(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種のインクカートリッジには、装填先となる印刷装置との間で近距離無線通信により通信されるインクカートリッジやインクに関する各種情報(以下、これら情報を総称して「カートリッジ情報」という)を記憶するメモリ(記憶手段)を備えた通信タグが設けられている。
【0006】
印刷装置は、装填されたインクカートリッジの通信タグに記憶されるカートリッジ情報を読み取り、装填されたインクカートリッジがどのような状態であるかを認識して現在のインクカートリッジの状態に合った制御を行っている。
【0007】
よって、インク吐出時のインクヘッドの制御がインク毎に異なる場合、インクカートリッジ内のインク種類と通信タグに記録されているインク種類が異なってしまうと、インクヘッドが目詰まりするという問題がある。
また、ユーザは、インク残量を監視しながら印刷ジョブを送信しているため、インク容器内のインク残量と通信タグに記録されているインク残量が相違すると、印刷ジョブ中にインク残量が無い状態に陥り、印刷処理が中断してしまうという問題がある。
さらに、カートリッジ情報には、インク残量情報や空情報のようなインクに関する情報の他、印刷装置との互換性情報やユーザサービスに関する情報等の多岐にわたり記憶されているため、正確な情報が記憶されていないと、ユーザに対して安定した機能・性能を提供することができないという問題がある。
【0008】
このように、通信タグに記憶される情報は印刷処理を円滑に、且つ安定して行うために非常に重要な情報であり、作製されるインクカートリッジと対応させる必要がある。
【0009】
しかしながら、インクカートリッジを再生産する場合、対応するインクカートリッジの仕様や状態が変わるため、それに合わせてカートリッジ情報を書き換えなければならないが、この書き換え作業は非常に手間を要する。また、カートリッジ情報にはインク残量情報や空情報のようなインクに関する情報の他、印刷装置との互換性情報やユーザサービスに関する情報等の多岐にわたり記憶されているため、これら全ての情報が正しく書き換えられているか否かを確認する作業が必要となり非常に煩雑となる。
【0010】
さらに、通信タグはインクなどの水分に弱い電子デバイスであるため、インク容器に注入されるインクが飛散して通信タグが破損したり汚れたりしないように一旦カートリッジから取り外す必要があるが、通信タグを書き換えた場合、取り外した通信タグを再度対応するインクカートリッジに取り付けなければならず、通信タグの管理作業が必要となり煩雑となる。
【0011】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、インクカートリッジに対応するカートリッジ情報が記憶された通信タグを用いて正確に再生産工程を実施することのできるインクカートリッジの再生産方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した目的を達成するため、本発明に係る第1の態様は
、インクに関するインク情報を含むカートリッジ情報が書き込まれた通信タグを有し、
前記カートリッジ情報を読み取っ
てインク容器内のインクを供給する機能を備えた印刷装置に取り付けられるインクカートリッジの再生産方法であって、
前記インクカートリッジは、
長方形状の開口を有する外装体と、
前記外装体に収容される前記インク容器の内部と外部を連通させる供給口部と、
本体の裏面側の周縁に形成される嵌合リブと、本体の略中央部分に形成され前記供給口部と係合する係合孔と、前記係合孔の周縁に前記嵌合リブと同方向に立設される係合リブと、弦部と円弧部からなり前記係合孔と横方向に隣り合う位置において前記弦部が短辺側における嵌合リブの基端と接した状態で形成される前記通信タグの貼着領域と、前記貼着領域の円弧部の各端部を結んで形成される仮想円VCの中心Oを原点として前記中心Oを通る前記係合部の長辺と平行であって前記係合リブに接近する向きを正の向きとする仮想線Xと前記中心Oを前記仮想線Xと直交する方向に通る仮想線Yを座標軸とした直交座標系で区画したときの第一象限及び第四象限にある前記貼着領域内の領域である形成領域Ea内に形成されるタグ剥がし孔とを有し、前記インク容器を前記外装体に収容したときに該外装体の開口に嵌合される係合部と、
を備え、
交換用通信タグ
の一部が、再生産されるインクカートリッジの係合部における前記形成領域Ea内のタグ剥がし孔と被るように、前記交換用通信タグを配置する工程と、
を有することを特徴とする、インクカートリッジの再生産方法である。
【0013】
本発明に係る第2の態様は
、インクに関するインク情報を含むカートリッジ情報が書き込まれた通信タグを有し、
前記カートリッジ情報を読み取ってインク容器内のインクを供給する機能を備えた印刷装置に取り付けられるインクカートリッジの再生産方法であって、
前記インクカートリッジは、
長方形状の開口を有す
る外装体と、
前記外装
体に収容される前記インク容器の内部と外部を連通させる供給口部と、
本体
の裏面側の周縁に形成される嵌合リブと、
前記本体の略中央部分に形成され前記供給口部と係合する係合孔と、前記係合孔の周縁に前記嵌合リブと同方向に立設される係合リブと、
前記嵌合リブと前記係合リブとの間に貼着される通信タグで覆われる位置であって前記通信タグの重心Gを通って長辺側の嵌合リブと直角をなす仮想垂線PLで区切られた前記係合リブ側の領域である形成領域E
e内に少なくとも一部が形成されるタグ剥がし孔とを有し、前記インク容器を前記外装体に収容したときに該外装体の開口に嵌合される係合部と、を備え、
交換用通信タグの一部が、再生産されるインクカートリッジの係合部における前記形成領域Ee内のタグ剥がし孔と被るように、前記交換用通信タグを配置する工程と、
を有することを特徴とする、インクカートリッジの再生産方法である。
【0014】
本発明に係る第3の態様は、インクに関するインク情報を含むカートリッジ情報が書き込まれた通信タグを有し、
前記カートリッジ情報を読み取ってインク容器内のインクを供給する機能を備えた印刷装置に取り付けられるインクカートリッジの再生産方法であって、
前記印刷装置と係合する係合部の角部から外れた位置に形成されたタグ剥がし孔と被るように
貼着された前記通信タグを除去する工
程を有することを特徴とする、インクカートリッジの再生産方法である。
【0015】
本発明に係る第4の態様は、ンクに関するインク情報を含むカートリッジ情報が書き込まれた通信タグを有し、
前記カートリッジ情報を読み取ってインク容器内のインクを供給する機能を備えた印刷装置に取り付けられるインクカートリッジの再生産方法であって、
交換用通信タグの一部が、前記印刷装置と係合する係合部の角部から外れた位置に形成されたタグ剥がし孔と被るように、前記交換用通信タグを
貼着する工
程を有することを特徴とする、インクカートリッジの再生産方法である。
本発明に係る第5の態様は、インクに関するインク情報を含むカートリッジ情報が書き込まれた通信タグを有し、
前記カートリッジ情報を読み取ってインク容器内のインクを供給する機能を備えた印刷装置に取り付けられるインクカートリッジの再生産方法であって、
前記印刷装置と係合する係合部の角部から外れた位置に形成されたタグ剥がし孔と被るように貼着された前記通信タグを除去する工程と、
交換用通信タグの一部が、前記印刷装置と係合する係合部の角部から外れた位置に形成されたタグ剥がし孔と被るように、前記交換用通信タグを配置する工程と、
を有することを特徴とする、インクカートリッジの再生産方法である。
本発明に係る第6の態様は
、インクに関するインク情報を含むカートリッジ情報が書き込まれた通信タグを有し、
前記カートリッジ情報を読み取ってインク容器内のインクを供給する機能を備えた印刷装置に取り付けられるインクカートリッジの再生産方法であって、
交換用通信タグの一部が、前記印刷装置と係合する係合部の角部から外れた位置に形成されたタグ剥がし孔と被るように、前記交換用通信タグを配置する工程と、
前記交換用通信タグが設けられた前記インク容器を交換用外装体に装填する工程と、
を有することを特徴とする、インクカートリッジの再生産方法である。
本発明に係る第7の態様は、第
3又は第5の態様に係るインクカートリッジの再生産方法において、前記タグ剥がし孔は、
前記インク容器が収容される外装体に嵌合される係合部の周縁に設けられる嵌合リブの角部から外れた位置に形成され、
前記タグ剥がし孔に棒状部材を差し込んで、前記係合部に貼着された前記通信タグの一部分を浮かし、前記一部分を摘んで引っ張ることで前記通信タグを前記係合部から除去することを特徴とする、インクカートリッジの再生産方法である。
本発明に係る第8の態様は、第
3〜第
6の何れかの態様に係るインクカートリッジの再生産方法において、
前記タグ剥がし孔は、再生産されるインクカートリッジの前記インク容器を収容する外装体に嵌合される係合部の周縁に形成される嵌合リブの角部から外れた位置に形成されることを特徴とする、インクカートリッジの再生産方法である。
【0016】
本発明に係る第9の態様は、第
1〜第
8の何れかの態様に係るインクカートリッジの再生産方法において、
前記交換用通信タグは、前記交換用通信タグの少なくとも一部の領域に、前記交換用通信タグの配置位置を調整する調節部材を介在させて配置されることを特徴とする、インクカートリッジの再生産方法である。
本発明に係る第10の態様は、
第1〜第5、第7〜第9の何れかの態様に係るインクカートリッジの再生産方法において、さらに、前記交換用通信タグが設けられた前記インク容器を交換用外装体に装填する工程を含むことを特徴とする、インクカートリッジの再生産方法である。
本発明に係る第11の態様は、第1〜第
9の何れかの態様に係るインクカートリッジの再生産方法において、前記インク容器に所定量のインクを注入する工程を含むことを特徴とする、インクカートリッジの再生産方法である。
【発明の効果】
【0017】
第1の態様に係るインクカートリッジの再生産方法によれば、
交換用通信タグの少なくとも一部が、インクカートリッジの係合部における形成領域Ea内に形成されたタグ剥がし孔と被るように、交換用通信タグを配置することで、インクカートリッジの再生産時に使用済みの通信タグを剥がす際に、作業者の指が差し入れやすい係合部の角部から外れた箇所が浮き上がるため、容易に摘んで剥がすことができる。また、通信タグの被貼着対象となるインクカートリッジの仕様に基づくカートリッジ情報を記憶させた交換用の通信タグを用いることで、使用済みの通信タグに記憶されるカートリッジ情報の煩雑な書き換え処理を行う必要がなく、容易にインクカートリッジを再生産することができる。
【0018】
第2の態様に係るインクカートリッジの再生産方法によれば、
交換用通信タグの少なくとも一部が、インクカートリッジの係合部における形成領域Ee内に形成されたタグ剥がし孔と被るように、交換用通信タグを配置することで、インクカートリッジの再生産時に使用済みの通信タグを剥がす際に、作業者の指が差し入れやすい係合部の角部から外れた箇所が浮き上がるため、容易に摘んで剥がすことができる。また、通信タグの被貼着対象となるインクカートリッジの仕様に基づくカートリッジ情報を記憶させた交換用の通信タグを用いることで、使用済みの通信タグに記憶されるカートリッジ情報の煩雑な書き換え処理を行う必要がなく、容易にインクカートリッジを再生産することができる。
【0019】
第3の態様に係るインクカートリッジの再生産方法によれば、係合部の角部から外れた位置に形成されたタグ剥がし孔と被るように通信タグが配置されているため、インクカートリッジの再生産時に使用済みの通信タグを剥がす際に、係合部の角部から外れた箇所が浮き上がり、容易に摘んで除去することができる。
第4の態様に係るインクカートリッジの再生産方法によれば、交換用通信タグの少なくとも一部が、係合部の角部から外れた位置に形成されたタグ剥がし孔と被るように、交換用通信タグを配置することで、インクカートリッジの再生産時に使用済みとなる交換用通信タグを係合部の角部から外れた箇所が浮き上がるため、容易に摘んで剥がすことができる。
第5の態様に係るインクカートリッジの再生産方法によれば、係合部の角部から外れた位置に形成されたタグ剥がし孔と被るように通信タグが配置され、また係合部の角部から外れた位置に形成されたタグ剥がし孔と被るように交換用通信タグを配置するため、インクカートリッジの再生産時に使用済みの通信タグを剥がす際に、係合部の角部から外れた箇所が浮き上がり、容易に摘んで除去することができる。
第6の態様に係るインクカートリッジの再生産方法によれば、
使用時のインク汚れ、擦れ、折れなどがある使用済みの外装体を使い回すことなく、交換用の通信タグが設けられたインク容器を交換用として新たに組み立てた外装体に装填することで、再生産品としての品質を新品と同様の品質とすることができる。
第7の態様に係るインクカートリッジの再生産方法によれば、
インク容器が収容される外装体に嵌合される係合部の周縁に設けられる嵌合リブの角部から外れた位置に形成されたタグ剥がし孔に棒状部材を差し込んで、係合部に設けられた通信タグの一部分を浮かし摘んで引っ張ることで通信タグを係合部から除去するため、インクカートリッジの再生産時に容易に使用済みの通信タグを除去することができる。
【0020】
第8の態様に係るインクカートリッジの再生産方法によれば、
再生産されるインクカートリッジのインク容器が収容される外装体に嵌合される係合部の周縁に設けられる嵌合リブの角部から外れた位置に形成されたタグ剥がし孔と一部が被るように交換用通信タグを配置しているため、インクカートリッジの再生産時に使用済みとなる交換用通信タグを係合部の角部から外れた箇所が浮き上がるため、容易に摘んで剥がすことができる。
【0021】
第9の態様に係るインクカートリッジの再生産方法によれば、
通信タグと係合部の間に調節部材を介在させることで、インクカートリッジを再生産した際に、交換した通信タグとカートリッジ装填先となる印刷装置との間の通信状態が安定するように通信タグと無線通信部との間の通信距離や通信角度を微調整することができるため、使用可能な通信タグの種類が増え、汎用性をもたせることができる。
第10の態様に係るインクカートリッジの再生産方法によれば、
使用時のインク汚れ、擦れ、折れなどがある使用済みの外装体を使い回すことなく、交換用の通信タグが設けられたインク容器を交換用として新たに組み立てた外装体に装填することで、再生産品としての品質を新品と同様の品質とすることができる。
第11の態様に係るインクカートリッジの再生産方法によれば、再生産されるインクカートリッジに応じて適切な量のインクを注入することで、ユーザが所望するインクカートリッジを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。この実施の形態によって本発明が限定されるものではなく、この形態に基づいて当業者などにより考え得る実施可能な他の形態、実施例及び運用技術などは全て本発明の範疇に含まれるものとする。
【0024】
なお、本明細書において、添付する各図を参照した以下の説明において、方向乃至位置を示すために上、下、左、右の語を使用した場合、これはユーザが各図を図示の通りに見た場合の上、下、左、右に一致する。
【0025】
また、本発明に係るインクカートリッジ1を印刷装置100に対して水平に着脱する方向を「着脱方向A」とし、インクカートリッジ1を印刷装置100に挿入して装填させる方向を「装填方向A1」、 インクカートリッジ1を印刷装置100から離脱させ取り外す方向を「離脱方向A2」とする。
【0026】
さらに、装填方向A1は、インクカートリッジ1に充填されたインクが印刷装置100に流出する方向(以下、「インク流出方向B」という)と同方向となり、インク容器10を外装体20に収容する際に挿入する方向は、離脱方向A2と同方向となる。
【0027】
[1.印刷装置の全体構成]
図1(a)〜(c)の何れかに示すように、本形態に係るインクカートリッジ1が装填される印刷装置100は、多数のノズルが形成されたインクヘッドを複数備え、それぞれのインクヘッドから異なる色のインクを吐出してライン単位で印刷を行い、搬送ベルト上の印刷用紙上に複数の画像を互いに重なり合うように形成するインクジェット方式のラインカラープリンタを例に説明する。
【0028】
なお、本形態では、ライン型のインクヘッドが4つ設けられ、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の4色のインクを各インクヘッドから吐出して画像形成を行うが、インクヘッドの数やインクの色数・種類については特に限定されない。
【0029】
また、印刷装置100には、該装置を構成する各部を統括的に制御して印刷ジョブに応じた印刷処理を実行させるための制御部110が具備されている。この制御部110によって、上述したインクヘッドによる印刷処理や、搬送機構の駆動制御の他、インクカートリッジ1からのインク供給に関する制御も行う。
【0030】
さらに、制御部110には、例えば操作キーや表示/入力パネルなどで構成される入力機器からなる設定操作部120が接続されており、この設定操作部120を通じて、ユーザによる指示や設定操作を受け付けることができる。
【0031】
図1(a)、(c)に示すように、印刷装置100における装置本体100aの上部には、インクカートリッジ1を取り付けるカートリッジ取付機構130が、インクヘッド毎に複数(図中ではインクヘッドの数に合わせて4つ)に設けられている。
【0032】
また、カートリッジ取付機構130の上方を覆うように上面装置140が配設されている。インクカートリッジ1を装填する際は、この上面装置140下面と印刷装置100の本体の上面との間に水平方向に挿入することにより行われる。この上面装置140は、例えば、ADF(auto document feeder)にセットした原稿を搬送に伴い光学的に読み取ってディジタルデータ化する画像読取装置(スキャナ)や、上記設定操作部120が配設される。
【0033】
さらに、カートリッジ取付機構130には、インクカートリッジ1を印刷装置100に装填した際に、後述する係合部30と嵌合するホルダ部131が設けられている。
【0034】
ホルダ部131は、係合部30に組み付けられる後述するインク供給部13を覆うように該供給部13に設けられた供給部側ジョイント部18と嵌合する図示しないホルダ側ジョイント部を備えている。インクカートリッジ1を印刷装置100に装填した際に、係合部30とホルダ側ジョイント部とが嵌合することで、後述する中栓15が付勢手段16の付勢力に抗して押し込まれてインク供給部13の内部と外部が連通する。これにより、インク容器10と印刷装置100に設けられた図示しないインク経路との間のインク流出路が開通されるため、インク容器10内のインクがインク流出方向Bに沿って流出可能となる。
【0035】
また、印刷装置100は、
図2に示すように、インクカートリッジ1に設けられる通信タグ36からインクカートリッジ1の仕様や状態を示す後述するカートリッジ情報(具体的な情報の内容は後段にて詳述)の読み書き(リード/ライト)機能を有する無線通信部150と、印刷装置100を構成する各部の駆動制御を統括的に行う制御部160とを備えている。
【0036】
無線通信部150は、通信タグ36との間で近距離無線通信(Near field radio communication:NFC)によって通信を行うリーダ/ライタ端末で構成され、制御部160の制御により、通信タグ36に記憶されるカートリッジ情報を読み取り、必要に応じて更新された情報の書き込みを行っている。
【0037】
なお、近距離無線通信の規格は種々存在するが、少なくとも数センチから数十センチ程度の非接触通信が可能であれば、印刷装置100の仕様、装置の使用環境、通信タグ36の構成などに応じて適切なものを設定すればよい。
【0038】
制御部160は、CPU(central processing unit )などで構成され、印刷ジョブに応じた印刷制御(例えば、モノクロ/カラー印刷に応じたインク吐出量の制御、被印刷媒体となる用紙の給排紙制御)の他、印刷装置100を構成する各部の駆動制御を統括的に行う。
【0039】
また、制御部160は、通信タグ36と無線通信部150との間で通信状態が確立されると、無線通信部150を制御して、通信タグ36に記憶されるカートリッジ情報を読み取らせる。そして、制御部160は、無線通信部150を介して読み取ったカートリッジ情報に基づき、印刷ジョブに応じた印刷処理が実施されるようにインク吐出制御や給排紙制御を行う。
【0040】
さらに、制御部160は、印刷処理が実施された際に、通信タグ36に記憶されるカートリッジ情報のうち更新が必要な情報(例えば、インク残量情報、空情報)を更新するため、更新対象となる情報を所定の算出処理などから取得する。そして、制御部160は、無線通信部150を制御し、通信タグ36に更新するカートリッジ情報の上書き(又は新規書き込み)を行う。
【0041】
[2.インクカートリッジの全体構成]
次に、本発明に係るインクカートリッジ1の構成について説明する。
図3(a)又は(b)に示すように、インクカートリッジ1は、印刷装置100に対する水平方向である着脱方向Aに沿って着脱される略直方体形状をなす細長の筐体である。インクカートリッジ1は、所定のインクが充填される熱可塑性フィルム11からなるインク容器10と、インク容器10が挿入される外箱である外装体20と、インク容器10の長手方向における一方の端部に設けられ印刷装置100のカートリッジ取付機構130と係合する係合部30とで構成されている。
【0042】
<2−1.インク容器>
インク容器10は、インクが封入される袋体である。本実施形態では、長方形状の熱可塑性フィルム11を2枚重ね、長手方向の一端に後述するインク供給部13を介在させた状態で、その周囲を熱溶着により接合して形成されている。インク容器10は、外装体20の開口部から挿入し、インク供給部13が組み付けられた係合部30を開口部に嵌合することでインクカートリッジ1として製作される。
【0043】
また、
図4(a)に示すように、インク容器10における装填方向A1側の端部には、印刷装置100に装填された際に容器内に充填されたインクを供給するインク供給部13が取り付けられている。
【0044】
インク供給部13は、インク容器10を作製する際にフィルム11との間の所定箇所に介在させたまま熱溶着により取り付けられ、この状態で係合部30に組み付けられる。
【0045】
また、
図4(b)に拡大して示すように、インク供給部13は、係合部30の係合孔35と係合しインク容器10の内部と外部を連通させる供給口部14と、供給口部14の連通を開放又は閉止する中栓15と、中栓15をインク流出方向Bに付勢して供給口部14を閉止する付勢手段16と、インクカートリッジ1の着脱に伴う中栓15の摺動を着脱方向Aに沿ってガイドするとともに中栓15の軸部分を摺動の有無に拘わらず覆って保護する保護部材17とで構成されている。
【0046】
本実施形態では、インクカートリッジ1を印刷装置100に装填する前では、付勢手段16の付勢力によって栓部15aが開口14aに向けて押圧されている。これにより、栓部15aが開口14aを塞ぎ、Oリング15dで栓部15aと供給口部14との間の間隙を埋めるため、供給口部14が閉止された状態となる。
【0047】
また、インクカートリッジ1を印刷装置100に装填した際は、栓部15aの先端に設けられた係合受け部15cが、カートリッジ取付機構130の図示しない押圧部と係合する。これにより、栓部15aが付勢手段16の付勢力に抗して押圧され栓部15aが開口14aから離隔するため、供給口部14が開放されインクがインク流出方向Bに流出可能な状態となる。
【0048】
また、インク供給部13における供給口部14の周囲には、ホルダ部131に設けられた図示しないホルダ側ジョイント部と嵌合する凹状の供給部側ジョイント部18が設けられている。
【0049】
さらに、供給口部14の先端には、インクカートリッジ1を印刷装置100に装填したときに、開口14aとホルダ側ジョイント部との間に僅かな隙間を設けてインクの流出量を一定量に適正化させるための突起部14bが設けられている。本実施形態では、
図4(a)に示すように、開口14aの周囲に3つの突起部14bが略等間隔を空けて設けられている。
【0050】
<2−2.外装体>
外装体20は、紙製(例えば、段ボール)のシート部材に設定された折り辺を折り曲げて糊代部分を貼り合わせることにより、長手方向における一端が開口され、他端が閉止された、有底の中空直方体をなす箱状に組み立てられる。
【0051】
本実施形態では、外装体20の開口部がインクカートリッジ1の着脱方向Aを含む水平面に平行となる横辺と、その水平面に垂直となる縦辺との比が、約2対1となる長方形状をなしている。換言とすると、
図3(a)に示すように、印刷装置100に対し、インクカートリッジ1が装填方向A1に取り付け操作される際、印刷装置100側となる係合部30を正面とすると、インクカートリッジ1の幅wと、高さhの比が約2対1となっている。
【0052】
また、外装体20の開口部(カートリッジ装填時における印刷装置100側の開口部)には、印刷装置100側のカートリッジ取付機構130に係合される係合部30が嵌め込まれ、印刷装置100のカートリッジ取付機構130との突当面となっている。
【0053】
さらに、
図3(b)に示すように、外装体20下面には、外装体20の表面を貫通する引き抜き用の凹部21が形成されている。この凹部21は、外装体20の凹部形成箇所に所定の切り込みを入れ、外装体20の部材表面において、切り込まれた部分を内面側に、且つ終端側に向けて折り曲げられることで形成される。
【0054】
また、外装体20の内部終端には、外装体20内面と、インク容器10の終端部12の尖形外面との間の内部空間の形状を確保する仕切部材22が配置されている。この仕切部材22によって確保される空間は、側断面が三角形となっているとともに、外装体20内部において、凹部21の裏面に対応した位置となっている。
【0055】
なお、本実施形態において、凹部21形成時に折り曲げられる外装体20の一部は、仕切部材22により確保された内部空間内に位置されるように、外装体20の終端側に向かって折り曲げられるように切り込みが入っている。また、仕切部材22については、例えば終端側を閉止する前に仕切部材22を外装体20の終端に配置されるように挿入して組み込んだ後に開口部分を閉止すればよい。
【0056】
このように、インクカートリッジ1において、外装体20内部に仕切部材22と、外装体20の表面に凹部21を備えている。これにより、ユーザがインクカートリッジの着脱操作する際には、外装体20終端の凹部21を掴んで、インクカートリッジを引き出すころができ、インクカートリッジ1の着脱が容易になり作業性が向上される。また、ユーザが凹部21を掴んでインクカートリッジ1を着脱する際に、ユーザの手が直接インク容器10に触れないため、カートリッジ着脱時においてユーザの爪や装飾品などの接触によるインク容器10の破損を防止することができる。
【0057】
さらに、インク容器10の外装体20に対する挿入方向と、着脱方向Aと、さらにインク補給時のインク流出方向Bとが同一軸上に位置するため、外装体20に無理な応力が生じず、インク供給部13やホルダ部131などの着脱機構や、外装体20本体が破損される可能性を低減することができる。
【0058】
また、
図3(a)に示すように、外装体20の天面には、後述するラベル31の端部と重なるように、ラベル剥がし用の切り込み23が形成されている。この切り込み23は、一部が折れ部となり、その他の部分が破断し、外装体20と繋がった状態で外装体20の表面側に形成されている。切り込み23は、ユーザの指によって内方に向けて押し込まれると、ラベル31の一部が接着した状態で外装体20の一部が破断して折れる。
よって、ユーザは、指で切り込み23を外装体20の内方に押し込み、破断した部分を摘んでラベル31と外装体20とを引き剥がすことで、ラベル31が破断した外装体20の一部と一緒に剥がせるため、分別作業を簡易的に行うことができる。
【0059】
<2−3.係合部>
係合部30は、樹脂又は金属などの硬質材料で形成され、ホルダ部131との突当面30aが装填方向A1に向けられ、インクカートリッジ1を印刷装置100に装填した際に、ホルダ部131と係合される着脱機構として機能する。また、係合部30は、外装体20の開口部と嵌合するため、該開口部の寸法と略同等の大きさで成形されている。
【0060】
図3(a)、(b)に示すように、係合部30は、外装体20の開口部に嵌合した後、裏面に粘着性を有するシール状のラベル31(例えばフィルム法合成紙のように合成樹脂を主成分とする合成紙の裏面に接着剤を塗布したシート物)で貼り付け固定される。このラベル31は、外装体20に係合部30を嵌合させた状態で、外装体20の開口部側面から、係合部30の突当面30aを経て、反対側の開口部側面に渡って巻き回されることにより、係合部30を外装体20に組み付け固定する。
【0061】
また、係合部30の中央部上下には、印刷装置100側に設けられた把持手段(図示せず)によって把持されるように嵌合される嵌合部32が形成されている。この嵌合部32には、三角形状の凸部が配列されており、印刷装置100のホルダ部131に設けられた把持手段に嵌合するようになっている。この把持手段は、上下一対の凹部を弾性力により挟み込むようにして把持する機構を有しており、この把持手段の間に嵌合部32の凸部を、把持手段の凹部間に押し込むことによって、嵌合部32がクリック感を伴って嵌合するようになっている。
【0062】
また、係合部30の上部には、一対の遮蔽凸部33が突設されている。この遮蔽凸部33は、カートリッジ取り付けの際に、上下を誤らないようにするために、一方の端縁にのみに設けられている。遮蔽凸部33は、印刷装置100に嵌合された際には、印刷装置100側に設けられた図示しない取付検知センサに検知されるようになっている。
具体的には、取付検知センサは、投受光センサのような光学センサであり、受光が遮断されることにより、その遮蔽物の存在を検知する。遮蔽凸部33は、取り付け時に取付検知センサに接近され、センサの受光を遮断することにより、その取り付けが検出される。
【0063】
また、
図5(a)、(c)に示すように、ホルダ部131と突き当たる係合部30における突当面30aの裏面側周縁には、嵌合リブ34が離脱方向A2に立設されている。嵌合リブ34は、外装体20の開口部に嵌合するときのガイドの役目と、嵌合後の外装体20からの抜け防止の役目を担っている。
【0064】
さらに、
図5(b)、(c)に示すように、係合部30の略中央部分には、インク供給部13を組み付けたときに、インク供給部13の供給口部14が係合する係合孔35が形成されている。本実施形態において、係合部30に対する係合孔35の形成位置は、
図5(a)に示すように係合部30の略中央部分に形成されている。
【0065】
また、係合孔35の周縁には、供給口部14が係合する際のガイドの役目と、係合後の供給口部14を保持する役目を担う係合リブ35aが、嵌合リブ34と同方向(離脱方向A2)に同程度の高さで立設されている。
【0066】
また、
図5(c)に示すように、係合部30の突当面30aの裏面側において、係合孔35と横方向に隣り合う位置(図中における係合部30の左側端部近傍であり、該端部と係合孔35との間)には、印刷装置100の無線通信部150と近距離無線通信を行う通信タグ36を貼り付けるための貼着領域Dが、無線通信部と対向する位置に形成されている。
【0067】
本実施形態において、貼着領域Dは、貼着される通信タグ36(
図5(c)におけるハッチ部分)の形状に合わせて成形されている。すなわち、貼着領域Dは、後述する通信タグ36の弦と当接して通信タグ36を貼着する際の位置決め用の位置決め辺として機能する弦部Daと、通信タグ36の円弧と当接する円弧部Dbとを有する蒲鉾形状(略D形状)をなしている。
図5(c)に示すように、弦部Daは係合部30の左側端部に設けられた嵌合リブ34の基端と接した状態で形成されている。これにより、弦部Daに通信タグ36の弦を位置合わせした状態で貼着すれば、通信タグ36を貼着領域Dに適切に貼着することができる。
【0068】
貼着領域Dに貼着される通信タグ36は、例えば180度を超える円弧と、弦部Daと突き当たる該円弧の弦からなる基板に電波通信用のコイルパターンとICチップを搭載したRFID(Radio Frequency identification)タグで構成されている。また、通信タグ26の裏面全体には、接着材料(両面テープ、糊など)が塗布されている。
【0069】
また、通信タグ36は、印刷装置100との間の近距離無線通信を実行するために必要な各種情報を記憶する不揮発性メモリからなる記憶手段36aを備えている。また、記憶手段36aには、インクカートリッジを使用する際のユーザサービス向上を図るために必要な情報であるカートリッジ情報が記憶されている。
【0070】
カートリッジ情報は、例えば互換性情報(適合する印刷装置の機種を特定する情報)、インク色情報(インク容器10内に充填されるインクの色情報)、有効期限情報(インクカートリッジ1の製造年月日から割り出される製品の保証有効期限を示す情報)、インク残量情報(インク容器10内に充填されるインクの総量から使用量を差し引いて割り出されたインクの残量を示す情報)、空情報(インク容器10内のインクが所定量以下となったときに容器が空となったことを示す情報)、プロテクト情報(純正品と模造品を区別し、模造品使用による印刷装置の故障を防止するための情報)、リユース情報(インク容器などのインクカートリッジを構成する各部品のリユース回数を示す情報)、トレーサビリティ情報(製造元の工場、販売先店舗(営業所)の情報)などの情報が含まれている。通信タグ36は、カートリッジ取付機構130に装填が検知されると、印刷装置100の無線通信部150との通信を開始し、自機が記憶するデータを送信する。
【0071】
本実施形態における通信タグ36と無線通信部150との通信方式は、無線通信部150から送信される電波を受信することにより内部電力を発生させ、その電力によりタグICチップ内の記憶手段36aに対するデータの読み出し及び書込みを行うとともに、アンテナを通じて、データの送受信を行うパッシブ方式を採用している。
【0072】
なお、通信タグ36の通信方式は、本実施形態のようなパッシブ方式の他、印刷装置100の構成や通信タグ36の仕様を変更してアクティブ方式やセミアクティブ方式を採用してもよい。また、通信タグ36は、上述したような円弧と弦からなる蒲鉾形状をなしているが、少なくとも係合部30の突当面30aの裏面側において、貼着領域D内に形成される後述するタグ剥がし孔37を覆うように貼着可能なサイズや形状をなしていれば、特に限定されない。
【0073】
さらに、通信タグ36の貼着の仕方も、貼着領域D内に直接タグ自体を貼着する他、粘着テープ又は接着剤で形成された粘着領域を有する調節部材36bを介在させた状態で該領域Dに貼着してもよい。
【0074】
この調節部材36bは、例えば紙のように折り曲げたりして適当なサイズに調整可能な材料で構成され、印刷装置100との間で通信タグ36が近距離無線通信する際に、相互間の通信距離や通信角度が最適な配置となるように通信タグ36の配置位置を調整するための部材である。
【0075】
本発明のインクカートリッジ1は、例えばインク容器10のインクが規定量より少なくなったときにインクを所定量まで補給して再生産可能となっている。そのため、インクカートリッジ1を再生産した際に、交換した通信タグ36とカートリッジ装填先となる印刷装置100との間の通信状態が安定するように、調節部材36bを用いて通信タグ36と無線通信部150との間の通信距離や通信角度を微調整することができるため、使用可能な通信タグ36の種類が増え、汎用性をもたせることができる。
【0076】
また、貼着領域Dには、貼着した通信タグ36を突当面30a側から棒状部材を挿入して通信タグ36の接着面側から一部を剥がし浮かせるためのタグ剥がし孔37が形成されている。本実施形態では、タグ剥がし孔37を貼着領域D内に一つ形成しているが、複数形成してもよい。
【0077】
従来技術として開示されている特開2010−82994号公報のインクカートリッジでは、通信タグ36の分別作業の際に、棒状部材をタグ剥がし孔37から挿入して通信タグ36の一部を剥がし、その剥がして浮き上がった部分を摘んで剥がしている。しかしながら、このタグ剥がし孔37の位置では、通信タグ36の浮き上がった一部分が係合部の角部に発生するため、係合面の周縁に立設される嵌合リブ34が邪魔となり作業者の指が差し入れにくく、浮き上がった部分を摘むことが困難であった。
【0078】
そこで、本発明に係るインクカートリッジ1のタグ剥がし孔37は、インクカートリッジ1を廃棄する際に、係合部30と通信タグ36との分別作業を容易に行えるようにするため、形成条件として下記2つの条件を満たしている。
条件1:突当面30a側から棒状部材で通信タグ36を剥がして浮き上がらせたときに、浮かせた部分が容易に摘める位置となるように形成すること。
条件2:通信タグ36は、その裏面全体が貼着領域Dに比較的強固に接着されているため、棒状部材で通信タグ36を剥がして浮き上がらせたときに、棒状部材を挿したときに大きな力が加わらずタグ自体を損傷させない位置とすること。
【0079】
ここで、本発明のインクカートリッジ1の係合部30に形成されるタグ剥がし孔37の第1実施形態について、
図6、
図7を参照しながら説明する。
【0080】
なお、下記で説明する形態例1〜4では、
図6(a)〜(d)に示すように、係合部30の裏面側を平面視したとき、貼着領域Dの円弧部の各端部を結んで形成される仮想円VC(一点鎖線)の中心Oを原点として水平方向に通る仮想線をX、中心Oを仮想線Xと直交する方向(垂直方向)に通る仮想線をYとする2つの仮想線X、Yを座標軸とした直交座標系を用いて説明する。また、この直交座標系において、仮想線X、Yで区画して得られる4つの領域を、右上から反時計回りで順に「第一象限」、「第二象限」、「第三象限」、「第四象限」とする。
【0081】
さらに、下記形態例1〜4の形成領域は、タグ剥がし孔37の径によってその領域面積が多少変化するため、
図6(a)〜(d)に示した形成領域の形状や大きさには限定されない。また、各図において、形成領域Ea〜Edの領域を明確に表現するため、係合部30における各部の符号は省略する。
【0082】
(形態例1)
形態例1で規定するタグ剥がし孔37の形成領域Eaは、
図6(a)に示すように、仮想線X、Yで区画された仮想円VCの上記4象限のうち、第一象限及び第四象限にある貼着領域D内の領域である。
【0083】
形態例1において、タグ剥がし孔37は、通信タグ36を剥がす際に、棒状部材による挿入動作によって大きな力が加わってしまう通信タグ36の中心(重心)から外れ、且つ係合部30の角部から外れた位置になる。このため、作業者は、棒状部材で剥がして浮き上がった部分に指が差し入れやすく、浮き上がった部分を容易に摘むことができる。
【0084】
(形態例2)
形態例2で規定するタグ剥がし孔37の形成領域Ebは、
図6(b)に示すように、形態例1の形成領域Eaを前提とする。形態例2では、まず仮想円VCの中心Oと係合孔35の周端を結ぶ仮想線を2本引き、この2本の仮想線のうち、中心Oから第一象限側の円周を通過する仮想線をL1、中心Oから第四象限側の円周を通過する仮想線をL2とする。そして、第一象限にある形成領域Eaのうち仮想線L1と仮想線Yとの間の領域と、第四象限にある形成領域Eaのうち仮想線L2と仮想線Yとの間の領域を、形態例2の形成領域とする。タグ剥がし孔37は、孔自体が形態例2で規定された形成領域Eb内に形成されることになる。
【0085】
形態例2で規定した形成領域Eb内にタグ剥がし孔37を形成した場合、通信タグ36の中心(重心)から外れ、且つ棒状部材で剥がして浮き上がった部分を作業者が摘む際に、形成領域Ea内に形成したタグ剥がし孔37よりも係合リブ35aから離れた位置で通信タグ36の一部を浮き上がらせることができるため、作業者の指が係合リブ35aと接触せずに差し入れやすくなる。
【0086】
(形態例3)
形態例3で規定するタグ剥がし孔37の形成領域Ecは、
図6(c)に示すように、形態例2の形成領域Ebを前提とする。形態例3の形成領域Ecは、仮想円VCの同心円である仮想円VC1を、仮想円VCの半径rの半分となる半径raで形成し、第一象限及び第四象限にある形成領域Ebのうち、仮想円VC1に円周に孔中心を配置した領域及び仮想円VC1よりも外側の領域である。よって、形態例3で規定される形成領域Ecの大きさは、タグ剥がし孔37の径によって規定されることになる。
【0087】
形態例3で規定した形成領域Ec内にタグ剥がし孔37を形成した場合、形態例2で規定された形成領域Ebよりも通信タグ36を剥がす位置が外側となるため、通信タグ36がより剥がれやすく、剥がれて浮き上がった部分がさらに摘みやすくなる。
【0088】
また、タグ剥がし孔37を通信タグ36の中心(重心)に設けると、棒状部材でタグを剥がした際に、タグ自体が損傷する虞があるとともに、剥がれ始める位置が定まらず浮き上がり部分が摘みにくい位置で浮き上がるという問題が起こり得る。しかしながら、形態例3で規定した形成領域Ec内にタグ剥がし孔37を形成すれば、通信タグ36の中心(重心)から外れた位置で該タグの一部が剥がれ浮き上がるため、このような問題が起きることはない。
【0089】
(形態例4)
形態例4で規定するタグ剥がし孔37の形成領域Edは、
図6(d)に示すように、形態例3の形成領域Ecを前提とする。まず、形成領域Ecの第一象限側が等分割(2等分)されるように、中心Oから仮想円VCにおける第一象限側の円周に向けて仮想線L3を引く。また、形成領域Ecの第四象限側が等分割(2等分)されるように、中心Oから仮想円VCにおける第四象限側の円周に向けて仮想線L4を引く。そして、第一象限側の形成領域Ecにおける仮想線L3と仮想線L1で区切られた側の領域と、第四象限側の形成領域Ecにおける仮想線L4と仮想線L2で区切られた側の領域及び仮想線L3と仮想線L4上に孔中心を配置した領域を、形成領域Edとする。よって、形態例4で規定される形成領域Edは、タグ剥がし孔37の径によって規定されることになる。
【0090】
形態例4で規定した形成領域Ed内にタグ剥がし孔37を形成した場合、形態例3で規定した形成領域Ecよりも通信タグ36を剥がす位置が嵌合リブ34から離れた位置となる。このため、形成領域Ec内にタグ剥がし孔37と比べ、作業者の指が嵌合リブ34や係合リブ35aと接触することがほとんどなく、通信タグ36を剥がして浮き上がった部分がさらに摘みやすくなる。
【0091】
以上のように、タグ剥がし孔37の形成領域Ea〜Edは、上述した2つの形成条件を満たすように、少なくとも係合部30の短辺側に立設された嵌合リブ34から離れた位置となる第一象限、第四象限内に形成されている。このため、通信タグ36の剥がして浮き上がった部分を摘む際に、浮き上がった部分が係合部30の角部から離れるため、作業者の指が差し入れやすくなる。
【0092】
また、形成領域がEa→Eb→Ec→Edとなるに連れて、タグ剥がし孔37の形成位置が通信タグ36の中心(重心)から離れ、且つ嵌合リブ34や係合リブ35aからも離れた位置となっていく。そのため、通信タグ36を剥がす時により小さい力で剥がすことができ、また剥がして浮き上がった部分が摘みやすくなる。よって、上記形態例1〜4に示した形成領域Ea〜Edのうち、形成領域Edがタグ剥がし孔37を形成する領域として最も好適な位置となる。
【0093】
次に、上述した形成領域Ea〜Edに形成されるタグ剥がし孔37の比較評価について
図7を参照しながら説明する。
以下の比較評価では、
図7(a)に示すように、従来品のタグ剥がし孔の形成位置を「比較例」とし、上述した形態例1で規定した形成領域Ea内に形成したタグ剥がし孔37の位置を「実施例1」とし、形態例2で規定した形成領域Eb内に形成したタグ剥がし孔37の位置を「実施例2」とし、形態例3で規定した形成領域Ec内に形成したタグ剥がし孔37の位置を「実施例3」とし、形態例4で規定した形成領域Ed内に形成したタグ剥がし孔37の位置を「実施例4」とする。そして、通信タグ36の剥がしやすさを示す度合いとして「剥離度」と「摘み度」による評価を行った。
【0094】
ここで、「剥離度」とは、棒状部材として株式会社ベッセル製のボールドライバー(P1−140)をタグ剥がし孔37から挿入し、アイコーエンジニアリング株式会社製のプッシュプルゲージ(MODEL9500シリーズ)によって通信タグ36の一部が剥がれて浮き上がった状態とするのに必要なN値を測定し、基準値となる15Nを境に評価した結果である。評価結果として、15N未満が「〇」、15N以上が「△」、通信タグ36が破損したときは「×」とした。
なお、剥離度を評価した際の基準値とした「15N」は、棒状部材(ドライバー)を突き刺した際に、この値を超えてくると剥がした余力で棒状部材が大きく突き出され、通信タグ36が破損してしまう値である。
【0095】
また、「摘み度」とは、複数の実験者が指で摘むときの摘みやすさを相対的に評価した結果である。評価結果として、タグ剥がし孔37から棒状部材を挿入して浮き上がった通信タグ36の一部を摘む際に、実験者の指が該孔37の周囲にある嵌合リブ34や係合リブ35aと接触せずに摘めると判断した位置を摘み度が最も高い「〇」とし、実験者の指が該孔37の周囲にある嵌合リブ34や係合リブ35aの何れか一方と1箇所だけ接触した状態で摘めると判断した位置を摘み度が「〇」よりも低い「△」とし、実験者の指が該孔37の周囲にある嵌合リブ34や係合リブ35aと2箇所以上接触した状態で摘まなければならないと判断した位置を最も摘み度が低い「×」とした。
【0096】
図7(b)に示すように、実施例1〜4と比較例と比べた結果、剥離度の点では両者とも大きな差はない。しかしながら、摘み度の点において、比較例が「×」なのに対し、実施例1〜4では概ね評価が高かった。
つまり、本発明のように、タグ剥がし孔37が上述した形態例1〜4で規定された形成領域Ea〜Edの何れかの領域内に形成されていれば、従来品よりも通信タグ36の剥離が容易に行えることが証明された。
【0097】
次に、本発明のインクカートリッジ1の係合部30に形成されるタグ剥がし孔37の第2実施形態について、
図8、9を参照しながら説明する。
【0098】
第2実施形態のタグ剥がし孔37は、係合部30における嵌合リブ34と係合リブ35aとの間に貼着される任意の形状(例えば多角形、円形、楕円形など)をなす通信タグ36の下(すなわち、通信タグ36で覆われる領域)に形成されるものとする。
【0099】
また、係合部30の裏面側において、通信タグ36が貼着された領域を貼着領域Dとする。すなわち、上述した実施形態では、通信タグ36を貼着させるガイドとして機能させるために貼着領域Dを通信タグ36の形状に合わせて形成したが、この実施形態では、任意の形状をなす通信タグ36にも対応可能とするため、係合部30に貼着領域Dを形成せず、少なくとも係合部30における嵌合リブ34と係合リブ35aとの間に貼着された通信タグ36が貼着された領域を貼着領域Dとしている。
よって、この実施形態において、
図8(a)に示すような矩形状の通信タグ36であれば、その貼着領域Dは該タグと同形の矩形をなす。また、
図8(b)に示すような円形の通信タグ36であれば、その貼着領域Dは該タグと同形の円形をなすことになる。なお、
図8(a)、(b)に示す通信タグ36の形状や大きさは一例であり、形状や大きさは任意に設計可能である。
【0100】
(形態例5)
形態例5で規定される形成領域Eeは、
図8(a)に示すように、例えば矩形状の通信タグ36の貼着領域Dに対し、通信タグ36の重心Gを通って係合部30の長辺側に設けられた嵌合リブ34と直角をなす仮想垂線PLを引く。そして、仮想垂線PLで区切られた貼着領域Dのうち、係合リブ35a側の領域を形成領域Eeとする。また、
図8(a)に示すように、タグ剥がし孔37は、少なくとも一部が重心Gの位置よりも係合リブ35a寄りの位置にされていればよいため、仮想垂線PLで区切られた領域よりも孔の略全体の大きさ分だけ短辺側の嵌合リブ34側に広がって形成される。
つまり、形成領域Eeは、通信タグ36の形状や貼着位置、タグ剥がし孔37の径によって、形成領域Ee大きさや位置が規定されることになる。
【0101】
形態例5で規定した形成領域Eeにタグ剥がし孔37を形成した場合、孔が通信タグ36の重心Gよりも係合リブ35a寄りの位置で形成されるため、任意の形状をなす通信タグ36の一部を剥がし浮かせる際に、係合部30の角部や嵌合リブ34から離れた部分で浮き上がらせることができるため、作業者は、棒状部材で剥がして浮き上がった部分に指が差し入れやすく、浮き上がった部分を容易に摘むことができる。
【0102】
(形態例6)
形態例6で規定される形成領域Efは、形態例5で規定される形成領域Eeを前提とする。形態例6の形成領域Efは、
図8(b)に示すように、まず係合部30における短辺側の嵌合リブ34と長辺側の嵌合リブ34とが交わる角部であって通信タグ36が貼着される側の角部と、係合孔35の中心O1とを結ぶ仮想線L5、L6を引く。そして、形成領域Eeにおける仮想線L5、L6で区切られた領域を形成領域Efとする。また、
図8(b)に示すように、タグ剥がし孔37は、少なくとも一部が重心Gの位置よりも係合リブ35a寄りの位置にされていればよいため、仮想垂線PLで区切られた領域よりも孔の略全体の大きさ分だけ短辺側の嵌合リブ34側に広がって形成される。
つまり、形成領域Efは、通信タグ36の形状や貼着位置、タグ剥がし孔37の径によって、形成領域Ee大きさや位置が規定されることになる。
【0103】
形態例6で規定した形成領域Efは、形態例5で規定された形成領域Eeよりも通信タグ36を剥がす位置が嵌合リブ34や係合リブ35aから程よく離れ、各リブとの間に隙間が設けられる位置となるため、通信タグ36がより剥がれやすく浮き上がり部分も大きくなり、剥がれて浮き上がった部分がさらに摘みやすくなる。
【0104】
このように、上述した形成領域Ee、Efにタグ剥がし孔37を形成することで、孔の位置が通信タグ36の重心Gの位置よりも係合リブ35a寄りの位置に形成されることになる。そのため、通信タグ36で覆われた位置に形成されたタグ剥がし孔37に棒状部材を挿入して該タグの一部を剥がし浮かせた際に指が差し入れやすくなり、形態例1〜4と同様に浮き上がった部分を容易に摘むことができる。
【0105】
次に、上述した形成領域Ee、Efに形成されるタグ剥がし孔37の比較評価について
図9、10を参照しながら説明する。
以下の比較評価では、
図9(a)、
図10(a)に示すように、従来品のタグ剥がし孔の形成位置を「比較例」とし、上述した形態例5で規定した形成領域Ee内に形成したタグ剥がし孔37の位置を「実施例A」とし、形態例6で規定した形成領域Ef内に形成したタグ剥がし孔37の位置を「実施例B」とし、通信タグ36の剥がしやすさを示す度合いとして「剥離度」と「摘み度」による評価を行った。また、本実施例における通信タグ36の形状は矩形状とし、「剥離度」及び「摘み度」は、上述した[3.実施例]で示した評価基準と同様とした。
【0106】
図9(b)に示すように、実施例A、Bと比較例と比べた結果、剥離度の点では両者とも大きな差はない。しかしながら、摘み度の点において、比較例が「×」なのに対し、実施例A、Bでは概ね評価が高かった。
つまり、本発明のように、タグ剥がし孔37が上述した形態例5、6で規定された形成領域Ee、Efの何れかの領域内に孔の一部が形成されていれば、従来品よりも通信タグ36の剥離が容易に行えることが証明された。
【0107】
また、
図10(b)に示すように、実施例C、Dと比較例と比べた結果、剥離度の点では両者とも大きな差はない。しかしながら、摘み度の点において、比較例が「×」なのに対し、実施例C、Dでは概ね評価が高かった。
つまり、本発明のように、タグ剥がし孔37が上述した形態例5、6で規定された形成領域Ee、Efの何れかの領域内に孔の一部が形成されていれば、従来品よりも通信タグ36の剥離が容易に行えることが証明された。
【0108】
[3.インクカートリッジの再生産方法]
次に、上述した構成を備えたインクカートリッジ1の再生産時における処理工程について説明する。
【0109】
下記の工程例は、本発明のインクカートリッジ1は、印刷装置100に装填されたインク容器1を作業者が回収し、回収したインク容器10を再利用してインクカートリッジ1が再生産されるまでの一連の流れを示している。
【0110】
<3−1.インク補給装置の構成>
本発明に係るインクカートリッジ1の再生産方法では、インク容器10にインクを補給するインク補給装置200を用いてインクを所定量補給する。
【0111】
インク補給装置200は、
図11に示すように、再利用されるインク容器10の供給口部14と嵌合して供給口部14を開放する供給部201と、補給されるインクを貯留するインクタンク202と、インクタンク202内に貯留されたインクをインク容器10に送液する送液ポンプ203と、送液ポンプ203を介してインク容器10とインクタンク202との間のインク流路となる補給用インク流路R1とを備えた構成とする。
【0112】
また、インク容器10内に残った残インクを除去して空にした状態で新しいインクを補給する構成とした場合は、図中一点鎖線で囲まれた構成を追加する。すなわち、インク容器10内の残インクを吸引して不図示の排液タンクまで送液する吸引ポンプ204と、送液ポンプ203と供給部201との間の補給用インク経路R1と吸引ポンプ204と供給部201との間の排液用インク経路R2とをインクの補給/排液処理に応じて切り替える切り替え弁からなる切替部205とを具備する構成とする。
【0113】
そして、このような構成とした場合、インク補給時とインク排液時に送液ポンプ203、吸引ポンプ204、切替部205を所定タイミングで適宜制御してインクの排液処理とインクの補給処理を行うようにすればよい。
【0114】
<3−2.再生生産の工程>
本発明に係るインクカートリッジ1の再生産時の処理工程としては、まず、作業者が印刷装置100からインクカートリッジ1を回収し、回収したインクカートリッジ1の外装体20を分解してインク容器10を取り出す。
【0115】
次に、取り出したインク容器10に取り付けられた係合部30から通信タグ36を除去する工程を行う。
タグ剥がし孔37は、上述した形態例1〜6で規定される形成領域Ea〜Efの何れかの領域内で通信タグ36と被るように形成されているため、作業者は、このタグ剥がし孔37に突当面30a側から棒状部材を差し入れることで、係合部30に貼着された通信タグ36の一部を剥がし浮かせ、剥がして浮き上がった部分を摘んで剥離(除去)することができる。
【0116】
次に、インク補給装置200の供給部201とインク容器10の供給口部14とを嵌合させてインクを所定量補給する工程を行う。
この嵌合動作により、インク供給部13に設けられた中栓15の栓部15aが付勢手段16の付勢力に抗して押圧されるため、栓部15aが開口14aから離隔して供給口部14が開放されるため、インクの供給が可能となる。
【0117】
インク容器10に補給されるインクの補給量は、再生産するインクカートリッジ1の仕様によって規定されるため、インク容器10は必ずしも規定量(例えば、満タン時のインク量)を補給する必要はない。例えばインク量を規定量の半分にすれば、インク量が減った分だけ安価に販売することが可能となり、そのようなインクカートリッジ1を再生産する場合は、補給するインク量を規定量の半分とすればよい。また、インク容器10内に残インクがある場合は、その状態から所定量となるようにインクを補給してもよい。
【0118】
インクの補給工程が終了すると、次に、係合部30の所定箇所に再生産されるインクカートリッジ1の仕様を示すカートリッジ情報を新たに記憶した交換用の通信タグ36を貼着する。
【0119】
通信タグ36を貼着する領域としては、上述した形成領域Ea〜Edにタグ剥がし孔37を形成した場合は、係合部30に形成された貼着領域D内でタグ剥がし孔37と被る位置に貼着する。また、形成領域EeやEfにタグ剥がし孔37を形成する場合、通信タグ36を嵌合リブ34と係合リブ35aとの間に貼着する。
【0120】
さらに、交換用の通信タグ36には、貼着する再生産したインクカートリッジ1の仕様に基づくカートリッジ情報を新たに記憶させておく。
【0121】
そして、交換用の通信タグ36を係合部30に貼着すると、新たな外装体20を組み立て、この組み立てた外装体20にインク容器10を挿入して収容した後、ラベル31を貼り付けて固定すると、インクカートリッジ1の再生産工程が終了する。また、インクの補給量によって容器内に空気が残存する場合は、容器の側面を押して供給口部14から空気を抜いた状態とするのが好ましい。
【0122】
なお、上述した再生産方法では、インクの補給工程の際に、他のインクが混入することを防止するため、補給前のインクと同成分で同色のインクを補給するようにしたが、回収したインク容器10を一旦洗浄して他のインクを補給することもできる。
【0123】
また、インク容器10に収容されたインクを廃棄した後に補給する場合は、
図11に示す一点鎖線の構成を備えたインク補給装置200を用いる。インクの排液工程はインク補給工程の前に行うため、切替部205を制御してインク経路を排液用インク経路R2に切り替えた後、吸引ポンプ204を制御してインク容器10内に残っている残インクを抜き出す。そして、インク容器10を空の状態とし、切替部205を制御してインク経路を補給用インク経路R1に切り替えた状態で送液ポンプ203を制御してインク容器10に新たなインクを所定量補給すれば、インクカートリッジ1が再生産される。
【0124】
なお、インクの補給量によって容器内に空気が残っている場合は、再度切替部205を制御してインク経路を排液用インク経路R2に切り替え、吸引ポンプ204により空気のみ又は空気と若干のインクを同時吸引して、容器内をインクのみの状態とするのが好ましい。
【0125】
以上説明したように、上述したインクカートリッジ1の再生産方法によれば、通信タグ36の被貼着対象となるインクカートリッジ1の仕様に基づくカートリッジ情報を記憶させた交換用の通信タグ36を用いることで、使用済みの通信タグ36に記憶されるカートリッジ情報の煩雑な書き換え処理を行う必要がなく、容易にインクカートリッジ1を再生産することができる。
【0126】
また、インクカートリッジ1の係合部30には、貼着領域Dの円弧部の各端部を結んで形成される仮想円VCの中心Oを原点とする仮想線X、Yを座標軸とした直交座標系における第一象限及び第四象限内にある貼着領域D内の領域を形成領域Eaとし、この形成領域Ea内にタグ剥がし孔37が形成されているため、タグ剥がし孔37が通信タグ36の中心(重心)から外れ、且つタグ剥がし孔37から棒状部材を挿入して通信タグ36を剥がしたときに、作業者の指が差し入れやすい係合部30の角部から外れた箇所が浮き上がって容易に摘んで剥がすことができる。
【0127】
また、タグ剥がし孔37が通信タグ36の重心Gよりも係合リブ35a寄りの位置で形成されるため、任意の形状をなす通信タグ36の一部を剥がし浮かせる際に、係合部30の角部や嵌合リブ34から離れた部分で浮き上がらせることができ、作業者は、棒状部材で剥がして浮き上がった部分に指が差し入れやすく、浮き上がった部分を容易に摘むことができる。
【0128】
また、通信タグ36の貼着面側に調節部材36bを介在させることで、インクカートリッジ1を再生産した際に、交換した通信タグ36とカートリッジ装填先となる印刷装置100との間の通信状態が安定するように通信タグ36と無線通信部150との間の通信距離や通信角度を微調整することができるため、使用可能な通信タグ36の種類が増え、汎用性をもたせることができる。
【0129】
また、使用時のインク汚れ、擦れ、折れなどがある使用済みの外装体20を使い回すことなく、交換用の通信タグ36が設けられたインク容器10を交換用として新たに組み立てた外装体20に装填することで、再生産品としての品質を新品と同様の品質とすることができる。
【解決手段】印刷装置からインクカートリッジを回収し、回収したインクカートリッジの外装体を分解してインク容器を取り出す。次に、取り出したインク容器に取り付けられた係合部30から通信タグ36を除去し、インク補給装置の供給部とインク容器の供給口部とを嵌合させてインクを所定量補給する工程を行う。インクの補給工程が終了すると、係合部30の所定箇所に再生産されるインクカートリッジの仕様を示すカートリッジ情報を新たに記憶した交換用の通信タグ36を貼着する。そして、交換用の通信タグ36を係合部30に貼着すると、新たな外装体を組み立て、この組み立てた外装体にインク容器を挿入して収容した後、ラベルを貼り付け固定してインクカートリッジを再生産する。