特許第6068577号(P6068577)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6068577
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F24F 1/00 20110101AFI20170116BHJP
   F24F 13/28 20060101ALI20170116BHJP
   F24F 11/02 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   F24F1/00 371B
   F24F1/00 371A
   F24F11/02 M
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-150224(P2015-150224)
(22)【出願日】2015年7月30日
(62)【分割の表示】特願2012-283849(P2012-283849)の分割
【原出願日】2012年12月27日
(65)【公開番号】特開2015-187543(P2015-187543A)
(43)【公開日】2015年10月29日
【審査請求日】2015年7月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】515294031
【氏名又は名称】ジョンソンコントロールズ ヒタチ エア コンディショニング テクノロジー(ホンコン)リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋元 正徳
【審査官】 小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−175407(JP,A)
【文献】 特開2008−111623(JP,A)
【文献】 特開2008−045798(JP,A)
【文献】 特開2007−162976(JP,A)
【文献】 特開2005−351536(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0188216(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0019505(US,A1)
【文献】 特開平09−126485(JP,A)
【文献】 米国特許第05755103(US,A)
【文献】 特開2005−156092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/00
F24F 11/02
F24F 13/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塵埃を捕集するフィルタと熱交換器と、
前記熱交換器に空気を送風する送風ファンと、
前記フィルタの上流側に配置され、前記フィルタを掃除する可動式掃除ユニットと、
前記可動式掃除ユニットに取り付けられ、紫外線を照射する紫外線照射手段とを有する室内機を備え、
前記可動式掃除ユニットは前記フィルタを掃除するブラシを有し、
前記可動式掃除ユニットの掃除開始時の進行方向において、前記紫外線照射手段は前記ブラシの後方に位置し、
前記可動式掃除ユニットは前記室内機の長手方向に往復動作する空気調和機。
【請求項2】
請求項1において、
前記送風ファンを停止した状態で前記紫外線照射手段から紫外線を照射する空気調和機。
【請求項3】
請求項2において、
前記室内機は、吹出口と、前記吹出口に配置され吹出し風の上下方向を制御する上下風向板とを有し、
前記上下風向板を閉じた状態で前記紫外線照射手段から紫外線を照射する空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機の内部を清潔に保ち、且つ、使用空間内の快適性向上に好適な空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機は、室内空気を熱交換器内循環にさせて、加熱、冷却、除湿された空気(調和空気)とし、これを室内に吹出すことにより室内を空気調和する。このとき、温度、湿度の調節以外にも様々な機能を付加することにより、使用空間内を清浄で快適な空間にすることや、長期間使用しても室内機が汚れずクリーンに保つ機能が望まれている。
【0003】
空気調和機の室内機の内部は、送風ファンによって発生する流入空気と室内機を構成する樹脂部品との摩擦により発生する静電気等により、流入空気に含まれる細かな塵、埃が室内機の構成部品に衝突して、長期の使用により埃が堆積する。特に熱交換器は流入空気に含まれる埃を取り除くために配置されたフィルタの直後に配置されるため、フィルタを潜り抜けた細かな埃が堆積しやすく、さらに夏季の冷房、除湿運転で熱交換器を構成するアルミフィンに空気中の水分が結露して付着するため高湿になり、この水分と埃の栄養分をもとにして雑菌、カビ類などが増殖し、フィルタが汚染される。
【0004】
このような状態になると、複数枚で構成されるアルミフィン間が目詰まりして流入空気が通過しにくくなるため、熱交換がされず、冷暖房性能が低下する。さらに、発生したカビなどから異臭が発生したり、喘息やアレルギー反応を引き起こす原因となる。
【0005】
これに対して、室内機内部を清潔に保つ空気調和機として特許文献1が知られている。
特許文献1ではLEDをフィルタの空気流れ方向上流または下流、熱交換器の空気流れ方向の上流または下流に常設する。酸化チタンや酸化亜鉛、アパタイトなどの光触媒をつけた浮遊物分解部で空気中の菌やカビなどを捕らえ、この浮遊物分解部にLED光を照射することで光触媒を励起させて菌、カビを除去する。
【0006】
しかし、室内機の空気流入経路にLEDを配置した場合、特に熱交換器の上流や下流側に常設すると流入空気の抵抗体となるため圧力損失が大きくなり、冷暖房時の基本性能低下に繋がることになる。さらに熱交換器の下流側には手が届きにくく、LED表面に埃が付着、堆積した場合でも掃除することが出来ず、光を照射できずに本来の性能を発揮することが困難となる。また、菌やカビなどを捕らえ分解、除去するための浮遊物分解部に付けられた光触媒等とLED照射による構成のため除菌機能を達成するためのコストが高くなることや、長期使用によるLEDの交換が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−300110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、空気調和機の室内機内部を清潔に保ち、不快な臭いや菌を室内機の吹出口から吹出されることを防止する空気調和機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の空気調和機は塵埃を捕集するフィルタと熱交換器と、熱交換器に空気を送風する送風ファンと、フィルタの上流側に配置され、フィルタを掃除する可動式掃除ユニットと、可動式掃除ユニットに取り付けられ、紫外線を照射する紫外線照射手段とを有する室内機を備え、前記可動式掃除ユニットは前記フィルタを掃除するブラシを有し、前記可動式掃除ユニットの掃除開始時の進行方向において、前記紫外線照射手段は前記ブラシの後方に位置し、可動式掃除ユニットは前記室内機の長手方向に往復動作する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、空気調和機の室内機内部を清潔に保ち、不快な臭いや菌を室内機の吹出口から吹出されることを防止する空気調和機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施例に係る空気調和機の構成図
図2図1の室内機の側断面図
図3】前面パネル7を外した状態の室内機2の斜視図
図4】紫外線LEDを備えた室内機2の側断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施例の空気調和機は、室内空気の塵埃を捕集するフィルタと熱交換器と、熱交換器で熱交換するように送風する送風ファンと、送風ファンからの気流を案内するケーシング部と、ケーシング部と連続して配置された吹出口と、吹出口に配置され吹出し風の上下方向を制御する羽根と、塵埃捕集用フィルタの吸込み空気上流側に配置され、熱交換器に向けて、波長254nm〜280nmの紫外線を照射する紫外線LEDと、を備える。紫外線波長を254nm〜280nmとすることでカビや菌などの細胞を損傷させ紫外光自体で除菌することが可能となり構成部品を最小化しコスト抑制することができる。従って、低コストで空気調和機の室内機内部を清潔に保ち、不快な臭いや菌を室内機の吹出口から吹出されることを防止することができる。
【0013】
以下、本発明の実施例を図面に基づき説明する。まず、本実施例の空気調和機1の全体構成を、図1〜3を用いて説明する。図1は本実施例の空気調和機1の構成図、図2図1の室内機2の側断面図、図3は前面パネル7を外した状態の室内機2の斜視図である。
【0014】
図1において、空気調和機1は、室内機2と室外機3とを接続配管5で繋いで構成され、室内を空気調和する。室内機2の筐体9には送風ファン14、フィルタ15、15’、熱交換器16、露受皿17、上下風向板18、18‘、左右風向板19等の基本的な内部構造体が取付けられる。熱交換器16は送風ファン14の吸込側に配置され、略逆V字状に形成される。
【0015】
筐体9の内側に取付けられた送風ファン14等の基本的な内部構造体は、化粧枠8を取付けることにより室内機2内に内包される。化粧枠8の前面には前面パネル7が取付けられる。前面パネル7の下方には運転状況を表示する表示部11と、別体のリモコン12からの赤外線の操作信号を受ける受光部10とが配置される。
【0016】
図2において、送風ファン14を作動することにより空気は白抜き矢印のように流れ、通過する空気中の塵埃はフィルタ15、15’に捕集される。フィルタ15、15’は、吸い込まれた室内空気中に含まれる塵埃を取り除くためのものであり、熱交換器16の吸込側を覆うように配置される。フィルタ15、15‘に補足された埃は空気調和運転停止後、埃をかき取るための起毛ブラシ25のついた可動式フィルタ掃除ユニット26を室内機2の長手方向に沿って往復動作させることで取り除かれる。これにより、フィルタ15、15’を清潔に保ち、フィルタ15、15‘の網の目詰まりによる流入空気の減少を抑えて冷暖房性能の低下を抑制する。可動式フィルタ掃除ユニット26は、空気調和運転中には室内機2のフィルタ15、15’右端に停止状態で位置し、空気調和運転停止後に図3矢印のように左に動作し、フィルタ15、15‘左端に到達したら折り返し、もとの位置に戻り停止する。送風ファン14は、室内空気を空気吸込口6から吸い込んで、空気吹出口13から吹出すように室内機2内の中央に配置される。
【0017】
空気調和機1は、室内空気を熱交換器16に循環させて、加熱、冷却または除湿した調和空気にし、これを室内に吹出すことにより室内環境を快適なものとする。このとき、循環空気中の塵埃を除去するフィルタ15、15’を熱交換器16の吸込み側に配置するので、循環空気中の塵埃はフィルタ15、15’で大半が捕集されるが、その一部はフィルタ15、15’の網目を潜って空気調和機1の内部に入る。この塵埃は、空気調和機1内の風路に面したあらゆる壁に衝突し、跳ね返されて再び気流中に戻る。気流中に戻った塵埃は空気調和機1の吹出口から室内に戻る。
【0018】
しかし、塵埃中のあるものは、静電気的な力、重力の作用、化学的な親和力などの影響で跳ね返されずに空気調和機1の内壁に付着する。埃が付着する要因としては、送風ファン14によって生じる流入空気の物理的エネルギーによって壁面に衝突して付着する埃と、低湿度環境では静電気的な力が作用して埃が付着すると考えられる。
【0019】
壁に付着した塵埃は、あるものは比較的短時間のうちに気流その他の影響で壁から剥離し、気流に乗って空気調和機1の外に運び出されるが、あるものは、比較的長時間壁に付着したままとなる。このように、付着してから長時間が経過すると塵埃の種類によっては物理化学的に変化し、含まれるカビなどの菌類が成長し、その分泌物や菌糸などで壁に強固に付着するようなものもある。特に熱交換器16は流入空気に含まれる埃を取り除くために配置されたフィルタ15、15‘の直後に配置されるため、フィルタ15、15’を潜り抜けた細かな埃が堆積しやすく、さらに夏季の冷房、除湿運転で熱交換器16を構成するアルミフィンに空気中の水分が結露して付着するため高湿になり、この水分と埃の栄養分をもとにして雑菌、カビ類などが増殖し汚染されていく。このような状態になると、複数枚で構成されるアルミフィンの間が目詰まりを起こし、流入空気が通過しにくくなるため熱交換がされず、冷暖房性能が低下する。さらに、発生したカビなどから異臭が発生したり、喘息やアレルギー反応を引き起こす原因となり室内の環境を悪化させる。
【0020】
従って、このような課題を解決するためには、熱交換器16に付着した埃に含まれるカビや菌を繁殖できないように除菌すればよい。除菌の手段としては、254nm〜280nm波長領域の紫外線LEDを熱交換器16に照射することが有効な手段となる。
【0021】
ここで、紫外線LEDを用いて室内機2内部を清潔に保つ機構を備えた空気調和機と除菌動作について図4を用いて説明する。図4は紫外線LEDを備えた室内機2の側断面図である。熱交換器16に付着する埃に含まれる菌やカビに対し広く紫外線を照射させるために、紫外線LED27は可動式掃除ユニット26のフィルタ15、15‘に面する位置で起毛ブラシ25の進行方向となる下流側に取り付ける。空気調和運転後、可動式掃除ユニット26を前述の通り、室内機2の長手方向に往復させることで、空気調和運転により付着したフィルタ15、15’の埃を起毛ブラシ25で取り除きながら紫外線を照射するため、熱交換器16の全域にわたって紫外線を有効に照射させることができる。
【0022】
ここで照射される紫外線は波長254nm〜280nmの紫外線であり、波長254nm〜280nmとすることにより菌やカビの細胞内のDNAに紫外線が直接吸収され化学変化を起こし、遺伝子に損傷を与えて修復機能を失わせ、瞬時に除菌することが可能となる。
【0023】
また、空気調和機の運転停止後に熱交換器16に紫外線を照射して付着した菌やカビを除菌するため、送風ファン14の動作による室内機2内部への空気の流入がなくなり、埃が新たに侵入することがなくなる。従って、熱交換器16に付着した菌やカビは確実に除菌してほぼ全滅させ、次の空気調和運転時に、菌やカビ、それらによって発せられる悪臭などを室内空間に吹出することがなくなる。
【0024】
さらに、前面パネル7、上下風向板18が閉じられた空気調和機の運転停止中に、除菌動作(紫外線LEDによる紫外線の照射)を実施する。除菌動作中、紫外線LED27を通電すると紫外線により空気中の酸素分子が解離して酸素原子が放出され、さらに酸素分子と結びつくことでオゾンを発生する。このオゾンは酸化力が強く反応性が高いため除菌や脱臭に有効であるが高濃度となった場合、人体に影響を与える可能性がある。上下風向板18、18’を閉じた状態で除菌動作となる紫外線LED27を動作させることで、空気調和機の使用空間内にオゾンを放出させることなく人体への安全性を確保し、室内機2内部にオゾンを充満させることによって紫外線LED27との相乗効果で熱交換器16に付着した菌やカビを除菌することが可能となる。
【0025】
本実施例の空気調和機においては、紫外線LED27の下流部に位置するフィルタ15、15‘は、空気中の埃を除去するための網として一般的に、繊維状のPET樹脂やPP樹脂などを網状にしたものを使用するが、紫外線が照射されることにより光エネルギーを吸収して樹脂を構成する高分子の分子鎖中にラジカルを生成させ、他の分子からの水素引き抜き反応などを誘発することで酸化が起こり劣化する。この劣化を防止するために、フィルタ15、15’を構成する網は金属を使用するか、又は、樹脂繊維に金属をコーティングしたものを使用する。フィルタ15、15‘を金属とすることで紫外線による酸化劣化を防止することができ、長期にわたって紫外線LED27による除菌作用を得ることが可能となる。使用する金属はより酸化のしにくいステンレスが好ましく、コーティングの方法としてはスパッタリング、蒸着による方法が構成する樹脂との密着性が高まり耐久性が得られる。
【0026】
以上説明したように、本実施例の空気調和機は、室内空気の塵埃を捕集するフィルタと熱交換器と、熱交換器で熱交換するように送風する送風ファンと、送風ファンからの気流を案内するケーシング部と、ケーシング部と連続して配置された吹出口と、吹出口に配置され吹出し風の上下方向を制御する羽根と、塵埃捕集用フィルタの吸込み空気上流側に配置され、熱交換器に向けて、波長254nm〜280nmの紫外線を照射する紫外線LEDと、を備える。紫外線波長を254nm〜280nmとすることでカビや菌などの細胞を損傷させ紫外光自体で除菌することが可能となり構成部品を最小化しコスト抑制することができる。従って、低コストで空気調和機の室内機内部を清潔に保ち、不快な臭いや菌を室内機の吹出口から吹出されることを防止することができる。
【0027】
また、本実施例においては、室内機の長手方向及び奥行き方向の少なくとも一方に、紫外線LED27を往復動作させて、波長254nm〜280nmの紫外線を照射する。紫外線LED27を往復動作させることにより、少ないLEDの数で熱交換器全域にわたり紫外光を照射させることができる。
【0028】
また、本実施例においては、空気調和機の運転停止後に紫外線LEDを往復動作させて、波長254nm〜280nmの紫外線を照射する。波長254nm〜280nmの紫外線LEDは人体に影響する可能性のあるオゾンを発生させるが、空気調和運転を停止した後に紫外線LEDを動作させることにより、送風によるオゾンの使用空間への拡散を防止することができる。
【0029】
また、本実施例においては、フィルタを構成する網として、金属又は樹脂繊維網に金属をコーティングしたものとする。金属又は樹脂繊維網に金属をコーティングしたものを使用することにより、フィルタの紫外線劣化防止することができる。
【符号の説明】
【0030】
1…空気調和機、2…室内機、3…室外機、5…接続配管、6…空気吸込口、7…前面パネル、8…化粧枠、9…筐体、10…受光部、11…表示部、12…リモコン、13…空気吹出口、14…送風ファン、15…フィルタ、15‘…フィルタ、16…熱交換器、17…露受皿、18…上下風向板、18‘…上下風向板、19…左右風向板、21…ケーシング部、25…起毛ブラシ、26…可動式掃除ユニット、27…紫外線LED
図1
図2
図3
図4