(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ラインビーム式のレーザーセンサは、測定対象物に対してレーザーを直線状の投影ラインが生じるように投射する、請求項1に記載の塗工層を有するシートの製造方法。
前記レーザーセンサは、レーザーの投影ラインが、前記基材シート及び前記塗工層の幅方向に沿う向きであって、前記基材シートの搬送方向と直交する方向となるように配置される、請求項1又は2に記載の塗工層を有するシートの製造方法。
前記塗工層の断面積を、前記基材シートに塗工された塗料の質量に換算し、該塗料の質量に基づいて、前記送液ポンプによる塗料供給量を制御する、請求項1〜3の何れか1項に記載の塗工層を有するシートの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をその好ましい実施態様に基づき図面を参照して説明する。
図1は、本実施態様に用いた塗料塗工装置1、該塗料塗工装置1を用いて、塗料を走行する基材シート15に塗料を塗工して、塗工層を有するシート3を製造する様子を示す図である。
【0011】
塗料塗工装置1は、塗料11を貯留する貯留槽12と、送液ポンプとしての容積式ポンプ13と、吐出部としてのダイヘッド14と、塗料が塗布される基材シート15を裏面側から支持するバックアップロール16とを備えている。
容積式ポンプ13は、駆動モータ13aの回転速度に応じた容量の塗料を、貯留槽12側から吸液して同量をダイヘッド14に向けて供給する。容積式ポンプ13としては、例えば、ギアポンプ、ねじポンプ、ベーンポンプ等が好ましく用いられる。
ダイヘッド14は、容積式ポンプ13等により供給された塗料を、ダイリップから、バックアップロール16によって支持されつつ連続走行する基材シート15に対して吐出し、基材シート15の片面上に塗工する。
【0012】
塗料塗工装置1は、
図1及び
図2に示すように、ラインビーム式のレーザーセンサ17を備えている。このレーザーセンサ17は、塗料11の塗工により基材シート15上に形成される塗工層18の断面形状の計測に用いるものであるため、基材シート15の搬送方向Xにおいて、塗料11を塗工するダイヘッド14の位置よりも下流側に配置されている。
【0013】
ラインビーム式のレーザーセンサは、測定対象物に対してレーザーを直線状の投影ラインが生じるように投射し、その反射光を受光することにより、該測定対象物の投影ライン上の高低差を計測可能なものである。
塗料塗工装置1は、このようなレーザーセンサとして、レーザー19を直線状の投影ラインが生じるように投射する投射部と、そのレーザーの反射光を受光する2次元CCDと、及び2次元CCDの出力に基づき、投影ライン上の高低差を検知し、検知した高低差に基づき測定対象物の断面形状を計測する画像処理部とを備えたレーザーセンサ17を備えている。
そのような構成の2次元レーザーセンサ17としては、例えば、キーエンス株式会社製のLJ−G3000シリーズ、LJ−G5000シリーズ等を用いることができる。
【0014】
また、レーザーセンサ17により計測された断面形状は、
図3に示すように、レーザーセンサ17が備える機能又はレーザーセンサ17に接続された演算・制御部20が備える機能により、液晶モニター等からなる表示部(図示せず)に表示される。また、レーザーセンサ17が備える機能又はレーザーセンサ17に接続された演算・制御部20が備える機能により、レーザーセンサ17により計測された断面形状から塗工層18の断面積が算出される。塗工層18の断面積は、例えば、
図3に示すように、バックアップロール16の周面又はそれに基材シート15分の厚みを加えた位置に基準直線Sを設定し、該基準直線Sと塗工層18の表面の線18uとに挟まれた領域の面積として算出される。
レーザーセンサ17は、レーザー19の投影ラインが、基材シート15及び塗工層18の幅方向Yに沿う向きとなるように配置することが好ましい。基材シート15及び塗工層18の幅方向Yは、基材シートの搬送方向Xと直交しており、レーザー19の投影ラインは、基材シートの搬送方向Xと直交していることが好ましい。
【0015】
本実施態様の方法においては、
図1に示すように、帯状の基材シート15を、ロール状に巻回された原反ロール15Aから繰り出して、バックアップロール16の周面上に導入し、その基材シート15を、バックアップロール16の周速度で搬送し且つ該バックアップロール16により裏面側から支持させつつ、該基材シート15に対して、ダイヘッド14から吐出させた塗料11を連続的に塗工する。
そして、塗料11の塗布により基材シート15上に形成された塗工層18の断面形状を、前述したラインビーム式のレーザーセンサ17を用いて計測する。
【0016】
塗工層18の幅方向Yの全範囲が、一つのレーザーセンサ17の計測範囲Mに収まる場合には、該一つのレーザーセンサ17を用いて、塗工層18の全幅に亘る断面形状を計測することができる。
しかし、塗工層18の幅が、一つのレーザーセンサ17の計測範囲Mに収まらない場合、あるいは塗工層18の幅が広い場合と狭い場合のいずれにも対応できるようにしたい場合等には、
図2に示すように、レーザーセンサ17を、基材シート15及び塗工層18の幅方向Yの位置を異ならせて複数台(例えば2台)設置することにより、塗工層18の全幅に亘る断面形状を計測する。
また、その場合、
図2に示すように、一つのレーザーセンサ17の計測範囲Mと他のレーザーセンサ17の計測範囲Mとを一部重複させ、その重複範囲から得られる情報を利用して、一つのレーザーセンサ17により得た塗工層18の表面又は断面形状と、他のレーザーセンサ17により得た塗工層18の表面又は断面形状とを合成することが好ましい。
【0017】
2つのレーザーセンサ17により計測した塗工層の表面又は断面形状の合成方法の一例について、
図4を参照して説明する。
図4(a)には、一つのレーザーセンサ17により計測された塗工層18の表面又は断面形状が、第1のエリアA1に示され、他のレーザーセンサ17により計測された塗工層18の表面又は断面形状が、第2のエリアA2に示されている。第1のエリアA1と、第2のエリアA2には、それぞれ、基材シート15又は塗工層18の幅方向の中央位置Pにおける塗工層18の表面の位置P1,P2が表されているが、これらは、実際の塗工層においては同じ位置である。
そのため、第1のエリアA1に示された塗工層の表面又は断面形状における、前記中央位置Pを含む該中央位置Pより左側の部分と、第2のエリアA2に示された塗工層の表面又は断面形状における、前記中央位置Pを含む該中央位置Pより右側の部分とを、P1とP2とが一致するように合成すれば、
図4(b)に示すような、塗工層18の全幅に亘る表面又は断面形状の画像データが得られる。
そして、このようにして得た塗工層18の表面又は断面形状の画像データ等からも、前述の方法と同様にして、塗工層18の断面積を算出することができる(
図3参照)。
【0018】
このようにして、一つのレーザーセンサ又は複数のレーザーセンサを用いて得られた塗工層の断面形状に基づき、演算・制御部20において、塗工層の断面積が算出される。
演算・制御部20は、詳細は図示しないが、中央演算部、表示部、HDDやRAM等の記憶装置を備えたコンピュータ、コンピュータとレーザーセンサ17等の他の装置とを電気的に接続するインターフェース、コンピュータに組み込まれた所定のプログラム等から構成されている。
演算・制御部20には、レーザーセンサ17から塗工層の断面形状を示すデータが入力され、そのデータに基づき、塗工層の断面積が算出される。レーザーセンサ17による塗工層の断面形状の計測は、所定のサンプリング周期で行われ、そのそれぞれについて塗工層の断面積が算出され、その断面積の変化が、記憶装置に記録される。
【0019】
演算・制御部20は、このようにして算出された塗工層の断面積の変化に基づき、容積式ポンプ13による塗料供給量を制御することにより、基材シート15に対する塗料11の塗工量を制御する。
基材シート15の搬送速度が一定の場合、塗工層の断面積の変化は、そのまま基材シートに塗工された塗料の質量の変化となる。そのため、塗工層18の断面積に基づく塗工量の制御は、塗工層18の断面積を質量に換算せずに行うこともできる。
しかし、塗工質量を全数記録に残す等の品質管理の観点からは、塗工層18の断面積を、塗工量(塗料の質量)に換算し、該塗工量が所定の範囲に収まるように制御することが好ましい。例えば、塗工量が設定値に対して±10%に収まるように制御することが好ましい。
図5に示すように、塗工層の断面積と基材シートの一定長さ当たりの塗工量(質量)との間には高い相関関係がある。なお、
図5の断面積の値には、基材シートの断面積分も含まれている。また、
図5中の基材シートの幅が49mmの場合の一定長さ49mm当たりの塗工量(質量)である。本発明において計測する塗工層の断面形状は、基材シート部分を含む断面形状や断面積であっても良い。
【0020】
塗工層18の断面積の塗工量への換算は、予め、塗布する塗料の種類毎に、塗工量と塗工層の断面積との関係式を作成しておき、その関係式に従って換算することが好ましい。
例えば、塗工層18の断面積の塗工量(塗料の質量)への換算は、以下の方法で行う。
1)ステップ1
あるポンプの回転数(例えば100rpm)で、実際に塗工を行い、塗料が塗工された基材シートを、一定間隔(例えば、長さ49mm)にカットして、その質量を計測する。その質量から、塗料以外の材料の質量を減算して、基材シートに塗工した塗料の質量を求める。
なお、このステップは、例えば、基材シートに、塗料を塗工した後、更に後述する電解質及び吸収性ポリマーの粒子を付与した後、得られたシートの49mm当たりの質量を計測し、その計測値から、基材シート、電解質及び吸収性ポリマーの粒子の質量を減算して塗料の質量を求めてもよい。また、基材シートに、塗料のみを付加した後、得られたシートの49mm当たりの質量を計測し、その計測値から、基材シートの質量を減算して塗料の質量を求めてもよい。
2)ステップ2
ステップ1で設定したポンプの回転数を±10%と変更し、ステップ1と同様の手法で塗料の質量を求める。
3)ステップ3
ステップ1〜2で求めた塗料質量(この場合3水準)と各断面積値を用い、検量線を作成する。
4)ステップ4
ステップ3で作成した検量線から、一定間隔にカットされた基材シート1枚当たりの塗工量に換算できる。
断面積の塗工量から塗料質量への換算は、連続的に行っても良いし、所定の周期、例えば、後述するサンプリング周期毎に行っても良い。
【0021】
塗工層の断面積又は該断面積に基づき算出された塗工量(塗料の質量)に基づく、塗工量の制御は、容積式ポンプ13の駆動モータ13aの回転速度の制御することにより行われる。駆動モータ13aの回転速度は、サーボアンプ等のモータの速度制御部21に出力する回転制御信号(電圧や電流、デジタル信号等)を変化させ、あるいは所定の状態に維持することにより行うことができる。
【0022】
塗工量(質量)を一定に維持する制御方法としては、目標塗工量を中心として上下限を設定しておき、塗工層の断面積に基づき算出される塗工量が、上限値を上回った場合、あるいは上回ることが予測される場合(予測制御)には、駆動モータ13aの回転速度を、例えば数%程度遅くして、ダイヘッド14に対する塗料11の供給量を減少させ、下限値を下回った場合、あるいは下回ることが予測される場合(予測制御)には、駆動モータ13aの回転速度を、例えば数%程度早くして、ダイヘッド14に対する塗料11の供給量を増加させ、それら以外の場合には、駆動モータ13aの回転速度を一定に維持し、ダイヘッド14に対する塗料11の供給量をそのままに維持する方法等がある。
また、サンプリング周期(例えば100mS)ごとに入力される複数回分(例えば600回)の塗工層の断面積や断面積に基づき算出される質量の移動平均を算出し、該移動平均値が目標値に近づくように、駆動モータ13aの回転速度を常時又は一定時間毎に増加、減少又は維持させても良い。
なお、サンプリング周期は、基材シート15の搬送速度に応じて適宜に設定することができるが、塗料塗工量の高精度の観点から、例えば、基材シート15の長さ方向の長さ49mm当たりのサンプリング回数が、3回以上となるようにすることが好ましく、10回以上となるようにすることが好ましい。
塗料塗工後のシートを切断して枚葉のシートとする場合、一枚の枚葉のシート当たりのサンプリング回数が複数回になるようにすることが好ましい。
【0023】
本実施形態の方法によれば、現実に塗工された塗工量に応じて変動する塗工層の断面積に基づき、塗料供給量を制御するため、基材シートの走行を停止することなく塗工量の制御が可能であり、また、ラインビーム式のレーザーセンサを移動させることなく塗工層の断面積を計測するため、塗工層の幅方向の1箇所のみの変位を計測して制御する場合に比して高精度の制御が可能であるとともに、特許文献2の方法とは異なり、計測部を移動させた場合に生じ得る振動による精度低下等の不都合も生じない。
【0024】
更に、本実施形態の方法によれば、ラインビーム式のレーザーセンサを用いるため、厚みだけでなく幅方向の断面形状の計測が容易であるため、塗工層の全幅に亘る断面形状の計測が容易であり、塗工層の全幅に亘る断面形状から算出される断面積に応じた制御により、一層高精度の制御が可能である。例えば、
図3に示すように、塗工層18の幅方向Yの一部に盛り上がった部分18aが生じている場合であっても、それらを計算にいれた正確な塗工量の算出が可能である。なお、
図3の18b部分は、塗料が塗工されていない基材シートのエッジ部分である。前述した基準直線Sは、基材シートのエッジ部分18bの上面上に設定しても良いが、基材シートへ塗料が吸収される(入りこむ)ことや基材シートの厚みの振れの影響を受ける可能性があるため、そのような影響を排除する観点からは、バックアップロールの表面に設定することが好ましい。このように、本発明において計測する塗工層の断面形状や断面積は、基材シート部分を含めた断面形状や断面積であっても良い。
【0025】
また、前述のように、複数のレーザーセンサを用いて、塗工層の全幅に亘る断面形状を計測し、その断面形状に基づいて塗工層の断面積を算出することにより、塗工層18の幅が広い場合においても、全幅に亘る断面形状の計測及びそれに基づく高精度の塗工量の制御が可能である。なお、幅方向の位置を異ならせて設置する複数のレーザーセンサは、基材シートの流れ方向Xにおける同一位置の断面形状を計測するように設置することが好ましい。
【0026】
特に、
図2及び
図4に示すように、一つのレーザーセンサ17の計測範囲Mと他のレーザーセンサ17の計測範囲Mとを一部重複させ、その重複範囲から得られる情報を利用して、一つのレーザーセンサ17により得た塗工層18の表面又は断面形状と、他のレーザーセンサ17により得た塗工層18の表面又は断面形状とを合成すると、合成がしやすく、また、塗工層の幅が広い場合においても、全幅に亘る断面形状の計測及びそれに基づく塗工量の計測や制御を一層高精度に行うことができる。
【0027】
また、本実施態様においては、
図1に示すように、塗料11を、バックアップロール16上において塗工し、同一のバックアップロール16上において、レーザーセンサ17による、塗工層18の断面形状の計測を行っている。
このようにして、塗料の塗工後すぐに断面形状の計測を行うことで、塗料11中の液体に対して吸収性を有する基材シート15を用いた場合であっても、染みこみが少ない状態での計測となるため、塗工量の正確な測定が可能である。また、ラインビーム式のレーザーセンサ17が、バックアップロール16上の、固定された特定の位置にレーザーの投影ラインが生じるように設置されているため、前述した基準直線S等が変動し難い等により、塗工層の断面形状が安定し断面形状やそれに基づく断面積を高精度に計測することができる。
【0028】
本発明で塗工する塗料は、少なくとも基材シート15への塗工直後においては、該基材シート15から塗工層18が突出した状態となることが必要である。そのため、塗料は、粘性体の塗工液であることが好ましい。
粘性体とは流動体の一種であって、塗料、ゲル、スラリー、クリーム、インク、ドウなど流動性物質全般を言う。塗工液は、基材シート15の表面の全域に塗工されてもよく、あるいは基材シート15の走行方向の側部域が非塗工域となるように塗工されてもよい。また、基材シート15の走行方向に沿う複数条の塗工域がストライプ状に形成されるように塗工液を塗布塗工してもよい。
上述した各種の粘性体のうち、該粘性体が、例えば粉体が液媒体に分散されてなるスラリーである場合、該スラリーの粘度は、500mPa・s以上20,000mPa・s以下、特に1,000mPa・s以上10,000mPa・s以下であることが好ましい。粘度は、23℃・50%RHの環境下において、例えばB型粘度計の4号ローターを用いて測定される。
測定器:東機産業(株)製 BII形粘度型BHII No.4ローター
回転数6〜20rpm
また、粘性体が例えばドウである場合、該ドウの粘度は、剪断速度が10s
-1で3,000mPa・s以上300,000mPa・s以下であることが好ましく、剪断速度が1000s
-1で60mPa・s以上20,000mPa・s以下であることが好ましい。ドウとは、例えば本出願人の先の出願に係る特開平10−204499号公報に記載されるように、粉末組成物と液体、ペースト又はゲル等の流動性を有する物質との捏和物をいう。該流動性を有する物質には加熱や加圧、剪断により流動化するものも含まれる。ドウの粘度は、23℃・50%RHの環境下において、例えば下記の測定器を使用して測定される。
測定器:HAAKE社製回転粘度型 Rotovisco RV20
テストフィクスチュアにはクェット(内径19.2mm、外径23.1mm、ギャップ1.9mm、内筒長31.95mm)を使用。
更に、粘性体が例えばゲル(例えば化粧品シート等に用いられる含水ゲル)である場合、該ゲルの粘度は、400,000mPa・s以上1,300,000mPa・s以下であることが好ましい。粘度は、23℃・50%RHの環境下において、例えば下記の測定器を使用して測定される。
測定器:東機産業(株)製 回転粘度計TV−10R型
Tバーステージ TS−10型 Tバースピンドル
回転数5rpm 測定時間1分 ステージ上昇速度20mm/min
【0029】
また、塗料は、製造目的物の用途に応じた組成や材質のものを特に制限なく用いることができる。例えば乳化物、粘性油、含水ゲル、染料インク、樹脂塗料、ワックス、ホットメルト、液体洗剤のような固形分を含まない粘性体や、 顔料インク、磁気塗料、導電性塗料、絶縁塗料、粘稠化した粉末洗剤、被酸化性金属を水やゲルで粘稠化した液のような固形分を含む粘性体などを用いることができる。
【0030】
固形分を含む粘性体の好ましい一例として、被酸化性金属の粒子及び水を含む発熱組成物が挙げられる。この発熱組成物は、更に反応促進剤を含んでいてもよい。また、粘性体中での固形分の分散性を高める観点から、増粘剤や界面活性剤を含んでいてもよい。これらの成分を含む粘性体を基材シートの表面に直接塗工した後、電解質を散布して塗工層を形成することで、シート状の発熱体を得ることができる。電解質は、固体でも水溶液としてもよく、また粘性体に含ませてもよい。
被酸化性金属の粒子及び水を含む発熱組成物を、基材シート15上に設けてシート状の発熱体を製造する方法は公知であり、例えば、前述した特許文献1や、特開2012−000344号公報、特開2012−000345号公報、WO2011/158919等に記載されている。本発明の方法を用いて、基材シート、好ましくは繊維材料を含む繊維シートからなる基材シートに発熱組成物を塗工し、必要に応じて電解質を散布し、塗工層の上に別の基材シートを重ねてシート状の発熱体を製造する場合に使用する発熱組成物や基材シート、塗工後の加工方法等は、それらの公報に記載の材や方法を採用することができる。本発明で製造する塗工層を有するシートは、シート状の発熱体として未完成の製造途中の部材であっても良い。
【0031】
基材シート15としては、目的物の用途に応じた材質のものを特に制限なく用いることができる。例えば、紙、織布、編み物地、不織布などの繊維シート、樹脂製のフィルム、金属箔、これらの同種又は異種のものを2層以上に積層した積層体などを用いることができる。また、塗工層18の上に必要に応じて重ねる別の基材シートについても、基材シート15と同様のものを用いることができる。基材シート15と別の基材シートとは同じ材料でなくてもよい。
【0032】
例えば、基材シート15として、繊維シートを用いる場合、天然繊維及び合成繊維のいずれをも用いることができる。
塗料として、発熱組成物を塗工する場合、基材シートの構成繊維として親水性繊維を用いることで、発熱層に含まれる被酸化性金属との間で水素結合が形成されやすくなり、発熱層の保形性が良好になるという利点がある。また、親水性繊維を用いることで、基材シート15の吸水性ないし保水性が良好になり、発熱層の含水率をコントロールしやすくなるという利点もある。これらの観点から、親水性繊維としてはセルロース繊維を用いることが好ましい。セルロース繊維としては化学繊維(合成繊維)及び天然繊維を用いることができる。
【0033】
セルロースの化学繊維としては、例えばレーヨン及びアセテートを用いることができる。セルロース天然繊維としては、各種の植物繊維、例えば木材パルプ、非木材パルプ、木綿、麻、麦藁、等を用いることができる。これらのセルロース天然繊維のうち、太い繊維を容易に入手できる等の観点から、木材パルプを用いることが好ましい。セルロース天然繊維として太い繊維を用いることは、基材シートの吸水性ないし保水性の観点から有利である。
【0034】
本発明は上記実施形態に制限されず、適宜変更可能である。
例えば、基材シート15の幅方向に複数配置するレーザーセンサの数は、3台以上であっても良い。また、塗料を吐出させる吐出部は、ダイコーターのダイヘッドに代えて、ノズル、グラビアロール等を用いることもできる。
また、基材シート15を構成する単層シートとして、繊維状物からなる単層シートに代えて又は該単層シートと共にフィルムや発泡シート等を用いることもできる。
また、レーザーセンサの配置位置は、バックアップロール16上でなくても良く、例えば、バックアップロールより下流に配した別のロールや搬送手段上であっても良い。
また、基材シート15の搬送速度は一定でなくても良い。その場合、バックアップロールに取り付けたエンコーダー等の速度検出器により搬送速度を検知し、その信号を演算・制御部に入力し、その情報を加味して、塗工層の断面積を塗料量に換算することが好ましい。
【0035】
塗工層を有するシートの用途としては、シート状の発熱体や、基材シートにゲル状の層を設けた全顔パック等が挙げられる。塗工層を有するシートは、前述したように、製品として完成する前の製造途中の部材等であっても良い。
【0036】
上記の実施形態に関し、本発明は、更に以下の塗工層を有するシートの製造方法を開示する。
<1>
送液ポンプにより吐出部に供給して該吐出部から吐出させた塗料を、走行する基材シートに塗工して、塗工層を有するシートを製造する方法であって、
吐出部より下流に配置したラインビーム式のレーザーセンサを用いて、走行する基材シート上の塗工層の断面形状を計測し、計測した断面形状に基づき算出される塗工層の断面積に基づき、送液ポンプによる塗料供給量を制御する、塗工層を有するシートの製造方法。
【0037】
<2>
前記ラインビーム式のレーザーセンサは、測定対象物に対してレーザーを直線状の投影ラインが生じるように投射する、前記<1>に記載の塗工層を有するシートの製造方法。
<3>
前記レーザーセンサは、レーザーの投影ラインが、前記基材シート及び前記塗工層の幅方向に沿う向きであって、前記基材シートの搬送方向と直交する方向となるように配置される、前記<1>又は<2>に記載の塗工層を有するシートの製造方法。
<4>
前記塗工層の断面積を、前記基材シートに塗工された塗料の質量に換算し、該塗料の質量に基づいて、前記送液ポンプによる塗料供給量を制御する、前記<1>〜<3>の何れか1に記載の塗工層を有するシートの製造方法。
<5>
前記塗工層の断面積の塗工量への換算は、予め、塗布する塗料の種類毎に、塗工量と塗工層の断面積との関係式を作成しておき、その関係式に従って換算する、前記<4>に記載の塗工層を有するシートの製造方法。
<6>
前記計測は、前記塗工層の幅方向の全範囲を行う、前記<1>〜<5>の何れか1に記載の塗工層を有するシートの製造方法。
<7>
前記塗料を、ロール上において塗工し、同一のロール上において、前記レーザーセンサによる計測を行う、前記<1>〜<6>の何れか1に記載の塗工層を有するシートの製造方法。
<8>
前記レーザーセンサを複数用いて、前記塗工層の全幅に亘る断面形状を計測して前記断面積を算出する、前記<1>〜<7>の何れか1に記載の塗工層を有するシートの製造方法。
<9>
前記複数のレーザーセンサは、前記塗工層の断面形状の計測範囲を一部重複させて計測する、前記<8>に記載の塗工層を有するシートの製造方法。
<10>
一のレーザーセンサにより計測された塗工層の表面又は断面形状と、他のレーザーセンサにより計測された塗工層の表面又は断面形状について、同じ位置の部分が一致するように合成する、前記<9>に記載の塗工層を有するシートの製造方法。
<11>
塗料塗工装置を有し、塗料塗工装置は、塗料を貯留する貯留槽と、送液ポンプとしての容積式ポンプと、吐出部としてのダイヘッドと、塗料が塗布される基材シートを裏面側から支持するバックアップロールとを備えている、前記<1>〜<10>の何れか1に記載の塗工層を有するシートの製造方法。
<12>
塗工層の断面積又は該断面積に基づき算出された塗工量(塗料の質量)に基づく塗工量の制御は、容積式ポンプの駆動モータの回転速度の制御することにより行われ、駆動モータの回転速度は、サーボアンプのモータの速度制御部に出力する回転制御信号を変化させ、あるいは所定の状態に維持することにより行う、前記<1>〜<11>の何れか1に記載の塗工層を有するシートの製造方法。
<13>
塗料は、粘性体の塗工液である、前記<1>〜<12>の何れか1に記載の塗工層を有するシートの製造方法。
<14>
塗工液は、基材シートの表面の全域に塗工されてもよく、あるいは基材シートの走行方向の側部域が非塗工域となるように塗工されてもよく、また、基材シートの走行方向に沿う複数条の塗工域がストライプ状に形成されるように塗工されてもよい、前記<1>〜<13>の何れか1に記載の塗工層を有するシートの製造方法。
<15>
前記粘性体が、粉体が液媒体に分散されてなるスラリーである場合、該スラリーの粘度は、500mPa・s以上20,000mPa・s以下、特に1,000mPa・s以上10,000mPa・s以下である、前記<14>に記載の塗工層を有するシートの製造方法
<16>
塗料は、固形分を含む粘性体であり、被酸化性金属の粒子及び水を含む発熱組成物である、前記<14>又は<15>に記載の塗工層を有するシートの製造方法。
<17>
前記基材シートは、紙、織布、編み物地、不織布などの繊維シート、樹脂製のフィルム、金属箔、これらの同種又は異種のものを2層以上に積層した積層体などを用いることができる、前記<1>〜<16>の何れか1に記載の塗工層を有するシートの製造方法。
<18>
前記シートは、シート状の発熱体である、前記<1>〜<17>の何れか1に記載の塗工層を有するシートの製造方法。