特許第6068387号(P6068387)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6068387
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】昇降式信号灯を備えた射出成形機
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/17 20060101AFI20170116BHJP
【FI】
   B29C45/17
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-81392(P2014-81392)
(22)【出願日】2014年4月10日
(65)【公開番号】特開2015-202571(P2015-202571A)
(43)【公開日】2015年11月16日
【審査請求日】2015年7月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】星川 新太郎
【審査官】 長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−055015(JP,A)
【文献】 特開2003−177817(JP,A)
【文献】 特開2004−232372(JP,A)
【文献】 特開2002−352386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
G05B 23/02
F21V 21/36−21/38
A47B 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形機の稼動状態を表示可能な信号灯を備えた射出成形機であって、
前記信号灯を昇降させる昇降部を備え、
前記昇降部の昇降動作によって前記信号灯の高さを変化させることを特徴とした信号灯を備えた射出成形機であり、
前記信号灯への干渉物の接近を検知する検知手段を備え、前記検知手段が干渉物の接近を検知すると昇降部材を下降し、干渉物の接近を検知していない状態では昇降部を上昇させることを特徴とした信号灯を備えた射出成形機。
【請求項2】
前記昇降部は、ワイヤとワイヤ巻取部と昇降部材と摺動支持部材を備え、
前記ワイヤの一端が前記ワイヤ巻取部に固定され、
前記ワイヤの他端が前記昇降部材に固定され、
前記信号灯が前記昇降部材に固定され、
前記昇降部材が前記摺動支持部材にガイドされて昇降可能に取り付けられ、
前記ワイヤ巻取部のワイヤ巻取り動作により前記昇降部材が前記摺動支持部材にガイドされつつ昇降することを特徴とする請求項1に記載の信号灯を備えた射出成形機。
【請求項3】
前記ワイヤ巻取部は駆動装置を備え、駆動装置によって前記ワイヤ巻取り動作を行うことを特徴とする請求項2に記載の信号灯を備えた射出成形機。
【請求項4】
前記射出成形機は前記駆動装置を制御してワイヤ巻取り動作を制御するワイヤ巻取り制御部を備えることを特徴とする請求項3に記載の信号灯を備えた射出成形機。
【請求項5】
前記ワイヤ巻取り制御部は射出成形機の稼動状態に応じた高さに前記昇降部材を昇降させることを特徴とした請求項4に記載の信号灯を備えた射出成形機。
【請求項6】
前記射出成形機は前記信号灯の高さ位置を検出する高さ位置検出部を備えることを特徴とする請求項4または5に記載の信号灯を備えた射出成形機。
【請求項7】
前記信号灯は、射出成形機の稼動状態を、点灯、点滅させる灯火の色や、点灯・点滅時間や点灯・点滅パターンを変化させることにより表示可能であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の信号灯を備えた射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は射出成形機に関し、特に、昇降式信号灯を備えた射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機には、射出成形機の状態を作業者や監督者に知らせるための信号灯が備わっている。また、この信号灯は、視認性が重視されるため、射出成形機の上面に設置されることが多く、さらに、作業者がより遠くから視認できるよう信号灯の発光部を射出成形機上面からより高い位置に設置する場合がある。一方、射出成形機が設置されている場所では、射出成形機で用いる金型等を運搬するために、クレーンなどの運搬装置が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−141539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
信号灯の設置場所が、クレーンなどの運搬経路上にある場合、頻繁に通過する運搬手段や運搬物との干渉を避けるため、信号灯の設置高さを十分に確保できないことがある。
この問題を解決するためには、信号灯に干渉する干渉物が通過のたびに、信号灯を取り外すことも可能であるが、手間が掛かる。また、射出成形機の設置場所を変更する場合に、信号灯と設備などの干渉を避けるために、信号灯の高さを変更する工事が必要となることがある。また、射出成形機の操作画面を信号灯代わりに使う技術(特許文献1参照)が公知であるが、射出成形機から遠い位置から、射出成形機の稼動状況の視認には不向きである。
【0005】
そこで、本発明の目的は、信号灯を備える射出成形機において、信号灯の高さを手動または自動で自在に昇降できる構造とし、信号灯と周囲の物との干渉を回避し、且つ、信号灯に必要な高さを確保することが可能な信号灯を備えた射出成形機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の射出成形機は、信号灯を昇降可能とする昇降部を信号灯に備え、手動または自動で昇降可能な構造を有することを特徴とする。
【0007】
本願の請求項1に係る発明は、射出成形機の稼動状態を表示可能な信号灯を備えた射出成形機であって、前記信号灯を昇降させる昇降部を備え、前記昇降部の昇降動作によって前記信号灯の高さを変化させることを特徴とした信号灯を備えた射出成形機であり、前記信号灯への干渉物の接近を検知する検知手段を備え、前記検知手段が干渉物の接近を検知すると昇降部材を下降し、干渉物の接近を検知していない状態では昇降部を上昇させることを特徴とした信号灯を備えた射出成形機である。
請求項2に係る発明は、前記昇降部は、ワイヤとワイヤ巻取部と昇降部材と摺動支持部材を備え、前記ワイヤの一端が前記ワイヤ巻取部に固定され、前記ワイヤの他端が前記昇降部材に固定され、前記信号灯が前記昇降部材に固定され、前記昇降部材が前記摺動支持部材にガイドされて昇降可能に取り付けられ、前記ワイヤ巻取部のワイヤ巻取り動作により前記昇降部材が前記摺動支持部材にガイドされつつ昇降することを特徴とする請求項1に記載の信号灯を備えた射出成形機である。
請求項3に係る発明は、前記ワイヤ巻取部は駆動装置を備え、駆動装置によって前記ワイヤ巻取り動作を行うことを特徴とする請求項2に記載の信号灯を備えた射出成形機である。
【0008】
請求項4に係る発明は、前記射出成形機は前記駆動装置を制御してワイヤ巻取り動作を制御するワイヤ巻取り制御部を備えることを特徴とする請求項3に記載の信号灯を備えた射出成形機である
請求項に係る発明は、前記ワイヤ巻取り制御部は射出成形機の稼動状態に応じた高さに前記昇降部材を昇降させることを特徴とした請求項4に記載の信号灯を備えた射出成形機である。
請求項に係る発明は、前記射出成形機は前記信号灯の高さ位置を検出する高さ位置検出部を備えることを特徴とする請求項4または5に記載の信号灯を備えた射出成形機である。
請求項に係る発明は、前記信号灯は、射出成形機の稼動状態を、点灯、点滅させる灯火の色や、点灯・点滅時間や点灯・点滅パターンを変化させることにより表示可能であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一つに記載の信号灯を備えた射出成形機である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、信号灯を備える射出成形機において、信号灯の高さを手動または自動で自在に昇降できる構造とし、信号灯と周囲の物との干渉を回避し、且つ、信号灯に必要な高さを確保することが可能な信号灯を備えた射出成形機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】信号灯を備えた射出成形機を示す図である。
図2】信号灯を示す図である。
図3】信号灯を昇降させる制御手段を示す図である。
図4】信号灯への干渉物の接近を検知する検知手段を備えた射出成形機を示す図である。
図5】射出成形機の稼動状態に応じて昇降式信号灯を昇降させることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は信号灯を備えた射出成形機を示す図である。図1(a)は正面から見た図、図1(b)は側面から見た図である。ただし、図1(a)では信号灯5を上昇させた時、図1(b)では信号灯5を下降した時の状態を示す図である。
【0012】
射出成形機1は機台2上に射出部と型締部とを備えている。射出成形機1は図示しない制御装置によって射出成形機械全体が制御される。射出部と型締部はカバー3によって覆われている。射出成形機1のカバー3の上面に信号灯5を備えた昇降部4が取り付けられている。昇降部4は射出成形機1のカバー3に着脱式あるいは固定式に取り付けることができる。昇降部4は手動または自動で信号灯5を昇降させることができる。クレーンなどの運搬手段6によって運搬される金型などの運搬物7が信号灯5に衝突あるいは接触しないように、昇降部4を縮ませることで信号灯5を下降させる(図1(b)参照)。また、信号灯5が運搬物7に衝突または接触しない状態であれば、昇降部4を伸ばし信号灯5を上方に位置させる。このように昇降部4を伸縮することによって、信号灯5の高さを変えることができる。
【0013】
信号灯5は射出成形機1の稼動状態を表示することができ、射出成形機の稼動状態を、点灯、点滅させる灯火の色や、点灯・点滅時間や点灯・点滅パターンを変化させることにより表示可能である。射出成形機1と信号灯5とは図示省略した電源ケーブルなどで接続されており、射出成形機1の制御装置からの指令に従って稼働状況に応じた表示を行うことができる。
【0014】
図2は信号灯を示す図である。図2(a)は信号灯5の下降時を示し、図2(b)は信号灯5の上昇時を示している。図2に示されるように、昇降部4は、ワイヤ41、ワイヤ巻取部42、昇降部材43、および、摺動支持部材44を含んで構成される。昇降部材43は摺動支持部材44にガイドされて昇降可能である。信号灯5は昇降部材43の上部側一端部に固定される。また、ワイヤ41の一端部が昇降部材43の下部側一端部に固定され、ワイヤ41の他端部がワイヤ巻取部42に固定される。
【0015】
ワイヤ巻取部42は手動式の巻き取り装置であってもよいし、電動モータなどの駆動装置を用いてもよい。ワイヤ巻取部42が電動モータの場合、射出成形機1からの指令に従ってワイヤ巻取り動作を行ってもよいし、射出成形機1から独立した制御装置によってワイヤ巻取42の電動モータを制御し、ワイヤ巻取り動作を行うようにしてもよい。信号灯5は射出成形機1の制御装置は昇降部4のワイヤ巻取部42を駆動制御することによってワイヤ巻取り動作の制御を行う。
【0016】
本発明において、ワイヤ巻取部42によってワイヤ41が巻き取られると昇降部材43が上昇し、ワイヤ巻取部42によってワイヤ41が開放されると昇降部材43が下降する。昇降部材43を下降させるにはワイヤ巻取部42によってワイヤ41を巻き戻してもよい。正確には、ワイヤ巻取り動作は昇降部材43を上昇させる動作であるが、請求項においては、この昇降部材43の上昇動作と下降動作をまとめて、ワイヤ巻取り動作により昇降部材43が昇降すると表現している。
【0017】
図3は信号灯を昇降させる制御手段を示す図である。図3は、射出成形機1が、駆動装置を制御してワイヤ巻取り動作を制御するワイヤ巻取り制御部を備えることを特徴とした射出成形機を示す図である。また、図3(a)は信号灯5を昇降させる制御手段を示す図である。また、図3(b)は信号灯5の上下を指令するための操作手段である操作釦8が射出成形機1に設けられていることを示す図である。
【0018】
図3(b)に示されるように、射出成形機1は信号灯5を上下させる指令を入力するための操作手段である操作釦(ボタン)8を備えている。操作釦8は信号灯5を上昇端に位置するための上ボタン81と下降端に位置するための下ボタン82を備えている。
【0019】
ワイヤ巻取り制御部はワイヤ巻取り動作を制御するためのワイヤ巻取り制御信号をワイヤ巻取部に出力し、ワイヤ巻取り制御部から出力されたワイヤ巻取り制御信号をワイヤ巻取部が受け取って、駆動装置がワイヤ巻取り部にワイヤ巻取り動作を行わせることで昇降部材の高さを変化させる。つまり、図3(a)に示されるように、操作手段(操作釦8)によって入力された昇降操作信号は、射出成形機1の制御装置に入力される。射出成形機1の制御装置は昇降部(ワイヤ巻取装置の駆動装置)に昇降指令を指令する。ワイヤ巻取装置は昇降指令に従って信号灯5を昇降する。
【0020】
図4は信号灯5への干渉物の接近を検知する検知手段を備え、前記検知手段が干渉物の接近を検知すると昇降部材を自動で下降させることを特徴とした射出成形機を示す図である。信号灯5に金型などの運搬物7の接近を検出するセンサ9を取り付ける。運搬物7が信号灯5に接近したことをセンサ9が検出した場合、センサ9は運搬物7の接近情報を射出成形機1の制御装置に送る。射出成形機1の制御装置は、信号灯5が運搬物7と衝突あるいは接触しないように、ワイヤ巻取部42を駆動制御し、信号灯5を降下させる。
【0021】
なお、信号灯5の昇降制御を運搬手段6の制御装置からの信号あるいは運搬装置制御盤10から入力される信号を接近情報として射出成形機1の制御装置が受け取り、受け取った接近情報を用いて信号灯5の昇降制御を行うようにしてもよい。
【0022】
図5は射出成形機の稼動状態に応じて昇降式信号灯を昇降させることを示す図である。図5(a)は操作電源を切断した状態を示し、図5(b)は操作電源を入の状態を示している。図5に示される実施形態は、射出成形機の稼動状態に応じてワイヤ巻取り制御信号を変化させて、前記稼動状態に応じた高さに、昇降部材43を昇降させることを特徴としている。そのために、射出成形機1は、信号灯5の高さ位置を検出するリミットスイッチやエンコーダなどの位置検出部を備える。信号灯5の高さ位置の特定をワイヤ巻取部42の駆動装置に備わった位置検出手段を用いてもよい。
【0023】
上述したように、本発明により、信号灯を備える射出成形機において、信号灯の高さを、工事なしで、手動または自動で自在に昇降できる構造とし、信号灯と周囲の物との干渉を回避し、且つ、信号灯に必要な高さの確保を容易に行える。また、射出成形機の稼動状況に応じて信号灯高さを調整することで、射出成形機から離れた遠い位置からでも射出成形機の様々な稼働状況を視認できる。
【符号の説明】
【0024】
1 射出成形機
2 機台
3 カバー
4 昇降部
41 ワイヤ
42 ワイヤ巻取部
43 昇降部材
44 摺動支持部材
5 信号灯
6 運搬手段
7 運搬物
8 操作釦
81 上ボタン
82 下ボタン
9 センサ
10 運搬装置制御盤
図1
図2
図3
図4
図5