【実施例】
【0067】
次に本発明の実施例及び比較例について説明する。なお本発明は、下記の実施例に制限されるものではない。なお、以下に説明する実施例1乃至13及び比較例1乃至3においては、各表に示す組成のキャタリストペースト(キャタリスト)とベースペースト(ベース)とを1:1の割合で練り合わせてシリコーン印象材を調整した。
【0068】
表1に示す実施例1及び比較例1〜3の組成のオルガノポリシロキサン組成物即ちシリコーン印象材を調整し、硬化前の接触角、硬化後の接触角及び歯科用印象材の諸物性を測定した。
【0069】
各成分の詳細は以下の通りである。
【0070】
・α-ωジビニルポリシロキサン DMS-V35 Gelest inc.製 粘度 10〜110000 mPa・s
・ジメチルハイドロジェンポリシロキサン HMS-082 Gelest inc.製 有効水素量 10〜58 mol%
・充填材1 ヒューズレックス X TATSUMORI製 平均粒径 3μm
・充填材2 R812 日本アエロジル社製 比表面積 230〜290 m
2/g
・ソルビタン脂肪酸エステル ポエム O-80V 理研ビタミン(株)製 HLB 4.9
ニューコール 80 日本乳化剤(株) HLB 6.4
リケマール L-250A 理研ビタミン(株)製 HLB 7.4
レオドール TW-S106V 花王(株)製 HLB 9.6
リケマール C-250 理研ビタミン(株)製 HLB 10.6
・ポリオキシアルキレンエーテル エマルゲン 306P 花王(株) HLB 9.4
・ポリエーテル変性シリコーン(側鎖型) KF-945 信越化学工業(株)製 HLB 4.0
X-22-4515 信越化学工業(株)製 HLB 5.0
KF-615A 信越化学工業(株)製 HLB 10.0
KF-354L 信越化学工業(株)製 HLB 16.0
・ポリエーテル変性シリコーン(末端型) KF-6004 信越化学工業(株)製 HLB 5.0
硬化前の接触角の測定は以下の通りに行う。直径1mmのモールド型にオルガノポリシロキサン組成物を気泡を巻き込まないように注意して流し込み、天面を水平に形成する。組成物が硬化する前に、水平に形成された天面に、予め準備しておいた5μLのイオン交換水を静かに滴下し、滴下直後から60秒間水滴と組成物の成す接触角を測定した。
【0071】
硬化後の接触角の測定は以下の通りに行う。直径1mmのモールド型にオルガノポリシロキサン組成物を気泡を巻き込まないように注意して流し込み、天面を水平に形成する。硬化開始から30分後に、完全硬化したオルガノポリシロキサン組成物の水平に形成された天面に、予め準備しておいた5μLのイオン交換水を静かに滴下し、滴下直後から60秒間水滴と組成物の成す接触角を測定した。
【0072】
操作時間の測定は、JIS T 6513:2005 歯科用ゴム質弾性印象材に準じて行った。
【0073】
永久ひずみの測定は、JIS T 6513:2005 歯科用ゴム質弾性印象材に準じて行った。
【0074】
弾性ひずみの測定は、JIS T 6513:2005 歯科用ゴム質弾性印象材に準じて行った。
【0075】
ゴム硬度の測定は以下の通りに行う。ガラス板と橋げたを用いて一定の厚みの試験体を作製し、練和開始から7分後、及び15分後に試験体の上面中央部のゴム硬度を測定した。
【0076】
保存安定性の測定は、実施例及び比較例の組成物を50℃の環境に3ヶ月間静置した後、歯科用印象材の諸物性を測定して評価した。
【表1】
【0077】
図1及び
図2はそれぞれ、実施例1及び比較例1〜3の組成物の硬化前の接触角の経時変化及び硬化後の接触角の経時変化を示すグラフである。
【0078】
また表2及び表3はそれぞれ、実施例1及び比較例1〜3の組成物の初期の諸物性及び50℃の環境に3ヶ月間静置した後の諸物性を示す。
【表2】
【表3】
【0079】
実施例1では、硬化前、硬化後共に水滴滴下直後から速やかに親水性を発現し、その後も高い親水性を示し続けた。また、初期の諸物性も、永久ひずみが小さく、弾性ひずみが大きく、硬化がシャープであるという望ましいものであり、保存安定性も良好であった。
【0080】
比較例1では、水滴滴下後暫くすると徐々に親水性を発現し、硬化後では60秒後に実施例と同等まで到達したが、硬化前は実施例1よりも接触角が大きくなる結果であった。また、初期の諸物性としては望ましい物性を維持できておらず、保存安定性も悪いという結果であった。
【0081】
比較例2では、硬化前、硬化後共に比較例1よりは速やかな親水性の発現が確認されたものの、実施例1と同等の即時親水性は発現せず、60秒後までに充分に低い接触角にも到達しなかった。また、初期の諸物性としては望ましい物性を維持しており、保存安定性も良好であった。
【0082】
比較例3では、水滴滴下後暫くすると徐々に親水性を発現し、硬化後では60秒後に実施例と同等まで到達したが、硬化前は実施例1よりも接触角が大きくなる結果であった。また、初期の諸物性としては望ましい物性を維持しており、保存安定性も良好であった。
【0083】
表4に示す実施例2〜5のオルガノポリシロキサン組成物を調整し、硬化前の接触角、硬化後の接触角及び歯科用印象材の諸物性を測定した。表4に示す実施例2〜5では、実施例1に示す組成物のうち、ソルビタン脂肪酸エステルとしてのレオドールTW−S106V及びポリエーテル変性シリコーンの含有量を変更している。
【表4】
【0084】
図3及び
図4はそれぞれ、実施例2〜5の組成物の硬化前の接触角の経時変化及び硬化後の接触角の経時変化を示すグラフである。
【0085】
また表5及び表6はそれぞれ、実施例2〜5の組成物の初期の諸物性及び50℃の環境に3ヶ月間静置した後の諸物性を示す。
【表5】
【表6】
【0086】
実施例2では、実施例1よりも親水性が低い結果となったものの、硬化前、硬化後共に比較例2よりも高い即時親水性を発現した。また、初期の諸物性も、永久ひずみが小さく、弾性ひずみが大きく、硬化がシャープであるという望ましいものであり、保存安定性も良好であった。
【0087】
実施例3では、硬化前、硬化後共に水滴滴下直後から速やかに親水性を発現し、その後も高い親水性を示し続けた。また、初期の諸物性も、永久ひずみが小さく、弾性ひずみが大きく、硬化がシャープであるという望ましいものであり、保存安定性も良好であった。
【0088】
実施例4では、実施例2よりもやや親水性で劣る結果であった。また、初期の諸物性は、永久ひずみが小さく、弾性ひずみが大きく、硬化がシャープであるという望ましいものであり、保存安定性も良好であった。
【0089】
実施例5では、硬化前、硬化後共に水滴滴下直後から速やかに親水性を発現し、その後も高い親水性を示し続けた。また、初期の諸物性としては永久ひずみがやや大きく、弾性ひずみもやや大きい結果であった。
【0090】
表7に示す実施例6〜9のオルガノポリシロキサン組成物を調整し、硬化前の接触角、硬化後の接触角及び歯科用印象材の諸物性を測定した。表7に示す実施例6〜9では、実施例1に示す組成物のうち、ソルビタン脂肪酸エステルの種類を変更している。
【表7】
【0091】
図5及び
図6はそれぞれ、実施例6〜9の組成物の硬化前の接触角の経時変化及び硬化後の接触角の経時変化を示すグラフである。
【0092】
また表8及び表9はそれぞれ、実施例6〜9の組成物の初期の諸物性及び50℃の環境に3ヶ月間静置した後の諸物性を示す。
【表8】
【表9】
【0093】
実施例6〜8では、実施例8が最も親水性が高く、実施例6が最も親水性が低かったものの、比較例と比べると充分に高い親水性を示した。硬化前、硬化後共に水滴滴下直後から速やかに親水性を発現し、その後も高い親水性を示し続けた。また、初期の諸物性も、永久ひずみが小さく、弾性ひずみが大きく、硬化がシャープであるという望ましいものであり、保存安定性も良好であった。
【0094】
実施例9では、硬化前、硬化後共に水滴滴下直後から速やかに親水性を発現し、その後も高い親水性を示し続けた。また、初期の諸物性としては永久ひずみがやや大きく、弾性ひずみもやや大きい結果であった。
【0095】
表10に示す実施例10のオルガノポリシロキサン組成物を調整し、硬化前の接触角、硬化後の接触角及び歯科用印象材の諸物性を測定した。表10に示す実施例10では、実施例1に示す組成物のうち、ポリエーテル変性シリコーンを末端型に変更している。
【表10】
【0096】
図7及び
図8はそれぞれ、実施例10の組成物の硬化前の接触角の経時変化及び硬化後の接触角の経時変化を示すグラフである。
【0097】
また表11及び表12はそれぞれ、実施例10の組成物の初期の諸物性及び50℃の環境に3ヶ月間静置した後の諸物性を示す。
【表11】
【表12】
【0098】
実施例10では、硬化前、硬化後共に水滴滴下直後から速やかに親水性を発現したものの、60秒後の親水性は実施例1程は発現されなかった。また、初期の諸物性は永久ひずみが小さく、弾性ひずみが大きく、硬化がシャープであるという望ましいものであり、保存安定性も良好であった。
【0099】
表13に示す実施例11〜13のオルガノポリシロキサン組成物を調整し、硬化前の接触角、硬化後の接触角及び歯科用印象材の諸物性を測定した。表13に示す実施例11〜13では、実施例1に示す組成物のうち、ポリエーテル変性シリコーンの種類を変更している。
【表13】
【0100】
図9及び
図10はそれぞれ、実施例11〜13の組成物の硬化前の接触角の経時変化及び硬化後の接触角の経時変化を示すグラフである。
【0101】
また表14及び表15はそれぞれ、実施例11〜13の組成物の初期の諸物性及び50℃の環境に3ヶ月間静置した後の諸物性を示す。
【表14】
【表15】
【0102】
実施例11〜13では、実施例13が最も親水性が高く、実施例11が最も親水性が低かったものの、比較例と比べると充分に高い親水性を示した。硬化前、硬化後共に水滴滴下直後から速やかに親水性を発現し、その後も高い親水性を示し続けた。また、初期の諸物性も、永久ひずみが小さく、弾性ひずみが大きく、硬化がシャープであるという望ましいものであり、保存安定性も良好であった。
【0103】
以上のように本発明に係るシリコーン印象材は、口腔内に圧接した直後に速やかに親水性を発現し、且つ、その値も充分に小さいため、実際の印象採特に置いて優れた親水性を有している。また、歯科用印象材とのして諸物性も望ましい値を示し、保存安定性にも優れていた。
【0104】
以下、特許請求の範囲には直接記載していないが、本願明細書に記載した発明の構成を列挙する。
【0105】
(i)
成分(a)ソルビタン脂肪酸エステル系界面活性剤のHLBが7.0〜10.0である高い親水性を有するシリコーン印象材。
【0106】
(ii)
成分(a)ソルビタン脂肪酸エステル系界面活性剤の含有量が、2〜4重量%の範囲である高い親水性を有するシリコーン印象材。
【0107】
(iii)
成分(b)ポリエーテル変性シリコーンのHLBが10.0〜18.0である高い親水性を有するシリコーン印象材。
【0108】
(iv)
成分(b)ポリエーテル変性シリコーンからなる非イオン系界面活性剤の含有量が、3〜7重量%の範囲である高い親水性を有するシリコーン印象材。
【0109】
(v)
成分(3)充填材は、最大粒径が50μmを超えていない充填剤である高い親水性を有するシリコーン印象材。
【0110】
(vi)
成分(a)ソルビタン脂肪酸エステル系界面活性剤の含有量の比と、成分(b)ポリエーテル変性シリコーンからなる非イオン系界面活性剤の含有量の比が、1:1.5乃至1:1.8の範囲である高い親水性を有するシリコーン印象材。
【0111】
(vii)
成分(1)1分子内に少なくとも2個の不飽和基を有するオルガノポリシロキサン類の含有量が37.9〜50.9重量%、
成分(2)1分子内に少なくとも2個のSiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン類の含有量が8重量%、
成分(3)充填材の含有量が36重量%、
成分(4)白金触媒の含有量が0.1重量%、
成分(a)ソルビタン脂肪酸エステル系界面活性剤の含有量が0.25〜5重量%、
成分(b)ポリエーテル変性シリコーンからなる非イオン系界面活性剤の含有量が0.25〜12重量%である高い親水性を有するシリコーン印象材。
【0112】
(viii)
成分(1)1分子内に少なくとも2個の不飽和基を有するオルガノポリシロキサン類は、α−ωジビニルポリシロキサンであり、
成分(2)1分子内に少なくとも2個のSiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン類は、ジメチルハイドロジェンポリシロキサンであり、
成分(a)ソルビタン脂肪酸エステル系界面活性剤は、モノオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンソルビタンオレエート、ソルビタンラウレート、ソルビタンカプリレートまたはモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンであり、
成分(b)ポリエーテル変性シリコーンからなる非イオン系界面活性剤は、側鎖型または末端型である上記(vii)の高い親水性を有するシリコーン印象材。
【0113】
(ix)
成分(1)1分子内に少なくとも2個の不飽和基を有するオルガノポリシロキサン類の含有量が44.9〜50.9重量%、
成分(2)1分子内に少なくとも2個のSiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン類の含有量が8重量%、
成分(3)充填材の含有量が36重量%、
成分(4)白金触媒の含有量が0.1重量%、
成分(a)ソルビタン脂肪酸エステル系界面活性剤の含有量が2〜4重量%、
成分(b)ポリエーテル変性シリコーンからなる非イオン系界面活性剤の含有量が3〜7重量%である高い親水性を有するシリコーン印象材。
【0114】
(x)
成分(1)1分子内に少なくとも2個の不飽和基を有するオルガノポリシロキサン類は、α−ωジビニルポリシロキサンであり、
成分(2)1分子内に少なくとも2個のSiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン類は、ジメチルハイドロジェンポリシロキサンであり、
成分(a)ソルビタン脂肪酸エステル系界面活性剤は、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンまたはソルビタンラウレートであり、
成分(b)ポリエーテル変性シリコーンからなる非イオン系界面活性剤は、側鎖型である上記(ix)の高い親水性を有するシリコーン印象材。