特許第6068223号(P6068223)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6068223
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】多層基板用コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/79 20110101AFI20170116BHJP
   H05K 1/14 20060101ALI20170116BHJP
   H05K 1/11 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   H01R12/79
   H05K1/14 C
   H05K1/14 H
   H05K1/14 B
   H05K1/11 D
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-65641(P2013-65641)
(22)【出願日】2013年3月27日
(65)【公開番号】特開2014-191952(P2014-191952A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2015年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】591043064
【氏名又は名称】モレックス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】390015244
【氏名又は名称】日本モレックス合同会社
(72)【発明者】
【氏名】新津 俊博
(72)【発明者】
【氏名】羽賀 元久
【審査官】 前田 仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−335547(JP,A)
【文献】 特開2012−099447(JP,A)
【文献】 再公表特許第2010/047141(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/79
H05K 1/11
H05K 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層基板の板厚面に形成された挿入口内に配置される基板側接続部と、
平板状ケーブルの先端部に設けられ、前記挿入口に対する挿入により前記多層基板の中間層で前記基板側接続部と電気的に接続されるケーブル側接続部と、を備える多層基板用コネクタであって、
前記基板側接続部または前記ケーブル側接続部の一方が柱状端子、他方が平板状端子を備え、
前記柱状端子は、前記多層基板の中間層または前記平板状ケーブルの先端部から、前記多層基板または前記平板状ケーブルの厚さ方向に突出形成され、
前記平板状端子は、前記挿入口に対する前記ケーブル側接続部の挿入に応じて、前記柱状端子の両方の側面部に前記挿入口の幅方向両側から弾性的に接触する弾性接触部を備える第1平板状端子と、前記柱状端子の一方の側面部に前記挿入口の幅方向から弾性的に接触する弾性接触部と他方の側面部を非弾性的に接触する非弾性接触部を備える第2平板状端子であることを特徴とする多層基板用コネクタ。
【請求項2】
前記ケーブル側接続部は、前記第1平板状端子が幅方向に複数配置され、前記第2平板状端子がその両端に配置され、両端に配置された第2平板状端子のそれぞれは、幅方向の内側に弾性接触部を、外側に非弾性接触部を備えるよう配置され、前記基板側接続部は、前記柱状端子および挿入ガイドを備え、該挿入ガイドにより前記挿入口に対する前記ケーブル側接続部の挿入をガイドすることを特徴とする請求項1に記載の多層基板コネクタ。
【請求項3】
前記第1平板状端子は、柱状端子に一側方から弾性的に接触する弾性接触部と、同じ柱状端子の他の側方から弾性的に接触する弾性接触部を有し、一側方の弾性接触部の反力が、同じ柱状端子の他側方の反力で相殺されることを特徴とする請求項1〜2に記載の多層基板用コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FPCなどの平板状ケーブルを多層基板の中間層に接続するための多層基板用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機、スマートフォンなどの電子機器では、配線パターンの高密度化に対応するために、プリント基板を積層状に形成した多層基板が広く用いられており、また、多層基板と電子部品モジュールとの接続や基板同士の接続には、FPCなどの平板状ケーブルが使用されている。
【0003】
従来、平板状ケーブルを多層基板に接続する場合は、多層基板の表層にコネクタを実装し、ここに平板状ケーブルを接続していたが、多層基板の表層にコネクタを実装すると、コネクタを含めた多層基板の厚さ寸法が大きくなるだけでなく、多層基板上におけるコネクタの占有面積が大きくなり、多層基板や電子機器の小型化を阻害する惧れがあった。
【0004】
そこで、近年では、平板状ケーブルを多層基板の中間層に接続することが提案されている。例えば、特許文献1には、多層基板の板厚面に形成された挿入口に平板状ケーブルを挿入することにより、平板状ケーブルと多層基板が電気的に接続される多層基板接続構造が示されている。
【0005】
図15は、従来例に係る多層基板用コネクタを示す概略断面図である。
この図に示すように、平板状ケーブル3を多層基板2の中間層に接続するためのコネクタは、多層基板2の板厚面に形成された挿入口2a内に配置される基板側接続部801と、平板状ケーブル3の先端部に設けられるケーブル側接続部901とを備えており、挿入口2aに対するケーブル側接続部901の挿入に応じて、基板側接続部801に設けられる板ばね状端子851をケーブル側接続部901の端子部分に弾性的に接触させたり、或いは、特許文献1のように、ケーブル側接続部に設けられる板ばね状端子を基板側接続部の端子に弾性的に接触させることにより、平板状ケーブル3を多層基板2の中間層に電気的に接続させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−335548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図15や特許文献1に示すような従来の多層基板用コネクタでは、板ばね状端子851の反力を挿入口2aの上側積層基板(第1積層基板2b)や下側積層基板(第3積層基板2d)で受ける構造となっているので、板ばね状端子851のコンタクトギャップ(ばねの変位量)が、多層基板2の寸法精度や強度のバラツキに影響を受けたり、又は/或いは板ばね状端子851の弾性力に抗い多層基板2が変形したりするため、接触の安定性が得られない可能性があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記の問題点に鑑みなされたものであって、平板状ケーブルを多層基板の中間層に接続するものでありながら、多層基板の寸法精度や強度のバラツキによる影響を小さくしたり、又は/或いは多層基板2の変形を防止し、接触の安定性を向上させることができる多層基板用コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、多層基板の板厚面に形成された挿入口内に配置される基板側接続部と、平板状ケーブルの先端部に設けられ、前記挿入口に対する挿入により前記多層基板の中間層で前記基板側接続部と電気的に接続されるケーブル側接続部と、を備える多層基板用コネクタであって、前記基板側接続部または前記ケーブル側接続部の一方が柱状端子、他方が平板状端子を備え、前記柱状端子は、前記多層基板の中間層または前記平板状ケーブルの先端部から、前記多層基板または前記平板状ケーブルの厚さ方向に突出形成され、前記平板状端子は、前記挿入口に対する前記ケーブル側接続部の挿入に応じて、前記柱状端子の両方の側面部に前記挿入口の幅方向両側から弾性的に接触する弾性接触部を備える第1平板状端子と、前記柱状端子の一方の側面部に前記挿入口の幅方向から弾性的に接触する弾性接触部と他方の側面部を非弾性的に接触する非弾性接触部を備える第2平板状端子であることを特徴とする。
【0010】
また、前記ケーブル接続部は、前記平板状端子が幅方向に複数配置され、前記第2の平板状端子がその両端に配置され、両端に配置された第2の平板状端子のそれぞれは、幅方向の内側に弾性接触部を、外側に非弾性接触部を備えるよう配置され、前記基板側接続部は、前記柱状端子および挿入ガイドを備え、該挿入ガイドにより前記挿入口に対する前記ケーブル側接続部の挿入をガイドすることを特徴とする。
【0011】
また、前記第1の平板状端子は、柱状端子に一側方から弾性的に接触する弾性接触部と、同じ柱状端子の他の側方から弾性的に接触する弾性接触部を有し、一側方の弾性接触部の反力が、同じ柱状端子の他側方の反力で相殺されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、平板状ケーブルを多層基板の中間層に接続するものでありながら、多層基板の寸法精度や強度のバラツキによる影響を小さくしたり、又は/或いは多層基板の変形を防止し、接触の安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係る多層基板用コネクタが適用された多層基板および平板状ケーブルを示す斜視図であり、(a)は非接続状態を示す斜視図、(b)は一部を省略して基板側接続部およびケーブル側接続部を露出させた斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る多層基板用コネクタが適用された多層基板を示す図であり、(a)は多層基板の上面図、(b)は多層基板の正面図、(c)は多層基板の下面図、(d)は多層基板の側面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る多層基板用コネクタが適用された多層基板を示す図であり、(a)は多層基板のA−A断面図、(b)は柱状端子の拡大正面図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る多層基板用コネクタが適用された平板状ケーブルを示す図であり、(a)は平板状ケーブルの上面図、(b)は平板状ケーブルの側面図、(c)は平板状ケーブルの下面図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る多層基板用コネクタのケーブル側接続部を示す図であり、(a)はケーブル側接続部の拡大上面図、(b)はケーブル側接続部の拡大下面図である。
図6】本発明の第1実施形態に係る多層基板用コネクタが適用された多層基板および平板状ケーブルを示す斜視図であり、(a)は接続状態を示す斜視図、(b)は接続状態を示す断面図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る多層基板用コネクタの基板側接続部およびケーブル側接続部を示す斜視図である。
図8】本発明の第3実施形態に係る多層基板用コネクタが適用された多層基板および平板状ケーブルの接続状態を示す斜視図である。
図9】本発明の第3実施形態に係る多層基板用コネクタが適用された多層基板を示す図であり、(a)は多層基板の平面図、(b)は多層基板の正面図、(c)は多層基板の下面図、(d)は多層基板の側面図である。
図10】本発明の第3実施形態に係る多層基板用コネクタが適用された多層基板のB−B断面図である。
図11】本発明の第4実施形態に係る多層基板用コネクタが適用された多層基板および平板状ケーブルの接続状態を示す斜視図である。
図12】本発明の第4実施形態に係る多層基板用コネクタが適用された多層基板および平板状ケーブルの接続状態を示す図であり、(a)は多層基板および平板状ケーブルの上面図、(b)は多層基板および平板状ケーブルの正面図、(c)は多層基板および平板状ケーブルの下面図、(d)は多層基板および平板状ケーブルの側面図である。
図13】本発明の第5実施形態に係る多層基板用コネクタが適用された多層基板および平板状ケーブルの接続状態を示す斜視図である。
図14】本発明の第5実施形態に係る多層基板用コネクタが適用された多層基板および平板状ケーブルの接続状態を示す図であり、(a)は多層基板および平板状ケーブルの上面図、(b)は多層基板および平板状ケーブルの正面図、(c)は多層基板および平板状ケーブルの下面図、(d)は多層基板および平板状ケーブルの側面図である。
図15】従来例に係る多層基板用コネクタを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通じて同じ要素には同じ符号を付して説明する。また、多層基板(基板側接続部)においては、平板状ケーブル(ケーブル側接続部)の挿入口が形成される板厚面を正面とし、挿入口に対する平板状ケーブルの挿抜方向を前後方向、多層基板の板厚方向を上下方向、挿入口の幅方向を左右方向として説明する。
【0019】
また、平板状ケーブル(ケーブル側接続部)においては、挿入口に対する平板状ケーブルの挿抜方向を前後方向、平板状ケーブルの厚さ方向を上下方向、平板状ケーブルの幅方向を左右方向として説明する。
【0020】
図1は、本発明の第1実施形態に係る多層基板用コネクタが適用された多層基板および平板状ケーブルを示す斜視図であり、(a)は非接続状態を示す斜視図、(b)は一部を省略して基板側接続部およびケーブル側接続部を露出させた斜視図である。
この図に示すように、本発明の第1実施形態に係る多層基板用コネクタは、多層基板2の板厚面に形成された挿入口2a内に配置される基板側接続部1と、平板状ケーブル3の先端部に設けられ、挿入口2aに対する挿入により多層基板2の中間層で基板側接続部1と電気的に接続されるケーブル側接続部101とを備える。
【0021】
なお、図に示す多層基板2や平板状ケーブル3は、全体を示すものではなく、多層基板用コネクタが設けられる部分をトリミングしたものである。例えば、平板状ケーブル3は、通常、長尺の帯状の部材であるが、図においては、図示の都合上、後方(図1における左下方)の部分が切除された状態で示されている。
【0022】
図2は、本発明の第1実施形態に係る多層基板用コネクタが適用された多層基板を示す図であり、(a)は多層基板の上面図、(b)は多層基板の正面図、(c)は多層基板の下面図、(d)は多層基板の側面図である。
この図に示すように、多層基板2は、積層状に形成されたプリント基板により構成されている。例えば、本実施形態の多層基板2は、3層のプリント基板を有し、以下、上側に積層された基板を第1積層基板2b、中間に積層された基板を第2積層基板2c、下側に積層された基板を第3積層基板2dと称する。
【0023】
図3は、本発明の第1実施形態に係る多層基板用コネクタが適用された多層基板を示す図であり、(a)は多層基板のA−A断面図、(b)は柱状端子の拡大正面図である。
この図に示すように、本実施形態の多層基板2では、第2積層基板2cの一部を矩形状に除去することにより挿入口2aが形成されている。そして、挿入口2a内には、導体パターン51、柱状端子61および挿入ガイド71を備えた基板側接続部1が設けられる。なお、本実施形態の多層基板2と挿入口2aの上下方向の寸法は、0.7〔mm〕と0.4〔mm〕であるが、この寸法に限られることはなく、如何なる寸法であってもよい。
【0024】
導体パターン51は、挿入口2a内の下面または上面に設けられる。例えば、本実施形態では、挿入口2a内の下面である第3積層基板2dの上面に4つの導体パターン51を設けている。各導体パターン51は、前後方向に沿うとともに、左右方向に並列しており、多層基板2の図示されない他の導体パターンに接続される。また、隣接する導体パターン51同士は絶縁空間52を介して分離されている。
【0025】
柱状端子61は、各導体パターン51の表面から上方に向けて突出形成された突起であり、例えば、厚さが数〔μm〕〜数10〔μm〕のばね性を備える銅箔にフォトリソグラフィ技術を利用したエッチング工法によって、導体パターン51と一体的に形成される。また、本実施形態では、柱状端子61の高さは、挿入口2aの高さよりも多少低くなっており、柱状端子61の上面と挿入口2a内の上面(第1積層基板2bの下面)との間には所定の隙間62が確保される。なお、柱状端子61の上面と挿入口2a内の上面とは、当接してもよく、その場合には、挿入口2aの上下面を画成する基板(本実施形態では第1積層基板2bの下面と第3積層基板2dの上面)が変形し挿入口2aの上下方向の寸法が狭くなることを防止することができる。
【0026】
また、柱状端子61の上面や横断面の形状は、左右方向の寸法よりも前後方向の寸法の方が大きい略楕円形であり、かつ、前方(挿入口2aの開口側)が尖った形状であることが望ましい。その理由は、ケーブル側接続部101(柱状端子挿入部154、164)に対する柱状端子61の相対的な挿入がスムーズになるからである。なお、本実施形態では、柱状端子61の上面や横断面の形状を略楕円形としているが、野球のホームベースのような五角形としたり、六角形や円形としてもよく、任意に変更することができる。
【0027】
また、柱状端子61の側面形状は、図3の(b)に示すように凹面となっていることが望ましい。その理由は、柱状端子61の側面部に対するケーブル側接続部101(弾性接触部155、165)の接触位置を規定し、接続を安定させることができるからである。例えば、本実施形態では、柱状端子61の高さ方向の中間部を小径部63とし、この小径部63から基端側および先端側に向けて徐々に径寸法を大きくすることにより、湾曲状にへこんだ凹面を形成している。
【0028】
挿入ガイド71は、挿入口2a内の左右両端部に設けられ、挿入口2aに対するケーブル側接続部101の挿入をガイドする。本実施形態の挿入ガイド71は、挿入口2a内の左右両端部に設けられる導体パターン51の表面から上方に向けて突出形成された突起であり、例えば、フォトリソグラフィ技術を利用したエッチング工法によって、導体パターン51や柱状端子61とともに形成される。また、挿入ガイド71の高さは、挿入口2aの高さよりも多少低くなっており、挿入ガイド71の上面と挿入口2a内の上面(第1積層基板2bの下面)との間には所定の隙間72が確保されるが、互いに当接してもよい。
【0029】
また、挿入ガイド71の上面や横断面の形状は、ケーブル側接続部101の挿入をガイドし得るものであれば任意に変更することが可能であるが、ケーブル側接続部101の挿入をガイドするように挿入口2aの左右両端部に沿に沿い、前後方向に延設される挿入ガイド部73だけでなく、ケーブル側接続部101の挿入限度位置を規定する左右方向に延設されるストッパ部74を備えることが望ましい。なお、本実施形態では、挿入ガイド部73とストッパ部74は一体的に形成されているが、別々に形成されてもよい。
【0030】
つぎに、平板状ケーブル3およびケーブル側接続部101の構成について説明する。
【0031】
図4は、本発明の第1実施形態に係る多層基板用コネクタが適用された平板状ケーブルを示す図であり、(a)は平板状ケーブルの上面図、(b)は平板状ケーブルの側面図、(c)は平板状ケーブルの下面図である。
平板状ケーブル3は、FPC(Flexible Printed Circuit:フレキシブル回路基板)、FFC(Flexible Flat Cable:フレキシブルフラットケーブル)等と称される平板状の可撓性ケーブルであり、平板状のものであればケーブルであっても基板であってもよく、いかなる種類のものであってもよい。
【0032】
本実施形態の平板状ケーブル3は、FPCで構成されており、長尺な帯状の形状を備える絶縁性の薄板部材であるベースフィルム3aと、ベースフィルム3aの一面に並列に配設された複数本(本実施形態では4本)の導体パターン3bと、導体パターン3bを覆うように積層されるカバーフィルム3cとを備える。平板状ケーブル3の一端部では、カバーフィルム3cが除去されており、導体パターン3bが露出した状態となっている。
【0033】
図5は、本発明の第1実施形態に係る多層基板用コネクタのケーブル側接続部を示す図であり、(a)はケーブル側接続部の拡大上面図、(b)はケーブル側接続部の拡大下面図である。
この図に示すように、ケーブル側接続部101は、複数の平板状端子151、161と、これらを所定の間隔を存して一体的に支持する絶縁性の支持板171とからなり、全体としては、挿入口2aに挿入可能な矩形状の平面形状を備える。そして、ケーブル側接続部101は、各平板状端子151、161がそれぞれ導体パターン3bと電気的に接続される状態で平板状ケーブル3の一端部に実装される。
【0034】
平板状端子151、161は、例えば、厚さが数〔μm〕〜数10〔μm〕のばね性を備える銅箔にエッチング加工等を施してパターニングすることによって形成されたものである。図に示される例では、互いに平行に並んで配設された一対の第1平板状端子151と、その外側に平行に並ぶ一対の第2平板状端子161とを備え、隣接する平板状端子151、161同士は絶縁空間152、162を介して分離されている。
【0035】
各平板状端子151、161は、後方に向けて突出するテール部153、163が一体的に形成されており、各平板状端子151、161のテール部153、163がそれぞれ平板状ケーブル3の導体パターン3bにはんだ付や異方性導電シート、接着等によって電気的に接続される。
【0036】
各平板状端子151、161は、前方に開口する柱状端子挿入部154、164を備えるとともに、柱状端子挿入部154、164内には、基板側接続部1との接続時に柱状端子61に弾性的に接触する弾性接触部155、165が形成されている。つまり、弾性接触部155、165の配列は、柱状端子61の配列に合わせて決定され、柱状端子61の配列が変更された場合には、それに適合するように、弾性接触部155、165の配列も変更される。
【0037】
弾性接触部155、165は、例えば、フォトリソグラフィ技術を利用したエッチング工法によって形成される。典型的には、平板状端子151、161においてエッチング工法によって残存したパターンが弾性接触部155、165となり、その周囲の材料が除去された部分で柱状端子挿入部154、164が形成される。
【0038】
第1平板状端子151の平面形状は左右対称であり、柱状端子挿入部154内の左右両側に一対の弾性接触部155を備える。各弾性接触部155は、柱状端子挿入部154の周縁に接続された基部155aと、該基部155aから柱状端子挿入部154内に延出する腕部155bと、腕部155bの先端部に接続された接触部155cとを備えており、腕部155bがばねとして機能することにより、接触部155cの左右方向の弾性的な変位が許容される。
【0039】
第1平板状端子151において、左右に対向する弾性接触部155の間隔は、柱状端子挿入部154の開口側では広く、奥側ほど狭くなるように形成されている。これにより、柱状端子61が左右の接触部155c間にスムーズに導かれる。また、左右に対向する接触部155cの間隔は、柱状端子61の小径部63よりも幅狭になっており、柱状端子61が接触部155c同士の間に相対的に移動すると、左右の接触部155cが柱状端子61の側面部に当接して押広げられる。これにより、左右の接触部155cは、腕部155bのばね力で柱状端子61の側面部に左右両側から弾性的に接触される。
【0040】
第2平板状端子161の平面形状は左右対称ではなく、柱状端子挿入部164内に左右両側に弾性接触部165と非弾性接触部166を備える。弾性接触部165は、柱状端子挿入部164の周縁に接続された基部165aと、該基部165aから柱状端子挿入部164内に延出する腕部165bと、腕部165bの先端部に接続された接触部165cとを備えており、腕部165bがばねとして機能することにより、接触部165cの左右方向の弾性的な変位が許容される。
【0041】
第2平板状端子161において、左右に対向する弾性接触部165と非弾性接触部166との間隔は、柱状端子挿入部164の開口側では広く、奥側ほど狭くなるように形成されている。これにより、柱状端子61が弾性接触部165の接触部165cと非弾性接触部166の接触部166aとの間にスムーズに導かれる。また、左右に対向する接触部165c、166aの間隔は、柱状端子61の小径部63よりも幅狭になっており、柱状端子61が接触部165c、166aの間に相対的に移動すると、接触部165c、166aが柱状端子61の側面部に当接し、一方の接触部165cが押広げられる。これにより、一方の接触部165cは、腕部165bのばね力で柱状端子61の側面部に一側方から弾性的に接触される。
【0042】
第2平板状端子161の非弾性接触部166は、弾性接触部165に比して強度的に優れ、挿入口2aへの挿入に際しては、挿入ガイド71との接触する被ガイド部として機能するようになっている。また、非弾性接触部166の先端角部166bや支持板171の先端角部171aは、傾斜状に面取りされており、挿入口2aへの挿入を容易にしている。
【0043】
つぎに、基板側接続部1とケーブル側接続部101との接続動作について説明する。
【0044】
図6は、本発明の第1実施形態に係る多層基板用コネクタが適用された多層基板および平板状ケーブルを示す斜視図であり、(a)は接続状態を示す斜視図、(b)は接続状態を示す断面図である。
この図に示すように、平板状ケーブル3を多層基板2の中間層に接続する場合は、平板状ケーブル3の先端部に設けられたケーブル側接続部101を、多層基板2の板厚面に形成された挿入口2aに挿入する。ケーブル側接続部101には、表裏があり、支持板171が上を向く状態で挿入口2aに挿入すると、支持板171が挿入口2a内の隙間62、72を通過し、ケーブル側接続部101の挿入が許容されるが、支持板171が下を向く状態で挿入口2aに挿入すると、支持板171が柱状端子61や挿入ガイド71に当接し、ケーブル側接続部101の挿入が規制される。なお、ケーブル側接続部101の支持板171を除いたケーブル側接続部101を使用する場合、柱状端子61や挿入ガイド71の上面が、挿入口2aの下面と当接し隙間62、72を備えない基板側接続部1と接続してもよく、用途に応じて適宜選択すればよい。
【0045】
挿入口2aに対するケーブル側接続部101の挿入は、挿入口2a内の左右両端部に設けられる挿入ガイド71でガイドされる。このとき、挿入ガイド71に接触するのは、弾性接触部155、165に比べて強度的に優れた非弾性接触部166であるから、挿入ガイド71との接触による破損なども防止することができる。
【0046】
また、挿入ガイド71は、エッチング工法によって柱状端子61とともに形成され、柱状端子61との位置精度が極めて高いので、挿入ガイド71のガイドによって、ケーブル側接続部101の平板状端子151、161(弾性接触部155、165)を基板側接続部1の柱状端子61に対して精度良く位置決めすることができる。
【0047】
そして、挿入口2aに対してケーブル側接続部101を挿入すると、ケーブル側接続部101の平板状端子151、161が基板側接続部1の柱状端子61に接触し、平板状ケーブル3が多層基板2の中間層に対して電気的に接続される。このとき、平板状端子151、161の弾性接触部155、165は、柱状端子61の側面部に対して左右方向から弾性的に接触するので、平板状端子151、161の反力を挿入口2aの上側や下側の積層基板2b、2dで受ける必要がなく、その結果、平板状端子151、161のコンタクトギャップが、多層基板2の寸法精度や強度のバラツキに影響を受けることを回避し、又、多層基板2の変形を防止するため、接触の安定性を向上させることができる。
【0048】
詳しくは、挿入口2aに対してケーブル側接続部101を挿入すると、ケーブル側接続部101の第1平板状端子151では、左右の弾性接触部155が柱状端子61の側面部に当接して押広げられる。これにより、左右の弾性接触部155は、腕部155bのばね力で柱状端子61の側面部に左右両側から弾性的に接触する。このような弾性的な接触箇所では反力が発生するが、柱状端子61の側面部に左右両側から弾性的に接触することにより、反力は互いに相殺される。
【0049】
また、挿入口2aに対してケーブル側接続部101を挿入すると、ケーブル側接続部101の第2平板状端子161では、弾性接触部165と非弾性接触部166が柱状端子61の側面部に当接し、一方の弾性接触部165が押広げられる。これにより、弾性接触部165は、腕部165bのばね力で柱状端子61の側面部に一側方から弾性的に接触する。このような弾性的な接触箇所では反力が発生するが、左右一対の第2平板状端子161を左右逆向きに配置することにより、反力は互いに相殺される。つまり、弾性接触部165を柱状端子61に一側方から接触させる第2平板状端子161の反力は、弾性接触部165を他の柱状端子61に他側方から接触させる第2平板状端子161の反力で相殺される。
【0050】
また、平板状端子151、161の弾性接触部155、165が弾性的に接触する柱状端子61の側面部には、小径部63によって凹面が形成されているので、弾性接触部155、165との接触位置を規定することができ、その結果、平板状端子151、161の弾性接触部155、165が柱状端子61から外れることを防止できるだけでなく、柱状端子61と平板状端子151、161との良好な接触状態を維持することができる。
【0051】
また、平板状端子151、161の弾性接触部155、165を柱状端子61の側面部に対して左右方向から弾性的に接触させる場合、柱状端子61の位置誤差を弾性接触部155、165の弾性変位許容公差範囲より小さく抑えることが要求されるが、柱状端子61はエッチング工法によって高精度に形成されるので、この要求を満たすことができる。
【0052】
つぎに、本発明の他の実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1実施形態と同じ動作および同じ効果についても、その説明を省略する。
【0053】
図7は、本発明の第2実施形態に係る多層基板用コネクタの基板側接続部およびケーブル側接続部を示す斜視図である。
この図に示すように、本発明の第2実施形態に係る多層基板用コネクタは、基板側接続部201が平板状端子151、161を備え、ケーブル側接続部301が柱状端子61を備える点が第1実施形態と相違している。この場合、基板側接続部201は、多層基板2と別工程で形成し、多層基板2の挿入口2a内に実装される。このとき、基板側接続部201を多層基板2の挿入口2aに挿入した状態で、各平板状端子151、161のテール部153、163を挿入口2a内の導体パターンに半田付けする必要があるが、これは、テール部153、163に粉状または粒状の半田や熱硬化性の導電性接着剤を塗布し、挿入口2aへの挿入後に熱処理を行うことで実現される。
【0054】
図8は、本発明の第3実施形態に係る多層基板用コネクタが適用された多層基板および平板状ケーブルの接続状態を示す斜視図、図9は、本発明の第3実施形態に係る多層基板用コネクタが適用された多層基板を示す図であり、(a)は多層基板の平面図、(b)は多層基板の正面図、(c)は多層基板の下面図、(d)は多層基板の側面図、図10は、本発明の第3実施形態に係る多層基板用コネクタが適用された多層基板のB−B断面図である。
この図に示すように、本発明の第3実施形態に係る多層基板用コネクタは、基板側接続部401の柱状端子461が導電性を有するピン462で形成される点が前記実施形態と相違している。この場合、ピン462は、挿入口2aの上側および下側の積層基板2b、2dに形成した挿入孔2eに対して貫通状に挿入することにより、多層基板2Bの挿入口2a内に配置することができる。
【0055】
図11は、本発明の第4実施形態に係る多層基板用コネクタが適用された多層基板および平板状ケーブルの接続状態を示す斜視図、図12は、本発明の第4実施形態に係る多層基板用コネクタが適用された多層基板および平板状ケーブルの接続状態を示す図であり、(a)は多層基板および平板状ケーブルの上面図、(b)は多層基板および平板状ケーブルの正面図、(c)は多層基板および平板状ケーブルの下面図、(d)は多層基板および平板状ケーブルの側面図である。
この図に示すように、本発明の第4実施形態に係る多層基板用コネクタは、多層基板2の複数の中間層に設けられる点が前記実施形態と相違している。例えば、図に示す例は、5層構造の多層基板2Cであり、同じ板厚面の2層目と4層目に挿入口2aを設け、各挿入口2a内に基板側接続部を構成している。このようにすると、多層基板2Cの複数の中間層に対してそれぞれ平板状ケーブル3を接続することが可能になる。
【0056】
図13は、本発明の第5実施形態に係る多層基板用コネクタが適用された多層基板および平板状ケーブルの接続状態を示す斜視図、図14は、本発明の第5実施形態に係る多層基板用コネクタが適用された多層基板および平板状ケーブルの接続状態を示す図であり、(a)は多層基板および平板状ケーブルの上面図、(b)は多層基板および平板状ケーブルの正面図、(c)は多層基板および平板状ケーブルの下面図、(d)は多層基板および平板状ケーブルの側面図である。
この図に示すように、本発明の第5実施形態に係る多層基板用コネクタは、第4実施形態と同様に、多層基板2Dの複数の中間層に設けられるが、平板状ケーブル3を異なる方向から多層基板2Dに接続させる点が第4実施形態と相違している。例えば、図に示す例は、5層構造の多層基板2Dであり、隣接する板厚面の2層目と4層目に挿入口2aを設け、各挿入口2a内に基板側接続部を構成している。このようにすると、多層基板2Cの複数の中間層に対してそれぞれ異なる方向から平板状ケーブル3を接続することが可能になる。
【0057】
なお、第5実施形態の多層基板用コネクタは、多層基板2に接続された2本の平板状ケーブル3を一本のピン2fで抜止めする抜止め構造を備えている。この抜止め構造は、多層基板2において、異なる方向から挿入された平板状ケーブル3(ケーブル側接続部101)が平面視で重なり合う位置で上下方向に貫通するように形成される挿入孔2gと、平板状ケーブル3(ケーブル側接続部101)側において、挿入状態で挿入孔2gと連通するように形成される係合孔(図示せず)とを含み、ケーブル挿入状態で挿入孔2gにピン2fを挿入することにより、ピン2fが2本の平板状ケーブル3の係合孔に係合し、両平板状ケーブル3の抜止めを行うものである。
【0058】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0059】
1…基板側接続部、2、2B、2C、2D…多層基板、2a…挿入口、2b…第1積層基板、2c…第2積層基板、2d…第3積層基板、2e…挿入孔、2f…ピン、2g…挿入孔、3…平板状ケーブル、3a…ベースフィルム、3b…導体パターン、3c…カバーフィルム、51…導体パターン、52…絶縁空間、61…柱状端子、62…隙間、63…小径部、71…挿入ガイド、72…隙間、73…挿入ガイド部、74…ストッパ部、101…ケーブル側接続部、151…第1平板状端子、152…絶縁空間、153…テール部、154…柱状端子挿入部、155…弾性接触部、155a…基部、155b…腕部、155c…接触部、161…第2平板状端子、162…絶縁空間、163…テール部、164…柱状端子挿入部、165…弾性接触部、165a…基部、165b…腕部、165c…接触部、166…非弾性接触部、166a…接触部、166b…先端角部、171…支持板、171a…先端角部、201…基板側接続部、301…ケーブル側接続部、401…基板側接続部、461…柱状端子、462…ピン、801…基板側接続部、851…板ばね状端子、901…ケーブル側接続部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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