特許第6068919号(P6068919)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6068919
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】軟質塩化ビニル系樹脂フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/06 20060101AFI20170116BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20170116BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   C08L27/06
   C08L75/04
   C08L23/08
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-229207(P2012-229207)
(22)【出願日】2012年10月16日
(65)【公開番号】特開2014-80509(P2014-80509A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2015年7月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006172
【氏名又は名称】三菱樹脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】230105223
【弁護士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】森田 英克
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 登成
【審査官】 安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−252753(JP,A)
【文献】 特開昭60−104149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 27/06
C08L 75/04
C08L 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
主成分として塩化ビニル系樹脂(a)と、
熱可塑性ポリウレタン(b1)及び/またはエチレン−一酸化炭素共重合体(b2)と、
架橋塩化ビニル系樹脂(c)とを
含む樹脂組成物から構成され
前記塩化ビニル系樹脂(a)と前記熱可塑性ポリウレタン(b1)及び/またはエチレン−一酸化炭素共重合体(b2)との合計100質量部に対する、前記架橋塩化ビニル系樹脂(c)の量が1〜5質量部である軟質塩化ビニル系樹脂フィルム。
【請求項2】
前記架橋塩化ビニル系樹脂(c)のゲル分率が20〜50%である、請求項1に記載の軟質塩化ビニル系樹脂フィルム。
【請求項3】
前記樹脂組成物が更に黒色顔料を含む、請求項1又は2に記載の軟質塩化ビニル系樹脂フィルム。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項に記載の軟質塩化ビニル系樹脂フィルムを用いてなる自動車外装材。
【請求項5】
自動車外装材の塗装代替用フィルムとして用いられる、請求項1〜のいずれか1項に記載の軟質塩化ビニル系樹脂フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質塩化ビニル系樹脂フィルム、特に、自動車外装材として使用でき、耐傷付き性に優れた軟質塩化ビニル系樹脂フィルムに関る。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車外装材として塩化ビニル系樹脂が多く利用されており、また塩化ビニル系樹脂の軟質化のために熱可塑性ポリウレタンやエチレン−一酸化炭素共重合体を混合させることが知られている。
【0003】
例えば、特開平6−32958号公報(特許文献1)には、熱可塑性ポリウレタンを配合した塩化ビニル樹脂組成物が記載されている。同文献には、当該塩化ビニル樹脂組成物が特定の硬度を有することにより、ウィンドシールドモール及びそのリップに使用した場合に、自動車走行時の異音発生の要因とならないことが教示されている。
また、特開平1−101248号公報(特許文献2)には、塩化ビニル系共重合体、無黄変型熱可塑性ポリウレタンを含む樹脂組成物を成形してなる、自動車の車体に装着されるモールディング等の自動車用装飾又は保護材が記載されている。同文献には、当該自動車用装飾又は保護材は、屋外において長期間使用されても硬度の経時変化が少ないことが教示されている。
これら先行従来文献には、耐傷付き性を向上させる点について何ら記載されていない。
【0004】
また、特開平11−130926号公報(特許文献3)には、架橋ゲル分2〜50重量%を含む塩化ビニル系樹脂、該樹脂100重量部当たり、分子量が410以上の可塑剤30〜150重量部を含有する車輌内装部品成形用塩化ビニル系樹脂組成物が記載されており、当該塩化ビニル系樹脂組成物は、艶消し性、耐傷つき性、低フォギング性などに優れることが教示されている。同文献に記載されている塩化ビニル系樹脂組成物は多量の可塑剤で軟質化されたものであり、熱可塑性ポリウレタンやエチレン−一酸化炭素共重合体を含むものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−32958号公報
【特許文献2】特開平1−101248号公報
【特許文献3】特開平11−130926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術として開示されている組成物から軟質塩化ビニル系樹脂フィルムを構成し、これを自動車用外装材に利用しようとすると、耐傷付き性に劣ることが分かった。そこで、本発明は、自動車外装材として使用でき、耐傷付き性が良好な軟質フィルムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題に対して本発明者らは鋭意検討したところ、塩化ビニル系樹脂を主成分とする樹脂組成物において、熱可塑性ポリウレタン及び/またはエチレン−一酸化炭素共重合体と、架橋塩化ビニル系樹脂(c)を含有させることにより、耐傷付き性を向上させることができ、かつ自動車外装材に要求される光沢度(グロス)を保持することができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
(1)少なくとも、主成分として塩化ビニル系樹脂(a)と、熱可塑性ポリウレタン(b1)及び/またはエチレン−一酸化炭素共重合体(b2)と、架橋塩化ビニル系樹脂(c)とを含む樹脂組成物から構成される軟質塩化ビニル系樹脂フィルム、
(2)前記塩化ビニル系樹脂(a)と前記熱可塑性ポリウレタン(b1)及び/またはエチレン−一酸化炭素共重合体(b2)との合計100質量部に対する、前記架橋塩化ビニル系樹脂(c)の量が1〜10質量部である、(1)に記載の軟質塩化ビニル系樹脂フィルム、
(3)前記架橋塩化ビニル系樹脂(c)のゲル分率が20〜50%である、(1)又は(2)に記載の軟質塩化ビニル系樹脂フィルム、
(4)前記樹脂組成物が更に黒色顔料を含む、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の軟質塩化ビニル系樹脂フィルム、
(5)(1)〜(4)のいずれか1項に記載の軟質塩化ビニル系樹脂フィルムを用いてなる自動車外装材、及び
(6)自動車外装材の塗装代替用フィルムとして用いられる、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の軟質塩化ビニル系樹脂フィルム、
を、提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の軟質塩化ビニル系樹脂フィルムは、光沢度を下げずに表面の耐傷付き性を向上させることができ、両性能のバランスに優れることから、自動車外装材、例えば自動車の外装部品のピラー等に貼付される塗装代替用フィルムとして好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明が提供する軟質塩化ビニル系樹脂フィルムは、少なくとも、主成分として塩化ビニル系樹脂(a)と、熱可塑性ポリウレタン(b1)及び/またはエチレン−一酸化炭素共重合体(b2)と、架橋塩化ビニル系樹脂(c)とを含む樹脂組成物から構成される軟質塩化ビニル系樹脂フィルムである。
【0010】
塩化ビニル系樹脂(a)
本発明においては、塩化ビニル系樹脂(a)は、塩化ビニルの単独重合体あるいは塩化ビニルとこれと共重合しうる他のコモノマーとの共重合体であってもよい。該共重合体におけるコモノマーとしては、エチレン、プロピレン、スチレンなどの不飽和炭化水素類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、マレイン酸ジエチルのような不飽和カルボン酸のエステル、ビニルメチルエーテルのようなビニルエーテル類、アクリロニトリルのような不飽和ニトリル類、塩化ビニリデンなどを例示することができる。これらは例えば30重量%以下、好ましくは20重量%以下の割合で共重合されていてもよい。又これらのランダム共重合体のほかに、エチレン・酢酸ビニル共重合体のようなベースポリマーに塩化ビニルをグラフト重合させたものを使用することもできる。
【0011】
塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、特に限定するものではないが、加工性、成形性の点からJIS K6721に基づいた平均重合度が700〜1700の範囲、好ましくは700〜1000の範囲にあるのが望ましい。
【0012】
熱可塑性ポリウレタン(b1)
本発明における熱可塑性ポリウレタン(b1)としては、ポリエステルジオールにジイソシアネート化合物を反応させて得られるポリエステルウレタンあるいはポリエーテルジオールにジイソシアネート化合物を反応させて得られるポリエーテルウレタンなどが使用できる。上記ジイソシアネート成分としてはテトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのような脂肪族ジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートのような脂環族ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、o、mまたはp−キシリレンジイソシアネートのような芳香族ジイソシアネートなどを挙げることができる。また上記ポリエステルジオールとしては、脂肪族ジカルボン酸、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸などと、脂肪族ジオール、例えば1.4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどから誘導される分子量400〜10000程度のものが好適に使用される。上記ポリエーテルジオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの分子量400〜10000程度のものが好適に使用できる。
【0013】
エチレン−一酸化炭素共重合体(b2)
本発明におけるエチレン−一酸化炭素共重合体(b2)としては、例えばエチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素三元共重合体、又は、エチレン−アルキルアクリレート−一酸化炭素三元共重合体を好適に用いることができるが、これらに限定するものではない。
【0014】
エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素三元共重合体としては、エチレン単位40〜80質量%、酢酸ビニル単位5〜50質量%及び一酸化炭素単位3〜30質量%からなる三元共重合体を好適に用いることができる。このような三元共重合体であって、且つ商品化されているものとして、例えば三井・デュポンポリケミカル(株)社製の商品名「Elvaloy 741」等を挙げることができる。
なお、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素三元共重合体におけるエチレン単位は、45〜75質量%であるのがさらに好ましく、中でも50〜65質量%であるのがより好ましい。酢酸ビニル単位は、10〜40質量%であるのがさらに好ましく、中でも15〜35質量%であるのがより好ましい。一酸化炭素単位は、5〜25質量%であるのがさらに好ましく、中でも8〜20質量%であるのがより好ましい。
【0015】
エチレン−アルキルアクリレート−一酸化炭素三元共重合体として、例えばエチレン単位40〜80質量%、アルキルアクリレート単位5〜50質量%及び一酸化炭素単位3〜30質量%からなる三元共重合体を好適に用いることができる。このような三元共重合体であって、且つ商品化されているものとして、例えば三井・デュポンポリケミカル(株)社製の商品名「Elvaloy HP441」等を挙げることができる。
なお、エチレン−アルキルアクリレート−一酸化炭素三元共重合体におけるエチレン単位は、45〜75質量%であるのがさらに好ましく、中でも50〜65質量%であるのがより好ましい。アルキルアクリレート単位は、10〜40質量%であるのがさらに好ましく、中でも15〜35質量%であるのがより好ましい。一酸化炭素単位は、5〜25質量%であるのがさらに好ましく、中でも8〜20質量%であるのがより好ましい。
【0016】
このような三元共重合体の中でも特に、エチレン−アルキルアクリレート−一酸化炭素三元共重合体は、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体に比べて熱安定性がよく、また粘着剤の主流であるアクリル系粘着剤との親和性も良いことが考えられるのでより一層好ましい。
【0017】
エチレン−一酸化炭素共重合体(b2)の重量平均分子量は、添加剤の粘着剤層への移行防止と成形加工性の観点から、5、000〜500、000であるのが好ましく、特に10、000〜400、000であるのが好ましく、中でも特に20、000〜300、000であるのがさらに好ましい。
【0018】
本発明においては、熱可塑性ポリウレタン(b1)、エチレン−一酸化炭素共重合体(b2)のいずれか一方、或いは両方を使用することができる。耐傷付き性の点からは、熱可塑性ポリウレタンの方が、エチレン−一酸化炭素共重合体よりも良好である。一方、耐溶剤性の点からは、エチレン−一酸化炭素共重合体の方が、熱可塑性ポリウレタン(b1)よりも良好である。本発明においては、要求される特性に応じて、両者の何れか又は両方を適宜用いることができる。
【0019】
塩化ビニル系樹脂(a)と熱可塑性ポリウレタン(b1)及び/またはエチレン−一酸化炭素共重合体(b2)との合計100質量部に対する両者の比率としては、塩化ビニル系樹脂(a):熱可塑性ポリウレタン(b1)及び/またはエチレン−一酸化炭素共重合体(b2)が好ましくは60:40〜80:20(質量比)である。
【0020】
架橋塩化ビニル系樹脂(c)
本発明における架橋塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニル系樹脂が部分的に架橋されているものを言う。塩化ビニル系樹脂の架橋は、その重合時や重合後に、架橋剤によりおこなわれる。
【0021】
架橋剤としては、例えば、ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルマレエート、ジビニルベンゼン等のジアリル化合物、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,3─ブチレンジメタクリレート等のジメタクリレート化合物、ジエチングリコールジアクリレート、1,3─ブチレンジアクリレート等のジアクリレート化合物、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート等のトリアクリレート化合物、テトラメチロールメタントリアクリレート等が挙げられる。
【0022】
本発明において、架橋塩化ビニル系樹脂(c)のゲル分率は、好ましくは20〜50%、より好ましくは25〜35%である。
【0023】
本発明において、塩化ビニル系樹脂(a)と熱可塑性ポリウレタン(b1)及び/またはエチレン−一酸化炭素共重合体(b2)との合計100質量部に対する、架橋塩化ビニル系樹脂(c)の量は1〜10質量部であり、より好ましく3〜5質量部である。架橋塩化ビニル系樹脂(c)の添加量が1質量部未満であると、耐傷付き性の向上効果は認められず、一方、10質量部より大きいと光沢度(グロス)が低下して自動車外装材に要求される基準(例えば60度鏡面光沢度で30%以上)に達しない。
詳細な理由は不明であるが、本発明においては、ゲルタイプの塩化ビニル系樹脂を1種類だけ用いるよりも、特定のゲル分率の架橋塩化ビニル系樹脂を少量添加することによって、光沢度(グロス)を下げずに表面の耐傷つき性を向上させることができ、両性能のバランスに優れる。
【0024】
本発明における樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂(a)が熱可塑性ポリウレタン(b1)及び/またはエチレン−一酸化炭素共重合体(b2)により軟質化されており、可塑剤により軟質化されるものではない。
【0025】
本発明における樹脂組成物には、更に顔料を添加することができる。顔料としては、塩化ビニル系樹脂に使用できるものであれば特に制限されず、例えば、カーボンブラックなどの黒色顔料が挙げられる。特に、本発明の軟質塩化ビニル系樹脂フィルムを自動車外装部品であるピラーに貼付する塗装代替用フィルムとして使用する場合は、黒色顔料として、カーボンブラックを添加するのが好ましい。
【0026】
本発明における樹脂組成物には、必要に応じて、各種安定剤、紫外線吸収材、耐候安定剤、酸化防止剤、加工助剤、滑剤などの各種添加剤を適当量配合することができる。
【0027】
紫外線吸収剤としては、例えば、フェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート等のサリシレート系紫外線吸収剤、レゾルシノールモノベンゾエート等のベンゾエート系紫外線吸収剤、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4’−メチルベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’、5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’、5’−ジ−tert−アミノフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、エチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート系紫外線吸収剤、蓚酸アニリド誘導体系紫外線吸収剤などが挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を混合して使用する。
【0028】
安定剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ステアリン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、オクタン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛、2−エチルヘキソイン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、ステアリン酸錫、ステアリン酸鉛、二塩基性ステアリン酸鉛、ナフテン酸鉛等の金属石鹸;鉛白、塩基性珪酸鉛、三塩基性硫酸鉛、三塩基性亜リン酸鉛、三塩基性マレイン酸鉛、二塩基性フタル酸鉛、シリカゲル共沈珪酸鉛、ノルマルサリチル酸鉛等の鉛系安定剤;ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレート、ジブチル錫メルカプチド等の有機錫系安定剤;バリウム−亜鉛複合安定剤、カルシウム−亜鉛複合安定剤、アルミニウム−マグネシウム−亜鉛複合安定剤、カドミウム−バリウム−亜鉛複合安定剤、カドミウム−バリウム−鉛複合安定剤、カルシウム−マグネシウム−亜鉛複合安定剤等、エポキシ化植物油、ビスフェノール型エポキシ化合物、エポキシ基含有アクリルポリマー等のエポキシ化合物を使用することができ、2種以上を混合して使用することもできる。
【0029】
本発明の樹脂組成物において、塩化ビニル系樹脂(a)、熱可塑性ポリウレタン(b1)及び/またはエチレン−一酸化炭素共重合体(b2)、架橋塩化ビニル系樹脂(c)を混合するのに用いる混合又は混練に用いる混合機又は混練機は、実質的に配合物を均一に混合、混練出来る装置なら特に限定されるものではない。混合機としては、例えば、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、プラネタリーミキサー等が挙げられ、混練機としては、例えば、単軸押出機、2軸押出機、ロールミル、バンバリーミキサー、ニーダー、インテンシブミキサー等加熱しながら剪断力下で混練できるものが挙げられる。本発明の樹脂組成物は、粉末状であってもペレット状であっても良い。
【0030】
本発明における軟質塩化ビニル系樹脂フィルムの加工法としては、公知の成形方法を利用できる。例えば、カレンダー成形、Tダイによる押出成形、インフレーションフィルム成形などが挙げられる。連続的に軟質塩化ビニル系樹脂フィルムを製造する方法としては、一般的な方法として、カレンダー成形法が挙げられるが、特に本発明においてはカレンダー成形法が適している。以下、カレンダー成形法による軟質塩化ビニル系樹脂フィルムの製造方法に関して詳細に述べる。
【実施例】
【0031】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して、具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により何ら限定されるものではない。尚、以下の実施例及び比較例で使用した原料、評価した特性の測定方法等は、次の通りである。
【0032】
[使用原料]
・塩化ビニル系樹脂(a):TH−800(大洋塩ビ製、平均重合度:800)
・熱可塑性ポリウレタン(b1):T−R3080(DICバイエル製、JIS A硬度:88)
・エチレン−一酸化炭素共重合体(b2):エルバロイHP662(エチレン−nBA一CO共重合体、三井・デュポンポリケミカル製)
・架橋塩化ビニル系樹脂(c):XEL−C(カネカ製、ゲル分率:30%)
・エポキシ化大豆油:M−6(DIC製)
・黒顔料:DAP4744−BK(大日精化工業製、カーボンブラック濃度35〜45%)
【0033】
[グロス(60度鏡面光沢度)]
JIS K 7105に準拠して60度鏡面光沢度を測定した。なお、評価は光沢度が30%以上のものを○(実用範囲)とし、30%未満を×とした。
[耐傷付き性(学振磨耗)]
綿布(かなきん3号)、垂直加重500gfで試験片中央に自動車用液状ワックスを3cc滴下し試験片を往復10回摩擦後、下記の基準で目視にて傷付き性を評価した。
◎:目視で傷跡が全く観察されない
○:目視で傷跡が若干観察されるがほとんど目立たない
△:目視で傷跡深さが浅く観察されるが実用範囲内
×:目視で傷跡が観察される
【0034】
[実施例1〜3、実施例5〜6、参考例1、比較例1〜4]
各々表1に記載されている配合量の原料に安定剤等の一般的な各種添加剤を少量添加し、約170℃の温度で7分間テストカレンダーで混練・製膜し、厚さ0.10mmの軟質塩化ビニル系樹脂フィルムを各々得た。尚、表1中の原料の配合量はいずれも質量部である。
【0035】
【表1】
【0036】
表1より、本発明の軟質塩化ビニル系樹脂フィルムは、光沢度(グロス)を下げずに表面の耐傷付き性を向上させることができ、両性能のバランスに優れることが示される。このように、本発明の軟質塩化ビニル系樹脂フィルムは、自動車外装材に要求される光沢度を保持しながら耐傷付き性を向上させることができるので、両方の性能が必要とされる、自動車の外装部品のピラーに貼付される塗装代替用フィルムとしても好適に使用することができる。