(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2ブッシュは、前記連結部材の軸方向の荷重が入力されることにより前記突出部の突出先端が前記連結部材側に当接可能に構成され、前記連結部材の軸方向に入力される荷重が所定値を超えた場合には、前記突出部の突出先端が前記連結部材側に当接した状態が維持され、
前記連結部材の軸方向に入力される荷重が所定値以下である場合には、前記突出部の突出先端が前記連結部材側に当接した状態が解除されることを特徴とする請求項2記載の防振装置。
前記第1ブッシュは、前記内側取付部の軸方向に沿って前記防振基体に凹設されると共に、前記連結部材の軸方向に入力される荷重によって前記連結部材および前記内側取付部が相対的に接近する方向に設けられる空所と、
前記空所に対して前記内側取付部を挟んで反対側に設けられると共に、弾性材料から構成されるストッパ部とを備え、
前記ストッパ部は、前記連結部材の軸方向に入力される荷重が所定値以下である場合には、前記連結部材の長手方向に予圧縮された状態で前記内側取付部を押圧することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の防振装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。まず、
図1及び
図2を参照して第1実施の形態について説明する。
図1は本発明の第1実施の形態における防振装置1の平面図であり、
図2は
図1のII−II線における防振装置1の断面図である。
【0016】
図1に示すように、防振装置1は、第1ブッシュ10及び第2ブッシュ20と、それら第1ブッシュ10及び第2ブッシュ20を互いに連結する連結部材30とを備え、エンジンと車体との振動伝達を抑えつつエンジンの相対変位を抑制し得るように構成される。本実施の形態では、エンジン側(
図1右側、図示せず)に第1ブッシュ10が、車体側(
図1左側、図示せず)に第2ブッシュ20が連結される。
【0017】
第1ブッシュ10は、連結部材30が連結される円筒状の外側取付部11と、その外側取付部11の内周側に位置しエンジン側(図示せず)に取り付けられる内側取付部12と、それら外側取付部11及び内側取付部12の間に介在すると共に弾性材料(ゴム状弾性材)から構成される防振基体13とを備えて構成される。
【0018】
図2に示すように、外側取付部11は鉄鋼材料から円筒状に構成され、内側取付部12はアルミニウム合金から筒状に構成される。内側取付部12は軸方向(
図2上下方向)の中間部に、径方向に凸起する凸起部12aが形成されている。内側取付部12の中心に貫通形成されたボルト挿通孔にボルト(図示せず)を挿通し、そのボルトをエンジン側に締結することにより、内側取付部12がエンジン側に連結される。
【0019】
第2ブッシュ20は、連結部材30が連結される円筒状の外側取付部21と、その外側取付部21の内周側に位置し車体側(図示せず)に取り付けられる筒状の内側取付部22と、それら外側取付部21及び内側取付部22の間に介在すると共に弾性材料(ゴム状弾性材)から構成される防振基体23とを備えて構成されている。第2ブッシュ20は、内側取付部22の中心に貫通形成されたボルト挿通孔にボルト(図示せず)を挿通し、そのボルトを車体側に締結することにより、ボルトを介して車体側に連結される。
【0020】
連結部材30は、第1筒部材31及び第2筒部材32と、それら第1筒部材31及び第2筒部材32が両端に溶接固定されるブラケット部材33とを備えて構成される。第1筒部材31及び第2筒部材32は、第1ブッシュ10の外側取付部11及び第2ブッシュ20の外側取付部21がそれぞれ内嵌圧入される部材であり、鉄鋼材料から筒状に構成される。ブラケット部材33は、鉄鋼材料から円筒状に形成されており、その両端部に第1筒部材31及び第2筒部材32の外周面が溶接固定される。
【0021】
本実施の形態では、防振装置1は、車両の後方側に第1ブッシュ10が、車両の前方側に第2ブッシュ20が配置され、車長方向に沿って連結部材30(ブラケット部材33)の長手方向が配置されるように車両に搭載される。その結果、車両の加速走行時には、内側取付部12に取り付けられたエンジン(図示せず)の変位により、第1ブッシュ10の内側取付部12は、外側取付部11(第1筒部材31)に対して相対的に矢印P1方向(
図1参照)に移動する。
【0022】
一方、第2ブッシュ20は、連結部材30によって第1ブッシュ10と連結されているので、エンジンの変位が主方向(車両加速時のエンジン変位方向)へ大きくなった場合に、内側取付部22が外側取付部21(第2筒部材32)に対して矢印P2方向(
図1参照)へ相対変位する。
【0023】
第1ブッシュ10の防振基体13は、一対のゴム脚部13aと、第1ストッパゴム部13bと、第2ストッパゴム部13cと、ゴム膜部13eとを主に備えて構成される。一対のゴム脚部13aは、外側取付部11と内側取付部12とを連結するための部位であり、一端が外側取付部11の内周に、他端が内側取付部12の外周にそれぞれ加硫接着により固着される。
【0024】
第1ストッパゴム部13bは、エンジンの変位が主方向(車両加速時のエンジン変位方向であって、
図1において内側取付部12が外側取付部11(第1筒部材31)に対して矢印P1方向へ相対変位する方向)へ大きくなった場合に、外側取付部11と内側取付部12との間で押圧挟持されてストッパ作用をなすための部位である。第1ストッパゴム部13bは、一対のゴム脚部13aの対向間において、内側取付部12及び凸起部12aの外周に加硫接着により固着される。
【0025】
第2ストッパゴム部13cは、初期状態(車両停止時)において、内側取付部12とストッパ部15(後述する)との間で押圧挟持されるための部位であり、第1ストッパゴム部13bと一体に加硫成形される。第2ストッパゴム部13cは、軸方向端部に凹部13dが凹設される。凹部13dにより第2ストッパゴム部13cのばね定数を低下させ、第2ストッパゴム部13cの可撓性を向上させることができる。その結果、ストッパ部15による内側取付部12の押圧効果を向上させる。
【0026】
ゴム膜部13eは、外側取付部11の内周面に加硫接着される膜状の部位であり、エンジンの変位が主方向(矢印P1方向)へ大きくなった場合に、外側取付部11と内側取付部12(第1ストッパゴム部13b)との間で押圧挟持されてストッパ作用をなす。
【0027】
第1ブッシュ10は、外側取付部11及び内側取付部12の軸方向(
図1紙面垂直方向)に沿って防振基体13に空所14が凹設される。本実施の形態では、空所14は第1ブッシュ10に貫通形成される。空所14は、車両の加速走行時に外側取付部11及び内側取付部12が相対的に接近する方向(矢印P方向)に設けられる。空所14に対して内側取付部12を挟んで反対側(反矢印P方向)の外側取付部11内にストッパ部15が設けられる。ストッパ部15は、弾性材料(ゴム状弾性材)から構成され、初期状態では、内側取付部12及び外側取付部11との間にブラケット部材33の長手方向(
図1左右方向)に予圧縮された状態で内側取付部12及び外側取付部11を押圧する。
【0028】
なお、ストッパ部15は、筒状の外側取付部11の軸方向(
図2上下方向)に亘って設けられている。これにより、ストッパ部15のゴムボリュームを大きくすることができるので、ストッパ部15による内側取付部12の押圧力(拘束力)を大きくすることができる。
【0029】
次に第1ブッシュ10の製造方法について説明する。第1ブッシュ10は、平面視して長円状に形成された筒状の外側取付部11及び内側取付部12を準備し、成形型(図示せず)内に配置して、防振基体13及びストッパ部15を加硫接着により固着する。空所14及びストッパ部15は外側取付部11の長径側に配置する。次いで、外側取付部11の外形を圧縮し、外側取付部11の外径を第1筒部材31の内径に合わせつつ、ストッパ部15の内側面を内側取付部12の外周面に押圧する。これによりストッパ部15に予圧縮を与えることができる。最後に、外側取付部11を第1筒部材31に内嵌圧入して、防振装置1の第1ブッシュ10を製造できる。以上のように構成される第1ブッシュ10によれば、初期状態(車両停止時)において、ストッパ部15が予圧縮された状態で外側取付部11及び内側取付部12を押圧するので、第1ブッシュ10の動ばね定数を大きく設定できる。
【0030】
次に
図2及び
図3(a)を参照して、第2ブッシュ20の詳細構成を説明する。
図3(a)は
図2のIIIa−IIIa線における第2ブッシュ20の断面図である。第2ブッシュ20は、
図2に示すように、筒状の外側取付部21と、外側取付部21の内周側に位置し円筒状に形成される内側取付部22と、外側取付部21及び内側取付部22の間に挿填されると共にゴム状弾性材から構成される防振基体23とを主に備えている。
【0031】
防振基体23は、内側取付部22の外周面に内周側が加硫接着され、軸方向両端側の外周が、短円筒状に形成された一対の内板21aの内周面にそれぞれ加硫接着される。防振基体23は、内板21aに挟まれた軸方向の中央部に、空洞部24が全周に亘って環状に形成される。内板21aは、外側取付部21の両端をかしめることにより、外側取付部21に固定される。これにより空洞部24は、防振基体23と外側取付部21との間で密閉状態とされる。
【0032】
空洞部24内には、シリコンオイル等の粘性流体が充填される。
図3(a)に示すように、外側取付部21には、粘性流体の注入孔および空気孔が形成されており、粘性流体が空洞部24内に充填された後、ブラインドリベット25により注入孔および空気孔が閉塞される。これにより空洞部24内に粘性流体が封入される。なお、粘性流体としては、1000cSt〜100000cStの動粘度を有する流体を適宜選択して用いることができる。
【0033】
内側取付部22は、内側取付部22の軸方向(
図2上下方向)と直交する方向に延びる突出部22a,22bが一体に形成されている。突出部22a,22bは、板状に形成されると共に空洞部24内に突出して、空洞部24を軸方向の略半分の位置で区画する。突出部22a,22bは、平面視して全体として略十字状に形成され、突出部22aはブラケット部材33(連結部材30)の軸方向(
図3(a)左右方向)に位置し、突出部22bはブラケット部材33の軸方向と直交する方向(
図3(a)上下方向)に位置する。突出部22a,22bは、防振基体23と一体にゴム膜状に加硫成形されたストッパゴム部23a,23bが設けられる。ストッパゴム部23a,23bは、内側取付部22及び外側取付部21の過度の変位を規制するための部位である。
【0034】
図3(a)に示すように、突出部22a及びストッパゴム部23aは、外側取付部21の内周面に先端が近接配置され、外側取付部21の内周面と所定の間隔が設けられる。また、突出部22b及びストッパゴム部23bは、突出先端が外側取付部21の内周面に接触して配置される。外側取付部21及び内側取付部22が、ブラケット部材33の軸方向(
図3(a)左右方向)に相対変位する場合には、ストッパゴム部23aが外側取付部21の内周面に接触しない間(隙間が維持される間)は、高減衰力が得られると共に第2ブラケット20の動ばね定数を小さくできる。これに対し、ストッパゴム部23aが外側取付部21の内周面に押し付けられると、突出部22aを覆うストッパゴム部23aの径方向厚さは小さいので、第2ブラケット20の動ばね定数が上昇する。
【0035】
以上のように構成される第2ブッシュ20によれば、内側取付部22と外側取付部21とが相対的に変位すると、突出部22a,22bの移動に伴い、空洞部24内の粘性流体が突出部22a,22bにより撹拌される。その結果、粘性流体が突出部22a,22bの周囲の間隙を通して移動しようとする。そのときの抵抗によって高い減衰力が発生する。このときに生じる抵抗は、振動数に対して特定のピークをもたないので、広い振動数域において減衰力の増大を図ることができる。
【0036】
また、エンジンの変位が主方向(車両加速時のエンジン変位方向)へ大きくなった場合には、第2ブッシュ20の内側取付部22が外側取付部21に対して矢印P2方向へ相対変位し、ストッパゴム部23aが外側取付部21の内周面に押し付けられる。突出部22aを覆うストッパゴム部23aの径方向厚さは小さいので、第2ブラケット20の動ばね定数が急激に上昇する。
【0037】
次に
図3(b)を参照して、第1ブッシュ10の動作について説明する。
図3(b)は外側取付部11及び内側取付部12が相対的に接近したときの第1ブッシュ10の平面図である。上述のように、第1ブッシュ10は、内側取付部12に対して主方向(車両加速時のエンジン変位方向)に空所14が設けられる。空所14に対して内側取付部12を挟んで反対側の外側取付部11内にストッパ部15が設けられる。ストッパ部15は、初期状態(車両停止時)に予圧縮された状態で外側取付部11及び内側取付部12を押圧する。その結果、初期状態には第1ブッシュ10の動ばね定数を大きく設定することができる。
【0038】
車両加速時には、エンジンの変位が主方向(
図3(b)右方向)へ大きくなるので、それに伴い、内側取付部12が主方向(
図1矢印P1方向)へ相対変位する。その結果、ストッパ部15による押圧力が低下するので、内側取付部12は、ストッパ部15による拘束から次第に開放され一対のゴム脚部13aにより弾性支持される。その結果、車両加速時には第1ブッシュ10の動ばね定数を低下させることができる。
【0039】
また、第1ブッシュ10は、簡単な構造で、初期状態の動ばね定数を増大させると共に、外側取付部11に対して内側取付部12を主方向(
図1矢印P1方向)へ相対的に変位させることで動ばね定数を低下させるので、信頼性を確保できる。
【0040】
次に
図4を参照して、防振装置1に連結部材30(ブラケット部材33)の軸方向のプリロードを加えたときのプリロードに対する防振装置1の動ばね定数およびロスファクタの関係を説明する。
図4は防振装置1に加えるプリロードと10Hzにおける動ばね定数およびロスファクタとの関係を示す図である。
【0041】
なお、
図4において、Kd:10は第1ブッシュ10の動ばね定数を示し、Kd:20は第2ブッシュ20の動ばね定数を示す。また、Kd:1は防振装置1の動ばね定数を示し、Lf:1は防振装置1のロスファクタを示す。これらの図中の符号は、
図5において同様である。また、
図4及び
図5に記載した数値(動ばね定数、ロスファクタ、振動数および荷重)は一例であり、これらの数値に限定されるものではない。
【0042】
車両走行時にエンジンの上下振動(揺動)が生じる時(定速走行時など)やエンジンのアイドリング時など、連結部材30の軸方向に入力される荷重が所定値(約800N)以下(プリロードが約800N以下)の場合には、
図6に示すように、第1ブッシュ10の動ばね定数(Kd:10)は第2ブッシュ20の動ばね定数(Kd:20)より大きく設定される。本実施の形態では、第1ブッシュ10はストッパ部15(
図1参照)によって防振基体13が高動ばねとされ、それと比較して、第2ブッシュ20の防振基体23の動ばね定数が小さく設定される。その結果、振動入力に対して第2ブッシュ20による緩衝が支配的となる。防振基体23に加わるプリロードは小さいので、振動入力に対する防振基体23の振動数は低くなる。その場合には、第2ブッシュ20の粘性流体によるロスファクタが、第1ブッシュ10の防振基体13によるロスファクタより大きく設定される。これにより、連結部材30の軸方向に入力される荷重が小さい状態での防振装置1のロスファクタ(Lf:1)を確保できる。
【0043】
車両の加速走行時など、連結部材30の軸方向に入力される荷重が所定値(約800N)を超えた(プリロードが約800Nを超えた)場合には、第1ブッシュ10の動ばね定数(Kd:10)は、第2ブッシュ20の動ばね定数(Kd:20)より小さく設定される。本実施の形態では、第2ブッシュ20の突出部22a(
図2参照)及びストッパゴム部23aの変位が外側取付部21によって規制されることで、急激に第2ブッシュ20の動ばね定数(Kd:20)が上昇する。一方、第1ブッシュ10の内側取付部12はストッパ部15の干渉を受け難くなるので、第1ブッシュ10の動ばね定数(Kd:10)が低下する。その結果、振動入力に対して第1ブッシュ10による緩衝が支配的となる。防振基体13に加わるプリロードは大きいので、振動入力に対する防振基体13の振動数は高くなる。これにより、防振装置1の動ばね定数(Kd:1)を低く抑えることができる。
【0044】
さらに連結部材30の軸方向に入力される荷重が大きくなると(プリロードが大きくなると)、第1ブッシュ10の第1ストッパゴム部13bの変位が外側取付部21によって規制される。これにより、第1ブッシュ10の動ばね定数(Kd:10)及び防振装置1の動ばね定数(Kd:1)は上昇する。
【0045】
防振装置1に加えるプリロードと各振動数における動ばね定数およびロスファクタとの関係から、応答振動への周波数応答特性を求めることができる。
図5は、防振装置1の連結部材30の軸方向に入力される荷重の振動数と動ばね定数およびロスファクタとの関係を示す図である。
図5に示すように、第1ブッシュ10の動ばね定数(Kd:10)は振動数に対する依存性が小さく、振動数に対して略一定であるのに対し、第2ブッシュ20の動ばね定数(Kd:20)は振動数が増加するにつれて対数的に増加する。これにより、防振装置1の動ばね定数(Kd:1)を振動数に対して略一定に維持できる。よって、第1ブッシュ10により高振動領域(高周波領域)における防振装置1の低動ばね特性を確保できる。また、第2ブッシュ20のロスファクタにより低振動領域の減衰力を確保できるので、防振装置1は、低振動領域(低周波領域)における減衰力を確保することができる(Lf:1)。
【0046】
次に
図6を参照して、第1ブッシュ10及び第2ブッシュ20の荷重と変位との関係(荷重−撓み特性曲線)と、その関係から得られる防振装置1の荷重−撓み特性曲線とについて説明する。
図6は第1ブッシュ10、第2ブッシュ20及び防振装置1の荷重と変位との関係を示す図である。連結部材30の軸方向の変位を横軸に示し、防振装置1に入力される荷重を縦軸に示す。また、防振装置1の特性曲線を実線で示し、第1ブッシュ10の特性曲線を一点鎖線で示し、第2ブッシュ20の特性曲線を破線で示す。なお、
図6に示す数値(変位および荷重)は一例であり、本発明はこれらの数値に限定されるものではない。
【0047】
車両(図示せず)の加速に伴って防振装置1(
図1参照)の第1ブッシュ10に軸方向(
図1右向き)の引張力が作用すると、第1ブッシュ10の防振基体13は、ストッパ部15の押圧力を受けて(
図6の点Aまで)、ほぼ線形(直線形)の高動ばね特性を保って変形する。ストッパ部15の影響を防振基体13が受けなくなると(点Aから点Bまで)、内側取付部12が空所14内を移動する間、防振基体13はほぼ線形の低動ばね特性を保って変形する。さらに変位が大きくなると第1ストッパゴム部13bはゴム膜部13e(
図2参照)に当接する(点B)。その時点から防振基体13の変形には大きな抵抗が生じ、特性曲線の立ち上がりが急になる。
【0048】
第2ブッシュ20の防振基体23は、突出部22aが外側取付部21に当接するまで(点Cまで)、同一の入力荷重に対して第1ブッシュ10より変位量が大きくなるように設定されており、ほぼ線形(直線形)の低動ばね特性を保って変形する。突出部22aの突出先端に設けられるストッパゴム部23aの径方向厚さは小さいので、突出部22aが外側取付部21に当接すると(点C)、特性曲線の立ち上がりが急激になる。そのため、第2ブッシュ20の防振基体23は、突出部22aが外側取付部21に当接すると、同一の入力荷重に対して第1ブッシュ10より変位量が小さくなるように設定される。
【0049】
第1ブッシュ10及び第2ブッシュ20が連結部材30の軸方向(荷重の入力方向)両端に配置された防振装置1は、
図6に示すように、荷重が約2000Nまでほぼ線形特性を保って変形する。さらに荷重が大きくなると、第1ブッシュ10の第1ストッパゴム部13bにより、高荷重入力時の変位が規制される。防振装置1は入力荷重が約2000Nまでほぼ線形の低動ばね特性に設定されるので、車両のアイドリング時や加速走行時、さらには車両走行時に通常生じるエンジンの揺動等に伴って防振装置1に加わる荷重域において、優れた防振性能を発揮する。
【0050】
次に
図7を参照して、防振装置1の変形例について説明する。防振装置1は、要求される特性に応じて、ストッパ部14の予圧縮量や硬さ(ばね定数)等を変えることが可能である。
図7(a)は第1ブッシュ10のストッパ部45の別の形態を示す部分平面図であり、
図7(b)は第1ブッシュ10のストッパ部55の他の形態を示す部分平面図であり、
図7(c)は第1ブッシュ10のストッパ部65のその他の形態を示す部分平面図である。
【0051】
図7(a)に示すストッパ部45は、外側取付部11の周方向に沿って軸方向(
図7(a)紙面垂直方向)に貫通する円弧状のすぐり部45aが形成されている。これにより、ストッパ部45のばね定数を低下させ、内側取付部12(
図1参照)の押圧力を低下させることができる。
【0052】
図7(b)に示すストッパ部55は、軸方向(
図7(b)紙面垂直方向)に貫通するすぐり部55aが2箇所に形成されている。
図7(c)に示すストッパ部65は、軸方向(
図7(c)紙面垂直方向)に貫通するすぐり部65aが1箇所に形成されている。これらのストッパ部55,65においても、すぐり部55a,65aが形成されることで、ばね定数を低下させ、内側取付部12(
図1参照)の押圧力を低下させることができる。
【0053】
次に
図8を参照して第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、第1ブッシュ10及び第2ブッシュ20が軸方向を平行となるよう連結部材30に固定される場合について説明した。これに対し第2実施の形態では、第1ブッシュ10及び第2ブッシュ20が軸方向を直交させて固定される場合について説明する。
図8(a)は第2実施の形態における防振装置101の平面図であり、
図8(b)は防振装置101の側面図である。
【0054】
なお、第2実施の形態における防振装置101は、第1ブッシュ10及び第2ブッシュ20が固定される方向以外は第1実施の形態で説明した防振装置1と同一である。よって、第1実施の形態と同一の部分に同一の符号を付して、以下の説明を省略する。第2実施の形態における防振装置101も、第1実施の形態で説明した防振装置1と同様の効果を実現できる。
【0055】
次に
図9及び
図10を参照して第3実施の形態について説明する。第1実施の形態および第2実施の形態では、第1ブッシュ10がロッド状(管体構造)に形成される連結部材30の第1筒部材31に内嵌圧入され、第2ブッシュ20と連結される場合について説明した。これに対し第3実施の形態では、連結部材230が上下に分割された板金具231,234により形成されると共に、その板金具231,234に第1ブッシュ210が挟持される場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0056】
図9は第3実施の形態における防振装置201の平面図であり、
図10(a)は
図9のXa−Xa線における防振装置201の断面図であり、
図10(b)は
図9のXb−Xb線における防振装置201の断面図であり、
図10(c)は
図9のXc−Xc線における防振装置201の断面図である。
【0057】
図9に示すように、防振装置201は、第1ブッシュ210及び第2ブッシュ20と、それらを互いに連結する連結部材230とを備えて構成される。本実施の形態では、第1ブッシュ210が車体側(図示せず)に連結され、第2ブッシュ20がエンジン側(図示せず)に連結される。連結部材230は、平面視して略同一形状とされると共に上下に分割された板金具231,234(
図10参照)が、板厚方向に重ね合わせて固着された分割構造体である。板金具231,234は、平面視して長円状に形成された薄肉の板状体であり、周縁に形成された係止片233,236によって両者がかしめ固定される。
【0058】
板金具231,234の長手方向両端部に、略円形の第1開口部231a1,234a1(
図10(b)参照)及び第2開口部231b1,234b1(
図10(a)参照)が形成される。第1開口部231a1,234a1及び第2開口部231b1,234b1は、板金具231,234を構成する板状体の水平面に対して相反する方向に筒状に折曲して形成される立上板部231a,231b,234a,234bの内壁部である。立上板部231a,134aは第1ブッシュ210の外側取付部を構成する部位であり、第2開口部231b,234bは第2ブッシュ20(外側取付部21)が内嵌圧入される部位である。板金具231,234は、第1開口部231a,234aの対向位置(
図9上下方向)に、上下方向(
図9紙面垂直方向)に膨出した膨出部232,235(
図10(c)参照)が形成される。
【0059】
第1ブッシュ210は、板金具231,234の一部として筒状に形成された立上板部231a,234a(外側取付部)と、立上板部231a,234aの内側に位置する内側取付部212と、板金具231,234及び内側取付部212の間に介在すると共に弾性材料(ゴム状弾性材)から構成される防振基体213とを備えて構成される。防振基体231は、内側取付部212の外周に加硫接着により固着されると共に、板金具231,234に形成された膨出部232,235に押圧挟持される。
【0060】
防振基体213は、板金具231,234に対して内側取付部212を弾性支持するための部材であり、板金具231,234の長手方向と直交する対向位置に形成された膨出部232,235に押圧挟持され、その対向間に第1ストッパゴム部213aが形成される。第1ストッパゴム部213aは、エンジンの変位が主方向(車両加速時のエンジン変位方向であって、
図9において内側取付部212が板部材231に対して右側へ相対変位する方向)へ大きくなった場合に、内側取付部212と立上板部231a,234aとの間で押圧挟持されてストッパ作用をなすための部位である。
【0061】
膨出部232,235に押圧挟持された防振基体213は、内側取付部212の軸方向(
図9紙面垂直方向)に沿って第1開口部231aとの間に空所214が凹設される。本実施の形態では、空所214は板金具231,234の板厚方向に貫通形成される。空所214は、車両の加速走行時に空所214の開口面積が狭くなる位置(
図9右側)に設けられる。空所214に対して内側取付部212を挟んで反対側(
図9左側)の立上板部231a,234a内にストッパ部215が設けられる。
【0062】
ストッパ部215は、弾性材料(ゴム状弾性材)から構成され、防振基体213と一体に加硫成形される。ストッパ部215は、初期状態では、内側取付部212及び立上板部231a,234aとの間に板金具231,234の長手方向(
図9左右方向)に予圧縮された状態で内側取付部212及び立上板部231a,234aを押圧する。
【0063】
以上のように構成される防振装置201は、連結部材230の軸方向に入力される荷重が所定値以下である場合には、第1ブッシュ210の動ばね定数が第2ブッシュ20の動ばね定数より大きく設定される。また、その場合に第2ブッシュ20のロスファクタが第1ブッシュ210のロスファクタより大きく設定される。一方、入力される荷重が所定値を超えた場合には、第1ブッシュ210の動ばね定数が第2ブッシュ20の動ばね定数より小さく設定される。このように設定することで、第1実施の形態と同様に、低振動領域における減衰力を確保しつつ高振動領域における低動ばね特性を実現できる。
【0064】
また、板金具231,241の膨出部232,235に防振基体213を押圧挟持すると共に、防振基体213と一体に形成されたストッパ部215を板金具231,241と一体に形成された立上板部231a,234aに押圧することでストッパ部215に予圧縮を与える。そのため、第1ブッシュ210を簡易に構成することができる。
【0065】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、上記実施の形態で挙げた数値や形状(例えば各構成の数量や寸法、形状等)は一例であり、他の数値や形状を採用することは当然可能である。
【0066】
また、上記の各実施形態は、それぞれ、他の実施形態が有する構成の一部または複数部分を、その実施形態に追加し或いはその実施形態の構成の一部または複数部分と交換等することにより、その実施形態を変形して構成するようにしても良い。
【0067】
上記各実施の形態では、第1ブッシュ10,210はストッパ部15,215の予圧縮により初期状態の防振基体を高動ばねに設定し、連結部材30,23の軸方向の荷重入力によりストッパ部15,215による押圧力を低下させて低動ばねにする構造について説明した。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、他の構造を採用することは当然可能である。他の構造としては、例えば、連結部材30,230の軸方向の荷重入力により座屈する一方、荷重がなくなると復元する部位を防振基体の一部に設けることが考えられる。これにより、初期状態では防振基体の剛性により高動ばねに設定され、連結部材30,23の軸方向の荷重入力により防振基体の一部の座屈により低動ばねに設定される。このような構造とする場合にも、上記各実施の形態と同様の効果を実現できる。
【0068】
上記第1実施の形態では、第1ブッシュ10がエンジン側に結合され、第2ブッシュ20が車体側に結合される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、上記実施の形態とは逆配置にすることは当然可能である。即ち、エンジン側に配置される部材(エンジン、モータ、コンバータハウジング、トランスミッション等のパワーユニット側部材)に、別体のブラケット等の締結固定用の部材を介して第2ブッシュ20が結合される場合においても、上記実施の形態と同様の効果を実現できる。
【0069】
上記各実施の形態では、第1ブッシュ10,210に形成された空所14,214が第1ブッシュ10,210の軸方向に貫通形成される場合について説明した。しかし、必ずしも空所14,214は軸方向に貫通する必要はなく、軸方向の一部に空洞状に形成されていれば良い。この場合も、空所によって防振基体13,213を弾性変形させ易くすることができ、内側取付部12,212と外側取付部(連結部材30,230)との相対位置を変化させることができるからである。
【0070】
上記各実施の形態では、第1ブッシュ10,210の防振基体13,213が内側取付部12,212に加硫接着される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。これらの技術を、防振基体13,213を内側取付部21,212に非接着で保持させた防振装置に適用することは当然可能である。