(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
抵抗膜式のタッチパネルは、相互に対向して一定の距離離した2枚の抵抗膜によって構成される。そして、一方の抵抗膜にはX方向に対向した両端に一対の電極を備え、他方の抵抗膜にはY方向に対向した両端に一対の電極を備えている。
図4は、一般的な抵抗膜式のタッチパネルにおいて、タッチパネルが押されたことを検出する機構を示した図である。
図4において、左右方向をX方向、上下方向とY方向とする。タッチパネルは、第1の抵抗膜10と第2の抵抗膜20とが前後に重ねられた構造とされている。また、第1の抵抗膜10は、X方向に離間した両端部に電極(12,14)を備えており、一方の電極である電極14に電圧源17が接続されている。また、第1の抵抗膜10のいずれかの箇所が打点位置Pとして指等で押されたときには、打点位置Pと、両端部の電極(12,14)とのそれぞれの間に抵抗成分16が発生する。
【0003】
また、第2の抵抗膜20には、Y方向に離間した両端部に電極(22,24)を備えており、一方の電極24には、A/D変換器30が接続されている。また、A/D変換器30の入力部は、抵抗34を介して接地されている。また、第1の抵抗膜10のいずれかの箇所が打点位置Pとして指等で押されたときには、打点位置Pと、両端部の電極(22,24)とのそれぞれの間に抵抗成分26が発生する。
このように構成されたタッチパネルにおいて、電圧源17により第1の抵抗膜10の電極14に電圧を印加した状態で、第1の抵抗膜10のいずれかの箇所を打点位置Pとして指等で押されたときには、第2の抵抗膜20に電圧が誘起されることによって、タッチパネルが押されたことを検出する。
【0004】
タッチパネルが押されたことを検出すると、次に押された箇所の座標の検出を行う。座標の検出にあたっては、第1の抵抗膜10や第2の抵抗膜20の両端の電極に電圧を印加して行うが、その際に印加する電圧は、A/D変換器が取り込める範囲内の所定の値とすることが一般的であった。
従来技術として、特許文献1には、タッチパネルの駆動装置として第1抵抗層と第2抵抗層とに印加する電圧値を制御する技術が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、従来のタッチパネルにおける座標検出の方法について説明する。
図5は、従来のタッチパネルにおける横方向の座標検出する機構を示した図である。第1の抵抗膜10の両端部の電極(12,14)に、電圧源17が接続され、電極14に電圧源17による電圧が印加され、他方の電極12には0Vが印加される。そして、第1の抵抗膜10における打点位置Pの電圧が、第2の抵抗膜20の両端部の電極(22,24)のいずれかに誘起され、それをA/D変換器30によってアナログデジタル変換することにより電圧値を測定して、押された打点位置PのX座標を求める。
【0013】
次に、再度第1の抵抗膜10の電極14に電圧を印加し、第2の抵抗膜20の電極(22,24)に電圧が誘起されることにより、タッチパネルが押されていることを検出する。タッチパネルが押されていない場合には検出を最初からやり直す。
【0014】
タッチパネルが引き続き押されている場合には、次に押された箇所の縦方向の検出を行う。
図6は、従来のタッチパネルにおける縦方向の座標の検出する機構を示した図である。第2の抵抗膜20の両端部の電極(22,24)に、電圧源27が接続され、電極24に電圧源27による電圧が印加され、他方の電極22には0Vが印加される。そして、第2の抵抗膜20における打点位置Pの電圧が、第1の抵抗膜10の両端部の電極(12,14)のいずれかに誘起され、それをA/D変換器40によってアナログデジタル変換することにより電圧値を測定して、押された打点位置PのY座標を求める。
【0015】
最後に、第1の抵抗膜10の電極(12,14)に電圧を印加し、第2の抵抗膜20に電圧が誘起されることにより、タッチパネルが押されていることを検出して、求められた打点位置PのX座標、Y座標を有効な座標とする。押されていない場合には、求められた打点位置PのX座標、Y座標を無効として、検出を最初からやり直す。
【0016】
図7は、従来技術のタッチパネルにおける打点位置の検出の流れを示すフローチャートである。以下ステップ毎に説明する。
・(ステップSB1)第1の抵抗膜の電極に電圧V1を印加する。ここで、電圧V1は、電圧検出回路であるA/D変換器で受けられる最大電圧とする。
・(ステップSB2)第2の抵抗膜の電極において電圧が検出されたかどうかを判定する。検出された場合(YES)はステップSB3に進み、検出されない場合(NO)はステップSB1に戻る。
・(ステップSB3)第1の抵抗膜の両端部の電極のうちの一方の電極に電圧V1を、他方の電極に電圧V2を印加する。ここで、電圧V2は、電圧検出回路であるA/D変換器で受けられる最小電圧とする。
【0017】
・(ステップSB4)第2の抵抗膜の両端部の電極のうちの一方の電極の電圧値を検出する。検出した電圧値をVdxとする。
・(ステップSB5)第1の抵抗膜の電極に電圧V1を印加する。
・(ステップSB6)第2の抵抗膜の電極において電圧が検出されたかどうかを判定する。検出された場合(YES)はステップSB7に進み、検出されない場合(NO)はステップSB1に戻る。
【0018】
・(ステップSB7)第2の抵抗膜の両端部の電極のうちの一方の電極に電圧V1を、他方の電極に電圧V2を印加する。
・(ステップSB8)第1の抵抗膜の両端部の電極のうちの一方の電極の電圧値を検出する。検出した電圧値をVdyとする。
・(ステップSB9)第1の抵抗膜の電極に電圧V1を印加する。
【0019】
・(ステップSB10)第2の抵抗膜の電極において電圧が検出されたかどうかを判定する。検出された場合(YES)はステップSB11に進み、検出されない場合(NO)はステップSB1に戻る。
・(ステップSB11)検出した電圧値Vdxの値から打点位置PのX座標Xaを算出する。
・(ステップSB12)検出した電圧値Vdyの値から打点位置PのY座標Yaを算出する。
【0020】
しかしながら、これらの従来技術においては、座標検出時の抵抗膜の両端の電極に印加する電圧が、A/D変換器で受けられる最大電圧と最小電圧との差とされているため、座標の検出精度がA/D変換器で受けられる最大電圧と最小電圧との差によって制限を受けるおそれがあった。
【0021】
これらを踏まえて、以下、本発明の一実施形態を図面と共に説明する。
タッチパネルが押されたことを検出する機構については、
図4に示された従来の技術における検出する機構と同様である。
【0022】
タッチパネルが押されたことを検出すると、次に押された箇所の座標の検出を行う。
図1は、本実施形態のタッチパネルにおける横方向の座標検出する機構を示した図である。
図5に示された従来技術と異なる点は、第1の抵抗膜10の両端部の電極(12,14)に印加する電圧の値を変更可能な可変電圧源18とした点である。
そして、最初にタッチパネルが押されたことを検出した後、第1の抵抗膜10の両端部の電極(12,14)の一方の電極14に、可変電圧源18によりA/D変換器30で受けることのできる最大の電圧値V1を印加し、他方の電極12にA/D変換器30で受けることのできる最小の電圧値V2を印加する。
【0023】
こうして、タッチパネルにおける打点位置Pの位置を、第2の抵抗膜の両端の電極のいずれかに誘起される電圧をA/D変換することによりいったん測定する。そのときの電圧値をVd1xとする。
測定された電圧値Vd1xから、次に第1の抵抗膜10の両端の電極(12,14)に印加する電圧を算出する。一方の電極14にはV11
xとして、Vd1x+Va×(V1−Vd1x)/(V1−V2)として算出される電圧を印加し、他方の電極にはV12xとして、Vd1x−Va×
(Vd1x
−V2)/(V1−V2)として検出される電圧を印加する。ここで、Vaはタッチパネルの抵抗膜の両端の電極に印加することができる最大電圧とする。
【0024】
そして、その打点位置Pを押圧したときに、第2の抵抗膜20の電極に誘起される電圧をA/D変換することにより測定する。そのときの電圧値をVd2xとする。
次に、再度第1の抵抗膜10の電極14に電圧を印加し、第2の抵抗膜20の電極(22,24)に電圧が誘起されることにより、タッチパネルが押されていることを検出する。タッチパネルが押されていない場合には検出を最初からやり直す。
【0025】
タッチパネルが引き続き押されている場合には、次に押された箇所の縦方向の検出を行う。
図2は、本実施形態のタッチパネルにおける縦方向の座標の検出する機構を示した図である。
図6に示された従来技術と異なる点は、第2の抵抗膜20の両端部の電極(22,24)に印加する電圧の値を変更可能な可変電圧源28とした点である。
【0026】
第2の抵抗膜20の両端部の電極(22,24)の一方に、可変電圧源28によりA/D変換器30で受けることのできる最大の電圧値V1を印加し、他方の電極にA/D変換器30で受けることのできる最小の電圧値V2を印加する。
【0027】
こうして、タッチパネルにおける打点位置Pの位置を、第1の抵抗膜の両端の電極のいずれかに誘起される電圧をA/D変換することによりいったん測定する。そのときの電圧値をVd1yとする。
測定された電圧値Vd1yから、次に第2の抵抗膜10の両端の電極(22,24)に印加する電圧を算出する。一方の電極にはV11yとして、Vd1
y+Va×(V1−Vd1)/(V1−V2)として算出される電圧を印加し、他方の電極にはV12yとして、Vd1
y−Va×
(Vd1
y−V2)/(V1−V2)として検出される電圧を印加する。ここで、Vaはタッチパネルの抵抗膜の両端の電極に印加することができる最大電圧とする。
【0028】
そして、その打点位置Pを押圧したときに、第1の抵抗膜10の電極に誘起される電圧をA/D変換することにより測定する。そのときの電圧値をVd2yとする。
最後に、第1の抵抗膜10の電極(12,14)に電圧を印加し、第2の抵抗膜20に電圧が誘起されることにより、タッチパネルが押されていることを検出して、求められた打点位置PのX座標、Y座標を有効な座標とする。押されていない場合には、求められた打点位置PのX座標、Y座標を無効として、検出を最初からやり直す。タッチパネルが押されていることを検出した場合には、Vd2x、Vd2yから求められた打点位置PのX座標、Y座標を有効な座標とする。
【0029】
図3は、本実施形態のタッチパネルにおける打点位置の検出の流れを示すフローチャートである。以下ステップ毎に説明する。
・(ステップSA1)第1の抵抗膜の電極に電圧V1を印加する。ここで、電圧V1は、電圧検出回路であるA/D変換器で受けられる最大電圧とする。
・(ステップSA2)第2の抵抗膜の電極において電圧が検出されたかどうかを判定する。検出された場合(YES)はステップSA3に進み、検出されない場合(NO)はステップSA1に戻る。
・(ステップSA3)第1の抵抗膜の両端部の電極のうちの一方の電極に電圧V1を、他方の電極に電圧V2を印加する。ここで、電圧V2は、電圧検出回路であるA/D変換器で受けられる最小電圧とする。
【0030】
・(ステップSA4)第2の抵抗膜の両端部の電極のうちの一方の電極の電圧値を検出する。検出した電圧値をVd1xとする。
・(ステップSA5)第1の抵抗膜の電極の一方にV11x、他方にV12xを印加する。ここで、V11x=Vd1
x+Va×(V1−Vd1
x)/(V1−V2)、V12x=Vd1
x−Va×
(Vd1
x−V2)/(V1−V2)とする。
・(ステップSA6)第1の抵抗膜の電極にV11x及びV12xを印加した状態で、第2の抵抗膜のいずれかの電極に検出される電圧を検出電圧Vd2xとして検出する。
【0031】
・(ステップSA7)第1の抵抗膜の電極に電圧V1を印加する。
・(ステップSA8)第2の抵抗膜の電極において電圧が検出されたかどうかを判定する。検出された場合(YES)はステップSA9に進み、検出されない場合(NO)はステップSA1に戻る。
・(ステップSA9)第2の抵抗膜の両端部の電極のうちの一方の電極に電圧V1を、他方の電極に電圧V2を印加する。
【0032】
・(ステップSA10)第1の抵抗膜の両端部の電極のうちの一方の電極の電圧値を検出する。検出した電圧値をVd1yとする。
・(ステップSA11)第2の抵抗膜の電極の一方にV11y、他方にV12yを印加する。ここで、V11y=Vd1y+Va×(V1−Vd1y)/(V1−V2)、V12y=Vd1y−Va×
(Vd1y
−V2)/(V1−V2)とする。
・(ステップSA12)第1の抵抗膜の電極にV11y及びV12yを印加した状態で、第2の抵抗膜のいずれかの電極に検出される電圧を検出電圧Vd2yとして検出する。
【0033】
・(ステップSA13)第1の抵抗膜の電極に電圧V1を印加する。
・(ステップSA14)第2の抵抗膜の電極において電圧が検出されたかどうかを判定する。検出された場合(YES)はステップSA15に進み、検出されない場合(NO)はステップSA1に戻る。
・(ステップSA15)検出した電圧値Vd2xの値から打点位置PのX座標Xaを算出する。
・(ステップSA16)検出した電圧値Vd2yの値から打点位置PのY座標Yaを算出する。
【0034】
このように構成した本実施形態において、一般的にA/D変換器30が受けることのできる電圧の値は約5V程度であるのに対し、抵抗膜の両端で受けることのできる電圧の値は30〜40V程度であるため、従来A/D変換器30で受けることのできる電圧の値を考慮して、座標測定時に抵抗膜の両端に印加する電圧の値をA/D変換器30が受けることのできる電圧の値に制限していたものを、抵抗膜の両端で受けることのできる電圧の値まで拡大することが可能となる。
【0035】
また、その際に、いったん抵抗膜の両端にA/D変換器30が受けることのできる電圧に基づいて電圧を印加して打点位置Pにおける抵抗膜の電極に誘起される電圧値を測定して、その次に座標の検出精度を上げて測定する際には、抵抗膜の両端に印加する電圧を、抵抗膜の両端に印加することができる電圧に拡大しつつ、その両端に印加する電圧の値を、打点位置Pに対して最初に求めた電圧の値と概ね一致するように算出して印加しているため、検出精度を上げて測定する際にも、抵抗膜の電極において誘起される電圧の値が、A/D変換器30が受けることのできない電圧値になってしまうおそれなしに、抵抗膜の両端の電極に印加する電圧の値を拡大して、検出の精度を上げることが可能となる。
【0036】
なお、本実施形態においては、タッチパネルの表面に押圧していることを検出する際に印加する電圧値と、最初に打点位置Pの検出電圧を求める際に抵抗膜に印加する電圧値をいずれもA/D変換器30で受けられる最大の電圧値V1を印加するようにしているが、必ずしもV1とする必要はなく、両者の電圧値を一致させるようにする必要もない。
【0037】
また、本実施形態においては、打点位置PのX座標、Y座標を求める際の、最初に測定するときの両端部の電極に印加する電圧値として、A/D変換器30で受けられる最大電圧V1と最小電圧V2としているが、これについてもA/D変換器30で受けられる電圧の範囲内であれば適宜設定することが可能であり、X座標を求めるときと、Y座標を求めるときの電圧値を異ならせるようにすることも可能である。
【0038】
さらに、本実施形態においては、X座標、Y座標をそれぞれ精度を上げて測定する際の算出において用いられるVaの値として、タッチパネルの抵抗膜の両端の電極に印加することができる最大電圧の値を用いているが、これについても、タッチパネルの抵抗膜の両端に印加することができる電圧の範囲内において、適宜設定することが可能であり、X座標を求める際と、Y座標を求める際で異なる電圧値を用いるようにすることも可能である。