特許第6068265号(P6068265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6068265
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】ポリウレタンエラストマー
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/10 20060101AFI20170116BHJP
   C08G 18/65 20060101ALI20170116BHJP
   C08G 18/75 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   C08G18/10
   C08G18/65 005
   C08G18/75 010
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-114365(P2013-114365)
(22)【出願日】2013年5月30日
(65)【公開番号】特開2014-231585(P2014-231585A)
(43)【公開日】2014年12月11日
【審査請求日】2015年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(72)【発明者】
【氏名】山崎 聡
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 辰也
(72)【発明者】
【氏名】森田 裕史
(72)【発明者】
【氏名】景岡 正和
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−221534(JP,A)
【文献】 特開昭62−164713(JP,A)
【文献】 特開昭50−039798(JP,A)
【文献】 特開2011−236329(JP,A)
【文献】 特開2013−023656(JP,A)
【文献】 特開2011−140618(JP,A)
【文献】 特公昭38−013545(JP,B1)
【文献】 特公昭39−017091(JP,B1)
【文献】 特表2011−518898(JP,A)
【文献】 特表2010−540699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00−18/87
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンおよび高分子量ポリオールの反応により得られるイソシアネート基末端プレポリマーと、
活性水素基を含有する鎖伸長剤と
の反応により得られ、
鎖伸長剤中の活性水素基に対する、イソシアネート基末端プレポリマー中のイソシアネート基の当量比(NCO/活性水素基)が、1.10を超過し1.30未満であることを特徴とする、ポリウレタンエラストマー。
【請求項2】
NOを2000ppmの割合で含有する窒素ガスに1時間曝露する前後において、
ハンターLab表色系によるb値の変化量が、2以下であることを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタンエラストマー。
【請求項3】
高分子量ポリオールがフッ素ポリオールを含有し、
フッ素ポリオールの含有割合が、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、高分子量ポリオールおよび鎖伸長剤の総量に対して、0.1質量%以上10質量%以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリウレタンエラストマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンエラストマーに関し、詳しくは、各種産業分野において用いられるポリウレタンエラストマーに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンエラストマーは、機械強度や耐摩耗性に優れ、また、加工しやすいことから、各種産業機器の部材として用いられている。具体的には、例えば、ロール部材やベルト部材などとして、ポリウレタンエラストマーを用いることが、知られている。
【0003】
このようなポリウレタンエラストマーは、例えば、ポリイソシアネート成分と高分子量ポリオールとの反応によりイソシアネート基末端プレポリマーを合成し、その後、得られたイソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを、それらの当量比(NCO/活性水素基)が実質的に1.0となるように反応させることにより、製造されている。
【0004】
より具体的には、例えば、80モル%以上のトランス体を含む1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含有するポリイソシアネート成分と、活性水素化合物成分の一部(好ましくは、高分子量ポリオール)とを反応させて、イソシアネート基末端プレポリマーを合成し、次いで、得られたイソシアネート基末端プレポリマーと活性水素化合物成分の残部(鎖伸長剤)とを、鎖伸長剤中の活性水素基に対するイソシアネート基末端プレポリマー中のイソシアネート基の当量比(NCO/活性水素基)が、0.75〜1.30、好ましくは、0.9〜1.10となる割合で反応させて得られるポリウレタンエラストマーが、提案されている。
【0005】
このようなポリウレタンエラストマーは、優れた耐黄変性および機械物性を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開WO2009/051114パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このようなポリウレタンエラストマーとしては、用途によっては、NO環境下における耐変色性が要求される場合があり、また、そのような場合にも、優れた機械物性を維持することが要求される。
【0008】
そこで、本発明の目的は、機械物性に優れ、かつ、NO環境下における耐変色性にも優れるポリウレタンエラストマーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明のポリウレタンエラストマーは、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンおよび高分子量ポリオールの反応により得られるイソシアネート基末端プレポリマーと、活性水素基を含有する鎖伸長剤との反応により得られ、鎖伸長剤中の活性水素基に対する、イソシアネート基末端プレポリマー中のイソシアネート基の当量比(NCO/活性水素基)が、1.10を超過し1.30未満であることを特徴としている。
【0010】
また、本発明のポリウレタンエラストマーは、NOを2000ppmの割合で含有する窒素ガスに1時間曝露する前後において、ハンターLab表色系によるb値の変化量が、2以下であることが好適である。
【0011】
また、本発明のポリウレタンエラストマーでは、高分子量ポリオールがフッ素ポリオールを含有し、フッ素ポリオールの含有割合が、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、高分子量ポリオールおよび鎖伸長剤の総量に対して、0.1質量%以上10質量%以下であることが好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポリウレタンエラストマーは、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンおよび高分子量ポリオールとの反応により得られるイソシアネート基末端プレポリマーと、活性水素基を含有する鎖伸長剤とを、鎖伸長剤中の活性水素基に対する、イソシアネート基末端プレポリマー中のイソシアネート基の当量比(NCO/活性水素基)が、1.10を超過し1.30未満となる割合で反応させることにより得られる。
【0013】
そのため、本発明のポリウレタンエラストマーは、優れた機械物性、および、NO環境下における耐変色性を備える。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のポリウレタンエラストマーは、イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを反応させることにより得られる。
【0015】
イソシアネート基末端プレポリマーは、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(1,4−HXDI)および高分子量ポリオールの反応により得ることができる。
【0016】
1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンは、例えば、特開平7−309827号公報に記載される冷熱2段法(直接法)や造塩法、あるいは、特開2004−244349号公報や特開2003−212835号公報などに記載されるホスゲンを使用しない方法、さらには、国際公開WO2009/051114号に記載の方法などにより、製造することができる。
【0017】
また、上記1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンは、変性体として調製することもできる。
【0018】
1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの変性体としては、例えば、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの多量体(ダイマー、トリマーなど)、ビウレット変性体(例えば、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと水との反応により生成するビウレット変性体など)、アロファネート変性体(例えば、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンとモノオールまたは低分子量ポリオール(後述)との反応より生成するアロファネート変性体など)、ポリオール変性体(例えば、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと低分子量ポリオール(後述)または高分子量ポリオール(後述)との反応より生成するポリオール変性体など)、オキサジアジントリオン変性体(例えば、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオンなど)、カルボジイミド変性体(1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの脱炭酸縮合反応により生成するカルボジイミド変性体など)、ウレトジオン変性体などが挙げられる。
【0019】
1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンとして、好ましくは、上記のような変性体として調製することなく、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの単量体をそのまま用いる。これにより、機械物性および耐変色性に優れるポリウレタンエラストマーを得ることができる。
【0020】
高分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有する数平均分子量300以上、好ましくは、400以上の化合物であって、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、シリコーンポリオール、フッ素ポリオール、ビニルモノマー変性ポリオールが挙げられる。
【0021】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルポリオールなどが挙げられる。
【0022】
ポリオキシアルキレンポリオールは、例えば、低分子量ポリオールまたは低分子量ポリアミンを開始剤とする、アルキレンオキサイドの付加重合物である。
【0023】
低分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有する数平均分子量300未満、好ましくは、400未満の化合物であって、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,2−トリメチルペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、アルカン(C7〜20)ジオール、1,3−または1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびそれらの混合物、1,3−または1,4−シクロヘキサンジオールおよびそれらの混合物、水素化ビスフェノールA、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、2,6−ジメチル−1−オクテン−3,8−ジオール、ビスフェノールA、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの2価アルコール、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリイソプロパノールアミンなどの3価アルコール、例えば、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)、ジグリセリンなどの4価アルコール、例えば、キシリトールなどの5価アルコール、例えば、ソルビトール、マンニトール、アリトール、イジトール、ダルシトール、アルトリトール、イノシトール、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコール、例えば、ペルセイトールなどの7価アルコール、例えば、ショ糖などの8価アルコールなどが挙げられる。
【0024】
低分子量ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,3−または1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン(イソホロンジアミン)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、2,5(2,6)−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ヒドラジン、o、mまたはp−トリレンジアミン(TDA、OTD)などの低分子量ジアミン、例えば、ジエチレントリアミンなどの低分子量トリアミン、例えば、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどのアミノ基を4個以上有する低分子量ポリアミンなどが挙げられる。
【0025】
これら開始剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。開始剤として、好ましくは、低分子量ポリオールが挙げられる。
【0026】
アルキレンオキサイドとしては、例えば、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどが挙げられる。また、これらアルキレンオキサイドは、単独使用または2種類以上併用することができる。また、これらのうち、好ましくは、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイドが挙げられる。
【0027】
このようなポリオキシアルキレンポリオールとして、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンポリプロピレングリコール(ランダムまたはブロック共重合体)などのポリアルキレンオキサイドなどが挙げられる。
【0028】
ポリテトラメチレンエーテルポリオールとしては、例えば、ポリテトラメチレンエーテルグリコールが挙げられ、具体的には、例えば、テトラヒドロフランのカチオン重合により得られる開環重合物や、テトラヒドロフランなどの重合単位に、アルキル置換テトラヒドロフランや、上記した2価アルコールを共重合した非晶性(非結晶性)ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどが挙げられる。
【0029】
なお、非晶性(非結晶性)とは、常温(25℃)において液状であることを示す。
【0030】
非晶性のポリテトラメチレンエーテルグリコールは、例えば、テトラヒドロフランと、アルキル置換テトラヒドロフラン(例えば、3−メチルテトラヒドロフランなど)との共重合体(テトラヒドロフラン/アルキル置換テトラヒドロフラン(モル比)=15/85〜85/15、数平均分子量500〜4000、好ましくは、800〜2500)や、例えば、テトラヒドロフランと、分岐状グリコール(例えば、ネオペンチルグリコールなど)との共重合体(テトラヒドロフラン/分岐状グリコール(モル比)=15/85〜85/15、数平均分子量500〜4000、好ましくは、800〜2500)などとして、得ることができる。
【0031】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオールと多塩基酸とを、公知の条件下、反応させて得られる重縮合物が挙げられる。
【0032】
多塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタール酸、アジピン酸、1,1−ジメチル−1,3−ジカルボキシプロパン、3−メチル−3−エチルグルタール酸、アゼライン酸、セバシン酸、その他の飽和脂肪族ジカルボン酸(C11〜13)、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、その他の不飽和脂肪族ジカルボン酸、例えば、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トルエンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、その他の芳香族ジカルボン酸、例えば、ヘキサヒドロフタル酸、その他の脂環族ジカルボン酸、例えば、ダイマー酸、水添ダイマー酸、ヘット酸などのその他のカルボン酸、および、それらカルボン酸から誘導される酸無水物、例えば、無水シュウ酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水2−アルキル(C12〜C18)コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水トリメリット酸、さらには、これらのカルボン酸などから誘導される酸ハライド、例えば、シュウ酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライド、セバシン酸ジクロライドなどが挙げられる。
【0033】
また、ポリエステルポリオールとして、例えば、植物由来のポリエステルポリオール、具体的には、上記した低分子量ポリオールを開始剤として、ヒドロキシル基含有植物油脂肪酸(例えば、リシノレイン酸を含有するひまし油脂肪酸、12−ヒドロキシステアリン酸を含有する水添ひまし油脂肪酸など)などのヒドロキシカルボン酸を、公知の条件下、縮合反応させて得られる植物油系ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0034】
また、ポリエステルポリオールとして、例えば、上記した低分子量ポリオール(好ましくは、2価アルコール)を開始剤として、例えば、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトンなどのラクトン類や、例えば、L−ラクチド、D−ラクチドなどのラクチド類などを開環重合して得られる、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、さらには、それらに上記した2価アルコールを共重合したラクトン系ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0035】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオール(好ましくは、2価アルコール)を開始剤とするエチレンカーボネートの開環重合物や、例えば、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールや1,6−ヘキサンジオールなどの2価アルコールと、開環重合物とを共重合した非晶性ポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。
【0036】
また、ポリウレタンポリオールは、上記により得られたポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールおよび/またはポリカーボネートポリオールを、イソシアネート基(NCO)に対する水酸基(OH)の当量比(OH/NCO)が1を超過する割合で、ポリイソシアネートと反応させることによって、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオール、ポリカーボネートポリウレタンポリオール、あるいは、ポリエステルポリエーテルポリウレタンポリオールなどとして得ることができる。
【0037】
エポキシポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオールと、例えば、エピクロルヒドリン、β−メチルエピクロルヒドリンなどの多官能ハロヒドリンとの反応により得られるエポキシポリオールが挙げられる。
【0038】
植物油ポリオールとしては、例えば、ひまし油、やし油などのヒドロキシル基含有植物油などが挙げられる。例えば、ひまし油ポリオール、または、ひまし油脂肪酸とポリオキシプロピレンポリオールとの反応により得られるエステル変性ひまし油ポリオールなどが挙げられる。
【0039】
ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、ポリブタジエンポリオール、部分ケン価エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
【0040】
アクリルポリオールとしては、例えば、ヒドロキシル基含有アクリレートと、ヒドロキシル基含有アクリレートと共重合可能な共重合性ビニルモノマーとを、共重合させることによって得られる共重合体が挙げられる。
【0041】
ヒドロキシル基含有アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2−ジヒドロキシメチルブチル(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシアルキルマレエート、ポリヒドロキシアルキルフマレートなどが挙げられる。好ましくは、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0042】
共重合性ビニルモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルアクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート(炭素数1〜12)、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル、例えば、(メタ)アクリロニトリルなどのシアン化ビニル、例えば、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などのカルボキシル基を含むビニルモノマー、または、そのアルキルエステル、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどのアルカンポリオールポリ(メタ)アクリレート、例えば、3−(2−イソシアネート−2−プロピル)−α−メチルスチレンなどのイソシアネート基を含むビニルモノマーなどが挙げられる。
【0043】
そして、アクリルポリオールは、これらヒドロキシル基含有アクリレート、および、共重合性ビニルモノマーを、適当な溶剤および重合開始剤の存在下において共重合させることにより得ることができる。
【0044】
シリコーンポリオールとしては、例えば、ジアルキルポリシロキサンに水酸基を導入した変性ポリシロキサンポリオールや、例えば、上記したアクリルポリオールの共重合において、共重合性ビニルモノマーとして、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのビニル基を含むシリコーン化合物が配合されたアクリルポリオールが挙げられる。
【0045】
フッ素ポリオールとしては、例えば、公知の方法により上記した高分子量ポリオール(例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリウレタンポリオールなど)の少なくとも一部にフッ素原子を導入したポリオールが挙げられる。具体的には、例えば、フッ素含有ポリエーテルポリオール(パーフルオロポリエーテルポリオール)、フッ素含有ポリエステルポリオール、フッ素含有ポリウレタンポリオールなどが挙げられる。
【0046】
また、フッ素ポリオールとしては、例えば、上記したアクリルポリオールの共重合において、共重合性ビニルモノマーとして、ビニル基を含むフッ素化合物が配合されたアクリルポリオールが挙げられる。
【0047】
ビニル基を含むフッ素化合物としては、例えば、ビニリデンフルオライド(VdF)、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ビニルフルオライド(VF)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)などが挙げられる。
【0048】
また、フッ素ポリオールは、例えば、TFEなどのビニル基を含むフッ素化合物、共重合性ビニルモノマー、および、ヒドロキシル基含有ビニルモノマーの共重合により得ることができる。具体的には、例えば、TFE/イソブチレン/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体、TFE/バーサチック酸ビニル/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体、TFE/VdF/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体などが挙げられ、好ましくは、TFE/イソブチレン/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体、TFE/バーサチック酸ビニル/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体が挙げられる。
【0049】
さらに、フッ素ポリオールは、TFEなどのビニル基を含むフッ素化合物またはその重合物と、上記ヒドロキシル基含有ビニルモノマーとの共重合により得ることもできる。
【0050】
また、フッ素ポリオールは、市販品としても入手可能であり、具体的には、例えば、商品名Fluorolink 5147XなどのFluorolinkシリーズ(ソルベイ製)などが挙げられる。
【0051】
ビニルモノマー変性ポリオールは、上記した高分子量ポリオールと、ビニルモノマーとの反応により得ることができる。
【0052】
このような高分子量ポリオールの数平均分子量は、例えば、500以上、好ましくは、800以上であり、例えば、5000以下、好ましくは、3000以下である。
【0053】
これら高分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0054】
高分子量ポリオールとして、好ましくは、ポリエーテルポリオールが挙げられ、より好ましくは、ポリテトラメチレンエーテルポリオールが挙げられる。
【0055】
また、高分子量ポリオールとして、好ましくは、フッ素ポリオールを含有することが挙げられる。
【0056】
高分子量ポリオールがフッ素ポリオールを含有する場合において、その含有割合は、高分子量ポリオールの総量に対してフッ素ポリオールが、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、0.5質量%以上であり、例えば、15.0質量%以下、好ましくは、5.0質量%以下である。
【0057】
また、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、高分子量ポリオールおよび鎖伸長剤(後述)の総量に対して、フッ素ポリオールが、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、0.5質量%以上であり、例えば、10質量%以下、好ましくは、3.0質量%以下である。
【0058】
上記割合でフッ素ポリオールを配合することにより、優れた機械物性および耐変色性を備えるとともに、撥水性にも優れるポリウレタンエラストマーを得ることができる。
【0059】
イソシアネート基末端プレポリマーを合成するには、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと高分子量ポリオールとを、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン中のイソシアネート基に対する高分子量ポリオール中の水酸基の当量比(OH/NCO)が、例えば、1.1以上、好ましくは、1.4以上、さらに好ましくは、1.5以上であり、例えば、15.0以下、好ましくは、5.0以下、さらに好ましくは、3.0以下となるように処方(混合)し、反応容器中にて、例えば、室温〜150℃、好ましくは、50〜120℃で、例えば、0.5〜18時間、好ましくは、2〜10時間ウレタン化反応させる。
【0060】
また、ウレタン化反応では、必要により、有機溶媒を配合し、その存在下において、イソシアネート基末端プレポリマーを調製することができる。
【0061】
有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、例えば、アセトニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのアルキルエステル類、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、メチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネートなどのグリコールエーテルエステル類、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、例えば、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、臭化メチル、ヨウ化メチレン、ジクロロエタンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素類、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミドなどの極性非プロトン類などが挙げられる。
【0062】
これら有機溶媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0063】
なお、有機溶媒の配合割合は、目的および用途により、適宜設定される。
【0064】
また、上記ウレタン化反応においては、必要に応じて、例えば、アミン類や有機金属化合物などのウレタン化触媒を添加することができる。
【0065】
アミン類としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ビス−(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N−メチルモルホリンなどの3級アミン類、例えば、テトラエチルヒドロキシルアンモニウムなどの4級アンモニウム塩、例えば、イミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類などが挙げられる。
【0066】
有機金属化合物としては、例えば、酢酸錫、オクチル酸錫、オレイン酸錫、ラウリル酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジメチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジメルカプチド、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジネオデカノエート、ジオクチル錫ジメルカプチド、ジオクチル錫ジラウリレート、ジブチル錫ジクロリドなどの有機錫化合物、例えば、オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛などの有機鉛化合物、例えば、ナフテン酸ニッケルなどの有機ニッケル化合物、例えば、ナフテン酸コバルトなどの有機コバルト化合物、例えば、オクテン酸銅などの有機銅化合物、例えば、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマスなどの有機ビスマス化合物などが挙げられる。
【0067】
さらに、ウレタン化触媒として、例えば、炭酸カリウム、酢酸カリウム、オクチル酸カリウムなどのカリウム塩が挙げられる。
【0068】
これらウレタン化触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0069】
ウレタン化触媒として、好ましくは、有機金属化合物、より好ましくは、有機錫化合物が挙げられる。
【0070】
さらに、必要により、得られるイソシアネート基末端プレポリマーから遊離の(未反応の)1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを、例えば、スミス蒸留などの蒸留や、抽出などの公知の除去手段により除去してもよい。
【0071】
このようなイソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基の含有量(NCO基含量、NCO%)は、例えば、2.0〜11質量%、好ましくは、3.0〜10質量%、さらに好ましくは、4.0〜9.0質量%である。
【0072】
また、イソシアネート基末端プレポリマーにおいて、イソシアネート基の平均官能基数は、例えば、1.5〜3.0、好ましくは、1.9〜2.5、とりわけ好ましくは、2である。
【0073】
また、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基当量は、例えば、380〜2100、好ましくは、420〜1400である。また、未反応のポリイソシアネートの含有量は、例えば、20質量%以下、好ましくは、10質量%以下、さらに好ましくは、5質量%以下である。
【0074】
なお、イソシアネート基当量は、アミン当量と同義であり、JIS K 1603−1(2007)のA法またはB法により、求めることができる。未反応のポリイソシアネートの含有量は、例えば、HPLC測定により求めることができる。
【0075】
また、イソシアネート基末端プレポリマーは、上記した溶剤の溶液として調製することもでき、その場合には、その固形分濃度は、例えば、10〜90質量%、好ましくは、20〜80質量%である。
【0076】
鎖伸長剤は、例えば、水酸基やアミノ基などの活性水素を含有する活性水素基を2つ以上含有する化合物であって、例えば、上記した低分子量ポリオール、ポリアミンなどが挙げられる。
【0077】
ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,3−または1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン、例えば、1,4−シクロヘキサンジアミン、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン(イソホロンジアミン)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、2,5(2,6)−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどの脂環族ジアミン、例えば、o、mまたはp−トリレンジアミン(TDA、OTD)、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MOCA)、3,5−ビス(メチルチオ)−2,6−トルエンジアミン、3,5−ビス(メチルチオ)−2,4−トルエンジアミンなどの芳香族ジアミンや、ヒドラジンなどのその他のジアミンなどが挙げられる。
【0078】
また、このような鎖伸長剤としては、市販品を用いることもできる。そのような市販品として、具体的には、例えば、エタキュア300(3,5−ビス(メチルチオ)−2,6−トルエンジアミンと3,5−ビス(メチルチオ)−2,4−トルエンジアミンとの混合物 アミン当量107 アルベマール社製)、U−801(ポリオール系硬化剤 水酸基当量45 三井化学社製)などが挙げられる。
【0079】
これら鎖伸長剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0080】
鎖伸長剤が低分子量ポリオールである場合には、その水酸基当量(JIS K 1557−1(2007)に準拠)は、例えば、30〜500、好ましくは、43〜280である。
【0081】
また、鎖伸長剤がポリアミンである場合には、そのアミン当量(JIS K 1603−1(2007)に準拠)は、例えば、45〜280、好ましくは、56〜280である。
【0082】
また、鎖伸長剤は、上記した溶剤の溶液として調製することもでき、その場合には、その固形分濃度は、例えば、10〜90質量%、好ましくは、20〜80質量%である。
【0083】
そして、これらイソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを、例えば、バルク重合や溶液重合などの重合方法で反応させることにより、ポリウレタンエラストマーを得ることができる。
【0084】
バルク重合では、例えば、窒素気流下において、イソシアネート基末端プレポリマーを撹拌しつつ、これに、鎖伸長剤を加えて反応させる。溶液重合では、有機溶媒に、イソシアネート基末端プレポリマーおよび鎖伸長剤を加えて反応させる。有機溶媒としては、上記した有機溶媒が挙げられる。
【0085】
このような重合反応において、鎖伸長剤中の活性水素基に対する、イソシアネート基末端プレポリマー中のイソシアネート基の当量比(NCO/活性水素基)は、1.10を超過し、好ましくは、1.12以上、より好ましくは、1.16以上であり、1.30未満、好ましくは、1.28以下、より好ましくは、1.27以下である。
【0086】
鎖伸長剤中の活性水素基に対する、イソシアネート基末端プレポリマー中のイソシアネート基の当量比(NCO/活性水素基)が上記範囲であれば、例えば、上記の当量比(NCO/活性水素基)が1.30以上である場合や、1.10以下である場合に比べ、機械物性を良好に維持しながら、NO環境下における耐変色性にも優れるポリウレタンエラストマーを得ることができる。
【0087】
さらに、上記重合反応においては、必要に応じて、例えば、アミン類や有機金属化合物などの上記したウレタン化触媒を添加することができる。
【0088】
また、このような方法では、好ましくは、イソシアネート基末端プレポリマーおよび/または鎖伸長剤を、例えば、常温、あるいは、30〜120℃に加温して、低粘度化させてから混合し、その後、必要に応じて脱泡した後、予備加熱した成形型に注入し、硬化反応させる。
【0089】
硬化条件としては、硬化温度が、例えば、80℃以上、好ましくは、100℃以上であり、例えば、160℃以下、好ましくは、140℃以下である。また、硬化時間が、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1.0時間以上、さらに好ましくは、3時間以上であり、例えば、200時間以下、好ましくは、48時間以下、さらに好ましくは、24時間以下である。
【0090】
そして、硬化後に脱型すれば、所望形状に成形されたポリウレタンエラストマー(注型ポリウレタンエラストマー)を得ることができる。また、脱型後、必要に応じて、室温にて、7日間以内程度で熟成させることもできる。
【0091】
なお、ポリウレタンエラストマーには、必要に応じて、公知の添加剤、例えば、可塑剤、ブロッキング防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤(耐光安定剤)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、触媒、さらには、顔料、染料、滑剤、フィラー、加水分解防止剤、難燃剤など、適宜の割合で配合することができる。これら添加剤は、各成分の合成時に添加してもよく、あるいは、各成分の混合・溶解時に添加してもよく、さらには、合成後に添加してもよい。
【0092】
そして、上記したように、このようなポリウレタンエラストマーは、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンおよび高分子量ポリオールとの反応により得られるイソシアネート基末端プレポリマーと、活性水素基を含有する鎖伸長剤とを、鎖伸長剤中の活性水素基に対する、イソシアネート基末端プレポリマー中のイソシアネート基の当量比(NCO/活性水素基)が、1.10を超過し1.30未満となる割合で反応させることにより得られる。
【0093】
そのため、本発明のポリウレタンエラストマーは、優れた機械物性、および、NO環境下における耐変色性を備える。
【0094】
具体的には、ポリウレタンエラストマーの引張強度(JIS K 7312(1996)に準拠、23℃、55%RH)は、例えば、6MPa以上、好ましくは、10MPa以上、より好ましくは、15MPa以上、通常、40MPa以下である。
【0095】
また、このようなポリウレタンエラストマーは、NOを2000ppmの割合で含有する窒素ガスに1時間曝露する前後において、ハンターLab表色系によるb値の変化量が、例えば、2.0以下、好ましくは、1.6以下、より好ましくは、1.3以下である。
【0096】
なお、ハンターLab表色系によるb値の変化量は、JIS Z 8722(2009)に準拠して測定されるX、YおよびZの値から、下記式を用いて算出することができる。
【0097】
b=7.0(Y−0.847×Z)/√Y
また、ポリウレタンエラストマーは、撥水性にも優れ、具体的には、ポリウレタンエラストマーの水に対する接触角(JIS K 7312(1996)に準拠)が、例えば、110度以上、好ましくは、130度以上であり、例えば、150度以下、好ましくは、140度以下である。
【0098】
とりわけ、ポリウレタンエラストマーの製造に用いられる高分子量ポリオールが、上記した所定割合でフッ素ポリオールを含有している場合、機械物性を維持するととともに、撥水性の向上を図ることができる。
【0099】
具体的には、高分子量ポリオールが所定割合でフッ素ポリオールを含有している場合、ポリウレタンエラストマーの水に対する接触角(JIS K 7312(1996)に準拠)は、例えば、130度以上、好ましくは、135度以上であり、例えば、150度以下、好ましくは、140度以下である。
【0100】
そして、このようなポリウレタンエラストマーは、上記したように、機械物性に優れ、かつ、NO環境下における耐変色性にも優れるため、熱硬化、熱可塑およびミラブルタイプの用途に展開でき、特に、熱硬化用途にて好適である。このようなポリウレタンエラストマーは、各種産業機器の部材、具体的には、例えば、印刷機、複写機、プリンターなどの画像形成装置、抄紙機などに用いられるロール部材(例えば、加圧ロール、定着ロール、送紙ロールなど)やベルト部材(例えば、伝動ベルト、搬送用ベルト、コンベヤベルト、シュープレスベルトなど)、油、ガス、鉱山、ダンプなどの重機および海洋などに用いられるポンプ部品、クランプ、シール、ローラー、ホイール、ホイールトレッド、キャスター、シュート、バルブ、シェーカー、ショックアブソーバー、ブッシング、ダンパー、コイル、ジェットコースターのロール、トレッド、ホイール、さらには、油水破砕用泥水用途の部材などの用途も挙げられる。さらには、タイヤチェーン、二輪、四輪、オートバイ、自転車、モトクロス用タイヤ、スポーク、トレッド周辺の部材、ゴルフボールのカバー材やコア材、テニスボール、バスケットボール、バレーボールなどのスポーツ部材、スマートフォン、タブレットなどのカバーあるいは緩衝材料、ロボットなどの駆動部品、サポート部品、金属類との複合部品、介護部材などの医療部品、カバー材、工業部材、土木建材、ガラスもしくはポリカーボネートなどの透明性樹脂代替用途、メガネレンズ、ピックアップレンズ、ヘットランプなどの用途、柔軟なゲル、ロール、シート、フィルム、電材用部品、土木建築用途の部品、製紙あるいは工業用フェルト、静遮音部材、バウンドストッパー、センサー、スイッチ、導電性部材、防振部品、ホース、チューブ、コネクターシール、ブランケット、あるいは、製紙、鉄鋼、プリンター、コピー、液晶、PDP、有機ELなどの製造に関わるロール、化学あるいは物理発泡ウレタン製品、マイクロセルラー、光学用シート、フィルム、クリーニングブレード、スキージー、さらには、緩衝材、自己修復材料、トラック、床材、新幹線、船舶、リニアーモーターなどのパッキン、シール材、シューズのソール、インナー、アウター部材、ウレタンディスク、クッションボード、トルクリミッター、ピンチローラー、プレスロール、電気絶縁材、ワイピングクロス、コピークリーナー、ガスケットなど、種々の産業分野において好適に用いることができる。
【実施例】
【0101】
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。また、以下の説明において、特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。なお、以下に示す実施例の数値は、実施形態において記載される対応する数値(すなわち、上限値または下限値)に代替することができる。
【0102】
製造例1
1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(三菱瓦斯化学社製)を原料として、冷熱2段ホスゲン化法を加圧下で実施した。
【0103】
具体的には、電磁誘導撹拌機、自動圧力調整弁、温度計、窒素導入ライン、ホスゲン導入ライン、凝縮器および原料フィードポンプを備え付けたジャケット付き加圧反応器に、オルトジクロロベンゼン2500質量部を仕込んだ。次いで、ホスゲン1425質量部をホスゲン導入ラインより加え撹拌を開始した。反応器のジャケットには冷水を通し、内温を約10℃に保った。そこへ、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン400質量部をオルトジクロロベンゼン2500質量部に溶解した溶液を、フィードポンプにて60分かけてフィードし、30℃以下、常圧下で冷ホスゲン化を実施した。フィード終了後、フラスコ内は淡褐白色スラリー状液となった。
【0104】
次いで、反応器内液を60分で140℃に昇温しながら0.25MPaに加圧し、さらに圧力0.25MPa、反応温度140℃で2時間熱ホスゲン化した。また、熱ホスゲン化の途中でホスゲンを480質量部追加した。熱ホスゲン化の過程でフラスコ内液は淡褐色澄明溶液となった。熱ホスゲン化終了後、100〜140℃で窒素ガスを100L/時で通気し、脱ガスした。
【0105】
次いで、減圧下で溶媒のオルトジクロルベンゼンを留去した後、ガラス製フラスコに、充填物(住友重機械工業株式会社製、商品名:住友/スルザーラボパッキングEX型)を4エレメント充填した蒸留管、還流比調節タイマーを装着した蒸留塔(柴田科学株式会社製、商品名:蒸留頭K型)および冷却器を装備する精留装置を用いて、138〜143℃、0.7〜1KPaの条件下、さらに還流しながら精留し、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン382質量部を得た。
【0106】
調製例1(プレポリマー1の調製)
攪拌機、温度計、還流管、および、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、製造例1の1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン1118質量部と、数平均分子量1000のポリテトラメチレンエーテルグリコール(商品名:PTMG−1000、三菱化学製)2881質量部とを装入し、窒素雰囲気下、80℃にてイソシアネート基含量が6.06質量%になるまで反応させ、イソシアネート基末端プレポリマー(1)(以下、プレポリマー1と略する。)を得た。
【0107】
なお、ポリテトラメチレンエーテルグリコール中の活性水素基に対する、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン中のイソシアネート基の当量比(NCO/活性水素基)は、2.0であり、また、得られたプレポリマー1のアミン当量は693であった。
【0108】
調製例2(プレポリマー2の調製)
攪拌機、温度計、還流管、および、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、製造例1の1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン550質量部と、数平均分子量1000のポリテトラメチレンエーテルグリコール(商品名:PTMG−1000、三菱化学製)1388質量部と、フッ素ポリオール(商品名:Fluorolink 5147X、ソルベイ製)60.8質量部とを装入し、窒素雰囲気下、80℃にてイソシアネート基含量が5.92質量%になるまで反応させ、イソシアネート基末端プレポリマー(2)(以下、プレポリマー2と略する。)を得た。
【0109】
なお、ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびフッ素ポリオール中の活性水素基の総量に対する、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン中のイソシアネート基の当量比(NCO/活性水素基)は、2.0であり、また、得られたプレポリマー2のアミン当量は710であった。
【0110】
調製例3(プレポリマー3の調製)
攪拌機、温度計、還流管、および、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(三井化学社製、商品名:タケネート600)1118質量部と、数平均分子量1000のポリテトラメチレンエーテルグリコール(商品名:PTMG−1000、三菱化学製)2881質量部とを装入し、窒素雰囲気下、80℃にてイソシアネート基含量が6.03質量%になるまで反応させ、イソシアネート基末端プレポリマー(3)(以下、プレポリマー3と略する。)を得た。
【0111】
なお、ポリテトラメチレンエーテルグリコール中の活性水素基に対する、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン中のイソシアネート基の当量比(NCO/活性水素基)は、2.0であり、また、得られたプレポリマー3のアミン当量は697であった。
【0112】
実施例1〜8および比較例1〜11
表1〜表2に示す処方で、プレポリマー1〜3と、1,4−ブチレングリコール(鎖伸長剤、略称1,4−BG)とを反応させ、ポリウレタンエラストマーを得た。
【0113】
より具体的には、まず、表1〜表2に示すようにプレポリマーを秤量し、80℃に予備加熱するとともに、1,4−ブチレングリコール(鎖伸長剤)を80℃に予備加熱した。次いで、鎖伸長剤中の活性水素基に対する、プレポリマー中のイソシアネート基の当量比R(NCO/活性水素基)が、表1〜表2に示す値となるように、プレポリマーと鎖伸長剤とを投入し、また、触媒(ジブチル錫ジラウレート、商品名:ネオスタンU−100、日東化成製)0.0008質量部を添加して混合し、真空脱泡した。
【0114】
そして、得られた混合物を110℃に加熱した一面開放金型(厚み2mm、幅300mm、深さ100mm)に注入し、24時間、110℃で硬化させ、厚み2mm、たて100mm、横300mmのウレタンエラストマーを得た。各実施例および各比較例の配合処方を表1および表2に示す。
【0115】
また、表1および表2には、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、高分子量ポリオールおよび鎖伸長剤の総量に対するフッ素ポリオールの含有割合(フッ素ポリオール含量(質量%))を、併せて示す。
<評価>
下記する方法により、各実施例および各比較例において得られたポリウレタンエラストマーの引張強度、水に対する接触角、および、変色度を測定して、機械物性、撥水性および耐変色性について評価した。その結果を、表1および表2に示す。
(引張強度(MPa))
JIS K 7312(1996)に従い、23℃、55%RHにおいて、3号形ダンベル状試験片を用いて、引張強度を測定した。
(接触角(度))
100mm角、厚み2mmのポリウレタンエラストマーのサンプルについて、JIS K 7312(1996)の[25.5]に従って、テーバー磨耗試験機を用い、また、磨耗輪H−22を使用して、1100回磨耗した。その後、摩耗された表面において、水の接触角を測定した。
【0116】
なお、水の接触角としては、接触角試験機(協和界面科学社製 自動接触角計 CA−VP型)を用い、水滴着液法にて着液5秒後の数値を読み取った。
(変色性(b値の変化量))
20mm×30mm角、厚み2mmのポリウレタンエラストマーのサンプルについて、デシケーター中において、NOを2000ppmの割合で含有する窒素ガスに、23℃で1時間曝露した。そして、全自動色差計(スガ試験機社製、商品名:TC−1)を用いて、ハンターLab表色系におけるb値(黄色さの指標)の曝露前後の変化値を測定した(JIS Z 8722(2009)に準拠)。
【0117】
【表1】
【0118】
【表2】
【0119】
調製例4
プレポリマー1を150質量部秤量し、50℃に予備加熱するとともに、キュアミンMT(鎖伸長剤、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MOCA)、アミン当量133.5、イハラケミカル工業製)を120℃に予備加熱した。次いで、鎖伸長剤中の活性水素基に対する、プレポリマー中のイソシアネート基の当量比R(NCO/活性水素基)が、1.2となるように、プレポリマーと鎖伸長剤とを投入して混合し、真空脱泡した。その後、得られた混合物を実施例1と同様にして一面開放金型に注入し、硬化させることにより、ポリウレタンエラストマーを得た。
【0120】
調製例5
プレポリマー1を150質量部秤量し、50℃に予備加熱するとともに、エタキュア300(鎖伸長剤、3,5−ビス(メチルチオ)−2,6−トルエンジアミンと3,5−ビス(メチルチオ)−2,4−トルエンジアミンとの混合物、アミン等量107、アルベマール製)を23℃に温度調節した。次いで、鎖伸長剤中の活性水素基に対する、プレポリマー中のイソシアネート基の当量比R(NCO/活性水素基)が、1.2となるように、プレポリマーと鎖伸長剤とを投入して混合し、真空脱泡した。その後、得られた混合物を実施例1と同様にして一面開放金型に注入し、硬化させることにより、ポリウレタンエラストマーを得た。