特許第6068980号(P6068980)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6068980タイヤを構築するためのプロセスおよびプラント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6068980
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】タイヤを構築するためのプロセスおよびプラント
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/26 20060101AFI20170116BHJP
【FI】
   B29D30/26
【請求項の数】26
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-543926(P2012-543926)
(86)(22)【出願日】2010年11月15日
(65)【公表番号】特表2013-514905(P2013-514905A)
(43)【公表日】2013年5月2日
(86)【国際出願番号】IB2010055165
(87)【国際公開番号】WO2011077272
(87)【国際公開日】20110630
【審査請求日】2013年11月7日
(31)【優先権主張番号】MI2009A002241
(32)【優先日】2009年12月21日
(33)【優先権主張国】IT
(31)【優先権主張番号】61/282,314
(32)【優先日】2010年1月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598164186
【氏名又は名称】ピレリ・タイヤ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(72)【発明者】
【氏名】マルチーニ,マウリツィオ
(72)【発明者】
【氏名】マンチーニ,ジャンニ
【審査官】 倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−370294(JP,A)
【文献】 特開昭53−147780(JP,A)
【文献】 特開2006−297778(JP,A)
【文献】 特開2002−370291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/00 − 30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤを製造するためのプラントの生産サイクルを制御する方法であって、前記プラントが、複数の作業位置(4a、4b)を提供し、前記複数の作業位置(4a、4b)に含まれる少なくとも1つの第1の作業位置(4a)には、少なくとも1つの近位装荷/除荷位置と、少なくとも1つの遠位装荷/除荷位置とが提供され前記プラントは、前記作業位置(4a、4b)および装荷/除荷位置のそれぞれにおいて形成ドラム(2a、2b、2c、2d)係合することができるように構成されており、前記方法は、
(i)前記少なくとも1つの第1の作業位置(4a)に第1の形成ドラム(2a)を装荷することと、
(ii)第2の形成ドラム(2b)を前記遠位装荷/除荷位置に装荷することと、
(iii)前記少なくとも1つの第1の作業位置(4a)で行われる作業の終了後、前記第1の形成ドラム(2a)を前記少なくとも1つの第1の作業位置(4a)から前記近位装荷/除荷位置に除荷することと、
(iv)水平方向の第1の回転軸(X)の周りでの180°にわたる支持構造(12)の回転により、前記遠位装荷/除荷位置と前記近位装荷/除荷位置にそれぞれある前記第2の形成ドラム(2b)と第1の形成ドラム(2a)の位置を相互に反転させて、前記第1の形成ドラム(2a)と前記第2の形成ドラム(2b)とを交換することと、
(v1)前記第2の形成ドラム(2b)を、先に行われた前記反転により定まった前記近位装荷/除荷位置 から、前記少なくとも1つの第1の作業位置(4a)に装荷することと、
(v2)先に行われた前記反転により定まった前記遠位装荷/除荷位置から前記第1の形成ドラム(2a)を除荷することと
を含む方法。
【請求項2】
記ステップ(v1)により前記少なくとも1つの第1の作業位置(4a)に装荷された前記第2の形成ドラム(2b)を、前記ステップ(i)により前記少なくとも1つの第1の作業位置(4a)に装荷された前記第1の形成ドラム(2a)とみなして、上述したステップ(ii)、(iii)、(iv)、(v1)、(v2)を反復して実施する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップ(v2)の後、前記複数の作業位置(4a、4b)に含まれる少なくとも1つの第2の作業位置(4b)に第3の形成ドラム(2c)を装荷することと、
第4の形成ドラム(2d)を前記遠位装荷/除荷位置に装荷することと、
前記少なくとも1つの第1の作業位置(4b)で行われる作業の終了後、前記第3の形成ドラム(2c)を前記少なくとも1つの第1の作業位置(4b)から前記近位装荷/除荷位置に除荷することと、
水平方向の第1の回転軸(X)の周りでの180°にわたる支持構造(12)の回転により、前記遠位装荷/除荷位置と前記近位装荷/除荷位置にそれぞれある前記第4の形成ドラム(2d)と第3の形成ドラム(2c)の位置を相互に反転させて、前記第3の形成ドラム(2c)と前記第4の形成ドラム(2d)とを交換することと、
前記第4の形成ドラム(2d)を、先に行われた前記反転により定まった前記近位装荷/除荷位置 から、前記少なくとも1つの第2の作業位置(4b)に装荷することと、
先に行われた前記反転により定まった前記遠位装荷/除荷位置から前記第3の形成ドラム(2c)を除荷することと
をさらに含み、
前記第1の作業位置(4a)および第2の作業位置(4b)がそれぞれ、他方の作業位置(4a、4b)とは異なる独立したタイヤを形成する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップ(v2)の後、前記複数の作業位置(4a、4b)に含まれる少なくとも1つの第2の作業位置(4b)に第3の形成ドラム(2c)を装荷することと、
第4の形成ドラム(2d)を前記遠位装荷/除荷位置に装荷することと、
前記少なくとも1つの第1の作業位置(4b)で行われる作業の終了後、前記第3の形成ドラム(2c)を前記少なくとも1つの第1の作業位置(4b)から前記近位装荷/除荷位置に除荷することと、
水平方向の第1の回転軸(X)の周りでの180°にわたる支持構造(12)の回転により、前記遠位装荷/除荷位置と前記近位装荷/除荷位置にそれぞれある前記第4の形成ドラム(2d)と第3の形成ドラム(2c)の位置を相互に反転させて、前記第3の形成ドラム(2c)と前記第4の形成ドラム(2d)とを交換することと、
前記第4の形成ドラム(2d)を、先に行われた前記反転により定まった前記近位装荷/除荷位置 から、前記少なくとも1つの第2の作業位置(4b)に装荷することと、
先に行われた前記反転により定まった前記遠位装荷/除荷位置から前記第3の形成ドラム(2c)を除荷することと
をさらに含み、
前記第1の作業位置(4a)に提供される装荷/除荷位置と、第2の作業位置(4b)に提供される装荷/除荷位置とが、同じ装荷/除荷位置である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
加工するタイヤを担持するようにそれぞれ設計された少なくとも1つの第1の形成ドラム及び少なくとも1つの第2の形成ドラム(2a、2b、2c、2d)と、加工する前記タイヤに対して少なくとも1つの加工作業をそれぞれ行うように意図された第1の作業位置(4a)を含む少なくとも1つのワークステーション(1)との使用を伴うタイヤを構築するためのプロセスであって、
− 前記第2の形成ドラム(2b)を進入位置(3)から取り上げることと、
− 前記第2の形成ドラム(2b)を前記進入位置(3)から中間移送位置(10)に移送することと、
− 前記第1の形成ドラム(2a)が、前記第1の作業位置(4a)自体で前記加工作業を施された後に、前記第1の形成ドラム(2a)を前記第1の作業位置(4a)から取り上げることと、
− 前記第2の形成ドラム(2b)を前記第1の作業位置(4a)に係合することと、
− 前記第1の形成ドラム(2a)を前記中間移送位置(10)に移送することと、
− 前記第1の形成ドラム(2a)を前記中間移送位置(10)から退出位置(7)に移送することと
を含み、
前記第1の作業位置(4a)への前記第2の形成ドラム(2b)の係合が
− 支持構造(12)によって第2の把持部材(11b)に相互接続された第1の把持部材(11a)によって、前記第2の形成ドラム(2b)を前記中間移送位置(10)から取り上げることと、
− 前記支持構造(12)を前記第1の作業位置(4a)に対して移動させて、前記第2の把持部材(11b)によって前記第1の形成ドラム(2a)を前記第1の作業位置(4a)から取り上げることと、
− 水平方向の第1の回転軸(X)の周りでの180°にわたる前記支持構造(12)の回転により、前記第1の把持部材(11a)と第2の把持部材(11b)の相互位置を反転させて、前記第1の形成ドラム(2a)と前記第2の形成ドラム(2b)とを交換し、前記第2の形成ドラム(2b)を前記第1の作業位置(4a)に導くことと、を含み、
前記第1の形成ドラム(2a)を前記中間移送位置(10)に移送することが、前記第1の形成ドラム(2a)が前記退出位置(7)に移送される前に、前記支持構造(12)を前記第1の作業位置(4a)から離れるように移動させることで行われる、プロセス。
【請求項6】
前記第1の形成ドラム(2a)が前記第1の作業位置(4a)から取り上げられる前に、前記第2の形成ドラム(2b)が前記進入位置(3)から取り上げられる請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記第1の形成ドラム(2a)が前記退出位置(7)に移送される前に、前記第2の形成ドラム(2b)が前記第1の作業位置(4a)で係合されるかまたは前記中間移送位置に移送される請求項5に記載のプロセス。
【請求項8】
前記中間移送位置(10)への前記第1の形成ドラム(2a)の移送と同時に、前記第2の形成ドラム(2b)が前記第1の作業位置(4a)に移送される請求項5に記載のプロセス。
【請求項9】
前記中間移送位置(10)への前記第1の形成ドラム(2a)の移送が、前記支持構造(12)によって担持される把持部材(11a、11b)によって前記第1の作業位置(4a)から前記第1の形成ドラム(2a)を取り上げることを含み、前記支持構造(12)が、前記第1の作業位置(4a)から前記中間移送位置(10)への前記第1の形成ドラム(2a)の移動を行うために、前記第1の作業位置(4a)に対して第1の位置と第2の位置との間で交互に移動可能である、請求項5に記載のプロセス。
【請求項10】
前記第1の作業位置(4a)への前記第2の形成ドラム(2b)の係合が、前記支持構造(12)によって担持される第1の把持部材(11a)によって前記中間移送位置(10)から前記第2の形成ドラム(2b)を取り上げることを含み、前記支持構造(12)が、前記中間移送位置から前記第1の作業位置(4a)への前記第2の形成ドラム(2b)の移動を行うために、前記第1の作業位置(4a)に対して第1の位置と第2の位置との間で交互に移動可能である、請求項5に記載のプロセス。
【請求項11】
さらに、第3の形成ドラム(2c)を前記進入位置(3)から取り上げることであって、前記ドラム(2c)が、前記ワークステーション(1)の一部である第2の作業位置(4b)で前記加工作業の1つを施されることと、
− 前記第3の形成ドラム(2c)を前記進入位置(3)から前記中間移送位置(10)に移送することと、
− 前記ワークステーション(1)において加工作業を施された第4の形成ドラム(2d)を前記第2の作業位置(4b)から取り上げることと、
− 前記中間移送位置(10)への前記第4の形成ドラム(2d)の移送と同時に、前記第3の形成ドラム(2c)を前記第2の作業位置(4b)に係合することと
を含み、
前記第2の作業位置(4b)への前記第3の形成ドラム(2c)の係合が、
− 前記第1の把持部材(11a)によって、前記第3の形成ドラム(2c)を前記中間移送位置(10)から取り上げることと、
− 前記支持構造(12)を前記第2の作業位置(4b)に対して移動させて、前記第2の把持部材(11b)によって前記第4の形成ドラム(2d)を前記第2の作業位置(4b)から取り上げることと、
− 水平方向の第1の回転軸(X)の周りでの180°にわたる前記支持構造(12)の回転により、前記第1の把持部材(11a)と第2の把持部材(11b)の相互位置を反転させて、前記第4の形成ドラム(2d)を前記第3の形成ドラム(2c)と交換し、前記第3の形成ドラム(2c)を前記第2の作業位置(4b)に導くことと、を含み、
前記第4の形成ドラム(2d)を前記中間移送位置(10)に移送することが、前記第4の形成ドラム(2d)が前記退出位置(7)に移送される前に、前記支持構造(12)を前記第2の作業位置(4b)から離れるように移動させることで行われる、請求項5に記載のプロセス。
【請求項12】
前記第1の形成ドラム(2a)が前記中間移送位置(10)から移送された後に、前記第3の形成ドラム(2c)が前記進入位置(3)から取り上げられる請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記第1の形成ドラム(2a)と第4の形成ドラム(2d)が、前記支持構造(12)によって担持された前記第1の把持部材(11a)と前記第2の把持部材(11b)によって、それぞれ前記第1の作業位置(4a)と前記第2の作業位置(4b)から取り上げられ、前記支持構造が、前記第1の形成ドラム(2a)と前記第4の形成ドラム(2d)をそれぞれの作業位置から前記中間移送位置に移動させるために、前記作業位置に対して第1の位置と第2の位置の間で交互に移動可能である、請求項11に記載のプロセス。
【請求項14】
前記第1の把持部材(11a)が前記中間移送位置にあるときに、前記第2の把持部材(11b)が前記第4の形成ドラム(2d)を取り上げる請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
車両車輪用のタイヤを構築するためのプラントであって、
− 形成ドラム(2a、2b、2c、2d)に係合することができる少なくとも1つの第1の作業位置(4a)を有する少なくとも1つのワークステーション(1)であって、前記形成ドラム(2a、2b、2c、2d)は 少なくとも1つの第1の形成ドラム(2a)と少なくとも1つの第2の形成ドラム(2b)とを含む、ワークステーション(1)と、
− 前記形成ドラム(2a、2b、2c、2d)のための少なくとも1つの中間取扱いデバイス(8)と
を備え、
少なくとも前記第1の形成ドラム(2a)が、退出位置(7)に移送される前に前記中間取扱いデバイス(8)に係合し、
前記中間取扱いデバイス(8)が、
− 各形成ドラム(2a、2b)と係合するのに適した少なくとも2つの対称的に対置する把持部材(11a、11b)と、
1つの支持構造(12)とを備え、
前記支持構造(12)が、前記把持部材(11a、11b)を担持し、前記把持部材(11a、11b)のうちの少なくとも1つを中間移送位置(10)と前記第1の作業位置(4a)の間で移動させるために、前記少なくとも1つの第1の作業位置(4a)に対して移動可能であり、
前記把持部材(11a、11b)が、移動可能な前記支持構造(12)にヒンジで連結された回転構造(13)によって担持され、水平方向の第1の回転軸(X)に従って180°にわたって回転可能である、プラント。
【請求項16】
前記中間取扱いデバイス(8)が、前記第2の形成ドラム(2b)を前記中間移送位置(10)から前記第1の作業位置(4a)に移送するように、および前記第1の形成ドラム(2a)を前記第1の作業位置から前記中間移送位置(10)に移送するように構成される請求項15に記載のプラント。
【請求項17】
さらに、前記第2の形成ドラム(2b)を進入位置(3)から前記中間移送位置(10)に移送するため、および/または前記第1の形成ドラム(2a)を前記中間移送位置(10)から前記退出位置(7)に移送するための少なくとも1つの主要取扱いデバイス(9a、9b)を備える請求項15に記載のプラント。
【請求項18】
さらに、前記第2の形成ドラム(2b)を進入位置(3)から前記第1の作業位置(4a)に移送するための少なくとも1つの主要取扱いデバイス(9a、9b)を備える請求項15に記載のプラント。
【請求項19】
前記中間取扱いデバイス(8)の前記支持構造(12)が、前記把持部材(11b)の少なくとも1つを前記中間移送位置(10)と第2の作業位置(4b)の間で移動させるために、前記第2の作業位置(4b)に対してさらに移動可能である、請求項15に記載のプラント。
【請求項20】
前記第1の作業位置と第2の作業位置(4b)が、前記中間移送位置(10)に対して対称的に配設される請求項19に記載のプラント。
【請求項21】
前記中間取扱いデバイス(8)が、前記ワークステーション(1)の一部である前記第1の作業位置(4a)および第2の作業位置(4b)に対して移動可能である第1の把持部材(11a)および第2の把持部材(11b)を備える請求項15に記載のプラント。
【請求項22】
前記把持部材(11a、11b)がそれぞれ、他方の把持部材(11a、11b)が前記中間移送位置(10)にあるときに、それぞれの作業位置(4a、4b)で動作する請求項15に記載のプラント。
【請求項23】
前記第1の回転軸(X)が、前記把持部材(11a、11b)に対して中間位置に配設される請求項15に記載のプラント。
【請求項24】
前記支持構造(12)が、前記第1の回転軸(X)に直交する第2の回転軸(Y)の周りで回転することができる請求項15に記載のプラント。
【請求項25】
前記支持構造(12)が、前記第1の作業位置(4a)から離れる第1の方向(A)、および前記第1の方向(A)に垂直な第2の方向(B)に、移動可能である請求項15に記載のプラント。
【請求項26】
前記主要取扱いデバイス(9a、9b)がロボットアームを備える請求項17に記載のプラント。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤを構築するためのプロセスおよびプラントに関する。より詳細には、本発明は、グリーンタイヤを構築するために使用される方法、プロセス、および機器に関する。グリーンタイヤは、最終製品を得るために後で硬化サイクルを施される。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両車輪用のタイヤはカーカス構造を備え、カーカス構造は少なくとも1つのカーカスプライを含み、カーカスプライは、それぞれの環状固定構造と係合する両側の端部フラップをそれぞれ有する。環状固定構造は、通常は「ビード」という名称で識別される領域内に組み込まれており、それぞれのリムにおける、タイヤのいわゆる「取付径」に実質的に対応する内径を有する。
【0003】
カーカス構造には、1つまたは複数のベルト層を備えるベルト構造が関連付けられ、ベルト層は、互いに対して、およびカーカスプライに対して半径方向で重なった関係で配設され、タイヤの円周延在方向に交差する向きの、および/または実質的に平行な、繊維または金属補強コードを有する。ベルト構造の半径方向外側の位置にトレッドバンドが取り付けられ、これも、タイヤを構成する他の半加工製品と同様にエラストマー材料からなる。
【0004】
さらに、エラストマー材料のそれぞれの側壁は、軸方向外側位置でカーカス構造の側面に取り付けられ、これらの側面はそれぞれ、トレッドバンドの側縁部の1つから、それぞれの環状固定構造の近くまでビードに向けて延在する。「チューブレス」タイプのタイヤでは、通常は「ライナ」と呼ばれる気密コーティング層でタイヤの内面を覆う。
【0005】
それぞれの構成要素を組み立てることによって行われるグリーンタイヤの構築後、通常は硬化および成形処理が行われる。この処理は、エラストマー化合物の架橋によってタイヤの構造的な安定性を決定し、タイヤに所望のトレッドパターンを刻み、また場合によってはタイヤ側壁に特有のマークを刻むことを狙いとする。
【0006】
欧州特許第1312462号は、生産ラインに沿って、それぞれのドラムに装備されたプライ供給ステーション、カーカス構築ステーション、組立てステーション、およびベルト構築ステーションが存在する構築システムを開示する。生産ラインに沿って移動可能な輸送部材が、1つのワークステーションから別のワークステーションへのワークピースの移送を行い、ワークピースをドラムから取り外して、次のステーションのドラムに配置する。
【0007】
欧州特許第1481791号は、複数のカーカス構築ステーションを備えるタイヤ生産システムを開示し、それらのステーションは、所与の相互距離で位置されており、カーカス構築ラインに沿って順に移送されるそれぞれのカーカス構築ドラム上でカーカス構造を形成する。ベルト生産ラインに沿って、トレッドバンドを設けられたベルト構造が、互いに所定の距離だけ離れたベルト構築ステーション間を順に移動されるそれぞれのベルト構築ドラム上で、形成される。カーカスとベルトは、硬化金型内部で相互に組み立てられる。
【0008】
本願と同一出願人による国際公開第2009/040594号は、タイヤを生産するためのプラントおよびプロセスであって、a)少なくとも1つのカーカス構築ラインにおいて、第1の構築ドラム上でグリーンタイヤのカーカス構造を形成することと、b)少なくとも1つのクラウン構造構築ラインにおいて、補助ドラム上でクラウン構造を形成することと、c)加工するタイヤの少なくとも1つの組立ておよび形作りステーションにおいて、カーカス構造を円環形状に形作り、それをクラウン構造に結合することとを含むプラントおよびプロセスを開示する。組立ておよび形作りステーションの動作は、カーカス構築ラインおよびクラウン構造構築ラインの動作と同期される。各カーカス構造は、少なくとも形作りステップが完了するまでは、それぞれの構築ドラムに係合して保たれる。構築されたタイヤは、組立ておよび形作りステーションとは別個の硬化および成形ラインにおいて硬化されて成形される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したプロセスおよびプラント、特に国際公開第2009/040594号に開示されているタイプのものと同様のプロセスおよびプラントに関連して、本出願人は、生産自体の高い運営自由度(operation flexibility)を保ちながら、サイズおよび構造が互いに異なるタイヤのための日常的な生産性を高めることを試みることが重要であると判断している。
【0010】
より具体的には、この文脈での「運営自由度」という用語によって、各タイヤに関して基本的な半製品(すなわち、連続的な細長い要素、またはエラストマー材料のみの適当なサイズに切断された要素、および要素自体の長手方向に沿って設けられた繊維または金属コードで補強されたエラストマー材料の適当なサイズに切断された要素)を使用することができ、これらの半製品が、エラストマー材料のタイプおよび/または繊維もしくは金属補強コードのタイプに関して互いに異なり、また個々のタイヤ内部での基本的な半製品のサイズおよび量に関しても異なることが意図されている。
【0011】
また、本出願人は、例えば上述した文献に従って想定されるプロセスおよび装置が、様々なワークステーションにおいてタイヤを処理するように意図された装置の能力を最適には活用できないことを確かめている。
【0012】
特に、1つのタイヤの作業開始と次のタイヤの作業開始の間に介在するサイクル時間が、他のワークステーションにおいて必要なサイクル時間に比べて大きいワークステーションがある。
【0013】
この文脈で、本出願人は、いくつかのワークステーションで必要な比較的大きなサイクル時間によって、プラント全体の生産性が条件付けられているようであるが、その一方で、他のワークステーションは、より高い生産性に対応することもでき、したがってそれらの実際の能力に従って活用されていないものと思われると認識した。
【0014】
また、本出願人は、プラント全体の生産性を改良し、それと同時に、基本的にはより短いサイクル時間を必要とする他のワークステーションをより良く活用できるように、特に通常はより高いサイクル時間を必要とするワークステーションにおいて、作業サイクルを完了するのに必要な時間を短縮することを狙いとする介入が必要であることを認識している。
【0015】
より詳細には、本出願人は、ワークステーションにおける形成ドラムの装荷(loading)および除荷(unloading)のための操作および機器を最適化することによって、製品品質および融通性に何ら不利益をもたらすことなく、作業サイクルを完了するのに必要な時間を大幅に短縮することができると考えている。
【0016】
より具体的には、本出願人は、ワークステーションの少なくとも1つにおいて、それぞれそのワークステーションに入る、およびそこから出る形成ドラムの少なくとも1つが、適切な作業位置に係合される前に、またはワークステーションから完全に離れるように移動される前に、中間移送位置に移送されるように企図される場合に、作業サイクルが完了するまでの時間が大幅に短縮し、それでもあらゆる設計仕様が保たれることに気付いた。
【課題を解決するための手段】
【0017】
より詳細には、第1の態様では、本発明は、タイヤを製造するためのプラントの生産サイクルを制御する方法であって、前記プラントが、複数の作業位置を提供し、少なくとも1つの第1の作業位置が、それぞれ近位位置および遠位位置である少なくとも2つの装荷/除荷位置に関連付けられ、前記作業位置および装荷/除荷位置をそれぞれ形成ドラムに関連付けることができる方法であって、
(i)前記少なくとも1つの第1の作業位置(4a)に第1の形成ドラムを装荷することと、
(ii)第2の形成ドラム(2b)を前記遠位装荷/除荷位置に装荷することと、
(iii)前記少なくとも1つの第1の作業位置(4a)で行われる作業の終了後、前記第1の形成ドラム(2a)を前記近位装荷/除荷位置に除荷することと
を含む方法に関する。
【0018】
第2の態様によれば、本発明は、加工するタイヤを担持するようにそれぞれ設計された複数の形成ドラムと、加工するタイヤに対して少なくとも1つの加工作業をそれぞれ行うように意図された少なくとも1つのワークステーションとの使用を伴うタイヤを構築するためのプロセスであって、
前記少なくとも1つのワークステーションの近くへの少なくとも1つの第1の形成ドラムおよび少なくとも1つの第2の形成ドラムの移送が、
− 第2の形成ドラムを進入位置から取り上げることであって、そのドラムが、ワークステーション自体の一部である第1の作業位置で前記加工作業の1つを施されることと、
− 第1の形成ドラムを第1の作業位置から取り上げることであって、そのドラムが、第1の作業位置自体で前記加工作業を施されることと、
− 第2の形成ドラムを第1の作業位置に係合することと、
− 第1の形成ドラムを退出位置に移送することと
を含み、
前記第2の形成ドラムおよび第1の形成ドラムの少なくとも一方が、それぞれ第1の作業位置に係合される前または退出位置に移送される前に中間移送位置に移送されるプロセスに関する。
【0019】
第3の態様によれば、本発明は、車両車輪用のタイヤを構築するためのプラントであって、
− 形成ドラムに関連付けることができる少なくとも1つの第1の作業位置を有する少なくとも1つのワークステーションと、
− 少なくとも2つの形成ドラムと、
− 前記形成ドラムのための少なくとも1つの中間取扱いデバイスと
を備え、
安定状態で(under steady conditions)、第1の形成ドラムが前記第1の作業位置に関連付けられ、第2の形成ドラムが前記中間取扱いデバイスに関連付けられ、
少なくとも前記第1の形成ドラムが、退出位置に移送される前に前記中間取扱いデバイスに関連付けられるプラントに関する。
【0020】
本発明者の見解では、このようにすると、少なくとも1つの主要取扱いデバイスが、ワークステーションから退出する形成ドラムの取外しおよびワークステーションに進入する形成ドラムの導入を実施する一方で、進入する形成ドラムまたは退出する形成ドラムを保持するために設計された少なくとも1つの補助取扱いデバイスを使用して、退出する形成ドラムの取外しと進入する形成ドラムの係合との間での時間の介在を最小限にすることができる。
【0021】
本発明は、前述の態様の少なくとも1つにおいて、本明細書で以下に述べる好ましい特徴の1つまたは複数を有することができる。
【0022】
以下の追加の機能を提供することができる。
(iv)それぞれ前記第2の形成ドラムと第1の形成ドラムに関連付けられる遠位と近位の装荷/除荷位置を相互に反転することと、
(v)先に行われた反転により定まった遠位位置から前記第1の形成ドラムを除荷すること。
【0023】
好ましくは、機能(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)が繰り返し行われる。
【0024】
少なくとも1つの第2の作業位置を、少なくとも2つの装荷/除荷位置それぞれに関連付けることができ、前記第1の作業位置および第2の作業位置がそれぞれ、他方の作業位置(4a、4b)とは異なる独立したアセンブリを形成する。
【0025】
好ましくは、少なくとも1つの第2の作業位置が提供され、前記第1の作業位置と第2の作業位置がどちらも同じ少なくとも2つの装荷/除荷位置に関連付けられる。
【0026】
また、以下の機能を提供することもできる。
(vi)遠位位置から第2の形成ドラムを除荷する機能。
【0027】
好ましくは、機能(vi)は、機能(iii)よりも先に行われる。
【0028】
好ましい一実施形態によれば、各形成ドラムは、各ワークステーションから次のワークステーションに移送される。
【0029】
好ましくは、第1の形成ドラムが第1の作業位置から取り上げられる前に、第2の形成ドラムが進入位置から取り上げられる。
【0030】
異なる好ましい一実施形態によれば、第1の形成ドラムが退出位置で解放される前に、第2の形成ドラムが第1の作業位置または中間移送位置で解放される。
【0031】
好ましくは、中間移送位置への第1の形成ドラムの移送と同時に、第2の形成ドラムが第1の作業位置で解放される。
【0032】
好ましくは、中間移送位置への前記第1の形成ドラムの移送が、支持構造によって担持される把持部材によって第1の形成ドラムを第1の作業位置から取り上げることを含み、前記支持構造が、第1の作業位置から中間移送位置への第1の形成ドラムの移動を行うために、第1の作業位置に対して第1の位置と第2の位置との間で交互に移動可能である、。
【0033】
好ましくは、第1の作業位置への前記第2の形成ドラムの係合が、支持構造によって担持される第1の把持部材によって第2の形成ドラムを中間移送位置から取り上げることを含み、前記支持構造が、第1の作業位置に対して第1の位置と第2の位置との間で交互に移動可能であり、中間移送位置から第1の作業位置への第2の形成ドラムの移動を行う。
【0034】
一変形形態では、第1の作業位置への第2の形成ドラムの係合が、第2の形成ドラムを進入位置から中間移送位置に移送することと、可動支持構造によって第2の把持部材と相互接続された第1の第1の把持部材によって第2の形成ドラムを中間移送位置から取り上げることと、可動支持構造を第1の作業位置に移動させて、前記第2の把持部材によって第1の形成ドラムを第1の作業位置から取り上げることと、前記第1の把持部材と第2の把持部材の相互位置決めを反転させて、第2の形成ドラムを第1の作業位置に導くことと、第1の形成ドラムを中間移送位置に移送するように、可動支持構造を第1の作業位置から離れるように移動させることとを含む。
【0035】
異なる好ましい一実施形態では、第3の形成ドラムを進入位置から取り上げ、そのドラムに、前記ワークステーションの一部である第2の作業位置において前記加工作業の1つを施すことと、ワークステーションにおいて加工作業を施された第4の形成ドラムを第2の作業位置から取り上げることと、中間移送ステーションへの第4の形成ドラムの移送と同時に、前記第2の作業位置に第3の形成ドラムを係合することとが提供される。
【0036】
好ましい一実施形態によれば、第3の形成ドラムと第4の形成ドラムの取上げが、それぞれ前記第1の把持部材と第2の把持部材によって行われる。
【0037】
より詳細には、好ましくは、第1の形成ドラムが中間移送位置に解放された後に、第3の形成ドラムが取り上げられる。
【0038】
好ましくは、第1の形成ドラムと第4の形成ドラムが、支持構造によって担持された第1の把持部材と第2の把持部材によって、それぞれ第1の作業位置と第2の作業位置から取り上げられ、上記支持構造が、第1の形成ドラムと第4の形成ドラムをそれぞれの作業位置から中間移送位置に移動させるように、作業位置に対して第1の位置と第2の位置の間で交互に移動可能である。
【0039】
さらなる一変形形態では、第1の形成ドラムと第4の形成ドラムが、それぞれ第1の支持構造および第2の支持構造によって担持された第1の把持部材と第2の把持部材によって、それぞれ第1の作業位置と第2の作業位置から取り上げられ、前記第1および第2の支持構造がそれぞれ、第1の形成ドラムと第4の形成ドラムをそれぞれの作業位置から中間移送位置に移動させるために、作業位置に対して第1の位置と第2の位置の間で交互に移動可能でる。
【0040】
好ましくは、第1の把持部材が中間移送位置にあるときに、第2の把持部材が第4の形成ドラムを取り上げる。
【0041】
好ましくは、前記第1の形成ドラムおよび第2の形成ドラムが、第1の形成ドラムが退出位置に移送される前に前記中間取扱いデバイスに関連付けられる。
【0042】
好ましくは、前記第1の形成ドラムおよび第2の形成ドラムが、前記第2の形成ドラムが前記第1の作業位置に関連付けられる前に前記中間取扱いデバイスに関連付けられる。
【0043】
より詳細には、中間取扱いデバイスは、好ましくは、第2の形成ドラムを中間移送位置から前記第1の作業位置に移送するように、および/または第1の形成ドラムを第1の作業位置から中間移送位置に移送するように設計される。
【0044】
また、第2の形成ドラムを進入位置から中間移送位置に移送するため、および/または第1の形成ドラムを中間移送位置から退出位置に移送するための、少なくとも1つの主要取扱いデバイスを提供することができる。
【0045】
好ましい一実施形態によれば、第2の形成ドラムを進入位置から第1の作業位置に移送するため、および/または第1の形成ドラムを第1の作業位置から退出位置に移送するための、少なくとも1つの主要取扱いデバイスも提供することができる。
【0046】
中間取扱いデバイスは、好ましくは、各形成ドラムと係合するのに適した少なくとも1つの第1の把持部材と、少なくとも1つの支持構造とを備え、支持構造が、前記第1の把持部材を担持し、前記少なくとも1つの第1の把持部材を中間移送位置と第1の作業位置の間で移動させるために、前記少なくとも1つの第1の作業位置に対して第1の位置と第2の位置の間で交互に移動可能である。
【0047】
一変形形態では、中間取扱いデバイスは、少なくとも2つの対称的に対置する(symmetrically opposite)把持部材を備える。
【0048】
好ましくは、中間取扱いデバイスは、前記第1の作業位置および第2の作業位置と連係される(interlocked)。
【0049】
好ましくは、前記第1の作業位置と第2の作業位置が、中間移送位置に対して対称的に配設される。
【0050】
1つの可能な実施形態では、前記中間取扱いデバイスが、ワークステーションの一部である前記第1の作業位置および第2の作業位置とそれぞれ連係する第1の把持部材および第2の把持部材を備える。
【0051】
好ましくは、前記把持部材がそれぞれ、他方の把持部材が中間移送位置にあるときに、それぞれの作業位置で動作する。
【0052】
好ましくは、前記少なくとも2つの把持部材が、第1の回転軸に従って支持構造にヒンジで連結された回転構造によって担持される。
【0053】
好ましくは、前記第1の回転軸が、把持部材に対して中央位置に配設される。
【0054】
好ましくは、支持構造が、前記第1の回転軸に直交する第2の回転軸の周りで回転可能である。
【0055】
好ましくは、支持構造が、第1の作業位置から離れる第1の方向に、および第1の方向に垂直な第2の方向に、移動可能である。
【0056】
好ましくは、前記主要取扱いデバイスがロボットアームを備える。
【0057】
さらなる特徴および利点は、本発明を具現化する、好ましいが排他的ではないいくつかの例の詳細な説明からより明らかになろう。そのような詳細な説明は、本明細書で以後、非限定的な例として与えられる添付図面を参照しながら行う。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】本発明に従って形成された、タイヤを構築するためのプラントの一部であるワークステーションの上面図である。
図2】ワークステーションの第2の実施形態の上面図である。
図3】ワークステーションの第3の変形形態の上面図である。
図4】ワークステーションの第4の変形形態の上面図である。
図5】ワークステーションの第5の変形形態の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
添付図面を参照すると、タイヤを構築するためのプラントの一部であるワークステーション(本発明の趣旨に重要ではないので完全には示してはいない)が全体を参照番号1で示されている。前記プラントにおいて、少なくとも2つの形成ドラム2a、2b、2c、2dが、前記ワークステーション1の1つまたは複数を通る所定の経路に従って移動され、ワークステーション1は、それぞれの加工作業を実施するように意図されている。
【0060】
各形成ドラム2a、2b、2c、2dは、加工するタイヤを支持するように適合される。タイヤは、1つまたは複数のカーカスプライ、ビードへの環状補強構造、1つまたは複数のベルト層、トレッドバンド、側壁、および/またはその他の構成要素など、様々な構成要素の積み重ねおよび/または取扱いによって、形成ドラム上で直接形成される。
【0061】
各構成要素は、好ましくは、形成ドラム2a、2b、2c、2d上で、既に設置されている構成要素に加えて直接形成され、および/またはそれぞれのワークステーション1で行われる所定の加工作業に従って適切に取り扱われ、最終的に、仕上がったグリーンタイヤが得られ、そのグリーンタイヤに硬化処理が施される。
【0062】
本明細書および添付の特許請求の範囲の趣旨では、「加工するタイヤ」という用語によって、第1の加工作業と並行して第1のタイヤ構成要素をまもなく受け取る、空いている形成ドラム2a、2b、2c、2dも意図される。
【0063】
移送デバイスは、各ワークステーション1から次のワークステーションへの各構築ドラムの移送を行う。
【0064】
ワークステーション1の少なくとも1つは、好ましくは、少なくとも1つの進入位置3を設けられ、この進入位置3は、先行の加工作業から送られて来ることがある形成ドラム2a、2b、2c、2dを順に受け取るように設計される。ワークステーション1には少なくとも1つの第1の作業位置4aが組み込まれ、第1の作業位置4aは、例えばチャック5と心押し台6を備え、これらは、各作業サイクルで、ドラムに加工作業を施すために、進入位置3から送られて来る単一の形成ドラム2a、2b、2c、2dと順に関連付けることができる。さらに、少なくとも1つの退出位置7がワークステーション1に関連付けられ、そのワークステーションによって実施される加工作業を既に施された形成ドラム2a、2b、2c、2dを順に受け取る。次いで、退出位置7で受け取られた個々の形成ドラム2a、2b、2c、2dを、次のワークステーション1に移送することができる。
【0065】
前記進入位置3と退出位置7の少なくとも一方を、隣接するワークステーションの作業位置によって表すこともできる。
【0066】
前記進入位置3と、作業位置4aと、退出位置7との間での各形成ドラム2a、2b、2c、2dの移動は、少なくとも1つの中間取扱いデバイス8に依拠し、中間取扱いデバイス8は、好ましくは、例えばロボットアームからなる少なくとも1つの主要取扱いデバイス9a、9bと協働する。
【0067】
特に図1を参照すると、中間取扱いデバイス8は、第1の形成ドラム2aを第1の作業位置4aから中間移送位置10に移送するように適合される。また、中間取扱いデバイス8は、第2の形成ドラム2bを中間移送位置10から第1の作業位置4aに移送するように適合される。
【0068】
1つの可能な代替変形形態(図示せず)では、中間取扱いデバイス8は、第2の形成ドラム2bを中間移送位置10から第1の作業位置4aに移送する役割のみを担うことがある。
【0069】
特に図1をさらに参照すると、主要取扱いデバイス9aは、第2の形成ドラム2bを進入位置3から中間移送位置10に移送する役割を担う。追加または代替として、主要取扱いデバイス9aは、第1の形成ドラム2aを中間移送位置10から退出位置7に移送するためのものにすることもできる。
【0070】
好ましくは、中間取扱いデバイス8は、第1の作業位置4aに対して近位位置および遠位位置である少なくとも2つの装荷/除荷位置を規定する少なくとも1つの把持部材11a、11bを備え、これらの位置はそれぞれ形成ドラム2a、2bと関連付けることができる。より詳細には、図1に示される例では、第1の把持部材11aおよびそれと対称的に対置する第2の把持部材11bが提供され、これらの把持部材はそれぞれ近位および遠位装荷/除荷位置に対応する。把持部材11a、11bは、少なくとも1つの支持構造12に取り付けられ、支持構造12は、第1の作業位置4aに対して第1の位置と第2の位置の間で交互に移動可能であり、好ましくは中間移送位置10と第1の作業位置4aの間での移動によって把持部材11a、11bを移動させる。
【0071】
より詳細には、支持構造12が第1の位置にあるとき、図1で第2の把持部材11bによって表される遠位装荷/除荷位置が、中間移送位置10と合致する。支持構造12が第2の位置にあるとき、図1で第1の把持部材11aによって表される近位装荷/除荷位置が、第1の作業位置4aと合致する。
【0072】
把持部材11a、11bは、第1の回転軸Xに従って支持構造12にヒンジで連結された回転構造13によって担持され、回転軸Xは、好ましくは前記把持部材11a、11bに対して水平および/または中央に配設される。
【0073】
既知の様式で作動機構の命令が成されるとき、回転構造13は、180°の角度回転にわたって移動可能であり、それにより、把持部材11a、11bの位置、したがって近位と遠位の装荷/除荷位置を相互に反転する。
【0074】
プラント1の生産サイクルは、第1の形成ドラム2aが第1の作業位置4aに装荷され、第2の形成ドラム2bが遠位装荷/除荷位置に装荷されるようにする方法に従って制御される。第1の作業位置4aで行われる作業の終了後、第1の形成ドラム2aは、近位装荷/除荷位置に除荷される。
【0075】
より詳細には、ワークステーション1の近くへの第1の形成ドラム2aおよび第2の形成ドラム2bの移送に関して、第1の形成ドラム2aが、それぞれの加工するタイヤに対して加工作業を行うための第1の作業位置4aに関連付けられる一方で、これから加工作業を施すそれぞれのタイヤを担持する第2の形成ドラム2bが、例えば主要取扱いデバイス9aによって進入位置3から取り上げられて、中間移送位置10と合致する遠位装荷/除荷位置で中間取扱いデバイス8の一方の把持部材11bに係合されることが企図される。加工作業の終了後、中間取扱いデバイス8の支持構造12は、図1に鎖線で示されるように、第1の位置から第2の位置への移動を行う。
【0076】
したがって、近位装荷/除荷位置に対応する把持部材11aは、第1の作業位置4aから第1の形成ドラム2aを除荷するために第1の形成ドラム2aに係合するのに適している。回転構造13の180°回転によって、近位と遠位の装荷/除荷位置は相互に反転され、その結果、それぞれの把持部材11a、11bによって担持される第1の形成ドラム2aと第2の形成ドラム2bの相互位置が交換される。より詳細には、第1の形成ドラム2aは、遠位装荷/除荷位置に移送され、第2の形成ドラム2bは、近位装荷/除荷位置に移送されて、第1の作業位置4aに係合される。好ましくは、中間移送位置10への第1の形成ドラム2aの移送と同時に、第2の形成ドラム2bが第1の作業位置4aで解放される。
【0077】
第1の位置への支持構造12の再度の移動によって、第1の形成ドラム2aは中間移送位置10に達し、前の反転により定まった遠位位置から主要取扱いデバイス9a、9bによって除荷されて退出位置7に移送される。
【0078】
動作が安定状態にあるとき、第1の形成ドラム2aは、それぞれの加工作業を施されるように第1の作業位置4aに関連付けられ、第2の形成ドラム2bは、中間取扱いデバイス8に関連付けられている。第1の形成ドラム2aを退出位置7に移送する前に、および/または第2の形成ドラム2bを第1の作業位置4aに関連付ける前に、第1の形成ドラム2aと第2の形成ドラム2bはどちらも中間取扱いデバイス8に関連付けられる。
【0079】
分かりやすくするために、以下の表に、非限定的な例として、作業位置4a、近位装荷/除荷位置、および遠位装荷/除荷位置の間での形成ドラム2a、2bの流れ図の一例を示す。
【0080】
【表1】
【0081】
作業サイクルは、やはり上述したプロセス機能を繰り返し実行することから始まり、中間移送位置20と合致する遠位装荷/除荷位置に新たな第1の形成ドラムを装荷し、その後、この新たな形成ドラムが、作業位置にある第2の形成ドラム2bに取って代わらなければならない。
【0082】
上述したシーケンスでは、第1の形成ドラム2aが第1の作業位置4aから取り上げられる前に、第2の形成ドラム2bを進入位置3から取り上げることができる。さらに、第1の形成ドラム2aが退出位置7で解放される前に、第2の形成ドラム2bを第1の作業位置4aおよび/または中間移送位置10で解放することができる。したがって、第1の作業位置4aでの形成ドラム2a、2bの交換は、非常に短時間で行うことができる。
【0083】
図2は、本発明を実現するための第2の解決策を示す。この場合、中間取扱いデバイス8は、好ましくは中間移送位置10に対して対称的に配設された第1の作業位置4aおよび第2の作業位置4bと連係される。
【0084】
中間取扱いデバイス8の支持構造12は、把持部材11a、11bの一方が第1の作業位置4aに関連付けられる第1の位置と、他方の把持部材が第2の作業位置4bに関連付けられる第2の位置と、両方の把持部材11a、11bがそれぞれの作業位置4a、4bから解放される第3の中間位置(図3に図示する)との間で移動可能である。
【0085】
また、中間取扱いデバイス8の支持構造12は、第2の回転軸Yの周りで回転することができ、回転軸Yは、好ましくは第1の回転軸Xに垂直である、および/または直交する。支持構造12が第3の中間位置にあるとき、例えばいずれかの方向での90°にわたる角度回転によって、中間取扱いデバイス8の把持部材11a、11bを中間移送位置10に個別に導くのが容易である。
【0086】
中間取扱いデバイス8は、形成ドラム2a、2b、2c、2dを進入位置3から中間移送位置10に移送するように設計された第1の主要取扱いデバイス9a、および形成ドラム2a、2b、2c、2dを中間移送位置10から退出位置7に移送するための第2の主要取扱いデバイス9bと協働する。しかし、進入位置3および退出位置7と連係された単一の主要取扱いデバイス9aを使用することもできる。
【0087】
第1の作業位置4aに既に装荷されている第1の形成ドラム2aに対する加工作業中、支持構造12は、鎖線で示されるように第2の回転軸Yの周りで回転され、それにより、把持部材11a、11bの一方が中間移送位置10に導かれ、第1の主要取扱いデバイス9aによって進入位置3から取り上げられた第2の形成ドラム2bを受け取る。
【0088】
90°にわたる再度の回転によって、第2の形成ドラム2bは、第1の作業位置4aに対して遠位装荷/除荷位置に位置決めされる。
【0089】
第1の作業位置4aでの加工作業が完了すると、支持構造12の前進運動により、近位装荷/除荷位置に位置決めされた把持部材11aが第1の形成ドラム2aと係合される。
【0090】
第1の回転軸Xの周りでの180°にわたる支持構造12の回転により、把持部材11a、11bの位置決めが反転され、したがって、第1のワークステーションで第1の形成ドラム2aが第2の形成ドラム2bに交換される。
【0091】
支持構造12は第3の位置に移動して戻り、第2の回転軸Yの周りで90°回転を行って、第1の形成ドラム2aを中間移送位置10に導き、それにより、前記第1のドラムを第2の主要取扱いデバイス9bによって取り上げて退出位置7に移送することができるようになる。
【0092】
したがって、第1の形成ドラム2aが外されて空いた把持部材11aに、第1の主要取扱いデバイス9aによって中間移送位置10から取り上げられた第3の形成ドラム2cを位置決めすることができる。
【0093】
支持構造12は第2の回転軸Yの周りで再び回転し、第3の形成ドラム2cを第2の作業位置4bに対して遠位装荷/除荷位置に導き、このとき、既に装荷されている第4の形成ドラム2dに対する加工作業は終了間近になっている。
【0094】
第2の作業位置4bでの加工作業が完了すると、支持構造12の前進により、近位装荷/除荷位置に位置決めされた把持部材が第4の形成ドラム3dと係合される。
【0095】
第1の回転軸Xの周りで180°にわたる支持構造12の再度の回転により、把持部材11a、11bの位置決めが反転され、その結果、第2の作業位置4bで第4の形成ドラム2dが第3の形成ドラム2cに交換される。
【0096】
支持構造12は再び第3の位置に移動して戻り、第2の回転軸Yの周りで90°にわたって回転して、第4の形成ドラム2bを中間移送位置10に導き、それにより、ドラム2dは、第2の主要取扱いデバイス9bによって取り上げられて退出位置7に移送される。
【0097】
第1の主要取扱いデバイス9aによって進入位置3から取り上げられた新たな形成ドラムが中間移送位置10に把持部材で装荷され、新たな作業サイクルが行われる。
【0098】
したがって、同じワークステーション1に2つの作業位置4a、4bを連係させることができ、どちらの作業位置4a、4bも同じ中間取扱いデバイス8の装荷/除荷位置に関連付けられる。
【0099】
図2を参照して説明した解決策とは異なり、図3に示される第3の変形形態では、中間取扱いデバイス8の支持構造12は、各作業位置4a、4bから離れる、および近付く第1の方向「A」に沿って、さらには第1の方向に垂直な第2の方向「B」に沿って移動可能である。
【0100】
図2に示される例と比べると、この状況は、中間移送位置10の位置決めを、作業位置4a、4bから離れるように移動させることができるようにし、それにより、主要取扱いデバイス9a、9bの移動が前記作業位置4a、4bの嵩によって妨げられない。実際、中間取扱いデバイス8は、2つの作業位置4a、4bの間の空間から出て、作業位置4a、4bから比較的離して設けられた中間移送位置10に達することができる。
【0101】
図4は、本発明を達成するための第4の例を示し、この例では、中間取扱いデバイス8は、それぞれ第1の作業位置4aおよび第2の作業位置4bと連係された第1の把持部材11aおよび第2の把持部材11bを備える。
【0102】
中間取扱いデバイス8の支持構造12は、好ましくは、図1図3に示される解決策を参照して上述した第1および/または第2の回転軸X、Yの周りでの回転なしで、第1の位置と第2の位置の間で交互に移動可能であり、第1の位置では、第1の把持部材11aは第1の作業位置4a(前記第1の作業位置4aに対して近位の装荷/除荷位置に対応する)で動作し、第2の把持部材11bは中間移送位置10(前記第1の作業位置4aに対して遠位の装荷/除荷位置に対応する)にあり、第2の位置では、図示されるように、第2の把持部材11bは第2の作業位置4b(前記第1の作業位置4aに対して遠位の装荷/除荷位置に対応する)で動作し、第1の把持部材11aは中間移送位置10(前記第1の作業位置4aに対して近位の装荷/除荷位置に対応する)にある。
【0103】
したがって、第1の形成ドラム2aおよび第4の形成ドラム2dを、それぞれの作業位置から中間移送位置10にそれぞれ移送するように、それぞれ第1の把持部材11aおよび第2の把持部材11bによって取り上げることができる。
【0104】
少なくとも1つの主要取扱いデバイス9aは、前記進入位置3、退出位置7、第1の作業位置4a、第2の作業位置4b、および中間移送位置10で動作する。
【0105】
第1の形成ドラム2aは、主要取扱いデバイス9aが作動すると進入位置3から取り上げられて第1の作業位置4aに装荷され、一方、第2の作業位置4bでは、第4の形成ドラム2dに対して加工作業が行われる。
【0106】
第1の作業位置4aに既に装荷されている第1の形成ドラム2aに対する加工作業が終了間近になると、その一方で、主要取扱いデバイス9aが進入位置3から第2の形成ドラム2bを取り上げて第1の作業位置4aに近付け、第1の作業位置4aへの装荷の準備を行う。第1の作業位置4aにおける加工作業の終了後、中間取扱いデバイス8は、第1の把持部材11aによって第1の形成ドラム2aを取り上げ、第1の作業位置4aから移動して離れて、ドラム自体を中間移送位置10に移送し、第2の作業位置4bでまもなく処理を行う第4の形成ドラムを取り上げるように第2の把持部材11bに準備させる。
【0107】
その間に、主要取扱いデバイス9aは、第2の形成ドラム2bを第1の作業位置4aに装荷している。次いで、主要取扱いデバイス9aは、図4に示されるように、中間移送位置10に達し、第1の形成ドラム2aを取り上げて退出位置7に移送する。
【0108】
その後、主要取扱いデバイス9aは、進入位置3から第3の形成ドラム2cを取り上げて第2の作業位置4bの近くに移動させ、このとき第4の形成ドラム2dに対する加工作業が終了間近である。この加工作業の終了後、第4の形成ドラム2dは、中間取扱いデバイスによって第2の把持部材11bで取り上げられ、中間移送位置10に移送され、第1の把持部材11aは、第1の作業位置4aで第2の形成ドラム2bを取り上げるように準備される。主要取扱いデバイス9aは、第2の作業位置4bで第3の形成ドラム2cを解放し、次いで中間移送位置10に達して、第4の形成ドラム2dを取り上げて退出位置7に移送する。
【0109】
主要取扱いデバイス9aは再び退出位置3に達し、新規の構築ドラムを取り上げて、新たな作業サイクルを開始する。
【0110】
したがって、簡素化された構造のただ1つの主要取扱いデバイス9aとただ1つの中間取扱いデバイス8を使用して、第1の作業位置4aおよび第2の作業位置4bでの形成ドラム2a、2b、2c、2dの流れを管理することができる。
【0111】
図5は、本発明を達成するための第5の例を示す。図4を参照して上述したものとは異なり、中間取扱いデバイス8の第1および第2の把持部材は、それぞれ第1の支持構造12aおよび第2の支持構造12bによって担持される。各支持構造12a、12bは、それぞれの第1の作業位置4aおよび第2の作業位置4bから離れるように、およびそれらの作業位置に向かうように、第1の位置と第2の位置の間で交互に移動可能であり、それぞれの形成ドラム2a、2b、2c、2dを第1の作業位置4aおよび第2の作業位置4bからそれぞれの第1の中間移送位置10および第2の中間移送位置10bに移動させる。これらの中間移送位置は、近接して設けられるか、または場合によっては一致している。
【0112】
したがって、第1の作業位置4aおよび第2の作業位置4bはそれぞれ、中間取扱いデバイス8のそれぞれの支持構造12a、12bと共に、他方の作業位置とは異なる独立したアセンブリを形成し、このアセンブリは、同じワークステーション1内で少なくとも同じ主要取扱いデバイス9aと連係される。
【0113】
図示される例では、図4を参照して説明したのと同様に、ただ1つの主要取扱いデバイス9aが両方の可動構造10a、10bと協働して、両方の作業位置4a、4bのために動作する。図4の例にも適用可能である1つの可能な変形形態(図示せず)によれば、図2および図3を参照して説明したのと同様に、第1の取扱いデバイス9aおよび第2の取扱いデバイス9bを提供することができ、これらはそれぞれ、進入位置3から作業位置4a、4bへの形成ドラム2a、2b、2c、2dの装荷を行うように、かつそれぞれの中間移送位置10a、10bから退出位置7への形成ドラム2a、2b、2c、2dの除荷を行うように設計される。
【0114】
図示した例では、中間取扱いデバイス8の第1の支持構造12aと第2の支持構造12bは、互いに鏡映関係で配設された作業位置4a、4bの間で同じ方向に沿って移動可能である。1つの可能な変形形態では、移動の軌跡は、プラントの様々なレイアウト要件に合うように、それぞれ例えば90°の角度の向きを取ることができる。
図1
図2
図3
図4
図5