特許第6068174号(P6068174)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ファナック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6068174-射出成形機のリアプラテン調整装置 図000002
  • 特許6068174-射出成形機のリアプラテン調整装置 図000003
  • 特許6068174-射出成形機のリアプラテン調整装置 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6068174
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】射出成形機のリアプラテン調整装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/66 20060101AFI20170116BHJP
   B29C 45/76 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   B29C45/66
   B29C45/76
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-22364(P2013-22364)
(22)【出願日】2013年2月7日
(65)【公開番号】特開2014-151532(P2014-151532A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2015年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】田近 雅也
(72)【発明者】
【氏名】武田 信人
【審査官】 今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−172923(JP,A)
【文献】 特開2013−001052(JP,A)
【文献】 実開平03−098029(JP,U)
【文献】 特開昭61−071164(JP,A)
【文献】 特開2004−122579(JP,A)
【文献】 特開2010−79845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/66
B29C 45/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リアプラテンと可動側金型が取付けられた可動プラテン間に配設され、前記可動プラテンを型締用駆動手段で前後進させるトグル式型締装置と、前記リアプラテンを移動させるリアプラテン調整用モータと、型締力測定手段と、該型締力測定手段で測定した型締力と目標型締力との差から型締力補正のためのリアプラテン補正移動距離を算出する補正移動距離算出手段と、前記リアプラテン調整用モータを駆動して補正移動距離算出手段が算出した補正移動距離だけリアプラテンを移動させるリアプラテン位置補正手段とを備えた射出成形機のリアプラテン調整装置において、
前記リアプラテン位置補正手段は、前記リアプラテンの移動時に前記リアプラテン調整用モータの駆動電流もしくは負荷をモニタし、該駆動電流もしくは負荷が第1の所定以上の変化を検知した位置をリアプラテン移動開始位置として前記リアプラテンを該リアプラテン移動開始位置から前記補正移動距離だけ移動させることを特徴とする射出成形機のリアプラテン調整装置。
【請求項2】
前記第1の所定以上の変化は、前記リアプラテン調整用モータの駆動電流もしくは負荷の絶対値が閾値を超えること、または前記リアプラテン調整用モータの駆動電流もしくは負荷の単位時間あたりの変化量が閾値を超えること、または前記リアプラテン調整用モータの駆動電流もしくは負荷の単位移動距離あたりの変化量が閾値を越えることの何れかであることを特徴とする請求項1に記載の射出成形機のリアプラテン調整装置。
【請求項3】
前記リアプラテン位置補正手段は、前記リアプラテンを前記補正移動距離だけ移動させた後、当該補正において前記リアプラテン調整用モータを回転させた方向と逆方向にリアプラテン調整用モータを回転させ、該駆動電流もしくは負荷が第2の所定以上の変化を検知した位置で前記リアプラテン調整用モータの回転を停止させることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか一つに記載の射出成形機のリアプラテン調整装置。
【請求項4】
前記第2の所定以上の変化は、前記リアプラテン調整用モータの駆動電流もしくは負荷の絶対値が閾値を超えること、または前記リアプラテン調整用モータの駆動電流もしくは負荷の単位時間あたりの変化量が閾値を超えること、または前記リアプラテン調整用モータの駆動電流もしくは負荷の単位移動距離あたりの変化量が閾値を越えることの何れかであることを特徴とする請求項3に記載の射出成形機のリアプラテン調整装置。
【請求項5】
前記リアプラテンの移動を制御する際に、タイマでの移動量制御、前記リアプラテン調整用モータに使用されるサーボモータの位置制御、または、ギヤードモータに付けられたパルスコーダで制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の射出成形機のリアプラテン調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機のリアプラテン調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機の金型の交換を行った際に、型締力を正確に調整することができれば、次の生産の開始をスムーズに行うことができるようになり、生産効率の向上が期待できる。また正確な型締力を維持することができれば、成形品の品質の安定化が期待できる。トグル式型締装置における型締力を調整する場合、型締力センサなどで型締力を測定し、測定した型締力と目標の型締力との差からリアプラテンの調整量を求めてリアプラテンを移動させ、型締力を調整する方法が知られている。そのため、求められた調整量に対してリアプラテンを正確に移動させることは型締力を正確に調整する上で重要である。リアプラテンを移動させる駆動機構の歯車列には多少のバックラッシュがある。そのため、リアプラテンを正確に移動させるためにはこのバックラッシュにより生じる移動誤差を補正する必要がある。
【0003】
バックラッシュにより生じるリアプラテンの移動誤差を補正する技術としては、実際のリアプラテンの移動距離をリニアセンサで直接測定することによりバックラッシュに関係なくリアプラテンの位置を制御するものや、パルスセンサを用いて予めバックラッシュ分の移動誤差を考慮してリアプラテン調整用モータを駆動させてリアプラテンを目標位置に移動させる方法などがある。
【0004】
特許文献1には、型締力の調整の際にリニアセンサを用いてリンクハウジング(リアプラテン)を目標位置に制御する方法が開示されている。
特許文献2には、パルスコーダを使用して駆動系のバックラッシュを補正してリアプラテンを移動させ所定の型厚に調整する技術が開示されている。
また、射出成形機のテーブルをバックラッシュが生じるテーブル駆動機構の歯車列において最適位置に停止させる技術として、テーブル駆動機構のバックラッシュ区間内でサーボモータの負荷や電流の変化をモニタしてテーブルの停止位置を求める技術が特許文献3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−80759号公報
【特許文献2】特開平1―221217号公報
【特許文献3】特開2000―202853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術でも述べたように、リアプラテンを移動させる駆動機構の歯車列には多少のバックラッシュがあるため、リアプラテンを所望の調整量にしたがって正確に移動させるためには、バックラッシュにより生じる移動誤差を補正する必要がある。
この問題に対して、リアプラテンの位置を正確に測定するためにリニアセンサを配置する方法が特許文献1に開示されている。しかし、特許文献1に記載されている、リニアセンサを配置する方法は、射出成形機の構造が複雑になるという問題がある。
また、特許文献2に記載されている、パルスコーダを使用して駆動系のバックラッシュを補正してリアプラテンを移動させる方法は、リアプラテンの移動方向が前回と今回で異なる場合においてのみ、バックラッシュを補正するための決められた補正量の補正をかける旨の内容が記載されている。
【0007】
しかし、型締における駆動機構のひずみや機械の振動などにより特許文献2で記載されている状況以外にもバックラッシュが生じる可能性がある。そしてこのように生じたバックラッシュの場合、駆動機構の歯車列がどちらか一方に寄っているとは限らずバックラッシュ補正のために必要な補正量が常に同じではないことが考えられる。また、駆動機構の歯車列の経年劣化でも歯車列のバックラッシュ補正のために必要な補正量が変化することも考えられる。このことから、特許文献2に記載の方法では、移動方向が変わる場合に生じるバックラッシュにしか対応できず、また、様々な状況で変化する補正量を決める必要があり手間がかかるという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、駆動機構のバックラッシュから生じるリアプラテンの未駆動区間をリアプラテン調整用モータの駆動電流または負荷の変化に基づいて検出することにより、リニアスケールなどの取り付けに複雑な構造を伴うセンサを使用せず、リアプラテンを正確な距離で移動させることで正確な型締力の調整が可能な射出成形機のリアプラテン調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、リアプラテンを移動させる駆動機構の歯車列にあるバックラッシュにより生じるリアプラテンの未駆動区間を、リアプラテンを所定の速度で移動させるリアプラテン調整用モータの駆動電流、もしくは負荷の絶対値の変化を基に検出し、リアプラテンの移動距離を正確に制御することを特徴とする。
【0010】
リアプラテンを移動させる駆動機構の歯車列にバックラッシュがある場合、リアプラテン調整用モータを回転させても歯車列がバックラッシュ分回転するまではリアプラテンが移動しない未駆動区間が生じる。未駆動区間では、調整用モータにかかる負荷は小さくなり、歯車列がバックラッシュ分回転してリアプラテンが移動し始めてからリアプラテン調整用モータにかかる負荷が大きくなる。つまり、リアプラテンをある目標距離移動だけさせようとした場合、リアプラテン調整用モータにかかる負荷に大きな変化が生じた位置をリアプラテンの移動開始位置とし、その位置からリアプラテン調整用モータを目標移動距離分回転することでバックラッシュの状態に関わらずリアプラテンの移動距離を正確に制御することが可能となる。移動開始位置からのリアプラテンの移動には、リアプラテンの移動量をタイマで制御して位置を制御する方法や、リアプラテン調整用モータに、位置検出器付きのギヤードモータやサーボモータを用いて位置制御する方法が適用できる。
【0011】
そして、本願の請求項1に係る発明は、リアプラテンと可動側金型が取付けられた可動プラテン間に配設され、前記可動プラテンを型締用駆動手段で前後進させるトグル式型締装置と、前記リアプラテンを移動させるリアプラテン調整用モータと、型締力測定手段と、該型締力測定手段で測定した型締力と目標型締力との差から型締力補正のためのリアプラテン補正移動距離を算出する補正移動距離算出手段と、前記リアプラテン調整用モータを駆動して補正移動距離算出手段が算出した補正移動距離だけリアプラテンを移動させるリアプラテン位置補正手段とを備えた射出成形機のリアプラテン調整装置において、前記リアプラテン位置補正手段は、前記リアプラテンの移動時に前記リアプラテン調整用モータの駆動電流もしくは負荷をモニタし、該駆動電流もしくは負荷が第1の所定以上の変化を検知した位置をリアプラテン移動開始位置として前記リアプラテンを該リアプラテン移動開始位置から前記補正移動距離だけ移動させることを特徴とする射出成形機のリアプラテン調整装置である。
【0012】
請求項2に係る発明は、前記第1の所定以上の変化は、前記リアプラテン調整用モータの駆動電流もしくは負荷の絶対値が閾値を超えること、または前記リアプラテン調整用モータの駆動電流もしくは負荷の単位時間あたりの変化量が閾値を超えること、または前記リアプラテン調整用モータの駆動電流もしくは負荷の単位移動距離あたりの変化量が閾値を越えることの何れかであることを特徴とする請求項1に記載の射出成形機のリアプラテン調整装置である。
【0013】
請求項3に係る発明は、前記リアプラテン位置補正手段は、前記リアプラテンを前記補正移動距離だけ移動させた後、当該補正において前記リアプラテン調整用モータを回転させた方向と逆方向にリアプラテン調整用モータを回転させ、該駆動電流もしくは負荷が第2の所定以上の変化を検知した位置で前記リアプラテン調整用モータの回転を停止させることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか一つに記載の射出成形機のリアプラテン調整装置である。
【0014】
請求項4に係る発明は、前記第2の所定以上の変化は、前記リアプラテン調整用モータの駆動電流もしくは負荷の絶対値が閾値を超えること、または前記リアプラテン調整用モータの駆動電流もしくは負荷の単位時間あたりの変化量が閾値を超えること、または前記リアプラテン調整用モータの駆動電流もしくは負荷の単位移動距離あたりの変化量が閾値を越えることの何れかであることを特徴とする請求項3に記載の射出成形機のリアプラテン調整装置である。
【0015】
請求項5に係る発明は、前記リアプラテンの移動を制御する際に、タイマでの移動量制御、前記リアプラテン調整用モータに使用されるサーボモータの位置制御、または、ギヤードモータに付けられたパルスコーダで制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の射出成形機のリアプラテン調整装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、駆動機構のバックラッシュから生じるリアプラテンの未駆動区間をリアプラテン調整用モータの駆動電流または負荷の変化に基づいて検出することにより、リニアスケールなどの取り付けに複雑な構造を伴うセンサを使用せず、リアプラテンを正確な距離を移動させることで正確な型締力の調整が可能な射出成形機のリアプラテン調整装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】射出成形機の型締装置を説明する図である。
図2】リアプラテン伝動機構を説明する図である。
図3】型締力を調整する処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の射出成形機の一実施形態について図面とともに説明する。図1図2は本発明の射出成形機の一実施形態の概要図である。
【0019】
固定プラテン1とリアプラテン2は複数のタイバー4によって連結されている。固定プラテン1とリアプラテン2間には、可動プラテン3がタイバー4に沿って移動自在に配設されている。また、固定プラテン1には固定側金型5aが取付けられ、可動プラテン3には可動側金型5bが固定側金型5aに対面して取付けられている。
【0020】
リアプラテン2と可動プラテン3間にはトグル機構6が配設され、トグル機構6のクロスヘッド6aに設けられたナット(図示せず)が、リアプラテン2に回動自在で軸方向移動不能に取付けられたボールネジ7と螺合している。ボールネジ7を伝動機構を介して型締用サーボモータ8によって駆動することにより、可動プラテン3を固定プラテン1方向に前進、後退させて金型5a、5bの開閉、型締を行い、これによってトグル式型締装置を形成している。なお、型締用サーボモータ8にはパルスエンコーダ等の該サーボモータの回転位置、速度を検出する位置・速度検出器11が取付けられている。これにより、クロスヘッド6aの位置、可動プラテン3(可動側金型5b)の位置を検出できるようにされている。
【0021】
また、リアプラテン調整用モータ10とタイバーナット9とギアから構成されるリアプラテン伝動機構(図2参照)によってリアプラテン調整手段を構成している。
タイバー4のリアプラテン2側の端部にはネジが切られている。該ネジと螺合するタイバーナット9を、前記伝動機構(図2)の伝動ギア10a、10bを介してリアプラテン調整用モータ10によって回転駆動し、リアプラテン2をタイバー4に沿って前後進できる。リアプラテン2の位置を調整できるようにリアプラテン調整用モータ10には位置検出器が取付けられている。またリアプラテン調整用モータ10は位置・速度検出器を備えたサーボモータであってもよい。リアプラテン調整用モータ10の負荷を推定するオブザーバ回路を制御装置20に備えることもできる。
【0022】
型締力センサ13は、4本あるタイバー4のうちの少なくとも一つに配設される。型締力センサ13は、タイバー4の歪み(主に、伸び)を測定するセンサである。タイバー4には型締の際に型締力に対応して引張力が加わり、型締力に比例してわずかではあるが伸びる。したがって、タイバー4の伸び量を型締力センサ13により測定することで、金型5a,5bに実際に印加されている型締力を知ることができる。
【0023】
符号20は、射出成形機を制御する制御装置を示しており、図1にはこの制御装置20の要部のみを記載している。全体を制御するプロセッサ(CPU)21にバス30を介してサーボモータの位置、速度、および電流(トルク)を制御する軸制御回路22、入出力回路24、メモリ26、A/D変換器27、表示装置29のインタフェース28が接続されている。
【0024】
軸制御回路22はプロセッサやメモリ、インタフェースなどで構成され、型締用サーボモータ8に取付けた位置・速度検出器11からの位置、速度フィードバック信号が帰還され、さらに、型締用サーボモータ8の駆動電流を検出する電流検出器12からの電流フィードバック信号が帰還されている。また、軸制御回路22にはサーボアンプ23を介して型締用サーボモータ8が接続されている。
【0025】
さらに、入出力回路24にはインバータ25を介してリアプラテン調整用モータ10が接続され、インタフェース28には表示装置29が接続されている。メモリ26には、射出成形機を制御するプログラムが格納されている。図3に示す型締力調整のためのフローチャートのアルゴリズムを基に作成したプログラムも、メモリ26に格納されている。
【0026】
プロセッサ21はこれらのプログラムに基づいて射出成形機を制御する。型締動作については、プロセッサ21はプログラムに基づいて、移動指令を軸制御回路22に出力する。軸制御回路22に内蔵されるプロセッサ(図示せず)は、この移動指令と位置・速度検出器11からの位置、速度フィードバック信号および電流検出器12からの電流フィードバック信号に基づいて、位置、速度、および電流のフィードバック制御を行い、サーボアンプ23を介して型締用サーボモータ8を駆動制御する。
【0027】
型締用サーボモータ8の駆動により、ボールネジ7が回転し、該ボールネジ7に螺合するナット(図示せず)を有するトグル機構6のクロスヘッド6aがボールネジ7に沿って移動し、トグル機構6が駆動され、可動プラテン3が前進し固定側金型5aに可動側金型5bが当接し、さらに可動プラテン3を前進させ、トグル機構6のリンクが伸び、可動プラテン3が所定の位置に達するロックアップ位置に達したとき、この位置に型締用サーボモータ8は位置決めされ、目標型締力が発生するようにリアプラテン2の位置が調整される。
【0028】
すなわち、固定プラテン1とリアプラテン2はタイバー4によって連結されているから、固定側金型5aと可動側金型5bが当接し、さらに可動プラテン3および可動側金型5bが前進したとき、該タイバー4が伸び、このタイバー4の伸びの反力によって目標型締力が得られるように調整される。
【0029】
そのような構造であるため、金型5a、5bを金型の厚さが異なるものに交換したときや型締力を変えるときには、リアプラテン2の位置を移動させ、型締力を調整しなければならない。プロセッサ21は入出力回路24を介してリアプラテン調整用モータ10を駆動し、伝動機構(図2)を介してタイバーナット9を回転させてリアプラテン2の位置を移動させることができる。
【0030】
このような型締用サーボモータ8でトグル式型締機構を駆動する射出成形機では、射出成形機の自動運転中、金型5a、5bの熱膨張等によって型締力が変動する場合がある。そのため、トグル式型締装置を有する射出成形機ではこのような型締力の変動が生じた場合、リアプラテンを移動させて型締力を調整することが行われている。その際に、リアプラテンの位置を正確に制御する必要がある。
【0031】
本発明では、リアプラテン2の位置を正確に制御するため、伝動機構(図2)のバックラッシュによるリアプラテンの未駆動区間をリアプラテン調整用モータ10にかかる負荷の変化から検出して、リアプラテン調整用モータ10の回転量を目標移動距離に対して、未駆動区間に対応する補正を加えてリアプラテン2を移動させることで正確な位置制御が可能となり正確な型締力調整が可能となる。なお、リアプラテン2の移動制御は、制御装置20に備わったタイマ(図示せず)での移動量制御、リアプラテン調整用モータ10に使用されるサーボモータの位置制御、または、ギヤードモータに付けられたパルスコーダからの出力信号に基づいて行うことができる。
【0032】
図3は型締力を調整する場合のフローチャートである。以下、各ステップに従って説明する。
[ステップSA01]目標型締力を設定する。より具体的には、予めオペレータが設定した目標型締力の値を記憶しているメモリから前記目標型締力の値を読み込む。
[ステップSA02]ロックアップを行い現在の型締力を測定する。
[ステップSA03]|目標型締力−測定型締力|≧αの場合はステップSA04に移行し、|目標型締力−測定型締力|<αの場合は処理を終了する。なお、αは目標型締力に調整する際の許容誤差である。
[ステップSA04]目標型締力と測定型締力の差からリアプラテン調整量を計算する。
[ステップSA05]リアプラテン調整用モータを調整方向にモータ負荷の絶対値≧βになるまで駆動する。なお、βはバックラッシュによる未駆動区間を検出するための負荷の閾値である。
[ステップSA06]リアプラテン調整用モータにかかる負荷が閾値βを超えたところからリアプラテン調整用モータを調整量だけ駆動する。
[ステップSA07]リアプラテン調整方向が前進方向(金型が閉じる方向)だった場合ステップSA02に戻る。リアプラテン調整方向が後退方向(金型が開く方向)だった場合ステップSA08に移行する。
[ステップSA08]リアプラテン調整用モータを調整逆方向にモータ負荷の絶対値≧βになるまで駆動する。なお、βはバックラッシュによる未駆動区間を検出するための負荷の閾値である。
【0033】
上記フローチャートを補足して説明する。
リアプラテンの移動時にリアプラテン調整用モータの駆動電流もしくは負荷をモニタし、該駆動電流もしくは負荷が第1の所定以上の変化を検知した位置をリアプラテン移動開始位置として前記リアプラテンを該リアプラテン移動開始位置から前記補正移動距離だけ移動させる。
【0034】
ステップSA05において、βはバックラッシュによる未駆動区間を検出するための負荷の閾値(請求項1の「第1の所定以上の変化」に対応)であるとしているが、リアプラテン調整用モータの駆動電流に基づいてバックラッシュによる未駆動区間を検出する場合には駆動電流の閾値を用いる。
【0035】
あるいは、ステップSA05において、第1の所定以上の変化として、リアプラテン調整用モータの駆動電流もしくは負荷の単位時間あたりの変化量が閾値を越えること、またはリアプラテン調整用モータの駆動電流もしくは負荷の単位移動距離あたりの変化量が閾値を超えることの何れかによって、バックラッシュによる未駆動区間を判定してもよい。
【0036】
また、上述したフローチャートの処理において、リアプラテンを補正移動距離だけ移動させた後、当該補正においてリアプラテン調整用モータを回転させた方向と逆方向にリアプラテン調整用モータ回転させ、リアプラテン調整用モータの駆動電流もしくは負荷が第2の所定以上の変化を検知した位置で、リアプラテン調整用モータの回転を停止させる。 例えば、リアプラテン調整方向が後退方向(金型が開く方向)だった場合、ステップSA06でリアプラテンを目標位置まで移動させた後にステップSA08で行うバックラッシュ分リアプラテン調整用モータを逆回転(金型が閉じる方向)させることで、ロックアップ時に影響を及ぼすリアプラテン移動で生じたバックラッシュを取り除くことができる。ここでは、第2の所定以上の変化としてリアプラテン調整用モータのモータ負荷の値が用いられている。
【0037】
第2の所定以上の変化は、前記リアプラテン調整用モータの駆動電流もしくは負荷の絶対値が閾値を超えること、または前記リアプラテン調整用モータの駆動電流もしくは負荷の単位時間あたりの変化量が閾値を越えること、または前記リアプラテン調整用モータの駆動電流もしくは負荷の単位移動距離あたりの変化量が閾値を超えることの何れかとしてもよい。
なお、第1の所定以上の変化と第2の所定以上の変化は同じものであってもよい。
【0038】
リアプラテン調整用モータの負荷は、リアプラテン調整用モータのトルクから求めてもよく、リアプラテン調整用モータの負荷を推定するオブザーバ回路を用いてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 固定プラテン
2 リアプラテン
3 可動プラテン
4 タイバー
5a 固定側金型
5b 可動側金型
6 トグル機構
6a クロスヘッド
7 ボールネジ
8 型締用サーボモータ
9 タイバーナット
10 リアプラテン調整用モータ
10a 伝動ギアa
10b 伝動ギアb
11 位置・速度検出器
12 電流検出器
13 型締力センサ

20 制御装置
21 プロセッサ
22 軸制御回路
23 サーボアンプ
24 入出力回路
25 インバータ
26 メモリ
27 A/D変換器
28 インタフェース
29 表示装置
30 バス
図1
図2
図3