(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。まず、
図1を参照して、本発明の一実施形態に係るレーザ発振器10について説明する。レーザ発振器10は、共振器部12、レーザ媒質流路14、および送風機16を備える。共振器部12は、その内部にレーザ媒質が充填されており、互いに対向配置された放電電極(図示せず)を有する。放電電極に予め定められた交流電圧が印加されると、レーザ媒質が励起され、レーザ光が生成される。レーザ媒質としては、例えば炭酸ガスが挙げられる。
【0016】
レーザ媒質流路14は、共振器部12の内部と連通している。具体的には、レーザ媒質流路14は、共振器部12のレーザ媒質入口12aとレーザ媒質出口12bに接続された閉ループの流路管によって構成されている。レーザ媒質流路14は、レーザ媒質入口12aを介して共振器部12にレーザ媒質を導入するとともに、レーザ媒質出口12bを介しいて共振器部12からレーザ媒質を排出させる。
【0017】
送風機16は、レーザ媒質流路14内に設けられている。具体的には、送風機16は、レーザ媒質流路14内に配置された、複数の羽根を含む回転体と、該回転体を回転駆動するモータ(ともに図示せず)とを有する。送風機16は、この回転体を回転させてレーザ媒質流路14内のレーザ媒質に圧力変動を生じさせ、レーザ媒質を
図1中の矢印15に示す方向へ流動させる。
【0018】
レーザ発振器10は、駆動部18、制御部20、記憶部22、および圧力計24をさらに備える。駆動部18は、送風機16を駆動する。具体的には、駆動部18は、例えば高周波インバータから構成され、送風機16に内蔵されたモータに交流信号を送信し、該交流信号の周波数に応じた回転数で、送風機16の回転体を回転駆動する。
【0019】
制御部20は、駆動部18を制御する。具体的には、制御部20は、駆動部18に回転指令を送信し、駆動部18は、制御部20から受信した回転指令に応じて、送風機16を駆動する。記憶部22は、例えばEEPROM(登録商標)等により構成される、電気的に消去および記録が可能な不揮発性メモリである。
【0020】
制御部20は、記憶部22と通信し、記憶部22にデータを記録し、または記憶部22からデータを消去する。圧力計24は、レーザ媒質流路14内における予め定められた位置26に設置されている。圧力計24は、制御部20からの指令に応じて、レーザ媒質流路14内の位置26におけるレーザ媒質の圧力を計測し、圧力に関するデータを制御部20へ送信する。制御部20は、圧力計24から受信した圧力データを記憶部22に記憶する。
【0021】
本実施形態に係るレーザ発振器10は、圧力計24によって得られたレーザ媒質の圧力を用いて、送風機16の回転数を推定する。この推定方法の原理について、
図2〜
図4を参照して以下に説明する。
図2には、レーザ媒質流路14内における、異なる4箇所の位置A、B、C、およびDが示されている。
【0022】
位置Aは、送風機16の吐出口近傍の位置である。本稿では、この位置Aが、上記の位置26に対応するものとして説明する。一方、位置Dは、送風機16の吸入口近傍の位置である。また、位置Bは、レーザ媒質の流動方向において、位置Aの下流側、且つ共振器部12の上流側に位置し、位置Cは、レーザ媒質の流動方向において、共振器部12の下流側、且つ位置Dの上流側に位置している。
【0023】
図3は、送風機16の異なる3つの運転状態における、レーザ媒質流路14内の位置A〜Dの各々のレーザ媒質の圧力Pと、位置A〜Dとの関係を示すグラフである。
図3の実線28は、送風機16が、所定の回転速度で通常運転しているときの、レーザ媒質の圧力Pと、レーザ媒質流路14内における位置A〜Dとの関係を示している。実線28に示すように、送風機16が通常運転しているとき、位置Aにおけるレーザ媒質の圧力が最も高くなっており、次いで、位置B、位置C、位置Dの順に、レーザ媒質の圧力Pが小さくなっている。
【0024】
一方、破線32は、送風機16が停止しているとき(すなわち、回転数がゼロ)の、レーザ媒質の圧力Pと、位置A〜Dとの関係を示している。送風機16が停止しているときは、レーザ媒質の圧力Pは、位置A〜Dにおいて略一定の圧力となる。
【0025】
二点鎖線30は、送風機16が、実線28に示す通常運転状態から、破線32に示す停止状態まで減速している途中、または、破線32に示す停止状態から実線28に示す通常運転状態まで加速している途中の状態における、レーザ媒質の圧力Pと位置A〜Dとの関係を示している。
【0026】
このように、送風機16を停止状態(回転数ゼロ)から通常運転状態(所定の回転数)とするのに伴って、位置A〜Dにおけるレーザ媒質の圧力Pは、破線32→二点鎖線30→実線28へと変化する。すなわち、送風機16の回転数と、レーザ媒質流路14内のレーザ媒質の圧力Pとは、互いに相関関係を有している。
【0027】
図4に、送風機16の回転数Rと、位置A(すなわち位置26)におけるレーザ媒質の圧力Pとの間の関係を示す。
図4に示すように、送風機16の回転数Rを増加させると、レーザ媒質の圧力Pも非線形的に増加する。この関係に基づいて、レーザ媒質の圧力Pから、送風機16の回転数Rを推定することが可能となる。
【0028】
例えば、レーザ媒質の圧力PがP1(またはP2)である場合、送風機16が回転数R1(またはR2)で駆動されているものと推定することができる。本実施形態に係るレーザ発振器は、
図4に示す回転数Rと圧力Pとの間の関係を記憶部22に予め記憶し、該関係と、圧力計24により計測される位置26の圧力Pとに基づいて、送風機16の回転数Rを推定する。なお、この機能については、後述する。
【0029】
次に、
図1および
図4を参照して、レーザ発振器10の機能について説明する。制御部20は、レーザ発振器10の消費電力を低減する観点から、レーザ発振器10の運転状況に応じて、送風機16への電力供給を停止させ、送風機16の運転を停止する。
【0030】
例えば、制御部20は、使用者から送風機16の運転停止命令を受け付けたとき、または、記憶部22に予め定められた運転プログラムに従って、送風機16への電力供給を停止させる。一例として、制御部20は、共振器部12におけるレーザ光の生成の停止に連動して、送風機16への電力供給を停止させる。送風機16への電力供給を停止させると、送風機16の回転体は、空転することになる。送風機16への電力供給が停止されている間、送風機16の回転数は、時間の経過とともに徐々に減速していく。
【0031】
送風機16への電力供給を停止した後、制御部20は、レーザ発振器10の運転状況に応じて、送風機16の運転を再開すべく、駆動部18を介して、送風機16への電力供給を再開する。ここで、送風機16の運転を再開する時点で送風機16が空転している場合、送風機16の回転を迅速に制御するためには、制御部20は、空転している送風機16の回転数に一致した回転数で、送風機16の運転を再開させる必要がある。
【0032】
このために、まず、制御部20は、送風機16の運転再開時の、位置26におけるレーザ媒質の圧力を、圧力計24から取得する。次いで、制御部20は、
図4に示す、位置26における送風機16の回転数Rとレーザ媒質の圧力Pとの関係に係るデータを、記憶部22から読み出す。
【0033】
次いで、制御部20は、圧力計24から取得した圧力を、
図4に示す関係に適用し、運転再開時の送風機16の回転数Reを推定する。このように、本実施形態においては、制御部20は、圧力計24によって計測されたレーザ媒質の圧力と、記憶部22に記憶された関係とに基づいて、送風機16の回転数Reを推定する回転数推定部36(
図1)として機能する。
【0034】
送風機16の回転数Reを推定した後、制御部20は、推定した回転数Reに一致する回転指令を駆動部18に送信し、駆動部18を介して、送風機16が回転数Reで運転開始するように制御する。ここで、送風機16の運転の態様としては、送風機16の回転速度を加速させること、および送風機16の回転速度を減速させることを含む。
【0035】
例えば、送風機16の回転速度を加速する場合、制御部20は、まず回転数Reで送風機16を回転駆動した後、該回転数Reから送風機16の回転数を順次加速させる。一方、送風機16の回転速度を減速させる場合、制御部20は、まず回転数Reで送風機16を回転駆動した後、該回転数Reから送風機16の回転数を順次減速させる。
【0036】
上述のように、本実施形態においては、圧力計24によって計測された圧力を用いて、運転再開時に空転している送風機16の回転数を推定する。ここで、通常のレーザ発振器においては、レーザ光の生成を制御するために、レーザ発振器内のレーザ媒質の圧力を監視し制御するための圧力計が設置されている。
【0037】
本実施形態によれば、エンコーダ等の追加の装備を用いることなく、レーザ発振器に通常装備されている圧力計を利用することによって、空転状態の送風機16の回転数を推定することができる。そして、制御部20は、空転時の回転数に同期させつつ送風機16の運転を再開することができる。この構成によれば、レーザ発振器10の製造コストを低減しつつ、空転中の送風機16に対する迅速且つ安全な運転再開(すなわち、加速または減速)を実現することができる。
【0038】
また、本実施形態によれば、送風機16の運転を迅速に再開できるので、送風機16へ供給される電力を、レーザ発振器10の運転状況に応じて、頻繁に停止させることが可能となる。これにより、レーザ発振器10の消費電力を削減することができる。
【0039】
次に、
図5を参照して、本発明の他の実施形態に係るレーザ発振器40について説明する。なお、上述の実施形態と同様の要素には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。レーザ発振器40は、共振器部12、レーザ媒質流路14、送風機16、駆動部18、記憶部22、圧力計24、制御部42、および空転検知部44を備える。
【0040】
制御部42は、駆動部18を制御する。空転検知部44は、送風機16が空転しているか否かを検知する。例えば、空転検知部44は、電圧計、電流計、および/または電力計を含み、送風機16に供給されている電圧、電流、および/または電力を検出することによって、送風機16が空転しているか否かを検知する。
【0041】
一具体例として、空転検知部44は、送風機16に供給されている電圧がゼロとなったことを検出したときに、送風機16が空転しているものと判断し、制御部42に、送風機16が空転している旨を示す空転信号を送信する。
【0042】
一方、空転検知部44は、送風機16に供給されている電圧が、ゼロから、予め定められた電圧まで上昇したことを検出したときに、送風機16の空転が終了した旨を示す空転終了信号を送信する。制御部42は、空転検知部44からの空転信号および空転終了信号によって、送風機16が空転しているか否かを判断できる。
【0043】
また、他の具体例として、空転検知部44は、送風機16に供給されている電圧がゼロとなった時点から、予め定められた時間(例えば1秒)を経過したときに、送風機16が空転しているものと判断し、制御部42に、送風機16が空転している旨を示す空転信号を送信する。一方、空転検知部44は、送風機16に供給されている電圧が、ゼロから、予め定められた電圧まで上昇した時点から、予め定められた時間(例えば1秒)を経過したときに、送風機16の空転が終了した旨を示す空転終了信号を送信する。
【0044】
次に、
図5および
図6を参照して、レーザ発振器40の機能について説明する。上述の実施形態と同様に、制御部42は、レーザ発振器40の消費電力を低減する観点から、レーザ発振器40の運転状況に応じて、送風機16への電力供給を停止し、送風機16の運転を停止する。このとき、空転検知部44は、送風機16が空転していることを検知する。
【0045】
ここで、本実施形態においては、制御部42は、送風機16の運転停止時におけるレーザ発振器40の運転モードを判別し、該運転モードに対応する、回転数Rと圧力Pとの間の関係を選択することによって、空転状態の送風機16の回転数をより高精度に推定する。この機能について、以下に説明する。
【0046】
図6は、レーザ発振器40の異なる3つの運転モードの各々に対応する、位置26におけるレーザ媒質の圧力Pと、送風機16の回転数Rとの間の関係を示す。実線52は、レーザ発振器40が通常モードで運転をしている場合の関係を示す。この通常モードにおいては、レーザ発振器40は、共振器部12で第1のパワーを有するレーザ光を生成する。例えば、レーザ発振器40をレーザ加工機に適用した場合を想定すると、レーザ加工機によってワークを通常のレーザパワーでレーザ加工するとき、レーザ発振器40は、この通常モードで運転される。
【0047】
二点鎖線54は、レーザ発振器40が高出力モードで運転をしている場合の関係を示す。この高出力モードにおいては、レーザ発振器40は、共振器部12で第1のパワーよりも大きな第2のパワーを有するレーザ光を生成する。例えば、レーザ発振器40をレーザ加工機に適用した場合を想定すると、レーザ加工機によってワークを通常よりも高いレーザパワーでレーザ加工するとき、レーザ発振器40は、この高出力モードで運転される。
【0048】
一点鎖線56は、レーザ発振器40が待機モードとなっている場合の関係を示す。この待機モードにおいては、レーザ発振器40は、共振器部12におけるレーザ光の生成を停止している。例えば、レーザ発振器40をレーザ加工機に適用した場合を想定すると、レーザ加工機がワークの取り換え等によりワークに対するレーザ加工を待機しているとき、レーザ発振器40は、この待機モードにされる。
【0049】
図6に示すように、レーザ発振器40の運転モードによって、レーザ媒質の圧力Pと送風機16の回転数Rとの間の関係は異なる。したがって、レーザ媒質の圧力Pから送風機16の回転数Rを高精度に推定するためには、その時点でのレーザ発振器40の運転モードを把握することが必要となる。
【0050】
そこで、本実施形態においては、制御部42は、圧力計24によって計測されたレーザ媒質の圧力に基づいて、レーザ発振器40の運転モードを判別する。具体的には、制御部42は、空転検知部44によって送風機16の空転が検知されたときに、圧力計24からレーザ媒質の圧力を取得し、取得した圧力値を、運転モードの各々に対して設定された圧力制御目標値と照らし合わせる。この圧力制御目標値は、記憶部22に予め記憶されている。
【0051】
例えば、レーザ発振器40を通常モードで運転する場合、位置26におけるレーザ媒質の圧力制御目標値は、第1の目標値αに設定される。また、レーザ発振器40を高出力モードで運転する場合、位置26におけるレーザ媒質の圧力制御目標値は、第2の目標値βに設定される。また、レーザ発振器40を待機モードで運転する場合、位置26におけるレーザ媒質の圧力制御目標値は、第3の目標値γに設定される。
【0052】
制御部42は、圧力計24によって計測されたレーザ媒質の圧力が、第1〜第3の目標値のいずれに該当するかを判断し、これにより、レーザ発振器40の運転モードを判別する。例えば、制御部42は、計測されたレーザ媒質の圧力が、第1の目標値αの±10%内にある場合、レーザ発振器40が通常モードで運転されていたものと判断する。このように、制御部42は、レーザ媒質の圧力に基づいて、レーザ発振器40の運転モードを判別する運転モード判別部48(
図5)として機能する。
【0053】
次いで、制御部42は、判別した運転モードに対応する関係を選択する。例えば、レーザ発振器40の運転モードが通常モードであると判別されたとき、制御部42は、記憶部22に予め記憶されている、
図6の実線52、二点鎖線54、および一点鎖線56に示す3つの関係の中から、実線52の関係を選択し、そのデータを記憶部22から読み出す。このように、制御部42は、複数の関係の中から、レーザ発振器40の運転モードに対応する関係(実線52の関係)を選択する関係選択部50(
図5)として機能する。
【0054】
次いで、制御部42は、レーザ発振器40の運転状況に応じて、送風機16の運転を再開すべく、送風機16への電力供給を再開する。このとき、空転検知部44は、送風機16の空転が終了したことを検知する。そして、制御部42は、この時点におけるレーザ媒質の圧力を、圧力計24から取得する。
【0055】
そして、制御部42は、取得した圧力を、上述のように選択した
図6の実線52に示す関係に適用する。これにより、制御部42は、運転再開時の送風機16の回転数Reを推定する。このように、制御部42は、レーザ媒質の圧力と、選択した関係(実線52の関係)とに基づいて、送風機16の回転数Reを推定する回転数推定部46(
図5)として機能する。そして、制御部42は、推定した回転数Reに一致する回転指令を駆動部18に送信し、該回転数Reで送風機16を運転させるように制御する。
【0056】
このように、本実施形態によれば、圧力計24によって計測されたレーザ媒質の圧力に基づいて、レーザ発振器40の運転モードを判別し、該運転モードに対応した回転数Rと圧力Pとの関係に基づいて、送風機16の回転数を推定することができる。これにより、送風機16の回転数をより高精度に推定することができる。その結果、空転状態の送風機16の運転をより安全且つ迅速に再開することができる。
【0057】
次に、
図7を参照して、本発明のさらに他の実施形態に係るレーザ発振器60について説明する。なお、上述の実施形態と同様の要素には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。レーザ発振器60は、共振器部12、レーザ媒質流路14、送風機16、駆動部18、記憶部22、圧力計24、制御部62、停電検知部64、および無停電電源66を備える。
【0058】
停電検知部64は、レーザ発振器60全体に供給される主電力の停電および復電を検知する。なお、停電検知部64は、レーザ発振器60の一部(例えば駆動部18および/または送風機16を含む部分)で発生した停電/復電を検知するものであってもよい。無停電電源66は、停電が発生したときに、少なくとも制御部62に対して電力を供給することができる非常用電源である。
【0059】
停電が発生した場合、送風機16への電力供給が停止され、その結果、送風機16は、空転することになる。その後、レーザ発振器60の電力が復電した場合、空転している送風機16を安全且つ迅速に制御するためには、復電時の送風機16の回転数で送風機16の運転を再開する必要がある。
【0060】
次に、本実施形態に係るレーザ発振器60の機能について説明する。制御部62は、停電検知部64によって停電が検知されたとき、直近(例えば、停電の直前または直後)に圧力計24によって計測されたレーザ媒質の圧力を取得する。そして、制御部62は、上述の運転モード判別部48として機能して、取得した圧力に基づいて、レーザ発振器60の運転モードを判別する。次いで、制御部62は、上述の関係選択部50として機能して、判別した運転モードに対応する、回転数Rと圧力Pとの間の関係を選択する。
【0061】
停電後に、停電検知部64によって復電が検知されたとき、制御部62は、直近に圧力計24によって計測されたレーザ媒質の圧力を取得する。そして、制御部62は、上述の回転数推定部46として機能して、選択された関係に基づいて、復電時の送風機16の回転数Reを推定する。
【0062】
そして、制御部62は、推定した回転数Reに一致する回転指令を駆動部18に送信し、該回転数Reで送風機16の運転を再開するように制御する。このように、本実施形態によれば、レーザ発振器60の運転中に不意に停電が発生し、その後に復電した場合に、復電時に空転している送風機16を、安全且つ迅速に制御することができる。また、本実施形態によれば、無停電電源66が設けられていることから、復電後の制御部62の起動時間を待つことなく、レーザ発振器60を迅速に再起動することができる。
【0063】
なお、上述のレーザ発振器40および60においては、運転モードとして、通常モード、高出力モード、および待機モードの3つの運転モードがある場合について述べた。しかしながら、これら3つの運転モードの他に、複数の運転モードが存在してもよい。
【0064】
例えば、さらなる運転モードとして、待機モードから通常モード(または、通常モードから待機モード)へ移行している間の状態、および、通常モードから高出力モード(または、高出力モードから通常モード)へ移行している間の状態に相当する移行モードが設定されてもよい。
【0065】
レーザ発振器40、60がこのような移行モードとなっているとき、レーザ媒質の圧力Pと送風機16の回転数Rとの間の関係は、
図6に示す3つの関係とは異なるものとなる。したがって、レーザ媒質の圧力Pから送風機16の回転数Rを高精度に推定するためには、移行モードに対応する圧力Pと回転数Rとの間の関係を記憶部22に予め記憶する必要がある。
【0066】
一具体例として、待機モードと通常モードとの間の移行モードとして、第1移行モードと第2移行モードが設定される。例えば、第1移行モードは、レーザ媒質の状態が待機モードに近くなっている移行モードであり、第2移行モードは、レーザ媒質の状態が、第1移行モードよりも通常モードに近くなっている移行モードである。この場合、記憶部22は、第1移行モードおよび第2移行モードに対応する、圧力Pと回転数Rとの間の関係をそれぞれ記憶する。
【0067】
第1移行モードに対応する、圧力Pと回転数Rとの間の関係は、
図6の実線52と一点鎖線56との間の領域に位置し、且つ、一点鎖線56により近いグラフとなり得る。また、第2移行モードに対応する、圧力Pと回転数Rとの間の関係は、
図6の実線52と一点鎖線56との間の領域に位置し、且つ、第1移行モードのグラフよりも実線52に近いグラフとなり得る。
【0068】
同様にして、通常モードと高出力モードとの間の移行モードとして、第3移行モードおよび第4移行モードが設定される。例えば、第3移行モードは、レーザ媒質の状態が通常モードに近くなっている移行モードであり、第4移行モードは、レーザ媒質の状態が、第3移行モードよりも高出力モードに近くなっている移行モードである。この場合、記憶部22は、第3移行モードおよび第4移行モードに対応する、圧力Pと回転数Rとの間の関係をそれぞれ記憶する。
【0069】
第3移行モードに対応する、圧力Pと回転数Rとの間の関係は、
図6の実線52と二点鎖線54との間の領域に位置し、且つ、実線52により近いグラフとなり得る。また、第4移行モードに対応する、圧力Pと回転数Rとの間の関係は、
図6の実線52と二点鎖線54との間の領域に位置し、且つ、第3移行モードのグラフよりも二点鎖線54に近いグラフとなり得る。
【0070】
以下、レーザ発振器60において第1〜第4移行モードが設定された場合の動作について説明する。制御部62は、停電検知部64によって停電が検知されたとき、直近に圧力計24によって計測されたレーザ媒質の圧力を取得する。次いで、制御部62は、運転モード判別部48として機能して、取得した圧力値を、停電時に設定されていた圧力制御目標値と照らし合わせる。
【0071】
ここで、移行モード時に停電が発生した場合においては、停電時に設定されていた圧力制御目標値とは、運転モードの移行先の圧力制御目標値である。具体的には、通常モードから高出力モードへ移行させているときに停電が発生した場合は、高出力モードの圧力制御目標値(第2の目標値β)が設定されている。同様に、通常モードから待機モードへ移行させているときに停電が発生した場合は、待機モードの圧力制御目標値(第3の目標値γ)が設定されている。
【0072】
通常モードから高出力モードへ移行させているときに停電が発生したとすると、制御部62は、取得した圧力値と、第2の目標値Bとを照らし合わせる。このとき、取得した圧力値が、第2の目標値B(またはBの±10%)とはなっていないことから、制御部62は、運転モードが通常モードと高出力モードの間の移行モードであると判断できる。
【0073】
次いで、制御部62は、取得した圧力値と第2の目標値Bとの差δ
Pを演算する。そして、制御部62は、該差δ
Pに基づいて、第3移行モードおよび第4移行モードのうちのいずれかを判別する。
【0074】
例えば、制御部62は、該差δ
Pが予め定められた第1の範囲(x1≦δ
P≦x2)内にある場合、第3移行モードと判別する一方、該差δ
Pが第2の範囲(x3≦δ
P≦x4、且つ、x4<x1)内にある場合、第4移行モードと判別する。
【0075】
次いで、制御部62は、関係選択部50として機能して、判別した運転モードに対応する関係を選択する。例えば、制御部62は、第3移行モードであると判別したとき、記憶部22に予め記憶されている複数の関係の中から、第3移行モードに対応する関係を選択し、そのデータを記憶部22から読み出す。
【0076】
そして、制御部62は、停電検知部64によって復電が検知されたとき、直近に圧力計24によって計測されたレーザ媒質の圧力を取得し、回転数推定部46として機能して、第3移行モードに対応する関係に基づいて、復電時の送風機16の回転数Reを推定する。
【0077】
このように、通常モード、高出力モード、および待機モードに加えて、複数の移行モードを設定することによって、仮に、レーザ発振器40、60の移行モード時に停電等が発生したとしても、復電時に送風機16の運転を安全且つ迅速に再開することができる。
【0078】
次に、
図8を参照して、本発明のさらに他の実施形態に係るレーザ発振器70について説明する。なお、上述の実施形態と同様の要素には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。レーザ発振器70は、共振器部12、レーザ媒質流路14、送風機16、駆動部18、記憶部22、圧力計24、温度計72、および制御部74を備える。
【0079】
温度計72は、レーザ媒質流路14内の予め定められた位置76に設置されており、レーザ媒質流路14内のレーザ媒質の温度を計測し、温度に係るデータを制御部74に送信する。制御部74は、受信した温度に係るデータを記憶部22に記憶する。制御部74は、上述の実施形態と同様の回転数推定部36の機能を有し、駆動部18を制御する。
【0080】
本実施形態においては、レーザ媒質流路14と連通するレーザ媒質供給用流路80およびレーザ媒質排出用流路82が設けられている。レーザ媒質供給用流路80は、レーザ発振器70の外部に設置されたレーザ媒質供給源に接続されており、該レーザ媒質供給用流路80を介して、レーザ媒質が、レーザ媒質供給源から、レーザ媒質流路14に供給される。また、レーザ媒質流路14内のレーザ媒質は、レーザ媒質排出用流路82を介して、レーザ媒質流路14の外部に排出される。
【0081】
レーザ発振器70は、レーザ媒質流路14を外部から密閉するための密閉機構84をさらに備える。本実施形態においては、密閉機構84は、バルブ機構であって、レーザ媒質供給用流路80を開閉可能なバルブ86と、レーザ媒質排出用流路82を開閉可能なバルブ88と、バルブ86および88を駆動するバルブ開閉器90とを有する。バルブ開閉器90は、制御部74からの指令に応じて、バルブ86および88を開閉させる。
【0082】
レーザ発振器70は、レーザ媒質供給用流路80およびレーザ媒質排出用流路82の各々における、レーザ媒質の流量を計測する流量計92をさらに備える。流量計92は、計測した流量に係るデータを、制御部74へ送信する。制御部74は、受信した流量に係るデータを記憶部22に記憶する。
【0083】
次に、本実施形態に係るレーザ発振器70の機能について説明する。上述の実施形態と同様に、制御部74は、レーザ発振器70の消費電力を低減する観点から、レーザ発振器70の運転状況に応じて、送風機16への電力供給を停止し、送風機16の運転を停止する。このとき、制御部74は、バルブ開閉器90に指令を送り、バルブ86および88を閉鎖し、レーザ媒質流路14を密閉する。
【0084】
次いで、送風機16の運転を再開するとき、制御部74は、直近に圧力計24によって計測された圧力を取得し、
図4に示す回転数Rと圧力Pとの関係とを記憶部22から読み出す。そして、制御部74は、回転数推定部36として機能して、圧力と関係と基づいて、送風機16の回転数を推定する。
【0085】
ここで、本実施形態においては、制御部74は、送風機16の回転数をより高精度に推定するために、温度計72によって計測されたレーザ媒質の温度と、流量計92によって計測されたレーザ媒質の流量とに基づいて、圧力計24によって計測された圧力の値を補正する。この機能について、以下に説明する。
【0086】
図4に示す回転数Rと圧力Pとの関係は、レーザ媒質流路14内のレーザ媒質の温度に応じて変化する。したがって、より高精度に送風機16の回転数を推定するためには、レーザ媒質流路14内のレーザ媒質の温度に応じて、圧力計24によって計測された圧力の値を補正し、補正した圧力値に基づいて、送風機16の回転数を推定する必要がある。例えば、記憶部22は、レーザ媒質の温度と、該温度における圧力補正値との対応関係を示すデータテーブルを、予め記憶する。
【0087】
制御部74は、該データテーブルと、温度計72によって計測されたレーザ媒質の温度とを用いて、圧力計24によって計測された圧力の値を補正する。そして、制御部74は、補正した圧力値を上記関係に適用して、送風機16の回転数を推定する。このように、本実施形態においては、制御部74は、レーザ媒質の温度に基づいて、計測されたレーザ媒質の圧力を補正する第1の補正部94として機能する。
【0088】
また、
図4に示す回転数Rと圧力Pとの関係は、レーザ媒質流路14内に供給/排出されるレーザ媒質の流量に応じて変化する。したがって、より高精度に送風機16の回転数を推定するためには、レーザ媒質流路14に供給/排出されるレーザ媒質の流量に応じて、圧力計24によって計測された圧力の値を補正し、補正した圧力値に基づいて、送風機16の回転数を推定する必要がある。
【0089】
例えば、記憶部22は、レーザ媒質流路14に供給/排出されるレーザ媒質の流量と、該流量における圧力補正値との対応関係を示すデータテーブルを、予め記憶する。制御部74は、該データテーブルと、流量計92によって計測された流量とを用いて、圧力計24によって計測された圧力の値を補正する。そして、制御部74は、補正した圧力値を上記関係に適用して、送風機16の回転数を推定する。このように、本実施形態においては、制御部74は、レーザ媒質の流量に基づいて、計測されたレーザ媒質の圧力を補正する第2の補正部96として機能する。
【0090】
上述のように、本実施形態においては、レーザ媒質の温度および流量に基づいて、推定した送風機16の回転数を補正することによって、空転時の送風機16の回転数をより高精度に推定することができる。
【0091】
また、本実施形態によれば、制御部74は、送風機16の運転を停止させたときに、密閉機構84によってレーザ媒質流路14を密閉する。これにより、レーザ媒質流路14内におけるレーザ媒質の圧力変動を低減させることができる。その結果、圧力計24によってレーザ媒質の圧力を正確に計測することが可能となるので、空転する送風機の回転数をより高精度に推定することができる。
【0092】
なお、上述の実施形態においては、位置26(すなわち、位置Aに相当する)に圧力計24を設置し、該位置26における回転数Rと圧力Pとの関係(
図4の関係)に基づいて、送風機16の回転数を推定した場合について述べた。しかしながら、これに限らず、圧力計24は、例えば
図2に示す位置B、C、およびDを含む、如何なるレーザ媒質流路14の位置に設置されてもよい。この場合、記憶部22は、圧力計24が設置される位置における、回転数Rと圧力Pとの関係を記憶する。
【0093】
また、上述の実施形態においては、流量計92が、レーザ媒質供給用流路80およびレーザ媒質排出用流路82に設置される場合について述べた。しかしながら、これに限らず、流量計92は、レーザ媒質流路内の如何なる位置に設置されてもよい。
【0094】
また、
図5に示すレーザ発振器40に、
図7に示す停電検知部64を組み合わることも可能である。この場合、空転検知部44は、例えば送風機16の電圧を監視し、停電検知部64は、レーザ発振器60の主電力を監視する。そして、制御部42は、空転検知部44および停電検知部64から送信される信号に基づいて送風機16の空転を判断し、次いで、空転状態の送風機16の運転を再開する。
【0095】
また、説明の便宜上、レーザ発振器10、40、60、および70は、互いに異なる構成要素(空転検知部44、運転モード判別部48、関係選択部50、停電検知部64、温度計72、密閉機構84、流量計92、第1の補正部94、第2の補正部96)を各々に備えるものとして説明した。しかしながら、レーザ発振器は、これら構成要素を全て備えてもよいし、または、これら構成要素の如何なる組み合わせを備えてもよい。
【0096】
以上、発明の実施形態を通じて本発明を説明したが、上述の実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、本発明の実施形態の中で説明されている特徴を組み合わせた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得る。しかしながら、これら特徴の組み合わせの全てが、発明の解決手段に必須であるとは限らない。さらに、上述の実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることも当業者に明らかである。
【0097】
また、特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、工程、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。