(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記1ビット回転CORDICはm段階のCORDICを備え、前記マルチビットワードは前記1ビットデルタシグマ信号の全ての入力ビットに対して2m±1ビットである、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の測定デバイス。
前記周波数レジスタの周波数値を読み、前記周波数値をタイムスタンプとともにリモート位置に送信するように構成された通信サブシステムを更に含む、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の測定デバイス。
デルタシグマ変調器によりサンプリングされた信号をシステム周波数にロックする周波数ロックループであって、前記デルタシグマ変調器は、1ビットデルタシグマビットストリームを出力し、前記周波数ロックループは、位相ランプ信号及び前記1ビットデルタシグマ信号を受信し、同相の差信号及び直角位相の差信号を出力する1ビット回転CORDICを備え、前記差信号は1ビットデルタシグマ信号のそれぞれのビットについてマルチビットワードをそれぞれ有し、前記位相ランプ信号は、前記周波数ロックループにより維持される周波数値から導出される、周波数ロックループ。
前記差信号を受信し、前記位相ランプ信号と前記1ビットデルタシグマ信号に含まれるシステム周波数の位相との間の差に基づいて位相誤差信号を出力するように構成された、位相誤差計算機と、
前記周波数値によって決定される周期性を有する前記位相ランプ信号を生成する位相積算器とを更に備え、
前記周波数ロックループは、前記位相誤差信号に基づいて前記周波数値を調整して、前記周波数値を前記システム周波数にロックするように構成された、
請求項10に記載の周波数ロックループ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
同様の参照符号は、異なる図面において同一の構成要素を示すものとして使用される。
【0014】
以下において、図示を容易にするために、いくつかの簡略化がなされている。例えば、当業者であれば、多くの場合、電力測定デバイスは3相の電流及び電圧を測定するように構成することができるが、本明細書に記載の実施形態においては、簡略化のために単相の電圧及び/又は電流が示されていることが理解できるであろう。
【0015】
先ず、電力測定デバイス10の簡略化したブロック図を示す
図1について説明する。デバイス10は、電力量(1つの相の電圧又は電流)を測定し、1ビット信号又はビットストリーム14を生成するために、1ビットデルタシグマ(DS)変調器12を含む。DS変調器12のクロッキング、すなわち出力ビットストリームのビットレートは、本実施形態に要求される分解能及び周波数特性に応じて10kHzから6Ms/sの範囲に及ぶ。従来のDSコンバータは、デルタシグマ変調の高調波量子化ノイズ成分を取り除くために、出力にローパスフィルタを使用することが理解されよう。デバイス10は、そのようなローパスフィルタを使用せず、代わりに、後に検討及び記載するように、高周波成分を保有する。上述したように、簡略化のために単一のDS変調器12が
図1に示されている。実際の実施形態は、1つ以上の相の電流及び電圧信号を測定するために2以上のDS変調器を有する。三相3線式システムの場合、全ての三相の電流及び電圧を測定するために6つのDS変調器が使用される。同様に、三相4線システムの場合、全ての三相と中性相との電流及び電圧を測定するために8つのDS変調器が使用される。
【0016】
デバイス10は、外部時刻ソース信号を受信する時刻同期サブシステム16を更に有する。外部時刻ソース信号は、絶対時刻基準を提供し、例えばGPS又はIRIG−Bから取得される。いくつかの実施形態において、他の外部信号も絶対時刻基準として機能することができる。時刻同期サブシステム16は、クロック補正信号又は誤差信号18を提供する。
【0017】
デバイス10は信号プロセッサ20を有する。信号プロセッサ20は、ビットストリーム14を受信し、以下に詳述する信号解析及び測定を実行する。特に、信号プロセッサ20は、1ビットDS出力ビットストリーム14に直接処理するように実現される。信号プロセッサ20はクロック補正信号18を受信し、ローカル発振器(図示なし)を正確に補正する。ローカル発振器をGPS等の外部絶対時刻基準信号にロックするより、時刻同期サブシステム16は、クロック補正信号18の形式で補正因子を提供し、一実施形態においては、最大で100ppmの補正因子を提供する。信号プロセッサ20は、ビットストリーム信号14の周波数及び位相を測定するのに使用される周波数/位相ロックループに、クロック補正信号18から補正因子を取り込み、それによって、正確に同期したフェーザ(シンクロフェーザ)測定値を生成する。他の実施形態では、ローカル発振器は、より直接的に使用される。
【0018】
信号プロセッサ20は、電力システムの基本となる高精度のシンクロフェーザ測定値を生成する。また、プロセッサ20は、存在する(電力容量により選択される)高調波のフェーザを選択的に検出及び測定することができ、過渡検出を実行し、残留波形補足を行うこともできる。
【0019】
デバイス10は、測定データを保存するためにメモリ又はバッファ22を有することができる。また、デバイス10は、リモート位置30と通信するための通信サブシステム24を含むことができる。通信サブシステム24は、任意の様々な通信プロトコル及び物理層の接続を実装することができる。一実施形態において、通信サブシステム24は、イーサネット(例えば10/100又はギガビット)、GSM、802.11 WiFi、USB等を実装することができる。いくつかの実施形態において、通信サブシステム24は、2以上の通信プロトコルに従って動作することができる。
【0020】
図1は、通信サブシステム24を介して電力測定又は解析をリモート位置30へ送信するために使用されるデータフォーマットを示すものではない。データの圧縮及び暗号化が、信号プロセッサ20若しくは通信サブシステム24又はその両方によって実行される。いくつかの実施例において、データは、ハフマン符号化や算術符号化のような可変長符号化(VLC)等の適切な無損失符号化スキームを使用してエントロピ符号化される。
【0021】
信号プロセッサ20は、様々な態様で実施されうる。いくつかの実施形態において、信号プロセッサ20は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を用いて実施することができる。いくつかの実施形態において、プロセッサ20は、適切にプログラミングされた汎用マイクロコントローラ又はマイクロプロセッサを用いて実施することができる。更に他の実施形態において、信号プロセッサ20は、デジタル信号プロセッサを用いて実施することができる。更に他の実施形態において、プロセッサ20は、特定用途向け集積回路(ASIC)を用いて実施することができる。いくつかの実施形態において、前述の態様は、信号プロセッサ20の特定の動作又は特徴を実施する個別のアナログ及び/又はデジタル部品で補完することができる。以下の記載を考慮すると、実施可能な全範囲が当業者に明らかになるであろう。
【0022】
図1に示される簡略化された図では、デバッグ回路、内部クロックのローカル発振器、アイソレーションハードウェア、電源回路等、デバイス10に含まれる様々な部品又は構成要素が省略されていることが理解されるだろう。
【0023】
続いて、信号プロセッサ20の簡略化した例示ブロック図を示す
図2について説明する。1ビットDSビットストリーム14が信号プロセッサ20に入力される。信号プロセッサ20は、時刻補正信号18(
図1)及びローカルクロック信号(図示なし)も受信する
【0024】
信号プロセッサ20は、1ビット二重周波数ロックループ(FLL)及び位相ロックループ(PLL)32アーキテクチャを有する。1ビットFLL/PLL32は、周波数信号49及び位相信号48等のフェーザデータを出力する。多相システムの場合、複数の位相信号48が存在することが理解されるであろう。また、いくつかの実施例において、例えば変圧器信号から測定された1つの信号及び変流器信号から測定されたもう1つの信号のように、2つ以上の周波数信号49が出力されることが理解されるであろう。また、いくつかの実施形態において、2つ以上のFLLを有することが有効であることも知られている。例えば、測定デバイス10(
図1)は、システムへの接続前に新規発電源が正確な位相であることを確認するための同期チェックデバイスとして使用されるように構成することができる。
【0025】
信号プロセッサ20は更に1ビットRMS計算機34を有する。RMS計算機34は、入力されたDSビットストリームの二乗平均平方根の値を計算し、RMS信号42を生成する。
【0026】
また、信号プロセッサ20は、過渡キャプチャ及び位相跳躍検出部36も有する。過渡キャプチャ及び位相跳躍検出部36は、ビットストリーム14内で生じうる過渡電流を検出するように構成される。いくつかの実施形態において、過渡キャプチャ及び位相跳躍検出部36は、残留データ信号44を出力する。残留データ信号44は、デルタシグマ変調からのノイズデータを含む。この点について、過渡キャプチャ及び位相跳躍検出部36は、スペクトル選択により信号から「重要」又は「基本」成分を取り除き、残留成分を残すことができる。残留データ信号44は、これらの成分を含む。いくつかの実施形態において、過渡キャプチャ及び位相跳躍検出部36は、過渡検出信号46を出力することができる。過渡キャプチャ及び位相跳躍検出部36は、例えば、パワースペクトル解析又はノイズ信号の大きな振幅変化若しくは変動を検出する他の手段を使用して残留データを解析し、残留データに発生しうる過渡現象の検出に応答して過渡検出信号46を出力することにより、過渡検出信号を生成することができる。
【0027】
続いて、デルタシグマ変調後の電力信号のスペクトル、つまり1ビットDSビットストリーム14のうちの1つのスペクトルの簡略化した例示グラフ90を示す
図3について説明する。グラフ90は、電力システムの基本周波数が60Hz付近で発見されることを示しており、DS変調器が量子化ノイズを高周波数域に追いやるため、このシステムでは、高周波数域において、信号対雑音比が低くなるとともに、遭遇されるノイズが増加することを示している。従来の電力測定では、フェーザ計算及び解析前にノイズ成分を除去するためにローパスフィルタリングが行われてきたが、過渡データ及び他の関与しうるアーチファクトが、高周波数帯で発見されうる。そのため、本発明の一実施形態によれば、フェーザの計算及び解析は、ビットストリーム14を最初にローパスフィルタリングすることなく、1ビットのビットストリーム14に直接実行される。
【0028】
続いて、一実施例の信号プロセッサ20に係るより詳細なブロック図を示す
図4について説明する。本実施例における信号プロセッサ20は、離散ウェーブレット変換(DWT)又は離散フーリエ変換(DFT)等の変換プロセッサ50を含み、ビットストリーム14において発見されたスペクトル成分を示す変換領域信号52を生成する。変換プロセッサ50は、電力システム信号における検出された基本周波数を示す信号周波数56を生成するように構成することもできる。この信号周波数56は、1ビットFLL/PLL32に供給され、FLL/PLLに信号周波数値を提供する。これに応答して、1ビットFLL/PLL32は、変換プロセッサ50が変換を正確な信号周波数に調整するために変換処理のビンを中心に位置させることに使用することができる、周波数補正信号57を提供する。場合によっては、周波数補正信号57は、FLLによって測定された実際の周波数信号とすることができる。
【0029】
スペクトルセレクタ54は、変換領域信号52を受信し、特定の成分を選択するように構成することができる。選択された成分は、例えば、電力システムの基本周波数成分とすることができ、場合によっては、基本周波数の高調波とすることができる。スペクトルセレクタ54は、変換領域信号から選択する「有意」成分を特定するためのモデル又はアルゴリズムを有することができる。いくつかの例においては、これは予め定義されたモデルとすることができる。場合によっては、これは成分の大きさの変化に適応及び応答するものとすることができる。スペクトルセレクタ54は、選択された成分を、基本スペクトル成分信号58として出力することができる。スペクトルセレクタ54は、代わりに又は合わせて高調波信号60を出力することができる。高調波信号60は、高調波成分のスペクトルデータを含むことができるが、必ずしも基本電力システム周波数成分を含まなくてもよい。
【0030】
基本スペクトル成分信号58として出力された選択された成分は、続いて逆変換プロセッサ62を通過する。逆変換プロセッサ62は、選択された成分を、選択された成分を含む時間領域信号64に逆変換する。選択された成分を含む時間領域信号64は、続いて1ビットDSビットストリーム14から減算される。
図4に示されている実施形態において、減算は、1ビット信号を減算する1ビット減算器として実装することができる。場合によっては、時間領域信号64は、減算のためにマルチビットワード信号から1ビット信号に変換することができる。しかし他の実施形態においては、入力DSビットストリーム14は、マルチビットワード信号に変換され、減算はマルチビットワード減算器として実装することができる。
【0031】
しかし他の実施形態において、前記減算は、基本スペクトル成分信号58の変換領域信号52からの減算として実装することができる。得られる信号は、変換領域の過渡信号であり、この信号が逆変換プロセッサ62を通して逆変換され、このプロセスの出力は残留信号44となる。本実施形態では、時間領域操作を除外している。本実施形態の実行が成功するか否かは、使用されるDWT/IDWTペアに部分的に左右される。
【0032】
減算の結果、選択された成分がビットストリーム14から取り除かれ、残留信号44が残る。残留信号44は、高周波ノイズ成分と、ビットストリーム14からの任意の過渡信号又は他の特性信号等のアーチファクトを含んでいる。過渡電流が残留信号44に存在するか否かを識別するために、電力検出器66を使用することができる。電力検出器66は、スペクトル内の短時間であるが有意の電力の変化を識別することを試行できる。場合によっては、電力検出器66は、変換プロセッサからのデータ52を受信することができる(図示なし)。電力検出器66は、過渡検出信号46を出力することができる。いくつかの実施形態においては、過渡検出信号は、残留信号44内の残留データのキャプチャ及びレポートを開始することができる。そうでない場合には、残留信号44は、破棄されるか、又は、必要に応じて、後の解析のために一時的に保存することができる。
【0033】
1ビットFLL/PLL32は、位相跳躍検出器70に位相情報74を提供する。位相跳躍検出器70は、1ビットのビットストリーム14も受信し、一定時間内に予め定められた閾値よりも大きい位相の変化があったことを検出した場合には、位相跳躍検出信号72を生成する。1ビットFLL/PLL32が、FLL/PLLのフィルタ定数の調整等、位相跳躍エラーを回避するための調整を行うことができるように、位相跳躍検出信号72は1ビットFLL/PLL32にも入力される。一実施形態において、フィルタ定数は、ロック又は再ロックをすぐに達成できるように調整され、その後、一度ロックされたループ帯域幅を狭めることにより位相ノイズ(位相測定精度)を低減するように構成されている。1つの例示的実施形態において(図示なし)、位相跳躍検出器70は、1ビットDSビットストリーム14に適用される離散ヒルベルト変換等の変換オペレータと、1ビットFLL/PLL32からの位相情報と変換オペレータからの1ビットDSビットストリーム14の変換位相データとを比較する比較器とを含む。
【0034】
上述のように、周波数信号49及び位相信号48等のフェーザデータは、フィルタされていない1ビットDSビットストリーム14に作用する1ビットFLL/PLL32を使用して得られる。1ビットDSビットストリーム14は、一般に高いサンプリング周波数でクロックされる。一実施例では、サンプリング周波数は約6メガビット/秒である。正確なフェーザデータを受信するために、1ビットFLL/PLL32は、高速単一ビット計算を使用して実行される。一実施形態において、1ビットFLL/PLL32は、ダイレクトデジタルシンセサイザ(DDS)(図示なし)を使用して実行される。他の実施形態において、1ビットFLL/PLL32は、座標回転デジタルコンピュータ(CORDIC)ベースアーキテクチャで実行される。CORDICアーキテクチャは、ゲートをほとんど必要とせず、簡易な演算処理で足りるという点で有効である。
【0035】
CORDICは任意の角度のサイン又はコサインを計算するのに有用であることを想起されたい。特に、CORDIC法は、次の式を実現するために使用することができる。
x
m = K[x
0cos(z
0) - y
0sin(z
0)] (1)
y
m = K[y
0cos(z
0) + x
0sin(z
0)] (2)
【0036】
y
0がゼロの場合(すなわち、以下説明するように、x
0がx軸上のベクトルを規定する場合)、上記式は次のようになる。
x
m = Kx
0cos(z
0) (3)
y
m = Kx
0sin(z
0) (4)
【0037】
上式において、x
0及びy
0は、入力信号又はベクトルの直交座標であり、z
0は、回転の方向によって±1の符号が付される角度であり、Kは定数である。これは、x
0、y
0座標における入力ベクトルr
0を新しい座標x
m、y
mへ角度z
0だけ回転させること(及びK倍にすること)である。CORDICを実行することは、必要とされる精度でz
0に近づくまで、つまり、z
mの絶対値が必要とされる精度の角度よりも小さくなるまで、漸次小さくなる角度で反復回転させることである。CORDICの利点の1つは、回転角z
iがtan(z
i) = ±2
iに制限される場合、前記回転をシフト及び加算演算で達成できる点にある。mは、段階又は反復の回数を示すものであることに留意されたい。
【0038】
続いて、1ビットFLL/PLL32のCORDICベースの実施形態の簡略化したブロック図を示す
図5について説明する。入力信号の1つは、基準信号x
r(t)として作用し、他の信号(三相4線システムでは、他の7つの信号)は、位相信号x
p(t)として指定される。基本周波数測定は、基準信号x
r(t)に関して行われる一方、位相オフセットは、位相信号x
p(t)に対して決定される。図示しやすくするために、1つの位相信号x
p(t)のみが
図5に示されている。
【0039】
DS変調器12は、入力信号を1ビットDSビットストリーム14に変換する。基準信号x
r(t)に対する1ビットDSビットストリーム14は、回転CORDIC102に入力される。回転CORDIC102は入力角z
0を受信し、これは本例においては、位相積算器104により生成されるランプ関数である。回転CORDIC102は、各入力ビットx
0に対して、同相のデジタルワードx
mを出力し、x
mは、約2mビットの精度を有するマルチビットワードである。1ビット回転CORDIC102の例示的実施形態の更なる詳細を、以下記載する。
【0040】
1ビット回転CORDIC102の出力は、以下の2つの信号となる。
x
m = Kx
0cos(z
0) (5)
y
m = Kx
0sin(z
0) (6)
【0041】
この場合、x
0は、1ビットDSビットストリームであり、これは、電力システム信号(数学的説明のために、あらゆる高調波及びノイズを無視する)を示すDSビットストリームである。
【0042】
また、1ビットFLL/PLL32の位相積算器104によって生成される位相ランプは、測定された電力システム基本周波数(最初は60.0Hzで提供されるが、次第に実際の周波数にロックする)を含む周波数レジスタ106によって動作される点に留意されたい。換言すると、角度z
0は、x
0で発見された電力システム周波数に基づいている。
【0043】
従って、回転CORDICの出力は、以下の信号となる。
x
m= Kcos(z
0) * asin(ωt + φ) (7)
y
m = Ksin(z
0) * asin(ωt + φ) (8)
【0044】
このミキシングは、z
0 - (ωt + φ)で半振幅の差信号となり、z
0 + (ωt + φ)で半振幅の加算信号となることが理解されるだろう。z
0がωtに近づくと、差信号は本質的にDC信号の組となる一方、加算信号はAC信号となる。従って、ここでは差信号に注目するため、x
m及びy
mはローパスフィルタ108及び110を通過し、フィルタ処理された差信号はベクトルCORDIC112に入力される。
【0045】
ベクトルCORDIC112は回転CORDIC102に類似するが、座標で定義される入力ベクトルを新規の座標に回転させる代わりに、ベクトルCORDIC112は、入力ベクトルをx軸に回転させ、当該回転を生じさせるのに必要な角度を出力する。ベクトルCORDIC112から出力される角度z
mは、次の式により与えられる。
z
m= z
0' + tan
-1(y
0'/x
0') (9)
【0046】
明確にするために、入力信号はx
0'及びy
0'とする。入力z
0'は任意の一定角であり、一実施形態では0である。他の一実施形態、例えばアークタンジェントの比が1にロックされることが想定される場合、π/4と設定される。
【0047】
ローパスフィルタ処理されたベクトルCORDIC112への入力信号は、基準発振器への入力信号の(x, y)DC射影であることを想起されたい。入力信号及び基準発振器は、本来はサイン曲線である。従って、位相オフセットx
0'及びy
0'は、それぞれコサイン関数及びサイン関数のようであると考えることができる。これらの比は、タンジェント関数に換算することができる。その結果、式(9)の方程式は、以下のようにすることができる。
z
m = z
0' + z
0 - (ωt + φ) (10)
【0048】
換言すれば、ベクトルCORDIC112の出力は、位相誤差信号114である。位相誤差信号は、周波数レジスタ106に入力され、そこに含まれる基本周波数を調整し、電力システムの周波数にロックする。
【0049】
前述のように、周波数レジスタ106は、加算ループを介して基本周波数を位相積算器104に提供し、z
0を提供する位相ランプを生成する数値制御発振器を形成する。時刻補正信号116は、数値制御発振器に加えられ、ローカル発振器の誤差を補正する。時刻補正信号116は、例えばGPS又はIRIG−B信号等の外部時刻源から生じるものとすることができる。時刻補正信号116は、位相積算器104への入力、すなわち積算器104へのステップ幅入力に加えることができ、又は、周波数レジスタ106に直接入力することができる。さらに他の実施形態において、時刻補正信号116が積算器104への入力ステップ幅として使用される前に、時刻補正信号116に1を加えたものに周波数レジスタ106の出力を乗じることができる。
【0050】
1ビットFLL/PLL32のこの部分は、一度ロックされると、周波数レジスタ106に発見される電力システムの基本周波数への周波数ロックを提供することが理解されるだろう。回転CORDIC102は、1ビット入力信号で動作し、入力信号x
0の各ビットに対して約2mの出力ワードを生成する。2つの例示的実施形態において、m-段階の回転CORDIC102は、サンプリング周波数f
sのm倍でCORDICをクロックすることにより実行することができ、又は、CORDICをアンロールし、CORDICをサンプリング周波数に近い値でクロックするが、mビットの遅れを許容することにより実行することもできる。後者の実施例について、以下、より詳細に示すが、本発明はアンロールの構成に限定されるものではない。
【0051】
なおも
図5を参照すると、位相信号x
p(t)は、類似する回路に入力される。特に、位相信号x
p(t)は、1ビット入力信号x
0として回転CORDIC122に提供される。回転CORDIC122は、同一のランプ関数z
0を位相積算器104から受信するが、位相は、位相オフセットレジスタ128からの値により調整される。回転CORDIC122の出力は、LPF125及び124でローパスフィルタ処理され、フィルタ処理された差信号はベクトルCORDIC126に入力される。ベクトルCORDIC126は、位相オフセット補正信号130を供給する。位相オフセット補正信号130は、位相信号x
p(t)と基準信号x
r(t)との間の位相差を含む位相オフセットレジスタ128に提供される。
【0052】
本記載から、ベクトルCORDIC112及び126は、回転CORDIC102及び122と同一の速度で動作する必要がないことが理解されるだろう。実際、いくつかの例示的実施形態において、ベクトルCORDIC112及び126を実行するハードウェアは、入力信号間で共有することができ、これは、ベクトルCORDIC112及び126の単一のハードウェアのみを実装する必要があるだけであることを意味する。ハードウェアのクロッキングの速度及びサンプリング周波数f
s次第によっては、他の実施形態において、追加のハードウェアを共有することも可能である。
【0053】
一実施形態において、ベクトルCORDIC112及び126は、入力される差信号に基づいて位相差を決定する代替の回路で置き換えることができる。例えば、1つの代替実施形態において、ベクトルCORDIC112は、除算及びアークタンジェントの区分的線形補間で置き換えることができる。本発明は、この機能のためのベクトルCORDICの使用に限定されない。とはいうものの、実施形態によっては、ベクトルCORDIC112の使用により除算を除外するのが有利であることが認識されよう。
【0054】
続いて、1ビット回転CORDIC200の1つの例示的実施形態を図式的に示す
図6について説明する。本例では、明確にするため、回転CORDIC200のx側のみが示されている。上述のように、回転CORDIC200は、m回の段階を有し、各入力ビットに対して約2mビットの精度を有する出力ワードとなる。これによって、フィルタ処理されてない1ビットDS信号を使用した周波数及び位相ロック並びに位相測定が著しく正確になる。後述するように、一実施形態において、シフト演算及び加算演算を使用するハードウェアにおいて、実装が効率的に実現される。
【0055】
CORDIC200への入力は、1ビットDS信号14(
図5)からのビットであり、x
0として示されている。x
1の値は、y
0及びz
0に基づく。特に、任意のx
iの値は、次の式によって与えられる。
x
i+1 = x
i - y
i・d
i・2
-i (11)
但し、z
i < 0のときd
i = -1で、それ以外の場合d
i = +1である。
【0056】
各z
iは次の式によって計算される。
z
i+1 = z
i - d
i・tan
-1(2
-i) (12)
【0057】
項-d
i・tan
-1(2
-i)のためのルックアップテーブルを使用すると、これらの値を実現する残りの演算は、加算及びシフト演算である。さらに、第1段階における入力が単一ビットであるため、段階に従って長さ(精度)が大きくなるので、このプロセスはハードウェア効率が良く、そのため、計算の各段階において、フル出力ワードの実行は必要とされないことを意味する。
【0058】
図6に示されている回転CORDIC200の実施形態は、アンロールCORDICである。値x
0は、ある意味で、理論上符号ビットと考えることができる。同様に、値y
0は(ゼロに設定される)、符号付きゼロと考えることができる。
【0059】
従って、回転CORDIC200は、簡単な2進加算及びシフト演算を使用して実装することができる。CORDIC200のm段階の各段階は、CORDICの並行なy側からの値を所定の桁数だけビットシフトさせ、z
iがゼロ以下であるか否かに応じて、その段階におけるx
iの値からy側からの値を加算又は減算する。並行演算において、z
iの値は、各段階において、それ以前の値及び項-d
i・tan
-1(2
-i)のルックアップテーブルの値に基づいて決定される。ルックアップテーブルの値は、必要に応じて、各段階において固定であり、必要に応じハードワイヤド構成とすることができる。
【0060】
CORDIC200に係る演算は、2進加算及びシフト演算を使用しており、比較的単純に実施されることが理解されるであろう。一実施形態において、CORDIC200は、フィールドプログラマブルゲートアレイを使用して実装される。このような一実施形態においては、回転CORDIC200は、2mビットの出力ワードを生成するm段階のx及びyの演算に対して、全体で約m
2-m+2の加算器のみを使用して実施することができる。
【0061】
上述の1ビット回転CORDIC200の実施形態では、全段階においてフルワードの精度を維持するというよりも、ワード長が長くなるにつれて精度が高まるということが理解されるであろう。従って、第1段階における入力が単一ビットであるため、この段階では、CORDICは、単一ビットの精度を維持するだけでよい。
【0062】
前述の電力測定デバイスは、部分的にはハードウェアで実行され、部分的にはソフトウェアで実行されることが理解されるであろう。いくつかの実施形態は、1つ以上のフィールドプログラムゲートアレイ(FPGA)を含む。いくつかの実施形態は、1つ以上のマイクロプロセッサ又はマイクロコントローラを含む。いくつかの実施形態は、1つ以上の特定用途向け集積回路(ASIC)を含む。特定のハードウェア構成の選択は、コスト、スピード、動作環境等に基づくものとすることができる。そのような構成の選択及びプログラミングは、本技術分野における通常の知識を有する者が、本明細書における詳細な説明で理解される範囲において行うことができる。
【0063】
更に他の形態において、本発明は、プロセッサにより実行されるときに、プロセッサに、上記方法の任意の1つ以上を実行させるコンピュータ実行可能命令を格納するコンピュータ可読メディアを開示するものである。
【0064】
記載された実施形態について、ある程度の変形や修正が可能である。従って、上記説明した実施形態は、限定的なものではなく、例示的なものであると理解される。