(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
配電系統に設置された負荷時タップ切換式の自動電圧調整器の一次側及び二次側のいずれに電源が接続されているかを検出して、該配電系統が順送電及び逆送電のいずれの状態にあるかを判定する送電状態判定装置であって、
前記自動電圧調整器の一次側電圧及び二次側電圧をそれぞれ計測する一次側電圧計測部及び二次側電圧計測部と、
前記一次側電圧及び前記二次側電圧の所定時間区間における平均値をそれぞれ算出する第1の平均処理部及び第2の平均処理部と、
前記第1の平均処理部により算出された前記一次側電圧の平均値を用いて、前記自動電圧調整器のタップ切換が行われた時点から所定時間後における前記一次側電圧の平均値と前記自動電圧調整器のタップ切換が行われた時点から所定時間前における前記一次側電圧の平均値の差である第1の電圧変化分を算出する第1の電圧変化分算出処理部と、
前記第2の平均処理部により算出された前記二次側電圧の平均値を用いて、前記自動電圧調整器のタップ切換が行われた時点から所定時間後における前記二次側電圧の平均値と前記自動電圧調整器のタップ切換が行われた時点から所定時間前における前記二次側電圧の平均値の差である第2の電圧変化分を算出する第2の電圧変化分算出処理部と、
前記第1の電圧変化分及び前記第2の電圧変化分に基づいて、前記配電系統が順送電及び逆送電のいずれの状態にあるかを判定する送電状態判定処理部とを備えることを特徴とする送電状態判定装置。
前記第1の平均処理部及び第2の平均処理部が、それぞれ前記一次側電圧及び前記二次側電圧の移動平均値を算出することを特徴とする請求項1に記載の送電状態判定装置。
前記第1の平均処理部及び第2の平均処理部が、それぞれ前記一次側電圧及び前記二次側電圧の期間平均値を算出することを特徴とする請求項1に記載の送電状態判定装置。
前記送電状態判定処理部は、前記自動電圧調整器のタップ切換の方向と、前記第1の電圧変化分及び前記第2の電圧変化分の符号と、該前記第1の電圧変化分及び前記第2の電圧変化分の大きさとの関係に応じて、前記配電系統が順送電及び逆送電のいずれの状態にあるかを判定することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の送電状態判定装置。
前記送電状態判定処理部は、前記第1の電圧変化分及び前記第2の電圧変化分の符号と、該前記第1の電圧変化分及び前記第2の電圧変化分の大きさとの関係が、前記自動電圧調整器のタップ切換の方向から想定される関係と一致しない場合には、前記配電系統が順送電及び逆送電のいずれの状態にあるかについての判定を保留することを特徴とする請求項4に記載の送電状態判定装置。
配電系統に設置された負荷時タップ切換式の自動電圧調整器の一次側及び二次側のいずれに電源が接続されているかを検出して、該配電系統が順送電及び逆送電のいずれの状態にあるかを判定する送電状態判定方法であって、
前記自動電圧調整器の一次側電圧及び二次側電圧をそれぞれ計測する一次側電圧計測段階及び二次側電圧計測段階と、
前記一次側電圧及び前記二次側電圧の所定時間区間における平均値をそれぞれ算出する第1の平均処理段階及び第2の平均処理段階と、
前記第1の平均処理段階により算出された前記一次側電圧の平均値を用いて、前記自動電圧調整器のタップ切換が行われた時点から所定時間後における前記一次側電圧の平均値と前記自動電圧調整器のタップ切換が行われた時点から所定時間前における前記一次側電圧の平均値の差である第1の電圧変化分を算出する第1の電圧変化分算出処理段階と、
前記第2の平均処理段階により算出された前記二次側電圧の平均値を用いて、前記自動電圧調整器のタップ切換が行われた時点から所定時間後における前記二次側電圧の平均値と前記自動電圧調整器のタップ切換が行われた時点から所定時間前における前記二次側電圧の平均値の差である第2の電圧変化分を算出する第2の電圧変化分算出処理段階と、
前記第1の電圧変化分及び前記第2の電圧変化分に基づいて、前記配電系統が順送電及び逆送電のいずれの状態にあるかを判定する送電状態判定処理段階とを備えることを特徴とする送電状態判定方法。
前記第1の平均処理段階及び第2の平均処理段階が、それぞれ前記一次側電圧及び前記二次側電圧の移動平均値を算出することを特徴とする請求項6に記載の送電状態判定方法。
前記第1の平均処理段階及び第2の平均処理段階が、それぞれ前記一次側電圧及び前記二次側電圧の期間平均値を算出することを特徴とする請求項6に記載の送電状態判定方法。
前記送電状態判定処理段階は、前記自動電圧調整器のタップ切換の方向と、前記第1の電圧変化分及び前記第2の電圧変化分の符号と、該前記第1の電圧変化分及び前記第2の電圧変化分の大きさとの関係に応じて、前記配電系統が順送電及び逆送電のいずれの状態にあるかを判定することを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか1項に記載の送電状態判定方法。
前記送電状態判定処理段階は、前記第1の電圧変化分及び前記第2の電圧変化分の符号と、該前記第1の電圧変化分及び前記第2の電圧変化分の大きさとの関係が、前記自動電圧調整器のタップ切換の方向から想定される関係と一致しない場合には、前記配電系統が順送電及び逆送電のいずれの状態にあるかについての判定を保留することを特徴とする請求項9に記載の送電状態判定方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に開示された方法においては、系統電圧が変化した場合には、タップ切換による電圧変化分を正しく求めることができなくなる。これにより、順送電と逆送電の判定が正しく行われない事態が生じるという問題がある。
【0013】
本発明は、上述のような問題を解決するためになされたものであり、系統電圧が変化した場合であっても、SVRの一次側と二次側のいずれに配電用変電所などの電源が接続されているかを判定することが可能な自動電圧調整器の送電状態判定装置及び送電状態判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る自動電圧調整器の送電状態判定装置は、配電系統に設置された負荷時タップ切換式の自動電圧調整器の一次側及び二次側のいずれに電源が接続されているかを検出して、該配電系統が順送電及び逆送電のいずれの状態にあるかを判定する送電状態判定装置であって、前記自動電圧調整器の一次側電圧及び二次側電圧をそれぞれ計測する一次側電圧計測部及び二次側電圧計測部と、前記一次側電圧及び前記二次側電圧の所定時間区間における平均値をそれぞれ算出する第1の平均処理部及び第2の平均処理部と、前記第1の平均処理部により算出された前記一次側電圧の平均値を用いて、前記自動電圧調整器のタップ切換が行われた時点から所定時間後における前記一次側電圧の平均値と前記自動電圧調整器のタップ切換が行われた時点から所定時間前における前記一次側電圧の平均値の差である第1の電圧変化分を算出する第1の電圧変化分算出処理部と、前記第2の平均処理部により算出された前記二次側電圧の平均値を用いて、前記自動電圧調整器のタップ切換が行われた時点から所定時間後における前記二次側電圧の平均値と前記自動電圧調整器のタップ切換が行われた時点から所定時間前における前記二次側電圧の平均値の差である第2の電圧変化分を算出する第2の電圧変化分算出処理部と、前記第1の電圧変化分及び前記第2の電圧変化分に基づいて、前記配電系統が順送電及び逆送電のいずれの状態にあるかを判定する送電状態判定処理部とを備えることを特徴とする。
【0015】
この送電状態判定装置によると、自動電圧調整器の一次側電圧及び二次側電圧の所定時間区間における平均値に基づいてタップ切換前後の一次側電圧及び二次側電圧の電圧変化分を算出することにより、系統電圧が変化した場合であっても、自動電圧調整器の一次側と二次側のいずれに配電用変電所などの電源が接続されているかを判定することができる。
【0016】
この送電状態判定装置は、前記第1の平均処理部及び第2の平均処理部が、それぞれ前記一次側電圧及び前記二次側電圧の移動平均値を算出するものであってもよい。
【0017】
この送電状態判定装置によると、系統電圧の変動が大きい場合であっても、自動電圧調整器が順送電及び逆送電のいずれの状態にあるかについての判定を精度よく行うことができる。
【0018】
この送電状態判定装置は、前記第1の平均処理部及び第2の平均処理部が、それぞれ前記一次側電圧及び前記二次側電圧の期間平均値を算出するものであってもよい。
【0019】
この送電状態判定装置によると、系統電圧の変動が大きい場合であっても、自動電圧調整器が順送電及び逆送電のいずれの状態にあるかについての判定を精度よく行うことができる。
【0020】
この送電状態判定装置は、前記送電状態判定処理部が、前記自動電圧調整器のタップ切換の方向と、前記第1の電圧変化分及び前記第2の電圧変化分の符号と、該前記第1の電圧変化分及び前記第2の電圧変化分の大きさとの関係に応じて、前記配電系統が順送電及び逆送電のいずれの状態にあるかを判定するものであってもよい。
【0021】
この送電状態判定装置によると、系統電圧の変動が大きい場合であっても、自動電圧調整器が順送電及び逆送電のいずれの状態にあるかについての判定を精度よく行うことができる。
【0022】
この送電状態判定装置は、前記送電状態判定処理部が、前記第1の電圧変化分及び前記第2の電圧変化分の符号と、該前記第1の電圧変化分及び前記第2の電圧変化分の大きさとの関係が、前記自動電圧調整器のタップ切換の方向から想定される関係と一致しない場合には、前記配電系統が順送電及び逆送電のいずれの状態にあるかについての判定を保留するものであってもよい。
【0023】
この送電状態判定装置によると、系統電圧の変動が大きい場合であっても、自動電圧調整器の送電状態についての誤判定を防止することができる。
【0024】
また、本発明に係る自動電圧調整器の送電状態判定方法は、配電系統に設置された負荷時タップ切換式の自動電圧調整器の一次側及び二次側のいずれに電源が接続されているかを検出して、該配電系統が順送電及び逆送電のいずれの状態にあるかを判定する送電状態判定方法であって、前記自動電圧調整器の一次側電圧及び二次側電圧をそれぞれ計測する一次側電圧計測段階及び二次側電圧計測段階と、前記一次側電圧及び前記二次側電圧の所定時間区間における平均値をそれぞれ算出する第1の平均処理段階及び第2の平均処理段階と、前記第1の平均処理段階により算出された前記一次側電圧の平均値を用いて、前記自動電圧調整器のタップ切換が行われた時点から所定時間後における前記一次側電圧の平均値と前記自動電圧調整器のタップ切換が行われた時点から所定時間前における前記一次側電圧の平均値の差である第1の電圧変化分を算出する第1の電圧変化分算出処理段階と、前記第2の平均処理段階により算出された前記二次側電圧の平均値を用いて、前記自動電圧調整器のタップ切換が行われた時点から所定時間後における前記二次側電圧の平均値と前記自動電圧調整器のタップ切換が行われた時点から所定時間前における前記二次側電圧の平均値の差である第2の電圧変化分を算出する第2の電圧変化分算出処理段階と、前記第1の電圧変化分及び前記第2の電圧変化分に基づいて、前記配電系統が順送電及び逆送電のいずれの状態にあるかを判定する送電状態判定処理段階とを備えることを特徴とする。
【0025】
この送電状態判定方法によると、自動電圧調整器の一次側電圧及び二次側電圧の所定時間区間における平均値に基づいてタップ切換前後の一次側電圧及び二次側電圧の電圧変化分を算出することにより、系統電圧が変化した場合であっても、自動電圧調整器の一次側と二次側のいずれに配電用変電所などの電源が接続されているかを判定することができる。
【0026】
この送電状態判定方法は、前記第1の平均処理段階及び第2の平均処理段階が、それぞれ前記一次側電圧及び前記二次側電圧の移動平均値を算出するものであってもよい。
【0027】
この送電状態判定方法によると、系統電圧の変動が大きい場合であっても、自動電圧調整器が順送電及び逆送電のいずれの状態にあるかについての判定を精度よく行うことができる。
【0028】
この送電状態判定方法は、前記第1の平均処理段階及び第2の平均処理段階が、それぞれ前記一次側電圧及び前記二次側電圧の期間平均値を算出するものであってもよい。
【0029】
この送電状態判定方法によると、系統電圧の変動が大きい場合であっても、自動電圧調整器が順送電及び逆送電のいずれの状態にあるかについての判定を精度よく行うことができる。
【0030】
この送電状態判定方法は、前記送電状態判定処理段階が、前記自動電圧調整器のタップ切換の方向と、前記第1の電圧変化分及び前記第2の電圧変化分の符号と、該前記第1の電圧変化分及び前記第2の電圧変化分の大きさとの関係に応じて、前記配電系統が順送電及び逆送電のいずれの状態にあるかを判定するものであってもよい。
【0031】
この送電状態判定方法によると、系統電圧の変動が大きい場合であっても、自動電圧調整器が順送電及び逆送電のいずれの状態にあるかについての判定を精度よく行うことができる。
【0032】
この送電状態判定方法は、前記送電状態判定処理段階が、前記第1の電圧変化分及び前記第2の電圧変化分の符号と、該前記第1の電圧変化分及び前記第2の電圧変化分の大きさとの関係が、前記自動電圧調整器のタップ切換の方向から想定される関係と一致しない場合には、前記配電系統が順送電及び逆送電のいずれの状態にあるかについての判定を保留するものであってもよい。
【0033】
この送電状態判定方法によると、系統電圧の変動が大きい場合であっても、自動電圧調整器の送電状態についての誤判定を防止することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、自動電圧調整器の一次側電圧及び二次側電圧の所定時間区間における平均値に基づいてタップ切換前後の一次側電圧及び二次側電圧の電圧変化分を算出することにより、系統電圧が変化した場合であっても、自動電圧調整器の一次側と二次側のいずれに配電用変電所などの電源が接続されているかを判定することが可能な自動電圧調整器の送電状態判定装置及び送電状態判定方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明に係る自動電圧調整器の送電状態判定装置及び送電状態判定方法の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0037】
(第1の実施形態)
<送電状態判定装置>
まず、本発明の第1の実施形態としての送電状態判定装置の構成について説明する。
図1に示すように、本実施形態の送電状態判定装置10は、一次側の配電線1u,1v,1wと二次側の配電線2u,2v,2wに接続される自動電圧調整器(SVR:Step Voltage Regulator)20と、SVR20の動作を制御する制御部30とを備える。
【0038】
SVR20は、タップt
u1〜t
u9,t
v1〜t
v9,t
w1〜t
w9を有する調整変圧器21と、制御部30からの制御信号に応じて調整変圧器21のタップt
u1〜t
u9,t
v1〜t
v9,t
w1〜t
w9を切り換える負荷時タップ切換部22と、U相の配電線1uとW相の配電線1wとの間の電圧(以下、「一次側電圧」という)を検出する第1の計器用変圧器VT
1と、u相の配電線2uとw相の配電線2wとの間の電圧(以下、「二次側電圧」という)を検出する第2の計器用変圧器VT
2と、180度位相を反転させた配電線1uの電流と配電線1wの電流との合成電流を検出する変流器CT
u1,CT
w1と、180度位相を反転させた配電線2uの電流と配電線2wの電流との合成電流を検出する変流器CT
u2,CT
w2とを主に備える。
【0039】
制御部30は、第1の計器用変圧器VT
1から出力された一次側電圧を計測する一次側電圧計測部31と、第2の計器用変圧器VT
2から出力された二次側電圧を計測する二次側電圧計測部32と、変流器CT
u1,CT
w1から出力された一次側の合成電流を計測する一次側電流計測部33と、変流器CT
u2,CT
w2から出力された二次側の合成電流を計測する二次側電流計測部34と、一次側電圧計測部31及び一次側電流計測部33の計測結果に基づいて、SVR20のタップ切換を行うためのタップ切換指令V
taを発生する一次側電圧調整部35と、二次側電圧計測部32及び二次側電流計測部34の計測結果に基づいて、SVR20のタップ切換を行うためのタップ切換指令V
tbを発生する二次側電圧調整部36と、後述する電圧調整モードに応じて、タップ切換指令V
ta,V
tbのいずれかを選択して、SVR20の負荷時タップ切換部22にタップ切換信号V
tを出力する動作モード切換部37と、一次側電圧計測部31及び二次側電圧計測部32の計測結果に基づいて、送電状態が順送電及び逆送電のいずれであるかを判定し、その判定結果に応じた送電状態判定信号V
jを動作モード切換部37に出力する送電状態判定部38とを備える。
【0040】
さらに、制御部30は、二次側電圧計測部32及び二次側電流計測部34(あるいは一次側電圧計測部31及び一次側電流計測部33)の計測結果を受けて、SVR20で電力の逆潮流が生じているか否かを検出する逆流継電器39を備えていてもよい。逆流継電器39の検出信号は、送電状態判定部38に出力されるようになっている。
【0041】
一次側電圧調整部35は、後述する一次側電圧調整モードにおいて一次側電圧を目標電圧に保つように、タップ切換指令V
taを発生するようになっている。同様に、二次側電圧調整部36は、後述する二次側電圧調整モードにおいて二次側電圧を目標電圧に保つように、タップ切換指令V
tbを発生するようになっている。
【0042】
動作モード切換部37は、送電状態判定部38から出力される送電状態判定信号V
jに応じて、一次側電圧調整部35及び二次側電圧調整部36から出力されたタップ切換指令V
ta,V
tbのいずれかを選択し、選択したタップ切換指令をタップ切換信号V
tとしてSVR20の負荷時タップ切換部22及び後述する送電状態判定部38に出力するようになっている。
【0043】
負荷時タップ切換部22は、動作モード切換部37から出力されたタップ切換信号V
tをトリガとして調整変圧器21のタップを切り換えて一次側電圧または二次側電圧を目標電圧に保つように電圧調整を行うようになっている。
【0044】
<送電状態判定部>
図2に示すように、送電状態判定部38は、電圧入力部41,42と、A/D変換部43,44と、マイクロコンピュータ45と、制御信号出力部46とを含む。
【0045】
電圧入力部41,42は、一次側電圧計測部31から出力された一次側電圧、及び二次側電圧計測部32から出力された二次側電圧のそれぞれをレベル変換してフィルタ処理するようになっている。
【0046】
A/D変換部43は、電圧入力部41を介して一次側電圧計測部31から入力された一次側電圧を与えるアナログ信号に対して、その瞬時値を所定のサンプリング周期でアナログ/デジタル変換し、得られたデジタル信号を一次側電圧データとして出力するようになっている。
【0047】
同様に、A/D変換部44は、電圧入力部42を介して二次側電圧計測部32から入力された二次側電圧を与えるアナログ信号をデジタル信号に変換し、このデジタル信号を二次側電圧データとして出力するようになっている。
【0048】
マイクロコンピュータ45は、A/D変換部43,44から出力されたデジタル信号と、動作モード切換部37から出力されたタップ切換信号V
tと、逆流継電器39から出力された逆潮流検出信号が入力されるようになっており、これらの信号に基づいて後述する処理を行った後に、制御信号出力部46を介して制御信号(送電状態判定信号V
j)を動作モード切換部37に出力するようになっている。
【0049】
<マイクロコンピュータの処理>
図3に示すように、マイクロコンピュータ45は、所定のプログラムを実行することにより、第1及び第2の実効値変換処理部51,52と、第1及び第2の平均処理部53,54と、第1及び第2の電圧変化処理部55,56と、送電状態判定処理部57とをソフトウエア的に構成する。
【0050】
第1の実効値変換処理部51は、一次側電圧計測部31からA/D変換部43を介して出力された一次側電圧データに対して実効値変換を行うようになっている。同様に、第2の実効値変換処理部52は、二次側電圧計測部32からA/D変換部44を介して出力された二次側電圧データに対して実効値変換を行うようになっている。
【0051】
第1の平均処理部53は、第1の実効値変換処理部51により実効値変換された一次側電圧データの所定時間区間における平均値を算出するようになっている。また、第2の平均処理部54は、第2の実効値変換処理部52により実効値変換された二次側電圧データの所定時間区間における平均値を算出するようになっている。
【0052】
第1の電圧変化分算出処理部55は、第1の平均処理部53により得られた一次側電圧データの平均値を用いて、SVR20のタップ切換前後の電圧変化分を算出するようになっている。同様に、第2の電圧変化分算出処理部56は、第2の平均処理部54により得られた二次側電圧データの平均値を用いて、SVR20のタップ切換前後の電圧変化分を算出するようになっている。
【0053】
送電状態判定処理部57は、第1及び第2の電圧変化分算出処理部55,56によりそれぞれ算出された電圧変化分に基づいて、送電状態が順送電及び逆送電のいずれであるかを判定するようになっている。
【0054】
<平均処理と電圧変化分算出処理>
次に、第1及び第2の平均処理部53,54並びに第1及び第2の電圧変化分算出処理部55,56が実行する処理の内容について説明する。従来は、タップ切換前後の電圧変化分を求める際に、電圧データの1秒平均値が用いられていた。しかしながら、系統電圧は秒単位で変動しているため、従来のように電圧データの1秒平均値を用いる構成では、系統電圧の変動により送電状態を誤判定し易いという問題があった。
【0055】
これを踏まえて本実施形態においては、第1及び第2の平均処理部53,54が一次側電圧データ及び二次側電圧データの1秒平均値を常時N秒移動平均処理し、第1及び第2の電圧変化分算出処理部55,56が第1及び第2の平均処理部53,54から出力されたN秒移動平均値を用いてタップ切換前後の電圧変化分を求める構成としている。これにより、系統電圧の変動の影響を小さくすることが可能となる。ここで、N秒は例えば5秒程度であるとする。
【0056】
第1の平均処理部53は、1秒平均処理部53aと、N秒移動平均処理部53bとを含む。1秒平均処理部53aは、第1の実効値変換処理部51により実効値変換された一次側電圧データの1秒間分のデータの平均値である1秒平均値V
1_nを算出するようになっている。
【0057】
図4及び数1に示すように、N秒移動平均処理部53bは、1秒平均処理部53aにより算出された1秒平均値V
1_nのN秒移動平均値V
1a_nを算出する。
【数1】
【0058】
同様に、第2の平均処理部54は、1秒平均処理部54aと、N秒移動平均処理部54bとを含む。1秒平均処理部54aは、第2の実効値変換処理部52により実効値変換された二次側電圧データの1秒間分のデータの平均値である1秒平均値V
2_nを算出するようになっている。N秒移動平均処理部54bは、1秒平均処理部54aにより算出された1秒平均値V
2_nのN秒移動平均値V
2a_nを数2に従って算出する。
【数2】
【0059】
図5及び数3に示すように、第1の電圧変化分算出処理部55は、第1の平均処理部53から出力されたN秒移動平均値V
1a_t1,V
1a_t2を用いてタップ切換前後の一次側の電圧変化分ΔV
1を算出するようになっている。ここで、V
1a_t1はタップ切換が行われた時刻のt
1秒前の一次側のN秒移動平均値であり、V
1a_t2はタップ切換が行われた時刻のt
2秒後の一次側のN秒移動平均値である。
【数3】
【0060】
同様に、第2の電圧変化分算出処理部56は、第2の平均処理部54から出力されたN秒移動平均値V
2a_t1,V
2a_t2を用いてタップ切換前後の二次側の電圧変化分ΔV
2を数4に従って算出する。ここで、V
2a_t1はタップ切換が行われた時刻のt
1秒前の二次側のN秒移動平均値であり、V
2a_t2はタップ切換が行われた時刻のt
2秒後の二次側のN秒移動平均値である。
【数4】
【0061】
<送電状態判定方法>
次に、本実施形態の送電状態判定方法について説明する。
図6は、送電状態判定装置10の制御部30が実行する送電状態判定プログラムのフローチャートである。
【0062】
まず、ステップS1では、制御部30は、一次側電圧計測部31によりSVR20の一次側電圧を検出するとともに、二次側電圧計測部32によりSVR20の二次側電圧を検出する。
【0063】
次に、ステップS2では、制御部30は、一次側電圧計測部31からA/D変換部43を介して出力された一次側電圧データに対して、第1の実効値変換処理部51により実効値変換を行う。同様に、制御部30は、二次側電圧計測部32からA/D変換部44を介して出力された一次側電圧データに対して、第2の実効値変換処理部52により実効値変換を行う。
【0064】
次に、ステップS3では、制御部30は、1秒平均処理部53aにより、第1の実効値変換処理部51により実効値変換された一次側電圧データの1秒平均値V
1_nを算出する。同様に、制御部30は、1秒平均処理部54aにより、第2の実効値変換処理部52により実効値変換された二次側電圧データの1秒平均値V
2_nを算出する。
【0065】
次に、ステップS4では、制御部30は、N秒移動平均処理部53bにより、1秒平均処理部53aにより算出された1秒平均値V
1_nのN秒移動平均値V
1a_nを算出する。同様に、制御部30は、N秒移動平均処理部54bにより、1秒平均処理部54aにより算出された1秒平均値V
2_nのN秒移動平均値V
2a_nを算出する。
【0066】
なお、ステップS1からステップS4までの処理は、次のステップS5の処理とは関係なく、常時行うものとする。
【0067】
次に、ステップS5では、制御部30は、第1及び第2の電圧変化分算出処理部55,56によりそれぞれ算出された電圧変化分ΔV
1,ΔV
2に基づいて、送電状態判定処理部57により送電状態が順送電及び逆送電のいずれであるかを判定する。
【0068】
<ステップS5の処理>
次に、
図6のフローチャートのステップS5の処理の詳細について説明する。
図7は、制御部30が備える送電状態判定部38のマイクロコンピュータ45が実行する処理のフローチャートである。
【0069】
まず、ステップS11では、マイクロコンピュータ45は、SVR20のタップ切換が行われたことを示すタップ切換信号V
tを動作モード切換部37が発生したか否かを判定する。動作モード切換部37がタップ切換信号V
tを発生した場合には、マイクロコンピュータ45はステップS12の処理を実行する。一方、動作モード切換部37がタップ切換信号V
tを発生していない場合には、マイクロコンピュータ45は再びステップS11の処理を実行する。
【0070】
次に、ステップS12では、マイクロコンピュータ45は、第1の電圧変化分算出処理部55により、第1の平均処理部53から出力されたN秒移動平均値V
1a_t1,V
1a_t2を用いてタップ切換前後の一次側の電圧変化分ΔV
1を算出する。同様に、マイクロコンピュータ45は、第2の電圧変化分算出処理部56により、第2の平均処理部54から出力されたN秒移動平均値V
2a_t1,V
2a_t2を用いてタップ切換前後の二次側の電圧変化分ΔV
2を算出する。
【0071】
次に、ステップS13では、マイクロコンピュータ45は、一次側の電圧変化分ΔV
1の絶対値|ΔV
1|が二次側の電圧変化分ΔV
2の絶対値|ΔV
2|よりも小さいか否かを判定する。一次側の電圧変化分の絶対値|ΔV
1|が二次側の電圧変化分の絶対値|ΔV
2|よりも小さい場合、すなわち、順送電の場合には、マイクロコンピュータ45は、ステップS14の処理を実行する。一方、一次側の電圧変化分の絶対値|ΔV
1|が二次側の電圧変化分の絶対値|ΔV
2|よりも小さくない場合、すなわち、順送電ではない場合には、マイクロコンピュータ45はステップS15の処理を実行する。
【0072】
次に、ステップS14では、マイクロコンピュータ45は、動作モード切換部37に送電状態判定信号V
jを出力し、SVR20の動作モードを二次側電圧調整モードに設定する。これにより、SVR20の二次側電圧調整部36が発生したタップ切換指令V
tbが負荷時タップ切換部22に出力される。マイクロコンピュータ45は、ステップS14においてSVR20の動作モードを二次側電圧調整モードに設定した後、再びステップS11の処理を実行する。
【0073】
次に、ステップS15では、マイクロコンピュータ45は、一次側の電圧変化分の絶対値|ΔV
1|が二次側の電圧変化分の絶対値|ΔV
2|よりも大きいか否かを判定する。一次側の電圧変化分の絶対値|ΔV
1|が二次側の電圧変化分の絶対値|ΔV
2|よりも大きい場合、すなわち、逆送電の場合には、マイクロコンピュータ45は、ステップS16の処理を実行する。一方、一次側の電圧変化分の絶対値|ΔV
1|が二次側の電圧変化分の絶対値|ΔV
2|よりも大きくない場合、すなわち、逆送電ではない場合には、マイクロコンピュータ45は、現在の動作モードを維持して再びステップS11の処理を実行する。
【0074】
次に、ステップS16では、マイクロコンピュータ45は、動作モード切換部37に送電状態判定信号V
jを出力し、SVR20の動作モードを一次側電圧調整モードに設定する。これにより、SVR20の一次側電圧調整部35が発生したタップ切換指令V
taが負荷時タップ切換部22に出力される。マイクロコンピュータ45は、ステップS16においてSVR20の動作モードを一次側電圧調整モードに設定した後、再びステップS11の処理を実行する。
【0075】
なお、SVR20が逆流継電器39を備えており、配電系統がほぼ常時順送電状態である配電系統運用であれば、
図7のフローチャートのステップS11の処理の前に、SVR20で逆潮流が生じたことを示す逆潮流検出信号を逆流継電器39が発生したか否かを判定する処理を追加してもよい(ステップS0)。これにより、配電系統がほぼ常時順送電状態である配電系統運用において、誤判定の影響を小さくすることが可能となる。
【0076】
具体的には、逆流継電器39が逆潮流検出信号を発生した場合には、マイクロコンピュータ45はステップS11の処理を実行する。一方、逆流継電器39が逆潮流検出信号を発生していない場合、すなわち順潮流の場合には、マイクロコンピュータ45は再びステップS11の処理を実行する。
【0077】
<測定結果>
次に、本実施形態の送電状態判定装置10を用いた測定結果について、
図8〜
図11を参照しながら説明する。
図8〜
図11は、系統電圧が変動している状況でタップ切換が行われた場合における、SVR20の一次側及び二次側の電圧の様相を示している。測定条件は以下に示すとおりである。
【0078】
・使用試験データ:2種類(試験データI、試験データII)
・電源の位置:SVR20の二次側(逆送電)
・t
1=t
2=5秒
・タップ切換方向:一次側昇圧(
図8、
図9)、一次側降圧(
図10、
図11)
なお、一次側昇圧は、例えば、SVR20の一次巻線の巻数を大きくすることによって実現され、一次側降圧は、例えば、SVR20の一次巻線の巻数を小さくすることによって実現される。
【0079】
図8は、第1及び第2の平均処理部53,54において、試験データIに対して1秒平均処理のみが行われた場合における、SVR20の一次側電圧の1秒平均値(太い実線)とSVR20の二次側電圧の1秒平均値(細い実線)を示すグラフである。
【0080】
この例では、タップ切換時刻t
0が10:24:19、タップ切換前時刻(t
0−t
1)が10:24:14、タップ切換後時刻(t
0+t
2)が10:24:24である。
【0081】
図8の例においては、タップ切換前時刻(t
0−t
1)における一次側電圧の1秒平均値V
1_t1、タップ切換後時刻(t
0+t
2)における一次側電圧の1秒平均値V
1_t2、タップ切換前時刻(t
0−t
1)における二次側電圧の1秒平均値V
2_t1、タップ切換後時刻(t
0+t
2)における二次側電圧の1秒平均値V
2_t2、一次側の電圧変化分ΔV
1、二次側の電圧変化分ΔV
2は、それぞれ表2の上段に示すとおりである。すなわち、タップ切換前後の電圧は、一次側が正側の方向、二次側が負側の方向に変化し、その絶対値の大小関係は、|ΔV
1|<|ΔV
2|となる。
【表2】
【0082】
ここで、ΔV
1及びΔV
2は数5で与えられる。
【数5】
【0083】
したがって、
図8の例では、一次側の電圧変化分の絶対値|ΔV
1|が二次側の電圧変化分の絶対値|ΔV
2|よりも小さくなるため、送電状態判定部38は、送電状態を順送電と誤って判定することになる。これは、タップ切換による電圧変化に比べ、系統電圧の変動が大きいことによるものである。
【0084】
図9は、第1及び第2の平均処理部53,54において、試験データIの1秒平均値に対して5秒移動平均処理が行われた場合における、SVR20の一次側電圧の5秒移動平均値(太い実線)とSVR20の二次側電圧の5秒移動平均値(細い実線)を示すグラフである。
【0085】
この例では、
図8に示した例と同様に、タップ切換時刻t
0が10:24:19、タップ切換前時刻(t
0−t
1)が10:24:14、タップ切換後時刻(t
0+t
2)が10:24:24である。
【0086】
図9の例においては、タップ切換前時刻(t
0−t
1)における一次側電圧の5秒移動平均値V
1a_t1、タップ切換後時刻(t
0+t
2)における一次側電圧の5秒移動平均値V
1a_t2、タップ切換前時刻(t
0−t
1)における二次側電圧の5秒移動平均値V
2a_t1、タップ切換後時刻(t
0+t
2)における二次側電圧の5秒移動平均値V
2a_t2、一次側の電圧変化分ΔV
1、二次側の電圧変化分ΔV
2は、それぞれ表2の下段に示すとおりである。すなわち、タップ切換前後の電圧は、一次側が正側の方向、二次側が負側の方向に変化し、その絶対値の大小関係は、|ΔV
1|>|ΔV
2|となる。
【0087】
したがって、
図9の例では、一次側の電圧変化分の絶対値|ΔV
1|が二次側の電圧変化分の絶対値|ΔV
2|よりも大きくなるため、送電状態判定部38は、送電状態を逆送電と正しく判定することになる。
【0088】
図10は、第1及び第2の平均処理部53,54において、試験データIIに対して1秒平均処理のみが行われた場合における、SVR20の一次側電圧の1秒平均値(太い実線)とSVR20の二次側電圧の1秒平均値(細い実線)の他の例を示すグラフである。
【0089】
この例では、タップ切換時刻t
0が11:02:11、タップ切換前時刻(t
0−t
1)が11:02:06、タップ切換後時刻(t
0+t
2)が11:02:16である。
【0090】
図10の例においては、タップ切換前時刻(t
0−t
1)における一次側電圧の1秒平均値V
1_t1、タップ切換後時刻(t
0+t
2)における一次側電圧の1秒平均値V
1_t2、タップ切換前時刻(t
0−t
1)における二次側電圧の1秒平均値V
2_t1、タップ切換後時刻(t
0+t
2)における二次側電圧の1秒平均値V
2_t2、一次側の電圧変化分ΔV
1、二次側の電圧変化分ΔV
2は、それぞれ表3の上段に示すとおりである。すなわち、タップ切換前後の電圧は、一次側、二次側ともに正側の方向に変化し、その絶対値の大小関係は、|ΔV
1|<|ΔV
2|となる。
【表3】
【0091】
したがって、
図10の例では、一次側の電圧変化分の絶対値|ΔV
1|が二次側の電圧変化分の絶対値|ΔV
2|よりも小さくなるため、送電状態判定部38は、送電状態を順送電と誤って判定することになる。これは、
図8の例と同様に、タップ切換による電圧変化に比べ、系統電圧の変動が大きいことによるものである。
【0092】
図11は、第1及び第2の平均処理部53,54において、試験データIIの1秒平均値に対して5秒移動平均処理が行われた場合における、SVR20の一次側電圧の5秒移動平均値(太い実線)とSVR20の二次側電圧の5秒移動平均値(細い実線)を示すグラフである。
【0093】
この例では、
図10に示した例と同様に、タップ切換時刻t
0が11:02:11、タップ切換前時刻(t
0−t
1)が11:02:06、タップ切換後時刻(t
0+t
2)が11:02:16である。
【0094】
図11の例においては、タップ切換前時刻(t
0−t
1)における一次側電圧の5秒移動平均値V
1a_t1、タップ切換後時刻(t
0+t
2)における一次側電圧の5秒移動平均値V
1a_t2、タップ切換前時刻(t
0−t
1)における二次側電圧の5秒移動平均値V
2a_t1、タップ切換後時刻(t
0+t
2)における二次側電圧の5秒移動平均値V
2a_t2、一次側の電圧変化分ΔV
1、二次側の電圧変化分ΔV
2は、それぞれ表3の下段に示すとおりである。すなわち、タップ切換前後の電圧は、一次側が負側の方向、二次側が正側の方向に変化し、その絶対値の大小関係は、|ΔV
1|>|ΔV
2|となる。
【0095】
したがって、
図11の例では、一次側の電圧変化分の絶対値|ΔV
1|が二次側の電圧変化分の絶対値|ΔV
2|よりも大きくなるため、送電状態判定部38は、送電状態を逆送電と正しく判定することになる。
【0096】
以上の結果から、系統電圧の変動が大きく、従来の電圧データの1秒平均値に基づいた送電状態の判定で誤判定が生じる場合であっても、本実施形態の送電状態判定装置及び送電状態判定方法は、一次側電圧データ及び二次側電圧データのN秒移動平均値に基づいて送電状態の判定を行うことにより、送電状態の判定の精度を改善することができる。
【0097】
なお、一次側電圧データ及び二次側電圧データの1秒平均値に基づいた送電状態の判定で正しい判定が得られた場合には、一次側電圧データ及び二次側電圧データの5秒移動平均値に基づいた送電状態の判定においても正しい判定が得られることは確認済みである。
【0098】
なお上記では、t
1もt
2も5秒であるとしたが、t
1,t
2の値はこれに限定されず、例えば、t
1の値を1秒、t
2の値を2〜5秒あるいは5〜10秒の範囲の値としてもよい。ただし、N秒移動平均のNの値はt
2の値と同じにする。このように、タップ切換前時刻(t
0−t
1)からタップ切換後時刻(t
0+t
2)までの時間(t
1+t
2)を短縮することにより、あるいはNの値を大きくすることにより、系統電圧の変動の影響をさらに小さくすることができる。
【0099】
以上説明したように、本実施形態によれば、自動電圧調整器の一次側電圧及び二次側電圧の所定時間区間における平均値に基づいてタップ切換前後の一次側電圧及び二次側電圧の電圧変化分を算出することにより、自動電圧調整器のタップ切換前後に系統電圧が変化した場合であっても、自動電圧調整器の一次側と二次側のいずれに配電用変電所などの電源が接続されているかを判定することが可能な自動電圧調整器の送電状態判定装置及び送電状態判定方法を提供することができる。
【0100】
(第2の実施形態)
続いて、本発明における第2の実施形態としての送電状態判定装置及び送電状態判定方法について図面を参照しながら説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成及び動作については適宜説明を省略する。
【0101】
本実施形態において、第1及び第2の平均処理部53,54並びに第1及び第2の電圧変化分算出処理部55,56が実行する処理の内容について説明する。
【0102】
第1及び第2の平均処理部53,54は、第1の実施形態では一次側電圧データ及び二次側電圧データの1秒平均値及びN秒移動平均値を算出するものであったが、本実施形態では一次側電圧データ及び二次側電圧データの期間平均値としてのT秒平均値を算出するようになっている。ここで、T秒は例えば3〜10秒程度であるとする。
【0103】
すなわち、
図12に示すように第1の平均処理部53,54は、それぞれT秒平均処理部53c,54cを含む。T秒平均処理部53cは、タップ切換前時刻(t
0−t
1)及びタップ切換後時刻(t
0+t
2)の近傍において、第1の実効値変換処理部51により実効値変換された一次側電圧データのT秒間分のデータの平均値であるT秒平均値V
1T_t1,V
1T_t2を算出するようになっている。
【0104】
同様に、T秒平均処理部54cは、タップ切換前時刻(t
0−t
1)及びタップ切換後時刻(t
0+t
2)の近傍において、第2の実効値変換処理部52により実効値変換された二次側電圧データのT秒間分のデータの平均値であるT秒平均値V
2T_t1,V
2T_t2を算出するようになっている。
【0105】
T秒平均処理部53cは、
図13(a)に示すようにタップ切換前時刻t
1(
図13の例ではタップ切換時刻をt
0=0としている。)及びタップ切換後時刻t
2からそれぞれ過去T秒の電圧データのT秒平均値を算出するものであってもよい。
【0106】
あるいは、T秒平均処理部53cは、
図13(b)に示すようにタップ切換前時刻t
1から過去T秒の電圧データのT秒平均値を算出するとともに、タップ切換後時刻t
2から未来のT秒の電圧データのT秒平均値を算出するものであってもよい。なお、T秒平均処理部54cについても同様である。
【0107】
なお、タップ切換前時刻(t
0−t
1)及びタップ切換後時刻(t
0+t
2)は、タップ切換時刻t
0の前後5秒未満の時刻であってもよい。ただし、
図13(a)に示すようにタップ切換後時刻(t
0+t
2)の時点から過去T秒の電圧データを用いてT秒平均値を算出する場合には、この過去T秒がタップ切換時刻t
0よりも前の時刻までまたがらないように、t
2−t
0がTよりも大きい必要がある。つまり、タップ切換時刻t
0からタップ切換後時刻(t
0+t
2)までの時間の短縮には限界がある。
【0108】
(第3の実施形態)
続いて、本発明における第3の実施形態としての送電状態判定装置及び送電状態判定方法について図面を参照しながら説明する。なお、第1及び第2の実施形態と同様の構成及び動作については適宜説明を省略する。
【0109】
図14は、本実施形態の送電状態判定装置10においてマイクロコンピュータ45が実行する処理のフローチャートであり、
図6のフローチャートのステップS5の処理の詳細を示すものである。なお、ステップS21,S22,S24,S25の処理は、それぞれ
図7のフローチャートのステップS11,S12,S14,S16の処理と同様であるため、これらの処理の説明を省略する。
【0110】
マイクロコンピュータ45のメモリ(図示せず)は、SVR20のタップ切換の方向と、一次側の電圧変化分ΔV
1及び二次側の電圧変化分ΔV
2の符号と、一次側の電圧変化分ΔV
1及び二次側の電圧変化分ΔV
2の大きさと、SVR20の送電状態の判定結果との対応を示すテーブルを記憶している。表4にこのテーブルの内容を示す。
【表4】
【0111】
ステップS23では、マイクロコンピュータ45は、表4に示したテーブルに基づいて、SVR20が順送電及び逆送電のいずれの状態にあるかを判定する処理を行う。
【0112】
表4において、パターン1,2,7,8,11,12,14,15、及び、パターン4(|ΔV
1|≦|ΔV
2|の場合)、パターン6(|ΔV
1|=|ΔV
2|の場合)、パターン9(|ΔV
1|≧|ΔV
2|の場合)、パターン13(|ΔV
1|≧|ΔV
2|の場合)、パターン16(|ΔV
1|=|ΔV
2|の場合)、パターン18(|ΔV
1|≦|ΔV
2|の場合)は、一次側の電圧変化分ΔV
1及び二次側の電圧変化分ΔV
2の符号と、一次側の電圧変化分ΔV
1及び二次側の電圧変化分ΔV
2の大きさとの関係がSVR20のタップ切換の方向から想定される関係と一致しないケース(判定保留)に該当する。
【0113】
系統電圧の変動を何らかの手段により完全に除去できるのであれば、上記の判定保留のパターンは生じないと考えられる。しかしながら、移動平均処理を行っても完全にその変動分を除去することができない場合や、求めた電圧変化分に計測誤差等に起因する誤差がある場合などには、表4に示す判定保留のパターンが生じることが予想される。
【0114】
このため、ステップS23では、一次側の電圧変化分ΔV
1及び二次側の電圧変化分ΔV
2の符号と、一次側の電圧変化分ΔV
1及び二次側の電圧変化分ΔV
2の大きさとの関係がSVR20のタップ切換の方向から想定される関係と一致しない場合には、SVR20が順送電及び逆送電のいずれの状態にあるかについての判定を保留とする処理が行われる。これにより、誤判定を極力減少させ、判定精度の向上を図ることが可能となる。
【0115】
<送電状態の判定>
図15(a)、
図15(b)は、系統電圧が変動している状況における移動平均処理後のSVR20の一次側電圧及び二次側電圧の様相の例を示したものである。
図15(a)、
図15(b)の例では、SVR20の一次側に電源が接続された順送電の状態において、SVR20の一次巻線の巻数が減少する方向にタップ切換が行われている。ただし、
図15(a)の例と
図15(b)の例では、系統電圧変動の様相が相違している。
【0116】
図15(a)の例の場合、タップ切換前後の電圧変化は、一次側、二次側ともに正側の方向に変化し、その絶対値の大小関係は、|ΔV
1|<|ΔV
2|である。これは、表4に示したパターン9の|ΔV
1|<|ΔV
2|に該当する。このとき、マイクロコンピュータ45は、送電状態が順送電の状態であると判定し、ステップS24の処理を実行する。
【0117】
図15(b)の例の場合、タップ切換前後の電圧変化は、一次側が負側の方向、二次側が正側の方向に変化し、その絶対値の大小関係は、|ΔV
1|<|ΔV
2|である。これは、表4に示したパターン6の|ΔV
1|<|ΔV
2|に該当する。
【0118】
しかしながら、|ΔV
1|と|ΔV
2|の相違は小さいため、系統電圧の変動に対する移動平均処理の変動除去性能や計測誤差等により、場合によってはステップS22において|ΔV
1|=|ΔV
2|となるΔV
1及びΔV
2が誤って算出され得る。これは、表4に示したパターン6の|ΔV
1|=|ΔV
2|に該当する。
【0119】
そこで、
図15(b)の例において、マイクロコンピュータ45は、|ΔV
1|<|ΔV
2|の場合には、送電状態が順送電の状態であると判定し、ステップS24の処理を実行する。一方、マイクロコンピュータ45は、|ΔV
1|=|ΔV
2|の場合には、送電状態の判定を保留とし、現在の動作モードを維持してステップS21の処理を再び実行する。
【0120】
他の例としては、例えば、SVR20の一次側に電源が接続されている順送電の状態で、SVR20の一次巻線の巻数が小さくなる側にタップ切換が行われた場合には、系統電圧が変化しなければ、SVR20の一次側電圧はほとんど変化せず、SVR20の二次側電圧が増加する。これは、表4に示したパターン3に該当する。このとき、マイクロコンピュータ45は、送電状態が順送電の状態であると判定し、ステップS24の処理を実行する。
【0121】
一方、SVR20の二次側に電源が接続されている逆送電の状態で、SVR20の一次巻線の巻数が大きくなる側にタップ切換が行われた場合には、系統電圧が変化しなければ、SVR20の二次側電圧はほとんど変化せず、SVR20の一次側電圧が増加する。これは、表4に示したパターン17に該当する。このとき、マイクロコンピュータ45は、送電状態が逆送電の状態であると判定し、ステップS25の処理を実行する。
【0122】
これに対して、タップ切換が行われたにも拘らずSVR20の一次側電圧も二次側電圧もともにほとんど変化しない場合には、系統電圧の変化があった可能性が高い。これは、表4に示したパターン2,11に該当する。このときマイクロコンピュータ45は、送電状態の判定を保留とし、現在の動作モードを維持してステップS21の処理を再び実行する。
【0123】
また、順送電の状態でSVR20の一次巻線の巻数が小さくなる側にタップ切換が行われた場合に、SVR20の一次側電圧がほとんど変化せず、SVR20の二次側電圧が減少する場合にも、系統電圧の変化があった可能性が高い。これは、表4に示したパターン1に該当する。このときもマイクロコンピュータ45は、送電状態の判定を保留とし、現在の動作モードを維持してステップS21の処理を再び実行する。
【0124】
一方、逆送電の状態でSVR20の一次巻線の巻数が大きくなる側にタップ切換が行われた場合に、SVR20の二次側電圧がほとんど変化せず、SVR20の一次側電圧が減少する場合にも、系統電圧の変化があった可能性が高い。これは、表4に示したパターン14に該当する。このときもマイクロコンピュータ45は、送電状態の判定を保留とし、現在の動作モードを維持してステップS21の処理を再び実行する。
【0125】
なお、第1の実施形態で示した
図9の測定結果(移動平均処理後)は、パターン16の「ΔV
1>ΔV
2」に該当する(電源位置がSVR20の二次側)。また、
図11の測定結果(移動平均処理後)は、パターン6の「ΔV
1>ΔV
2」に該当する(電源位置がSVR20の二次側)。
【0126】
なお、第1の実施形態と同様に、SVR20が逆流継電器39を備えており、配電系統がほぼ常時順送電状態である配電系統運用であれば、
図14のフローチャートのステップS21の処理の前に、SVR20で逆潮流が生じたことを示す逆潮流検出信号を逆流継電器39が発生したか否かを判定する処理を追加してもよい。
【0127】
以上説明したように、本実施形態によれば、系統電圧の変動が大きい場合であっても、自動電圧調整器が順送電及び逆送電のいずれの状態にあるかについての判定を精度よく行うことができるとともに、送電状態についての誤判定を防止することができる自動電圧調整器の送電状態判定装置及び送電状態判定方法を提供することができる。