【実施例】
【0025】
[実施例1]
実施例1の電力ケーブル高抵抗絶縁不良箇所標定装置の概念図を
図1に示す。
実施例1で標定の対象となる電力ケーブルの断面図は
図2に示すような構造であり、中心部から順に、導体4、架橋ポリエチレン等の絶縁体5、銅テープを巻き付けた遮蔽層6、遮水テープ層やビニール被覆層からなるシース7となっている。
実施例1においては、検流計メータ8及び測定辺抵抗9を、事故発生ケーブル1の遮蔽層6の一端と第1の健全ケーブル2の遮蔽層26の一端との間に並列に接続し、測定辺抵抗9の按分位置を変化させることが可能な摺動接点10と接地点との間に標定用直流電圧源11を接続する。
また、遮蔽層6の他端と遮蔽層26の他端を短絡線12で接続するとともに、事故発生ケーブル1の導体4の他端を接地してブリッジ回路を形成している。
【0026】
実施例1の接続状態の場合、検流計メータ8及び測定辺抵抗9が接続される遮蔽層6の一端と導体4の一端、及び短絡線12が接続される遮蔽層6の他端と導体4の他端が近接しているとともに、導体4が接地されているため、これらの間で沿面漏洩電流が発生して標定結果に誤差を生じるおそれがあり、さらに、シース7の外面を伝う沿面漏洩電流が発生して標定結果に誤差を生じるおそれもある。
そこで、実施例1においては、遮蔽層6の検流計メータ8及び測定辺抵抗9が接続される点よりも一端側近傍の周囲に、導体4及び遮蔽層6とは絶縁されて配置される導電性の第1高圧ガード14、遮蔽層6の短絡線12が接続される点よりも他端側近傍の周囲に、導体4及び遮蔽層6とは絶縁されて配置される導電性の第2高圧ガード15、遮蔽層6の検流計メータ8及び測定辺抵抗9が接続される点よりも他端側近傍のシース7の周囲に、導体4及び遮蔽層6とは絶縁されて配置される導電性の第3高圧ガード16、遮蔽層6の短絡線12が接続される点よりも一端側近傍のシース7の周囲に、導体4及び遮蔽層6とは絶縁されて配置される導電性の第4高圧ガード17、遮蔽層26の検流計メータ8及び測定辺抵抗9が接続される点よりも他端側近傍のシース27の周囲に、遮蔽層6とは絶縁されて配置される導電性の第5高圧ガード18、遮蔽層26の短絡線12が接続される点よりも一端側近傍のシース7の周囲に、遮蔽層26とは絶縁されて配置される導電性の第6高圧ガード19、並びに検流計メータ8及び測定辺抵抗9を配置している基板28を大地から絶縁し支持する絶縁棒29の周囲に、基板28及び大地とは絶縁されて配置される導電性の第7高圧ガード30を配置し、これら第1〜第7高圧ガード14〜19及び30を相互接続線で電気的に接続するとともに、これらに標定用直流電圧程度の電圧を印加している。
より具体的には、第1高圧ガード14と第3高圧ガード16、第2高圧ガード15と第4高圧ガード17、第3高圧ガード16と第5高圧ガード18、第4高圧ガード17と第6高圧ガード19、第5高圧ガード18と第2の健全ケーブル3の導体34の一端、第5高圧ガード14と摺動接点10、第6高圧ガード19と導体34の他端、第7高圧ガード30と摺動接点10を、それぞれ相互接続線で電気的に接続することにより、第1〜第7高圧ガード14〜19及び30に標定用直流電圧Eとほぼ同じ電圧を印加している。
【0027】
実施例1の電力ケーブル高抵抗絶縁不良箇所標定装置によって、絶縁不良箇所の位置を標定するに際しては、従来の装置によって標定する場合と同様、測定辺抵抗9の摺動接点10を操作して按分位置を変化させ、検流計メータ8に流れる電流を零に調整する。その時の測定辺抵抗9の摺動接点10より事故発生ケーブル1側の抵抗値又は測定辺抵抗9における按分位置を読み取る。
そして、実施例1の等価回路は、RcとRdが異なるだけで従来の装置における等価回路と何ら変わるものではないので、上記背景技術の項で説明したと同様、l=L×2×Rb/(Ra+Rb)を計算することにより、lすなわち事故発生ケーブル1の一端から絶縁不良箇所Fpまでの長さが分かり、絶縁不良箇所Fpの位置を標定できる。
【0028】
[実施例2]
実施例2の電力ケーブル高抵抗絶縁不良箇所標定装置の概念図を
図3に示す。
実施例2は、検流計メータ8が遮蔽層6の一端及び遮蔽層26の一端と直接接続されていない点と補助装置が追加されている点を除き、
図1に示した実施例1の電力ケーブル高抵抗絶縁不良箇所標定装置と基本的な構成は同じである。
そして、実施例1との相違点は、ノイズ侵入防止回路20を、測定辺抵抗9と並列に、遮蔽層6の一端と遮蔽層26の一端との間に接続するとともに、検流計メータ8をノイズ侵入防止回路20に接続している点、摺動接点10が測定辺抵抗9を按分している位置を検出し、按分比率を演算して表示する比率演算部21及び按分比率表示器22を備えている点、並びにノイズ侵入防止回路20及び比率演算部21に電力を供給するバッテリー23を備えている点である。
実施例1と実施例2との具体的な構成の相違については、特許文献1(特開2006−267002号公報)の
図1、
図2、段落0019〜0028及び段落0035〜0037に記載されているとおりであるので詳述は避けるが、高感度で絶縁不良箇所の位置を標定できるように以下のような工夫を施している。
【0029】
(1)標定用直流電圧源11の電圧を、電力ケーブルに接続される開閉装置の許容直流電圧値以下にするとともに、内部抵抗が低抵抗の直流安定化電源を採用したこと。
(2)ノイズ侵入防止回路20を設けて、電力ケーブルに重畳するノイズが検流計メータ8に入力されることを防止するようにしたこと。
(3)ノイズ侵入防止回路20、検流計メータ8、摺動接点10、比率演算部21、按分比率表示器22、バッテリー23等の絶縁性能を向上させるとともに、検流計メータ8や摺動接点10の操作部(操作スイッチ、操作ダイアル、操作つまみ等)の絶縁性能を向上させ、接地点と所定の絶縁強度を保ち漏れ電流を小さくしたこと。
【0030】
このうち、高感度で絶縁不良箇所を標定するために最低限必要な構成は標定用直流電圧源11の電圧を電力ケーブルに接続される開閉装置の許容直流電圧値以下とする点、及びノイズ侵入防止回路20を設けて、電力ケーブルに重畳するノイズが検流計メータ8に入力されることを防止する点である。
【0031】
実施例2の電力ケーブル高抵抗絶縁不良箇所標定方法及び装置によって、絶縁不良箇所を標定するに際しての操作は、実施例1の場合と全く同じである。
また、実施例2においては、按分比率表示器22に測定辺抵抗9の按分比率、すなわち2×Rb/(Ra+Rb)が表示されるので、L×按分比率の計算だけで、lすなわち事故発生ケーブル1の一端から絶縁不良箇所Fpまでの長さが分かり、簡単に絶縁不良箇所Fpの位置を標定できる。
【0032】
[参考例]
実施例1、2においては、検流計メータ8及び測定辺抵抗9を、事故発生ケーブル1の遮蔽層6の一端と第1の健全ケーブル2の遮蔽層26の一端との間に並列に接続し、また、遮蔽層6の他端と遮蔽層26の他端を短絡線12で接続するとともに、事故発生ケーブル1の導体4の他端を接地してブリッジ回路を形成しているが、従来の導体課電方式において、複数の高圧ガードを設けることによっても、発生し易い沿面漏洩電流の影響を排除できる電力ケーブル高抵抗絶縁不良箇所標定装置を構成できる。
【0033】
図4は参考例の導体課電方式による電力ケーブル高抵抗絶縁不良箇所標定装置の概念図である。
この電力ケーブル高抵抗絶縁不良箇所標定装置は、事故発生ケーブル1の導体4の一端と健全ケーブル2の導体24の一端との間に並列に接続される検流計メータ8及び測定辺抵抗9、一部に可変抵抗を含む測定辺抵抗9の所定の接点又は測定辺抵抗9の按分位置を変化させることが可能な摺動接点10、所定の接点又は摺動接点10と接地点との間に標定用直流電圧Eを印加する標定用直流電圧源11、事故発生ケーブル1の導体4の他端と健全ケーブル2の導体24の他端を接続する短絡線12、並びに事故発生ケーブル1の遮蔽層6と接地点とを接続するアース線33を備え、事故発生ケーブル1における検流計メータ8及び測定辺抵抗9の接続点に対する他端側近傍の周囲に、事故発生ケーブル1の導体4及び遮蔽層6とは絶縁されて配置される導電性の第1高圧ガード14、事故発生ケーブル1における短絡線12の接続点に対する一端側近傍の周囲に、事故発生ケーブル1の導体4及び遮蔽層6とは絶縁されて配置される導電性の第2高圧ガード15、検流計メータ8及び測定辺抵抗9を配置している基板28を大地から絶縁し支持する絶縁棒29の周囲に、基板28及び大地とは絶縁されて配置される導電性の第7高圧ガード30、健全ケーブル2における検流計メータ8及び測定辺抵抗9の接続点に対する他端側近傍の周囲に、健全ケーブル2の導体24及び遮蔽層26とは絶縁されて配置される導電性の第8高圧ガード31、健全ケーブル2における短絡線12の接続点に対する一端側近傍の周囲に、健全ケーブル2の導体24及び遮蔽層26とは絶縁されて配置される導電性の第9高圧ガード32を配置し、第1高圧ガード14、第2高圧ガード15、第7高圧ガード30、第8高圧ガード31及び第9高圧ガード32を相互接続線で電気的に接続するとともに、これらに標定用直流電圧程度の電圧を印加している。
より具体的には、第1高圧ガード14と第8高圧ガード31、第2高圧ガード15と第9高圧ガード32、第8高圧ガード31と第2の健全ケーブル3の導体34の一端、第9高圧ガード32と導体34の他端、第7高圧ガード30と摺動接点10を、それぞれ相互接続線で電気的に接続することにより、第1高圧ガード14、第2高圧ガード15、第7高圧ガード30、第8高圧ガード31及び第9高圧ガード32に標定用直流電圧Eとほぼ同じ電圧を印加している。
【0034】
参考例の電力ケーブル高抵抗絶縁不良箇所標定装置によって、絶縁不良箇所の位置を標定するに際しても、実施例1及び2によって標定する場合と同様、測定辺抵抗9の摺動接点10を操作して按分位置を変化させ、検流計メータ8に流れる電流を零に調整する。その時の測定辺抵抗9の摺動接点10より事故発生ケーブル1側の抵抗値又は測定辺抵抗9における按分位置を読み取る。
そして、上記背景技術の項で説明したと同様、l=L×2×Rb/(Ra+Rb)を計算することにより、lすなわち事故発生ケーブル1の一端から絶縁不良箇所Fpまでの長さが分かり、絶縁不良箇所Fpの位置を標定できる。
【0035】
参考例の電力ケーブル高抵抗絶縁不良箇所標定装置によれば、導体課電方式であるにもかかわらず、地絡抵抗が高くかつシース抵抗が低い場合でも高電圧課電による焼成を行うことなく、絶縁不良箇所の位置を標定することができ、その絶縁不良箇所のみを取り替えるだけで済むため、復旧に要するコストを低減することができる。
【0036】
さらに、参考例を実施例2と同様に、ノイズ侵入防止回路20を、測定辺抵抗9と並列に、遮蔽層6の一端と遮蔽層26の一端との間に接続し、検流計メータ8をノイズ侵入防止回路20に接続するとともに、摺動接点10が測定辺抵抗9を按分している位置を検出し、按分比率を演算して表示する比率演算部21及び按分比率表示器22、並びにノイズ侵入防止回路20及び比率演算部21に電力を供給するバッテリー23を備えるようにすれば、より高抵抗の絶縁不良箇所の位置を標定できるようになる。
【0037】
なお、参考例では、第1高圧ガード14、第2高圧ガード15、第7高圧ガード30、第8高圧ガード31及び第9高圧ガード32を設置したが、このうち、第1高圧ガード14、第2高圧ガード15、第8高圧ガード31及び第9高圧ガード32は、標定精度を向上するために特に重要である。
【0038】
実施例1、2及び参考例の変形例を列記する。
(1)実施例1、2及び参考例においては、測定辺抵抗9の按分位置を変化させることが可能な摺動接点10を採用したが、測定辺抵抗を可変抵抗Raと固定抵抗Rbを直列に接続したもの又は固定抵抗Raと可変抵抗Rbを直列に接続したものとし、可変抵抗と固定抵抗との間に標定用直流電圧を印加する接点を設けても良い。
その場合、Ra又はRbが変化し、同時にRa+Rbも変化することとなるが、RaとRbを確定できれば、2×Rb/(Ra+Rb)は計算できるので、lを求めることができることに変わりはない。
(2)実施例1及び2においては、第5高圧ガード18と第2の健全ケーブル3の導体34の一端及び第6高圧ガード19と導体34の他端を、それぞれ相互接続線で電気的に接続したが、第5高圧ガード18と第1の健全ケーブル2の導体24の一端及び第6高圧ガード19と導体24の他端を、それぞれ相互接続線で電気的に接続しても良いし、導体34や導体24を利用せずに直接第5高圧ガード18と第6高圧ガード19を相互接続線で接続しても良い。ただし、この場合は別途健全な高圧ケーブルが必要となるため不利である。
(3)実施例1及び2においては、検流計メータ8及び測定辺抵抗9を、事故発生ケーブル1の遮蔽層6の一端と第1の健全ケーブル2の遮蔽層26の一端との間に並列に接続しているが、第1の健全ケーブル2については遮蔽層26に代えて導体24としても、検出可能な地絡抵抗は低下するものの標定は可能である。
(4)実施例1及び2においては、第5高圧ガード14と摺動接点10を相互接続線で接続し、また、参考例においては、第8高圧ガード31と摺動接点10を相互接続線で接続し、標定用直流電圧源11を流用して標定用直流電圧Eとほぼ同じ電圧を印加したが、標定用直流電圧源11を流用せずに標定用直流電圧程度の電圧を印加できる専用の直流電圧源といずれかの高圧ガードを相互接続線で接続しても良い。
(5)実施例2においては、按分比率を演算して表示する比率演算部21及び按分比率表示器22を採用したが、比率演算部21に亘長を入力できる入力部を追加して、L×2×Rb/(Ra+Rb)を演算して表示する位置演算部及び絶縁不良箇所位置表示器とすれば、作業時の計算間違い等を防止でき、確実に事故発生ケーブル1の一端から絶縁不良箇所Fpまでの長さを標定できる。