特許第6068433号(P6068433)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱瓦斯化学株式会社の特許一覧 ▶ MGCフィルシート株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6068433
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】合成樹脂積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20170116BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   B32B27/30 A
   B32B27/36 102
【請求項の数】11
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-500706(P2014-500706)
(86)(22)【出願日】2013年2月19日
(86)【国際出願番号】JP2013053916
(87)【国際公開番号】WO2013125500
(87)【国際公開日】20130829
【審査請求日】2015年12月7日
(31)【優先権主張番号】特願2012-36057(P2012-36057)
(32)【優先日】2012年2月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】597003516
【氏名又は名称】MGCフィルシート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】青木 俊成
(72)【発明者】
【氏名】大西 猛史
(72)【発明者】
【氏名】日野 浩靖
【審査官】 清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−052236(JP,A)
【文献】 特開2012−025790(JP,A)
【文献】 特開2010−116501(JP,A)
【文献】 特開2010−049078(JP,A)
【文献】 特開2009−256408(JP,A)
【文献】 特開2009−221386(JP,A)
【文献】 特開平08−073599(JP,A)
【文献】 特開2010−188719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
C08J 7/00−7/18
C08K 5/00−5/59
C08L 33/18−33/22
69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネートを含む基材層(B)の片面もしくは両面に、
(メタ)アクリレート共重合体(C)を5〜55質量%及びポリカーボネート(D)を95〜45質量%含む樹脂層(A)が積層された合成樹脂積層体であって、
前記(メタ)アクリレート共重合体(C)が、芳香族(メタ)アクリレート単位(c1)とメチルメタクリレート単位(c2)とを質量比(c1/c2)で5〜80/20〜95含み、かつ、前記(メタ)アクリレート共重合体(C)の質量平均分子量が5,000〜30,000であることを特徴とする合成樹脂積層体。
【請求項2】
前記樹脂層(A)のガラス転移点が110〜130℃である請求項1に記載の合成樹脂積層体。
【請求項3】
前記樹脂層(A)の吸水率が0.03〜0.28%である請求項1または2に記載の合成樹脂積層体。
【請求項4】
前記樹脂層(A)の厚さが10〜250μmであり、前記合成樹脂積層体のトータル厚さ(X)が0.1〜2.0mmであり、(A)/(X)の厚み比が0.01〜0.5である請求項1から3のいずれかに記載の合成樹脂積層体。
【請求項5】
前記基材層(B)に含まれるポリカーボネートの質量平均分子量が18,000〜40,000である請求項1から4のいずれかに記載の合成樹脂積層体。
【請求項6】
前記樹脂層(A)および/または前記基材層(B)が紫外線吸収剤を含有する請求項1から5のいずれかに記載の合成樹脂積層体。
【請求項7】
前記樹脂層(A)上にハードコート処理を施した請求項1から6のいずれかに記載の合成樹脂積層体。
【請求項8】
前記樹脂層(A)上および前記基材層(B)上にハードコート処理を施した請求項1から6のいずれかに記載の合成樹脂積層体。
【請求項9】
前記合成樹脂積層体の片面または両面に、反射防止処理、防汚処理、耐指紋処理、帯電防止処理、耐候性処理および防眩処理のいずれか一つ以上を施した請求項1から8のいずれかに記載の合成樹脂積層体。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の合成樹脂積層体を含む透明性基板材料。
【請求項11】
請求項1から9のいずれかに記載の合成樹脂積層体を含む透明性保護材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂積層体に関し、詳しくは、透明性の基板材料や保護材料に使用され、ポリカーボネート樹脂を含む層と、特定の(メタ)アクリレート共重合体とポリカーボネート樹脂とを含む樹脂層とを有し、高温や高湿な環境における形状安定性、表面硬度、耐衝撃性、耐候性および耐熱性に優れる合成樹脂積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂板は、透明性や耐衝撃性および耐熱性に優れ、防音隔壁やカーポート、看板、グレージング材、照明用器具などに利用されているが、表面硬度が低いために傷つきやすいという欠点があり、用途が制限されている。
特許文献1には、この欠点を改良する為に紫外線硬化樹脂などで表面をコーティングする方法や、ポリカーボネート樹脂とアクリル系樹脂を共押出した基板にハードコートを施す方法が提案されている。
しかし、ポリカーボネート樹脂の表面にハードコートを施したのでは要求される鉛筆硬度を満たす事ができず表面硬度を要求する用途には使用できない。
また、アクリル系樹脂を表層に施す方法では、表面硬度がある程度向上するので、情報表示機器前面板などに用途が広がるが、この方法は異なる材料の2層構成になりアクリル系樹脂とポリカーボネート樹脂との吸水特性や、ガラス転移温度に代表される耐熱性の違いにより大きな反りを生じることがあるので環境変化が生じる用途では不具合が発生する。
特許文献2には、反りを抑える方法として吸水率の低い樹脂をポリカーボネート樹脂上に積層する積層体が開示されているが、環境試験の40℃/90%は高温高湿の条件としては不十分であり、低反り性の要求性能を十分評価しているとは言えない。また本文献で扱われているMS樹脂は一般的に耐熱性が低いとされており、後加工時に問題になることがある。
また、反りを抑える方法としてポリカーボネート樹脂層の両面にアクリル系樹脂層を積層する積層体があるが、その積層体の片面に面衝撃を与えた際にその反対面のアクリル系樹脂層においてクラックを生じ易く、使用方法によっては問題となることがある。
【先行特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−103169号公報
【特許文献2】特開2010−167659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、以上のような状況から、透明性の基板材料や保護材料に使用される、高温や高湿な環境における形状安定性、表面硬度、耐衝撃性、耐候性および耐熱性に優れる合成樹脂積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、ポリカーボネート樹脂を含む層の片面に、特定の(メタ)アクリレート共重合体とポリカーボネート樹脂を含む樹脂層を積層させた合成樹脂積層体とすることにより、これらの特性を備えた合成樹脂積層体が得られることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、以下の合成樹脂積層体および該合成樹脂積層体を用いた透明性材料を提供するものである。
【0006】
<1> ポリカーボネートを含む基材層(B)の片面もしくは両面に、
(メタ)アクリレート共重合体(C)を5〜55質量%及びポリカーボネート(D)を95〜45質量%含む樹脂層(A)が積層された合成樹脂積層体であって、
前記(メタ)アクリレート共重合体(C)が、芳香族(メタ)アクリレート単位(c1)とメチルメタクリレート単位(c2)とを質量比(c1/c2)で5〜80/20〜95含み、かつ、前記(メタ)アクリレート共重合体(C)の質量平均分子量が5,000〜30,000であり、
前記ポリカーボネート(D)の質量平均分子量が21,000〜40,000であることを特徴とする合成樹脂積層体である。
<2> 前記樹脂層(A)のガラス転移点が110〜130℃である上記<1>に記載の合成樹脂積層体である。
<3> 前記樹脂層(A)の吸水率が0.03〜0.28%である上記<1>または<2>に記載の合成樹脂積層体である。
<4> 前記樹脂層(A)の厚さが10〜250μmであり、前記合成樹脂積層体のトータル厚さ(X)が0.1〜2.0mmであり、(A)/(X)の厚み比が0.01〜0.5である上記<1>から<3>のいずれかに記載の合成樹脂積層体である。
<5> 前記基材層(B)の質量平均分子量が18,000〜40,000である上記<1>から<4>のいずれかに記載の合成樹脂積層体である。
<6> 前記樹脂層(A)および/または前記基材層(B)が紫外線吸収剤を含有する上記<1>から<5>のいずれかに記載の合成樹脂積層体である。
<7> 前記樹脂層(A)上にハードコート処理を施した上記<1>から<6>のいずれかに記載の合成樹脂積層体である。
<8> 前記樹脂層(A)上および前記基材層(B)上にハードコート処理を施した上記<1>から<6>のいずれかに記載の合成樹脂積層体である。
<9> 前記合成樹脂積層体の片面または両面に、反射防止処理、防汚処理、耐指紋処理、帯電防止処理、耐候性処理および防眩処理のいずれか一つ以上を施した上記<1>から<8>のいずれかに記載の合成樹脂積層体である。
<10> 上記<1>から<9>のいずれかに記載の合成樹脂積層体を含む透明性基板材料である。
<11> 上記<1>から<9>のいずれかに記載の合成樹脂積層体を含む透明性保護材料である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高温や高湿な環境における形状安定性、表面硬度、耐衝撃性、耐候性および耐熱性に優れる合成樹脂積層体が提供され、該合成樹脂積層体は透明性基板材料、透明性保護材料として用いられる。具体的には携帯電話端末、携帯型電子遊具、携帯情報端末、モバイルPCいった携帯型のディスプレイデバイスや、ノート型PC、デスクトップ型PC液晶モニター、液晶テレビといった設置型のディスプレイデバイスなどに好適に使用される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下本発明について製造例や実施例等を例示して詳細に説明するが、本発明は例示される製造例や実施例等に限定されるものではなく、本発明の内容を大きく逸脱しない範囲であれば任意の方法に変更して行なうこともできる。
【0009】
本発明の合成樹脂積層体は、ポリカーボネートを含む基材層(B)の片面もしくは両面に、(メタ)アクリレート共重合体(C)を5〜55質量%及びポリカーボネート(D)を95〜45質量%含む樹脂層(A)が積層され、
前記(メタ)アクリレート共重合体(C)が、芳香族(メタ)アクリレート単位(c1)とメチルメタクリレート単位(c2)とを質量比(c1/c2)で5〜80/20〜95含み、かつ、前記(メタ)アクリレート共重合体(C)の質量平均分子量が5,000〜30,000であり、前記ポリカーボネート(D)の質量平均分子量が21,000〜40,000であることを特徴とする。
【0010】
本発明の合成樹脂積層体は、ポリカーボネート樹脂の表面硬度を上げるために、ポリカーボネートを含む基材層(B)の片面もしくは両面に、特定の(メタ)アクリレート共重合体とポリカーボネートを含む樹脂層(A)が積層される。片面のみに樹脂層(A)が積層されることにより、硬い構造である樹脂層(A)側に面衝撃を与えた際にその反対面が柔らかい構造の基材層(B)であることにより、衝撃を緩和し、衝撃による破壊を生じることが少ない。そして吸水率がポリカーボネートに近い樹脂層(A)を積層させることにより、吸水率が異なる樹脂が積層された時に生じるそりの問題も緩和される。
更に、基材層(B)の両面に樹脂層(A)を積層させた積層体は、樹脂層(A)がポリカーボネートを含むので耐衝撃性にも優れているため、その積層体の片面に面衝撃を与えてもその反対面が衝撃による破壊を起こしにくい。その上、両面側に同じ樹脂を積層させるので構造的に対称となり、そりの発生がさらに抑制されるので好ましい。
【0011】
本発明の合成樹脂積層体の形成方法は特に限定されない。例えば、個別に形成した樹脂層(A)と基材層(B)とを積層して両者を加熱圧着する方法、個別に形成した樹脂層(A)と基材層(B)とを積層して、両者を接着剤によって接着する方法、樹脂層(A)と基材層(B)とを共押出成形する方法、予め形成しておいた樹脂層(A)を用いて、基材層(B)の主成分であるポリカーボネート樹脂をインモールド成形して一体化する方法、などの各種方法があるが、製造コストや生産性の観点からは、共押出成形する方法が好ましい。
【0012】
本発明における基材層(B)に使用されるポリカーボネート及び樹脂層(A)に使用されるポリカーボネート(D)は、分子主鎖中に炭酸エステル結合を含む、−[O−R−OCO]−単位(Rが脂肪族基、芳香族基、又は脂肪族基と芳香族基の双方を含むもの、さらに直鎖構造あるいは分岐構造を持つもの)を含むものであれば特に限定されるものではない。
【0013】
本発明における基材層(B)に使用されるポリカーボネート及び樹脂層(A)に使用されるポリカーボネート(D)の製造方法は、公知のホスゲン法(界面重合法)、エステル交換法(溶融法)等、使用するモノマーにより適宜選択できる。
【0014】
本発明で使用される(メタ)アクリレート共重合体(C)は、芳香族(メタ)アクリレート単位(c1)とメチルメタクリレート単位(c2)からなる。なお本発明において(メタ)アクリレートとは、アクリレートもしくはメタクリレートの事を指す。
【0015】
芳香族(メタ)アクリレート単位(c1)を構成する芳香族(メタ)アクリレートとは、エステル部分に芳香族基を有する(メタ)アクリレートのことを言う。芳香族(メタ)アクリレートとしては、例えば、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、好ましくはフェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレートであり、より好ましくはフェニルメタクリレートである。芳香族(メタ)アクリレート単位(c1)を有することで、芳香族ポリカーボネート樹脂と混合した成形体の透明性を向上させることができる。
【0016】
メチルメタクリレート単位(c2)を構成する単量体は、メチルメタクリレートである。メチルメタクリレート単位(c2)は、ポリカーボネート系樹脂と良分散する効果を有し、成形体表面へ移行するため成形体の表面硬度を向上させることができる。
【0017】
(メタ)アクリレート共重合体(C)は、芳香族(メタ)アクリレート単位(c1)5〜80質量%及びメチルメタクリレート単位(c2)20〜95質量%を含有する(但し、(c1)と(c2)の合計は100質量%である)。(メタ)アクリレート共重合体(C)中の芳香族(メタ)アクリレート単位(c1)の含有率が5質量%以上であれば、(メタ)アクリレート共重合体(C)の高添加領域において透明性が維持され、80質量%以下であれば、芳香族ポリカーボネートとの相容性が高過ぎず、成形体表面への移行性が低下しないため、表面硬度が低下しない。
【0018】
(メタ)アクリレート共重合体(C)の質量平均分子量は、5,000〜30,000であり、10,000〜25,000が好ましい。質量平均分子量が5,000〜30,000において、芳香族ポリカーボネートとの相溶性が良好であり、表面硬度の向上効果に優れる。なお、(メタ)アクリレート共重合体(C)の質量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分子量分布(Mw/Mn)は、溶媒としてTHFやクロロホルムを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定を行うことができる。
【0019】
本発明において樹脂層(A)の製造方法は特に制限はなく、必要な成分を例えばタンブラーやヘンシェルミキサー、スーパーミキサーなどの混合機を用いて予め混合しておき、その後バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸押出機、二軸押出機、加圧ニーダーなどの機械で溶融混練するといった公知の方法が適用できる。
【0020】
本発明において、(メタ)アクリレート共重合体(C)とポリカーボネート(D)の組成比は、(C)成分が5〜55質量%に対して(D)成分が95〜45質量%である。好ましくは(C)成分が20〜50質量%に対して(D)成分が80〜50質量%である。更に好ましくは(C)成分が30〜50質量%に対して(D)成分が70〜50質量%である。この組成比内にすることにより、透明性を維持しつつ、表面硬度と耐衝撃性や吸水率といった諸物性のバランスがとれた樹脂層(A)となる。
【0021】
本発明において、ポリカーボネート(D)の質量平均分子量は、(メタ)アクリレート共重合体(C)との混合(分散)のしやすさおよび樹脂層(A)の製造のしやすさで決定される。つまり、ポリカーボネート(D)の質量平均分子量が大きすぎると(D)成分と(C)成分の溶融粘度差が大きくなりすぎる為に、両者の混合(分散)が悪くなって樹脂層(A)の透明性が悪化する、あるいは安定した溶融混練が継続できないといった不具合が起こる。逆にポリカーボネート(D)の質量平均分子量が小さすぎると、樹脂層(A)の強度が低下するので、合成樹脂積層板の耐衝撃性が低下するといった問題が発生する。ポリカーボネート(D)の質量平均分子量は、好ましくは21,000〜40,000の範囲である。より好ましくは24,000〜38,000の範囲である。さらに好ましくは27,000〜36,000の範囲である。
【0022】
本発明において、樹脂層(A)のガラス転移点は、合成樹脂積層体の耐熱性に影響する。つまり、ガラス転移点が低すぎると合成樹脂積層板の耐熱性が低下して好ましくない。ガラス転移点が高すぎると樹脂層(A)を積層させる時に過剰な熱源を必要とする場合があり好ましくない。樹脂層(A)のガラス転移点は、好ましくは110〜130℃である。より好ましくは115〜130℃である。さらに好ましくは118〜125℃である。
【0023】
本発明において、樹脂層(A)の吸水率は、合成樹脂積層体の高温高湿暴露時の変形量(そり量)に影響を及ぼす。つまり、吸水率が高すぎると変形量(g)が大きくなり好ましくない。吸水率が小さすぎると、基材層(B)の吸水率の大小関係が逆転するので上記変形と逆方向の変形量(h)が発生したりする事があるので好ましくない。樹脂層(A)の吸水率は、好ましくは0.03〜0.28%である。より好ましくは0.05〜0.2%である。さらに好ましくは0.1〜0.17%である。
【0024】
本発明において、樹脂層(A)の厚さは、合成樹脂積層体の表面硬度、耐衝撃性に影響する。つまり、樹脂層(A)の厚さが薄すぎると表面硬度が低くなり、好ましくない。樹脂層(A)の厚さが厚すぎると耐衝撃性が悪くなり好ましくない。樹脂層(A)の厚さは好ましくは10〜250μmである。より好ましくは30〜200μmである。さらに好ましくは60〜100μmである。
【0025】
本発明において、合成樹脂積層体のトータル(総)厚さは、合成樹脂積層体の高温高湿暴露時の変形量(そり量)と耐衝撃性に影響する。つまりトータル厚さが薄すぎると高温高湿暴露時の変形量(そり量)は大きくなり耐衝撃性が低下する。トータル厚さが厚い時には高温高湿暴露時の変形量(そり量)は小さくなり耐衝撃性は確保されるが、必要以上に厚い場合はポリカーボネート(D)に過剰に原料を使用する事になり経済的でない。合成樹脂積層体のトータル厚さは、好ましくは0.1〜2.0mmである。より好ましくは0.3〜2.0mmである。さらに好ましくは0.5〜1.5mmである。
樹脂層(A)の厚さと合成樹脂積層体のトータル厚さ(X)の比((A)/(X))は、合成樹脂積層体の表面硬度、耐衝撃性に影響する。つまり、厚み比が小さすぎると表面硬度が低くなり好ましくない。厚み比が高すぎると耐衝撃性が悪くなり好ましくない。厚み比は好ましくは0.01〜0.5である。より好ましくは0.015〜0.4である。さらに好ましくは0.02〜0.3である。
【0026】
本発明において、基材層(B)の質量平均分子量は、合成樹脂積層体の耐衝撃性および成形条件に影響する。つまり、質量平均分子量が小さすぎる場合は、合成樹脂積層体の耐衝撃性が低下するので好ましくない。質量平均分子量が高すぎる場合は、樹脂層(A)を積層させる時に過剰な熱源を必要とする場合があり好ましくない。また成形法によっては高い温度が必要になるので、樹脂層(A)が高温にさらされることになりその熱安定性に悪影響を及ぼすことがある。基材層(B)の質量平均分子量は、好ましくは18,000〜40,000である。より好ましくは23,000〜38,000である。さらに好ましくは27,000〜36,000である。
【0027】
本発明において、樹脂層(A)および/または基材層(B)には紫外線吸収剤を混合して使用することができる。含有量が少なすぎると耐光性が足りなくなり、含有量が多すぎると成形法によっては過剰な紫外線吸収剤が、高温度がかかることによって飛散して成形環境を汚染するので不具合を起こすことがある。その含有割合は0〜5質量%、好ましくは0〜3質量%、さらに好ましくは0〜1質量%である。紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸フェニル、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどのベンゾエート系紫外線吸収剤、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケートなどのヒンダードアミン系紫外線吸収剤、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジンなどのトリアジン系紫外線吸収剤などが挙げられる。混合の方法は特に限定されず、全量コンパウンドする方法、マスターバッチをドライブレンドする方法、全量ドライブレンドする方法などを用いることができる。
【0028】
本発明において、樹脂層(A)および/または基材層(B)には各種添加剤を混合して使用することができる。添加剤としては、例えば、抗酸化剤や抗着色剤、抗帯電剤、離型剤、滑剤、染料、顔料、可塑剤、難燃剤、樹脂改質剤、相溶化剤、有機フィラーや無機フィラーといった強化材などが挙げられる。混合の方法は特に限定されず、全量コンパウンドする方法、マスターバッチをドライブレンドする方法、全量ドライブレンドする方法などを用いることができる。
【0029】
本発明において、ハードコート処理は熱エネルギーおよび/または光エネルギーを用いて硬化させるハードコート塗料を用いることによりハードコート層を形成する。熱エネルギーを用いて硬化させるハードコート塗料としては、例えば、ポリオルガノシロキサン系、架橋型アクリル系などの熱硬化性樹脂組成物が挙げられる。また、光エネルギーを用いて硬化させるハードコート塗料としては、例えば、1官能および/または多官能であるアクリレートモノマーおよび/またはオリゴマーからなる樹脂組成物に光重合開始剤が加えられた光硬化性樹脂組成物などが挙げられる。
【0030】
本発明において、樹脂層(A)上に施す熱エネルギーを用いて硬化させるハードコート塗料としては、例えば、オルガノトリアルコキシシラン(a11)100重量部と、粒径が4〜20nmのコロイダルシリカを10〜50重量%含有するコロイダルシリカ溶液(a12)50〜200重量部からなる樹脂組成物100重量部にアミンカルボキシレートおよび/または第4級アンモニウムカルボキシレート(a13)が1〜5重量部添加された熱硬化性樹脂組成物などが挙げられる。
【0031】
本発明において、樹脂層(A)上に施す光エネルギーを用いて硬化させるハードコート塗料としては、例えば、トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート(a21)40〜80重量%と、(a21)と共重合可能な2官能および/または3官能の(メタ)アクリレート化合物(a22)20〜40重量%とからなる樹脂組成物の100重量部に光重合開始剤(a23)が1〜10重量部添加された光硬化性樹脂組成物などが挙げられる。
【0032】
本発明における基材層(B)上に施す光エネルギーを用いて硬化させるハードコート塗料としては、例えば、1,9−ノナンジオールジアクリレート(b1)20〜60重量%と、(b1)と共重合可能な2官能以上の多官能(メタ)アクリレートモノマーならびに2官能以上の多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーおよび/または2官能以上の多官能ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーおよび/または2官能以上の多官能エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーからなる化合物(b2)40〜80重量%とからなる樹脂組成物の100重量部に光重合開始剤(b3)が1〜10重量部添加された光硬化性樹脂組成物などが挙げられる。
【0033】
本発明におけるハードコート塗料を塗布する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、スライドコート法、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、メニスカスコート法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ビートコート法、捌け法などが挙げられる。
ハードコートの密着性を向上させる目的でハードコート前に塗布面の前処理を行うことがある。処理例として、サンドブラスト法、溶剤処理法、コロナ放電処理法、クロム酸処理法、火炎処理法、熱風処理法、オゾン処理法、紫外線処理法、樹脂組成物によるプライマー処理法などの公知の方法が挙げられる。
【0034】
本発明における樹脂層(A)、基材層(B)、ハードコートの各材料は、フィルター処理によりろ過精製されることが好ましい。フィルターを通して生成あるいは積層する事により異物や欠点といった外観不良が少ない合成樹脂積層体を得ることが出来る。ろ過方法に特に制限はなく、溶融ろ過、溶液ろ過、あるいはその組み合わせ等を使うことが出来る。
【0035】
使用するフィルターに特に制限はなく、公知のものが使用でき、各材料の使用温度、粘度、ろ過精度により適宜選ばれる。フィルターの濾材としては、特に限定されないがポリプロピレン、コットン、ポリエステル、ビスコースレイヨンやグラスファイバーの不織布あるいはロービングヤーン巻物、フェノール樹脂含浸セルロース、金属繊維不織布焼結体、金属粉末焼結体、ブレーカープレート、あるいはこれらの組み合わせなど、いずれも使用可能である。特に耐熱性や耐久性、耐圧力性を考えると金属繊維不織布を焼結したタイプが好ましい。
【0036】
ろ過精度は、樹脂層(A)と基材層(B)については、50μm以下、好ましくは30μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。またハードコート剤のろ過精度は、合成樹脂積層板の最表層に塗布される事から、20μm以下、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。
【0037】
樹脂層(A)と基材層(B)のろ過については、例えば熱可塑性樹脂溶融ろ過に用いられているポリマーフィルターを使うことが好ましい。ポリマーフィルターは、その構造によりリーフディスクフィルター、キャンドルフィルター、パックディスクフィルター、円筒型フィルターなどに分類されるが、特に有効ろ過面積が大きいリーフディスクフィルターが好適である。
【0038】
本発明の合成樹脂積層体にはその片面または両面に反射防止処理、防汚処理、帯電防止処理、耐候性処理および防眩処理のいずれか一つ以上を施すことができる。反射防止処理、防汚処理、帯電防止処理、耐候性処理および防眩処理の方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、反射低減塗料を塗布する方法、誘電体薄膜を蒸着する方法、帯電防止塗料を塗布する方法などが挙げられる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
製造例で得られた積層樹脂の物性測定および実施例ならびに比較例で得られた合成樹脂積層体の評価は以下のように行った。
【0040】
<質量平均分子量>
あらかじめ標準ポリスチレンをクロロホルムに溶かしてゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定した検量線を基準にして、(メタ)アクリレート共重合体とポリカーボネート樹脂を同様にGPCで測定した。両者の比較により、それぞれの質量平均分子量を算出した。GPCの装置構成は以下の通り。
【0041】
装置:Wates 2690
カラム:Shodex GPC KF−805L 8φ×300mm 2連結
展開溶媒:クロロホルム
流速:1ml/min
温度:30℃
検出器:UV・・・486nm ポリカーボネート
RI・・・特殊アクリル
【0042】
<吸水率>
JIS−K7209に準処して、各材料ペレットをシャーレに厚さが5ミリを超えないように薄く広く入れて温度80℃のオーブンに一晩入れて乾燥させた。その後温度23℃、相対湿度50%に設定した環境試験機に24時間投入した。状態調整をしたペレットを三菱化学社製の微量水分測定装置CA−200で窒素気流下にて吸水率[%]を測定した。
【0043】
<ガラス転移点>
JIS−K7121に準処して、各材料ペレットをBRUKER製の熱分析装置TG−DTA2000SAに適量セットした後、窒素雰囲気下20℃/分の速度で昇温して、ガラス転移点Tg[℃]を測定した。
【0044】
<高温高湿曝露試験>
試験片を10×6cm四方に切り出す。試験片を2点支持型のホルダーにセットして温度23℃、相対湿度50%に設定した環境試験機に24時間以上投入して状態調整した後、反りを測定した。(処理前)次に試験片をホルダーにセットして温度85℃、相対湿度85%に設定した環境試験機の中に投入し、その状態で120時間保持した。さらに温度23℃、相対湿度50%に設定した環境試験機の中にホルダーごと移動し、その状態で4時間保持後に再度反りを測定した。(処理後)そりの測定は取り出した試験片を電動ステージ具備の3次元形状測定機を使用し、試験片は上に凸の状態で水平に静置し、1ミリ間隔でスキャンし、中央部の盛り上がりを反りとして計測した。(処理後反り量)−(処理前そり量)を形状安定性として評価した。厚み1mmの試験片は無塗装品および両面塗装品については変化量300μ以下を合格とし、片面塗装品については変化量1000μ未満を合格とした。厚み0.5mmの試験片は無塗装品および両面塗装品については変化量600μ以下を合格とし、片面塗装品については変化量1900μ以下を合格とした。なお当該測定機の測定限界は2000μであり、それ以上反るものは測定不能とした。
【0045】
<鉛筆引っかき硬度試験>
JIS K 5600−5−4に準拠し、表面に対して角度45度、荷重750gで樹脂層(A)の表面に次第に硬度を増して鉛筆を押し付け、きず跡を生じなかった最も硬い鉛筆の硬度を鉛筆硬度として評価した。ハードコート未処理の試験片については鉛筆硬度HB以上を合格とし、ハードコート処理の試験片については鉛筆硬度H以上を合格とした。
【0046】
<耐衝撃性試験>
試験片を80mm四方に切り出した。温度23℃、相対湿度50%の環境に24時間以上放置して状態調整した後、直径50mmの円形フランジに樹脂層(A)を上にして固定し、樹脂層(A)上に先端半径2.5mmの金属製錘を錘の先端部分が衝突するように落下させた。次第に錘の重量を40g→160gと重く、あるいは錘を落下させる高さを増して、加える落下エネルギーを増加させた。破壊の生じなかった最も高い落下エネルギー[J]を耐衝撃性として評価した。厚み1mmでハードコート未処理およびハードコート片面処理およびハードコート両面処理の試験片については落下エネルギーが0.9J未満で破壊の生じないものを合格とし、厚み0.5mmでハードコート未処理、ハードコート片面処理およびハードコート両面処理の試験片については落下エネルギー0.3J未満で破壊の生じないものを合格とした。
【0047】
<耐光性試験>
本試験はハードコート(a2)を塗布した試験片について実施した。試験片を8×5cmに切り出した。温度23℃、相対湿度50%の環境に24時間以上放置して状態調整した後、樹脂層(A)側を上側にしてアルミ製粘着テープで中央部が露光するように鉄板に貼り付けた。これを出力19mWのUVBランプ(280〜360nm)を取り付けたブラックボックスにセットして72時間照射させた。UVB照射前後のYIを測定してΔYIが1以下を合格とした。
【0048】
<耐熱性試験>
本試験は表層側をハードコートした試験片について実施した。試験片を10×20cmに切り取り、外周の内側1cm全周にカッターで直線状にキズをつけた。これを所定の温度に昇温した乾燥機に一角をつまんで吊り下げるようにセットした。30分放置後に乾燥機から取り出してキズをつけた枠内にクラックがない時の温度が120℃以上のものを合格とした。
【0049】
製造例1〔積層樹脂(A11)用ペレットの製造〕
(メタ)アクリレート共重合体(C)としてメタブレンH-880(三菱レイヨン社製、質量平均分子量:14,000、c1/c2=33/66)30質量%と、ポリカーボネート(D)としてユーピロンE−2000(三菱エンジニアリングプラスチック社製、質量平均分子量:36,000)70質量%とを仕込みブレンダーで30分混合後、スクリュー径26mmの2軸押出機(東芝機械製、TEM−26SS、L/D≒40)を用い、シリンダー温度240℃で溶融混錬して、ストランド状に押出してペレタイザーでペレット化した。ペレット化は安定して製造できた。
【0050】
製造例2〔積層樹脂(A12)用ペレットの製造〕
(メタ)アクリレート共重合体(C)とポリカーボネート(D)の仕込み比率を40:60にした以外は製造例1と同様にペレット化を行なった。ペレット化は安定して製造できた。
【0051】
製造例3〔積層樹脂(A13)用ペレットの製造〕
(メタ)アクリレート共重合体(C)とポリカーボネート(D)の仕込み比率を50:50にした以外は製造例1と同様にペレット化を行なった。ペレット化は若干不安定であったが製造可能であった。
【0052】
製造例4〔積層樹脂(A14)用ペレットの製造〕
(メタ)アクリレート共重合体(C)とポリカーボネート(D)の仕込み比率を60:40にした以外は製造例1と同様にペレット化を行なった。ペレット化は不安定で製造不可能であった。
【0053】
製造例5〔積層樹脂(A15)用ペレットの製造〕
(メタ)アクリレート共重合体(C)とポリカーボネート(D)の仕込み比率を20:80にした以外は製造例1と同様にペレット化を行なった。ペレット化は安定して製造可能であった。
【0054】
製造例6〔積層樹脂(A21)用ペレットの製造〕
(メタ)アクリレート共重合体(C)としてメタブレンH-880(三菱レイヨン社製、質量平均分子量:14,000)30質量%と、ポリカーボネート(D)としてユーピロンS−3000(三菱エンジニアリングプラスチック社製、質量平均分子量:27,000)70質量%とを仕込みブレンダーで30分混合後、スクリュー径26mmの2軸押出機(東芝機械製、TEM−26SS、L/D≒40)を用い、シリンダー温度240℃で溶融混錬して、ストランド状に押出してペレタイザーでペレット化した。ペレット化は安定して行なわれた。
【0055】
製造例7〔積層樹脂(A22)用ペレットの製造〕
(メタ)アクリレート共重合体(C)とポリカーボネート(D)の仕込み比率を40:60にした以外は製造例6と同様にペレット化を行なった。ペレット化は安定して行なわれた。
【0056】
製造例8〔樹脂層(A)に被覆する熱硬化性樹脂組成物(a1)の製造〕
撹拌翼と滴下装置を備えた混合槽に、メチルトリメトキシシラン100質量部と酢酸1質量部を加えて混合し、氷水浴で冷却して0〜10℃に保持しながら撹拌した。次いで平均粒径10〜20nmのコロイダルシリカ30重量%溶液(日産化学工業社製、商品名:スノーテックス30)84質量部を滴下し10℃に保持しながら4時間撹拌した。更に平均粒径10〜20nmのコロイダルシリカ25〜26重量%溶液(日産化学社製、商品名:スノーテックスIBA−ST)84質量部を滴下し20℃に保持しながら50時間撹拌した。酢酸セロソルブ45質量部と、イソブチルアルコール50質量部と、ポリオキシアルキレングリコールジメチルシロキサン共重合体(信越化学工業社製、商品名:KP−341)0.02質量部とからなる混合物を25℃に保持しながら1時間かけて滴下混合し、2,4−ジヒドロキシベンゾフェエノンを樹脂分100質量部に対して10質量部添加し熱硬化性樹脂組成物(a1)を得た。
【0057】
製造例9〔樹脂層(A)に被覆する光硬化性樹脂組成物(a2)の製造〕
撹拌翼を備えた混合槽に、トリス(2−アクロキシエチル)イソシアヌレート(Aldrich社製)60質量部と、ネオペンチルグリコールオリゴアクリレート(大阪有機化学工業社製、商品名:215D)40質量部と、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(チバ・ジャパン社製、商品名:DAROCUR TPO)1質量部と、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Aldrich社製)0.3質量部と、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(チバ・ジャパン社製、商品名:TINUVIN234)1質量部からなる組成物を導入し、40℃に保持しながら1時間撹拌して光硬化性樹脂組成物(a2)を得た。
【0058】
製造例10〔基材層(B)に被覆する光硬化性樹脂組成物(b)の製造〕
撹拌翼を備えた混合槽に、1,9−ノナンジオールジアクリレート(大阪有機化学工業社製、商品名:ビスコート#260)40質量部と、6官能ウレタンアクリレートオリゴマー(新中村化学工業社製、商品名:U−6HA)40質量部と、コハク酸/トリメチロールエタン/アクリル酸のモル比1/2/4縮合物20質量部と、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(チバ・ジャパン社製、商品名:DAROCUR TPO)2.8質量部と、ベンゾフェノン(Aldrich社製)1質量部と、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(チバ・ジャパン社製、商品名:TINUVIN234)1質量部からなる組成物を導入し、40℃に保持しながら1時間撹拌して光硬化性樹脂組成物(b)を得た。
【0059】
実施例1
軸径32mmの単軸押出機と、軸径65mmの単軸押出機と、全押出機に連結されたフィードブロックと、フィードブロックに連結されたTダイとを有する多層押出装置を用いて合成樹脂積層体を成形した。軸径32mmの単軸押出機に製造例1で得た積層樹脂(A11)を連続的に導入し、シリンダ温度240℃、吐出速度2.1kg/hの条件で押し出した。また軸径65mmの単軸押出機にポリカーボネート樹脂(B1)(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、商品名:ユーピロンS−3000、質量平均分子量:27,000)を連続的に導入し、シリンダ温度270℃、吐出速度30.0kg/hで押し出した。全押出機に連結されたフィードブロックは2種2層の分配ピンを備え、温度270℃として(A11)と(B1)を導入し積層した。その先に連結された温度270℃のTダイでシート状に押し出し、上流側から温度130℃、140℃、180℃とした3本の鏡面仕上げロールで鏡面を転写しながら冷却し、(A11)と(B1)の積層体(E1)を得た。得られた積層体の厚みは1.0mm、(A11)層の厚みは中央付近で60μmであった。高温高湿暴露試験の結果2.5μmで合格であり、鉛筆引っかき硬度試験の結果Fで合格であり、耐衝撃性試験の結果2.3J以上で合格であり、総合判定は合格であった。
【0060】
実施例2
実施例1で使用した積層樹脂(A11)の吐出速度を3.0kg/hとし、ポリカーボネート樹脂(B1)の吐出速度を20kg/hとした以外は、実施例1と同様にして(A11)と(B1)の積層体(E2)を得た。得られた積層体の厚みは0.5mm、(A11)層の厚みは中央付近で60μmであった。高温高湿暴露試験の結果9.8μmで合格であり、鉛筆引っかき硬度試験の結果Fで合格であり、耐衝撃性試験の結果2.3J以上で合格であり、総合判定は合格であった。
【0061】
実施例3
実施例1で得た積層体(E1)の(A11)層上に、製造例8で得た熱硬化性樹脂組成物(a1)を硬化後の塗膜厚さが3〜8μmとなるようバーコーターを用いて塗布し、25℃で15分間乾燥した後、130℃に設定した熱風循環乾燥機で1時間硬化して(A11)層にハードコート(a1)を備えた積層体(F1)を得た。高温高湿暴露試験の結果13μmで合格であり、鉛筆引っかき硬度試験の結果4Hで合格であり、耐衝撃性試験の結果2.3Jで合格であり、耐熱性は130℃で合格であり、総合判定は合格であった。
【0062】
実施例4
実施例1で得た積層体(E1)の(A11)層上に、製造例9で得た光硬化性樹脂組成物(a2)を硬化後の塗膜厚さが3〜8μmとなるようバーコーターを用いて塗布しPETフィルムで覆って圧着し、光源距離12cm、出力80W/cmの高圧水銀灯を備えたコンベアでラインスピード1.5m/分の条件で紫外線を照射し硬化させてPETフィルムを剥離し、(A11)層にハードコート(a2)を備えた積層体(F2)を得た。高温高湿暴露試験の結果10μmで合格であり、鉛筆引っかき硬度試験の結果3Hで合格であり、耐衝撃性試験の結果2.3Jで合格であり、耐光性は0.4で合格であり、耐熱性は130℃で合格であり、総合判定は合格であった。
【0063】
実施例5
実施例1で得た積層体(E1)の(A11)層上に、製造例9で得た光硬化性樹脂組成物(a2)を硬化後の塗膜厚さが3〜8μmとなるようバーコーターを用いて塗布しPETフィルムで覆って圧着し、また(B1)層上に製造例10で得た光硬化性樹脂組成物(b)を硬化後の塗膜厚さが3〜8μmとなるようバーコーターを用いて塗布しPETフィルムで覆って圧着し、光源距離12cm、出力80W/cmの高圧水銀灯を備えたコンベアでラインスピード1.5m/分の条件で紫外線を照射し硬化させてPETフィルムを剥離し、(A11)層および(B1)層にそれぞれハードコート(a2)および(b)を備えた積層体(F3)を得た。高温高湿暴露試験の結果3μmで合格であり、鉛筆引っかき硬度試験の結果3Hで合格であり、耐衝撃性試験の結果1.88Jで合格であり、耐光性は0.4で合格であり、耐熱性は130℃で合格であり、総合判定は合格であった。
【0064】
実施例6
実施例3で使用した積層体(E1)(実施例1で得られたもの)の代わりに、実施例2で得た積層体(E2)を使用した以外は、実施例3と同様にして(A11)層にハードコート(a1)を備えた積層体(F4)を得た。高温高湿暴露試験の結果49μmで合格であり、鉛筆引っかき硬度試験の結果4Hで合格であり、耐衝撃性試験の結果2Jで合格であり、耐熱性は130℃で合格であり、総合判定は合格であった。
【0065】
実施例7
実施例4で使用した積層体(E1)(実施例1で得られたもの)の代わりに、実施例2で得た積層体(E2)を使用した以外は、実施例4と同様にして(A11)層にハードコート(a2)を備えた積層体(F5)を得た。高温高湿暴露試験の結果39μmで合格であり、鉛筆引っかき硬度試験の結果3Hで合格であり、耐衝撃性試験の結果2Jで合格であり、耐光性は0.4で合格であり、耐熱性は130℃で合格であり、総合判定は合格であった。
【0066】
実施例8
実施例5で使用した積層体(E1)(実施例1で得られたもの)の代わりに、実施例2で得た積層体(E2)を使用した以外は、実施例5と同様にして(A11)層および(B1)層にそれぞれハードコート(a2)および(b)を備えた積層体(F6)を得た。高温高湿暴露試験の結果12μmで合格であり、鉛筆引っかき硬度試験の結果3Hで合格であり、耐衝撃性試験の結果1.8Jで合格であり、耐光性は0.4で合格であり、耐熱性は130℃で合格であり、総合判定は合格であった。
【0067】
実施例9
実施例1で使用した積層樹脂(A11)の代わりに、製造例2で得た積層樹脂(A12)を使用した以外は、実施例1と同様にして(A12)と(B1)の積層体(E3)を得た。得られた積層体の厚みは1.0mm、(A12)層の厚みは中央付近で60μmであった。高温高湿暴露試験の結果17μmで合格であり、鉛筆引っかき硬度試験の結果Hで合格であり、耐衝撃性試験の結果1.7Jで合格であり、総合判定は合格であった。
【0068】
実施例10
実施例2で使用した積層樹脂(A11)の代わりに、製造例2で得た積層樹脂(A12)を使用した以外は、実施例2と同様にして(A12)と(B1)の積層体(E4)を得た。得られた積層体の厚みは0.5mm、(A12)層の厚みは中央付近で60μmであった。高温高湿暴露試験の結果50μmで合格であり、鉛筆引っかき硬度試験の結果Hで合格であり、耐衝撃性試験の結果0.47Jで合格であり、総合判定は合格であった。
【0069】
実施例11
実施例3で使用した積層体(E1)(実施例1で得られたもの)の代わりに、実施例9で得た積層体(E3)を使用した以外は、実施例3と同様にして(A12)層にハードコート(a1)を備えた積層体(F7)を得た。高温高湿暴露試験の結果85μmで合格であり、鉛筆引っかき硬度試験の結果4Hで合格であり、耐衝撃性試験の結果1.3Jで合格であり、耐熱性は130℃で合格であり、総合判定は合格であった。
【0070】
実施例12
実施例4で使用した積層体(E1)(実施例1で得られたもの)の代わりに、実施例9で得た積層体(E3)を使用した以外は、実施例4と同様にして(A12)層にハードコート(a2)を備えた積層体(F8)を得た。高温高湿暴露試験の結果70μmで合格であり、鉛筆引っかき硬度試験の結果3Hで合格であり、耐衝撃性試験の結果1.3Jで合格であり、耐光性は0.4で合格であり、耐熱性は130℃で合格であり、総合判定は合格であった。
【0071】
実施例13
実施例5で使用した積層体(E1)(実施例1で得られたもの)の代わりに、実施例9で得た積層体(E3)を使用した以外は、実施例5と同様にして(A12)層および(B1)層にそれぞれハードコート(a2)および(b)を備えた積層体(F9)を得た。高温高湿暴露試験の結果20μmで合格であり、鉛筆引っかき硬度試験の結果3Hで合格であり、耐衝撃性試験の結果1Jで合格であり、耐光性は0.4で合格であり、耐熱性は130℃で合格であり、総合判定は合格であった。
【0072】
実施例14
実施例3で使用した積層体(E1)(実施例1で得られたもの)の代わりに、実施例10で得た積層体(E4)を使用した以外は、実施例3と同様にして(A12)層にハードコート(a1)を備えた積層体(F10)を得た。高温高湿暴露試験の結果250μmで合格であり、鉛筆引っかき硬度試験の結果4Hで合格であり、耐衝撃性試験の結果0.38Jで合格であり、耐熱性は130℃で合格であり、総合判定は合格であった。
【0073】
実施例15
実施例4で使用した積層体(E1)(実施例1で得られたもの)の代わりに、実施例10で得た積層体(E4)を使用した以外は、実施例4と同様にして(A12)層にハードコート(a2)を備えた積層体(F11)を得た。高温高湿暴露試験の結果200μmで合格であり、鉛筆引っかき硬度試験の結果3Hで合格であり、耐衝撃性試験の結果0.38Jで合格であり、耐光性は0.4で合格であり、耐熱性は130℃で合格であり、総合判定は合格であった。
【0074】
実施例16
実施例5で使用した積層体(E1)(実施例1で得られたもの)の代わりに、実施例10で得た積層体(E4)を使用した以外は、実施例5と同様にして(A12)層および(B1)層にそれぞれハードコート(a2)および(b)を備えた積層体(F12)を得た。高温高湿暴露試験の結果55μmで合格であり、鉛筆引っかき硬度試験の結果3Hで合格であり、耐衝撃性試験の結果0.33Jで合格であり、耐光性は0.4で合格であり、耐熱性は130℃で合格であり、総合判定は合格であった。
【0075】
実施例17
実施例1で使用した積層樹脂(A11)の代わりに、製造例3で得た積層樹脂(A13)を使用した以外は、実施例1と同様にして(A13)と(B1)の積層体(E5)を得た。得られた積層体の厚みは1.0mm、(A13)層の厚みは中央付近で60μmであった。高温高湿暴露試験の結果95μmで合格であり、鉛筆引っかき硬度試験の結果Hで合格であり、耐衝撃性試験の結果1.2Jで合格であり、総合判定は合格であった。
【0076】
実施例18
実施例2で使用した積層樹脂(A11)の代わりに、製造例3で得た積層樹脂(A13)を使用した以外は、実施例2と同様にして(A13)と(B1)の積層体(E6)を得た。得られた積層体の厚みは0.5mm、(A13)層の厚みは中央付近で60μmであった。高温高湿暴露試験の結果300μmで合格であり、鉛筆引っかき硬度試験の結果Hで合格であり、耐衝撃性試験の結果0.46Jで合格であり、総合判定は合格であった。
【0077】
実施例19
実施例3で使用した積層体(E1)(実施例1で得られたもの)の代わりに、実施例17で得た積層体(E5)を使用した以外は、実施例3と同様にして(A13)層にハードコート(a1)を備えた積層体(F13)を得た。高温高湿暴露試験の結果450μmで合格であり、鉛筆引っかき硬度試験の結果4Hで合格であり、耐衝撃性試験の結果0.9Jで合格であり、耐熱性は125℃で合格であり、総合判定は合格であった。
【0078】
実施例20
実施例4で使用した積層体(E1)(実施例1で得られたもの)の代わりに、実施例17で得た積層体(E5)を使用した以外は、実施例4と同様にして(A13)層にハードコート(a2)を備えた積層体(F14)を得た。高温高湿暴露試験の結果400μmで合格であり、鉛筆引っかき硬度試験の結果3Hで合格であり、耐衝撃性試験の結果0.9Jで合格であり、耐光性は0.4で合格であり、耐熱性は125℃で合格であり、総合判定は合格であった。
【0079】
実施例21
実施例5で使用した積層体(E1)(実施例1で得られたもの)の代わりに、実施例17で得た積層体(E5)を使用した以外は、実施例5と同様にして(A13)層および(B1)層にそれぞれハードコート(a2)および(b)を備えた積層体(F15)を得た。高温高湿暴露試験の結果105μmで合格であり、鉛筆引っかき硬度試験の結果3Hで合格であり、耐衝撃性試験の結果0.8Jで合格であり、耐光性は0.4で合格であり、耐熱性は125℃で合格であり、総合判定は合格であった。
【0080】
実施例22
実施例3で使用した積層体(E1)(実施例1で得られたもの)の代わりに、実施例18で得た積層体(E6)を使用した以外は、実施例3と同様にして(A13)層にハードコート(a1)を備えた積層体(F16)を得た。高温高湿暴露試験の結果1500μmで合格であり、鉛筆引っかき硬度試験の結果4Hで合格であり、耐衝撃性試験の結果0.37Jで合格であり、耐熱性は125℃で合格であり、総合判定は合格であった。
【0081】
実施例23
実施例4で使用した積層体(E1)(実施例1で得られたもの)の代わりに、実施例18で得た積層体(E6)を使用した以外は、実施例4と同様にして(A13)層にハードコート(a2)を備えた積層体(F17)を得た。高温高湿暴露試験の結果1200μmで合格であり、鉛筆引っかき硬度試験の結果3Hで合格であり、耐衝撃性試験の結果0.37Jで合格であり、耐光性は0.4で合格であり、耐熱性は125℃で合格であり、総合判定は合格であった。
【0082】
実施例24
実施例5で使用した積層体(E1)(実施例1で得られたもの)の代わりに、実施例18で得た積層体(E6)を使用した以外は、実施例5と同様にして(A13)層および(B1)層にそれぞれハードコート(a2)および(b)を備えた積層体(F18)を得た。高温高湿暴露試験の結果350μmで合格であり、鉛筆引っかき硬度試験の結果3Hで合格であり、耐衝撃性試験の結果0.32Jで合格であり、耐光性は0.4で合格であり、耐熱性は125℃で合格であり、総合判定は合格であった。
【0083】
実施例25
実施例1で使用した積層樹脂(A11)の代わりに、製造例3で得た積層樹脂(A13)を使用して、その吐出速度を1.1kg/hとし、ポリカーボネート樹脂(B1)の吐出速度を31kg/hとした以外は、実施例1と同様にして(A13)と(B1)の積層体(E7)を得た。得られた積層体の厚みは1.0mm、(A13)層の厚みは中央付近で30μmであった。高温高湿暴露試験の結果80μmで合格であり、鉛筆引っかき硬度試験の結果Fで合格であり、耐衝撃性試験の結果1.5Jで合格であり、総合判定は合格であった。
【0084】
実施例26
実施例25で積層樹脂(A13)の吐出速度を1.5kg/hとし、ポリカーボネート樹脂(B1)の吐出速度を21kg/hとした以外は、実施例1と同様にして(A13)と(B1)の積層体(E8)を得た。得られた積層体の厚みは0.5mm、(A13)層の厚みは中央付近で30μmであった。高温高湿暴露試験の結果270μmで合格であり、鉛筆引っかき硬度試験の結果Fで合格であり、耐衝撃性試験の結果0.5Jで合格であり、総合判定は合格であった。
【0085】
実施例27
実施例4で使用した積層体(E1)(実施例1で得られたもの)の代わりに、実施例25で得た積層体(E7)を使用した以外は、実施例4と同様にして(A13)層にハードコート(a2)を備えた積層体(F19)を得た。高温高湿暴露試験の結果320μmで合格であり、鉛筆引っかき硬度試験の結果2Hで合格であり、耐衝撃性試験の結果1.2Jで合格であり、耐光性は0.4で合格であり、耐熱性は125℃で合格であり、総合判定は合格であった。
【0086】
実施例28
実施例4で使用した積層体(E1)(実施例1で得られたもの)の代わりに、実施例26で得た積層体(E8)を使用した以外は、実施例4と同様にして(A13)層にハードコート(a2)を備えた積層体(F20)を得た。高温高湿暴露試験の結果1100μmで合格であり、鉛筆引っかき硬度試験の結果2Hで合格であり、耐衝撃性試験の結果0.4Jで合格であり、耐光性は0.4で合格であり、耐熱性は125℃で合格であり、総合判定は合格であった。
【0087】
実施例29
実施例5で使用した積層体(E1)(実施例1で得られたもの)の代わりに、実施例26で得た積層体(E8)を使用した以外は、実施例5と同様にして(A13)層および(B1)層にそれぞれハードコート(a2)および(b)を備えた積層体(F21)を得た。高温高湿暴露試験の結果300μmで合格であり、鉛筆引っかき硬度試験の結果2Hで合格であり、耐衝撃性試験の結果0.35Jで合格であり、耐光性は0.4で合格であり、耐熱性は125℃で合格であり、総合判定は合格であった。
【0088】
実施例30
実施例1で使用した積層樹脂(A11)の代わりに、製造例5で得た積層樹脂(A15)を使用して、その吐出速度を7.0kg/hとし、ポリカーボネート樹脂(B1)の吐出速度を25kg/hとした以外は、実施例1と同様にして(A15)と(B1)の積層体(E9)を得た。得られた積層体の厚みは1.0mm、(A15)層の厚みは中央付近で200μmであった。高温高湿暴露試験の結果130μmで合格であり、鉛筆引っかき硬度試験の結果HBで合格であり、耐衝撃性試験の結果1.3Jで合格であり、総合判定は合格であった。
【0089】
実施例31
実施例30で積層樹脂(A15)の吐出速度を10kg/hとし、ポリカーボネート樹脂(B1)の吐出速度を13kg/hとした以外は、実施例1と同様にして(A15)と(B1)の積層体(E10)を得た。得られた積層体の厚みは0.5mm、(A15)層の厚みは中央付近で200μmであった。高温高湿暴露試験の結果400μmで合格であり、鉛筆引っかき硬度試験の結果HBで合格であり、耐衝撃性試験の結果1Jで合格であり、総合判定は合格であった。
【0090】
実施例32
実施例4で使用した積層体(E1)(実施例1で得られたもの)の代わりに、実施例30で得た積層体(E9)を使用した以外は、実施例4と同様にして(A15)層にハードコート(a2)を備えた積層体(F22)を得た。高温高湿暴露試験の結果520μmで合格であり、鉛筆引っかき硬度試験の結果2Hで合格であり、耐衝撃性試験の結果1Jで合格であり、耐光性は0.4で合格であり、耐熱性は135℃で合格であり、総合判定は合格であった。
【0091】
実施例33
実施例4で使用した積層体(E1)(実施例1で得られたもの)の代わりに、実施例31で得た積層体(E10)を使用した以外は、実施例4と同様にして(A15)層にハードコート(a2)を備えた積層体(F23)を得た。高温高湿暴露試験の結果1600μmで合格であり、鉛筆引っかき硬度試験の結果2Hで合格であり、耐衝撃性試験の結果0.8Jで合格であり、耐光性は0.4で合格であり、耐熱性は135℃で合格であり、総合判定は合格であった。
【0092】
実施例34
実施例5で使用した積層体(E1)(実施例1で得られたもの)の代わりに、実施例31で得た積層体(E10)を使用した以外は、実施例5と同様にして(A15)層および(B1)層にそれぞれハードコート(a2)および(b)を備えた積層体(F24)を得た。高温高湿暴露試験の結果500μmで合格であり、鉛筆引っかき硬度試験の結果2Hで合格であり、耐衝撃性試験の結果0.7Jで合格であり、耐光性は0.4で合格であり、耐熱性は135℃で合格であり、総合判定は合格であった。
【0093】
実施例35
実施例2で使用した積層樹脂(A11)の代わりに、製造例3で得た積層樹脂(A13)と、ポリカーボネート樹脂(B1)の代わりにポリカーボネート樹脂(B2)(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、商品名:ユーピロンH−3000、質量平均分子量:19,000)とを使用した以外は、実施例2と同様にして(A13)と(B2)の積層体(E11)を得た。得られた積層体の厚みは0.5mm、(A13)層の厚みは中央付近で60μmであった。高温高湿暴露試験の結果100μmで合格であり、鉛筆引っかき硬度試験の結果Hで合格であり、耐衝撃性試験の結果0.43Jで合格であり、総合判定は合格であった。
【0094】
実施例36
実施例4で使用した積層体(E1)(実施例1で得られたもの)の代わりに、実施例35で得た積層体(E11)を使用した以外は、実施例4と同様にして(A13)層にハードコート(a2)を備えた積層体(F25)を得た。高温高湿暴露試験の結果500μmで合格であり、鉛筆引っかき硬度試験の結果3Hで合格であり、耐衝撃性試験の結果0.34Jで合格であり、耐光性は0.4で合格であり、耐熱性は125℃で合格であり、総合判定は合格であった。
【0095】
実施例37
実施例5で使用した積層体(E1)(実施例1で得られたもの)の代わりに、実施例35で得た積層体(E11)を使用した以外は、実施例5と同様にして(A13)層および(B2)層にそれぞれハードコート(a2)および(b)を備えた積層体(F26)を得た。高温高湿暴露試験の結果120μmで合格であり、鉛筆引っかき硬度試験の結果3Hで合格であり、耐衝撃性試験の結果0.3Jで合格であり、耐光性は0.4で合格であり、耐熱性は125℃で合格であり、総合判定は合格であった。
【0096】
実施例38
実施例1で使用した積層樹脂(A11)の代わりに、製造例6で得た積層樹脂(A21)を使用した以外は、実施例1と同様にして(A21)と(B1)の積層体(E12)を得た。得られた積層体の厚みは1.0mm、(A21)層の厚みは中央付近で60μmであった。高温高湿暴露試験の結果2.5μmで合格であり、鉛筆引っかき硬度試験の結果Fで合格であり、耐衝撃性試験の結果2.3J以上で合格であり、総合判定は合格であった。
【0097】
実施例39
実施例2で使用した積層樹脂(A11)の代わりに、製造例6で得た積層樹脂(A21)を使用した以外は、実施例2と同様にして(A21)と(B1)の積層体(E13)を得た。得られた積層体の厚みは0.5mm、(A21)層の厚みは中央付近で60μmであった。高温高湿暴露試験の結果10μmで合格であり、鉛筆引っかき硬度試験の結果Fで合格であり、耐衝撃性試験の結果2.3J以上で合格であり、総合判定は合格であった。
【0098】
実施例40
実施例2で使用した積層樹脂(A11)の代わりに、製造例6で得た積層樹脂(A21)を使用し、ポリカーボネート樹脂(B1)の代わりにポリカーボネート樹脂(B2)を使用した以外は、実施例2と同様にして(A21)と(B2)の積層体(E14)を得た。得られた積層体の厚みは0.5mm、(A21)層の厚みは中央付近で60μmであった。高温高湿暴露試験の結果10μmで合格であり、鉛筆引っかき硬度試験の結果Fで合格であり、耐衝撃性試験の結果2Jで合格であり、総合判定は合格であった。
【0099】
実施例41
実施例1で使用した積層樹脂(A11)の代わりに、製造例7で得た積層樹脂(A22)を使用した以外は、実施例1と同様にして(A22)と(B1)の積層体(E15)を得た。得られた積層体の厚みは1.0mm、(A22)層の厚みは中央付近で60μmであった。高温高湿暴露試験の結果17μmで合格であり、鉛筆引っかき硬度試験の結果Hで合格であり、耐衝撃性試験の結果1.7Jで合格であり、総合判定は合格であった。
【0100】
実施例42
実施例2で使用した積層樹脂(A11)の代わりに、製造例7で得た積層樹脂(A22)を使用した以外は、実施例2と同様にして(A22)と(B1)の積層体(E16)を得た。得られた積層体の厚みは0.5mm、(A22)層の厚みは中央付近で60μmであった。高温高湿暴露試験の結果50μmで合格であり、鉛筆引っかき硬度試験の結果Hで合格であり、耐衝撃性試験の結果0.47Jで合格であり、総合判定は合格であった。
【0101】
実施例43
実施例2で使用した積層樹脂(A11)の代わりに、製造例7で得た積層樹脂(A22)を使用し、ポリカーボネート樹脂(B1)の代わりにポリカーボネート樹脂(B2)を使用した以外は、実施例2と同様にして(A22)と(B2)の積層体(E17)を得た。得られた積層体の厚みは0.5mm、(A22)層の厚みは中央付近で60μmであった。高温高湿暴露試験の結果50μmで合格であり、鉛筆引っかき硬度試験の結果Hで合格であり、耐衝撃性試験の結果0.43Jで合格であり、総合判定は合格であった。
【0102】
比較例1
実施例1で使用した積層樹脂(A11)の代わりに、MS樹脂(A3)(新日鐵化学製MS樹脂。商品名:MS600)を使用して、軸径32mmの単軸押出機のシリンダ温度を220℃にした以外は、実施例1と同様にして(A3)と(B1)の積層体(E18)を得た。得られた積層体の厚みは1.0mm、(A3)層の厚みは中央付近で60μmであった。さらに実施例5と同様にして積層体(E18)の(A3)層及び(B1)層にそれぞれハードコート(a2)および(b)を備えた積層体(F27)を得た。高温高湿暴露試験の結果400μmで不合格であり、耐衝撃試験で0.7Jで不合格であり、さらに耐熱性は95℃で不合格であり、総合判定は不合格であった。
【0103】
比較例2
実施例2で使用した積層樹脂(A11)の代わりに、MS樹脂(A3)(新日鐵化学製MS樹脂。商品名:MS600)を使用して、軸径32mmの単軸押出機のシリンダ温度を220℃にした以外は、実施例2と同様にして(A3)と(B1)の積層体(E19)を得た。得られた積層体の厚みは0.5mm、(A3)層の厚みは中央付近で60μmであった。高温高湿暴露試験の結果1000μmで不合格であり、さらに耐衝撃性は0.19Jで不合格であり、総合判定は不合格であった。
【0104】
比較例3
実施例1で使用した積層樹脂(A11)の代わりに、ポリメタクリル酸メチル樹脂(A4)(ARKEMA社製、商品名:ALTUGLAS V020)を使用した以外は、実施例1と同様にして(A4)と(B1)の積層体(E20)を得た。得られた積層体の厚みは1.0mm、(A4)層の厚みは中央付近で60μmであった。さらに実施例5と同様にして積層体(E20)の(A4)層及び(B1)層にそれぞれハードコート(a2)および(b)を備えた積層体(F28)を得た。高温高湿暴露試験の結果1200μmで不合格であり、耐衝撃試験で0.4Jで不合格であり、さらに耐熱性は110℃で不合格であり、総合判定は不合格であった。
【0105】
比較例4
実施例2で使用した積層樹脂(A11)の代わりに、ポリメタクリル酸メチル樹脂(A4)(ARKEMA社製、商品名:ALTUGLAS V020)を使用した以外は、実施例2と同様にして(A4)と(B1)の積層体(E21)を得た。得られた積層体の厚みは0.5mm、(A4)層の厚みは中央付近で60μmであった。高温高湿暴露試験の結果、測定不能で不合格であり、さらに耐衝撃性は0.15Jで不合格であり、総合判定は不合格であった。
【0106】
比較例5
実施例2で使用した積層樹脂(A11)の代わりに、ポリカーボネート樹脂(A5)(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、商品名:ユーピロンH−3000、質量平均分子量:19,000)を使用した以外は、実施例2と同様にして(A5)と(B1)の積層体(E22)を得た。得られた積層体の厚みは0.5mm、(A5)層は(B1)との区別がつきにくく(A5)層の厚みは不明であった。さらに実施例3と同様にして積層体(E22)の(A5)層にハードコート(a1)を備えた積層体(F29)を得た。高温高湿暴露試験の結果20μmで合格であったが、鉛筆引っかき硬度試験の結果HBで不合格であり、総合判定は不合格であった。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2-1】
【表2-2】
【0109】
表1および2より、本発明の合成樹脂積層体は高温や高湿な環境における形状安定性、表面硬度、耐衝撃性、耐候性および耐熱性に優れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の合成樹脂積層体は、高温や高湿な環境における形状安定性、表面硬度、耐衝撃性、耐候性および耐熱性に優れるという特徴を有し、透明性基板材料、透明性保護材料などとして好適に用いられ、特にOA機器・携帯電子機器の表示部前面板やタッチパネル基板さらには熱曲げ加工用シートとして好適に用いられる。