特許第6068118号(P6068118)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6068118
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】搬送装置及び搬送用部材
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20170116BHJP
   B65G 49/07 20060101ALI20170116BHJP
   B25J 15/00 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   H01L21/68 B
   B65G49/07 E
   B25J15/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-266355(P2012-266355)
(22)【出願日】2012年12月5日
(65)【公開番号】特開2014-112595(P2014-112595A)
(43)【公開日】2014年6月19日
【審査請求日】2015年5月27日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】三輪 要
【審査官】 中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−514872(JP,A)
【文献】 特開2011−099156(JP,A)
【文献】 実開平04−063644(JP,U)
【文献】 国際公開第2011/077678(WO,A1)
【文献】 特開2010−109105(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/014442(WO,A1)
【文献】 特開2004−253402(JP,A)
【文献】 特開2004−022888(JP,A)
【文献】 特開2012−212866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
B25J 15/00
B65G 49/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気絶縁性を有する基材と、
該基材に配置され、静電力によって被吸着体を吸着する吸着電極を有するとともに、前記被吸着体に対向する吸着電極部と、
を備え、前記被吸着体を載置し吸着して搬送する搬送用部材において、
前記基材の表面に、前記被吸着体を支持する複数のスペーサを備えるとともに、該複数のスペーサの高さは前記吸着電極部の高さより高く設定されており、
且つ、前記基材をその表面と平行な方向で見た場合に、前記吸着電極部は、前記被吸着体が前記複数のスペーサによって支持される少なくとも2箇所の支持位置の間に配置された搬送用部材であって、
前記吸着電極部は、前記基材の表面より部分的に島状に突出して、複数個設けられているとともに、複数の前記吸着電極部が含まれる平面領域よりも外側に、前記複数のスペーサが配置されており、
且つ、前記スペーサに、前記吸着電極を備えたことを特徴とする搬送用部材。
【請求項2】
電気絶縁性を有する基材と、
該基材に配置され、静電力によって被吸着体を吸着する吸着電極を有するとともに、前記被吸着体に対向する吸着電極部と、
を備え、前記被吸着体を載置し吸着して搬送する搬送用部材において、
前記基材の表面に、前記被吸着体を支持する複数のスペーサを備えるとともに、該複数のスペーサの高さは前記吸着電極部の高さより高く設定されており、
且つ、前記基材をその表面と平行な方向で見た場合に、前記吸着電極部は、前記被吸着体が前記複数のスペーサによって支持される少なくとも2箇所の支持位置の間に配置された搬送用部材であって、
前記吸着電極部は、前記基材の表面より部分的に島状に突出して、複数個設けられており、
更に、前記複数のスペーサとして、前記基材の根本側に配置されたスペーサと該基材の根本側から突出するアームの先端側に配置されたスペーサとを備えるとともに、
前記根本側のスペーサと前記先端側とスペーサとの間に、前記アームの長手方向に沿って、複数の前記吸着電極部が配置されており、
且つ、前記スペーサに、前記吸着電極を備えたことを特徴とする搬送用部材。
【請求項3】
前記アームとして一対のアームを備えるとともに、該一対のアームは平行に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の搬送用部材。
【請求項4】
前記請求項1〜のいずれか1項に記載の搬送用部材を備え、該搬送用部材上に前記被吸着体を載置して搬送することを特徴とする搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置及び搬送用部材に関し、特に搬送装置において、例えば半導体ウェハ等の被搬送体(被吸着体)を載置し吸着して搬送する搬送用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送装置において被搬送体を保持する搬送用部材(例えばセラミック部材)は、ピックとも呼ばれ、複数のセラミック層を一体焼成してなるものや(例えば特許文献1、2参照)、誘電体である被搬送体(例えば半導体ウェハ)を静電力によって吸着可能にされたものが知られている(例えば特許文献3参照)。
【0003】
この静電力によって被搬送体を吸着して搬送する搬送用部材の内部には、静電力を発生させるための電極である吸着電極が設けられている。この技術では、静電力によって被搬送体を吸着して確実に保持することができるので、被搬送体を速やかに搬送することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−37047号公報
【特許文献2】特開2009−202240号公報
【特許文献3】特開2011−77288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上述した従来技術では、被搬送体を保持するための提案はなされているものの、被搬送体を搬送用部材から離脱させる対策が十分ではなかった。
例えば半導体ウェハを静電力を用いて吸着して保持する場合には、保持した後に吸着電極への通電をオフしたときでも、残留電荷やリンキング(大気圧による密着)によって、半導体ウェハが搬送用部材から離脱しないことがあった。
【0006】
そのため、次の作業に移るタイミングが遅くなり、作業時間が長くなるという問題があった。
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、被吸着体の離脱を容易に行うことができる搬送用部材及びその搬送用部材を用いた搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明(搬送用部材)は、第1態様として、電気絶縁性を有する基材と、該基材に配置され、静電力によって被吸着体を吸着する吸着電極を有するとともに、前記被吸着体に対向する吸着電極部と、を備え、前記被吸着体を載置し吸着して搬送する搬送用部材において、前記基材の表面に、前記被吸着体を支持する複数のスペーサを備えるとともに、該複数のスペーサの高さは前記吸着電極部の高さより高く設定されており、且つ、前記基材をその表面と平行な方向で見た場合に、前記吸着電極部は、前記被吸着体が前記複数のスペーサによって支持される少なくとも2箇所の支持位置の間に配置された搬送用部材であって、前記吸着電極部は、前記基材の表面より部分的に島状に突出して、複数個設けられているとともに、複数の前記吸着電極部が含まれる平面領域よりも外側に、前記複数のスペーサが配置されており、且つ、前記スペーサに、前記吸着電極を備えたことを特徴とする。
【0008】
本第1態様では、基材には、スペーサと吸着電極部とが設けられており、スペーサの高さは吸着電極部の高さより高く設定され、しかも、基材の表面と平行な方向で(即ち表面に正対する方向に対して垂直の方向にて)見た場合、吸着電極部は、スペーサの少なくとも2箇所の支持位置の間に配置されている。
【0009】
従って、搬送用部材の上に例えば半導体ウェハのような誘電体である被吸着体を載置した場合、即ち、スペーサ上に被吸着体を載置した場合には、被吸着体は、スペーサによって基材表面より離隔された箇所を有する。つまり、被吸着体は、スペーサの少なくとも2箇所の支持位置にて支持されて基材表面より離れた状態で保持される。
【0010】
この状態で、吸着電極に電力(電圧)が印加されると、吸着電極によって発生した静電力によって、被吸着体が吸引されるので、被吸着体が湾曲する。すなわち、被吸着体の支持位置側(両側)が支持された状態で、その間の部分が吸着電極によって引き寄せられるので、被吸着体の中央部分が湾曲して吸着電極部に接触する。
【0011】
よって、この状態では、被吸着体が確実に吸着されているので、被吸着体を搬送用部材に載置した状態で、例えば搬送装置によって、速やかに移動させることができる。
そして、吸着電極への電力の印加を停止した場合には、被吸着体は自身の弾性力(復元力)によって、速やかに吸着電極部から離脱するので、搬送用部材から被吸着体を容易に且つ速やかに分離(デチャック)することができる。
【0012】
本第1態様では、更に、前記吸着電極部は、前記基材の表面より部分的に島状に突出して、複数個設けられていると共に、複数の前記吸着電極部が含まれる平面領域よりも外側に、前記スペーサが配置されている。
つまり、本第1態様では、吸着電極部を、離散的に島状(例えば平面形状で円形)に設けている。よって、リンキングを減らすことができるので、残留吸着力を大きく低減できる。
しかも、吸着電極部を複数(特に近接して)配置することにより、異電極間において電荷を打ち消し合い易くなるので、残留電荷を低減する効果もある。
なお、ここで、島状とは、吸着電極部がスペーサより離れて(例えば離散的に)配置されていることを示している。また、1箇所の吸着電極部の大きさ(即ち平面方向の寸法)は、2つの支持位置間の距離の1/2未満とすることにより、支持位置間に吸着電極部を複数個配置できる。
なお、前記吸着電極部とは、吸着電極が設けられて、実際に被吸着体が吸着される箇所であり、通常は、吸着電極とその周囲(特に被吸着体が配置される上方)の基材部分(例えばセラミック部分)から構成されている。
【0013】
また、本第1態様では、スペーサに、吸着電極を備えている。従って、スペーサも吸着電極部として機能するので、吸着力が高いという利点がある。
(2)本発明(搬送用部材)は、第2態様として、電気絶縁性を有する基材と、該基材に配置され、静電力によって被吸着体を吸着する吸着電極を有するとともに、前記被吸着体に対向する吸着電極部と、を備え、前記被吸着体を載置し吸着して搬送する搬送用部材において、前記基材の表面に、前記被吸着体を支持する複数のスペーサを備えるとともに、該複数のスペーサの高さは前記吸着電極部の高さより高く設定されており、且つ、前記基材をその表面と平行な方向で見た場合に、前記吸着電極部は、前記被吸着体が前記複数のスペーサによって支持される少なくとも2箇所の支持位置の間に配置された搬送用部材であって、前記吸着電極部は、前記基材の表面より部分的に島状に突出して、複数個設けられており、更に、前記複数のスペーサとして、前記基材の根本側に配置されたスペーサと該基材の根本側から突出するアームの先端側に配置されたスペーサとを備えるとともに、前記根本側のスペーサと前記先端側とスペーサとの間に、前記アームの長手方向に沿って、複数の前記吸着電極部が配置されており、且つ、前記スペーサに、前記吸着電極を備えたことを特徴とする。
なお、前記第1態様と同様な構成については、同様な効果を奏する。例えば、本第2態様では、スペーサに、吸着電極を備えている。従って、スペーサも吸着電極部として機能するので、吸着力が高いという利点がある。また、島状及び吸着電極部の意味も前記第1態様と同様である。
(3)本発明は、第3態様として、前記アームとして一対のアームを備えるとともに、該一対のアームは平行に配置されていることを特徴とする。
【0019】
(4)本発明(搬送装置)は、第態様として、前記第1〜第態様のいずれかに記載の搬送用部材を備え、該搬送用部材上に前記被吸着体を載置して搬送することを特徴とする。
【0020】
本第態様では、上述した搬送用部材を用いて、被吸着材を確実に吸着して速やかに搬送することができ、しかも、搬送後等には、被吸着材を速やかに離脱させることができる。よって、作業能率が高いという顕著な効果を奏する。
【0021】
なお、以下に、本発明の各構成について説明する。
前記吸着電極部やスペーサの個数(但し複数個)は、前記各態様の範囲内において、半導体ウェハ等の被吸着材を湾曲させて保持できる限りは、その個数に限定はない。また、吸着電極の構成や形状(平面形状)としては、前記各態様の範囲内において、公知の各種の構成や形状を採用でき、被吸着材を吸着できる限りは、特に限定はない。
【0022】
前記基材としては、平板状の基板を採用でき、この基材を構成する材料として、電気絶縁性を有するセラミックや樹脂材料等を使用できる。
このセラミックとしては、アルミナ(Al23)、酸化イットリウム(Y23)、酸化珪素(SiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化マグネシウム(MgO)、ムライト(3Al23・2SiO2)等のセラミックスを利用できる。また、ガラスセラミック(例えばアルミナとホウケイ酸ガラスとの混合物)等を利用できる。更に、ポリイミド等の有機樹脂等を利用できる。
【0023】
なお、吸着電極、更には吸着電極に電気的に接続される導体パターンやビアなどの導電性を有する材料としては、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、銀(Ag)、銅(Cu)や、これらの合金、又は、導電性炭化ケイ素(SiC)を採用できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施例1の搬送装置のシステム構成を示す説明図である。
図2】実施例1の搬送用部材を示す平面図である。
図3】実施例1の搬送用部材を破断し、島状の吸着電極部を示す斜視図である。
図4】実施例1の搬送用部材を板厚方向に沿って破断し拡大して、その要部を模式的に示す断面図である。
図5】(a)は実施例1の搬送用部材上に半導体ウェハが載置された状態を示す正面図(セラミック基板の表面と平行な方向で見た状態(図2の左右方向と垂直の矢視A)を示す正面図)、(b)はその搬送用部材に載置された半導体ウェハが吸着されて湾曲した状態を示す正面図である。
図6】実施例1の搬送用部材の製造手順を示す説明図である。
図7】実施例2の搬送用部材を板厚方向に沿って破断し拡大して、その要部を模式的に示す断面図である。
図8】(a)は実施例3の搬送用部材を板厚方向に沿って破断して模式的に示す断面図、(b)は実施例4の搬送用部材を板厚方向に沿って破断して模式的に示す断面図、(c)は実施例5の搬送用部材を板厚方向に沿って破断して模式的に示す断面図である。
図9】(a)は実施例6の搬送用部材の平面図、(b)はその搬送用部材を板厚方向に沿って破断して模式的に示す断面図である。
図10】実施例7の搬送用部材の平面図である。
図11】実施例8の搬送用部材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、本発明を実施するための形態(実施例)の搬送装置及び搬送用部材について説明する。
【実施例1】
【0026】
a)まず、搬送用部材を使用する搬送装置の全体の構成について説明する。
図1に示す様に、本実施例1では、半導体製造装置の一部を構成する装置として、搬送装置1が用いられており、搬送装置1によって搬送される被搬送体(被吸着体)は、円盤状の誘電体であり、弾性を有するシリコン製のウェハ(半導体ウェハ)3である。
【0027】
前記搬送装置1は、制御部5と、(セラミック部材からなる静電チャックである)搬送用部材7と、アーム機構9と、移動機構11と、吸着電極駆動部13とを備えている。
このうち、制御部5は、アーム機構9、移動機構11、吸着電極駆動部13の各部の動作を制御する電子制御装置(例えばマイクロコンピュータ)である。つまり、この制御部5は、コンピュータプログラムに基づいてCPUが動作することによって実現される。
【0028】
アーム機構9は、搬送用部材7と移動機構11との間を連結する機構であり、搬送用部材7を移動機構11に対して相対的に移動させ、搬送装置1の外部に対して半導体ウェハ3の受け渡しを行う。
【0029】
移動機構11は、搬送用部材7及びアーム機構9を搭載し、搬送装置1の外部に対して相対的に移動可能に構成された機構であり、搬送用部材7に保持された半導体ウェハ3の移動を行う。
【0030】
吸着電極駆動部13は、後述する一対の吸着電極K1、K2(図3参照)に対して、半導体ウェハ3を保持する静電力を発生させるための電圧を印加する回路である(即ち、一対の電極が異なる極性の電位となるように電圧を印加する)。
【0031】
b)次に、本実施例の要部である搬送用部材7について説明する。
図2に示す様に、本実施例の搬送用部材7は、半導体ウェハ3を載置し吸着して搬送するセラミック部材であり、略U字形状のセラミック基板15と、該セラミック基板15上に島状に分散して設けられた円盤形状の4個の吸着電極部17、19、21、23と、前記セラミック基板15上に設けられた直方体形状の3個のスペーサ25、27、29と、前記セラミック基板15の基端側(同図左側)に設けられた一対の給電部31、33と、前記セラミック基板15の(給電部31、33より)基端側に設けられた一対の固定穴35、37とを備えている。
【0032】
以下、各構成について説明する。
前記セラミック基板15は、複数のセラミック層15a、15b、15c、15d(図4参照)が積層一体化された平板状の基板であり、電気絶縁性を有する例えば酸化アルミニウム(アルミナ:Al23)等のセラミックからなる。
【0033】
このセラミック基板15は、略台形の基部41を有しており、その基部41から、左右対称(図2では上下方向)に、長方形の第1アーム部43及び第2アーム部45が、平行に先端側(同図右側)に向かって突出している。
【0034】
前記吸着電極部17、19は、半導体ウェハ3に対向する様に、第1アーム部43の表面に、長手方向に沿って、その中央部分に2個配置されており、同様に、吸着電極部21、23は、半導体ウェハ3に対向する様に、第2アーム部45の表面に、長手方向に沿って、その中央部分に2個配置されている。なお、第1アーム部43と第2アーム部45とにおける各吸着電極部17〜23の配置は、同図の上下方向において同じ位置である。
【0035】
この吸着電極部17〜23は、図3に拡大して示すように、セラミック基板15の表面から島状に突出するように形成されている。つまり、吸着電極部17〜23は、セラミック基板15の一方の側(表面側:同図上方)から、僅かに(例えば0.5mm)円盤状(円柱状)に突出したものであり、この(セラミックからなる)突出した部分49の内部に、表面と平行に上述した(左右対称の形状の)一対の吸着電極K1、K2が配置されている。
【0036】
なお、突出した部分49のセラミック材料は、セラミック基板15と同じであり、突出した吸着電極部17〜23の厚み方向における吸着電極K1、K2の位置は、例えばほぼ中央である。
【0037】
前記スペーサ25〜29は、図2に示す様に、平面形状が長方形である。そのうち、第2スペーサ27は、第1アーム部43の先端部分にて、同図の上下方向に伸びるように配置され、同様に、第3スペーサ29は、第2アーム部45の先端部分にて、同図の上下方向に伸びるように配置されている。また、第1スペーサ25は、基部41の右側部分(即ちU字の根元部分)にて、同図の上下方向に伸びるように配置されている。
【0038】
このスペーサ25〜29は、図4に一部を示すように、セラミック基板15の一方の側(表面16側:同図上方)において、吸着電極部17〜23の高さΔH1より僅かに(ΔH2:例えば0.5mm)高くなるように直方体状(四角柱状)に突出したものであり、その材料は、セラミック基板15と同じである。なお、吸着電極部17〜23の高さΔH1は、基板の表面16からの高さである。
【0039】
ここで、上述した搬送用部材7の外形形状と内部構造との関係について説明する。
図4に示すように、セラミック基板15の内部には、給電部31、33と吸着電極部17、19、21、23の吸着電極K1、K2とを電気的に接続するために、例えばタングステン(W)を主成分とする導電材材料を用いた導電パターン47が形成されている。この導電パターン47は、セラミック基板15の第3セラミック層15cと第4セラミック層15dとの間に配置されている。
【0040】
更に、第3セラミック層15cの上には、第1セラミック層15aと第2セラミック層15bが積層されているが、この第1セラミック層15aと第2セラミック層15bとの一部が(表面側より)削られていることにより、前記スペーサ25〜29や吸着電極部17〜23が、基板表面16より上方に突出するように構成されている。
【0041】
また、吸着電極部17〜23のうち、第1セラミック層15aと第2セラミック層15bとの間には、吸着電極K1、K2が形成されており、吸着電極K1、K2は、ビア51によって、導電パターン47と接続されている。
【0042】
この導電パターン47は、給電口53に嵌め込まれた金属製(導電性)の給電部材55に接続されており、この給電口53及び給電部材55によって給電部31、33が構成されている。
【0043】
なお、導電パターン47としては、前記図2に示す様に、吸着電極部17〜23における一方の電極である4個の吸着電極K1と第1給電部31とを接続する第1導電パターン47aと、吸着電極部17〜23における他方の電極である4個の吸着電極K2と第2給電部33とを接続する第2導電パターン47bとが形成されている。
【0044】
c)次に、搬送用部材7によって半導体ウェハ3を湾曲させて吸着する構成について説明する。
本実施例では、吸着電極部17〜23及びスペーサ25〜29の高さ及び配置に特徴があり、吸着電極K1、K2の静電力によって半導体ウェハ3を吸着したときに、吸着電極部17〜23とスペーサ25〜29によって、半導体ウェハ3の中央部分が凹むように、吸着電極部17〜23及びスペーサ25〜29の高さ及びそれらの配置が設定されている。
【0045】
つまり、上述した様に、吸着電極部17〜23の高さ(ΔH1)より、各スペーサ25〜29の高さが僅かに(ΔH2)高いように設定されている。なお、4個の吸着電極部217〜23同士の高さは同じであり、3個のスペーサ25〜29同士の高さも同じである。
【0046】
しかも、図5(a)に示す様に、セラミック基板15をその表面と平行な方向で見た場合、即ち、セラミック基板15の厚み方向(又は基板表面)に対して垂直の方向から見た場合、吸着電極部17〜23は、半導体ウェハ3がスペーサ25〜29によって支持される少なくとも2箇所の支持位置(ここでは、左のスペーサ25と右のスペーサ27、29)の間に配置されている。なお、支持位置とは、スペーサ25〜29が半導体ウェハ3に接触して支持される位置である。
【0047】
つまり、前記図2に示す様に、吸着電極部17〜23(従って吸着電極K1、K2)が含まれる平面領域より外側、即ち、吸着電極部17〜23の外周部分を結んだ四角形の平面領域より外側に、スペーサ25〜29が配置されている。
【0048】
従って、図5(a)に示す様に、搬送用部材7の上に半導体ウェハ3が載置される場合には、半導体ウェハ3は、吸着電極部17〜23より高い3個のスペーサ25〜29の上に載置されることになり、吸着電極部17〜23には接触しない。
【0049】
次に、図5(b)に示す様に、吸着電極部17〜23によって(即ち、吸着電極K1、K2への通電によって)、半導体ウェハ3が吸着される場合には、半導体ウェハ3の中央部分は、吸着電極K1、K2の静電力によって、同図下方に(吸引されて)移動する(凹む)が、半導体ウェハ3の外周側(同図左右側)は、各吸着電極部17〜23より高いスペーサ25〜29に規制されて、それより下方には移動しない。
【0050】
よって、同図に示す様に、吸着電極部17〜23によって、半導体ウェハ3が吸着されて、半導体ウェハ3が吸着電極部17〜23の上部に接触した場合には、半導体ウェハ3は下方に凸の湾曲した状態(凹んだ状態)となる。
【0051】
その後、吸着電極K1、K2への通電がオフされて、半導体ウェハ3の吸着が解除される場合には、半導体ウェハ3は、自身の弾性によって、図5(a)に示す様に、その中央部分は、吸着電極部17〜23から離脱して上昇し、スペーサ25〜29のみによって保持された(即ち下方より支持された)状態となる。
【0052】
d)ここで、本実施例の搬送用部材の製造方法について簡単に説明する。
図6(a)に示すように、始めに、各セラミック層15a〜15dの元となる各グリーンシート61(61a、61b、61c、61d)を用意する。このグリーンシート61は、周知のように、例えばアルミナからなるセラミック材料粉末に、有機バインダ、可塑剤、溶剤などを混合してシート状に形成したものである。
【0053】
次に、各セラミック層15a〜15dに応じて、各グリーンシート61a〜61dを加工する。
具体的には、各グリーンシート61a〜61dを正方形に切断した後に、後加工(スクリーン印刷、切削加工、熱圧着など)における位置合わせに適したガイド孔(図示せず)を、各グリーンシート61a〜61dの外周付近にパンチング加工する。また、必要に応じて、各グリーンシート61a〜61dの所定箇所に、導電体ペースト63、65をスクリーン印刷する。更に、必要に応じて、ビア51を形成する位置に、ビア孔67をパンチング加工し、そのビア孔67に導電体ペースト68を穴埋めする。
【0054】
次に、上述した加工を行った各グリーンシート61a〜61dを積層し、熱圧着によって接合して、グリーンシート積層体69を形成する。
次に、図6(b)に示す様に、グリーンシート積層体69に対して切削加工を行う。具体的には、スペーサ25〜29や吸着電極部17〜23となる部分以外のグリーンシート積層体69の表面を切削して、スペーサ用の凸部71や吸着電極用の凸部73を形成する。
【0055】
次に、グリーンシート積層体69を、大気中で例えば250℃で10時間曝することにより、脱脂を行う。
次に、図6(c)に示す様に、グリーンシート積層体69を一体焼成する。具体的には、1400〜1600℃の還元雰囲気にて、グリーンシート積層体69を焼成し、焼成体75を得る。なお、この際に、スペーサ25〜29が形成される。
【0056】
次に、図6(d)に示す様に、焼成体75の表面を研磨する。具体的には、吸着電極用の凸部73の表面(上部)を研磨して、その高さを(高さΔH1となるように)低くする。これによって、吸着電極部17〜23が形成される。なお、スペーサ用の凸部71の上部を、若干研磨して、スペーサ25〜29を形成してもよい。
【0057】
その後、給電口53に給電部材55を装着する。
これによって、本実施例の搬送用部材7が得られる。
e)次に、本実施例の効果を説明する。
【0058】
本実施例では、搬送用部材7のセラミック基板15には、複数のスペーサ25〜29と複数の吸着電極部17〜23とが設けられており、スペーサ25〜29の高さは吸着電極部17〜23の高さ(ΔH1)より若干(ΔH2)高く設定され、しかも、吸着電極部17〜23は、スペーサ25〜29の少なくとも2箇所の支持位置の間(図2に示す左右のスペーサ25〜29の間)に配置されている。
【0059】
従って、搬送用部材7の上に(誘電体で且つ弾性体である)半導体ウェハ3を載置した場合、即ち、スペーサ25〜29上に半導体ウェハ3が載置された場合には、半導体ウェハ3は、スペーサ25〜29によって基材表面より離隔された状態となる。即ち、半導体ウェハ3は、スペーサ25〜29の少なくとも2箇所の支持位置にて支持されて基材表面より離れた状態で保持される。
【0060】
この状態で、吸着電極K1、K2に電力(電圧)が印加されると、吸着電極K1、K2によって発生した静電力によって、半導体ウェハ3が吸引されるので、半導体ウェハ3が基板表面側に湾曲する。すなわち、半導体ウェハ3の両側が支持された状態で、その間の部分が吸着電極K1、K2によって引き寄せられるので、半導体ウェハ3の中央部分が湾曲して吸着電極部17〜23に接触する。
【0061】
よって、この状態では、半導体ウェハ3が確実に吸着されているので、半導体ウェハ3を搬送用部材7に載置した状態で、搬送装置1によって、速やかに移動させることができる。
【0062】
そして、吸着電極K1、K2への電力の印加を停止した場合には、半導体ウェハ3は自身の弾性力(復元力)によって、速やかに吸着電極部17〜23から離脱するので、搬送用部材7から半導体ウェハ3を容易に且つ速やかに分離(デチャック)することができる。
【0063】
また、本実施例では、複数の吸着電極部17〜23を、セラミック基板15の表面より部分的に島状に突出させて設けている。
よって、残留応力を低減できるとともに、リンキングを減らすことができるので、残留吸着力を大きく低減できる。
【実施例2】
【0064】
次に、実施例2について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は簡略化する。
図7に示す様に、本実施例2の搬送用部材81は、前記実施例1と同様なセラミック基板83の表面において、前記実施例1と同様な凸形状のスペーサを設ける位置に、そのスペーサの平面形状と同様な凹部85を有している。そして、この凹部85に、前記スペーサと同様な凸部を構成するように、別体の直方体形状の部材(別体のスペーサ87)が嵌められている。
【0065】
なお、この別体のスペーサ87としては、例えばPEEK等の樹脂製の部材を採用できる。
また、本実施例2の搬送用部材81を製造する場合には、実施例1と同様にセラミック製の(凹部85を有する)焼結体を製造した後に、凹部85に別体のスペーサ87を嵌めこみ、接着剤等で固定すればよい。
【0066】
本実施例2によっても、前記実施例1と同様な効果を奏する。また、スペーサ用の凸部を浮き彫りするよりも、凹部を形成する方が製造が容易であるという利点がある。更に、別体のスペーサ87の高さを容易に調節できるという効果がある。
【実施例3】
【0067】
次に、実施例3について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は簡略化する。
図8(a)に示す様に、本実施例3の搬送用部材91は、前記実施例1と同様に、同図の左右にスペーサ93、95を配置するとともに、その間に吸着電極部97を配置したものである。
【0068】
特に本実施例3は、スペーサ93、95の内部に吸着電極K1、K2を設けることにより、スペーサ93、95も吸着電極部として機能させるものである。
本実施例3でも、前記実施例1と同様な効果を奏するとともに、スペーサ93、95も吸着電極部として機能するので、吸着力が高いという利点がある。
【0069】
なお、本実施例では、左右のスペーサ93、95の間に、1箇所に吸着電極部97を配置した例を示したが、複数個の吸着電極部を設けてもよい(他の実施例も同様である)。
【実施例4】
【0070】
次に、実施例4について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は簡略化する。
図8(b)に示す様に、本実施例4の搬送用部材101は、前記実施例1と同様に、同図の左右にスペーサ103、105を配置するとともに、その間に(吸着電極K1、K2を有する)吸着電極部107を配置したものである。
【0071】
特に本実施例4では、吸着電極部107は、セラミック基板109の表面から上方に突出しておらず、吸着電極K1、K2は、セラミック基板109の内部に配置されている。従って、スペーサ103、105の間の基板表面は、凹凸がなく平坦である。
【0072】
本実施例4でも、前記実施例1と同様な効果を奏するとともに、吸着電極部107が基板表面から突出していないので、その加工が容易であるという利点がある。
【実施例5】
【0073】
次に、実施例5について説明するが、前記実施例4と同様な内容の説明は簡略化する。
図8(c)に示す様に、本実施例5の搬送用部材111は、前記実施例4と同様に、同図の左右にスペーサ113、115を配置するとともに、その間に(吸着電極K1、K2からなる)吸着電極部117を、セラミック基板119の内部に配置したものである。
【0074】
特に本実施例5は、前記実施例3と同様に、スペーサ113、115の内部に吸着電極K1、K2を設けることにより、スペーサ113、115も吸着電極部として機能させるものである。
【0075】
本実施例5でも、前記実施例4と同様な効果を奏するとともに、スペーサ113、115も吸着電極部として機能するので、吸着力が高いという利点がある。
【実施例6】
【0076】
次に、実施例6について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は簡略化する。
図9に示す様に、本実施例6の搬送用部材121は、同図の左右にスペーサ123、125、127、129を配置するとともに、その間に(吸着電極K1、K2を有する)吸着電極部131、133を、セラミック基板135の内部に配置したものである。
【0077】
特に本実施例6では、前記実施例1の様に吸着電極部131、133を島状に配置するのではなく、左側のスペーサ123、125から右側のスペーサ127、129に至るまで、全面にわたって吸着電極K1、K2を設けたものである。
【0078】
本実施例6でも、前記実施例1と同様な効果を奏するとともに、吸着電極K1、K2の面積が広いので、吸着力が高いという利点がある。
【実施例7】
【0079】
次に、実施例7について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は簡略化する。
図10に示す様に、本実施例7の搬送用部材141は、実施例1と同様に、同図の左右にスペーサ143、145、147を配置するとともに、その間に(吸着電極K1、K2を有する)島状に突出する吸着電極部149、151、153、155を配置したものである。
【0080】
特に本実施例7では、前記実施例1の様に、U字状のセラミック基板を使用するのではなく、(2箇所の角部が斜めにカットされた)略長方形の板状のセラミック基板157を使用している。
【0081】
本実施例7でも、前記実施例1と同様な効果を奏するとともに、略長方形のセラミック基板157を使用するので、加工が容易で、且つ、丈夫であるという利点がある。
また、4個の吸着電極部149〜155を、中央部分にまとめて配置できるので、半導体ウェハ3を容易に湾曲できるという効果がある。
【0082】
なお、本実施例7の変形例として、吸着電極部149、151、153、155の周囲を取り囲むように、(複数のスペーサ143〜147ではなく)環状のスペーサを1個設けてよい。
【実施例8】
【0083】
次に、実施例8について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は簡略化する。
図11に示す様に、本実施例8の搬送用部材161は、実施例1と同様に、同図の左右にスペーサ163、165、167を配置するとともに、その間に(吸着電極K1、K2を有する)島状に突出する吸着電極部169、171を配置したものである。
【0084】
特に本実施例8では、前記実施例1の様に、U字状のセラミック基板を使用するのではなく、先端側が3つに分かれた三つ又状のセラミック基板173を使用している。
そして、中央の第1アーム部175の先端に第1スペーサ167を設けるとともに、第1アーム部175より短い左右(同図では上下方向)の第2、第3アーム部177、179に、(半導体ウェハ3の円形の外周に沿って)斜めに第2、第3スペーサ163、165を設けている。
【0085】
本実施例8でも、前記実施例1と同様な効果を奏するとともに、第2、第3アーム部177、179が短いので、搬送用部材161を軽量化でき、しかも、第2、第3スペーサ163、165は半導体ウェハ3の円形の外周に沿って形成されていので、半導体ウェハ3を保持し易いという利点がある。
【0086】
尚、本発明は前記実施例や変形例になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
(1)例えば、搬送される部材は、半導体ウェハに限らず、ガラス基板等が挙げられる。
【0087】
(2)また、搬送用部材の形状は、前記各実施例の形状に限らず、本発明の要件を満たす限り各種の形状を採用できる。
(3)更に、各実施例における個々の構成は、適宜、他の実施例に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0088】
1…搬送装置
3…半導体ウェハ
7、81、91、101、111、121、141、161…搬送用部材
15、83、109、119、135、157、173…セラミック基板
K1、K2…吸着電極
17、19、21、23、97、117、117、131、133、149、151、153、155、169、171…吸着電極部(第1〜第4吸着電極部)
25、27、29、87、93、95、103、105、113、115、123、125,127、129、143、145、147、163、165、167…スペーサ(第1〜第3スペーサ)
図1
図4
図5
図6
図7
図8
図2
図3
図9
図10
図11