(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6068909
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】アキュムレータ
(51)【国際特許分類】
F25B 43/00 20060101AFI20170116BHJP
【FI】
F25B43/00 D
F25B43/00 T
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-219924(P2012-219924)
(22)【出願日】2012年10月2日
(65)【公開番号】特開2014-70869(P2014-70869A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】細川 侯史
【審査官】
横溝 顕範
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−052139(JP,A)
【文献】
特表平03−503673(JP,A)
【文献】
特開2008−032269(JP,A)
【文献】
特開平07−043048(JP,A)
【文献】
実開平02−030855(JP,U)
【文献】
特開平08−189731(JP,A)
【文献】
特開平06−201231(JP,A)
【文献】
特開昭60−120163(JP,A)
【文献】
特開2012−026660(JP,A)
【文献】
特開2008−304097(JP,A)
【文献】
実開昭55−157675(JP,U)
【文献】
米国特許第04331001(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒流入孔及び冷媒流出孔が設けられたタンク本体と、
前記冷媒流入孔から流入した冷媒を、気相冷媒と、液相冷媒及びオイルとに分離する気液分離部材と、
前記冷媒流出孔に接続され、前記気液分離部材によって分離された気相冷媒を該冷媒流出孔に導く冷媒出口管と、
該冷媒出口管の底部に設けられ、前記液相冷媒及びオイルに含まれる異物を除去するストレーナと、
該冷媒出口管の底部に設けられ、前記タンク本体内に溜まったオイルを該冷媒出口管内に導くオイル戻し孔とを備え、
前記タンク本体の上方の気相空間領域に乾燥剤を内包するバッグを収容するカートリッジを配置し、
前記冷媒出口管は、上部に形成される上枠部材と、中央部に形成される下枠部材とを有し、
前記カートリッジは、下面に溝又は突条を有し、
前記下枠部材は、上面に前記カートリッジの溝と係合する突条又は前記カートリッジの突条と係合する溝を有し、該下枠部材の突条又は溝は前記冷媒出口管の外周から該下枠部材の先端部に向かって延設され、
前記カートリッジは、該カートリッジの溝又は突条が前記下枠部材の突条又は溝に係合し、かつ前記上枠部材と前記下枠部材に挟持された状態で、前記冷媒出口管に装着されることを特徴とするアキュムレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクルを循環する冷媒を気液分離して貯留する形式のアキュムレータに関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍サイクルを循環する冷媒を気液分離して貯留するため、レシーバタンクやアキュムレータ等が用いられる。この種のアキュムレータとして、例えば、特許文献1には、ハウジングと、ハウジング内に配置された管部、フィルタ及び乾燥剤を封入した袋等の内機部品等で構成され、冷媒の導入口からハウジング内に流入した冷媒は、気液分離部材としての笠部に衝突して気相冷媒と、オイルを含む液相冷媒とに気液分離され、分離された気相冷媒は、管部に進入して導出口から排出されるアキュムレータが記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、上端が開口した瓶状の胴体と、胴体の開口端を封止し、冷媒流入孔及び冷媒流出孔が穿設された本体(ヘッダ)と、胴体の下方に配置された乾燥剤容器等の内機部品とを備え、本体の冷媒流入孔から本体内に流入した冷媒が、旋回部において旋回流へと変換され、旋回流による遠心分離にて液冷媒とガス冷媒とに分離されるアキュムレータが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭57−2371号公報
【特許文献2】特開2011−21773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載された旋回式のアキュムレータでは、特に問題とはならないが、特許文献1に記載のような、冷媒流入孔及び冷媒流出孔が穿設されたヘッダの下方に気液分離部材が存在するアキュムレータでは、乾燥剤が胴体の下部に溜まった液相冷媒と接触することで気泡が発生し、この気泡が気液分離部材に衝突して大きな異音が生じるという問題があった。
【0006】
そこで本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みて、気液分離部材を備えたアキュムレータにおいて、上記気泡の発生に伴う異音の発生を最小限に抑えることができるアキュムレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、冷媒流入孔及び冷媒流出孔が設けられたタンク本体と、前記冷媒流入孔から流入した冷媒を、気相冷媒と、液相冷媒及びオイルとに分離する気液分離部材と、前記冷媒流出孔に接続され、前記気液分離部材によって分離された気相冷媒を該冷媒流出孔に導く冷媒出口管と、該冷媒出口管の底部に設けられ、前記液相冷媒及びオイルに含まれる異物を除去するストレーナと、該冷媒出口管の底部に設けられ、前記タンク本体内に溜まったオイルを該冷媒出口管内に導くオイル戻し孔とを備え、前記タンク本体の上方の気相空間領域に乾燥剤を内包するバッグ
を収容するカートリッジを配置し
、前記冷媒出口管は、上部に形成される上枠部材と、中央部に形成される下枠部材とを有し、前記カートリッジは、下面に溝又は突条を有し、前記下枠部材は、上面に前記カートリッジの溝と係合する突条又は前記カートリッジの突条と係合する溝を有し、該下枠部材の突条又は溝は前記冷媒出口管の外周から該下枠部材の先端部に向かって延設され、前記カートリッジは、該カートリッジの溝又は突条が前記下枠部材の突条又は溝に係合し、かつ前記上枠部材と前記下枠部材に挟持された状態で、前記冷媒出口管に装着されることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、乾燥剤を内包するバッグをタンク本体の上方の気相空間領域に配置したため、タンク本体に貯留された液相冷媒と乾燥剤との接触を防止して気泡の発生を最小限に抑えることができると共に、仮に気泡が発生したとしても、気泡の発生位置から気液分離部材までの距離が短いため、気泡が勢いよく気液分離部材に衝突することを回避することができ、異音の発生を最小限に抑えることができる。なお、気相空間領域とは、気液分離部材によって分離された気相冷媒が主に存在する領域をいう。
また、乾燥剤を内包するバッグを、低コストで確実にタンク本体内に固定することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、気液分離部材を備えるアキュムレータにおいて、気液分離部材の下方の気相空間領域に、乾燥剤を内包するバッグを配置・保持する構成としたので、異音の発生を最小限に抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係るアキュムレータの一実施形態を示す図であり、(a)は断面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【
図2】
図1に示すアウターパイプを示す図であり、(a)は断面図、(b)は(a)のB−B線断面図、(c)は(a)のC−C線断面図、(d)は(a)のD−D線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための好適な一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明に係るアキュムレータの一実施形態を示し、このアキュムレータ1は、胴体3とヘッダ4とからなるタンク本体2と、タンク本体2内に配置されたアウターパイプ5、インナーパイプ6及びバッグ7を収容したカートリッジ31等の内機部品等で構成される。
【0015】
タンク本体2は、上端が開口した有底円筒状の胴体3と、溶接部10を介して胴体3と溶接接合され、胴体3の開口端を封止するヘッダ4とから構成される。これら胴体3及びヘッダ4は、いずれもアルミニウム合金等の金属によって形成される。
【0016】
ヘッダ4は、上面視円状に形成され、冷媒流入孔8及び冷媒流出孔9が上方に開口する。冷媒流出孔9は、インナーパイプ6と連通する。
【0017】
ヘッダ4の下方には、冷媒流入孔8からの混合冷媒(気相分と液相分が混在した冷媒)を、密度の高い液相冷媒及びコンプレッサオイル(以下、「オイル」という)と、密度の低い気相冷媒とに分離する気液分離部材16が逆皿状に設けられる。
【0018】
胴体3の内部には、気液分離された気相冷媒が流入するアウターパイプ5と、アウターパイプ5に流入した気相冷媒を冷媒流出孔9に導くインナーパイプ6とが配置される。
【0019】
アウターパイプ5は、合成樹脂からなり、胴体3に接合される。上端部5aは、気相冷媒が流入し易いように他の部分よりも拡径されている。アウターパイプ5の上部と中央部には、上枠部材30と下枠部材22が各々一体に形成される。この上枠部材30の上面には、
図2(a)、(b)に示すように、上方に突出する補強用リブ30aが複数設けられる。
【0020】
下枠部材22は、胴体3の内径に対応する外径を有すると共に、上面視放射状に形成され、下方に突出する補強用リブ22aが計6つ設けられる。また、下枠部材22の上面の一部には、
図2(b)、(c)に示すように、アウターパイプ5の外周から下枠部材22の先端部に向かって延設される突条22bが形成される。
【0021】
図1(a)に示すように、乾燥剤(吸湿剤)7aを内包したバッグ7は、カートリッジ31に収容されている。このカートリッジ31は、上下面に冷媒を通過させるための孔(不図示)と、下面に溝31aとを有し、溝31aが下枠部材22の突条22bに係合し、アウターパイプ5の上枠部材30と下枠部材22とに挟持された状態で、アウターパイプ5と装着される。この下枠部材22よりも上方の空間が気相空間領域であって、この領域には、気液分離部材16によって分離された気相冷媒が主に存在する。
【0022】
アウターパイプ5の下部内周面には、インナーパイプ6の外周面と当接するパイプリブ23が一体に形成される。また、アウターパイプ5の底部には、オイルや液相冷媒に含まれる異物を除去するためのストレーナ20と、オイルをインナーパイプ6内に導くオイル戻し孔24と、胴体3の内部空間と連通し、胴体3の底に溜まったオイルをオイル戻し孔24の下方に流入させる溝26とが設けられる。
【0023】
インナーパイプ6は、アルミニウム合金等の金属からなり、下端部6aが開口すると共に、上端部6bがヘッダ4の冷媒流出孔9に連結される。また、インナーパイプ6の下部は、アウターパイプ5の内周面に凸設されたパイプリブ23の内側に嵌入され、これにより、インナーパイプ6が安定して保持される。
【0024】
次に、上記構成を有するアキュムレータ1の動作について、
図1を参照しながら説明する。尚、以下の説明においては、アキュムレータ1を冷凍サイクルの蒸発器と圧縮機との間に配置し、蒸発器からの冷媒に含まれる水分を除去してガス冷媒を生成し、これを圧縮機へ戻す場合を例にとって説明する。
【0025】
蒸発器から冷媒が排出されると、接続配管(不図示)を通じてアキュムレータ1に搬送される。アキュムレータ1に到達した冷媒は、冷媒流入孔8から胴体3の内部に流入した後、気液分離部材16に衝突し、密度の高い液相冷媒及びオイルと、密度の低い気相冷媒(ガス冷媒)とに分離される。
【0026】
気液分離後の液相冷媒及びオイルは、自重により胴体3の内側面を下降し、胴体3の底部に貯留される。その過程で、液相冷媒とオイルとの分離が進み、オイルは液相冷媒の下方に溜まる。
【0027】
ここで、乾燥剤7aを内包するバッグ7を上方に配置したため、胴体3に貯留された液相冷媒と乾燥剤7aとが接触し難くなり、気泡の発生を最小限に抑えることができる。また、仮に気泡が発生したとしても、気泡の発生位置から気液分離部材16までの距離が短いため、気泡が勢いよく気液分離部材16に衝突することを回避することができ、異音の発生を最小限に抑えることができる。
【0028】
一方、気液分離後の気相冷媒は、気液分離部材16の内側を通ってアウターパイプ5に流入し、アウターパイプ5内を下降する。その後、アウターパイプ5の底部で折り返されてインナーパイプ6に流入し、インナーパイプ6内を上昇して冷媒流出孔9に導かれる。このとき、オイル戻し孔24を通じて、胴体3の底に溜まったオイルがストレーナ20によって異物が除去されると共に吸引され、気相冷媒と共に冷媒流出孔9に導かれる。そして、オイルを含んだ気相冷媒は、冷媒流出孔9から排出され、接続配管(不図示)を通じて圧縮機に搬送される。
【0029】
以上のように、本実施形態によれば、気液分離部材16を備えたアキュムレータ1において、異音の発生を最小限に抑えることができる。また、カートリッジ31が存在しないと、バッグ7が垂れ下がり、冷媒流路にはみ出してこれを塞ぐおそれがあるが、バッグ7をカートリッジ31に収容することで、胴体3の内部の冷媒流路を十分に確保することができる。
【0030】
尚、上記実施形態においては、インナーパイプ6及びアウターパイプ5からなる二重管によって冷媒出口管を構成する場合を例示したが、本発明は、単一の冷媒出口管を備えるアキュムレータにも適用することが可能である。
【0031】
また、カートリッジ31を固定するため、下枠部材22の上面に突条22bを、カートリッジ31の下面に溝31aを各々設けているが、逆に、下枠部材22の上面に溝を、カートリッジ31の下面に突条を各々設けてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 アキュムレータ
2 タンク本体
3 胴体
4 ヘッダ
5 アウターパイプ
5a 上端部
6 インナーパイプ
6a 下端部
6b 上端部
7 バッグ
7a 乾燥剤
8 冷媒流入孔
9 冷媒流出孔
10 溶接部
16 気液分離部材
20 ストレーナ
22 下枠部材
22a 補強用リブ
22b 突条
23 パイプリブ
24 オイル戻し孔
26 溝
30 上枠部材
30a リブ
31 カートリッジ
31a 溝