッチ部202に選択させるとともに、制限電流指令をスイッチ部204に選択させて(ステップS117)、ロッド101を原点に向かって(CCW方向に)移動させる(ステップS118)。
【0053】
位置判定部211は、加圧体11が速度切替位置(FL3POS)に到達しているか否かを判定し(ステップS119)、加圧体11が速度切替位置(FL3POS)に到達するまで待機する(ステップS119:NO)。
ステップS119において、加圧体11が速度切替位置(FL3POS)に達すると(ステップS119:YES)、位置判定部211は、第4速度指令をスイッチ部202に選択させる(ステップS120)。
【0054】
位置判定部211は、加圧体11が原点に到達したか否かを判定し(ステップS121)、加圧体11が原点に達するまで待機する(ステップS121:NO)。
ステップS121において、加圧体11が原点に到達すると、位置判定部211は、加圧体11が原点に到達したことを示す信号を完了信号生成部212に出力し、完了信号生成部212が動作完了信号をオフにして(ステップS122)、ワーク33を基板31に最初に押し付ける動作を終了する。
【0055】
図20は、本実施形態における工作装置1が更新したFLモード開始位置を用いてワーク33を基板31に押し付ける動作を示すフローチャートである。
制御部20は、ワーク33を取り付ける基板31の位置、あるいはワーク33の位置に基づく位置指令が外部から入力されると、リニアモータ10の駆動を開始し、加圧体11を原点に復帰させる原点復帰を行う(ステップS201)。
【0056】
位置判定部211は、原点復帰が完了すると、外部から動作開始信号(UI2)がオンになっているか否かを判定し(ステップS202)、動作開始信号がオンになるまで待機する(ステップS202:NO)。
ステップS202において、動作開始信号がオンになると(ステップS202:YES)、位置判定部211は、第1速度指令をスイッチ部202に選択させるとともに、非制限電流指令をスイッチ部204に選択させ(ステップS203)、リニアモータ10のロッド101をワーク33に向かって(CW方向に)移動させる(ステップS204)。
【0057】
位置判定部211は、加圧体11の位置がFLモード開始位置(FL2POSMAIN2)に到達しているか否かを判定し(ステップS205)、加圧体11がFLモード開始位置(FL2POSMAIN2)に到達するまで第1速度指令を用いてリニアモータ10を駆動させる(ステップS205:NO)。
ステップS205において、加圧体11がFLモード開始位置(FL2POSMAIN2)に到達すると(ステップS205:YES)、位置判定部211は、第2速度指令をスイッチ部202に選択させるとともに、制限電流指令をスイッチ部204に選択させ(ステップS206)、ロッド101の移動速度を減速させる。
【0058】
電気角補正部213は、ロッドの移動速度が第2速度以下になると磁気センサ112が出力する正弦波信号及び余弦波信号から算出した電気角に替えて、電気角に対して位相角度Yを加えて補正を行った補正電気角を電力変換器206に出力する(ステップS207)。
位置判定部211は、変流器207が測定した電流値が電流制限値(FL2I)以上であるか否かを判定し(ステップS208)、測定した電流値が電流制限値(FL2I)に到達するまで待機する(ステップS208:NO)。
ステップS208において、位置判定部211は、電流値が電流制限値(FL2I)に到達し、測定した電流値が電流制限値(FL2I)以上であると判定すると(ステップS208:YES)、電流値が電流制限値(FL2I)に到達したことを示す信号を完了信号生成部212に出力する。完了信号生成部212は、動作完了信号(UO2)をオンにして外部に出力する(ステップS209)。
【0059】
位置判定部211は、外部から入力される動作完了信号がオフであるか否かを判定し(ステップS210)、動作開始信号がオフになるまで待機する(ステップS210:NO)。
ステップS210において、動作開始信号がオフになると(ステップS210:YES)、位置制御部201は、原点を移動先とする位置指令に応じて速度指令を算出する。電気角補正部213は、補正電気角に替えて、磁気センサ112が出力する正弦波信号及び余弦波信号から算出した電気角を電力変換器206に出力する(ステップS211)。すなわち、補正電気角を用いたリニアモータ10の駆動を終了する。
位置判定部211は、第3速度指令をスイッチ部202に選択させるとともに、制限電流指令をスイッチ部204に選択させて(ステップS212)、ロッド101を原点に向かって(CCW方向に)移動させる(ステップS213)。
【0060】
位置判定部211は、加圧体11が速度切替位置(FL3POS)に到達しているか否かを判定し(ステップS214)、加圧体11が速度切替位置(FL3POS)に到達するまで待機する(ステップS214:NO)。
ステップS214において、加圧体11が速度切替位置(FL3POS)に到達すると(ステップS214:YES)、位置判定部211は、第4速度指令をスイッチ部202に選択させる(ステップS215)。
位置判定部211は、加圧体11が原点に到達したか否かを判定し(ステップS216)、加圧体11が原点に到達するまで待機する(ステップS216:NO)。
ステップS216において、加圧体11が原点に到達すると、位置判定部211は加圧体11が原点に到達したことを示す信号を完了信号生成部212に出力し、完了信号生成部212が動作完了信号(UO2)をオフにして(ステップS217)、ワーク33を基板31に押し付ける動作を終了する。
【0061】
図21は、
図20のステップS202からステップS209までの動作における速度、電流、及び動作完了信号の変化を示す波形図である。同図において、縦軸は加圧体11の位置を示している。
制御部20は、動作開始信号がオンになると、加圧体11を第1速度(FL1SPD)でワーク33に向かって移動させる。制御部20は、加圧体11がFLモード開始位置(FL2POSMAIN2)に到達すると、加圧体11を第1速度(FL1SPD)から第2速度(FL2SPD)まで減速させる。
制御部20は、加圧体11を第2速度(FL2SPD)でワーク33に向かって移動させ、ワーク33を基板31に向かって押し付ける。このとき、制御部20は、加圧体11をワーク33に押し付ける力が、電流制限値(FL2I)に対応する力より大きくなると動作完了信号をオンにする。
【0062】
図22は、
図20のステップS212からステップS217までの動作における速度、電流、及び動作完了信号の変化を示す波形図である。同図において、縦軸は加圧体11の位置を示している。
制御部20は、加圧体11をワーク33に押し付けた後、第3速度(FL3SPD)で加圧体11を原点に向かって移動させ、上昇させる。制御部20は、加圧体11が速度切替位置に達すると第3速度(FL3SPD)より早い第4速度(FL4SPD)で加圧体11を原点に向かって移動させる。
制御部20は、原点において加圧体11の速度が零になるように、リニアモータ10のロッド101の移動速度を減速させ、加圧体11が原点に到達すると動作完了信号をオフにする。
【0063】
上述のように、工作装置1は、リニアモータ10の駆動を開始してから加圧体11がFLモード開始位置(FL2POSMAIN2)に到達するまでの区間において、位置制御、速度制御、及び電流制御を組み合わせてリニアモータ10を制御する。また、工作装置1は、FLモード開始位置(FL2POSMAIN2)から加圧体11がワーク33に接触するまの区間において、速度制御及び電流制御を組み合わせてリニアモータ10を制御する。また、工作装置1は、加圧体11がワーク33に接触した後に電流制御でリニアモータ10を制御する。
すなわち、工作装置1は加圧体11の位置に応じて制御を切り替える。
工作装置1は、加圧体11の位置に応じた制御により加圧体11がワーク33に接触する前に第1速度より遅い第2速度に減速させることで、ワーク33に不要な衝撃を与えずに加圧体11をワーク33に押し付けることができ、ワーク33に加える荷重(圧力)を制御する精度を向上させることができる。また、リニアモータ10に流れる電流値が電流制限値以上になるまで第2速度で加圧体11を移動させる。電流値が電流制限値以上になった後に、例えば、リニアモータ10の駆動を止めたり、リニアモータ10に流れる電流値を小さくしたり、ワーク33から遠ざかる方向に可動子を移動させたりすることにより、ワーク33に必要以上の荷重を与えることが生じないようにすることができ、ワーク33に加える荷重を制御する精度を向上させることができる。
このように、工作装置1は、ワーク33に対する荷重を測定することなく、ワーク33に対する押し付け制御の精度を向上させることができる。
【0064】
また、工作装置1は、ワーク33を最初に押し付ける際に、第1速度から第2速度に減速する際に要する距離(差分(FL2POSMAIN1))を検出し、加圧体11がワーク33に接触した位置と差分(FL2POSMAIN1)とから新たなFLモード開始位置(FL2POSMAIN2)を算出する。また、工作装置1は、ワーク33を最初に押し付けた際に算出したFLモード開始位置(FL2POSMAIN2)を用いて、ワーク33を基板31に押し付ける動作を行う。
すなわち、工作装置1は、ワーク33を最初に押し付ける際に検出したワーク33の位置と、第1速度から第2速度に減速するまでに要する離とに基づいてFLモード開始位置を算出し、算出したFLモード開始位置を用いてワーク33の押し付けを行う。
これにより、工作装置1は、ワーク33の高さに応じたFLモード開始位置を算出し、算出したFLモード開始位置を用いた制御を行うことにより、ワーク33を押し付ける精度を向上させることができる。
【0065】
また、工作装置1は、駆動装置としてリニアモータ10を用いることにより、ロッド101(可動子)に与える推力をワーク33に直接加えることができるので、推力の方向を変換する機械構造を有する装置に比べて、機械構造における推力のロス等を生じさせることなくワーク33に圧力を加えることができ、推力を制御する精度を向上させることができる。
【0066】
また、工作装置1は、リニアモータ10の最大推力に対する推力制限値の比Xを算出し、算出した比Xに応じた位相角度Yを用いて電気角を補正している。電気角を補正することにより、U、V、W相のコイル104と、ロッド101内に積層されているマグネット103との位置関係である磁極位置に対して、最大の推力を発生させることができる電気角をずらすことにより、見かけ上の推力定数を小さく変更していることになる。
ところで、リニアモータ10が発生させる推力(トルク)は、推力定数N
0[N/Arms]とリニアモータ10に流れる電流i[Arms]とを乗算した値「N
0×i」となる。リニアモータ10における推力の分解能は、電力変換器206や変流器207における電流分解能と推力定数N
0とに比例する。推力定数N
0はコイル104に流れる電流とマグネット103の磁束との位相関係を一致させたときの値である。通常、リニアモータ10を駆動させる場合、制御部20はコイル104に流れる電流とマグネット103の磁束との位相関係を一致させるように電流を流す。位相がθずれると見かけ上の推力定数N
θは減少し、推力定数N
θは次式(7)で表される。
N
θ=N
0×cosθ … (7)
【0067】
図23は、電気角の位相ずれとリニアモータ10が発生させる推力との関係を示すグラフである。同図において、縦軸は推力を示し、横軸は位相のずれ量(角度)を示している。例えば位相が60度ずれると(θ=60度)、見かけ上の推力定数N
θは推力定数N
0の半分になる。
工作装置1において、加圧体11がFLモード開始位置(FL2POSMAIN2)に到達した後に、電気角を位相角度Yで補正した補正電気角を用いてリニアモータ10に通電することにより、見かけ上の推力定数N
θを小さくしている。これにより、工作装置1における推力の分解能を小さくすることができ、推力を制御する精度を向上させることができる。また、電圧指令を算出する際の丸め誤差や量子化誤差から生じる推力の誤差やばらつきを抑えることができ、推力の制御を高精度に行うことができる。
【0068】
また、工作装置1は、可動子の移動する速度が第2速度以下になると、電気角補正部213が電気角を補正するようにしている。これにより、工作装置1は、可動子がFLモード開始位置に到達した後に速やかに可動子の移動速度を第2速度まで減速させ、第2速度に達すると推力の分解能を高くして推力の制御を精度よく行うことができる。
【0069】
(変形例)
上述の実施形態において説明した押し付け制御を行う場合、押し付けを開始した後に瞬時に規定された押し付け力に到達することが望ましい。押し付け力の応答時間を短くするには、電流指令の応答を高速にする必要があるが、実際には制御系の応答によって遅れが生じてしまう。制御部20では、電流制御部205から変流器207を経由して電流制御部205に戻る制御ループと、速度制御部203から磁気センサ112を経由して速度制御部203へ戻る制御ループと、位置制御部201から磁気センサ112を経由して位置制御部201へ戻る制御ループとがある。押し付け力の応答時間には、電流制御部205を起点とする制御ループと、速度制御部203を起点とする制御ループとが影響する。押し付けを開始する際には位置は変化しないため、位置制御部201を起点とする制御ループの影響はほとんどない。
【0070】
電流制御部205を起点とする制御ループでは、ループが小さいため十分高速に制御されることが多く、電流の指令値と測定される値とはほとんど差がない。そのため、速度制御部203を起点とする制御ループが押し付け力の応答時間、すなわち押し付けの応答性能に大きな影響を与えることになる。そこで、速度制御部203において電流指令を算出する際に用いられている制御ゲイン(比例ゲインや積分ゲインなど)を大きくすることが考えられるが、リニアモータ10を含む工作装置1のメカ系の固有振動数によって制御ゲインの大きさは制限されてしまう。すなわち、安定した動作をリニアモータ10にさせるためには、制御ゲインを一定以上の値にすることができない。
【0071】
ところで、加圧体11でワーク33を押し付ける場合に着目すると、加圧体11とワーク33とが接触するため、リニアモータ10を含む工作装置1のメカ系の固有振動数は上昇する。したがって、押し付けを行う際は、加圧体11及びロッド101を移動させる際に比べ制御ゲインを大きくすることができる。そこで、加圧体11及びロッド101を移動させるときと、加圧体11でワーク33を押し付けるときとで、速度制御部203における制御ゲインを切り替えることにより、押し付け力の応答時間を短くして所望の押し付け力による押し付けを行うことができる。
【0072】
以下、
図20に示した工作装置1の動作に、速度制御部203における制御ゲインの切り替えを適用した動作を説明する。ここでは、速度制御部203には、2つの制御ゲインとして、移動用の制御ゲインと、移動用の制御ゲインより大きい値の押し付け用制御ゲインとの2つが予め記憶されている場合について説明する。
【0073】
図24は、本実施形態における工作装置1がワーク33を基板31に押し付ける動作の変形例を示すフローチャートである。同図に示されているフローチャートは、速度制御部203が制御ゲインを移動用の制御ゲインから押し付け用の制御ゲインに切り替える処理(ステップS206a)がステップS206とステップS207との間に加えられている点と、速度制御部203が制御ゲインを押し付け用の制御ゲインから移動用の制御ゲインに切り替える処理(ステップS210a)がステップS210とステップS211との間に加えられている点とが、
図20に示されているフローチャートと異なる。他のステップS201からステップS217のそれぞれにおける処理は、
図20のフローチャートと同じであるので、その説明を省略する。
【0074】
速度制御部203は、位置判定部211の判定結果に基づいて、ステップS206a及びステップS210aの処理を行う。なお、
図24において、制御ゲインを移動用制御ゲインから押し付け用制御ゲインへの切り替えをステップS206とステップS207との間に行う場合について示したが、これに限ることなく、加圧体11の位置がFLモード開始位置に達した後(ステップS205より後)から加圧体11がワーク33に接触するまでの間に、移動用制御ゲインから押し付け用制御ゲインに切り替えればよい。また、制御ゲインを押し付け用制御ゲインから移動用制御ゲインへの切り替えも、第3速度(FL3SPD)で原点に向かって(CCW方向へ)移動を開始する前(ステップS213より前)であればよい。また、速度制御部203は、第1速度から第2速度への減速が開始されたタイミングで制御ゲインを切り替えるようにしてもよい。
【0075】
上述のように、速度制御部203の制御ゲインを切り替えることにより、加圧体11及びロッド101をワーク33に向かって移動させるときと、並びに加圧体11及びロッド101を原点に向かって移動させるときとにおけるメカ系の固有振動数の制限を受けることなく制御ゲイン(押し付け用制御ゲイン)を定めることができるので、押し付け力の応答性を改善することができ、加圧体11がワーク33に接触してから所望の押し付け力にて加圧体11がワーク33を押し付けるまでの時間を短縮することができる。
なお、
図19に示した工作装置1の動作に、
図24に示したように速度制御部203における制御ゲインの切り替えを適用するようにしてもよい。
【0076】
なお、上述の実施形態及びその変形例においては制御部20がロッドタイプのリニアモータ10を制御する場合について説明したが、制御部20がフラットタイプのリニアモータや回転モータを制御するようにしてもよい。制御部20が回転モータを制御する場合回転運動をボールねじなどを用いて直線運動に変換するようにしてもよい。
また、
図19におけるステップS109及びステップS110の処理を事前に行い、電気角補正部213に位相角度Yを予め記憶させるようにしてもよい。
また、上述の実施形態においてはリニアモータ10に備えられているロッド101の一端に取り付けられた加圧体11でワーク33を加圧する場合について説明したが、ロッド101の一端にてワーク33を加圧するようにしてもよい。
【0077】
なお、上述の制御部20は内部に、コンピュータシステムを有していてもよい。その場合、上述した位置制御部201、スイッチ部202、速度制御部203、スイッチ部204、電流制御部205、速度算出部208、位置算出部209、速度切替位置決定部210、位置判定部211、完了信号生成部212、及び電気角補正部213の行う処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、各機能部の処理が行われることになる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。