(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アルケニル基を含有する多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)とヒドロシリル基を有する化合物(c)をヒドロシリル化反応させた多面体構造ポリシロキサン反応物を、アルカリ吸着剤(d)と塩基(e)により処理することを特徴とする多面体構造ポリシロキサン変性体の製造方法。
アルケニル基を含有する多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)及び一分子中に炭素−炭素二重結合を一つ含有する化合物(b)とヒドロシリル基を有する化合物(c)をヒドロシリル化反応させた多面体構造ポリシロキサン反応物を、アルカリ吸着剤(d)と塩基(e)により処理することを特徴とする請求項1記載の多面体構造ポリシロキサン変性体の製造方法。
前記塩基(e)が、一分子中に窒素原子を二つ以上含有する塩基であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体の製造方法。
多面体構造ポリシロキサン変性体が、分子中に少なくとも3個のヒドロシリル基を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体の製造方法。
ヒドロシリル基を有する化合物(c)が、ヒドロシリル基を含有する環状シロキサンあるいは直鎖状シロキサンであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の多面体構造ポリシロキサン変性体の製造方法。
アルケニル基を含有する多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)とヒドロシリル基を有する化合物(c)をヒドロシリル化反応させた多面体構造ポリシロキサン反応物を、アルカリ吸着剤(d)と塩基(e)により処理する工程、および、
得られた多面体構造ポリシロキサン変性体(A)と、少なくとも1個以上のアルケニル基を有する化合物(B)を均一に混合する工程を含む多面体構造ポリシロキサン系組成物の製造方法。
アルケニル基を有する化合物(B)が、分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するポリシロキサンであることを特徴とする、請求項9に記載の多面体構造ポリシロキサン系組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明について詳細に説明する。
<(A)多面体構造ポリシロキサン>
本発明における(A)成分は、アルケニル基を含有する多面体構造ポリシロキサン系化合物であって、多面体骨格を形成するSi原子上に直接、または間接的にアルケニル基が結合したポリシロキサン化合物(a)に対して、ヒドロシリル基を有する化合物(c)をヒドロシル化により変性させた多面体構造ポリシロキサンであればよい。(A)成分が、アルケニル基を含有する多面体構造ポリシロキサン系化合物であって、多面体骨格を形成するSi原子上に直接、または間接的にアルケニル基が結合したポリシロキサン化合物(a)及び一分子中に炭素−炭素二重結合を一つ含有する化合物(b)に対して、ヒドロシリル基を有する化合物(c)をヒドロシル化により変性させた多面体構造ポリシロキサンであることが特に好ましい。
【0025】
以下、前記、多面体骨格を形成するSi原子上に直接、または間接的にアルケニル基が結合したポリシロキサン化合物(a)について説明する。
【0026】
<アルケニル基を含有するポリシロキサン化合物(a)>
本発明において使用される多面体骨格を形成するSi原子上に直接、または間接的にアルケニル基が結合したポリシロキサン化合物において、多面体骨格に含有されるSi原子の数は6〜24であることが好ましく、具体的に、例えば、以下の構造で示される多面体構造を有するシルセスキオキサンが例示される(ここでは、Si原子数=8を代表例として例示する)。
【0028】
上記式中R
1〜R
8は、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、メルカプト基、アミノ基を含有する有機基、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、またはこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換したクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基などから選択される同一又は異種の、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10の非置換又は置換の1価の炭化水素基である。
【0029】
ただし、R
1〜R
8のうちの少なくとも1つは、アルケニル基である。前記アルケニル基においては、耐熱性の観点からビニル基が好ましく、アルケニル基以外の基が選択される場合は、耐熱性の観点からメチル基が好ましい。
【0030】
上記、多面体構造を有するシルセスキオキサンは、例えば、RSiX
3(式中Rは、上述のR
1〜R
8を表し、Xは、ハロゲン原子、アルコキシ基等の加水分解性官能基を表す)のシラン化合物の加水分解縮合反応によって、得られる。または、RSiX
3の加水分解縮合反応によって分子内に3個のシラノール基を有するトリシラノール化合物を合成したのち、さらに、同一もしくは異なる3官能性シラン化合物を反応させることにより、閉環し、多面体骨格を有するシルセスキオキサンを合成する方法も知られている。
【0031】
本発明での多面体骨格を形成するSi原子上に直接、または間接的にアルケニル基が結合したポリシロキサン化合物において、さらに好ましい例としては、以下の構造で示されるような多面体構造を有するシリル化ケイ酸が例示される(ここでは、Si原子数=8を代表例として例示する)。該化合物においては、多面体骨格を形成するSi原子とアルケニル基とが、シロキサン結合を介して結合していることから、得られる硬化物の剛直になり過ぎず、良好な成形体を得ることができる。
【0033】
上記、構造中、R
9〜R
32は、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、メルカプト基、アミノ基を含有する有機基、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、またはこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換したクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基などから選択される同一又は異種の有機基である。ただし、これらR
9〜R
32のうち、少なくとも1つはアルケニル基である。前記アルケニル基においては、耐熱性の観点からビニル基が好ましく、アルケニル基以外の基が選択される場合も、耐熱性、耐光性の観点からメチル基が好ましい。
【0034】
多面体構造を有するシリル化ケイ酸の合成方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いて合成される。前記合成方法としては、具体的に、例えば、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシランを4級アンモニウムヒドロキシド等の塩基存在下で加水分解縮合させる方法が挙げられる。
【0035】
本合成方法においては、テトラアルコキシシランの加水分解縮合反応により、多面体構造を有するケイ酸塩が得られ、さらに得られたケイ酸塩をアルケニル基含有シリルクロライド等のシリル化剤と反応させることにより、多面体構造を形成するSi原子とアルケニル基とが、シロキサン結合を介して結合したポリシロキサンを得ることが可能となる。本発明においては、テトラアルコキシシランの替わりに、シリカや稲籾殻等のシリカ含有する物質からも、同様の多面体構造を有するシリル化ケイ酸を得ることが可能である。
【0036】
本発明においては、多面体骨格に含有されるSi原子の数として、6〜24、さらに好ましくは、6〜10のものを好適に用いることが可能である。また、Si原子数の異なる多面体骨格を有するポリシロキサンの混合物であってもよい。
【0037】
<一分子中に炭素−炭素二重結合を一つ含有する化合物(b)>
以下、一分子中に炭素−炭素二重結合を一つ含有する化合物(b)について説明する。
本発明における一分子中に炭素−炭素二重結合を一つ含有する化合物(b)はヒドロシリル基を有する化合物(c)のヒドロシリル基とヒドロシリル化反応する。(b)成分を用いることで、得られる封止剤の弾性率を低下させることができ、耐冷熱衝撃性を向上させることができる。また、(b)成分を用いることで、得られる封止剤のガスバリア性、光取り出し効率性が向上する。
炭素―炭素二重結合を含有する基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等が例示されるが、耐熱性・耐光性の観点から、ビニル基が好ましい。
【0038】
本発明における(b)成分は、耐熱性、耐光性の観点から、シラン、ポリシロキサン、または環状オレフィン化合物であることが好ましい。このような(b)成分が、一分子中に炭素−炭素二重結合を一つ含有するシランである場合、具体的に例えば、トリメチルビニルシラン、ジメチルフェニルビニルシラン、メチルジフェニルビニルシラン、トリフェニルビニルシラン、トリエチルビニルシラン、ジエチルフェニルビニルシラン、エチルジフェニルビニルシラン、アリルトリメチルシラン、アリルジメチルフェニルシラン、アリルメチルジフェニルシラン、アリルトリフェニルシラン、アリルトリエチルシラン、アリルジエチルフェニルシラン、アリルエチルジフェニルシラン等が例示される。中でも、耐熱性、耐光性の観点から、トリメチルビニルシラン、ジメチルフェニルビニルシラン、メチルジフェニルビニルシラン、トリフェニルビニルシランが好ましい例として挙げられ、さらに、ガスバリア性や屈折率の観点から、ジメチルフェニルビニルシラン、メチルジフェニルビニルシラン、トリフェニルビニルシランが好ましい例として挙げられる。
また(b)成分がポリシロキサンである場合、炭素−炭素二重結合を1個有する直鎖構造のポリシロキサン、分子末端に炭素−炭素二重結合を1個有するポリシロキサン、炭素−炭素二重結合を1個有する環状シロキサン等が例示される。
(b)成分が、一分子中に炭素−炭素二重結合を一つ含有する直鎖構造のポリシロキサンである場合、具体的に例えば、ジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたポリジメチルシロキサン、ジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたポリメチルフェニルシロキサン、ジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたポリジフェニルシロキサン、ジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたジメチルシロキサン単位とメチルフェニルシロキサン単位との共重合体、ジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたジメチルシロキサン単位とジフェニルシロキサン単位との共重合体、ジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたメチルフェニルシロキサン単位とジフェニルシロキサン単位との共重合体等が例示される。
【0039】
分子末端に炭素−炭素二重結合を1個有するポリシロキサンである場合、具体的に例えば、先に例示したジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基で末端が1個ずつ封鎖されたポリシロキサン、SiO
2単位、SiO
3/2単位、SiO単位、SiO
1/2単位からなる群において選ばれる少なくとも1つのシロキサン単位および1つのジメチルビニルシロキサン単位からなるポリシロキサンなどが例示される。
【0040】
(b)成分が、一分子中に炭素−炭素二重結合を一つ含有する環状シロキサンである場合、具体的に例えば、1−ビニル−1,3,3,5,5,7,7−ヘプタメチルシクロテトラシロキサン、1−ビニル−3−フェニル−1,3,5,5,7,7−ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、1−ビニル−3,5−ジフェニル−1,3,5,7,7−ペンタメチルシクロテトラシロキサン、1−ビニル−3,5,7−トリフェニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン等が例示される。
【0041】
(b)成分が、1分子中に炭素−炭素二重結合を1個有する環状オレフィン化合物である場合、この炭素−炭素二重結合は、ビニレン基、ビニリデン基、アルケニル基のいずれであってもよい。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等が例示されるが、耐熱性・耐光性の観点から、ビニル基が好ましい。
また、環状オレフィン化合物は平均分子量が1000以下であることが(c)成分との反応性の観点から好ましい。このような環状オレフィン化合物として、脂肪族環状オレフィン化合物、置換脂肪族環状オレフィン化合物等が挙げられる。
【0042】
脂肪族環状オレフィン化合物として、具体的に例えば、シクロへキセン、シクロへプテン、シクロオクテン、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘプタン、ビニルシクロオクタン、アリルシクロヘキサン、アリルシクロヘプタン、アリルシクロオクタン、メチレンシクロヘキサン等が挙げられる。
【0043】
置換脂肪族環状オレフィン化合物として、具体的に例えば、ノルボルネン、1−メチルノルボルネン、2−メチルノルボルネン、7−メチルノルボルネン、2−ビニルノルボルナン、7−ビニルノルボルナン、2−アリルノルボルナン、7−アリルノルボルナン、2−メチレンノルボルナン、7−メチレンノルボルナン、カンフェン、ビニルノルカンフェン、6−メチル−5−ビニル−ビシクロ〔2,2,1〕−ヘプタン、3−メチル−2−メチレン−ビシクロ〔2,2,1〕−ヘプタン、α−ピネン、β−ピネン、6、6−ジメチル−ビシクロ〔3,1,1〕−2−ヘプタエン、2−ビニルアダマンタン、2−メチレンアダマンタン等が挙げられる。
【0044】
中でも入手性の観点から、シクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン、ノルボルネン、カンフェン、ピネンが好ましい例として挙げられる。
一分子中に炭素−炭素二重結合を一個有する化合物(b)の添加量は、後述のヒドロシリル基を有する化合物(c)のヒドロシリル基1個あたり、(b)成分の炭素−炭素二重結合の数が、0.01〜0.5個になるように用いることが好ましい。添加量が少ないと、得られる硬化物の耐冷熱衝撃性が低下する場合があり、添加量が多いと、得られる封止剤が硬化不良を生じる場合がある。
これら(b)成分である、一分子中に炭素−炭素二重結合を一個有する化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
以下、ヒドロシリル基を有する化合物(c)について説明する。
<ヒドロシリル基を有する化合物(c)>
本発明で用いるヒドロシリル基を有する化合物は、ヒドロシリル基を有する化合物であれば特に問題ないが、得られる変性ポリシロキサンの透明性、耐熱性、耐光性の観点から、ヒドロシリル基を有するシロキサン化合物であることが好ましく、さらに好ましくは、ヒドロシリル基を有する環状または直鎖構造のシロキサン化合物である。これらヒドロシリル基を有する化合物は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
前記、ヒドロシリル基を有する直鎖状のポリシロキサンの具体例としては、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリもしくはオリゴシロキサン、側鎖にヒドロシリル基を有するポリもしくはオリゴシロキサン、テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルトリシロキサンなどが例示される。
【0047】
前記、ヒドロシリル基を含有する環状シロキサンとしては、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジハイドロジェン−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリハイドロジェン−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタハイドロジェン−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサハイドロジェン−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサンなどが例示される。
【0048】
本発明においては、耐熱性、耐光性の観点から、Si原子上は、水素原子、ビニル基およびメチル基から構成されることが好ましい。
【0049】
以下、アルカリ吸着剤(d)について説明する。
【0050】
<アルカリ吸着剤(d)>
本発明におけるアルカリ吸着剤(d)は、活性炭、イオン交換樹脂等の合成樹脂系吸着剤、ゼオライト等の無機系吸着剤などを、塩基(e)に応じて好適に用いることができる。活性炭は、大部分が炭素質の炭であり、吸着性は高い。通常は粉状または粒状であるが、いずれも使用することができる。
【0051】
合成樹脂系吸着剤としては、イオン交換樹脂を用いることができる。イオン交換樹脂としては、塩基性イオン交換樹脂の一般的なものを使用してよい。また、キレート型イオン交換樹脂を使用してもよい。
【0052】
無機系吸着剤は、一般的に固体酸、固体塩基を有し、粒子は多孔質構造を持っているため、吸着能は非常に高い。また、低温から高温まで使用することができる。無機系吸着剤としては、特に限定されないが、具体的に例えば、アルミニウム、マグネシウム、珪素等を主成分とする単独もしくはこれらを組み合わせたもの等がある。 具体的に例えば、二酸化珪素、酸化マグネシウム、シリカ、アルミナ、シリカアルミナ、珪藻土、活性アルミナ、水酸化アルミニウム、アルミニウムシリケート、マグネシウムシリケート、酸性白土、活性白土等の粘土系吸着剤、珪酸アルミニウムナトリウム等の含水アルミノ珪酸塩鉱物群で総称されるゼオライト系吸着剤、ドーソナイト類化合物、ハイドロタルサイト類化合物等が挙げられる。ゼオライトには天然産と合成品があるがいずれ
を使用してもよい。 二酸化珪素は、結晶性、無定形、非晶質、ガラス状、合成品、天然品等があるが、本発明では、粉体状であれば使用することができる。二酸化珪素としては、活性白土を酸処理して得られる粘土鉱物から作られる珪酸、カープレックスBS304、カープレックスBS304F、カープレックス#67、カープレックス#80(いずれもシオノギ製薬)などの合成珪酸が挙げられる。アルミニウムシリケートは、珪酸の珪素の一部がアルミニウムに置換されたもので、具体的に例えば、軽石、フライアッシュ、カオリン、ベントナイト、活性白土、ケイソウ土等が挙げられる。この中でも、合成のアルミニウムシリケートは比表面積も大きく吸着能力が高い。合成アルミニウムシリケートとしては、キョーワード600、700シリーズ(協和化学工業製)などが挙げられる。ハイドロタルサイト類化合物は、2価の金属(Mg、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn等)と3価の金属(Al、Fe、Cr、Co、In等)の含水水酸化物又は前記水酸化物の水酸基の一部をハロゲンイオン、NO
3-、CO
32-、SO
42-、Fe(CN)
63-、CH
3CO
2-、シュウ酸イオン、サリチル酸イオン等の陰イオンに交換したものである。これらのうち、合成品としては、具体的に例えば、キョーワード500シリーズ、キョーワード1000シリーズ、キョーワード2000シリーズ(いずれも協和化学(株)製)などが挙げられる。これらの吸着剤において塩基性物質の吸着性という観点からキョーワード600やキョーワード700がさらに好ましい。
アルカリ吸着剤(d)の添加量としては特に制限はないが、多面体構造ポリシロキサン反応物100重量部に対して0.0001phr〜50phrの範囲で用いるのがよい。さらにろ過性の観点から0.1phr〜30phrがさらに好ましい。添加量が少ないと吸着能が下がるため、金属触媒や塩基の残存量が多くなる恐れがあり、添加量が多いと、攪拌しづらくなったり、ろ過による除去が困難になる場合がある。
【0053】
以下、塩基(e)について説明する。
本発明における塩基(e)は、一分子中に窒素原子を二つ以上含有する塩基であれば特に限定されない。一分子中に窒素原子を二つ以上含有する塩基としては下式で表わすことができるジアミン化合物や下式で表わすことのできるトリアミン化合物、テトラミン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾールなどに例示される含窒素原子環状化合物が挙げられる。
【0056】
(式中R
33、R
34は水素もしくは炭素数1〜50の有機基を表し、それぞれのR
33、R
34は異なっていても同一であってもよい。また、式中xは1〜10までの整数を示す。)
中でも入手性の観点からN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラブチルエチレンジアミン、エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミン、ヘキサンジアミン、ジエチレントリアミン、3,3’−ジアミノジプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’’,N’’−テトラブチルジエチレントリアミン、N,N,N’’,N’’−テトライソプロピルジエチレントリアミン、テトラミンなどが挙げられる。また吸着剤への吸着性という観点からN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミン、ヘキサンジアミン、ジエチレントリアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラミンがさらに好ましい。
【0057】
塩基(e)の添加量としては特に制限はないが、多面体構造ポリシロキサン合成時に使用した触媒の添加モル数に対して0.1倍〜10000倍の範囲で用いるのがよい。さらに触媒の除去という観点から10倍〜3000倍が好ましい。添加量が少ないと吸着能が下がるため、触媒の残存量が多くなる恐れがあり、添加量が多いと塩基が除去し切れずに残存し、後工程に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0058】
次に本発明におけるアルカリ吸着剤(d)と塩基(e)による処理方法について説明する。その方法は多面体構造ポリシロキサン合成後にアルカリ吸着剤(d)と塩基(e)を混合・接触させることにより、反応溶液中に含まれる金属触媒を効果的に除去することができる。本発明における処理方法は多面体構造ポリシロキサンを合成後に続けて実施しても良いし、一度、溶剤を除去してから、反応物を再溶解させてから処理をしても良く、特に限定されない。またアルカリ吸着剤(d)と塩基(e)の添加順序は特に限定されず、アルカリ吸着剤(d)と塩基(e)を同時に添加しても良いし、アルカリ吸着剤(d)を先に添加した後、塩基(e)を添加しても良い。また塩基(e)を先に添加した後でアルカリ吸着剤(d)を添加しても良い。
【0059】
吸着剤などの残渣を処理する方法としては、特に限定はないが、回分式、吸着塔などによる連続式などを好適に使用することができる。回分式としては、具体的には例えば、反応終了後の溶液にアルカリ吸着剤(d)及び塩基(e)を加え、攪拌、吸着させた後、ろ別する方法がある。連続式としては、具体的に例えば、吸着剤を充填したカラム塔に、反応終了後の溶液を流し込む方法がある。回分式、吸着塔などによる連続式のいずれにおいても、使用方式に限定はない。具体的には例えば、多面体構造ポリシロキサンを単離した後、有機溶剤に溶解させてから、上記の方式で、吸着剤処理を行っても良く、多面体構造ポリシロキサンが液体の場合は、特に有機溶剤に溶解させなくても構わないが、粘度が高すぎる場合など、状況に応じて有機溶剤で希釈して、処理を行ってもよい。さらには効率面や生産性の観点から、反応終了後、溶媒に溶解した状態で多面体構造ポリシロキサン溶液に、アルカリ吸着剤(d)及び塩基(e)を添加し、接触させることが好ましい。
【0060】
吸着剤処理の際の温度は、特に指定はないが、0〜300℃で行うのが好ましく、10〜200℃で行うのがより好ましい。温度が高過ぎたり低過ぎたりすると処理が不十分となる恐れがある。
【0061】
吸着剤を十分に混合・接触させた後は、ろ過等の簡易な手段により、容易に吸着剤を除去することができる。吸着剤除去後の多面体構造ポリシロキサンは、溶剤を留去し単離して用いてもよく、また溶液状態のままハンドリングしてもよい。
【0062】
上述の吸着処理後に多面体構造ポリシロキサンに含まれる残存触媒量については着色の観点から0.01〜0.6ppmであることが望ましい。さらに長期的な保存安定性の観点からは0.01〜0.5ppmであることが望ましい。残存触媒が多い場合には多面体構造ポリシロキサン変性体及びその組成物が保存条件、期間により着色や増粘する恐れがある。
【0063】
以下、(A)成分の製法について述べる。
本発明の多面体構造ポリシロキサン変性体を得る方法としては、特に限定されず種々設定できるが、予め(a)成分と(c)成分を反応させた後、(b)成分を反応させても良いし、予め(b)成分と(c)成分を反応させた後、(a)成分を反応させても良いし、(a)成分と(b)成分を共存させて(c)成分と反応させても良い。各反応の終了後に、例えば減圧・加熱条件下にて、揮発性の未反応成分を留去し、目的物あるいは次のステップへの中間体として用いても良い。(b)成分と(c)成分のみが反応した、(a)成分を含まない化合物の生成を抑制するためには、(a)成分と(c)成分を反応させ、未反応の(c)成分を留去した後、(b)成分を反応させる方法が好ましい。こうして得られた多面体構造ポリシロキサン変性体には、反応に用いた(a)成分のアルケニル基が一部残存していてもよい。
【0064】
(c)成分の添加量は、(a)成分が有するアルケニル基1個に対し、ヒドロシリル基の数が1個以上になるように用いればよく、さらに2.5〜20個になるように用いることが好ましい。添加量が少ないと、架橋反応によりゲル化が進行するため、多面体構造ポリシロキサン変性体のハンドリング性が劣る場合があり、添加量が多いと、硬化物の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
(b)成分の添加量は、(c)成分が有するヒドロシリル基1個に対し、アルケニル基の数が0.01〜0.5個になるように用いることが好ましい。添加量が少ないと、得られる硬化物の耐冷熱衝撃性が低下する場合があり、添加量が多いと、得られる硬化物に硬化不良が生じる場合がある。
多面体構造ポリシロキサン変性体の合成時に用いるヒドロシリル化触媒の添加量としては特に制限はないが、反応に用いる(a)成分及び(b)成分のアルケニル基1モルに対して10
−1〜10
−10モルの範囲で用いるのがよい。好ましくは10
−4〜10
−8モルの範囲で用いるのがよい。ヒドロシリル化触媒が多いと、ヒドロシリル化触媒の種類によっては、短波長の光に吸収を示すため、着色原因になったり、得られる硬化物の耐光性が低下する恐れがあり、また、硬化物が発泡する恐れもある。また、ヒドロシリル化触媒が少ないと、反応が進まず、目的物が得られない恐れがある。
【0065】
ヒドロシリル化反応の反応温度としては、30〜400℃、さらに好ましくは、40〜250℃であることが好ましく、より好ましくは、45〜140℃である。温度が低すぎると反応が十分に進行せず、温度が高すぎると、ゲル化が生じ、ハンドリング性が悪化する恐れがある。
【0066】
このようにして得られた多面体構造ポリシロキサン変性体は、各種化合物、特にはシロキサン系化合物との相溶性を確保でき、さらに、分子内にヒドロシリル基が導入されていることから、各種アルケニル基を有する化合物と反応させることが可能となる。具体的には、後述の1分子中にアルケニル基を2個以上有するポリシロキサンと反応させることにより、硬化物を得ることができる。
【0067】
また、本発明における多面体構造ポリシロキサン変性体は、温度20℃において液状とすることも可能である。多面体構造ポリシロキサン変性体を液状と
することで、ハンドリング性に優れることから好ましい。
【0068】
<(B)アルケニル基を有する化合物>
本発明における(B)成分はアルケニル基を有する化合物であり、1分子中に少なくともアルケニル基を2個含有するものが好ましく、アルケニル基を有する直鎖構造のポリシロキサン、分子末端にアルケニル基を有するポリシロキサン、アルケニル基を含有する環状シロキサン、アルケニル基を有するイソシアヌル酸誘導体などが例示される。本発明において、アルケニル基を有する化合物は、得られる硬化物の強度の観点から、分子末端にアルケニル基を有するポリシロキサンやアルケニル基を有するイソシアヌル酸誘導体であることが好ましく、両末端にアルケニル基を有する直鎖状のポリシロキサン、一分子内にアルケニル基を2個もしくは3個有するイソシアヌル酸誘導体であることがさらに好ましい。
【0069】
直鎖構造を有するアルケニル基含有ポリシロキサンの具体例としては、ジメチルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジフェニルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、メチルフェニルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、などが例示される。
【0070】
分子末端にアルケニル基を有するポリシロキサンの具体例としては、先に例示したジメチルアルケニル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、ジメチルアルケニルシロキサン単位とSiO
2単位、SiO
3/2単位、SiO単位からなる群において選ばれる少なくとも1つのシロキサン単位からなるポリシロキサンなどが例示される。
【0071】
アルケニル基を含有する環状シロキサン化合物としては、1,3,5,7−ビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジビニル−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリビニル−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタビニル−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサビニル−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサンなどが例示される。
【0072】
アルケニル基を含有するイソシアヌル酸誘導体としては、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、モノアリルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジメチルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノエチルイソシアヌレート、モノアリルジエチルイソシアヌレート、モノアリルモノメチルモノエチルイソシアヌレート等が例示され、耐熱性・耐光性・ガスバリア性等の観点から、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートが好ましい例として挙げられる。これらアルケニル基を有する化合物は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0073】
本発明においては、耐熱性、耐光性の観点から、Si原子上は、水素原子、ビニル基およびメチル基から構成されることが好ましい。
【0074】
硬化剤の添加量は種々設定できるが、アルケニル基1個あたり、(A)成分におけるSi原子に直結した水素原子が0.3〜5個、好ましくは、0.5〜2個となる割合であることが望ましい。
アルケニル基の割合が少なすぎると、発泡等による外観不良が生じやすくなり、また、多すぎると、硬化物の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0075】
<(C)ヒドロシリル化触媒>
本発明の(C)成分であるヒドロシリル化触媒については、通常ヒドロシリル化触媒化触媒として用いられるものを用いることができ特に制限はなく、任意のものが使用できる。
【0076】
具体的には例示すれば、白金−オレフィン錯体、塩化白金酸、白金の単体、担体(アルミナ、シリカ、カーボンブラック等)に固体白金を担持させたもの;白金−ビニルシロキサン錯体{例えば、Pt
n(ViMe
2SiOSiMe
2Vi)
n、Pt〔(MeViSiO)
4〕
m};白金−ホスフィン錯体{例えば、Pt(PPh
3)
4、Pt(PBu
3)
4};白金−ホスファイト錯体{例えば、Pt〔P(OPh)
3〕
4、Pt〔P(OBu)
3〕
4}(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは整数を表す)、Pt(acac)
2、また、Ashbyらの米国特許第3159601及び3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、並びにLamoreauxらの米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラ−ト触媒も挙げられる。
【0077】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh
3)
3、RhCl
3、Rh/Al
2O
3、RuCl
3、IrCl
3、FeCl
3、AlCl
3、PdCl
2・2H
2O、NiCl
2、TiCl
4、等が挙げられる。これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用しても構わない。触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、Pt(acac)
2等が好ましい。
【0078】
ヒドロシリル化触媒の添加量としては特に制限はないが、(A)成分中のポリシロキサン化合物(a)に含有されるアルケニル基1molに対して10
-1〜10
-10molの範囲で用いるのがよい。好ましくは10
-4〜10
-8molの範囲で用いるのがよい。また、ヒドロシリル化触媒は、一般に高価で腐食性であり、また、水素ガスを大量に発生して硬化物が発泡してしまう場合があるので10
-1mol以上用いない方がよい。また、前述した(A)成分中に、ヒドロシリル化触媒が残存する場合は、残存するヒドロシリル化触媒を(C)成分として代用することも可能である。
【0079】
ヒドロシリル化反応の反応温度としては、30〜400℃、さらに好ましくは、40〜250℃であることが好ましい。
【0080】
<(D)接着性付与剤>
(D)成分である接着性付与剤は本願発明の組成物の基材との接着性を向上する目的で用いるものであり、その様な効果があるものは時に制限はないが、シランカップリング剤、エポキシ化合物が好ましい物として例示できる。
【0081】
シランカップリング剤としては、分子中に有機基と反応性のある官能基と加水分解性のケイ素基を各々少なくとも1個有する化合物であれば特に限定されない。有機基と反応性のある基としては、取扱い性の点からエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基が好ましく、硬化性及び接着性の点から、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基が特に好ましい。加水分解性のケイ素基としては取扱い性の点からアルコキシシリル基が好ましく、反応性の点からメトキシシリル基、エトキシシリル基が特に好ましい。
【0082】
好ましいシランカップリング剤としては、具体的には3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ官能基を有するアルコキシシラン類:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン等のメタクリル基あるいはアクリル基を有するアルコキシシラン類が例示できる。
【0083】
シランカップリング剤の添加量としては、(A)成分および(B)成分の合計重量の0.05〜30重量%であることが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜10重量%である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化物の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0084】
エポキシ化合物としては、例えば、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、2,2’−ビス(4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカーボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−5,5−スピロ−(3,4−エポキシシクロヘキサン)−1,3−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、1,2−シクロプロパンジカルボン酸ビスグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート等を挙げることができる。
【0085】
エポキシ化合物の添加量としては種々設定できるが、(A)成分および(B)成分の合計重量に対しての好ましい添加量の下限は1重量%、より好ましくは3重量%であり、好ましい添加量の上限は50重量%、より好ましくは25重量%である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0086】
また、シランカップリング剤、エポキシ化合物等は単独で使用してもよく、2種併用してもよい。
【0087】
本発明においては、接着性付与剤の効果を高めるために、公知の接着性促進剤を用いることができる。接着性促進剤としては、ボロン酸エステル化合物、有機アルミニウム化合物、有機チタン化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0088】
<組成物>
本発明のポリシロキサン系組成物は、(A)多面体構造ポリシロキサン、(B)アルケニル基を有する化合物、(C)ヒドロシリル化触媒、(D)接着性付与剤を必須成分として構成される。本発明のポリシロキサン系組成物は、透明な液状性樹脂組成物となす事が可能である。液状組成物と成すことにより、基材に塗布し、加熱して硬化させることで基材との接着性に優れる透明の膜を得ることができ、例えば、各種接着剤、コーティング剤、封止剤として好適に用いることが可能である。
また、本組成物は成形体に流し込み、加熱することにより、硬化物として得ることもできる。
【0089】
硬化させる際に温度を加える場合は、好ましくは、30〜400℃、さらに好ましくは40〜250℃である。硬化温度が高くなり過ぎると、得られる硬化物に外観不良が生じる傾向があり、低すぎると硬化が不十分となる。また、2段階以上の温度条件を組み合わせて硬化させてもよい。具体的には例えば、70℃、120℃、150℃の様に段階的に硬化温度を引き上げていくことで、良好な硬化物を得ることができ好ましい。
【0090】
硬化時間は硬化温度、用いるヒドロシリル化触媒の量及びヒドロシリル基の量その他、本願組成物のその他の配合物の組み合わせにより適宜選択することができるが、あえて例示すれば、1分〜10時間、好ましくは10分〜8時間行うことにより、良好な硬化物を得ることができる。
【0091】
本発明に用いるポリシロキサン系組成物には、上記必須成分に加え、任意成分として本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じ増量剤として粉砕石英、炭酸カルシウム、カーボンなどの充填剤を添加してもよい。
【0092】
また、本発明のポリシロキサン系組成物には、必要に応じて着色剤、耐熱性向上剤などの各種添加剤や反応制御剤、離型剤あるいは充填剤用分散剤などを任意で添加することができる。
【0093】
この充填剤用分散剤としては、例えば、ジフェニルシランジオール、各種アルコキシシラン、カーボンファンクショナルシラン、シラノール基含有低分子量シロキサンなどが挙げられる。
【0094】
また、本発明のポリシロキサン系組成物を難燃性、耐火性にするためには二酸化チタン、炭酸マンガン、Fe
2O
3、フェライト、マイカ、ガラス繊維、ガラスフレークなどの公知の添加剤を添加してもよい。なお、これら任意成分は、本発明の効果を損なわないように最小限の添加量に止めることが好ましい。
【0095】
本発明に用いるポリシロキサン系組成物は、上記した成分をロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどの混練機を用いたり、遊星式攪拌脱泡機を用いて均一に混合し、必要に応じ加熱処理を施したりすることにより得ることができる。
【0096】
本発明のポリシロキサン系組成物は、成形体として使用することができる。成形方法としては、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、カレンダー成形、真空成形、発泡成形、射出成形、液状射出成形、注型成形などの任意の方法を使用することができる。
【0097】
本発明によるポリシロキサン系組成物から得られる成形体は、耐熱性、耐光性に優れる。
【0098】
本発明のポリシロキサン系組成物は、光学材料用組成物として用いることができる。ここで言う光学材料とは、可視光、赤外線、紫外線、X線、レーザーなどの光をその材料中を通過させる用途に用いる材料一般を示す。
【0099】
本発明において得られる組成物および成形体の用途としては、具体的には、カラーフィルター、レジスト材料、液晶ディスプレイ分野における基板材料、パッシベーション膜、導光板、プリズムシート、偏向板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、偏光子保護フィルムなどの液晶用フィルムなどの液晶表示装置周辺材料が例示される。
また、次世代フラットパネルディスプレイとして期待されるカラーPDP(プラズマディスプレイ)の封止剤、反射防止フィルム、光学補正フィルム、ハウジング材、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、またLED表示装置に使用されるLED素子のモールド材、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、またプラズマアドレス液晶(PALC)ディスプレイにおける基板材料、導光板、プリズムシート、偏向板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、偏光子保護フィルム、また有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイにおける前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、またフィールドエミッションディスプレイ(FED)における各種フィルム基板、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤が例示される。
【0100】
光記録分野では、VD(ビデオディスク)、CD/CD−ROM、CD−R/RW、DVD−R/DVD−RAM、MO/MD、PD(相変化ディスク)、光カード用のディスク基板材料、ピックアップレンズ、保護フィルム、封止剤、接着剤が例示される。
【0101】
光学機器分野では、スチールカメラのレンズ用材料、ファインダプリズム、ターゲットプリズム、ファインダーカバー、受光センサー部が例示される。また、ビデオカメラの撮影レンズ、ファインダーが例示される。またプロジェクションテレビの投射レンズ、保護フィルム、封止剤、接着剤などが例示される。光センシング機器のレンズ用材料、封止剤、接着剤、フィルムなどが例示される。
【0102】
光部品分野では、光通信システムでの光スイッチ周辺のファイバー材料、レンズ、導波路、素子の封止剤、接着剤などが例示される。光コネクタ周辺の光ファイバー材料、フェルール、封止剤、接着剤などが例示される。光受動部品、光回路部品ではレンズ、導波路、LED素子の封止剤、接着剤などが例示される。光電子集積回路(OEIC)周辺の基板材料、ファイバー材料、素子の封止剤、接着剤などが例示される。
【0103】
光ファイバー分野では、装飾ディスプレイ用照明・ライトガイドなど、工業用途のセンサー類、表示・標識類など、また通信インフラ用および家庭内のデジタル機器接続用の光ファイバーが例示される。
【0104】
半導体集積回路周辺材料では、LSI、超LSI材料用のマイクロリソグラフィー用のレジスト材料が例示される。
【0105】
自動車・輸送機分野では、自動車用のランプリフレクタ、ベアリングリテーナー、ギア部分、耐蝕コート、スイッチ部分、ヘッドランプ、エンジン内部品、電装部品、各種内外装品、駆動エンジン、ブレーキオイルタンク、自動車用防錆鋼板、インテリアパネル、内装材、保護・結束用ワイヤーネス、燃料ホース、自動車ランプ、ガラス代替品が例示される。また、鉄道車輌用の複層ガラスが例示される。また、航空機の構造材の靭性付与剤、エンジン周辺部材、保護・結束用ワイヤーネス、耐蝕コートが例示される。
【0106】
建築分野では、内装・加工用材料、電気カバー、シート、ガラス中間膜、ガラス代替品、太陽電池周辺材料が例示される。農業用では、ハウス被覆用フィルムが例示される。
【0107】
次世代の光・電子機能有機材料としては、次世代DVD、有機EL素子周辺材料、有機フォトリフラクティブ素子、光−光変換デバイスである光増幅素子、光演算素子、有機太陽電池周辺の基板材料、ファイバー材料、素子の封止剤、接着剤などが例示される。
【実施例】
【0108】
次に本発明の組成物を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0109】
(SiH価)
下記のSiH価は、その化合物とジブロモエタンの混合物を作り、重クロロホルムに溶解させ、バリアン・テクノロジーズ・ジャパン・リミテッド製 300MHz NMRを用いてNMR測定を行うことで、下記計算式(1)
SiH価(mol/kg)=[化合物のSiH基に帰属されるピークの積分値]/[ジブロモエタンのメチル基に帰属されるピークの積分値]×4×[混合物中のジブロモエタン重量]/[ジブロモエタンの分子量]/[混合物中の化合物重量] (1)
を用いて計算した。
【0110】
(白金残存量の測定)
後述の製造例2に示す多面体構造ポリシロキサン変性体と製造例3に示す多面体構造ポリシロキサン変性体についてIPC−MASSによる白金残存量の測定を実施した。その結果を表1に示す。
【0111】
(硬化性試験:ゲル化時間)
後述の配合した多面体構造ポリシロキサン系組成物を150℃のホットプレート上に1滴滴下し、混ぜながらゲル化するまでの時間(秒)を計測した。その結果を表1に示す。
【0112】
(製造例1)
48%コリン水溶液(トリメチル−2ヒドロキシエチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液)1262gにテトラエトキシシラン1083gを加え、室温で2時間激しく撹拌した。反応系内が発熱し、均一溶液になった段階で、撹拌を緩め、さらに12時間反応させた。次に、反応系内に生成した固形物に、メタノール1000mLを加え、均一溶液とした。
【0113】
ジメチルビニルクロロシラン537g、トリメチルシリクロリド645gおよびヘキサン1942mLの溶液を激しく攪拌しながら、メタノール溶液をゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間反応させた後、有機層を抽出、濃縮することにより、固形物を得た。次に、生成した固形物をメタノール中で激しく攪拌することにより洗浄し、ろ別することにより、Si原子16個と、ビニル基3個を有するアルケニル基を含有する多面体構造ポリシロキサン系化合物であるトリス(ビニルジメチルシロキシ)ペンタキス(トリメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン(Fw=1166.2)を白色固体として536g得た。
【0114】
(製造例2)
製造例1で得られたアルケニル基を含有する多面体構造ポリシロキサン系化合物であるトリス(ビニルジメチルシロキシ)ペンタキス(トリメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン25.0gをトルエン37.5gに溶解させ、さらに白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有する白金ビニルシロキサン錯体、ユミコアプレシャスメタルズジャパン製、Pt-VTSC-3X)2.48μLを溶解させた。このようにして得られた溶液を、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン25.54g、ジフェニルメチルビニルシラン38.12g、トルエン25.54gの溶液を3時間かけて滴下し、105℃で3時間反応させ、室温まで冷却した。
【0115】
反応終了後、エチニルシクロヘキサノール4.2μl、マレイン酸ジメチル0.82μlを加え、トルエンを留去することにより、液状の多面体構造ポリシロキサン変性体88.7g(SiH価1.66mmol/g)を得た。
【0116】
(製造例3)
製造例2で得られた多面体構造ポリシロキサン変性体10.00gをトルエン20gに溶解し、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン0.002gを加え、40℃で30分撹拌した後、キョーワード700(協和化学工業製)0.15gを加え、さらに1時間撹拌した。反応後、固形成分をろ過により除去した後、溶媒を留去し、液状の多面体構造ポリシロキサン変性体10g(SiH価1.64mmol/g)を得た。
【0117】
(比較製造例1)
製造例2で得られた多面体構造ポリシロキサン変性体10.00gをトルエン20gに溶解し、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン0.002gを加えなかった以外は、製造例3と同様にして液状の多面体構造ポリシロキサン変性体10g(SiH価1.64mmol/g)を得た。
【0118】
(実施例1)
製造例3の多面体構造ポリシロキサン変性体8.20gに、1,5−ジビニル−3,3−ジフェニル−1,1,5,5−テトラメチルトリシロキサン0.72g、ジアリルメチルイソシアヌレート1.08gを加えて撹拌し、多面体構造ポリシロキサン系組成物を作成した。このようにして得られた組成物及び使用した製造例3の多面体構造ポリシロキサン変性体を用いて、上述の各種評価を行い、その結果を表1に記載した。
【0119】
(比較例1)
製造例2の多面体構造ポリシロキサン変性体8.20gに、1,5−ジビニル−3,3−ジフェニル−1,1,5,5−テトラメチルトリシロキサン0.72g、ジアリルメチルイソシアヌレート1.08gを加えて撹拌し、多面体構造ポリシロキサン系組成物を作成した。このようにして得られた組成物及び使用した製造例2の多面体構造ポリシロキサン変性体を用いて、上述の各種評価を行い、その結果を表1に記載した。
【0120】
(比較例2)
比較製造例1の多面体構造ポリシロキサン変性体8.20gに、1,5−ジビニル−3,3−ジフェニル−1,1,5,5−テトラメチルトリシロキサン0.72g、ジアリルメチルイソシアヌレート1.08gを加えて撹拌し、多面体構造ポリシロキサン系組成物を作成した。このようにして得られた組成物のゲル化時間を測定し、その結果を表1に記載した。
【0121】
【表1】
【0122】
以上のように、製造例3に示す吸着処理をした多面体構造ポリシロキサン変性体を使用した組成物は、製造例2に示す未処理の多面体構造ポリシロキサン変性体を使用した組成物に比べて、ゲル化時間が長くなっていることは明らかである。また製造比較例1に示す吸着剤のみで処理した多面体構造ポリシロキサン変性体を使用した組成物のゲル化時間は未処理の比較例1と殆ど同じであった。これらの結果から吸着剤と塩基の組み合わせに触媒除去効果があることは自明であり、さらに多面体構造ポリシロキサン変性体のICP−MSによる白金残存量の分析結果から、製造例3に示す吸着処理をした多面体構造ポリシロキサン変性体の白金含有量は製造例2に示す未処理の多面体構造ポリシロキサンと比べて低減されていることが分かる。以上の結果より、本発明による多面体構造ポリシロキサン系化合物は、合成時に使用した触媒を低減することができる為、長期の保存安定性に優れるものである。