特許第6068918号(P6068918)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6068918
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/28 20060101AFI20170116BHJP
   H01L 29/417 20060101ALI20170116BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20170116BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20170116BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20170116BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20170116BHJP
   H01L 23/522 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   H01L21/28 301R
   H01L29/50 M
   H01L29/78 652T
   H01L29/78 652M
   H01L29/78 658F
   H01L21/28 301B
   H01L21/90 D
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-227653(P2012-227653)
(22)【出願日】2012年10月15日
(65)【公開番号】特開2014-82246(P2014-82246A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2015年5月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤本 和徳
(72)【発明者】
【氏名】堀井 拓
(72)【発明者】
【氏名】木村 真二
(72)【発明者】
【氏名】木本 美津男
【審査官】 佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/116575(WO,A1)
【文献】 特開2010−272785(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/043116(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/28
H01L 21/90
H01L 29/50
H01L 29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素からなる基板と、
前記基板の表面上に形成され、SiOを含む絶縁膜と、
Alを含まないバッファ膜と、
Alを含む電極とを備え、
前記基板は導電領域を有し、
前記絶縁膜を貫通し、前記基板の表面を露出させるコンタクトホールが前記導電領域上に複数形成されており、
前記バッファ膜は、前記コンタクトホールの側壁面上において底面から上方に向けて延在し、
前記電極は、前記コンタクトホールの前記底面内で前記導電領域と接触するように形成され、かつ前記絶縁膜上に前記バッファ膜を介して形成されており、
前記バッファ膜は、隣り合う複数の前記コンタクトホールに挟まれた前記絶縁膜の部分を覆うように、複数の前記コンタクトホールのうちの1つの前記底面から前記絶縁膜の上面上をわたって複数の前記コンタクトホールのうちの他の一つの前記底面にまで延在しており、
前記絶縁膜上に形成される前記電極は、前記バッファ膜の全面を覆うように形成されており、
前記電極および前記絶縁膜を覆うように形成され、前記電極を介して前記導電領域と電気的に接続される配線をさらに備えた、半導体装置。
【請求項2】
炭化珪素からなる基板と、
前記基板の表面上に形成され、SiOを含む絶縁膜と、
Alを含まないバッファ膜と、
Alを含む電極とを備え、
前記基板は導電領域を有し、
前記絶縁膜を貫通し、前記基板の表面を露出させるコンタクトホールが前記導電領域上に形成されており、
前記バッファ膜は、前記コンタクトホールの側壁面上において底面から上方に向けて延在し、
前記電極は、前記コンタクトホールの前記底面内で前記導電領域と接触するように形成され、かつ前記絶縁膜上に前記バッファ膜を介して形成されており、
前記バッファ膜において、前記コンタクトホールの前記底面と反対側に位置する端部は前記側壁面上に形成されており、
前記絶縁膜上に位置する前記電極の端部は、前記バッファ膜の前記端部より前記コンタクトホールの前記底面側に形成されている、半導体装置。
【請求項3】
前記バッファ膜はTiNからなっている、請求項1または請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記電極はTiAlSiからなっている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記バッファ膜は、0.025μm以上0.15μm以下の厚みを有している、請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
炭化珪素からなる基板を準備する工程と、
前記基板の表面上にSiOを含む絶縁膜を形成する工程と、
前記絶縁膜を貫通し、前記基板の前記表面を露出させるコンタクトホールを複数形成する工程と、
隣り合う複数の前記コンタクトホールに挟まれた前記絶縁膜の部分を覆うように、複数の前記コンタクトホールのうちの1つの前記底面から前記絶縁膜の上面上をわたって複数の前記コンタクトホールのうちの他の一つの前記底面にまで延在するようにAlを含まないバッファ膜を形成する工程と、
Alを含む電極を、前記コンタクトホールを形成することにより露出した前記基板の前記表面上に接触し、かつ前記バッファ膜の全面を覆うように前記バッファ膜を介して前記絶縁膜上に形成する工程と、
前記電極および前記絶縁膜を覆うように、前記電極を介して前記導電領域と電気的に接続される配線を形成する工程とを備える、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関し、特に、アルミニウムを含む電極と層間絶縁膜との反応を抑制することにより、特性の安定した半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大電力を扱うことができる半導体装置を構成する基板材料として、炭化珪素(SiC)の採用が進められている。SiCを半導体装置の材料として採用した場合に、n型領域やp型領域と接触抵抗の低いオーミック接合を形成することができる電極材料として、アルミニウム(Al)を含む材料が検討されている。
【0003】
このとき、SiCからなる基板を備える半導体装置においては、Alを含む電極をn型領域とp型領域とオーミック接触させるためには、電極をそれぞれの領域上に形成したのち、例えば、1000℃程度の高温で合金化処理を行う必要がある。
【0004】
また、例えば、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)において、このようなAlを含むソース電極と、ゲート電極、ゲート絶縁膜および層間絶縁膜との位置関係等について検討されている(たとえば、特許文献1および2参照)。 別の例としては、MOSFETにおいて、ソース電極は、活性領域が形成された基板の表面上に接触するとともに、当該表面上においてゲート電極を取り囲むように形成された二酸化珪素(SiO2)からなる層間絶縁膜の側壁面に接触して形成される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許6833562号明細書
【特許文献2】特開2000−012846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、Alを含むソース電極とSiO2からなる層間絶縁膜とが接触する場合には、一般に、500℃程度以上の温度で加熱処理されると、合金化されたAlによりSiO2がSiに還元される。すると、層間絶縁膜の絶縁性や容量安定性などの電気特性が劣化することがある。
【0007】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたのものである。本発明の主たる目的は、AlとSiO2との反応を抑制することができる構成を有する半導体装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の半導体装置は、炭化珪素からなる基板と、基板の表面上に形成された絶縁膜と、Alを含まないバッファ膜と、Alを含む電極とを備えている。基板は導電領域を有している。上記半導体装置には、絶縁膜を貫通し、基板の表面を露出させるコンタクトホールが導電領域上に形成されている。バッファ膜は、コンタクトホールの側壁面上において底面から上方に向けて延在している。電極は、コンタクトホールの底面内で導電領域と接触するように形成され、かつ絶縁膜上にバッファ膜を介して形成されている。
【0009】
これにより、Alを含む電極は、Alを含まないバッファ膜を介してSiO2を含む絶縁膜上に形成されているため、電極に含まれるAlと絶縁膜に含まれるSiO2との反応を抑制することができる。
【0010】
ここで、Alを含まないバッファ膜とは、Alを実質的に含まないバッファ膜を意味する。すなわち、当該バッファ膜は、意図的にAlが添加されないバッファ膜を意味し、たとえば不可避不純物としてのAlが混入したバッファ膜も含む。
【0011】
上記バッファ膜は、側壁面から絶縁膜の上面上に延在してもよい。このとき、絶縁膜上に位置するバッファ膜の端部は上面上に形成されていてもよい。また、絶縁膜上に位置する電極の端部は、バッファ膜の上記端部よりコンタクトホール側に形成されていてもよい。これにより、電極に含まれるAlと絶縁膜に含まれるSiO2との反応を抑制することができる。
【0012】
上記半導体装置では、コンタクトホールが複数形成されていてもよい。このとき、バッファ膜は、隣り合う複数のコンタクトホールに挟まれた絶縁膜の部分を覆うように、複数のコンタクトホールのうちの1つの底面から絶縁膜の上面上をわたって複数のコンタクトホールのうちの他の一つの底面にまで延在していてもよい。これにより、隣り合う複数のコンタクトホールに挟まれた絶縁膜の部分において、電極に含まれるAlと絶縁膜に含まれるSiO2との反応を抑制することができる。
【0013】
上記半導体装置において、絶縁膜上に形成される電極は、バッファ膜の全面を覆うように形成されていてもよい。また、上記半導体装置において、絶縁膜上に形成される電極は、バッファ膜の一部を覆うように形成されていてもよい。このように、バッファ膜が絶縁膜を覆うように延在しているとき、電極のパターン形状によらず、AlとSiO2との反応を抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電極に含まれるアルミニウムと絶縁膜に含まれる二酸化珪素との反応を抑制することができる半導体装置およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施の形態1に係る半導体装置の概略断面図である。
図2】本実施の形態2に係る半導体装置の部分断面図である。
図3図2の変形例を示す図である。
図4】本実施の形態3に係る半導体装置の部分断面図である。
図5】本実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
図6】本実施の形態1に係る半導体装置の製造方法における、オーミック電極形成工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0017】
(実施の形態1)
まず、本実施の形態に係る半導体装置としてのMOSFET1の構造について説明する。図1を参照して、MOSFET1は、炭化珪素からなる基板10と、ゲート絶縁膜20と、ゲート電極30と、層間絶縁膜40と、バッファ膜51と、ソース電極52と、ソース配線60と、ドレイン電極70とを備えている。基板10は、ベース基板11と、半導体層(導電領域)12とを含み、また半導体層12には、ドリフト領域13と、ボディ領域14と、ソース領域15と、コンタクト領域16とが形成されている。また、MOSFET1には、ゲート絶縁膜20と層間絶縁膜40とを貫通し、基板10の主表面10Aを露出させるコンタクトホール80がゲート電極30から離れて形成されている。
【0018】
ベース基板11は、たとえばN(窒素)等のn型不純物を含むことにより導電型がn型(第1導電型)となっている。ドリフト領域13は、ベース基板11の主表面11A上に形成されたエピタキシャル成長層である。ドリフト領域13は、ベース基板11と同様に、たとえばN(窒素)等のn型不純物を含むことにより導電型がn型となっており、その濃度はベース基板11よりも低くなっている。
【0019】
ボディ領域14は、基板10の主表面10Aを含み、半導体層12内に互いに分離して形成されている。ボディ領域14は、たとえばAl(アルミニウム)やB(硼素)などのp型不純物を含むことにより、導電型がp型(第2導電型)となっている。
【0020】
ソース領域15は、主表面10Aを含み、ボディ領域14に取り囲まれるように各々のボディ領域14内に形成されている。ソース領域15は、たとえばP(リン)などのn型不純物を含むことにより、ベース基板11およびドリフト領域13と同様に導電型がn型となっている。また、ソース領域15に含まれるn型不純物の濃度は、ドリフト領域13に含まれるn型不純物の濃度よりも高くなっている。
【0021】
コンタクト領域16は、ソース領域15と同様に、主表面10Aを含みつつボディ領域14に取り囲まれ、かつソース領域15に隣接するように各々のボディ領域14内に形成されている。コンタクト領域16は、ボディ領域14と同様に、たとえばAl(アルミニウム)やB(硼素)などのp型不純物を含むことにより導電型がp型となっており、その濃度は、ボディ領域14よりも高くなっている。
【0022】
ゲート絶縁膜20は、SiO2(二酸化珪素)を含み、主表面10A上に接触しつつ、一方のソース領域15の上面から他方のソース領域15の上面にまで延在するように形成されている。
【0023】
ゲート電極30は、ゲート絶縁膜20上に接触しつつ、一方のソース領域15上から他方のソース領域15上にまで延在するように形成されている。ゲート電極30は、たとえば不純物が添加されたポリシリコンなどの導電体からなっている。
【0024】
層間絶縁膜40は、SiO2(二酸化珪素)を含み、ゲート絶縁膜20上においてゲート電極30を取り囲むように形成されている。
【0025】
コンタクトホール80は、側壁面80Aと底面80Bとを有し、層間絶縁膜40およびゲート絶縁膜20を貫通して形成されている。また、図1に示すように、コンタクトホール80の側壁面80Aは層間絶縁膜40およびゲート絶縁膜20により構成され、また、底面80Bはソース領域15およびコンタクト領域16の上面となっている。
【0026】
バッファ膜51は、コンタクトホール80内の側壁面80A上において底面80Bから上方に向けて延在し、さらに側壁面80Aから層間絶縁膜40の上面40A上に延在している。このとき、バッファ膜51は、側壁面80Aおよび上面40Aと接触するように形成されている。また、層間絶縁膜40上に位置するバッファ膜の端部51Aは、上面40A上に形成されている。バッファ膜51は、AlおよびSiO2を含まない膜であって、たとえば窒化チタン(TiN)、チタンタングステン(TiW)、窒化タンタル(TaN)などからなる膜であってもよい。
【0027】
ソース電極52は、バッファ膜51、およびコンタクトホール80を形成することにより露出した基板10の主表面10A上に接触するように形成されている。また、ソース電極52は、バッファ膜51を介して層間絶縁膜40およびゲート絶縁膜20上に形成されている。つまり、コンタクトホールの80の側壁面80A上および層間絶縁膜40の上面40A上において、ソース電極52は層間絶縁膜40およびゲート絶縁膜20と接触しない。ソース電極52の端部52Aは、バッファ膜51の端部51Aよりもコンタクトホール側に形成されている。ソース電極52は、Alを含む膜であって、たとえばTiAlSi合金からなっていてもよい。
【0028】
ドレイン電極70は、ベース基板11の主表面11Aとは反対側の主表面11B上に形成されている。ドレイン電極70は、ソース電極52と同様に、たとえばTiAlSi合金からなっており、ベース基板11に対して電気的に接続されている。
【0029】
ソース配線60は、ソース電極52および層間絶縁膜40を覆うように形成されている。ソース配線60は、たとえばAl(アルミニウム)等の金属からなっており、ソース電極52を介してソース領域15と電気的に接続されている。
【0030】
次に、本実施の形態に係る半導体装置としてのMOSFET1の動作について説明する。図1を参照して、ゲート電極30に印加された電圧が閾値電圧未満の状態、すなわちオフ状態では、ソース電極52とドレイン電極70との間に電圧が印加されても、ボディ領域14とドリフト領域13との間に形成されるpn接合が逆バイアスとなり、非導通状態となる。一方、ゲート電極30に閾値電圧以上の電圧が印加されると、ボディ領域14に反転層が形成される。その結果、ソース領域15とドリフト領域13とが電気的に接続され、ソース電極52とドレイン電極70との間に電流が流れる。以上のようにして、MOSFET1は動作する。
【0031】
以上のように、本実施の形態に係るMOSFET1では、ソース電極52は、層間絶縁膜40およびゲート絶縁膜20を貫通するコンタクトホール80の側壁面80A上、ならびに層間絶縁膜40の上面40A上に、バッファ膜を介して形成されている。このため、ソース電極52と層間絶縁膜40とは接触しないため、ソース電極52に含まれるAlと層間絶縁膜40を構成するSiO2との反応を抑制することができる。
【0032】
また、本実施の形態における層間絶縁膜40の上面40A上では、ソース電極52の端部52Aは、バッファ膜51の端部51Aよりもコンタクトホール80側に形成されている。このため、ソース電極52の形成後に合金化処理等の高温処理を行うことによってAlが移動する場合にも、Alがソース電極52の端部52Aから層間絶縁膜40に到達するのに必要な移動距離をバッファ膜51によって長くとることができる。その結果、ソース電極52形成後の高温処理においても、ソース電極52に含まれるAlと層間絶縁膜40のSiO2との反応を抑制することができる。
【0033】
また、本実施の形態に係る半導体装置としてのMOSFET1において、バッファ膜51は、0.025μm以上0.15μm以下の厚みを有していてもよい。このようにすることにより、ソース電極52と層間絶縁膜40との密着性を向上させることができる。
【0034】
また、本実施の形態に係る半導体装置としてのMOSFET1において、ゲート絶縁膜20はSiO2を含まなくてもよい。例えば、ゲート絶縁膜20は、Si34からなってもよい。
【0035】
次に、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法について、図5を参照して説明する。本実施の形態に係る半導体装置の製造方法においては、上記本実施の形態に係る半導体装置としてのMOSFET1が製造される。図5を参照して、まず、基板準備工程(S10)が実施される。この工程(S10)では、以下に説明する工程(S11)〜(S14)が実施されることにより、炭化珪素からなる基板10が準備される。
【0036】
まず、工程(S11)として、ベース基板準備工程が実施される。この工程(S11)では、たとえば4H−SiCからなるインゴットをスライスすることにより、導電型がn型のベース基板11が準備される。
【0037】
次に、工程(S12)として、エピタキシャル成長層形成工程が実施される。この工程(S12)では、エピタキシャル成長により、ベース基板11の主表面11A上に導電型がn型の半導体層12が形成される。
【0038】
次に、工程(S13)として、イオン注入工程が実施される。この工程(S13)では、まず、たとえばAlイオンが、基板10の主表面10Aを含む領域に注入されることにより、半導体層12内に導電型がp型のボディ領域14が形成される。次に、たとえばPイオンが、上記Alイオンの注入深さよりも浅い深さでボディ領域14内に注入されることにより、導電型がn型のソース領域15が形成される。そして、たとえばAlイオンが、ボディ領域14内にさらに注入されることにより、ソース領域15と隣接し、かつソース領域15と同等の深さを有し、導電型がp型のコンタクト領域16が形成される。また、半導体層12において、ボディ領域14、ソース領域15およびコンタクト領域16のいずれも形成されない領域は、ドリフト領域13となる。
【0039】
次に、工程(S14)として、活性化アニール工程が実施される。この工程(S14)では、基板10を加熱することにより、上記工程(S13)にて導入された不純物が活性化される。これにより、不純物が導入された領域において所望のキャリアが生成する。このようにして、上記工程(S11)〜(S14)が実施されることにより、不純物の導入により活性領域が形成された基板10が準備される。
【0040】
次に、工程(S20)として、ゲート絶縁膜形成工程が実施される。この工程(S20)では、たとえば酸素を含む雰囲気中において基板10を加熱することにより、基板10の主表面10A上を覆うようにSiO2(二酸化珪素)からなるゲート絶縁膜20が形成される。
【0041】
次に、工程(S30)として、ゲート電極形成工程が実施される。この工程(S30)では、たとえばLPCVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition)法により、不純物を含むポリシリコンからなるゲート電極30がゲート絶縁膜20上に形成される。
【0042】
次に、工程(S40)として、層間絶縁膜形成工程が実施される。この工程(S40)では、たとえばP(Plasma)−CVD法により、SiO2(二酸化珪素)からなる層間絶縁膜40が、ゲート絶縁膜20とともにゲート電極30を取り囲むようにゲート絶縁膜20上に形成される。
【0043】
次に、工程(S50)として、コンタクトホール形成工程が実施される。この工程(S50)では、側壁面80Aおよび底面80Bを有し、基板10の主表面10Aを露出させるコンタクトホール80が形成される。具体的には、たとえばRIE(Reactive Ion Etching)などのエッチング方法を用いて、層間絶縁膜40およびゲート絶縁膜20を貫通するようにエッチングを進行させることにより、基板10の主表面10A(ソース領域15およびコンタクト領域16の上面)を露出させるコンタクトホール80が形成される。また、この工程(S50)では、コンタクトホール80は、ゲート電極30から離れて形成されるため、ゲート電極30がゲート絶縁膜20と層間絶縁膜40とにより取り囲まれた状態が維持される。
【0044】
次に、工程(S60)として、バッファ膜形成工程が実施される。この工程(S60)では、たとえばスパッタリングにより、バッファ膜51は、コンタクトホール80の底面80Bおよび側壁面80A、ならびに層間絶縁膜40の上面40A上に接触するように形成される。この工程(S60)では、Alを含まないバッファ膜51として、たとえばTiNからなる膜が形成されてもよい。また、バッファ膜51として、TiWからなる膜や、TaNからなる膜が形成されてもよい。また、この工程(S60)では、0.025μm以上0.15μm以下の厚みを有するバッファ膜51が形成されてもよい。
【0045】
次に、工程(S70)として、エッチング工程が実施される。この工程(S70)では、バッファ膜51が、コンタクトホール80の底面80Bから側壁面80A上を経て層間絶縁膜40の上面40A上に延在するように加工される。具体的には、バッファ膜51を残存させる領域にレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクとして、基板10の主表面10A側よりドライエッチングを実施する。これにより、層間絶縁膜40の上面40A上およびコンタクトホール80の底面80B上に形成されたバッファ膜51の一部が除去され、バッファ膜51は底面80Bから側壁面80A上を上方に向かって層間絶縁膜40の上面40A上にまで延在するように形成される。絶縁膜40上に位置するバッファ膜51の端部51Aは、上面40A上に形成される。このとき、コンタクトホール80内において基板10の主表面10A(ソース領域15およびコンタクト領域16の上面)は再び露出される。
【0046】
次に、工程(S80)として、オーミック電極形成工程が実施される。この工程(S80)では、図6を参照して、以下に説明する工程(S81)〜(S84)が実施され、バッファ膜51、およびコンタクトホール80を形成することにより露出した基板10の主表面10A上に接触し、Ti、AlおよびSiを含むソース電極52と、ベース基板11の主表面11B上に接触し、たとえばソース電極52と同様の材料からなるドレイン電極70が形成される。
【0047】
まず、工程(S81)として、第1金属膜形成工程が実施される。この工程(S81)では、たとえばスパッタリングにより、Tiを含む第1金属層と、第1金属層上に接触しAlを含む第2金属層と、第2金属層上に接触しSiを含む第3金属層とが積層された構造を有する第1金属膜が形成される。また、この工程(S81)では、上述のように第1〜第3金属層が積層されることにより第1金属膜が形成されてもよいが、これに限られるものではない。たとえば、Ti、AlおよびSiを同時にスパッタリングすることにより、Ti、AlおよびSiが混合された第1金属膜が形成されてもよい。
【0048】
次に、工程(S82)として、エッチング工程が実施される。この工程(S82)では、コンタクトホール80の近傍にマスク(図示しない)を配置した上で、基板10の主表面10A側よりドライエッチングを実施することにより、バッファ膜51を介さずに層間絶縁膜40の上に形成された第1金属膜が主に除去される。また、層間絶縁膜40の上面において、第1金属膜の端部は、バッファ膜51の端部51Aよりもコンタクトホール80側に位置するように形成される。その結果、第1金属膜は、コンタクトホール80の側壁面80A上および底面80B上、ならびに絶縁膜40の上面40A上に、バッファ膜51を介して形成される。
【0049】
次に、工程(S83)として、第2金属膜形成工程が実施される。この工程(S83)では、たとえばスパッタリングにより、ベース基板11の主表面11B上において、第1金属膜と同様に、Ti、AlおよびSiが積層または混合された第2金属膜が形成される。
【0050】
次に、工程(S84)として、合金化アニール工程が実施される。この工程(S84)では、上記工程(S81)および(S83)にて形成された第1および第2金属膜が加熱される。これにより、第1および第2金属膜を構成するTi、AlおよびSiの合金化が進行し、その結果TiAlSi合金からなり、基板10にオーミック接触するソース電極52およびドレイン電極70が形成される。このように、この工程(S80)では、工程(S81)、(S82)および(S84)が実施されることによりソース電極52が形成され、また工程(S83)および(S84)が実施されることによりドレイン電極70が形成される。アニール温度は、例えば、1000℃程度としてもよい。
【0051】
次に、工程(S90)として、配線形成工程が実施される。この工程(S90)では、たとえば蒸着法により、Alなどの導電体からなるソース配線60が、ソース電極52上に接触するように形成される。上記工程(S10)〜(S90)が実施されることにより、MOSFET1が製造され、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法が完了する。
【0052】
以上のように、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法では、層間絶縁膜40を貫通するコンタクトホール80の側壁面80A上に接触し、Alを含まずTiおよびNを含むバッファ膜51が形成された後に、バッファ膜51上に接触し、Ti、AlおよびSiを含むソース電極52が形成される。このように、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法では、Alを含むソース電極52を形成する前にAlを含まないバッファ膜51を予め形成する。これにより、ソース電極52に含まれるAlと層間絶縁膜40に含まれるSiO2との反応を抑制することができる。また、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法では、層間絶縁膜40の上面40A上におけるソース電極52の端部52Aを、バッファ膜51の端部51Aよりもコンタクトホール80側に形成する。このため、ソース電極52の形成後に合金化アニールを行うことによって、ソース電極52に含まれるAlが移動する場合にも、Alがソース電極52の端部52Aから層間絶縁膜40に到達するのに必要な移動距離をバッファ膜51によって長くすることができる。その結果、ソース電極52形成後に合金化アニールを実施しても、ソース電極52に含まれるAlと層間絶縁膜40のSiO2との反応を抑制することができる。
【0053】
したがって、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法によれば、アルミニウムを含む電極であるソース電極52と二酸化珪素を含む層間絶縁膜40との反応を抑制させることにより特性の安定した上記本実施の形態に係る半導体装置としてのMOSFET1を製造することができる。
【0054】
(実施の形態2)
次に、図2を参照して、本発明の実施の形態2に係る半導体装置およびその製造方法について説明する。本実施の形態に係る半導体装置は、基本的には、実施の形態1に係る半導体装置と同等の構成を備えるが、バッファ膜51が隣り合う複数のコンタクトホール80に挟まれた層間絶縁膜40の部分を覆うように形成される点で異なる。本実施の形態に係る半導体装置としてのMOSFET1においては、コンタクトホール80は複数形成され、複数のコンタクトホール80のうちの1つの側壁面80A上の底面80Bから層間絶縁膜40の上面40A上をわたって複数のコンタクトホール80のうちの他の1つの側壁面80A上の底面80Bにまで延在している。つまり、バッファ膜51の端部は、層間絶縁膜40の上面40A上に形成されない。
【0055】
ソース電極52は、上述した実施の形態1と同様に、バッファ膜51、およびコンタクトホール80を形成することにより露出した基板10の主表面10A上に接触するように形成されている。また、ソース電極52は、層間絶縁膜40上においてバッファ膜51の一部を覆うように形成されている。
【0056】
これにより、隣り合う複数のコンタクトホール80に挟まれた層間絶縁膜40において、コンタクトホール80の側壁面80A上および層間絶縁膜40の上面40A上は、バッファ膜形成工程以降にバッファ膜51により覆われる。ソース電極52形成工程や合金化アニール工程において層間絶縁膜40およびゲート絶縁膜20に含まれるSiO2は露出していないため、ソース電極52に含まれるAlとSiO2とが接触して反応することを、より確実に抑制することができる。バッファ膜51が導電性を有する材料からなる場合には、バッファ膜51はソース電極52を介してソース領域15と電気的に接続されている。
【0057】
次に、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法について説明する、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法は、基本的には実施の形態1と同様の工程を備えるが、バッファ膜をエッチングする工程(S70)において、層間絶縁膜40の上面40A上にもバッファ膜51を残存させる点で異なる。これにより、工程(S70)後に実施されるオーミック電極形成工程(S80)において、隣り合う複数のコンタクトホール80に挟まれた層間絶縁膜40は、バッファ膜51に覆われて露出していない。そのため、合金化アニール工程(S84)においてソース電極52に含まれるAlが移動する場合にも、AlとSiO2との反応を抑制することができる。
【0058】
また、本実施の形態において、ソース電極52は、層間絶縁膜40上において任意に形状で構成されていてもよい。本実施の形態においては、層間絶縁膜40上においてバッファ膜51の端部が形成されないため、ソース電極52の構成は、バッファ膜51による制限を受けない。例えば、図3を参照して、ソース電極52は、層間絶縁膜40上において全面を覆うように形成されてもよい。この場合には、隣り合う複数のソース領域15およびコンタクト領域16を、ソース配線60に加えてソース電極52によっても電気的に接続することができる。また、この場合には、第1金属膜のエッチング工程(S82)を省略することができる。
【0059】
このように、本実施の形態に係る半導体装置およびその製造方法を用いても、本発明の実施の形態1に係る半導体装置およびその製造方法と同様の効果を得ることができる。
【0060】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3に係る半導体装置およびその製造方法について説明する。図4を参照して、本実施の形態に係る半導体装置は、基本的には、実施の形態1に係る半導体装置と同等の構成を備えるが、バッファ膜51において、コンタクトホール80の底面80Bと反対側に位置する端部51Aが側壁面80A上に形成されており、層間絶縁膜40上に位置するソース電極52の端部52Aは、バッファ膜51の端部51Aよりコンタクトホール80の底面80B側に形成されている点で異なる。本実施の形態に係る半導体装置としてのMOSFET1においては、バッファ膜51およびソース電極52は、層間絶縁膜40の上面40A上に形成されていない。
【0061】
また、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法は、基本的には実施の形態1と同様の工程を備えるが、バッファ膜をエッチングする工程(S70)において、層間絶縁膜40の上面40A上に形成されたバッファ膜51が全面除去され、かつ、コンタクトホール80の側壁面80A上および底面80B上に形成されたバッファ膜51の一部が除去される点で異なる。さらに、第1金属膜をエッチングする工程(S82)において、第1金属膜の端部は、バッファ膜51の端部51Aよりもコンタクトホール80の底面80B側に位置するように形成される点で異なる。これにより、合金化アニール工程において、ソース電極52に含まれるAlが移動してもバッファ膜51を超えて層間絶縁膜40と反応することを抑制することができる。
【0062】
このように、本実施の形態に係る半導体装置およびその製造方法を用いても、本発明の実施の形態1に係る半導体装置およびその製造方法と同様の効果を得ることができる。
【0063】
また、上述した各実施の形態において、ソース電極52は、これと同様にキャリア供給機能を有する電極であればよく、たとえばIGBTのエミッタ電極等を採用することができる。
【0064】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の半導体装置およびその製造方法は、アルミニウムを含む電極と絶縁膜との反応を抑制することが要求される半導体装置およびその製造方法において特に有利に適用される。
【符号の説明】
【0066】
1 MOSFET、10 基板、11 ベース基板、10A,11A,11B 主表面、12 半導体層、13 ドリフト領域、14 ボディ領域、15 ソース領域、16 コンタクト領域、20 ゲート絶縁膜、30 ゲート電極、40 層間絶縁膜、40A 上面、51 バッファ膜、51A 端部、52 ソース電極、52A 端部、60 ソース配線、70 ドレイン電極、80 コンタクトホール、80A 側壁面、80B 底面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6