(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
送信側の機器と受信側の機器とを信号線を介して接続し、前記受信側の機器を動作させるための第1電圧を送信側の機器が信号に重畳して伝送する電源重畳伝送システムにおいて、
前記送信側の機器が前記第1電圧を印加する前に、前記第1電圧よりも低い電圧の第2電圧を前記信号線に印加する第2電圧印加手段と、
前記第2電圧印加手段により第2電圧を前記信号線に印加したときに前記信号線に流れる電流を検出する電流検出手段と、を備え、
前記送信側の機器は、前記電流検出手段により検出された電流が所定の電流値以下である場合に前記第1電圧を印加する
ことを特徴とする電源重畳伝送システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、送信側が電源重畳伝送技術を用いて受信側に電力を伝送するシステムにおいて、特許文献4の技術を用いることで、信号線の誤配線やショート発生などによる過電流が発生したとしても、当該過電流を遮断し受信側を保護できる。
しかしながら、受信側の機器として接続が予定された予定接続機器ではない非予定接続機器、特に電源に対して抵抗性負荷となる非予定接続機器が誤って受信側に接続されている場合、信号線を流れる電流が過電流よりも小さくなることから、過電流を検出する特許文献4の技術では、この誤った接続を検知して電流を遮断することはできない。
このため、非予定接続機器に電流が流れ続けてしまい、故障や誤動作の原因となる、といった問題がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、受信側に誤って接続された非予定接続機器の故障や誤動作を防止できる電源重畳伝送方法、送信機器、及び電源重畳伝送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、送信側の機器と受信側の機器とを接続する信号線に、前記受信側の機器を動作させるための第1電圧を送信側の機器が信号に重畳して伝送する電源重畳伝送方法において、前記送信側の機器は、前記第1電圧を印加する前に、前記第1電圧よりも低い電圧の第2電圧を前記信号線に印加し、このときに前記信号線に流れる電流が、所定の電流値以下である場合に、前記第1電圧を印加することを特徴とする。
【0007】
また本発明は、上記電源重畳伝送方法において、前記送信側の機器は、前記第1電圧を印加している間、及び前記第2電圧を前記信号線に印加している間、前記信号線の電流を検出し、過電流を検出したときに前記信号線への電圧の印加を停止することを特徴とする。
【0008】
また本発明は、上記電源重畳伝送方法において、前記第2電圧は、前記受信側の機器として予定されていない非予定接続機器が接続されている場合に流れる電流が、前記受信側の機器として予定されている予定接続機器に前記第2電圧を印加したときに流れる電流よりも大きく、かつ過電流よりも小さくなる電圧であることを特徴とする。
【0009】
また本発明は、上記電源重畳伝送方法において、前記送信側の機器は、前記第2電圧を前記信号線に印加しときに前記所定の電流値を超えた電流が流れた場合に報知することを特徴とする。
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、受信側の機器と信号線を介して接続され、前記受信側の機器に送る信号に、前記受信側の機器を動作させるための第1電圧を重畳して伝送する送信機器において、前記第1電圧を印加する前に、前記第1電圧よりも低い電圧の第2電圧を前記信号線に印加する第2電圧印加手段と、前記第2電圧印加手段により第2電圧を前記信号線に印加したときに前記信号線に流れる電流を検出する電流検出手段と、を備え、前記電流検出手段により検出された電流が所定の電流値以下である場合に、前記第1電圧を印加することを特徴とする。
【0011】
また上記目的を達成するために、本発明は、送信側の機器と受信側の機器とを信号線を介して接続し、前記受信側の機器を動作させるための第1電圧を送信側の機器が信号に重畳して伝送する電源重畳伝送システムにおいて、前記送信側の機器が前記第1電圧を印加する前に、前記第1電圧よりも低い電圧の第2電圧を前記信号線に印加する第2電圧印加手段と、前記第2電圧印加手段により第2電圧を前記信号線に印加したときに前記信号線に流れる電流を検出する電流検出手段と、を備え、前記送信側の機器は、前記電流検出手段により検出された電流が所定の電流値以下である場合に前記第1電圧を印加することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、受信側の機器を動作させるための第1電圧を印加する前に、第1電圧よりも低い電圧の第2電圧を信号線に印加する。これにより、受信側の機器には、第1電圧よりも制限した第2電圧を入力するため、非予定接続機器が受信側に接続されていた場合でも、過度の電圧が入力されるのを防止でき、当該非予定接続機器の誤動作や故障を防止できる。
これに加え、本発明では、第2電圧を印加したときの電流値が所定の電流値以下である場合に限り、第1電圧の印加を行うようにした。これにより、予定接続機器以外の機器が受信側に接続されていることを確実に検知し、予定接続機器が接続されている場合に限り第1電圧を印加することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。この実施形態では、車載音響システムに本発明を適用した態様を例示する。
図1は、本実施形態に係る車載音響システム1の構成を概略的に示す図である。
同図に示すように、車載音響システム1は、自動者等の車両2に搭載されたシステムであり、ヘッドユニット3と、複数のデジタルスピーカ4と、ヘッドユニット3とデジタルスピーカ4を接続するスピーカケーブル5と、スピーカケーブル5とデジタルスピーカ4の間に設けられたデジタルスピーカボックス6と、を備え、ヘッドユニット3が送信側の機器となり、デジタルスピーカボックス6が受信側の機器となって、送信側のヘッドユニット3から受信側のデジタルスピーカボックス6にスピーカケーブル5を通じて信号を送信する。
【0015】
ヘッドユニット3は、CDやDVD、MD、ラジオ、テレビなどのオーディオソースを再生し、デジタル音声信号D1を出力する再生装置であり、車両2のダッシュボードに設けられた収納スペースに収められている。このヘッドユニット3には、オーディオソースの再生を主たる目的とした、いわゆるカーオーディオ装置に限らず、例えばDVDの再生機能やテレビ/ラジオの受信機能を有したカーナビゲーション装置を用いることもできる。
またヘッドユニット3は、デジタル音声信号D1に、デジタルスピーカボックス6の動作に要する電力を重畳した伝送信号D2を生成し、スピーカケーブル5に送出してデジタルスピーカボックス6に送る。
【0016】
複数のデジタルスピーカ4は、それぞれ車両2の車室内に配置され、ヘッドユニット3が出力する音声信号に基づき車室内に放音する装置である。このデジタルスピーカ4は、永久磁石、振動板、及び、複数のボイスコイル40(
図2参照)を備え、通電するボイスコイル40の数を音声の振幅の大小に応じて高速に増減することで音を空間に放射する。すなわち、デジタルスピーカ4では、ボイスコイル40のそれぞれは通電状態(オン)のプラスマイナスと、非通電状態(オフ)の3つの状態を採り、それぞれのボイスコイル40のオン/オフの3値を制御することで音を放射するとも言えることから、このデジタルスピーカ4はフルデジタルスピーカとも呼ばれている。このデジタルスピーカ4には、ボイスコイル40ごとに通電状態(オン)(±)/非通電状態(オフ)の3状態を指定するデジタルのスピーカ信号D3がデジタルスピーカボックス6から入力される。
【0017】
スピーカケーブル5は、ヘッドユニット3が出力する伝送信号D2を伝送する信号線であり、少なくともデジタルスピーカ4の数だけ設けられている。これらのスピーカケーブル5は、車両2の車体のダッシュボードや内装パネル等の組み付け時に、それらの裏側に、いわゆる車室内ハーネスHを構成する線材として設けられるものであり、一端がダッシュボードの上記収納スペースに引き出され、他端がスピーカ設置予定箇所(例えばドア等)に引き出されている。
これらのスピーカケーブル5は、フルデジタルスピーカである上記デジタルスピーカ4を接続し伝送信号D2を伝送するための専用の信号線ではなく、アナログ信号の入力を受けて放音する既存のアナログスピーカも接続可能な信号線である。ただし、アナログスピーカが接続される場合、ヘッドユニット3には、デジタル音声信号D1を含む伝送信号D2に代えてアナログ信号をスピーカケーブル5に出力する機器が用いられる。
【0018】
デジタルスピーカボックス6は、スピーカケーブル5を通じて伝送された伝送信号D2を受信し、この伝送信号D2が含むデジタル音声信号D1に基づいて、上記スピーカ信号D3を生成し、デジタルスピーカ4に出力する。このスピーカ信号D3に基づいてデジタルスピーカ4の各ボイスコイル40が通電状態(オン)(±)/非通電状態(オフ)を切り替えることで、デジタル音声信号D1に応じた音が放射される。
このデジタルスピーカボックス6は、スピーカ設置予定箇所の各々にデジタルスピーカ4とともに配設されてスピーカケーブル5に接続される。またデジタルスピーカボックス6とデジタルスピーカ4との間は、上記スピーカ信号を伝送する信号線7で接続されている。
【0019】
この車載音響システム1では、上述の通り、デジタルスピーカボックス6の動作に要する電力をヘッドユニット3が伝送信号D2としてスピーカケーブル5を通じてデジタルスピーカボックス6に伝送する。
すなわち、ヘッドユニット3は、
図1に示すように、車両2が備える車載バッテリ10の電力ライン11を通じてバッテリ電圧Vaの電源供給を受け、このバッテリ電圧Vaをデジタル音声信号D1に重畳して伝送信号D2を生成しスピーカケーブル5を通じて各デジタルスピーカボックス6に伝送する。
【0020】
また、この車両2は、エンジンの駆動力に基づき交流電力を生成し、直流電力に整流して出力するオルタネータ発電機12を備え、オルタネータ発電機12の出力が電力ライン11に接続されている。エンジンが駆動されている間は、オルタネータ発電機12の直流電力が電力ライン11を通じて車載バッテリ10に入力されることで当該車載バッテリ10が充電される。
【0021】
ここで、オルタネータ発電機12の直流電力には、揺らぎ成分であるオルタネータノイズNが含まれることから、このオルタネータノイズNが乗ったバッテリ電圧Vaが電力ライン11を通じてヘッドユニット3に入力される。この場合、ヘッドユニット3と車載バッテリ10はそれぞれ本体の電位をアース電位としていることから、ヘッドユニット3では、バッテリ電圧VaにオルタネータノイズNが含まれたままとなる。したがって、ヘッドユニット3がバッテリ電圧Vaにデジタル音声信号D1を重畳して生成した伝送信号D2にはオルタネータノイズNが含まれることとなり、デジタルスピーカボックス6に送信されるデジタル音声信号D1の信号品質が低下する。
そこで、この車載音響システム1では、伝送信号D2のデジタル音声信号D1をデジタルスピーカボックス6への差動入力信号とすることで、オルタネータノイズNに影響を受けずにデジタル音声信号D1をデジタルスピーカボックス6に入力可能としている。
【0022】
次いで、ヘッドユニット3からデジタルスピーカボックス6への電力伝送に係る構成について、
図2を参照して詳述する。
図2は、車載音響システム1の機能的構成を示す図である。なお、同図には、1組のデジタルスピーカボックス6、及びデジタルスピーカ4のみを示している。
ヘッドユニット3は、
図2に示すように、マイコン20と、導通スイッチ回路21と、デジタル音声信号差動入力回路22と、重畳合成回路23と、過電流検出遮断回路24と、誤接続検出用回路25と、を備えている。
マイコン20は、ヘッドユニット3の各部を中枢的に制御する制御手段として機能するものであり、同図に示すヘッドユニット3の各部の他に、オーディオソースの再生制御、ヘッドユニット3が備える図示せぬ表示部(フラットパネルディスプレイや各種のランプ)の表示制御などを行う。
【0023】
導通スイッチ回路21は、車両2が備える車載バッテリ10の電力ライン11に接続されたスイッチ回路であり、マイコン20の制御に基づいてオン/オフし、スイッチオンすると、車載バッテリ10のバッテリ電圧Vaを重畳合成回路23に出力する。
デジタル音声信号差動入力回路22は、デジタル音声信号D1を重畳合成回路23に差動入力する回路である。このデジタル音声信号D1は、オーディオソースを再生して得られるデジタル信号を所定規格(例えばS/PDIF等)に準拠して変換した信号である。
重畳合成回路23は、差動入力されたデジタル音声信号D1にバッテリ電圧Vaを重畳してスピーカケーブル5に送出する回路である。このバッテリ電圧Vaがスピーカケーブル5を通じてデジタルスピーカボックス6に供給されることで、当該ヘッドユニット3が電源として機能する。
【0024】
過電流検出遮断回路24は、導通スイッチ回路21と重畳合成回路23の間に介挿され、スピーカケーブル5の誤配線やショート発生時に起因して流れる過電流を検出し、当該過電流を検出した場合に、導通スイッチ回路21と重畳合成回路23の間を電気的に遮断する回路である。この過電流検出遮断回路24が過電流として検出する電流値は、デジタルスピーカボックス6が許容する定格の最大入力電流Imaxに所定のマージンαを加えた値(すなわちImax+α)に設定されている。
【0025】
誤接続検出用回路25は、デジタルスピーカ4のデジタルスピーカボックス6ではなく、アナログスピーカがスピーカケーブル5に誤まって接続されていること(以下、誤接続と言う)を検出し、マイコン20に出力する回路である。マイコン20は、誤接続が検出された場合には、ヘッドユニット3の表示機能や各種のアラーム機能を用いて誤接続を報知する。なお、この誤接続検出用回路25の詳細については後述する。
【0026】
デジタルスピーカボックス6は、ヘッドユニット3から伝送されるバッテリ電圧Vaを電源にして動作する機器であり、具体的には、重畳分離回路30と、電源回路31と、フルデジタルスピーカLSI32と、を備えている。
重畳分離回路30は、ヘッドユニット3からスピーカケーブル5に送信された伝送信号D2を受信し、デジタル音声信号D1の差動信号D1’とバッテリ電圧Vaとに分離し、バッテリ電圧Vaを電源回路31に出力し、デジタル音声信号D1の差動信号D1’をフルデジタルスピーカLSI32に出力する。
【0027】
電源回路31は、バッテリ電圧Vaを、フルデジタルスピーカLSI32の動作に要する動作電圧Vbに変換してフルデジタルスピーカLSI32に供給する電力変換回路であり、例えば3端子レギュレータを備えている。
フルデジタルスピーカLSI32は、電源回路31が出力する動作電圧Vbを受けて動作可能となり、デジタルスピーカ4の各ボイスコイル40を導通状態(オン)(±)/非導通状態(オフ)にする上記スピーカ信号D3をデジタル音声信号D1の差動信号に基づいて生成して、デジタルスピーカ4に出力する。
デジタルスピーカ4は、上述の通り、複数のボイスコイル40を備え、これらのボイスコイル40がスピーカ信号D3に基づいて導通状態/非導通状態となることで音声を放音する。
【0028】
次いで、ヘッドユニット3が備える誤接続検出用回路25について説明する。
この車載音響システム1のスピーカケーブル5には、アナログスピーカ50へのアナログ信号の伝送にも使用できるケーブルが用いられているため、例えば自動車の組立工場において、作業者がスピーカの組み付け作業時に、
図3に示すように、アナログスピーカ50を誤って接続する虞がある。
アナログスピーカ50は、電源に対して数オーム(Ω)程度のインピーダンスZとして機能することから、アナログスピーカ50が誤接続された状態でヘッドユニット3が起動しバッテリ電圧Vaの伝送を開始すると、アナログスピーカ50には、バッテリ電圧VaとインピーダンスZに応じて決まる電流が流れ続けることとなり、アナログスピーカ50が発熱したり故障したりする。
誤接続検出用回路25は、ヘッドユニット3が起動したときに、スピーカケーブル5へのバッテリ電圧Vaの伝送開始に先立って、アナログスピーカ50の誤接続を検出するものであり、これにより、誤接続のアナログスピーカ50の発熱や故障が防止される。
【0029】
誤接続検出用回路25の構成について詳細には、前掲
図2に示すように、誤接続検出用回路25は、誤接続検出用電源回路60と、誤接続電流検出回路61とを備えている。
誤接続検出用電源回路60は、誤接続検出用電圧Vcを生成しスピーカケーブル5に印加する回路である。具体的には、誤接続検出用電源回路60は、車載バッテリ10の電力ライン11に接続され、当該バッテリ電圧Vaを電圧変換して誤接続検出用電圧Vcを生成する電源回路である。この誤接続検出用電圧Vcは、過電流検出遮断回路24の入力側に出力され、当該過電流検出遮断回路24を通じてスピーカケーブル5に印加される。
この構成により、誤接続検出用電圧Vcの印加時であっても、スピーカケーブル5の誤配線やショート発生時に起因して過電流が流れた場合には、この過電流が過電流検出遮断回路24で検知されて速やかに遮断されることとなる。
【0030】
この誤接続検出用電圧Vcは、バッテリ電圧Va(すなわち、デジタルスピーカボックス6を動作させるために供給する電圧)よりも低い電圧に設定されている。したがって、スピーカケーブル5にデジタルスピーカボックス6が接続されているときには、誤接続検出用電圧Vcがスピーカケーブル5に印加された場合でも、デジタルスピーカボックス6が動作しないことから、スピーカケーブル5には流れる電流Iaはゼロか、或いは微々となる。
一方、スピーカケーブル5にアナログスピーカ50が誤接続されている場合には、アナログスピーカ50がインピーダンスZとして作用することから、(誤接続検出用電圧Vc/インピーダンスZ)で規定された電流Ibが流れる。
【0031】
したがって、デジタルスピーカボックス6を動作させるための電圧(バッテリ電圧Va)よりも低い範囲において、電流Ib>電流Iaが成り立つ電圧に誤接続検出用電圧Vcを設定することで、誤接続検出用電圧Vcを印加したときの電流Iに基づいて誤接続が検知できる。
ただし、誤接続検出用電圧Vcを印加したときの電流Iが過電流に達するほど大きいと、誤接続による電流と過電流とが区別できなくなるため、誤接続検出用電圧Vcは、誤接続時に流れる電流Ibが過電流Imax+αを超えないように設定されている。
【0032】
誤接続電流検出回路61は、誤接続検出用電圧Vcを印加したときにスピーカケーブル5を流れる電流Iを検出し、当該電流Iが電流Iaを超えている場合に、誤接続が検知されたことを示す誤接続検知信号をマイコン20に出力する。これにより、誤接続がマイコン20に出力され、ヘッドユニット3の表示機能や警報機能を通じて作業者等に報知されることとなる。またマイコン20は、誤接続が入力された場合、導通スイッチ回路21をオフにしたままにしてバッテリ電圧Vaの印加を禁止し、アナログスピーカ50に伝送信号D2が伝送されることを防止する。
なお、電流Iと電流Iaの比較を誤接続電流検出回路61に代えてマイコン20が行う構成でも良い。
【0033】
図4は、ヘッドユニット3の動作を示すフローチャートであり、特に電力供給開始時の動作を示す。
先ず作業者は、車両2にデジタルスピーカ4を組み付け、その後、誤接続が無いかを検査するためにヘッドユニット3を起動する(システムオン:ステップS1)。この起動時には、ヘッドユニット3の導通スイッチ回路21はオフであり、スピーカケーブル5にはバッテリ電圧Vaは印加されない。
ヘッドユニット3が起動すると、マイコン20は、バッテリ電圧Vaの印加に先立ち、上記誤接続検出用回路25によって誤接続を検知する。すなわち、誤接続検出用電源回路60をオンして誤接続検出用電圧Vcを生成しスピーカケーブル5に印加する(ステップS2)。誤接続検出用電圧Vcを印加している間、誤接続電流検出回路61がスピーカケーブル5を流れる電流Iを検出し(ステップS3)、当該電流Iが電流Iaを超えているか否かを判断する(ステップS3)。この電流Iaは、スピーカケーブル5にデジタルスピーカボックス6が接続されているとき(誤接続がないとき)に流れる電流である。
【0034】
電流Iが電流Ia以下である場合(ステップS3:No)、誤接続電流検出回路61は、誤接続が検知されないことをマイコン20に出力する(ステップS4)。この出力を受けることにより、マイコン20は、導通スイッチ回路21をオンしてバッテリ電圧Vaの印加を開始する(ステップS5)。
一方、電流Iが電流Iaを超えている場合(ステップS3:Yes)、誤接続電流検出回路61は、誤接続が検知されたことを示す誤接続検知信号をマイコン20に出力する(ステップS6)。マイコン20は、この誤接続検知信号が入力されると、ヘッドユニット3の表示機能や警報機能を通じて作業者に報知する(ステップS7)。これにより、誤接続があった場合には、バッテリ電圧Vaの伝送が開始される前に速やかに作業者に報知され、作業者が誤接続を把握できる。
また、誤接続検出用電圧Vcがスピーカケーブル5に印加されている間は、上述の通り、過電流検出遮断回路24によっても過電流が検出されることから、この段階で過電流が流れた場合には、誤配線やショートも併せて検知できる。
【0035】
ここで、誤接続検出用電圧Vcの具体例について説明すると、この車載音響システム1では、バッテリ電圧Vaが12Vであり、デジタルスピーカボックス6の動作電圧Vbは5Vであることから、誤接続検出用電圧Vcは少なくとも5Vよりも小さい値に設定され、この車載音響システム1では、誤接続検出用電圧Vc=3.3Vが用いられている。この誤接続検出用電圧Vc(=3.3V)をデジタルスピーカボックス6に印加したときに流れる電流Iaは約ゼロか最大でも0.1A程度である。
ただし、デジタルスピーカボックス6の最大入力電流Imaxにマージンαを加えた値(過電流)は5Aに設定されていることから、アナログスピーカ50が誤接続されている状態で誤接続検出用電圧Vcを印加したときに流れる電流Ibが5Aを超えないように誤接続検出用電圧Vcが設定される必要がある。一般に、誤接続され得るアナログスピーカ50のインピーダンスZは数Ω程度であり、例えば4Ωと見積もると、3.3Vの誤接続検出用電圧Vcを印加したときに流れる電流Ibは約0.8A(3.3V/4Ω)となり、過電流よりも十分に小さく、なおかつ上記電流Iaと十分に区別できる値となる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態の車載音響システム1によれば、デジタルスピーカボックス6を動作させるためのバッテリ電圧Vaを伝送する前に、このバッテリ電圧Vaよりも低い電圧の誤接続検出用電圧Vcをスピーカケーブル5に印加する構成とした。
この構成により、受信側には、バッテリ電圧Vaよりも制限した電圧の誤接続検出用電圧Vcが入力されるため、アナログスピーカ50が受信側に誤接続されていた場合でも、過度の電圧が入力されるのを防止でき、アナログスピーカ50の誤動作や故障が防止される。
これに加え、誤接続検出用電圧Vcを印加したときの電流Iが、デジタルスピーカボックス6が接続されているときに流れる電流Iaを超えない場合に限り、バッテリ電圧Vaの印加を行う構成とした。
この構成により、デジタルスピーカボックス6以外の機器であって、電源に対して抵抗性負荷となるようなアナログスピーカ50が誤って受信側に接続されていることを確実に検知し、デジタルスピーカボックス6が接続されている場合に限りバッテリ電圧Vaを印加できる。
【0037】
また本実施形態によれば、バッテリ電圧Vaを印加している間に過電流を検出する過電流検出遮断回路24は、誤接続検出用電圧Vcがスピーカケーブル5に印加されている間も、過電流の検出を行う構成とした。
この構成により、誤接続の検知の段階で、誤配線やショートも併せて検知できる。
【0038】
また本実施形態によれば、誤接続検出用電圧Vcは、スピーカケーブル5にアナログスピーカ50が接続されているときに流れる電流Ibが、デジタルスピーカボックス6に誤接続検出用電圧Vcを供給したときに流れる電流Iaよりも大きく、かつ過電流(Imax+α)よりも小さくなる電圧とした。
これにより、誤配線やショート等の過電流と区別して誤接続を確実に検知できる。
【0039】
また本実施形態によれば、誤接続検出用電圧Vcを印加しときに流れる電流Iが、デジタルスピーカボックス6に誤接続検出用電圧Vcを供給したときに流れる電流Iaを超えている場合(すなわち、誤接続を検知したとき)、作業者に報知する構成とした。
これにより、作業者は、誤接続を速やかに把握し、デジタルスピーカボックス6を組み付け直すことができる。
【0040】
なお、上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を例示したものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形、及び応用が可能である。
【0041】
例えば上述した実施形態では、送信側のヘッドユニット3が車載バッテリ10のバッテリ電圧Vaを受信側のデジタルスピーカボックス6に印加する構成を例示した。
しかしながら、これに限らず、ヘッドユニット3が導通スイッチ回路21の前後、或いは導通スイッチ回路21に代えて、車載バッテリ10のバッテリ電圧Vaを所定電圧に変換する電力変換回路(電源回路)を備え、この所定電圧を受信側に伝送しても良い。導通スイッチ回路21に代えて電力変換回路を備える場合、マイコン20は、導通スイッチ回路21に代えて電力変換回路の作動をオン/オフする。
また送信側のヘッドユニット3が受信側に伝送する電圧は、受信側が動作する電力が供給される範囲であれば適宜に設定できる。
【0042】
例えば上述した実施形態では、本発明を車載音響システム1に適用した場合を例示したが、これに限らない。すなわち、自動車に搭載される車両ネットワークシステムにも本発明を適用できる。この場合、誤接続検出用電圧Vcは、送信側のECUの予定接続機器となる各種の受信側の機器の中で最も低い動作電圧Vbを超えない範囲において、誤接続され得る非予定接続機器に誤接続検出用電圧Vcを加えたとき流れる電流Ibが、上記電流Iaよりも区別できる程度に大きくなるように設定される。
【0043】
また本発明は、車載のシステムに限らず、送信側の機器と受信側の機器とを信号線で接続し、送信側の機器が受信側の電力を信号に重畳して伝送する任意のシステムに適用することができる。