(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
冷媒を圧縮する圧縮機と、車室内に配設される第1車室内熱交換器と、車室内において該第1車室内熱交換器の空気流れ上流側に配設される第2車室内熱交換器と、車室外に配設される車室外熱交換器と、減圧弁とを含み、上記圧縮機、上記第1及び第2車室内熱交換器、上記減圧弁及び上記車室外熱交換器を冷媒配管により接続してなるとともに、冷媒を、上記車室外熱交換器をバイパスさせて流すためのバイパス配管を有しており、複数の運転モードに切り替えられるヒートポンプ装置と、
上記第1及び第2車室内熱交換器を収容するとともに、該第1及び第2車室内熱交換器に空調用空気を送風する送風機を有し、調和空気を生成して車室に供給するように構成された車室内空調ユニットと、
上記ヒートポンプ装置及び上記車室内空調ユニットを制御する空調制御装置とを備えた車両用空調装置であって、
暖房時における上記車室外熱交換器による吸熱量が低下しているか否かを検出する吸熱量低下検出手段と、
暖房供給度合いを検出する暖房要求度合い検出手段とを備え、
上記空調制御装置は、上記吸熱量低下検出手段により上記車室外熱交換器の吸熱量が第1の所定値以下であることが検出された場合には、上記圧縮機から吐出した冷媒を、上記第1車室内熱交換器及び上記第2車室内熱交換器に流し、これら両車室内熱交換器を放熱器とした後、上記減圧弁により減圧して上記車室外熱交換器をバイパスさせ、上記圧縮機に吸入させる第1ホットガス暖房運転モード含むホットガス暖房運転モードとなるように上記ヒートポンプ装置を作動させ、さらに、上記ホットガス暖房運転モードは、上記圧縮機から吐出した冷媒を、上記第1車室内熱交換器に流した後、上記第2車室内熱交換器をバイパスさせ、上記減圧弁により減圧してから上記車室外熱交換器をバイパスさせた後、上記圧縮機に吸入させる第2ホットガス暖房運転モードを含み、上記暖房要求度合い検出手段により暖房要求度合いが高いことが検出された場合には、上記第1ホットガス暖房運転モードとなるように上記ヒートポンプ装置を作動させ、一方、上記暖房要求度合い検出手段により暖房要求度合いが低いことが検出された場合には、上記第2ホットガス暖房運転モードとなるように上記ヒートポンプ装置を作動させることを特徴とする車両用空調装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ヒートポンプ装置は暖房時に車室外熱交換器を吸熱器として作用させることによって外気から暖房熱源を得るのであるが、例えば、外気温が−20℃くらいまで低下している状況では車室外熱交換器による吸熱が難しく、暖房能力が大きく低下してしまう。
【0008】
このことに対し、例えばPTCヒータ等の電気式加熱器を用いて熱源を確保することが考えられるが、電気自動車の場合、電気式加熱器を使用することで走行用バッテリの消費量が増大して航続可能距離が短くなってしまう。また、電気自動車以外においても電力の消費はできるだけ抑制したいという要求がある。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、冷房から暖房まで空調の快適性を維持しながら、空調に要するエネルギ消費をトータルとして抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明によれば、車室外熱交換器の吸熱量が低下している場合に、冷媒を、車室外熱交換器をバイパスして流すホットガス暖房運転モードとし、このホットガス暖房運転モードでは、冷媒を第1車室内熱交換器及び第2車室内熱交換器の両方に流すモードにした。
【0011】
本発明は、冷媒を圧縮する圧縮機と、車室内に配設される第1車室内熱交換器と、車室内において該第1車室内熱交換器の空気流れ上流側に配設される第2車室内熱交換器と、車室外に配設される車室外熱交換器と、減圧弁とを含み、上記圧縮機、上記第1及び第2車室内熱交換器、上記減圧弁及び上記車室外熱交換器を冷媒配管により接続してなるとともに、冷媒を、上記車室外熱交換器をバイパスさせて流すためのバイパス配管を有しており、複数の運転モードに切り替えられるヒートポンプ装置と、
上記第1及び第2車室内熱交換器を収容するとともに、該第1及び第2車室内熱交換器に空調用空気を送風する送風機を有し、調和空気を生成して車室に供給するように構成された車室内空調ユニットと、
上記ヒートポンプ装置及び上記車室内空調ユニットを制御する空調制御装置とを備えた車両用空調装置であって、
暖房時における上記車室外熱交換器による吸熱量が低下しているか否かを検出する吸熱量低下検出手段を備え、
上記空調制御装置は、上記吸熱量低下検出手段により上記車室外熱交換器の吸熱量が第1の所定値以下であることが検出された場合には、上記圧縮機から吐出した冷媒を、上記第1車室内熱交換器及び上記第2車室内熱交換器に流し、これら両車室内熱交換器を放熱器とした後、上記減圧弁により減圧して上記車室外熱交換器をバイパスさせ、上記圧縮機に吸入させる第1ホットガス暖房運転モードを含むホットガス暖房運転モードとなるように上記ヒートポンプ装置を作動させることを特徴とするものである。
【0012】
この構成によれば、例えば外気温が−20℃以下のように、車室外熱交換器の吸熱量が低下している場合に、冷媒を、車室外熱交換器をバイパスさせて流すホットガス暖房運転モードとすることで、電気式加熱器を用いることなく、暖房能力を得ることが可能になる。そして、第1ホットガス暖房運転モードでは、圧縮機から吐出した高温の冷媒を、第1車室内熱交換器及び第2車室内熱交換器の両方に流すので車室内の暖房能力が高まる。
【0013】
また、上記空調制御装置は、上記圧縮機から吐出した冷媒を、上記第1車室内熱交換器に流した後、上記第2車室内熱交換器をバイパスさせ、上記減圧弁により減圧してから上記車室外熱交換器をバイパスさせた後、上記圧縮機に吸入させる第2ホットガス暖房運転モードを含むホットガス暖房運転モードとなるように上記ヒートポンプ装置を作動させることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、高い暖房能力を得たい場合には第1ホットガス暖房運転モードで運転し、低い暖房能力でよい場合には第2ホットガス暖房運転モードで運転すればよいので、状況に応じた能力で車室内を暖房することが可能になる。
【0015】
また、暖房供給度合いを検出する暖房要求度合い検出手段を備え、
上記空調制御装置は、上記暖房要求度合い検出手段により暖房要求度合いが高いことが検出された場合には、第1ホットガス暖房運転モードとなるように上記ヒートポンプ装置を作動させ、一方、上記暖房要求度合い検出手段により暖房要求度合いが低いことが検出された場合には、第2ホットガス暖房運転モードとなるように上記ヒートポンプ装置を作動させることを特徴とするものである。
【0016】
この構成によれば、暖房要求度合いに応じて適切なホットガス暖房運転モードを選択することが可能になる。
【0017】
また、上記圧縮機に吸入される冷媒の乾き度を検出する乾き度検出手段を備え、
上記空調制御装置は、上記乾き度検出手段により検出された吸入冷媒の乾き度に基づいて、第1ホットガス暖房運転モードと第2ホットガス暖房運転モードとの切替を行うことを特徴とするものである。
【0018】
この構成によれば、吸入冷媒の乾き度に応じて第1ホットガス暖房運転モードと第2ホットガス暖房運転モードとを切り替えることで、圧縮機の湿り運転を防止することが可能になるので、ヒートポンプ装置の信頼性が向上する。
【0019】
また、上記ヒートポンプ装置は、上記減圧弁と上記圧縮機との間に配設される冷媒加熱器を備え、
上記空調制御装置は、上記吸熱量低下検出手段により上記車室外熱交換器の吸熱量が上記第1の所定値よりも低い第2の所定値以下であることが検出された場合には、上記冷媒加熱器を作動させてホットガス暖房運転モードで上記ヒートポンプ装置を作動させることを特徴とするものである。
【0020】
この構成によれば、外気温が更に低く、外気からの吸熱が全く不可能な場合に、冷媒加熱器を作動させることで、暖房能力を確保することが可能になる
。
【0021】
また、上記冷媒加熱器は、車両に搭載されたバッテリからの電力供給によって発熱する電気式加熱器であることを特徴とするものである。
【0022】
この構成によれば、本発明に係る車両用空調装置を例えば電気自動車に搭載して作動させることが可能になる。
【0023】
また、上記バッテリの残量を検出するバッテリ残量検出手段を備え、
上記空調制御装置は、上記バッテリ残量検出手段により検出されたバッテリの残量が所定値以下である場合には、上記冷媒加熱器の作動を禁止することを特徴とするものである。
【0024】
この構成によれば、バッテリ残量が少ない場合に暖房のために使用される電力を抑制することが可能になる。
【0025】
また、上記バッテリが充電中であるか否かを検出する充電検出手段を備え、
上記空調制御装置は、上記充電検出手段によりバッテリが充電中であると検出された場合には、上記冷媒加熱器を作動させることを特徴とするものである。
【0026】
この構成によれば、バッテリの充電中、即ち、走行前に車室内の暖房の準備をすることが可能になる。このとき冷媒加熱器を用いて冷媒に吸熱させることで、車室外熱交換器に霜が付着することはなく、その後の走行時の暖房能力を確保することが可能になる。また、充電中であるため、車両の航続距離に影響を与えない。
【0027】
また、上記車室内空調ユニットは、電気式の空気加熱器を備え、
上記空調制御装置は、車室内の空調状態が上記暖房要求度合い検出手段により検出された暖房要求度合いに達するか否かを判定し、暖房要求度合いに達しないと判定される場合には、上記空気加熱器を作動させることを特徴とするものである。
【0028】
この構成によれば、例えばホットガス暖房運転を行っても要求されている暖房を実現できない場合には、電気式の空気加熱器を作動させることで、暖房能力を補うことが可能になる
。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、車室外熱交換器の吸熱量が低下している場合に、圧縮機から吐出した冷媒を、第1車室内熱交換器及び第2車室内熱交換器に流した後、車室外熱交換器をバイパスさせるとともに減圧してから圧縮機に吸入させる第1ホットガス暖房運転モードとすることで、冷房から暖房まで空調の快適性を維持しながら、空調に要するエネルギ消費をトータルとして抑制できる。
【0030】
また、高い暖房能力を得たい場合には第1ホットガス暖房運転モードで運転し、低い暖房能力でよい場合には第2ホットガス暖房運転モードで運転すればよいので、状況に応じた能力で車室内を暖房することができる。
【0031】
また、暖房要求度合いが高い場合に第1ホットガス暖房運転モードとし、暖房要求度合いが低い場合に第2ホットガス暖房運転モードとすることで、車室内の快適性を向上させることができる。
【0032】
また、圧縮機に吸入される冷媒の乾き度に基づいて、第1ホットガス暖房運転モードと第2ホットガス暖房運転モードとを切り替えるようにしたので、圧縮機の湿り運転を防止してヒートポンプ装置の信頼性を向上させることができる。
【0033】
また、車室外熱交換器の吸熱量が更に低い場合に、冷媒加熱器を作動させてホットガス暖房運転モードとすることで、暖房能力を確保することができる
。
【0034】
また、冷媒加熱器を電気式加熱器としたので、本発明に係る車両用空調装置を例えば電気自動車に搭載することができる。
【0035】
また、車両のバッテリ残量が少ない場合に冷媒加熱器の作動を禁止するようにしたので、本発明に係る車両用空調装置を電気自動車に搭載する場合に航続距離を伸ばすことができる。
【0036】
また、バッテリが充電中である場合に冷媒加熱器を作動させるようにしたので、走行前及び走行後で暖房能力を得ることができ、乗員の快適性を向上させることができる。また、電気自動車に搭載する場合に航続距離に影響を与えないようにすることができる。
【0037】
また、ホットガス暖房運転を行っても暖房要求度合いに達しないと判定される場合に空気加熱器を作動させるようにしたので、乗員の快適性を向上できる。
【0038】
第12の発明によれば、暖房開始時に第2ホットガス暖房運転モードとすることで速暖性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0041】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用空調装置1の概略構成図である。車両用空調装置1が搭載された車両は、走行用バッテリB(
図2に示す)及び走行用モーター(図示せず)を備えた電気自動車である。
【0042】
車両用空調装置1は、ヒートポンプ装置20と、車室内空調ユニット21と、ヒートポンプ装置20及び車室内空調ユニット21を制御する空調制御装置22(
図2に示す)とを備えている。
【0043】
ヒートポンプ装置20は、冷媒を圧縮する電動コンプレッサ30と、車室内に配設される下流側車室内熱交換器(第1車室内熱交換器)31と、車室内において下流側車室内熱交換器31の空気流れ方向上流側に配設される上流側車室内熱交換器(第2車室内熱交換器)32と、車室外に配設される車室外熱交換器33と、アキュムレータ34と、これら機器30〜34を接続する第1〜第4主冷媒配管40〜43と、第1〜第3分岐冷媒配管44〜46と、バイパス配管BPとを備えている。さらに、ヒートポンプ装置20は、冷媒加熱器35も備えている。
【0044】
電動コンプレッサ30は、従来から周知の車載用のものであり、電動モーターによって駆動される。電動コンプレッサ30の回転数を変更することによって単位時間当たりの吐出量を変化させることができる。電動コンプレッサ30は、空調制御装置22に接続されてON及びOFFの切り替えと、回転数が制御されるようになっている。電動コンプレッサ30には、走行用バッテリBから電力が供給される。
【0045】
上流側車室内熱交換器32は、
図3に示すように、上側ヘッダタンク47と、下側ヘッダタンク48と、コア49とを備えている。コア49は、上下方向に延びるチューブ49aとフィン49bとを交互に左右方向(
図3の左右方向)に配列して一体化したものであり、空調用空気がチューブ49a間を通過するようになっている。空調用空気の流れ方向を白抜きの矢印で示している。チューブ49aは、外部空気の流れ方向に2列並んでいる。
【0046】
空気流れ上流側のチューブ49a及び下流側のチューブ49aの上端部は、上側ヘッダタンク47に接続されて連通している。上側ヘッダタンク47の内部には、該上側ヘッダタンク47を空気流れ方向上流側と下流側とに仕切る第1仕切部47aが設けられている。第1仕切部47aよりも空気流れ方向上流側の空間が上流側のチューブ49aの上端に連通し、第1仕切部47aよりも空気流れ方向下流側の空間が下流側のチューブ49aの上端に連通している。
【0047】
また、上側ヘッダタンク47の内部には、該上側ヘッダタンク47を左右方向に仕切る第2仕切部47bが設けられている。第1仕切部47aにおける第2仕切部47bよりも右側には、連通孔47eが形成されている。
【0048】
上側ヘッダタンク47の左側面の空気流れ下流側には冷媒の流入口47cが形成され、また、上流側には冷媒の流出口47dが形成されている。
【0049】
下側ヘッダタンク48の内部には、上側ヘッダタンク47の第1仕切部47aと同様に、空気流れ方向上流側と下流側とに仕切る仕切部48aが設けられている。仕切部48aよりも空気流れ方向上流側の空間が上流側のチューブ49aの下端に連通し、仕切部48aよりも空気流れ方向下流側の空間が下流側のチューブ49aの下端に連通している。
【0050】
この下流側車室内熱交換器31は、上記のように構成したことで合計4つのパスを有している。すなわち、流入口47cから流入した冷媒は、まず、上側ヘッダタンク47の第1仕切部47aよりも空気流れ方向下流側で、かつ、第2仕切部47bよりも左側の空間R1に流入し、空間R1に連通するチューブ49a内を下へ向かって流れる。
【0051】
その後、下側ヘッダタンク48の仕切部48aよりも空気流れ方向下流側の空間S1に流入して右側へ流れてチューブ49a内を上へ向かって流れた後、上側ヘッダタンク47の第1仕切部47aよりも空気流れ方向下流側で、かつ、第2仕切部47bよりも右側の空間R2に流入する。
【0052】
次いで、空間R2内の冷媒は第1仕切部47aの連通孔47eを通り、上側ヘッダタンク47の第1仕切部47aよりも空気流れ方向上流側で、かつ、第2仕切部47bよりも右側の空間R3に流入し、空間R3に連通するチューブ49a内を下へ向かって流れる。
【0053】
しかる後、下側ヘッダタンク48の仕切部48aよりも空気流れ方向上流側の空間S2に流入して左側へ流れてチューブ49a内を上へ向かって流れた後、上側ヘッダタンク47の第1仕切部47aよりも空気流れ方向上流側で、かつ、第2仕切部47bよりも左側の空間R4に流入し、流出口47dから外部へ流出する。
【0054】
上流側車室内熱交換器32の空気流れ方向上流側のパスによって風上側パスP1が構成され、また、空気流れ方向下流側のパスによって風下側パスP2が構成される。
【0055】
下流側車室内熱交換器31は、大きさが上記上流側車室内熱交換器32よりも小さいだけであり、上流側車室内熱交換器32と同様な構造を有しているので詳細な説明は省略する。尚、下流側車室内熱交換器31と上流側車室内熱交換器32との構造は異なっていてもよい。
【0056】
車室外熱交換器33は、車両の前部に設けられたモータルーム(エンジン駆動車両におけるエンジンルームに相当)において該モータルームの前端近傍に配設され、走行風が当たるようになっている。図示しないが、車室外熱交換器33も、上側ヘッダタンクと、下側ヘッダタンクと、コアとを備えている。コアは、上下方向に延びるチューブを有している。
【0057】
図1に示すように、車両にはクーリングファン37が設けられている。このクーリングファン37は、ファンモーター38によって駆動され、車室外熱交換器33に空気を送風するように構成されている。ファンモーター38は、空調制御装置22に接続されてON及びOFFの切り替えと、回転数が制御されるようになっている。ファンモーター38にも走行用バッテリBから電力が供給される。尚、クーリングファン37は、例えば走行用インバータ等を冷却するためのラジエータに空気を送風することもできるものであり、空調の要求時以外にも作動させることが可能である。
【0058】
アキュムレータ34は、第4主冷媒配管43の中途部において電動コンプレッサ30の吸入口近傍に配設されている。
【0059】
一方、第1主冷媒配管40は、電動コンプレッサ30の吐出口と下流側車室内熱交換器31の冷媒流入口とを接続するものである。また、第2主冷媒配管41は、下流側車室内熱交換器31の冷媒流出口と車室外熱交換器33の冷媒流入口とを接続するものである。第3主冷媒配管42は、車室外熱交換器33の冷媒流出口と上流側車室内熱交換器32の冷媒流入口とを接続するものである。第4主冷媒配管43は、上流側車室内熱交換器32の冷媒流出口と電動コンプレッサ30の吸入口とを接続するものである。
【0060】
また、第1分岐冷媒配管44は、第2主冷媒配管41から分岐しており、第3主冷媒配管42に接続されている。第2分岐冷媒配管45は、第2主冷媒配管41から分岐しており、第4主冷媒配管43に接続されている。第3分岐冷媒配管46は、第3主冷媒配管42から分岐しており、第4主冷媒配管43に接続されている。
【0061】
バイパス配管BPは、第2主冷媒配管41を流れる冷媒を、車室外熱交換器33をバイパスさせて第3主冷媒配管42に流すための配管である。バイパス配管BPは、第2主冷媒配管41の車室外熱交換器33よりも上流側と、第3主冷媒配管42の車室外熱交換器33よりも下流側とに接続されている。
【0062】
また、ヒートポンプ装置20は、第1流路切替弁50、第2流路切替弁51、第1減圧弁52、第2減圧弁53、第1逆止弁54、第2逆止弁55及びバイパス切替弁56を備えている。
【0063】
第1流路切替弁50、第2流路切替弁51及びバイパス切替弁56は電動タイプの三方弁で構成されており、空調制御装置22によって制御される。第1流路切替弁50は、第2主冷媒配管41の中途部に設けられており、第1分岐冷媒配管44が接続されている。第2流路切替弁51は、第4主冷媒配管43の中途部に設けられており、第3分岐冷媒配管46が接続されている。バイパス切替弁56は、第2主冷媒配管41の中途部において第1流路切替弁50よりも冷媒流れ方向下流側に設けられており、バイパス配管BPの上流側が接続されている。バイパス切替弁56は、空調制御装置22による切替操作により、第2主冷媒配管41の冷媒を車室外熱交換器33にのみ流すこと、第2主冷媒配管41の冷媒をバイパス配管BPにのみ流すこと、第2主冷媒配管41の冷媒を車室外熱交換器33及びバイパス配管BPの両方に流すことができるようになっている。車室外熱交換器33及びバイパス配管BPの冷媒流量割合は、任意に変更することができる。
【0064】
第1減圧弁52及び第2減圧弁53は、空調制御装置22によって制御される電動タイプのものであり、減圧作用を発揮する閉方向と、減圧作用を発揮させない開方向に制御される。第1減圧弁52及び第2減圧弁53の開度は、通常、空調負荷の状態に応じて設定されるが、空調負荷に関わらず、任意の開度に設定することもできるようになっている。
【0065】
第1減圧弁52は、第3主冷媒配管42の第1分岐冷媒配管44との接続部位よりも上流側車室内熱交換器32側、即ち、上流側車室内熱交換器32の冷媒入口側の冷媒配管に配設されている。一方、第2減圧弁53は、第2主冷媒配管41の第1流路切替弁50とバイパス切替弁56との間に配設されている。つまり、第2減圧弁53は、第2主冷媒配管41において、バイパス配管BPの接続部と下流側車室内熱交換器31との間に配設されている。
【0066】
第1逆止弁54は、第3主冷媒配管42に配設されており、第3主冷媒配管42の車室外熱交換器33側から上流側車室内熱交換器32側へ向けての冷媒の流れを許容し、逆方向への冷媒の流れを阻止するように構成されている。
【0067】
第2逆止弁55は、第2分岐冷媒配管45に配設されており、第2分岐冷媒配管45の第4主冷媒配管43側から第2主冷媒配管41側へ向けての冷媒の流れを許容し、逆方向への冷媒の流れを阻止するように構成されている。
【0068】
冷媒加熱器35は、第2主冷媒配管41において第2減圧弁53とバイパス切替弁56との間、即ち、第2減圧弁53と電動コンプレッサ30との間に配設されている。冷媒加熱器35は、第2主冷媒配管41を流通する冷媒を加熱する電気式加熱器で構成されており、空調制御装置22によりON、OFFの切替と加熱量の調整とが行われるようになっている。また、冷媒加熱器35には、走行用バッテリBから電力が供給されるようになっている。
【0069】
また、車室内空調ユニット21は、下流側車室内熱交換器31及び上流側車室内熱交換器32を収容するケーシング60と、エアミックスドア(温度調節ドア)62と、エアミックスドア62を駆動するエアミックスドアアクチュエータ63と、吹出モード切替ドア64と、送風機65と、PTCヒータ(電気式の空気加熱器)67とを備えている。
【0070】
送風機65は、車室内の空気(内気)と車室外の空気(外気)との一方を選択してケーシング60内に空調用空気として送風するためのものである。送風機65は、シロッコファン65aと、シロッコファン65aを回転駆動する送風モーター65bとを備えている。送風モーター65bは、空調制御装置22に接続されてON及びOFFの切り替えと、回転数が制御されるようになっている。送風モーター65bにも走行用バッテリBから電力が供給される。
【0071】
送風機65には、内気を導入するための内気導入口65cと、外気を導入するための外気導入口65dとが形成されている。送風機65の内部には、内気導入口65cと外気導入口65dとの一方を開いて他方を閉じる内外気切替ドア65eが設けられている。さらに、送風機65には、内外気切替ドア65eを駆動する内外気切替ドアアクチュエータ61が設けられている。この内外気切替ドアアクチュエータ61は、空調制御装置22により制御される。送風機65の空気導入モードは、内気導入口65cを全開にして外気導入口65dを全閉にする内気導入モードと、内気導入口65cを全閉にして外気導入口65dを全開にする外気導入モードとに切り替えられるようになっている。内気導入モードと外気導入モードとの切り替えは、乗員によるスイッチ操作で行うことができるようになっているが、所定の条件下では、空調制御装置22が自動的に切り替えることができるようになっている。
【0072】
ケーシング60は、車室内においてインストルメントパネル(図示せず)の内部に配設されている。ケーシング60には、デフロスタ吹出口60a、ベント吹出口60b及びヒート吹出口60cが形成されている。デフロスタ吹出口60aは、車室のフロントウインド内面に空調風を供給するためのものである。ベント吹出口60bは、車室の乗員の主に上半身に空調風を供給するためのものである。ヒート吹出口60cは、車室の乗員の足下に空調風を供給するためのものである。
【0073】
これら吹出口60a〜60cはそれぞれ吹出モード切替ドア64によって開閉される。吹出モード切替ドア64は、図示しないが、空調制御装置22に接続されたアクチュエータによって動作するようになっている。
【0074】
吹出モードとしては、例えば、デフロスタ吹出口60aに空調風を流すデフロスタ吹出モード、ベント吹出口60bに空調風を流すベント吹出モード、ヒート吹出口60cに空調風を流すヒート吹出モード、デフロスタ吹出口60a及びヒート吹出口60cに空調風を流すデフ/ヒートモード、ベント吹出口60b及びヒート吹出口60cに空調風を流すバイレベルモード等である。
【0075】
ケーシング60内に導入された空調用空気は、全量が上流側車室内熱交換器32を通過するようになっている。
【0076】
エアミックスドア62は、ケーシング60内において、上流側車室内熱交換器32と下流側車室内熱交換器31との間に収容されている。エアミックスドア62は、上流側車室内熱交換器32を通過した空気のうち、下流側車室内熱交換器31を通過する空気量を変更することによって、上流側車室内熱交換器32を通過した空気と、下流側車室内熱交換器31を通過した空気との混合割合を決定して空調風の温度調節を行うためのものである。
【0077】
PTCヒータ67は、ケーシング60内において下流側車室内熱交換器31の空気流れ方向下流側に配設されており、ケーシング60内を流れる空調用空気を加熱するためのものである。PTCヒータ67は、空調制御装置22により制御され、ON、OFFの切替及び加熱量の変更が可能となっている。PTCヒータ67には走行用バッテリBから電力が供給されるようになっている。
【0078】
車両用空調装置1は、外気温度センサ70と、車室外熱交換器温度センサ71と、車室内熱交換器温度センサ73と、内気温度センサ75と、乾き度検出センサ(乾き度検出手段)80と、バッテリ残量検出センサ81(
図2に示す)と、充電状態検出センサ82(
図2に示す)とを備えている。これらセンサは空調制御装置22に接続されている。
【0079】
外気温度センサ70は、車室外熱交換器33よりも空気流れ方向上流側に配設されており、車室外熱交換器33に流入する前の外部空気の温度(外気温度TG)を検出するためのものである。一方、車室外熱交換器温度センサ71は、車室外熱交換器33の空気流れ方向下流側の面に配設されており、車室外熱交換器33の表面温度を検出するためのものである。
【0080】
車室内熱交換器温度センサ73は、上流側車室内熱交換器32の空気流れ方向下流側に配設されており、上流側車室内熱交換器32の表面温度を検出するためのものである。車室内熱交換器温度センサ73により検出される上流側車室内熱交換器32の空気流れ方向下流側の温度に基づいて、上流側車室内熱交換器32にフロストが発生しているか否かを検出することができる。
【0081】
内気温度センサ75は、車室内の温度(内気温度TR)を検出するためのものであり、車室内の所定箇所に配設されている。内気温度センサ75は、従来から周知のものなので、詳細な説明は省略する。
【0082】
乾き度検出センサ80は、電動コンプレッサ30に吸入される冷媒の乾き度を検出するためのセンサであり、車室外熱交換器33の冷媒出口部近傍における冷媒の圧力及び温度に基づいて乾き度を検出することができるようになっている。
【0083】
バッテリ残量検出センサ81は、本発明のバッテリ残量検出手段に相当するものであり、走行用バッテリBの残量を検出することができる。バッテリ残量検出センサ81は、周知のものである。
【0084】
充電状態検出センサ82は、本発明の充電検出手段に相当するものであり、走行用バッテリBが外部電源から充電されている状態にあるか否かを検出することができる。外部電源とは、車両の発電機以外の電源であり、例えば家庭用コンセントや駐車場の充電設備等である。この充電状態検出センサ82も周知のものである。
【0085】
また、図示しないが、車両用空調装置1には、日射量を検出するセンサ等も設けられている。
【0086】
空調制御装置22は、例えば、乗員による設定温度や外気温、車室内温度、日射量等の複数の情報に基づいてヒートポンプ装置20等を制御するものであり、周知の中央演算装置やROM、RAM等によって構成されている。また、空調の負荷に応じて電動コンプレッサ30やファンモーター38も制御する。
【0087】
空調制御装置22は、通常のオートエアコン制御と同様に後述するメインルーチンにおいて、ヒートポンプ装置20の運転モードの切り替え、送風機65の風量、エアミックスドア62の開度、吹出モードの切り替え、電動コンプレッサ30、送風モーター65bの制御を行い、例えば、ファンモーター38は、基本的には電動コンプレッサ30の作動中には作動するが、電動コンプレッサ30が停止状態であっても、走行用インバーター等の冷却が必要な場合には作動するようになっている。
【0088】
ヒートポンプ装置20の運転モードは、冷房運転モード、通常暖房運転モード、第1ホットガス暖房運転モード、第2ホットガス暖房運転モード、冷媒加熱暖房運転モード、強除霜運転モード、中間除霜運転モード、弱除霜運転モード、第1暖房優先除霜運転モード、第2暖房除霜運転モードがある。
【0089】
図4に示す冷房運転モードは、例えば外気温度が25℃よりも高い場合に選択される運転モードである。冷房運転モードでは、下流側車室内熱交換器31を放熱器とし、上流側車室内熱交換器32を吸熱器とし、車室外熱交換器33を放熱器として作用させる。
【0090】
すなわち、第1流路切替弁50は、下流側車室内熱交換器31から流出した冷媒を上流側車室内熱交換器32の流入口に流入しないように、第2減圧弁53側へ流すように流路を切り替える。また、第2流路切替弁51は、上流側車室内熱交換器32から流出した冷媒をアキュムレータ34に流入させるように流路を切り替える。バイパス切替弁56は、第2主冷媒配管41の冷媒が車室外熱交換器33にのみ流れるように流路を切り替える。第1減圧弁52は膨張状態にし、第2減圧弁53は非膨張状態にする。
【0091】
この状態で電動コンプレッサ30を作動させると、電動コンプレッサ30から吐出された高圧冷媒が第1主冷媒配管40を流れて下流側車室内熱交換器31に流入し、下流側車室内熱交換器31を循環する。下流側車室内熱交換器31を循環した冷媒は、第2主冷媒配管41を通って膨張することなく、車室外熱交換器33に流入する。車室外熱交換器33に流入した冷媒は放熱して第3主冷媒配管42を通って第1減圧弁52を通過することで膨張し、上流側車室内熱交換器32に流入する。上流側車室内熱交換器32に流入した冷媒は、上流側車室内熱交換器32を循環して空調用空気から吸熱する。上流側車室内熱交換器32を循環した冷媒は、第4主冷媒配管43を通ってアキュムレータ34を経て電動コンプレッサ30に吸入される。
【0092】
また、
図5に示す通常暖房運転モードは、例えば外気温度が0℃よりも低い場合(極低外気時)に選択される運転モードである。通常暖房運転モードでは、下流側車室内熱交換器31及び上流側車室内熱交換器32を放熱器とし、車室外熱交換器33を吸熱器として作用させる。
【0093】
すなわち、第1流路切替弁50は、下流側車室内熱交換器31から流出した冷媒を上流側車室内熱交換器32の流入口に流入させるように流路を切り替える。また、第2流路切替弁51は、車室外熱交換器33から流出した冷媒をアキュムレータ34に流入させるように流路を切り替える。バイパス切替弁56は、第2主冷媒配管41の冷媒が車室外熱交換器33にのみ流れるように流路を切り替える。第1減圧弁52は非膨張状態にし、第2減圧弁53は膨張状態にする。
【0094】
この状態で電動コンプレッサ30を作動させると、電動コンプレッサ30から吐出された高圧冷媒が第1主冷媒配管40を流れて下流側車室内熱交換器31に流入し、下流側車室内熱交換器31を循環する。下流側車室内熱交換器31を循環した冷媒は、第2主冷媒配管41から第1分岐冷媒配管44を流れて上流側車室内熱交換器32に流入し、上流側車室内熱交換器32を循環する。つまり、下流側車室内熱交換器31及び上流側車室内熱交換器32に高温状態の冷媒が流入するので、空調用空気は、下流側車室内熱交換器31及び上流側車室内熱交換器32の両方によって加熱されることになり、よって、高い暖房能力が得られる。
【0095】
上流側車室内熱交換器32を循環した冷媒は、第4主冷媒配管43から第2分岐冷媒配管45を通って第2主冷媒配管41に流入する。第2主冷媒配管41に流入した冷媒は、第2減圧弁53を通過することで膨張し、車室外熱交換器33に流入する。車室外熱交換器33に流入した冷媒は、外部空気から吸熱して第3主冷媒配管42、第3分岐冷媒配管46を順に通ってアキュムレータ34を経て電動コンプレッサ30に吸入される。
【0096】
図6に示す第1ホットガス暖房運転モードは、車室外熱交換器33での吸熱が難しい場合に選択される運転モードである。第1ホットガス暖房運転モードでは、下流側車室内熱交換器31及び上流側車室内熱交換器32を放熱器として作用させる。また、冷媒は、車室外熱交換器33をバイパスして流す。
【0097】
すなわち、第1流路切替弁50、第2流路切替弁51、第1減圧弁52、第2減圧弁53は、通常暖房モードと同じ状態にしておく。バイパス切替弁56は、第2主冷媒配管41の冷媒がバイパス配管BPにのみ流れるように流路を切り替える。
【0098】
この状態で電動コンプレッサ30を作動させると、電動コンプレッサ30から吐出された高圧冷媒が第1主冷媒配管40を流れて下流側車室内熱交換器31に流入し、下流側車室内熱交換器31を循環する。下流側車室内熱交換器31を循環した冷媒は、第2主冷媒配管41から第1分岐冷媒配管44を流れて上流側車室内熱交換器32に流入し、上流側車室内熱交換器32を循環する。つまり、下流側車室内熱交換器31及び上流側車室内熱交換器32に電動コンプレッサ30から吐出された冷媒が流入するので、空調用空気は、下流側車室内熱交換器31及び上流側車室内熱交換器32の両方によって加熱されることになる。
【0099】
上流側車室内熱交換器32を循環した冷媒は、第4主冷媒配管43から第2分岐冷媒配管45を通って第2主冷媒配管41に流入する。第2主冷媒配管41に流入した冷媒は、第2減圧弁53を通過することで膨張し、バイパス配管BPを流れ、第3主冷媒配管42、第3分岐冷媒配管46を順に通ってアキュムレータ34を経て電動コンプレッサ30に吸入される。この第1ホットガス暖房運転モードでは、冷媒が車室外熱交換器33をバイパスして流れることになる。
【0100】
図7に示す第2ホットガス暖房運転モードは、車室外熱交換器33での吸熱が難しい場合で、かつ、
図6に示す第1ホットガス暖房運転モードに比べて暖房能力が低くてもよい場合に選択される運転モードである。第2ホットガス暖房運転モードでは、下流側車室内熱交換器31を放熱器として作用させる。また、冷媒は、車室外熱交換器33及び上流側車室内熱交換器32をバイパスして流す。
【0101】
すなわち、第1流路切替弁50は、下流側車室内熱交換器31から流出した冷媒を上流側車室内熱交換器32の流入口に流入しないように、第2減圧弁53側へ流すように流路を切り替える。第2流路切替弁51及び第2減圧弁53は通常暖房運転モードと同じ状態にしておく。バイパス切替弁56は、第2主冷媒配管41の冷媒がバイパス配管BPにのみ流れるように流路を切り替える。
【0102】
この状態で電動コンプレッサ30を作動させると、電動コンプレッサ30から吐出された高圧冷媒が第1主冷媒配管40を流れて下流側車室内熱交換器31に流入し、下流側車室内熱交換器31を循環する。下流側車室内熱交換器31を循環した冷媒は、下流側車室内熱交換器31を循環した冷媒は、第2主冷媒配管41に流入する。第2主冷媒配管41に流入した冷媒は、第2減圧弁53を通過することで膨張し、バイパス配管BPを流れ、第3主冷媒配管42、第3分岐冷媒配管46を順に通ってアキュムレータ34を経て電動コンプレッサ30に吸入される。電動コンプレッサ30から吐出した冷媒が上流側車室内熱交換器32を流れないので、
図6に示す第1ホットガス暖房運転モードに比べて暖房能力が低くなる。
【0103】
図8に示す冷媒加熱暖房運転モードは、車室外熱交換器33での吸熱がより一層困難な場合(外気吸熱がほぼ不可能な場合)に選択される運転モードである。冷媒加熱暖房運転モードでは、下流側車室内熱交換器31及び上流側車室内熱交換器32を放熱器として作用させる。また、冷媒は、車室外熱交換器33をバイパスして流し、冷媒加熱器35をONにする。
【0104】
すなわち、第1流路切替弁50、第2流路切替弁51、第1減圧弁52、第2減圧弁53、バイパス切替弁56は、第1ホットガス暖房運転モードと同じ状態にしておく。
【0105】
この状態で電動コンプレッサ30を作動させると、電動コンプレッサ30から吐出された冷媒が、下流側車室内熱交換器31及び上流側車室内熱交換器32を順に循環した後、第4主冷媒配管43から第2分岐冷媒配管45を通って第2主冷媒配管41に流入する。第2主冷媒配管41に流入した冷媒は、第2減圧弁53を通過することで膨張した後、冷媒加熱器35によって加熱される。その後、バイパス配管BPを流れ、第3主冷媒配管42、第3分岐冷媒配管46を順に通ってアキュムレータ34を経て電動コンプレッサ30に吸入される。
【0106】
図9に示す強除霜運転モードは、暖房中に車室外熱交換器33が着霜した場合に、車室外熱交換器33の霜を溶かすために選択される運転モードである。強除霜運転モードでは、下流側車室内熱交換器31及び車室外熱交換器33を放熱器として作用させる。また、冷媒は、上流側車室内熱交換器32をバイパスして流す。
【0107】
すなわち、第1流路切替弁50は、下流側車室内熱交換器31から流出した冷媒を上流側車室内熱交換器32の流入口に流入しないように、第2減圧弁53側へ流すように流路を切り替える。また、第2流路切替弁51は、車室外熱交換器33から流出した冷媒をアキュムレータ34に流入させるように流路を切り替える。バイパス切替弁56は、第2主冷媒配管41の冷媒が車室外熱交換器33にのみ流れるように流路を切り替える。第2減圧弁53は非膨張状態にする。
【0108】
この状態で電動コンプレッサ30を作動させると、電動コンプレッサ30から吐出された冷媒が、下流側車室内熱交換器31を循環した後、第2主冷媒配管41を通って膨張することなく、車室外熱交換器33に流入する。車室外熱交換器33に流入した冷媒は放熱して霜を溶かす。その後、第3主冷媒配管42、第3分岐冷媒配管46を順に通ってアキュムレータ34を経て電動コンプレッサ30に吸入される。
【0109】
図10に示す中間除霜運転モードは、暖房中に車室外熱交換器33が着霜した場合に、車室外熱交換器33の霜を溶かすために選択される運転モードであり、
図9に示す強除霜運転モードに比べて除霜能力が低く設定される。中間除霜運転モードでは、下流側車室内熱交換器31及び車室外熱交換器33を放熱器として作用させ、一部の冷媒はバイパス配管BPに流す。また、冷媒は、上流側車室内熱交換器32をバイパスさせる。
【0110】
すなわち、第1流路切替弁50、第2流路切替弁51、第1減圧弁52、第2減圧弁53は、強除霜運転モードと同じ状態にしておく。バイパス切替弁56は、第2主冷媒配管41の冷媒が車室外熱交換器33及びバイパス配管BPの両方に流れるように流路を切り替える。
【0111】
この状態で電動コンプレッサ30を作動させると、電動コンプレッサ30から吐出された冷媒が、下流側車室内熱交換器31を循環した後、第2主冷媒配管41を通って膨張することなく、車室外熱交換器33及びバイパス配管BPに流入する。車室外熱交換器33に流入した冷媒は放熱して霜を溶かす一方、バイパス配管BPに流入した冷媒は、殆ど放熱することなく、第3主冷媒配管42に流入する。車室外熱交換器33に流入した冷媒と、バイパス配管BPを流れた冷媒とは、第3主冷媒配管42で集合し、第3分岐冷媒配管46を通ってアキュムレータ34を経て電動コンプレッサ30に吸入される。第2主冷媒配管41の冷媒の一部がバイパス配管BPを流れるので、強除霜運転モードに比べて除霜能力が低くなる。
【0112】
図11に示す弱除霜運転モードは、外気温が比較的高い(0℃よりも高い)ときの暖房中に車室外熱交換器33が着霜した場合に、車室外熱交換器33の霜を溶かすために選択される運転モードであり、
図10に示す中間除霜運転モードに比べて除霜能力が低く設定される。弱除霜運転モードでは、下流側車室内熱交換器31及び上流側車室内熱交換器32を放熱器として作用させる。また、冷媒は、車室外熱交換器33をバイパスさせる。
【0113】
すなわち、第1流路切替弁50、第2流路切替弁51、第1減圧弁52、第2減圧弁53及びバイパス切替弁56は、第1ホットガス暖房運転モードと同じ状態にしておく。
【0114】
この状態で電動コンプレッサ30を作動させると、電動コンプレッサ30から吐出された高圧冷媒が下流側車室内熱交換器31及び上流側車室内熱交換器32を順に循環する。空調用空気は、下流側車室内熱交換器31及び上流側車室内熱交換器32の両方によって加熱されることになるので、強除霜運転モード及び中間除霜運転モードに比べて暖房能力が高まる。
【0115】
上流側車室内熱交換器32を循環した冷媒は、第4主冷媒配管43から第2分岐冷媒配管45を通って第2主冷媒配管41に流入する。第2主冷媒配管41に流入した冷媒は、第2減圧弁53を通過することで膨張し、バイパス配管BPを流れ、第3主冷媒配管42、第3分岐冷媒配管46を順に通ってアキュムレータ34を経て電動コンプレッサ30に吸入される。車室外熱交換器33には冷媒が流れないが、この弱除霜運転モードは、外気温が比較的高めのときに選択されるので、走行風や周囲の空気から吸熱することで霜が溶ける。
【0116】
図12に示す第1暖房優先除霜運転モードは、暖房中に車室外熱交換器33が着霜した場合に、車室外熱交換器33の霜を溶かしながら、所定能力以上の暖房も行えるようにするために選択される運転モードである。第1暖房優先除霜運転モードでは、下流側車室内熱交換器31、上流側車室内熱交換器32及び車室外熱交換器33を放熱器として作用させる。
【0117】
すなわち、第1流路切替弁50、第2流路切替弁51、第1減圧弁52、バイパス切替弁56は、通常暖房運転モードと同じ状態にしておく。第2減圧弁53は、非膨張状態にする。
【0118】
この状態で電動コンプレッサ30を作動させると、電動コンプレッサ30から吐出された高圧冷媒が下流側車室内熱交換器31及び上流側車室内熱交換器32を順に循環する。空調用空気は、下流側車室内熱交換器31及び上流側車室内熱交換器32の両方によって加熱されることになるので暖房能力が高まる。
【0119】
上流側車室内熱交換器32を循環した冷媒は、第4主冷媒配管43から第2分岐冷媒配管45を通って第2主冷媒配管41に流入する。第2主冷媒配管41に流入した冷媒は、膨張することなく車室外熱交換器33に流入するので、車室外熱交換器33の霜が溶ける。
【0120】
図13に示す第2暖房優先除霜運転モードは、暖房中に車室外熱交換器33が着霜した場合に、車室外熱交換器33の霜を溶かしながら、所定能力以上の暖房も行えるようにするために選択される運転モードであり、暖房能力は第1暖房優先除霜運転モードよりも低く設定される。第2暖房優先除霜運転モードでは、下流側車室内熱交換器31、上流側車室内熱交換器32及び車室外熱交換器33を放熱器として作用させる。第2主冷媒配管41を流れる冷媒の一部をバイパス配管BPに流す。
【0121】
すなわち、第1流路切替弁50、第2流路切替弁51、第1減圧弁52、第2減圧弁53は、第1暖房優先除霜運転モードと同じ状態にしておく。バイパス切替弁56は、第2主冷媒配管41の冷媒が車室外熱交換器33及びバイパス配管BPの両方に流れるように流路を切り替える。
【0122】
この状態で電動コンプレッサ30を作動させると、電動コンプレッサ30から吐出された高圧冷媒が下流側車室内熱交換器31及び上流側車室内熱交換器32を順に循環する。空調用空気は、下流側車室内熱交換器31及び上流側車室内熱交換器32の両方によって加熱されることになる。
【0123】
上流側車室内熱交換器32を循環した冷媒は、第4主冷媒配管43から第2分岐冷媒配管45を通って第2主冷媒配管41に流入する。第2主冷媒配管41に流入した冷媒は、膨張することなく車室外熱交換器33及びバイパス配管BPに流入する。車室外熱交換器33に流入した冷媒によって霜が溶ける。全ての冷媒を車室外熱交換器33に流さないので、暖房能力が第1暖房優先除霜運転モードよりも高まる。
【0124】
図2に示すように、空調制御装置22は、車室外熱交換器33に霜が付着しているか否か、及び霜が付着している場合にその着霜量を検出する着霜検出部(着霜検出手段)22aを有している。着霜検出部22aは、外気温度センサ70で検出された外気温度(TG)から、車室外熱交換器温度センサ71で検出された車室外熱交換器33の表面温度を差し引いて、その値が例えば20(℃)よりも大きな値である場合には、着霜を検出したとする。すなわち、車室外熱交換器33に霜が付着していると、車室外熱交換器33において冷媒が吸熱できず、冷媒温度が上昇しないことを利用して着霜検出を行っている。従って、上記の20という値は、車室外熱交換器33が着霜しているか否かを判断できる値であればよく、他の値であってもよい。また、霜の付着を直接検出するようにしてもよい。また、着霜量の検出は、外気温度センサ70で検出された外気温度(TG)と車室外熱交換器温度センサ71で検出された温度との差で検出でき、両者の差が大きいほど、着霜量が多いとする。
【0125】
また、着霜検出部22aは、暖房時における車室外熱交換器33の吸熱量が低下しているか否かを検出する吸熱量低下検出手段となる。上記のように車室外熱交換器33が着霜すると、外気からの吸熱量が低下することになるが、この着霜量と吸熱量の低下とは相関関係があるので、着霜検出部22aによって車室外熱交換器33の吸熱量低下を検出できる。つまり、車室外熱交換器33の吸熱量低下度合いは、車室外熱交換器33の着霜量から検出できる。
【0126】
この実施形態では、着霜検出部22aによって車室外熱交換器33の着霜量が第1の所定値以下であるか否か、及び第1の所定値よりも低い第2の所定値以下であるか否かを検出することができるようになっている。第1の所定値とは、車室外熱交換器33の吸熱が困難で暖房能力が著しく低下してしまうような値に設定しており、また、第2の所定値とは、車室外熱交換器33の吸熱がほとんど不可能な状態で暖房を行うことができないような値に設定している。
【0127】
また、車室外熱交換器33の吸熱量低下度合いは、上記着霜検出部22aで行うこともできるし、後述のフローチャートで示すように外気温度センサ70を用いて検出することもできる。この場合、外気温度センサ70が吸熱量低下検出手段となる。すなわち、外気温が例えば−15℃(第1の所定値)以下である場合には、車室外熱交換器33の吸熱が困難で暖房能力が著しく低下しているものとし、また、例えば−20℃(第2の所定値)以下である場合には、車室外熱交換器33の吸熱がほとんど不可能な状態で暖房を行うことができないとする。
【0128】
また、空調制御装置22は、暖房要求度合い検出部22bを有している。暖房要求度合い検出部22bは、暖房運転を行う場合に、どの程度の強さの暖房が要求されているかを検出するためのものである。暖房要求度合いの検出を行う際には、例えば、車室内空調ユニット21から吹き出す空調風の目標温度と、実際に吹き出している実温度とを比較し、実温度が低ければ低いほど暖房要求度合いが高いとし、実温度と目標温度とが近いほど暖房要求度合いが低いと判断する。ここで、目標温度は、乗員の設定温度や外気温等に基づいて空調制御装置22で演算される温度であり、また、実温度は、例えば空調風の吹出部近傍の温度を温度センサによって測定することで得ることができる。その他にも、乗員の設定温度が高ければ高いほど暖房要求度合いが強いとすることもできる。
【0129】
次に、空調制御装置22による制御手順を説明する。メインルーチンでは、図示しないが、外気温度センサ70で検出された外気温度(TG)が0℃よりも低い場合には、ヒートポンプ装置20を暖房運転モードに切り替える。暖房運転モードでは、車室内空調ユニット21の吹出モードは主にヒートモードが選択される。また、吹出空気の温度が目標温度となるように、エアミックスドア62を動作させる。暖房運転モードは、通常暖房運転モード、第1ホットガス暖房運転モード、第2ホットガス暖房運転モード、冷媒加熱暖房運転モードが含まれる。
【0130】
外気温度(TG)が0℃以上25℃以下である場合には、除湿を行いながら暖房が行えるようにする。また、外気温度(TG)が25℃よりも高い場合には、ヒートポンプ装置20を冷房運転モードに切り替える。
【0131】
メインルーチンで暖房運転モードが選択された場合には、
図14に示す暖房運転サブルーチン制御を行う。暖房運転サブルーチン制御では、冷媒加熱器35はOFFにしておき、まず、ステップSA1において外気温度センサ70で検出された外気温度TGを読み込む。そして、ステップSA2に進み、車室外熱交換器33の吸熱量が低下しているか否かを判定する。この実施形態では、外気温度センサ70を用いて車室外熱交換器33の吸熱量を検出する。外気温が−15℃(第1の所定値)以下である場合には、車室外熱交換器33の吸熱量が低下していて、外気からの吸熱による暖房能力が著しく低下してしまうので、ステップSA3に進んでホットガス暖房運転モード選択処理を行う。
【0132】
尚、車室外熱交換器33の吸熱量が低下しているか否かは、着霜検出部22aを用いて行うことができ、この場合は、ステップSA2において車室外熱交換器33の着霜量に基づいて判断する。
【0133】
ステップSA3では、まず、暖房要求度合い検出部22bによって暖房要求度合いが高いが低いかを判定し、暖房要求度合いが高い場合には、ステップSA4に進んでヒートポンプ装置20の運転モードを第1ホットガス暖房運転モードに切り替える。これにより、外気吸熱によらずに暖房運転が可能となる。
【0134】
その後、ステップSA5に進んで内気温度センサ75で検出された内気温度TRを読み込む。続くステップSA6では、内気温度TRが20℃よりも高いか否かを判定する。内気温度TRが20℃よりも高い場合は、車室内の空調状態として暖房が進んでいるということであり、ステップSA3に戻って再び暖房要求度合いに基づいてホットガス暖房運転モードの選択を行う。
【0135】
ステップSA6で内気温度TRが20℃よりも低い場合には、ステップSA7に進んで外気温度TGが−20℃以下であるか否かを判定する。ステップSA7で外気温度TGが−20℃以下であると判定された場合には、車室外熱交換器33の吸熱がほとんど不可能な状態で外気吸熱による暖房を行うことができない状態である。この場合には、ステップSA8に進んで冷媒加熱器35をONにしてヒートポンプ装置20の運転モードを冷媒加熱暖房運転モードに切り替え、その後、エンドに進む。
【0136】
一方、ステップSA7で外気温度TGが−20℃よりも高いと判定された場合には、外気吸熱が若干可能であるため、冷媒加熱器35はOFFにしたまま、ステップSA3に戻る。
【0137】
ステップSA3におけるホットガス暖房運転モードの選択で暖房要求度合いが低い場合には、ステップSA9に進んでヒートポンプ装置20の運転モードを第2ホットガス暖房運転モードに切り替えた後、エンドに進む。
【0138】
また、ステップSA2でNOと判定されて外気温度TGが−15℃よりも高い場合には、ホットガス暖房運転を行わなくても外気吸熱による暖房が可能である。この場合には、まず、ステップSA10に進んで着霜判定を行う。この着霜判定は、着霜検出部22aで検出された車室外熱交換器33の着霜度合いに基づいて行い、車室外熱交換器33の着霜度合いが高いか低いかを判定する。ステップSA10で車室外熱交換器33の着霜度合いが高いと判定された場合には、ステップSA11に進んでヒートポンプ装置20の運転モードを除霜運転モードに切り替える。この除霜運転モードについては後述する。
【0139】
除霜運転モードで運転を行った後、ステップSA12に進んで除霜判定を行う。除霜判定は、車室外熱交換器33の霜が溶けたか否かを判定するものであり、着霜検出部22aを用いて行うことができる。ステップSA12で車室外熱交換器33の除霜が完了している場合にはエンドに進む。ステップSA12で車室外熱交換器33の除霜が完了していない場合にはステップSA10に戻る。
【0140】
また、ステップSA10で着霜度合いが低いと判定された場合には、通常暖房運転モードとする。
【0141】
以上が暖房運転サブルーチン制御であり、ステップSA11で除霜運転モードに切り替えた場合には、
図15に示すサブルーチン制御が行われる。
図15に示すフローチャートのステップSB1では、外気温度センサ70で検出された外気温度TGが0℃よりも低いか否かを判定する。ステップSB1でNOと判定されて外気温度TGが0℃よりも高い場合には、ステップSB2に進んで暖房要求度合い判定を行う。すなわち、暖房要求度合い検出部22bによって暖房要求度合いが高いが低いかを判定し、暖房要求度合いが高い場合には、ステップSB3に進んでヒートポンプ装置20の運転モードを弱除霜運転モードに切り替える。この弱除霜運転モードでは、車室外熱交換器33に冷媒が流れないが、外気温が0℃よりも高いので、外気からの吸熱によって車室外熱交換器33の霜を溶かすことができる。ステップSB2において暖房要求度合いが低いと判定された場合には、ステップSB4に進み、ヒートポンプ装置20の運転モードを強除霜運転モードに切り替える。強除霜運転モードでは、弱除霜運転モードに比べて暖房能力が低下するが、暖房要求度合いが低い場合なので乗員の快適性が損なわれることはない。
【0142】
その後、ステップSB5に進んで冷媒加熱器35が必要な否かを判定する。この判定は、暖房要求度合い検出部22bで行うことができる。暖房要求度合い検出部22bで暖房要求度合いがより一層高い場合には、ステップSB6に進んで冷媒加熱器35をONにし、エンドに進む。暖房要求度合い検出部22bで暖房要求度合いがそれほど高くない場合には、エンドに進む。尚、ステップSB2は省略してもよく、この場合、ステップSB1で外気温が0℃よりも高いと判定されたときに弱除霜運転モードとする。
【0143】
一方、ステップSB1でYESと判定されて外気温度TGが0℃以下の場合には、ステップSB7に進んでステップSB2と同様な暖房要求度合い判定を行う。ステップSB7において暖房要求度合いが高いと判定された場合には、ステップSB8に進み、暖房要求度合いに基づいて、ヒートポンプ装置20の運転モードを中間除霜運転モード、第1暖房優先除霜運転モード、第2暖房優先除霜運転モードのいずれかに切り替える。暖房要求度合いがより一層高い場合には、第1暖房優先除霜運転モード、第2暖房優先除霜運転モードに切り替える。ステップSB7において暖房要求度合いが低いと判定された場合には、ステップSB9に進んでヒートポンプ装置20の運転モードを強除霜運転モードに切り替える。そして、ステップSB5を経てエンドに進む。
【0144】
また、
図14に示すフローチャートのステップSA11の除霜運転モードにおける弱除霜運転モードと強除霜運転モードとの切り替えに際しては、
図16に示すフローチャートに基づく制御を行うこともできる。このフローチャートのステップSC1では、外気温度センサ70で検出された外気温度TGを読み込む。そして、ステップSC2に進み、着霜判定を行う。着霜判定は、着霜検出部22aを使用して行うことができ、着霜量が所定未満であるか、所定以上であるかを判定する。着霜量が所定未満である場合には、ステップSC3に進んでヒートポンプ装置20の運転モードを弱除霜運転モードとし、所定以上である場合には、ステップSC4に進んでヒートポンプ装置20の運転モードを強除霜運転モードとする。つまり、着霜量が所定未満というのは、弱除霜運転モードでも霜を十分に溶かすことができる程度の着霜量であり、着霜量が所定以上というのは、弱除霜運転モードでは霜を十分に溶かすことができない着霜量である。
【0145】
また、空調制御装置22は、乾き度検出センサ80で検出した冷媒の乾き度に基づいてホットガス暖房運転モードを選択するように構成することもできる。すなわち、電動コンプレッサ30が湿り運転とならないように、強除霜運転モードと弱除霜運転モードとのいずれの運転モードで運転するか選択する。
【0146】
また、空調制御装置22は、バッテリ残量検出センサ81により検出された走行用バッテリBの残量が所定値以下である場合に、冷媒加熱器35の作動を禁止するように構成することもできる。この所定値とは、例えばバッテリ全容量の30%の残量とすることができる。
【0147】
また、空調制御装置22は、暖房が必要な状況で、かつ、充電状態検出センサ82により走行用バッテリBが充電中であると検出された場合に、冷媒加熱器35の作動を許可するように構成することもできる。
【0148】
また、空調制御装置22は、車室の空調状態が暖房要求度合い検出部22bにより検出された暖房要求度合いに達するか否かをステップSA6で判定することができる。そして、車室の空調状態が暖房要求度合いに達しないと判定される場合には、ステップSA8で冷媒加熱器35を作動させることができる。
【0149】
また、空調制御装置22は、例えば外気吸熱が困難な場合における暖房開始時に第1ホットガス暖房運転モードを選択するようにヒートポンプ装置20を作動させることもできる。
【0150】
また、空調制御装置22は、弱除霜運転モード時には、第2減圧弁53を減圧作用を発揮する閉方向に制御し、一方、強除霜運転モード時には、第2減圧弁53を弱除霜運転モード時よりも開方向に制御するようにしてもよい。これにより、強除霜運転モード時に第2減圧弁53を開方向に制御することで冷媒の圧力損失が低減されて高温高圧の冷媒を車室外熱交換器33に流して霜を溶かすことが可能になる。また、弱除霜運転モード時に減圧作用を発揮させることで、ホットガス暖房運転が行えるので、車室外熱交換器33を用いることなく暖房能力が得られる。
【0151】
また、空調制御装置22は、除霜運転時に暖房運転時に比べて送風量が低下するように送風機65の制御を行うこともできる。
【0152】
また、空調制御装置22は、車室の空調状態が暖房要求度合い検出部22bにより検出された暖房要求度合いに達しないと判定される場合には、PTCヒータ67を作動させることもできる。
【0153】
以上説明したように、この実施形態に係る車両用空調装置1によれば、車室外熱交換器33の吸熱量が低下している場合に、電動コンプレッサ30から吐出した冷媒を、下流側車室内熱交換器31及び上流側車室内熱交換器32に流した後、車室外熱交換器33をバイパスさせ、減圧してから電動コンプレッサ30に吸入させる第1ホットガス暖房運転モードと、電動コンプレッサ30から吐出した冷媒を、下流側車室内熱交換器31に流した後、上流側車室内熱交換器32をバイパスさせ、更に車室外熱交換器33をバイパスさせ、減圧してから電動コンプレッサ30に吸入させる第2ホットガス暖房運転モードとに切り替えることができる。これにより、暖房要求時に車室外熱交換器33からの吸熱が難しい場合に、エネルギ消費を抑制しながら、状況に応じた能力で車室内を暖房できる。
【0154】
また、暖房要求度合いが高い場合に第1ホットガス暖房運転モードとし、暖房要求度合いが低い場合に第2ホットガス暖房運転モードとすることで、車室内の快適性を向上させることができる。
【0155】
また、電動コンプレッサ30に吸入される冷媒の乾き度に基づいて、第1ホットガス暖房運転モードと第2ホットガス暖房運転モードとを切り替えるようにした場合には、電動コンプレッサ30の湿り運転を防止してヒートポンプ装置20の信頼性を向上させることができる。
【0156】
また、車室外熱交換器33の吸熱量が更に低い場合に、冷媒加熱器35を作動させてホットガス暖房運転モードとすることで、暖房能力を確保することができる。
【0157】
また、外気温度センサ70を用いて車室外熱交換器33の吸熱量の低下を検出できるので、吸熱量の低下を確実に、かつ、低コストで検出できる。
【0158】
また、車室外熱交換器33の着霜検出部22aを用いて車室外熱交換器33の吸熱量の低下を検出できるので、車室外熱交換器33の状態に応じた制御を行うことができる。
【0159】
また、冷媒加熱器35を電気式加熱器としたので、車両用空調装置1を電気自動車に搭載して快適な空調を行うことができる。
【0160】
また、車両の走行用バッテリBの残量が少ない場合に冷媒加熱器35の作動を禁止するようにしたので、電気自動車に搭載する場合に航続距離を伸ばすことができる。
【0161】
また、走行用バッテリBが充電中である場合に冷媒加熱器35を作動させるようにしたので、走行前及び走行後で暖房能力を得ることができ、乗員の快適性を向上させることができる。また、電気自動車に搭載する場合に航続距離に影響を与えないようにすることができる。
【0162】
また、ホットガス暖房運転を行っても暖房要求度合いに達しないと判定される場合にPTCヒータ67を作動させるようにしたので、乗員の快適性を向上できる。
【0163】
また、暖房開始時に第2ホットガス暖房運転モードとする場合には、暖房の立ち上がりを早めて乗員の快適性を向上できる。
【0164】
尚、上記実施形態では、上記ヒートポンプ装置20のバイパス切替弁56を三方弁で構成しているが、
図17に示す変形例のように、2つの開閉弁77、78を組み合わせて構成してもよく、バイパス配管BPの切替手段は特に限定されない。
【0165】
また、上記実施形態では、上記ヒートポンプ装置20の第1流路切替弁50及び第2流路切替弁51の両方を三方弁で構成しているが、これらのいずれか一方または両方を、2つの開閉弁を組み合わせて構成してもよく、流路の切替手段は特に限定されない。
【0166】
また、上記実施形態では、車両用空調装置1を電気自動車に搭載する場合について説明したが、これに限らず、例えばエンジン及び走行用モーターを備えたハイブリッド自動車等、様々なタイプの自動車に車両用空調装置1を搭載することが可能である。
【0167】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。