(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6069032
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】点火式エンジン
(51)【国際特許分類】
F02B 19/10 20060101AFI20170116BHJP
F02D 41/34 20060101ALI20170116BHJP
F02D 41/04 20060101ALI20170116BHJP
F02B 19/06 20060101ALI20170116BHJP
F02B 19/12 20060101ALI20170116BHJP
F02M 61/10 20060101ALI20170116BHJP
F02P 13/00 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
F02B19/10 A
F02D41/34 C
F02D41/34 F
F02D41/04 335
F02B19/06
F02B19/12 B
F02M61/10 F
F02P13/00 302B
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-41894(P2013-41894)
(22)【出願日】2013年3月4日
(65)【公開番号】特開2014-114801(P2014-114801A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2015年10月22日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0142055
(32)【優先日】2012年12月7日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】イ、ウォン、ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ウー、ソー、ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】コン、ジン、クク
【審査官】
木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭57−206725(JP,A)
【文献】
実開昭56−049224(JP,U)
【文献】
特開2012−112289(JP,A)
【文献】
特開2006−242156(JP,A)
【文献】
実開昭60−036527(JP,U)
【文献】
特開2007−255313(JP,A)
【文献】
国際公開第99/007984(WO,A1)
【文献】
国際公開第00/031390(WO,A1)
【文献】
米国特許第04075996(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 19/00−19/12
F02D 41/00−41/40
F02M 37/00−65/00
F02P 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気ポート1を通して混合気を吸入するように形成された主燃焼室3と;
前記主燃焼室3と連通するように備えられたプレチャンバー5と;
前記プレチャンバー5を介して前記主燃焼室3と連通するように備えられた補助シリンダー7と;
前記補助シリンダー7を前記吸気ポート1に連結する補助吸入通路9と;
前記補助シリンダー7でスライド運動し、前記補助吸入通路9を通して前記吸気ポート1から混合気を吸入し、前記プレチャンバー5を通して前記主燃焼室3に混合気を吐き出すことができるように備えられた補助ピストン11と;
前記プレチャンバー5で混合気を点火させるように設けられた点火プラグ13と;
を含み、
前記吸気ポート1には、前記補助吸入通路9が連通した部分の上流側に燃料を噴射するように備えられた一つ以上のインジェクター29が含まれ、
前記吸気ポート1は、一つの吸気ポート1に二つのインジェクター29を備え、一つのインジェクター29は、前記補助吸入通路9を通して前記補助シリンダー7に供給される混合気を形成するように燃料を噴射し、他の一つのインジェクター29は、前記吸気ポート1を通して前記主燃焼室3に供給される混合気を形成するように燃料を噴射する、
ことを特徴とする、点火式エンジン。
【請求項2】
前記補助吸入通路9に、前記吸気ポート1から前記補助シリンダー7に向かう混合気の流動のみを許すように設けられた第1チェックバルブ15と;
前記補助シリンダー7から前記プレチャンバー5に向かう混合気の流動のみを許すように設けられた第2チェックバルブ17と;
をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の点火式エンジン。
【請求項3】
前記補助ピストン11には、前記主燃焼室3のバルブを開閉するように備えられたカムシャフト21に設けられた駆動カム19によって発生する機械的変位を用いて前記補助ピストン11を往復動させるように構成されたリンク駆動機構23が連結されていることを特徴とする、請求項2に記載の点火式エンジン。
【請求項4】
前記プレチャンバー5と前記主燃焼室3との間の境界部には、前記プレチャンバー5からの火炎を複数の噴射孔25を通して前記主燃焼室3に噴射するように複数の噴射孔25が形成されたノズルキャップ27が備えられていることを特徴とする、請求項2に記載の点火式エンジン。
【請求項5】
請求項1の点火式エンジンの制御方法であって、
前記インジェクター29は、前記補助シリンダー7の前記補助ピストン11が上昇して前記インジェクター29から噴射された燃料と空気を前記補助吸入通路9を通して前記補助シリンダー7に吸入することができる時点に、燃料を噴射し;
前記インジェクター29から噴射された燃料と空気の混合気を前記主燃焼室3に吸入する吸気行程を行うように、前記主燃焼室3の主ピストンを下降させ;
前記主燃焼室3の主ピストンが圧縮行程を行いながら上昇すると、前記補助シリンダー7の前記補助ピストン11を下降させ、前記補助シリンダー7に吸入された混合気を前記プレチャンバー5に移動させ;
前記プレチャンバー5に移動された混合気を点火させるように前記点火プラグ13を制御し、点火された火炎が前記主燃焼室3で圧縮された混合気内に複数の火炎核を成して噴射されるようにすることを特徴とする、請求項1に記載の点火式エンジンの制御方法。
【請求項6】
前記インジェクター29は、前記補助吸入通路9を通して前記補助シリンダー7に流入する混合気の空燃比を調節すると同時に、前記吸気ポート1を通して前記主燃焼室3に流入する混合気の空燃比を調節するように、多段噴射を行うことを特徴とする、請求項5に記載の点火式エンジンの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点火式エンジンに係り、より詳しくは、既に点火された火炎を燃焼室に伝播して混合気を燃消させる新しいエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関であるエンジンは、ガソリンエンジンのように点火プラグを備え、別途の点火火花によって混合気を燃焼させる点火式エンジンと、燃焼室で圧縮された空気に噴射された燃料の自発火によって燃焼させる圧縮着火式エンジンとに大別できる。
【0003】
従来、前記点火式エンジンは、点火プラグが燃焼室内に装着され、燃焼室に供給された混合気に直接火花を提供して点火させるようにしており、そのため、点火が燃焼室内の一点で始まって火炎面が燃焼室全体に伝播される燃焼過程を経るため、失火の可能性が相対的に高く、火炎の伝播時間が長くかかり、火炎面に到達する前に末端ガスの自発火によるノッキング現状が発生するなどの燃焼上の諸般問題点を持っている。
【0004】
前記の発明の背景となる技術として説明した事項は、本発明の背景に対する理解に役立てるためのみのものであり、当該技術分野で通常の知識を持った者に既に知られた従来技術に相当するものと認めてはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国特許公開第10−2010−0036036A号公報
【特許文献2】米国特許第6402057B1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、燃焼室に吸入された混合気を複数の火炎核によって同時多発的に点火させることにより、失火及びノッキングの発生可能性を大幅に低減させ、より安定した燃焼を可能にした点火式エンジンを提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記のような目的を達成するための本発明の点火式エンジンは、吸気ポートを通して混合気を吸入するように形成された主燃焼室と;前記主燃焼室と連通するように備えられたプレチャンバーと;前記プレチャンバーを介して前記主燃焼室と連通するように備えられた補助シリンダーと;前記補助シリンダーを前記吸気ポートに連結する補助吸入通路と;前記補助シリンダーでスライド運動し、前記補助吸入通路を通して前記吸気ポートから混合気を吸入し、前記プレチャンバーを通して前記主燃焼室に混合気を吐き出すことができるように備えられた補助ピストンと;前記プレチャンバーで混合気を点火させるように設けられた点火プラグと;を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、燃焼室に吸入された混合気を複数の火炎核によって同時多発的に点火させることができるようにして、失火及びノッキングの発生可能性を大幅に低減させ、より安定した燃焼をはかるようにする。
【0009】
また、本発明は、吸気ポートにインジェクターを備えることで、燃焼室にインジェクターを備えた直接噴射式に比べ、装置が簡単で製造コストが安くすむように構成して、補助シリンダー及び補助ピストンなどの関連部品の耐久性及び作動安全性を向上させるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明による点火式エンジンの構成を示す図である。
【
図2】本発明による点火式エンジンの制御方法の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1を参照すると、本発明の点火式エンジンの実施例は、吸気ポート1を通して混合気を吸入するように形成された主燃焼室3と;前記主燃焼室3と連通するように備えられたプレチャンバー5と;前記プレチャンバー5を介して前記主燃焼室3と連通するように備えられた補助シリンダー7と;前記補助シリンダー7を前記吸気ポート1に連結する補助吸入通路9と;前記補助シリンダー7でスライド運動し、前記補助吸入通路9を通して前記吸気ポート1から混合気を吸入し、前記プレチャンバー5を通して前記主燃焼室3に混合気を吐き出すように備えられた補助ピストン11と;前記プレチャンバー5で混合気を点火させるように設けられた点火プラグ13とを含む。
【0012】
すなわち、実質的に動力を発生させる前記主燃焼室3での燃焼のために、前記補助シリンダー7に吸入された混合気を前記プレチャンバー5で点火させ、前記主燃焼室3で圧縮された混合気内に前記プレチャンバー5で点火された火炎核を噴射することで、前記主燃焼室3内で同時多発的に点火作用が引き起こされるようにして、混合気点火の安全性を向上させることにより、失火及びノッキングの発生可能性を大幅に低減させ、より安定した燃焼を可能にするものである。
【0013】
前記補助吸入通路9には、前記吸気ポート1から前記補助シリンダー7への混合気の流動のみを許すように第1チェックバルブ15が設けられ、前記補助シリンダー7とプレチャンバー5との間には、前記補助シリンダー7から前記プレチャンバー5への混合気の流動のみを許すように第2チェックバルブ17が設けられている。
【0014】
したがって、前記補助ピストン11が前記補助シリンダー7内で上昇すると、前記吸気ポート1内の混合気が前記補助吸入通路9を通して前記第1チェックバルブ15を通過して前記補助シリンダー7の内部に吸入される。この際、前記主燃焼室3及びプレチャンバー5は、前記第2チェックバルブ17によって前記補助シリンダー7から遮断された状態を維持し、前記補助ピストン11が下降すると、前記第1チェックバルブ15は、遮断された状態を維持し、前記第2チェックバルブ17が開くことにより、前記補助シリンダー7の混合気が前記プレチャンバー5を通して前記主燃焼室3に流入するものである。
【0015】
前記補助ピストン11には、前記主燃焼室3のバルブを開閉するように備えられたカムシャフト21に設けられた駆動カム19によって提供される機械的変位を用いて前記補助ピストン11を往復動させるように構成されたリンク駆動機構23が連結されている。前記リンク駆動機構23は、リターンスプリングなどの具体的な構造は省略したが、カムシャフトのカムプロファイルによって発生する変位によって前記補助ピストン11の昇降を引き起こすできる公知のリンク構造を用いて多様な方法で具現化することができる。
【0016】
また、前記補助ピストン11を前記カムシャフト21の駆動とは独立的に駆動するために、別途のアクチュエータなどを使用して前記補助ピストン11を昇降させるメカニズムを構成することもできる。
【0017】
前記プレチャンバー5と前記主燃焼室3との間の境界部には、前記プレチャンバー5からの火炎を複数(多数)の噴射孔25を通して前記主燃焼室3に噴射することができるように、複数の噴射孔25が形成されたノズルキャップ27を備えている。
【0018】
したがって、前記補助ピストン11の下降によって前記補助シリンダー7の混合気が前記プレチャンバー5を通過しながら前記点火プラグ13によって点火され、前記ノズルキャップ27を通過しながら前記主燃焼室3に複数(多数)の火炎核として分散される。
【0019】
前記吸気ポート1には、前記補助吸入通路9が連通した部分の上流側に燃料を噴射するための一つ以上のインジェクター29が備えられている。
【0020】
例えば、一つの吸気ポート1に一つのインジェクターを備えた場合には、前記補助吸入通路9を通して混合気が吸入されるときと、前記吸気ポート1の吸気バルブを通して前記主燃焼室3に混合気が主に吸入されるときとを区分し、多段噴射などの方法で前記補助シリンダー7に吸入される混合気の空燃比を異ならせるようにあるいは同じになるように構成することができる。
【0021】
また、一つの吸気ポート1に二つのインジェクター29を設置した場合、一つのインジェクター29は、前記補助吸入通路9を通して前記補助シリンダー7に供給される混合気を形成するように燃料を噴射し、他の一つのインジェクター29は、前記吸気ポート1を通して前記主燃焼室3に供給される混合気を形成するように燃料を噴射するようにすることにより、前記補助シリンダー7と主燃焼室3の空燃比をまったく独立的にして、エンジンの燃焼制御の幅を一層広く確保するようにすることができる。
【0022】
図2は、前述したように構成された本発明の点火式エンジンの制御過程の実施例を説明するものであり、前記インジェクター29は、前記補助シリンダー7の前記補助ピストン11が上昇して前記インジェクター29から噴射された燃料と空気を前記補助吸入通路9を通して前記補助シリンダー7に吸入することができる時点に、燃料を噴射する。
【0023】
すなわち、
図2の場合には、主燃焼室3の主ピストンが下降し始めると、前記インジェクター29から燃料を噴射することにより、前記補助吸入通路9を通して前記補助シリンダー7に混合気が流入すると同時に前記主燃焼室3に混合気が供給されるようにし、前記主ピストンの下降と同時に前記補助ピストン11が上昇するようにするものである。
【0024】
前記主燃焼室3の主ピストンが圧縮行程を行いながら上昇すると、前記補助シリンダー7の前記補助ピストン11を下降させ、前記補助シリンダー7に吸入された混合気を前記プレチャンバー5に移動させ、これとほぼ同時に前記プレチャンバー5に移動された混合気を点火させるように前記点火プラグ13を制御し、究極には点火された火炎が前記主燃焼室3で圧縮された混合気内に複数の火炎核を成して噴射されるようにするものである。
【0025】
ここで、前記インジェクター29は、前述したように吸気ポート1に一つだけ設けられた場合には、前記補助吸入通路9を通して前記補助シリンダー7に流入する混合気の空燃比を調節すると同時に、前記吸気ポート1を通して前記主燃焼室3に流入する混合気の空燃比を調節するように、多段噴射を行うようにすることができる。一方、二つがデュアルで設けられた場合には、それぞれ補助シリンダー7と主燃焼室3での空燃比を独立的にするように噴射を制御することができる。
【0026】
本発明は特定の実施例について図示して説明したが、以下の特許請求の範囲によって決められる本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で本発明が様々に改良及び変形されることができることは、当該分野で通常の知識を持った者に明らかであろう。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、燃焼室に吸入された混合気を複数の火炎核によって同時多発的に点火させることにより、失火及びノッキングの発生可能性を大幅に低減させ、より安定した燃焼を可能にした点火式エンジンに適用可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 吸気ポート
3 主燃焼室
5 プレチャンバー
7 補助シリンダー
9 補助吸入通路
11 補助ピストン
13 点火プラグ
15 第1チェックバルブ
17 第2チェックバルブ
19 駆動カム
21 カムシャフト
23 リンク駆動機構
25 噴射孔
27 ノズルキャップ
29 インジェクター