特許第6068142号(P6068142)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6068142
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】浮遊微粒剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/16 20060101AFI20170116BHJP
   A61K 31/135 20060101ALI20170116BHJP
   A61K 31/155 20060101ALI20170116BHJP
   A61K 31/165 20060101ALI20170116BHJP
   A61K 31/166 20060101ALI20170116BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20170116BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20170116BHJP
   A61K 31/401 20060101ALI20170116BHJP
   A61K 31/4422 20060101ALI20170116BHJP
   A61K 31/485 20060101ALI20170116BHJP
   A61K 31/517 20060101ALI20170116BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20170116BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20170116BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20170116BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20170116BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20170116BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20170116BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20170116BHJP
【FI】
   A61K9/16
   A61K31/135
   A61K31/155
   A61K31/165
   A61K31/166
   A61K31/19
   A61K31/352
   A61K31/401
   A61K31/4422
   A61K31/485
   A61K31/517
   A61K47/02
   A61K47/10
   A61K47/26
   A61K47/32
   A61K47/36
   A61K47/38
   A61K47/44
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-524262(P2012-524262)
(86)(22)【出願日】2010年8月11日
(65)【公表番号】特表2013-501762(P2013-501762A)
(43)【公表日】2013年1月17日
(86)【国際出願番号】FR2010051691
(87)【国際公開番号】WO2011018582
(87)【国際公開日】20110217
【審査請求日】2013年6月25日
【審判番号】不服2015-6920(P2015-6920/J1)
【審判請求日】2015年4月13日
(31)【優先権主張番号】0955641
(32)【優先日】2009年8月12日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】511118838
【氏名又は名称】デブルジャ・ゼ・タソシエ・ファルマ
【氏名又は名称原語表記】DEBREGEAS ET ASSOCIES PHARMA
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(72)【発明者】
【氏名】ルボン、クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】スュプリ、パスカル
【合議体】
【審判長】 内藤 伸一
【審判官】 齊藤 光子
【審判官】 小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−76418(JP,A)
【文献】 特表2002−508781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K9/00-9/72
A61K47/00-47/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胃液中で浮遊させるための浮遊顆粒剤であって、該浮遊顆粒剤は、コア/シェル型の構造及び3mm未満の直径を有し、かつ
(i)コアである不溶性支持体、並びに(ii)活性成分及び気体の放出を生じることが可能なアルカリ性剤を含む層
を含み
気体の放出を生じることが可能な酸性剤を含まず、
該活性成分が、チアプリド、アルフゾシン、カプトプリル、GHB、メトホルミン、ニフェジピン、ブプレノルフィン、モダフィニル、メタドン、ナルブフィン及びテトラヒドロカンナビノールからなる群から選択される、該浮遊顆粒剤。
【請求項2】
前記アルカリ性剤が、炭酸塩及び重炭酸塩からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の浮遊顆粒剤。
【請求項3】
前記アルカリ性剤が、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、グリシン炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、炭酸マグネシウム及び炭酸カルシウムからなる群から選択されることを特徴とする、請求項2に記載の浮遊顆粒剤。
【請求項4】
前記不溶性支持体が、ポリオール、ガム、アルカリシリケート、タルク、ベントナイト、カオリン、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、サッカロース、単結晶セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、デンプン、グルコネート、シリケート、糖結晶並びにそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の浮遊顆粒剤。
【請求項5】
結合剤を含むことを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の浮遊顆粒剤。
【請求項6】
前記結合剤が、マルトデキストリン、デンプン、サッカロース、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、シェラック、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロース、ポリオール又はそれらの混合物からなる群から選択される、請求項に記載の浮遊顆粒剤。
【請求項7】
コーティングされることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の浮遊顆粒剤。
【請求項8】
シェラック、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、HPMC、HPC、サッカロース、脂肪酸グリセリド及びそれらの混合物からなる群から選択されるコーティング剤によってコーティングされる、請求項に記載の浮遊顆粒剤。
【請求項9】
前記顆粒剤の全重量に対して0.5重量%〜60重量%の活性成分を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の浮遊顆粒剤。
【請求項10】
前記顆粒剤の全重量に対して15重量%〜70重量%のアルカリ性剤を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の浮遊顆粒剤。
【請求項11】
前記不溶性支持体が前記顆粒剤の全重量に対して20重量%〜80重量%を占める、請求項1〜10のいずれか一項に記載の浮遊顆粒剤。
【請求項12】
前記活性成分を前記不溶性支持体に粉末塗布することによって塗布する工程と、前記アルカリ性剤を添加する工程とを含むことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の浮遊顆粒剤を調製する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は浮遊微粒剤及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
あらゆる投与経路の中でも、経口経路が依然として最適な経路であり、したがって治療分野で最も使用されている経路である。
【0003】
この点において、薬剤の薬物動態を調節する吸収及び排せつの現象を最適化するために、胃腸管の生理学が広く研究されている。
【0004】
このため、胃腸管は種々のパラメータ(通過時間、pH、表面積、受容体又は特異的輸送体の存在)に応じてモデル化され、研究されている。薬物形態中に含有される活性成分は、その固有の物理化学的特徴に応じて、消化管の極めて正確なレベルで吸収される。
【0005】
これにより、所望の効果に応じて、徐放形態、遅延放出形態、活性成分の放出の持続時間及び位置の制御を可能にする生体接着形態といった種々の経口形態が存在する。
【0006】
或るパラメータは依然として制御することが困難である。これは胃内容排出であり、所望の治療効果の良好な再現性に対して悪影響をもたらす大きな変動を受ける。この問題は、消化管内の非常に高いレベルで吸収される薬剤物質にとって重大であり、バイオアベイラビリティの喪失を引き起こす。
【0007】
これを克服するために、胃内滞在時間を増加させることを意図した製剤学的(galenic)解決策が提案されており、それにより種々の浮遊形態が開発されている。
【0008】
特許文献1は、胃内で浮遊し、1つ又は複数の賦形剤と共に活性成分を含む活性相と、気体発生系(CO2)及び親水性ポリマー又は多孔性無機化合物を含む非活性相とから構成される、錠剤形態の医薬組成物を記載している。好ましくは、発生系は、均質な混合物として、特にモノカルボン酸及びポリカルボン酸から選択される酸と共に、アルカリ金属炭酸塩又はアルカリ土類金属炭酸塩又はアルカリ金属重炭酸塩を含む。この均質な混合物は発泡性ペア(effervescent pair)を形成する。
【0009】
特許文献2は、発泡性顆粒剤及びその調製方法に関する。この顆粒剤は発泡性ペアと、ホットメルト押し出し可能なその結合剤とから構成される。発泡性ペアとは、酸性剤とアルカリ性剤との組み合わせであり、水の存在下で気体の発生をもたらす。このように、特許文献2に記載される剤形は、酸性剤/塩基性剤の組み合わせを含む。
【0010】
特許文献3は、少なくとも1つの活性成分と、賦形剤の混合物と、酸性剤、アルカリ性剤及び加熱押し出し可能な(hot-extrudable)結合剤の混合物から構成される発泡性顆粒とを含む口腔内分散性錠剤に関する。この錠剤は口腔内で唾液と接触して60秒未満で崩壊する。
【0011】
Gooleの論文(非特許文献1)は、放出が持続する、被覆(encased)又はコーティングされた形態の浮遊小型錠剤を記載している。この小型錠剤は全体的に、最低限の活性剤、結合剤及び発泡性混合物(酒石酸、重炭酸ナトリウム及び炭酸カルシウム)を含有する。
【0012】
Sheth and Tossounian(特許文献4)は、液体の存在下でセルロース誘導体の膨張に基づいて放出が持続する浮遊ゼラチンカプセル剤を記載している。
【0013】
このように、現在では、上記に示した組成物の大部分は、発泡のための酸/塩基混合物を含む錠剤に関している。
【0014】
しかしながら、浮遊形態の開発における錠剤形態の選択は、それが一体型形態であり、したがって胃内容排出中の「1かゼロかの(all or nothing)」現象に晒され、大きな変動を更に引き起こすため最適ではない。
【0015】
実際に、胃内容排出は胃内に存在する固形物の性質、体積、サイズ及び消化性に左右される。液体だけでなく、3mm〜5mm未満の直径を有する固体粒子も容易に幽門部を通過し、消化期中に迅速に排出される。したがって、このタイプの粒子は先験的に、消化管の極めて上部で吸収される活性成分にとって不利である。一体型形態等のようなサイズのより大きな粒子は、幽門部によって保持され、消化間期のみに排出される。
【0016】
最後に、時間帯(絶食期間又は食後期間)に応じて、この一体型形態の胃通過時間は、より一層安定する(consistent)が、これは数十分から数時間まで変化し得る。
【0017】
その固有の形態及び重量のために、錠剤は薬物形態の良好な浮力を得るという点で問題があることも分かっている。この場合、所望の浮力を得るために大量の発泡剤を使用することが必要となる。
【0018】
上述の系は、錠剤の重量及び寸法を更に増大させ、したがって最終的に所望の浮力を阻害する、発泡をもたらすことが可能な酸性剤/塩基性剤ペアを使用しなければならない。このように、上記で言及したGooleの論文は、3ミリメートルの直径を有するが、発泡のために酸/塩基ペアを使用する小型錠剤を開発することを含む。
【0019】
同じ薬物形態において酸性剤と塩基性剤とが近接していることには、安定性の観点から、特に高い相対湿度の条件下で問題がある。これは、好適な包装材料(アルミニウム若しくはPVDC、又は脱水剤を入れた瓶)の使用を前提とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】国際公開第01/10417号
【特許文献2】国際公開第01/80822号
【特許文献3】国際公開第02/085336号
【特許文献4】米国特許第4424235号
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】International Journal of Pharmaceutics, 334, 2007, 35-41
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の一目的は、上述の全ての欠点に対する解決策を提供することである。
【0023】
したがって、一目的は、吸収窓が狭いか、又は上部消化管で吸収される活性成分のバイオアベイラビリティ及びその治療効果の再現性の向上を可能にする経口形態を提供することである。
【0024】
本発明の別の目的は、変動性(したがって再現性)の低減に特に有利であり、カプセル剤又は錠剤等の一体型形態で観察される欠点を回避することを可能にする、放出が持続する浮遊多粒子形態を提供することである。
【0025】
本発明の別の目的は、胃壁を保護し、局所不耐性のリスクを低減する浮遊多粒子形態を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
したがって、本発明は、十分な含量の活性成分を有する一方で、満足のいく浮力を得るのに十分に小さなサイズを維持する薬物形態を得るために、最も具体的には、消化管内での吸収率の高い有効成分のために特別に開発された組成物を提供することを含む。
【0027】
したがって、本発明は、活性成分が担持されたソリッドコアを含む浮遊顆粒剤であって、アルカリ性剤から構成され、いかなる酸性剤も含まない、気体の放出を生じることが可能な化合物を更に含むことを特徴とする、浮遊顆粒剤に関する。
【0028】
したがって、本発明は、活性成分が担持されたソリッドコアを含む浮遊顆粒剤であって、気体の放出を生じることが可能な化合物としてアルカリ性剤のみを含むことを特徴とする、浮遊顆粒剤に関する。気体の放出を生じることが可能な該化合物は、いかなる酸性剤も含まない。
【0029】
したがって、本発明は、活性成分が担持されたソリッドコアを含む浮遊顆粒剤であって、気体の放出を生じることが可能な作用物質としてアルカリ性剤を含み、酸性剤を含まないことを特徴とする、浮遊顆粒剤に関する。
【0030】
本発明による浮遊顆粒剤は、ソリッドコア又は固体支持体に沈着した少なくとも1つの活性成分を含み、アルカリ性剤のみから構成される、気体の放出を生じることが可能な作用物質を含むことを特徴とする。
【0031】
本発明による浮遊顆粒剤はしたがって、当該技術分野において通常使用されている酸性剤/アルカリ性剤の混合物を使用しない。本発明によると、酸性の胃液が薬物形態内に拡散した際の酸性の胃液の反応によって浮力が得られる。
【0032】
本発明による浮遊顆粒剤は、十分に長い時間にわたって胃内で浮遊することが可能であり、その多層状の剤形によって長期にわたる活性成分の拡散が更に確実となる。
【0033】
本発明によると、上述のアルカリ性剤を固体支持体上に担持させることもできる。このため、本発明によるかかる浮遊顆粒剤は、ソリッドコア上に担持された、少なくとも1つの活性成分と気体の放出を生じることが可能なアルカリ性剤とを含む。
【0034】
本発明によると、上述のアルカリ性剤を支持体として直接使用することもできる。このため、本発明によるかかる浮遊顆粒剤は、アルカリ性剤から構成されるソリッドコア上に担持された、少なくとも1つの活性成分を含む。
【0035】
本発明によると、アルカリ性剤は、活性成分が担持されるソリッドコアとして使用されるか、又は顆粒剤を構成する層に組み込まれる(すなわち、活性成分(複数も可)と共に固体支持体に沈着するか、又は活性成分(複数も可)によって形成された層上に沈着した層に存在する)。
【0036】
したがって、本発明の浮遊顆粒剤は、気体の放出を生じることが可能ないかなる酸性剤も含まないことを特徴とする。「酸性剤」という用語は、気体の放出を生じることが可能な遊離酸、酸無水物又は酸性塩の形態の任意の鉱酸又は有機酸を指すことを意図する。したがって、本発明の浮遊顆粒剤は、気体の放出を生じることが可能ないかなるカルボン酸(すなわち、モノカルボン酸又はポリカルボン酸)も含まない。
【0037】
好ましくは、本発明の浮遊顆粒剤は、気体の放出を可能にするのに十分な量の酸性剤を含まない。
【0038】
したがって、本発明の浮遊顆粒剤は好ましくは、周囲温度でpH4.5以下のいかなる酸も含まないことを特徴とする。
【0039】
好ましくは、本発明の浮遊顆粒剤は、酒石酸、酒石酸(tartric acid)、クエン酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、アジピン酸、コハク酸、乳酸、グリコール酸、αヒドロキシ酸(alphahydroxy acid)、アスコルビン酸、アミノ酸、又はこれらの酸の塩及び誘導体を含まない。
【0040】
本発明による浮遊顆粒剤は、活性成分が支持体に沈着し、他の賦形剤がそのコアの周囲に沈着した多層構造を有する。
【0041】
本発明による浮遊顆粒剤は、気体の放出を生じることが可能な化合物として使用されるアルカリ性剤が、酸性化合物と接触しないことを特徴とする。
【0042】
このため、本発明による浮遊顆粒剤が酸性化合物を含む場合、アルカリ性剤と該酸性化合物とは中間層によって隔てられている。
【0043】
本発明の浮遊顆粒剤は、酸性化合物と、気体の放出を生じることが可能な化合物として使用されるアルカリ性剤、又は任意の他のアルカリ性化合物との間に直接的接触が存在しない顆粒剤である。実際に、本発明の顆粒剤が(活性成分又は賦形剤として)酸性特徴を有する化合物を含む場合、顆粒剤は該酸と該アルカリ性剤との間に中間フィルム(又は層)を含み、それらの間の接触、したがってそれらの間の任意の反応を防止する。かかる中間フィルムの存在によって安定な顆粒剤を得ることが可能となる。このフィルム(又は中間層)は保護フィルムとしての役割を果たし、安定性を向上させる。
【0044】
したがって、本発明の顆粒剤は、該顆粒剤の安定性を増大させる「障壁」層の存在を特徴とする。この層は、該顆粒剤の種々の構成要素間の任意の反応を防止するために使用される。層は該顆粒剤が胃液と接触する前の発泡現象も防止する。
【0045】
本発明による浮遊顆粒剤の一つの実施の形態によると、アルカリ性剤は固体支持体に沈着する。この場合、活性成分及びアルカリ性剤の粒子は、支持体上に同様に分配される。本発明による浮遊顆粒剤の別の実施の形態によると、アルカリ性剤は、活性成分によって形成される層とは独立した別の層を形成する。
【0046】
したがって、アルカリ性剤は顆粒剤の種々のレベルで組み込むことができる。アルカリ性剤を顆粒剤の支持体として直接使用することもできる。
【0047】
「顆粒剤」という用語は、各々が様々な操作を可能にするのに十分な固体性を有する粉末粒子の凝集体を形成する、乾燥した固体細粒から構成される調製物を指す。
【0048】
物理的な観点から言えば、顆粒剤は結晶化した又は非晶質の種々の粉末粒子の凝集体である。
【0049】
本発明の顆粒剤は、具体的には経口経路を介した投与、より具体的には未加工の状態で飲み込むことを意図したものである。
【0050】
本発明の顆粒剤はコア/シェル型の特徴的な構造を有するが、コアはシェルを形成する化合物と同じタイプではない。
【0051】
このため、この顆粒剤は多層構造を有する。活性成分はコアに沈着し、したがってそのコア(すなわち支持体)の周囲に沈着した層(すなわちシェル)を形成する。
【0052】
顆粒剤のコアは、活性成分の粒子が固定される支持体とみなすこともできる。
【0053】
コアは固体粒子から構成され、コアによって担持される活性成分も固体形態である。
【0054】
したがって、本発明は新規の多粒子経口形態の開発に基づく。
【0055】
本発明の顆粒剤は活性成分の層を有する。
【0056】
所望の最終薬理学的パラメータに応じて、第1の層が、種々のコーティングポリマーと一般に使用されている種々の添加物(可塑剤、可溶化剤、滑沢剤、付着防止剤等)とを用いた他のポリマー層によって被覆されていてもよい。この層は、上記のように酸性化合物とアルカリ性化合物との間の接触を防止する保護層であってもよい。
【0057】
本発明の浮遊顆粒剤は、好ましくは不溶性支持体から選択され、より具体的にはポリオール類、ガム(gum)、シリカの誘導体、カルシウム又はカリウムの誘導体、リン酸二カルシウム及びリン酸三カルシウム等の無機化合物、サッカロース、セルロース誘導体(特に単結晶セルロース、エチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース)、デンプン、グルコネート、シリケート、糖結晶並びにそれらの混合物からなる群から選択されるソリッドコアを含む。
【0058】
上記に示したような具体的な実施の形態によると、ソリッドコアはアルカリ性剤から構成されていてもよい。本発明による顆粒剤の特定の群はしたがって、上で規定したような浮遊顆粒剤から構成され、活性成分(複数も可)は重炭酸ナトリウム(顆粒剤のコアと、気体の放出を生じることが可能なアルカリ性剤との両方を構成する)に沈着している。
【0059】
顆粒剤のソリッドコアは化合物の混合物、特に不溶性支持体の混合物から構成されていてもよい。このためこれは、具体的にはサッカロース、及びデンプン、又はシリカ若しくはカルシウムから誘導された無機化合物から形成される混合物を含む。
【0060】
ソリッドコアは、幾つかの固体グレードのPEG(特にPEG4000又はPEG6000)を含む可溶性支持体から構成されていてもよい。
【0061】
「シリカの誘導体」という用語は、シリカ、及びアルカリシリケート、特にAerosil(登録商標)、又はタルク、ベントナイト若しくはカオリンから得られる沈殿シリカを指すことを意図する。
【0062】
「カルシウム誘導体」という用語は、希釈剤又は充填剤として、更には研磨剤として医薬中に使用される水に不溶性の生成物である、水酸化カルシウムから誘導される結晶性賦形剤を指すことを意図する。
【0063】
「カリウム誘導体」という用語は、特に重炭酸カリウム及び塩化カリウムを指すことを意図する。
【0064】
本発明の顆粒剤のコアを形成する不溶性支持体は、マグネシウム誘導体(特に炭酸塩又は酸化物)を含んでいてもよい。
【0065】
本発明による浮遊顆粒剤では、アルカリ性剤が好ましくは、炭酸塩及び重炭酸塩からなる群から選択され、具体的には重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、グリシン炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0066】
本発明の顆粒剤は結合剤を含んでいてもよい。
【0067】
結合剤の機能は、粒子を互いに結合させる(すなわち、顆粒剤の密着を向上させる)ことである。このように、結合剤は、顆粒剤中の活性成分とコアとの良好な密着を確実にする。
【0068】
そのため、結合剤は活性成分と同様、顆粒剤のコアの周囲に沈着する。
【0069】
結合剤としては、粘性溶液を生じる親水性賦形剤の多く:アラビアゴム及びトラガカントゴム、メチルセルロース及びカルボキシメチルセルロース、ゼラチン、デンプン、マルトデキストリン、PEG4000及びPEG6000のアルコール溶液、ポリビドンの水溶液又はアルコール溶液、並びにまたサッカロース、グルコース又はソルビトールの溶液を挙げることができる。
【0070】
本発明の顆粒剤の結合剤は好ましくは、デンプン、サッカロース、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン(PVP又はポリビドン)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、シェラック、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、セルロース、ポリオール類、ポリグリコール化(polyglycolised)グリセリド類(Gelucire(登録商標))又はマクロゴルグリセリド類(macrogol glycerides)、具体的にはステアロイルマクロゴルグリセリド類、更にはアクリル誘導体、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0071】
ポリオール類としては、特にマンニトール、ソルビトール、マルチトール又はキシリトールを挙げることができる。
【0072】
特定の実施の形態によると、結合剤は好ましくは、ポリビニルピロリドン、シェラック、ポリオール類、ポリグリコール化グリセリド類(Gelucire(登録商標))又はマクロゴルグリセリド類、とりわけステアロイルマクロゴルグリセリド類、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0073】
上記に示した群から選択される結合剤を特定の特性のために使用することも可能である。例えば、EUDRAGIT(登録商標)L100又はシェラック等のpH依存性賦形剤を結合剤として使用することが有利な場合もある。好ましくはポリグリコール化グリセリド類(Gelucire(登録商標))を、その疎水性のために使用することを選択することも可能である。
【0074】
コーティング顆粒剤は、種々の賦形剤の混合物の1つ又は複数の層でコーティングされた細粒から構成される。
【0075】
そのため、本発明による好ましいコーティング顆粒剤は、コーティング剤から構成される更なる層を備える。
【0076】
特定の実施の形態によると、本発明の顆粒剤は好ましくはいかなる酸コーティング剤も含有しない。
【0077】
本発明の顆粒剤は、ワックス誘導体、可塑剤(塗膜形成剤(filmogenic agents))、シェラック、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、HPMC又はHPC等のセルロース誘導体、サッカロース、脂肪酸グリセリド及びメタクリル酸ポリマーからなる群から選択されるコーティング剤から構成されるコーティングを備えていてもよい。
【0078】
「ワックス誘導体」という用語は、通常は周囲温度で固体であり、種々の割合で医用調製物に使用される、脂肪酸エステルおよびアルコール類から構成される天然生成物又は合成生成物を指すことを意図する。
【0079】
本発明の浮遊顆粒剤は、1つ又は複数の賦形剤(滑沢剤、着色料、甘味料、可塑剤又は付着防止剤等)が添加されたコーティングフィルムによってコーティングされていてもよい。
【0080】
本発明の顆粒剤は、特にメタクリル酸ポリマー、特にEudragit(登録商標)L、シェラック又はHPMCP(ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒプロメロースフタレート)から構成される腸溶コーティングを備えていてもよい。したがって、かかる顆粒剤は胃耐性(gastro-resistant)である。
【0081】
この腸溶コーティングの存在は、特に酸性媒体中でのその分解を防止することによって、活性成分のバイオアベイラビリティに影響を及ぼす場合がある。
【0082】
本発明の浮遊顆粒剤は、持続放出コーティングを備えていてもよい。
【0083】
かかる顆粒剤は、活性成分の放出調節又は遅延放出を可能にする(放出調節顆粒剤)。
【0084】
かかるコーティングは、具体的にはメタクリル酸及びアクリル酸のコポリマー(Eudragit(登録商標)S100、Eudragit(登録商標)RS、Eudragit(登録商標)RL、Eudragit(登録商標)RS、Eudragit(登録商標)30D、Eudragit(登録商標)RL30D)、シェラック、セルロースの誘導体、特にエチルセルロース、ワックス(特にGelucire(登録商標))並びにアクリル誘導体から構成されるコーティング剤によって得られる。
【0085】
この調節放出コーティングの存在は、特に活性成分の見掛けの半減期に影響を及ぼす。
【0086】
本発明による浮遊顆粒剤は、滑沢剤及び/又は香料及び/又は甘味料及び/又は着色料を含んでいてもよい。
【0087】
本発明との関連において使用される滑沢剤としては、特にタルク、ステアリン酸マグネシウム、シリカ誘導体(特にAerosil(登録商標))又はワックスを挙げることができる。
【0088】
本発明との関連において使用される香料としては、食品添加物に従来使用されている香料を挙げることができる。
【0089】
本発明との関連において使用される甘味料は、具体的には食料品に使用することが意図される甘味料に対する1994年6月30日の指令94/35/EC(2006年7月5日の指令2006/25/CEによって改定)に記載される甘味料である。したがって、アスパルテームE951、ソルビトールE420、マンニトールE421、アセスルファムK E950、サッカリンE954、ステビア又はタウマチンを特に挙げることができる。
【0090】
本発明との関連において使用される着色料は、具体的には食料品に使用することのできる着色料に関する1995年7月26日の指令95/45/EC(2006年3月20日の指令2006/33/ECによって改定)に記載される着色料である。したがって、着色料E100〜E180を特に挙げることができる。
【0091】
本発明の浮遊顆粒剤は、治療薬中に使用される任意の活性成分及びその組み合わせを含み得る。好ましくは、本発明の浮遊顆粒剤の調製において使用される活性成分は、吸収窓が狭いか、又は上部消化管で吸収される活性成分である。
【0092】
好ましくは、活性成分は酸性化合物ではない。
【0093】
本発明による浮遊顆粒剤の調製において使用される活性成分としては、具体的にはフロセミド、チアプリド、アルフゾシン、カプトプリル、GHB又はメトホルミンを挙げることができる。好ましくは、活性成分はアテノロールではない。
【0094】
一方で、比吸収率の低い活性成分、並びに包括的なものではないが、抗ウイルス物質、抗鬱剤、細胞増殖抑制剤、コレステロール低下剤(hypocholesterolemiant agents)、痛み止め、抗炎症性鎮痛薬、利尿薬及び任意の他の治療薬群を挙げることも可能である。
【0095】
本明細書中に記載される製剤学的形態は、獣医学、栄養補助食品、化粧品及び農業の分野においても利点を有する。
【0096】
好ましい活性成分としては、痛み止め及び鎮痛薬を挙げることができる。鎮痛薬は、患者の痛みを取り除くことを可能にする。鎮痛薬群としては、具体的には中枢性モルヒネ鎮痛薬(モルヒネ誘導体)、中枢性非モルヒネ鎮痛薬、末梢性鎮痛薬およびその他(ベンゾジアゼピン類等)を挙げることができる。
【0097】
好ましくは、本発明による顆粒剤の活性成分が、ニフェジピン、硫酸モルヒネ、オキシコドン、γ−ヒドロキシ酪酸又はその塩の1つ、ブプレノルフィン、モダフィニル、デキストロプロポキシフェン、メタドン、トラマドール、ナルブフィン、テトラヒドロカンナビノール及びベンゾジアゼピン類からなる群から選択される。
【0098】
好ましい実施の形態によると、本発明による浮遊顆粒剤は、顆粒剤の全重量に対して0.5重量%〜60重量%、好ましくは15重量%〜50重量%の活性成分を含む。
【0099】
好ましくは、本発明の浮遊顆粒剤は、顆粒剤の全重量に対して15重量%〜70重量%、好ましくは25重量%〜50重量%のアルカリ性剤を含む。
【0100】
好ましくは、本発明の浮遊顆粒剤は、ソリッドコアが顆粒剤の全重量に対して20重量%〜80重量%を占めることを特徴とする。
【0101】
特に好ましい実施の形態によると、本発明による浮遊顆粒剤は3mm未満の直径を有する。
【0102】
3ミリメートル未満というこのサイズは、胃液中での良好な浮力を確実にする。
【0103】
この減少したサイズ、またその結果として減少した重量のために、本発明の浮遊顆粒剤は胃液中で容易に浮遊することができる。本発明の浮遊顆粒剤は、気体の放出を生じることが可能な化合物を大量に含有する必要はない。このように減少したサイズを有する顆粒剤が、非常に短い胃内滞留時間を有するという欠点を示すことが知られていることも強調されるべきである。しかしながら、特異的な構造及び化学修飾(「分離」層の存在)のために、本発明の浮遊顆粒剤は、かかる欠点を有しない。
【0104】
そのため、本発明の浮遊顆粒剤は「浮遊微粒剤」と称することもできる。
【0105】
本発明は、粉末塗布によって活性成分を固体粒子支持体に塗布する工程を含むことを特徴とする、上で規定したような浮遊顆粒剤を調製する方法にも関する。
【0106】
上記方法は、アルカリ性剤を添加することを含む工程を更に含む。
【0107】
具体的な実施の形態によると、アルカリ性剤は活性成分と混合して支持体上に直接添加され、粉末塗布される。したがって、かかる方法は、粉末塗布によって活性成分及びアルカリ性剤を固体粒子支持体に塗布することを含む。
【0108】
具体的な実施の形態によると、アルカリ性剤は固体支持体として使用される。したがって、かかる方法はこのため、固体粒子支持体を構成するアルカリ性剤に粉末塗布によって活性成分を塗布することを含む。
【0109】
本発明の方法は、粉末塗布工程後に、顆粒剤をコーティングする工程、特にフィルムコーティングによりコーティング剤をフィルムの形態で顆粒剤に沈着させることによって顆粒剤をコーティングする工程、任意でその後、滑沢剤及び/又は香料及び/又は甘味料及び/又は着色料と混合する工程を含んでいてもよい。
【0110】
本発明の顆粒剤の構造は、コア/シェル構造を有する顆粒剤を得ることを可能にする、この特定の方法の実行に関係している。
【0111】
本発明の顆粒剤を調製する方法の上述の粉末塗布工程は、結合剤のアルコール溶液又は水性アルコール溶液又は水溶液を噴霧する工程を含んでいてもよい。
【0112】
この噴霧工程及び粉末塗布工程は、好ましくは同時又は交互に行われる。
【0113】
好ましくは、上述の粉末塗布工程は、結合剤を溶液形態で噴霧する工程と同時に行われる。
【0114】
これらの工程を組み合わせることによって、顆粒剤のコアに対する活性成分の良好な密着が確実となる。
【0115】
したがって、本発明の方法の有利な実行は、溶液形態の結合剤を噴霧する手順と交互に、活性成分(アルカリ性剤と混合しても、又は混合しなくてもよい)を粉末形態で上述の粒子支持体(すなわち顆粒剤のコア)に塗布することを含む。
【0116】
本発明の方法は、粉末塗布工程後に、1回又は複数回の顆粒剤をコーティングする工程、特にフィルムコーティングによりコーティング剤(複数も可)をフィルムの形態で顆粒剤に沈着させることによって顆粒剤をコーティングする工程を含んでいてもよい。
【0117】
本発明の方法の好ましい実施の形態は、コーティング工程後に、滑沢剤及び/又は香料及び/又は甘味料及び/又は着色料(最終的に活性顆粒剤と混合するために、それら自体を顆粒形態で調製することが可能である)と混合する工程を含む方法を含む。
【0118】
しかしながら、滑沢剤、香料、甘味料及び着色料を上述の粉末塗布工程の前に添加することもできる。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0119】
下記実施例は、本発明の浮遊顆粒剤の特定の例に関する。
【0120】
実施例1:フロセミドベースの浮遊顆粒剤
【0121】
【表1】
【0122】
上述の顆粒剤を下記の作業方法に従うことによって得る。
【0123】
初めに、結合剤PVPのアルコール溶液を断続的に噴霧しながら、活性成分フロセミドを中性支持体に粉末塗布することによる構築(assembly)工程を行う。
【0124】
次いで、分離のために、アルカリ性剤(炭酸カルシウム及び重炭酸ナトリウム)及びワックスタイプの化合物(Gelucire(登録商標))を添加することによって先に得られた顆粒剤の第1のコーティングを行う。
【0125】
最後に、可塑剤(セバシン酸ジブチル)及びコーティング剤Aquacoat(登録商標)EC30Dを含む水性懸濁液による顆粒剤の第2のコーティングを行う。
【0126】
実施例2:ニフェジピンベースの浮遊顆粒剤
【0127】
【表2】
【0128】
上述の顆粒剤を下記の作業方法に従うことによって得る。
【0129】
初めに、活性成分(MOR 920)及び結合剤(HPMC)を含有する水性懸濁液を調製する。
【0130】
続いて、懸濁液を重炭酸ナトリウム(アルカリ性剤)から構成される支持体上に噴霧し、この顆粒剤を続いて空気流動層内で乾燥させた。
【0131】
続いて、可塑剤(クエン酸トリエチル)、タルク、コーティング剤Eudragit(登録商標)FS30D及び着色料を含む水性懸濁液による、先に得られた顆粒剤のLPコーティングを行った。
【0132】
実施例3:メトホルミンベースの浮遊顆粒剤
【0133】
【表3】
【0134】
上述の顆粒剤を下記の作業方法に従うことによって得る。
【0135】
初めに、結合剤(シェラック−GLDB)のアルコール溶液を断続的に噴霧しながら、活性成分フロセミドをマンニトール支持体(Pearlitol 400 DC、Roquette)に粉末塗布することによる構築工程を行った。
【0136】
続いて、この顆粒剤を空気流動層内で乾燥させた。
【0137】
続いて、アルカリ性剤(重炭酸ナトリウム)を沈着させ、コーティング剤Eudragit(登録商標)E100/エチルセルロースを含むアルコール懸濁液、最後に化合物Precirol(登録商標)ATO5(Gattefosse)を噴霧することによって、先に得られた顆粒剤のコーティングを行った。