(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6068903
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】絞り装置及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
G03B 9/06 20060101AFI20170116BHJP
【FI】
G03B9/06
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-214676(P2012-214676)
(22)【出願日】2012年9月27日
(65)【公開番号】特開2014-71144(P2014-71144A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(72)【発明者】
【氏名】柴田 光夫
【審査官】
荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−134283(JP,A)
【文献】
特開2001−142109(JP,A)
【文献】
特開2002−196391(JP,A)
【文献】
特開2006−235058(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラのレンズ開口の大きさを変化させる複数枚の絞り羽根と、
前記絞り羽根を駆動する駆動部材と、
前記駆動部材を回動可能に保持する地板と、
前記地板との間に前記絞り羽根および前記駆動部材が配置されるカバーと、を有し、
前記駆動部材は前記地板のレール部と前記カバーのレール部との間で摺動し、
前記駆動部材が回動することにより光軸方向に変位するように前記地板のレール部と前記カバーのレール部とに傾斜を設けたことを特徴とする絞り装置。
【請求項2】
前記駆動部材は前記地板のレール部と前記カバーのレール部との間で摺動する突起部を有し、
前記傾斜は、前記レンズ開口が大きくなる状態に前記絞り羽根を回動する場合には、前記駆動部材と前記カバーによって形成される前記絞り羽根の走行スペースを狭め、前記レンズ開口が小さくなる状態に前記絞り羽根を回動する場合には、前記駆動部材と前記カバーによって形成される前記絞り羽根の走行スペースを広げるように形成されることを特徴とする請求項1に記載の絞り装置。
【請求項3】
前記地板には、前記駆動部材に駆動力を伝達する駆動源が取り付けられることを特徴とする請求項1または2に記載の絞り装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の絞り装置を備えたことを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に組み込まれる絞り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラの絞り装置は、複数枚の絞り羽根が駆動リングによって同時に同じ方向へ駆動されて、協働して開口径を変化させる。また、最近の絞り装置は、各絞り羽根が回転孔と作動ピンを持ち、地板とカバーとの間に形成される凹状のスペース内において、回転孔を地板の軸に回転可能に嵌合させ、連結ピンが駆動リングのカム溝に挿入されている。地板とカバーの間のスペース内において駆動リングがモータ等を駆動源として回動することによってカム溝が絞り羽根を駆動させる。
【0003】
絞り羽根と駆動リングとが重なる配置関係は、特許文献1記載のように、絞り羽根が、駆動リングと地板との間に配置されることもあるし、特許文献2記載のように、駆動リングとカバーとの間に配置されることもある。
【0004】
従来の絞り装置は、最大開口状態から開口径を小さくする場合には、各絞り羽根をレンズ開口に進入させ、先端部を光軸中心に近づけていく。ところが、特許文献1のように、複数枚の絞り羽根を単純に重ねて取り付け、最初に組み付けた絞り羽根と最後に組み付けた絞り羽根とが接触しないような組み付け方をすると、各絞り羽根の姿勢は、先端部が光軸中心に近づくにしたがって不安定になり、絞り開口の基準面(開口形成面)に対して先端部が傾斜しやすくなる。そのため、絞り開口を基準面上で適正な形状にすることができなくなり、隣接する絞り羽根同士が面接触しなくなったりする。このような傾向は、レンズ開口の口径が大きいほど顕著になるので、上記のような絞り羽根の組み付け方法は、レンズ開口の小さい絞り装置にだけ採用されている。
【0005】
一方、特許文献2記載のような、編み込み方式と呼ばれている、絞り羽根の組み付け方法が知られている。これは、全ての絞り羽根が、隣接する2枚の絞り羽根の間に配置されて、レンズ開口において、各絞り羽根の先端部を、地板側とカバー側のいずれか一方からは目視できるが、他方からは目視できない状態に組み付ける方法である。この方式を採用すると、先端部同士が絡み合って支え合うようになるため、特許文献1のような複数枚の絞り羽根を単純に重ねて組み付けた場合よりも、絞り羽根の姿勢が常に安定して得られるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−201780号公報
【特許文献2】特開2003−057715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のような編み込み方式を採用した場合には、開口径を小さくしていくと、各絞り羽根は隣接する絞り羽根から外力を受け、絞り開口の基準面に直交する方向へ反り上がり、絞り羽根の走行スペースを圧迫する。このため、より大きな駆動力が必要となる。反対に、開口径を大きくしていくと、走行スペース内で絞り羽根が光軸方向にばたつくため、所望の口径精度が得られない可能性がある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、その目的は、駆動力の低減を実現しかつ口径精度を安定化できる絞り装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明の絞り装置は、カメラのレンズ開口の大きさを変化させる複数枚の絞り羽根と、
前記絞り羽根を駆動する駆動部材と、前記駆動部材を回動可能に保持する地板と、
前記地板との間に前記絞り羽根および前記駆動部材が配置されるカバーと、を有し、前記駆動部材は前記地板のレール部と前記カバーのレール部との間で摺動し、前記駆動部材が回動することにより光軸方向に変位するように前記地板のレール部と前記カバーのレール部とに傾斜を設けた。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、駆動力の低減を実現しかつ口径精度を安定化できる絞り装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る実施形態の絞り装置の分解斜視図。
【
図2】本実施形態の絞り装置の最大開口時におけるレール部付近の断面図。
【
図3】本実施形態の絞り装置の中間口径時におけるレール部付近の断面図。
【
図4】本実施形態の絞り装置の最小開口時におけるレール部付近の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、添付図面を参照して本発明を実施するための形態について詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明を実現するための一例であり、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本実施形態の構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において本発明が適用される装置の構成や各種条件によって適宜修正又は変更されるべきものである。
【0013】
まず
図1を参照して、本発明に係る実施形態の絞り装置の構成について説明する。
【0014】
本実施形態の絞り装置は、複数枚の絞り羽根を、いわゆる編み込み方式で組み付け、モータを駆動源として、駆動部材を回動させることにより、レンズ開口の大きさを変化させるように構成されている。
【0015】
この絞り装置は、カメラのレンズ開口11を中心として複数の部品を重ねて組み立てられている。複数の部品には、上方から順番に、カバー5、複数枚(本例では6枚)の絞り羽根3、駆動リング2、地板1、駆動源4が含まれる。
【0016】
絞り羽根3は地板1のレンズ開口11の周囲に配置され且つ駆動リング2の駆動力を受けてレンズ開口11を開閉するように動作する。各絞り羽根3には支持孔32と作動カム溝31が形成されている。各絞り羽根3は地板1の各羽根支持軸13に軸支される支持孔32を中心として回動可能である。各絞り羽根3が図示の位置から時計方向に回動するとレンズ開口11が閉じられる。この閉状態から反時計方向に回動するとレンズ開口11が開成される。
【0017】
駆動源4はシャッターレリーズ操作に応じてピニオンギア41を回転駆動する。本実施形態では駆動源4としてステッピングモータが用いられる。駆動リング2は地板1のレンズ開口11の周囲に設けられたリング支持軸12により回動可能に保持され、複数(本例では3つ)の突起部24と地板1のレール部14およびカバー5のレール部51との間で摺動する。駆動源4から出力される駆動力はギア21および作動ピン23を介して各絞り羽根3に伝達される。駆動リング2および絞り羽根3は、カバー5により光軸方向の位置が規制されている。
【0018】
本発明の特徴点の1つは、地板1のレール部14およびカバー5のレール部51に所定の傾斜を設けたところである。
【0019】
次に、
図2乃至
図4を参照して、本実施形態の絞り装置の構成について詳細に説明する。
【0020】
本実施形態の絞り装置の最大開口時の断面を示す
図2において、駆動リング2とカバー5によって形成される間隔d1が絞り羽根の走行スペースである。図示の通り、地板1のレール部14、カバー5のレール部51、駆動リング2の突起部24により絞り羽根の走行スペースは最も狭い状態にある。これにより絞り羽根のばたつきを抑え、口径精度の安定化が可能となる。
【0021】
次に、本実施形態の絞り装置の中間開口時の断面を示す
図3において、駆動リング2とカバー5によって形成される間隔d2は、地板1のレール部14およびカバー5のレール部51の傾斜により、
図1の最大開口時と比べて大きくなっている。これにより、絞り羽根が重なり合った状態でも走行スペースを圧迫することがないため、駆動力の低減が可能となる。
【0022】
次に、本実施形態の絞り装置の最小開口時の断面を示す
図4において、駆動リング2とカバー5によって形成される間隔d3は、地板1のレール部14およびカバー5のレール部51の傾斜により、最も大きい状態となっている。これにより、絞り羽根が重なり合った状態でも走行スペースを圧迫することがないため、駆動力の低減が可能となる。
【0023】
以上説明したように、本実施形態によれば、地板1のレール部14およびカバー5のレール部51の傾斜により駆動リング2が光軸方向に変位するため、絞り羽根3の走行スペースが最大開口時から最小開口時に亘って常に最適となるよう調整可能である。これにより、開口径が小さい場合の駆動力の低減並びに開口径が大きい場合の口径精度の安定化が実現できる。
【0024】
なお、上述した実施形態に係る絞り装置は、カメラ等の撮像装置に組み込まれて使用される。