特許第6068306号(P6068306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6068306
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】カップホルダ
(51)【国際特許分類】
   B60N 3/10 20060101AFI20170116BHJP
【FI】
   B60N3/10 B
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-194475(P2013-194475)
(22)【出願日】2013年9月19日
(65)【公開番号】特開2015-58837(P2015-58837A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2016年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】土居 敦
【審査官】 永安 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−248869(JP,A)
【文献】 特開2005−254854(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器を内部に収納する容器収納部と、
前記容器収納部に収納した容器を通電により加熱又は冷却する熱電素子と、
前記容器収納部の温度を測定する温度測定手段と、
前記温度測定手段で検出された容器収納部温度に基づいて、単位時間当たりの容器収納部温度勾配を算出し、前記容器収納部温度勾配と基準温度勾配との比較に基づいて前記熱電素子を制御する制御部と、
を備えるカップホルダ。
【請求項2】
前記制御部は、前記基準温度勾配のうち、前記熱電素子に加熱通電する判断基準となる加熱基準温度勾配を記憶しており、前記容器収納部温度勾配が前記加熱基準温度勾配以上の場合には、前記熱電素子に通電して前記容器収納部に収納した容器を加熱する請求項1記載のカップホルダ。
【請求項3】
前記制御部は、前記基準温度勾配のうち、前記熱電素子に冷却通電する判断基準となる冷却基準温度勾配を記憶しており、前記容器収納部温度勾配が前記冷却基準温度勾配以下の場合には、前記熱電素子に通電して前記容器収納部に収納した容器を冷却する請求項1又は2記載のカップホルダ。
【請求項4】
前記容器収納部温度勾配が、前記加熱基準温度勾配よりも小さく、前記冷却基準温度勾配よりも大きい場合には、前記熱電素子に対して通電しない請求項2を引用する請求項3記載のカップホルダ。
【請求項5】
前記温度測定手段は、前記容器収納部に内蔵されている請求項1〜4のいずれか一項に記載のカップホルダ。
【請求項6】
前記熱電素子は、ペルチェ素子である請求項1〜5のいずれか一項記載のカップホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納した容器を加熱又は冷却するカップホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のフロアコンソールには、飲料容器を収納するカップホルダが備えられている。カップホルダの中には、収納した容器を加熱又は冷却可能なタイプがある。
【0003】
このタイプのカップホルダは、例えば、ユーザーがスイッチ操作することによって加熱又は冷却を選択し、その選択に基づいてホルダの下部に配設されたペルチェ素子に通電することによって、カップホルダ内の飲料容器を加熱又は冷却する構成とされている。
【0004】
しかし、カップホルダに飲料容器を収容後にスイッチ操作をしなければ飲料容器の加熱・冷却がされないのは煩雑であり、自動的に加熱・冷却するカップホルダが求められている。
【0005】
このようなカップホルダとして、例えば、特許文献1には、容器温度を測定可能な温度センサと、外部温度を測定可能な温度センサを備え、容器温度が加熱基準温度以上又は冷却基準温度以下の場合に収納した容器を加熱又は冷却し、容器温度が加熱基準温度以下で冷却基準温度以上の場合、容器温度が外部温度以上であれば加熱、外部温度より低ければ容器を冷却する構成が開示されている。このように構成することにより、ユーザーがスイッチ操作で加熱・冷却を選択しなくても加熱・冷却を自動的に選択し、適切な保温、保冷を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−238869
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された技術的思想では、容器温度と外部温度を測定するために2つの温度センサが必要となり、センサ点数が増加する課題があった。
【0008】
また、外部温度の変動によって加熱・冷却の判断基準が変動してしまうという課題もあった。
【0009】
本発明は上記事実を考慮し、センサ点数を抑制して自動的に精度良く加熱・冷却が可能なカップホルダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の本発明のカップホルダは、容器を内部に収納する容器収納部と、前記容器収納部に収納した容器を通電により加熱又は冷却する熱電素子と、前記容器収納部の温度を測定する温度測定手段と、前記温度測定手段で検出された容器収納部温度に基づいて、単位時間当たりの容器収納部温度勾配を算出し、前記容器収納部温度勾配と基準温度勾配との比較に基づいて前記熱電素子を制御する制御部と、を備える。
【0011】
請求項1に記載の本発明のカップホルダでは、収容された飲料容器と容器収納部との温度差に基づいて容器収納部の温度が変動する。この容器収納部の温度を温度測定手段で検出し、制御部において単位時間当たりの容器収納部温度勾配を算出する。この容器収納部温度勾配と基準温度勾配の比較に基づいて熱電素子を制御する。
【0012】
このように、本発明のカップホルダでは、容器収納部の温度を温度検出手段で検出するだけで、制御部が容器収納部温度勾配と基準温度勾配の対比に基づいて加熱・冷却の判断を行っている。すなわち、1つの温度検出手段だけでカップホルダの加熱・冷却の自動制御を行うことができる。また、容器収納部の温度勾配にのみ基づいて制御しているため、外部温度に拘わらず精度の良い自動制御ができる。
【0013】
請求項2に記載の本発明のカップホルダは、請求項1記載のカップホルダにおいて、前記制御部は、前記基準温度勾配のうち、前記熱電素子に加熱通電する判断基準となる加熱基準温度勾配を記憶しており、前記容器収納部温度勾配が前記加熱基準温度勾配以上の場合には、前記熱電素子に通電して前記容器収納部に収納した容器を加熱する。
【0014】
請求項2に記載の本発明のカップホルダでは、容器収納部の温度を温度検出手段で検出するだけで、制御部が容器収納部温度勾配を算出し、容器収納部温度勾配が加熱基準温度勾配以上の場合に、熱電素子に通電して容器収納部に収納された容器を加熱する。
【0015】
このように、1つの温度検出手段だけでカップホルダの加熱を自動制御することができる。すなわち、簡単な構成で精度の良い制御を行うことができる。
【0016】
請求項3に記載の本発明のカップホルダは、請求項1又は2記載のカップホルダにおいて、前記制御部は、前記基準温度勾配のうち、前記熱電素子に冷却通電する判断基準となる冷却基準温度勾配を記憶しており、前記容器収納部温度勾配が前記冷却基準温度勾配以下の場合には、前記熱電素子に通電して前記容器収納部に収納した容器を冷却する。
【0017】
請求項3記載の本発明のカップホルダでは、容器収納部の温度を温度検出手段で検出するだけで、制御部が容器収納部温度勾配を算出し、容器収納部温度勾配が冷却基準温度勾配以下の場合に、熱電素子に通電して容器収納部に収納された容器を冷却する。
このように、1つの温度検出手段だけでカップホルダの冷却を自動制御することができる。すなわち、簡単な構成で精度の良い制御を行うことができる。
【0018】
請求項4記載の本発明は、請求項2を引用する請求項3に記載のカップホルダにおいて、前記容器収納部温度勾配が、前記加熱基準温度勾配よりも小さく、前記冷却基準温度勾配よりも大きい場合には、前記熱電素子に対して通電しない。
【0019】
請求項4記載の本発明のカップホルダでは、容器収納部の温度勾配が、加熱基準温度勾配よりも小さく、冷却基準温度勾配よりも大きい場合には、熱電素子に通電しない。すなわち、容器収納部温度勾配が小さい場合には、容器収納部に収容された容器を加熱も冷却もしない。
【0020】
これにより、ユーザーが常温保持したい場合までも容器を加熱又は冷却することを防止することができると共に、車室内の微小な温度変化に応じて容器を加熱又は冷却する誤作動を防止することができる。
【0021】
請求項5記載の本発明は、請求項1〜4のいずれか一項記載のカップホルダにおいて、前記温度測定手段は、前記容器収納部に内蔵されている。
【0022】
請求項5記載のカップホルダは、温度測定手段が容器収納部に内蔵されているため、外部から視認されることはなく、意匠性に優れる。
【0023】
請求項6記載の本発明は、請求項1〜5のいずれか一項記載のカップホルダにおいて、前記熱電素子は、ペルチェ素子である。
【0024】
請求項6記載のカップホルダでは、熱電素子がペルチェ素子であるため、設定が容易にできる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のカップホルダは、簡単な構成で精度良く、容器の加熱・冷却を自動制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係るカップホルダの全体斜視図である。
図2図1の2-2線断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るカップホルダの分解斜視図である。
図4】本発明の一実施形態に係るカップホルダの構成を示すブロック図である。
図5】本発明の一実施形態に係るカップホルダの加熱・冷却制御を示すメインフローチャートである。
図6】本発明の一実施形態に係る手動モードを示すフローチャートである。
図7】本発明の一実施形態に係る自動制御モードにおける加熱処理を示すフローチャートである。
図8】本発明の一実施形態に係る自動制御モードにおける冷却処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明のカップホルダの一実施形態を図1図8に従って説明する。図1はカップホルダの全体斜視図であり、図2はカップホルダの図1における2-2線断面図であり、図3はカップホルダの分解斜視図であり、図4はカップホルダの構成を示すブロック図である。
【0028】
本実施形態では、カップホルダ10は、図1に示すように、自動車のフロアコンソール12に配設されているものである。
【0029】
カップホルダ10は、図1図4に示すように、飲料容器が収納されるカップ形状の容器収納部14と、容器収納部14を収納する断熱材であるインシュレータ16と、容器収納部14の底面に当接し、容器収納部14を加熱又は冷却するペルチェ素子18と、ペルチェ素子18の底面側に配設されるヒートシンク20と、ヒートシンク20の熱交換を促進するためのファン22と、容器収納部14に対する飲料容器の収納を検出する容器検出スイッチ24と、容器収納部14の温度を検出する温度測定手段であるサーミスタ26と、制御部28と、容器収納部14の上部に装着される蓋体29とから基本的に構成される。
【0030】
容器収納部14は、飲料容器を収納するために略カップ形状であり、熱伝導率の高いアルミ製である。また、図2および図3に示すように、容器収納部14の底面14Aには、ペルチェ素子18当接用の矩形状の凸部30が形成されている。また、容器収納部14の上縁部には、図3に示すように、円周方向の1か所に矩形状の凹部32が形成されている。
【0031】
インシュレータ16は、図2および図3に示すように、容器収納部14を収容可能な略カップ形状であり、EPS(ポリスチレンフォーム)から形成されている。また、図2に示すように、インシュレータ16の底面16Aには、容器収納部14の凸部30及びペルチェ素子18が進入可能に形成された矩形状の孔部34が形成されている。
【0032】
したがって、インシュレータ16に容器収納部14を収納すると、容器収納部14が底面16Aに当接して支持されると共に、容器収納部14の凸部30が孔部34に挿入されることになる(図2参照)。
【0033】
また、インシュレータ16の上部には、飲料容器収納時に容器検出スイッチ24の後述するフラップ40を収納するための凹部36が径方向外側に張り出して形成されている。なお、容器収納部14の凹部32とインシュレータ16の凹部36が位置合わせして組み立てられることにより、容器検出スイッチ24のフラップ40が凹部36に進入可能とされている(図1図3参照)。
【0034】
ペルチェ素子18は、略矩形状であり、ヒートシンク20上にインシュレータ16が配設されることによって、インシュレータ16の孔部34内に進入し、容器収納部14の凸部30とヒートシンク20の間に挟持されるものである(図2参照)。ペルチェ素子18は、周知のように通電方向を切り替えることで、容器収納部14(凸部30)側を放熱側、又は吸熱側とすることができる。すなわち、通電方向の切換によって容器収納部14を加熱又は冷却可能な構成である。
【0035】
ヒートシンク20は、ペルチェ素子18に当接される矩形状の平面部37と、平面部37の下面に長手方向に沿って延在する複数のフィン38が所定間隔をおいて平行に形成されているものである。
【0036】
ヒートシンク20の下側には、ファン22が配置されており、ファン22の駆動によりヒートシンク20側の熱を外部に吸い出す構成とされている。
【0037】
容器検出スイッチ24は、図1図3に示すように、インシュレータ16の凹部36に対応する位置で蓋体29の下側に設けられている。容器検出スイッチ24は、略矩形状のフラップ40を有し、軸体42の回りに回転自在とされている。また、軸体42に設けられた捩じりバネ44によって、フラップ40は常時上向きに付勢されている。したがって、フラップ40は、容器収納部14に飲料容器が収納されていない状態では、上側に設けられた接点46に当接して容器収納部14の内側に水平に突出した状態とされている。一方、飲料容器が進入した状態では、捩じりバネ44の付勢力に反してフラップ40が飲料容器によって押し下げられ、インシュレータ16の凹部36内に進入する構成とされる。フラップ40が接点46に当接することによって接点46が導通状態となり、検出信号が制御部28に送信されるものである。
【0038】
サーミスタ26は、図2に示すように、容器収納部14の底面14Aに設けられた凸部30の内部に配設されている。サーミスタ26は、容器収納部14の温度Tを検出し、その温度Tを制御部28に出力するものである。
【0039】
制御部28は、図4に示すように、後述するメインスイッチ52、モード切換スイッチ54、容器検出スイッチ24、サーミスタ26からの入力信号に基づいて、ペルチェ素子18、ファン22、後述する第1〜第3LED70、72、74を制御する。また、制御部28には、加熱・冷却処理制御を行う基準温度勾配として、加熱基準温度勾配α、冷却基準温度勾配β、および保温・保冷制御を行う基準温度として、目標加熱温度T1、目標冷却温度T2、再加熱基準温度T3、再冷却基準温度T4が設定されている。なお、加熱基準温度勾配αは冷却基準温度勾配βよりも高いものである。
【0040】
この加熱基準温度勾配αは、サーミスタ26で検出された容器収納部14の温度Tの温度勾配である容器収納部温度勾配ΔTと比較することによって、飲料容器の加熱を決定するための基準温度勾配である。冷却基準温度勾配βも同様に、飲料容器の冷却を決定するための基準温度勾配である。
【0041】
また、目標加熱温度T1は、加熱時に加熱を停止するための判断基準温度である。再加熱基準温度T3は、加熱を停止したカップホルダ10の中で、飲料容器が加熱状態を保持(保温)するために再加熱が必要と判断するための基準温度である。
【0042】
同様に目標冷却温度T2は、冷却時に冷却を停止するための判断基準温度である。再冷却基準温度T4は、冷却を停止したカップホルダ10の中で、飲料容器が冷却状態を保持(保冷)するために再冷却が必要と判断するための基準温度である。
【0043】
さらに、制御部28には、図4に示すように、タイマ80が設けられている。制御部28では、タイマ80のカウント値に基づいて、容器収納部14の加熱または冷却を開始した時点から所定時間間隔で容器収納部14の温度Tを測定することや、飲料容器が容器収納部14から抜き出されてからの加熱・冷却状態を維持するための経過時間tを測定すること等に用いる。
【0044】
蓋体29は、図1および図2に示すように、フロアコンソール12の上面に取り付けるために、容器収納部14の上部に装着されるものである。蓋体29は、容器収納部14の開口部14Bと同径の円筒形状である開口部60と、開口部60の上側端部から水平方向に延びる取付部62とを備える。取付部62の下側には、開口部60の外周に沿って導光チューブ64が周回している。取付部62は、半透明部材の樹脂製であるため、導光チューブ64の点灯状態が外部から視認可能とされている。
【0045】
導光チューブ64は、第1LED70、第2LED72と接続されており、加熱処理時に第1LED70が点灯することにより赤色に、冷却処理時には第2LED72が点灯することにより青色に点灯され、取付部62の表面に赤色または青色のリングが視認される構成である。
【0046】
なお、フロアコンソール12上には、カップホルダ10のメインスイッチ52およびモード切換スイッチ54が設けられている。メインスイッチ52は、カップホルダ10の電源ON、OFFを切換するスイッチであり、モード切換スイッチ54は、加熱又は冷却処理を切り換えるスイッチである。いずれのスイッチ52、54の切換信号も、制御部28に入力される構成である。なお、メインスイッチ52の裏側には、第3LED74が配置されており、メインスイッチ52がONになった場合に第3LED74が点灯されて、メインスイッチ52の半透明な樹脂を通してユーザーにメインスイッチON(第3LED74の点灯)を視認させることが可能である。
【0047】
このように構成されたカップホルダ10の作用(制御)について説明する。
【0048】
カップホルダ10の制御部28では、図5に示すように、自動車のACC電源がONになっている状態において、メインスイッチ52がONであるか否かを判定する(S102)。メインスイッチ52がON(S102でY)であれば、制御部28はユーザーにより手動モードが選択されたと判断して、図6に示す手動モードの制御を行う。
【0049】
すなわち、制御部28では、モード切換スイッチ54において加熱モードが選択されているか否かを判定する(S202)。制御部28は、加熱モードが選択されていれば(S202でY)、加熱処理を開始する(S204)。具体的には、ペルチェ素子18に通電する。これにより、容器収納部14が加熱され、収納されている飲料容器が加熱される。また、第1LED70を駆動点灯することによって導光チューブ64が赤色に点灯し、蓋体29の表面で赤色のリングが視認可能となる(以下、同様の処理について、単に「加熱処理を開始する」との記載に止める)。また、制御部28では、メインスイッチ52がOFFでないか判定する(S206)。
【0050】
メインスイッチ52がOFFになっていた場合には、ユーザーの意思と考えられることから、加熱処理を停止する(S208)。具体的には、ペルチェ素子18に対する通電を停止する。一方、第1LED70は、ペルチェ素子18に対する通電停止後、容器収納部14の温度Tが消灯設定温度になるまで残熱表示のため点灯を維持し、容器収納部14の温度Tが消灯設定温度に到達すると消灯する。これにより、導光チューブ64によって蓋体29の表面から視認された赤色のリングは消える(以下、同様の処理について、単に「加熱処理を停止する」との記載に止める)。
【0051】
一方、メインスイッチ52がONのままの場合(S206でN)には、サーミスタ26から容器収納部14の温度Tを検出し、その温度Tが目標加熱温度T1に到達するまで加熱を継続する(S210でN)。
【0052】
容器収納部14の温度Tが目標加熱温度T1に到達する(S210でY)と、制御部28は加熱処理から保温処理に移行する。すなわち、容器収納部14の温度Tが目標加熱温度T1に到達すると、加熱処理が停止される(S212)。容器収納部14の温度Tが再加熱基準温度T3よりも小さくなれば、加熱処理を再開する(S214でY→S204)。このようにして、容器収納部14の温度Tを所定温度範囲(T3<T<T1)内に制御してメインスイッチ52がOFFされるまで保温処理を行う。
【0053】
ステップS202でモード切換スイッチ54が冷却モードを選択していた場合(S202でN)には、冷却処理を開始する(S216)。具体的には、ペルチェ素子18に通電することによって容器収納部14を冷却して、容器収納部14に収納されていた飲料容器を冷却すると共に、ファン22を駆動する。さらに、第2LED72を駆動点灯することによって導光チューブ64が青色に点灯し、蓋体29の表面から青色のリングが視認可能となる(以下、同様の処理について、単に「冷却処理を開始する」との記載に止める)。また、制御部28では、メインスイッチ52がOFFでないか判定する(S218)。
【0054】
メインスイッチ52がOFFになっていた場合には、ユーザーがこれ以上の冷却を望んでいないと考えられることから、冷却処理を停止する(S220)。具体的には、ペルチェ素子18に対する通電を停止すると共に、ファン22の駆動も停止する。さらに、第2LED72も消灯する。これにより、導光チューブ64によって蓋体29の表面から視認された青色リングは消滅する(以下、同様の処理について、単に「冷却処理を停止する」との記載に止める)。
【0055】
一方、メインスイッチ52がONのままの場合(S218でN)には、サーミスタ26から容器収納部14の温度Tを検出し、その温度Tが目標冷却温度T2に到達するまで冷却処理を継続する(S222でN→S218)。
【0056】
容器収納部14の温度Tが目標冷却温度T2に到達する(S222でY)と、制御部28は冷却処理から保冷処理に移行する。すなわち、容器収納部14の温度Tが目標冷却温度T2に到達すると、冷却処理が停止される(S224)。冷却処理の停止により、容器収納部14の温度Tが再冷却基準温度T4を上回れば、冷却処理を再開する(S226でY→S216)。このようにして容器収納部14の温度Tを所定温度範囲(T2<T<T4)内に制御してメインスイッチ52がOFFされるまで保冷を行う。
【0057】
次に、図5に示すステップS102でメインスイッチ52がOFFであると判定された場合には、制御部28は続いて容器検出スイッチ24がOFFであるか否かを判定する(S104)。
【0058】
容器検出スイッチ24がONである、すなわち容器収納部14に飲料容器が収納されていない場合には、後述する自動制御を行う必要がないので再びステップS102に戻る(S104でN)。
【0059】
一方、容器検出スイッチ24がOFFであることが検出された場合(S104でY)には、すなわち容器収納部14に飲料容器が収納された場合には、自動制御モードになる。具体的には、制御部28が、サーミスタ26から所定時間間隔で入力される容器収納部14の温度Tに基づいて、単位時間当たりの容器収納部14の温度Tの温度勾配(以下、容器収納部温度勾配という場合がある)ΔTを算出する(S106)。
【0060】
続いて、制御部28では、容器収納部温度勾配ΔTが加熱基準温度勾配α以上であるか否かを判定する(S108)。容器収納部温度勾配ΔTが加熱基準温度勾配α以上である場合(S108でY)には、温かい飲み物の飲料容器が容器収納部14に収容されたことにより、容器収納部14の温度Tが上昇していると判断して、図7に示す加熱処理を開始する(S302)。
【0061】
次に、加熱処理開始後、所定時間間隔で容器検出スイッチ24がONになったか否かを判定する(S304)。容器検出スイッチ24がONになった場合(S304でY)には、制御部28では容器検出スイッチ24がONになったタイミングからの経過時間tが待機時間t1を経過するまで加熱処理を継続する(S306でN)。すなわち、飲料容器が容器収納部14から抜き出された場合でも、待機時間t1内に飲料容器が容器収納部14に戻される可能性があるため、その間は容器収納部14の保温のために加熱処理を継続する。
【0062】
待機時間t1内に容器検出スイッチ24がOFFにならない場合(S306でY)には、制御部28ではユーザーが飲料容器をカップホルダ10に戻す可能性がないと判断して、加熱処理を停止する(S308)。
【0063】
一方、容器検出スイッチ24がOFFになっていた場合(S304でN)には、すなわち、ずっと容器収納部14に飲料容器が継続して収納されていた場合、あるいは一旦飲料容器が取り出されたが、待機時間t1以内に容器収納部14に戻された場合には、容器収納部温度Tが目標加熱温度T1以上となったか否かを判定する(S310)。
【0064】
ここで、容器収納部温度Tが目標加熱温度T1に到達していない場合には、加熱処理を継続する(S310でN→S304)。
【0065】
容器収納部温度Tが目標加熱温度T1に到達した場合には、加熱処理を停止して保温処理を開始する(S312)。
【0066】
以下、容器収納部14の温度Tが再加熱基準温度T3よりも小さくなったか否かを判定する(S314)。温度Tが再加熱基準温度T3以上であれば、加熱処理停止状態を維持し(S314でN)、温度Tが再加熱基準温度T3未満となると、ステップS302以下の加熱処理を再開する(S314でY)。このようにして、飲料容器が容器収納部14から抜き出されて待機時間t1を経過するまで、カップホルダ10内で加熱された飲料容器の保温を行う。
【0067】
一方、図5に示すステップS108において、容器収納部温度勾配ΔTが加熱基準温度勾配α未満である場合(S108でN)には、容器収納部温度勾配ΔTが冷却基準温度勾配β以下であるか否かを判定する(S110)。
【0068】
容器収納部温度勾配ΔTが冷却基準温度勾配β以下である場合(S110でY)、制御部28は冷たい飲料容器が容器収納部14に収容されたことにより、容器収納部14の温度Tが下降していると判断して、図8に示す冷却処理を開始する(S402)。
【0069】
次に、冷却処理開始後で容器検出スイッチ24がONになったか否かを判定する(S404)。容器検出スイッチ24がONになった場合(S404でY)には、制御部28では容器検出スイッチ24がONになったタイミングからの経過時間tが待機時間t1を経過するまで冷却処理を継続する(S406でN)。すなわち、飲料容器が容器収納部14から抜き出された場合でも、待機時間t1内に飲料容器が戻される可能性があるため、容器収納部14が温度上昇しないように、その間は冷却処理を継続する。
【0070】
待機時間t1内に容器検出スイッチ24がOFFにならない場合(S406でY)には、制御部28では飲料容器をカップホルダ10に戻す可能性がないと判断して、冷却処理を停止する(S408)。
【0071】
一方、容器検出スイッチ24がOFFになっていた場合(S404でN)には、すなわち、ずっと容器収納部14に飲料容器が収納されていた場合、あるいは一旦飲料容器が取り出されたが、待機時間t1以内に容器収納部14に戻された場合には、容器収納部温度Tが目標冷却温度T2未満となったか否かを判定する(S410)。
【0072】
ここで、容器収納部温度Tが目標冷却温度T2に到達していない場合(S410でN)には、ステップS404以下の処理を繰り返す。
【0073】
容器収納部温度Tが目標冷却温度T2に到達した場合(S410でY)には、冷却処理を停止して保冷処理を開始する(S412)。
【0074】
以下、容器収納部14の温度Tが再冷却基準温度T4よりも大きくなったか否かを判定する(S414)。温度Tが再冷却基準温度T4以下であれば、冷却停止状態を維持し(S414でN)、温度Tが再冷却基準温度T4よりも大きくなると、ステップS402以下の冷却処理を再開する(S414でY→S402)。このようにして、飲料容器が容器収納部14から抜き出されて、待機時間t1を経過するまで、カップホルダ10内で冷却された飲料容器の保冷を行う。
【0075】
一方、図5のステップS110において、容器収納部温度勾配ΔTが冷却基準温度勾配β以下でない場合、すなわち、容器収納部温度勾配ΔTが冷却基準温度勾配βよりも大きく、加熱基準温度勾配αよりも小さい場合には、加熱・冷却のいずれの処理も行わない(S110でN)。これは、容器収納部14の温度変化(容器収納部温度勾配ΔT)が微小な場合には、ユーザーが常温での収納を希望していることが考えられること、及び車室内等の雰囲気温度の微小な変化によって意図しない加熱、冷却が行われること(誤作動)を回避するためである。この場合には、いずれのLED70、72、74も点灯しないため、手動あるいは自動で加熱・冷却(保温・保冷)のいずれの処理も行われていないことがユーザーに認識される。
【0076】
ところで、自動制御で加熱又は冷却の処理を行っている場合でも、メインスイッチ52がONされた場合には、直ちに手動モード(S202〜S226)に移行する。すなわち、容器収納部14の温度T、および温度勾配ΔTの如何に拘わらず、モード切換スイッチ54で選択されたモードに従って、加熱処理または冷却処理を実行する。これは、ユーザーの要望を優先させるためである。
【0077】
このように、本実施形態に係るカップホルダ10では、サーミスタ26で検出された容器収納部14の温度Tから算出された容器収納部温度勾配ΔTに基づいて加熱・冷却を判断しているため、容器収納部14に収納された飲料容器の加熱・冷却および保温・保冷を自動的に行うことができる。したがって、ユーザーがカップホルダ10を使用する度にメインスイッチ52やモード切換スイッチ54を操作しなくても自動的に加熱・冷却処理されるため、ユーザーの使い勝手が向上する。
【0078】
また、容器収納部温度勾配ΔTのみに基づいて加熱・冷却の判断を自動的に行っているため、温度検出手段は容器収納部14に配設したサーミスタ26のみで済む。すなわち、温度検出手段(センサ)が一つで良いので、コストダウンを図ることができる。
【0079】
さらに、容器収納部温度勾配ΔTのみで加熱・冷却の判断を行っているため、外部温度(車室や外気温)の変動の影響を受けづらく、加熱・冷却の判断を精度良く行うことができる。
【0080】
さらにまた、容器収納部温度勾配ΔTが、冷却基準温度勾配βよりも大きく、加熱基準温度勾配αよりも小さい場合(β<ΔT<α)には、加熱・冷却のいずれも行わないことによって、ユーザーが常温保持を望んでいる場合に対応可能とした。また、外気温や車室内の微小な温度変化によって誤作動して加熱又は冷却処理を開始することを防止している。
【0081】
さらに、サーミスタ26は容器収納部14の底面側の凸部30内に埋め込まれているため、外部から視認することはできず、カップホルダ10の意匠性に優れる。
【0082】
またさらに、カップホルダ10では、加熱処理時に第1LED70、冷却処理時に第2LED72の点灯させているため、ユーザーが加熱処理、冷却処理が行われていることを容易に視認可能である。
【0083】
なお、本実施形態では、加熱・冷却処理時のみ第1LED70、第2LED72を点灯させる制御としたが、加熱・冷却処理時には第1LED70、第2LED72を点滅させ、目標加熱温度又は目標冷却温度に到達した後(保温・保冷処理時)には第1LED70、第2LED72を点灯させるようにしても良い。このように制御することによって、ユーザーに状態の差異を認識させることができる。
【0084】
なお、本実施形態では、手動モードにおいても保温、保冷する制御としたが、単純に加熱・冷却のみ行い、目標温度T1、T2に到達したら加熱・冷却を停止するだけの制御でも良い。
【0085】
また、容器収納部14の温度Tを検出するための温度検出手段としてサーミスタ26を用いたが、温度を検出できるものであればこれに限定するものではない。
【0086】
さらに、容器収納部14に対する容器収容状態を検出するために容器検出スイッチ24を用いたが、光センサ等のセンサ類でも良い。ただし、センサ類の使用を抑制するという本発明の趣旨からするとスイッチの方が望ましい。
【0087】
なお、本実施形態では、カップホルダに収納するのは、飲料容器(コップ、缶、瓶等)としたが、加熱・冷却する容器であれば飲料の容器に限定するものではない。
【0088】
また、本実施形態では、フロアコンソール12に1つのカップホルダ10が設けられているものについて説明したが、複数のカップホルダ10が設けてあるものにも適用可能である。
【符号の説明】
【0089】
10 カップホルダ
14 容器収納部
18 ペルチェ素子(熱電素子)
28 制御部
26 サーミスタ(温度測定手段)
T1 加熱基準温度勾配(基準温度勾配)
T2 冷却基準温度勾配(基準温度勾配)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8