(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記逆止弁は、前記副室に開口する燃料口を閉鎖する閉鎖位置と前記閉鎖位置から離れた全開位置との間で移動する弁体を有し、前記弁体が前記閉鎖位置から前記全開位置に向けて移動することで前記燃料口が開放されて前記逆止弁が開弁し、
前記弁状態検出装置は、前記弁体の移動量を検出可能であり、
前記制御装置は、前記弁状態検出装置及び前記回転角度検出装置からの信号に基づいて、前記回転角度と対応付けた前記弁体の移動量に関する移動量推移の実積分値を計測し、当該実積分値と前記移動量推移の目標積分値との比較結果に基づいて前記逆止弁が正常であるか否かを判断する、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の副室式ガスエンジンの燃料供給制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
逆止弁(特にバネ式や磁石式)は、経年劣化や異物噛込みにより、副室燃料供給弁の動作に対する応答性が変わることがある。しかし従来、例えば副室燃料供給弁が開弁すれば逆止弁は即座に開弁するといったような想定の下で、副室燃料供給弁を制御しているのが現状である。このような想定の下で制御を継続しても、副室への実際の燃料供給開始時期、燃料供給終了時期及び燃料供給期間が逆止弁の応答性の変化に伴って当初想定からズレ、ガス燃料を副室に適時に供給するという制御目的を達成できなくなるおそれがある。ひいては、副室の燃焼状態を正常に保ち、主燃焼室の燃焼効率を高め、排ガス中成分を改善することも難しくなる。
【0007】
そこで本発明は、ガス燃料をより適時に副室に供給可能な副室式ガスエンジンの燃料供給制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る副室式ガスエンジンの燃料供給制御装置は、ガス燃料を副室に供給する副室燃料供給弁と、前記副室燃料供給弁及び前記副室の間に介装され、前記副室からの逆流を阻止する逆止弁と、前記逆止弁の動作状態を検出する弁状態検出装置と、クランクシャフトの回転角度又はカムシャフトの回転角度の少なくとも一方の回転角度を検出する回転角度検出装置と、前記副室燃料供給弁の動作指令値を決定する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記弁状態検出装置及び前記回転角度検出装置からの信号に基づいて前記回転角度と対応付けた前記逆止弁の実動作状態を計測し、当該実動作状態を目標動作状態に近付けるように前記副室燃料供給弁の動作指令値を補正する。
【0009】
前記構成によれば、弁状態検出装置及び回転角度検出装置からの信号を用いて、どのようなタイミングで逆止弁が開弁しているのか、どれくらいの期間に渡り逆止弁は開弁しているのか又はどのようなタイミングで逆止弁が閉弁しているのか等、逆止弁の動作状態を制御装置が把握する。制御装置は、この逆止弁の実動作状態を目標動作状態に近付けるように副室燃料供給弁の動作指令値を補正する。言い換えれば、制御装置は、逆止弁の動作状態が目標とされるものとなるようにフィードバック制御を実行し、そのフィードバック制御において副室燃料供給弁を操作する。
【0010】
このような制御を実行することで、逆止弁の応答性の変化があっても、これに対応して逆止弁を当初の想定どおりに動作させることができ、逆止弁を適時に開弁させる状況を担保することができる。よって、副室への実際の燃料供給開始時期、燃料供給終了時期及び燃料供給期間を適切に制御できるため、副室の燃焼状態を正常に維持し、ひいては主燃焼室の燃焼効率や排ガス成分を改善することができる。また、制御装置は逆止弁そのものを操作するわけではないので、複雑な動弁方式を逆止弁に採用する必要がない。また、現在稼働中の副室式ガスエンジンに関しても、エンジン本体(例えばシリンダヘッド周り)の大幅な形状変更を伴わずに、前述した作用をもたらす燃料供給制御装置を製作することができる。このように、容易にレトロフィット可能である点に照らしても有益である。
【0011】
ガスエンジンの運転状態を検出する運転状態検出装置を備え、前記制御装置は、前記運転状態検出装置からの信号に応じて前記目標動作状態を設定してもよい。
【0012】
前記構成によれば、実動作状態がガスエンジンの運転状態に応じて設定された目標動作状態に近付くようにして、制御装置がフィードバック制御を実行するので、ガスエンジンの運転状態が変化しても、これに追従して逆止弁を当初の想定どおりに動作させ続けることができる。
【0013】
前記逆止弁の動作状態には、前記逆止弁の開弁時期が含まれ、前記制御装置は、前記弁状態検出装置及び前記回転角度検出装置からの信号に基づいて前記回転角度と対応付けた前記逆止弁の実開弁時期を計測し、当該実開弁時期を目標開弁時期に近付けるように前記副室燃料供給弁の動作指令値を補正してもよい。
【0014】
前記構成によれば、制御装置が、逆止弁の開弁時期をフィードバック制御するので、逆止弁を適時に開弁させることができ、それにより副室への燃料供給開始時期を適時に保つことができる。また、制御装置は、逆止弁の開弁時期のフィードバック制御の実行に際して副室燃料供給弁の動作指令値を補正するところ、この動作指令値は燃料供給制御において従前利用されているものであるので、前述の作用をもたらす制御を容易に実現できる。
【0015】
前記実開弁時期が許容進角量を超えて前記目標開弁時期よりも進角している場合に、前記制御装置は前記副室燃料供給弁の開弁時期を遅角補正し、前記実開弁時期が許容遅角量を超えて前記目標開弁時期よりも遅角している場合に、前記制御装置は前記副室燃料供給弁の開弁時期を進角補正してもよい。
【0016】
前記構成によれば、実開弁時期が目標開弁時期よりも進角していれば副室燃料供給弁の開弁時期が遅角補正されるので、実開弁時期をこれに応じて遅角することができ、目標開弁時期に近付けることができる。実開弁時期が目標開弁時期よりも進角しているときもこれと同様である。
【0017】
前記逆止弁の動作状態には、前記逆止弁の閉弁時期が含まれ、前記制御装置は、前記弁状態検出装置及び前記回転角度検出装置からの信号に基づいて前記回転角度と対応付けた前記逆止弁の実閉弁時期を計測し、当該実閉弁時期を目標閉弁時期に近付けるように前記副室燃料供給弁の動作指令値を補正してもよい。
【0018】
前記構成によれば、制御装置が、逆止弁の閉弁時期をフィードバック制御するので、逆止弁の開弁期間を適当な期間に保ち、逆止弁を適時に閉弁させることができ、副室への燃料供給終了時期を適時に保つことができる。制御装置は、逆止弁の閉弁時期のフィードバック制御の実行に際して副室燃料供給弁の動作指令値を補正するところ、この動作指令値は燃料供給制御において従前利用されているものであるので、前述の作用をもたらす制御を容易に実現できる。なお、閉弁期間を開弁時期と共にフィードバック制御した場合、開弁期間も当初の想定どおりに維持することができる。それにより副室への燃料供給量及び燃料供給期間を適切に保つことができる。
【0019】
前記逆止弁は、前記副室に開口する燃料口を閉鎖する閉鎖位置と前記閉鎖位置から離れた全開位置との間で移動するのを許容された弁体を有し、前記弁体が前記閉鎖位置から前記全開位置に向けて移動することで前記燃料口が開放されて前記逆止弁が開弁し、前記弁状態検出装置は、前記弁体の移動量を検出可能であり、前記制御装置は、前記弁状態検出装置及び前記回転角度検出装置からの信号に基づいて、前期回転角度と対応付けた前記弁体の移動量に関する移動量推移の実積分値を計測し、当該計測された実積分値と前記移動量推移の目標積分値との比較結果に基づいて前記逆止弁が正常であるか否かを判断してもよい。
【0020】
ここで、制御装置が逆止弁の開弁時期や閉弁時期を当初の想定から外れないようフィードバック制御を実行することに照らせば、逆止弁の移動量が行き過ぎであるか逆止弁の移動量が足りない場合に、目標積分値と実積分値との偏差が大きくなる。このように逆止弁の移動量が過大又は過小であれば、逆止弁を通過する燃料量又は燃料圧が当初の想定と比べて過大又は過小となり、副室内の燃焼状態を正常に保つことが困難となる。前記構成によれば、このような状況を把握し、逆止弁が正常であるか否かを判断することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、ガス燃料をより適時に副室に供給可能な副室式ガスエンジンの燃料供給制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。同一の又は対応する要素には全ての図を通じて同一の符号を付して重複する詳細な説明を省略する。
【0024】
[ガスエンジンの全体構成]
図1は、実施形態に係るガスエンジン1の全体構成を示す概念図である。
図1に示すガスエンジン1は、ガス燃料及び給気の混合気を燃焼して出力軸2で回転出力を発生する。出力軸2は、交流発電機及び舶用推進器等の負荷3に接続され、本実施形態に係るガスエンジン1は、発電機の駆動源及び舶用主機等として好適に利用される。
【0025】
ガスエンジン1は、副室式、レシプロ式、4ストローク式のエンジンであり、エンジン本体内に複数の気筒4を有している。気筒4の配列方式は、図示の便宜のため例示した並列型に限らず、V型でもよい。ガスエンジン1には、給気通路5及び排気通路6が設けられている。給気通路5は、過給機からの給気を各気筒4に供給するための通路であり、気筒4に個別対応する複数の給気ポート7を含む。排気通路6は、各気筒4からの排気を過給機に供給し且つ/又は外気に排出するための通路であり、気筒4に個別対応する複数の排気ポート9を含む。
【0026】
ガスエンジン1には、燃料供給源からのガス燃料を各気筒4に供給するため燃料ライン11が設けられている。燃料ライン11は、燃料供給源から延びる共通ライン12と、気筒4に個別対応する複数の分岐ライン13とを含み、各分岐ライン13は、主燃料ライン13aと副室燃料ライン13bとを含む。主燃料ライン13aは、燃料供給源からのガス燃料を対応する気筒4の給気ポート7へと導く系統であり、例えば共通ライン12を当該給気ポート7に接続している。副室燃料ライン13bは、燃料供給源からのガス燃料を対応する気筒4の副室24(
図2参照)へと導く系統であり、例えば共通ライン12を当該副室24に接続している。
【0027】
気筒4に個別対応して、主燃料供給弁16、副室燃料供給弁18、逆止弁19及び点火器20が設けられている。主燃料供給弁16は、対応する主燃料ライン13a上に配置される。副室燃料供給弁18及び逆止弁19は、対応する副室燃料ライン13b上に配置される。点火器20は、対応する副室24(
図2参照)内の混合気を点火する。
【0028】
図2は、
図1に示すガスエンジン1に適用される燃料供給制御装置100の概要構成を気筒4の周辺構成と共に示した概念図である。先ず、
図2を参照して気筒4の周辺構成について説明する。
図2は1つの気筒4のみ図示しているが、他の気筒も同様である。
図2に示すように、気筒4内にはピストン21が往復動可能に挿入される。ピストン21はコネクティングロッド22を介して出力軸2に連結される。気筒4のうちピストン21の上面側の空間は主燃焼室23を成す。主燃焼室23は、隔壁25を介して副室24と区画される一方、隔壁25に形成された連通孔26を介して副室24と連通する。給気ポート7及び排気ポート9は主燃焼室23の天井部位に開口している。給気弁27は給気ポート7を開閉し、排気弁28は排気ポート9を開閉する。
【0029】
隔壁25は、その上部で開放された椀状に形成され、副室24はその内側に形成される。隔壁25は、その下部で主燃焼室23の天井部位を部分的に構成し、連通孔26は当該下部を貫通している。隔壁25は取付具29で上から覆われ、取付具29は、その下部で副室24の天井部位を部分的に構成する。取付具29は、点火器20を収納する点火器孔30と、副室燃料ライン13bの下流端部を構成する燃料通路31とを有する。点火器孔30は取付具29の下部で開口している。
図2では、点火器20として、火花を発生する電極が点火器孔30の開口より副室24内へと突出するよう点火器孔30内で位置決めされた点火プラグを例示しているが、点火器20はパイロット燃料噴射弁でもよい。
【0030】
給気行程では、給気弁27及び主燃料供給弁16が開弁する。燃料供給源からのガス燃料は、主燃料供給弁16を通過し、主燃料ライン13aの下流端に配置された燃料ノズル17より給気ポート7内に噴射され、給気と共に主燃焼室23内へと供給される。圧縮行程では、混合気が主燃焼室23内で圧縮され、圧縮された混合気が連通孔26を介して副室24内にも供給される。点火器20は圧縮行程が終了する時期近傍で作動し、副室24内の混合気を燃焼させる。副室24内で生じた火炎は連通孔26を介して主燃焼室23内へと伝播し、それにより主燃焼室23内の混合気も燃焼する。膨張行程後の排気行程では、排気弁28が排気ポート9を開き、主燃焼室23内及び副室24内の燃焼ガスが排気通路6へと排出される。
【0031】
燃料通路31は、取付具29の下部に形成されて副室24の天井部位に開口する燃料口32を有し、副室燃料ライン13bは、当該燃料口32を介して副室24と連通する。逆止弁19は、副室燃料ライン13b上であって副室燃料供給弁18と副室24との間に介装される。逆止弁19は、副室燃料供給弁18(ひいては燃料供給源)から副室24内へと向かうガス燃料の流れを許容する一方、副室24から副室燃料供給弁18に向かう逆流を阻止する。本実施形態では、逆止弁19は、取付具29に装着されて燃料通路31内に収容され、燃料通路31又は燃料口32を開閉する。逆止弁19は、通常は燃料口32を閉鎖した閉弁状態で前記逆流を阻止し、燃料口32を開放した開弁状態で前記流れを許容する。
【0032】
副室燃料供給弁18は、給気行程中の適時に開弁して圧縮行程中又は排気行程中の適時に閉弁する。副室燃料供給弁18は、電磁弁であり、詳細には、常閉弁であり、また、開閉弁である。なお、
図2では、副室燃料供給弁18を取付具29の外に配置した場合を例示しているが、副室燃料供給弁18は取付具29上又はその内に配置されてもよい。ガスエンジン1には、電磁式の副室燃料供給弁18を制御する制御装置60が設けられる。制御装置60は、副室燃料供給弁18の動作指令値(開弁時期、閉弁時期及び開弁期間)を決め、その動作指令値に従って副室燃料供給弁18を駆動する。
【0033】
副室燃料供給弁18の開弁期間中、燃料供給源からのガス燃料は、副室燃料供給弁18を通過し、燃料通路31内へと供給される。逆止弁19は副室燃料供給弁18の開弁に応答するように開弁し、それによりガス燃料が逆止弁19を通過し、燃料口32を介して副室24内へと供給される。副室燃料供給弁18が閉弁すると、逆止弁19もこれに応答するように閉弁し、ガス燃料の副室24への供給が止まる。逆止弁19は、副室燃料供給弁18の閉弁期間中である膨張行程及び排気行程で、燃焼ガスが副室24から副室燃料ライン13bに沿って逆流するのを阻止し、それにより電磁式である副室燃料供給弁18を燃焼ガスから保護する。
【0034】
副室24内の混合気は、主燃焼室23から供給された混合気に副室燃料ライン13bに導かれたガス燃料を混合したものとなり、主燃焼室23内の混合気よりもリッチに調製される。副室燃料供給弁18の開弁期間は、副室24内で生成される混合気の空気過剰率が所要値となるために必要な燃料量を燃料口32から副室24内へと供給できるように、エンジン運転状態に応じて決められる。燃料圧は共通ライン12上で概して一定に調整されているため、開弁期間の調整を通じて副室燃料供給弁18を通過する燃料量を調整可能である。副室燃料供給弁18の開弁時期及び閉弁時期は、副室24の内圧が圧縮行程の進行のため上昇途上にあっても当該内圧に対抗して上記必要な燃料量を燃料口32から副室24内へと適切に供給できるように、また、燃料口32から供給されたガス燃料を点火時期までに副室24内に満遍無く行き渡らせて燃料濃度分布を副室24内で均一化できるように、エンジン運転状態に応じて決められる。
【0035】
このように決められた動作指令値(開弁時期、閉弁時期及び開弁期間)に従って副室燃料供給弁18が動作することで、エンジン運転状態に応じてガス燃料を副室24内に適時適量供給し、副室24内の混合気の空気過剰率及び燃料濃度分布を目標どおりに制御することが図られる。これにより、副室24内の燃焼状態を正常に保ち、ひいては主燃焼室23に火炎を適切に伝播させて主燃焼室23内の燃焼状態を正常に保ち、気筒4内の燃焼効率を高め、排ガス中成分を改善することが図られる。
【0036】
副室燃料供給弁18を通過したガス燃料は、逆止弁19を通過しなければ副室24内に到達し得ないので、上記制御目的の達成には、副室燃料供給弁18の開閉に対する逆止弁19の応答性が想定どおりであることを要求される。そこでこのガスエンジン1には、逆止弁19の動作を当初の想定どおりに維持するための制御を実行する燃料供給制御装置100が適用されている。この燃料供給制御装置100によれば、逆止弁19に劣化や噛込みや個体差が生じても、また、逆止弁19がアクティブに開閉制御できない動弁方式(例えば、バネ式及び磁石式)を採用していても、逆止弁19の動作を安定化させ続けることができる。
【0037】
[燃料供給制御装置]
燃料供給制御装置100は、前述の副室燃料供給弁18、逆止弁19及び制御装置60の他、弁状態検出装置51及び回転角度検出装置56を備える。副室燃料供給弁18、逆止弁19及び弁状態検出装置51は気筒4毎に設けられる(
図1参照)。回転角度検出装置56及び制御装置60は単一であり複数の気筒4に共通している。回転角度検出装置56は、出力軸(クランクシャフト)2の回転角度又は図示しないカムシャフトの回転角度の少なくとも一方の回転角度を検出する。制御装置60は、例えばCPU、ROM、RAM及び入出力インターフェイスを主体に構成される。制御装置60の出力側は、複数の気筒4それぞれに設けられた複数の副室燃料供給弁18に接続されている。制御装置60は、副室燃料供給弁18毎にその動作指令値を決める。制御装置60の出力側は、主燃料供給弁16及び点火器20に接続されていてもよい。
【0038】
制御装置60の入力側は、複数の弁状態検出装置51及び単一の回転角度検出装置56に接続されている。各弁状態検出装置51は、対応する逆止弁19の動作状態を検出する。動作状態には、逆止弁19が開弁状態であるか否かが含まれる。また、後述のように逆止弁19がリフト逆止弁であれば、動作状態には逆止弁19のリフト量が含まれてもよい。そして制御装置60が、リフト量を参照して開弁状態であるか否かを計測してもよい。
【0039】
図3は、
図2に示す逆止弁19及び弁状態検出装置51の構成の一例を示す概念図である。
図3に示すように、逆止弁19は、副室24に開口する燃料口32を閉鎖する閉鎖位置と当該閉鎖位置から離れた全開位置との間で移動するのを許容された弁体41を有する。弁体41が閉鎖位置から全開位置に向けて移動することで燃料口32が開放される。
【0040】
本実施形態では、逆止弁19が、燃料圧の作用で弁体41を移動させるという動弁方式を採用したリフト逆止弁で構成され、ポペット式である。具体的には、弁棒42が、燃料口32内に移動可能に燃料通路31内に収容され、その移動方向開き側(
図4紙面の下側)の端部42aで、低背円錐形状又は茸状の弁体41の頂部41aに連結される。副室燃料供給弁18が閉弁すると、燃料通路31への燃料供給が止まり、弁体41及び弁棒42が付勢部材43の付勢力で移動方向閉じ側(
図4紙面の上側)に付勢され、弁体41のフェース部41bが燃料口32周囲の弁座32aに副室24内から着座し、弁体41及び弁棒42が閉鎖位置で停止し、燃料口32が閉鎖され、逆止弁19が閉弁状態になる。副室燃料供給弁18が開弁すると、弁体41のフェース部41bのうち燃料通路31内に臨んだ面が燃料圧を受圧し、弁体41及び弁棒42が付勢力に抗して閉鎖位置から移動方向開き側に移動することができる。これにより弁体41が弁座32aから離間し、燃料口32が開放され、逆止弁19が開弁状態になる。全開位置は、閉鎖位置から移動方向開き側に最大リフト量LMだけ離れている。弁体41及び弁棒42は、その移動方向(すなわち、弁棒42の軸線方向、燃料口32の法線方向且つ弁座32aから直角方向)開き側に、閉鎖位置から全開位置まで移動するのを許容される。
【0041】
図3では、付勢部材43として、弾発力を前述の付勢力として発揮するバネを例示しているが、付勢部材43は、磁着力を前述の付勢力として発揮する磁石でもよい(すなわち、動弁方式はバネ式に限られず磁石式でもよい)。
図3では、バネとして、弁棒42の外周側に配置されて燃料通路31内で弁棒42の移動方向に変形するコイル式を例示しているが、バネの配置及び形状は適宜変更可能である。逆止弁41はポペット式に限られず、ニードル式やボール式など、他形式に適宜変更可能である。
【0042】
本実施形態では、弁状態検出装置51がギャップセンサで構成される。ギャップセンサは、弁棒42の移動方向閉じ側(
図4紙面の上側)の端部42bから該閉じ側に離れて配置されるように取付具29に装着され、自身と弁棒42(特に、弁棒42の閉じ側端部42b)との間のギャップGを検出する。ギャップセンサの検出方式は特に限定されず、例えば渦電流式や静電容量式や超音波式等を採用可能である。ギャップGは弁体41及び弁棒42のリフト量Lに応じて変わる。ギャップセンサが本構成において検出可能なギャップ範囲のうち最小値Gmを検出するとき、弁体41及び弁棒42のリフト量Lはゼロであり、弁体41及び弁棒42は閉鎖位置にある。ギャップセンサが前記ギャップ範囲のうち最大値GMを検出するとき、弁体41及び弁棒42のリフト量Lは前述の最大リフト量LMであり、弁体41及び弁棒42は全開位置にある。このようにギャップセンサは、実質的にリフト量Lを検出するリフト量センサとして機能する。
【0043】
図4は、
図2に示す燃料供給制御装置100の構成を示すブロック図である。回転角度検出装置56は、給気、圧縮、膨張及び排気の4行程で構成される1エンジンサイクル内での回転角度を検出する。「回転角度」は、1エンジンサイクル(すなわち、ピストン21が2往復して出力軸2が2回転する期間)内でのピストン21の位置及びクランク角(出力軸2の回転角)に相当する。なお、
図2では、回転角度検出装置56として、出力軸2付近に配置されてクランク角を検出するクランク角センサを例示しているが、給排気弁27,28の駆動用カムシャフトのように出力軸2と連動する回転部材の回転角を検出してもよい。
【0044】
制御装置60は、回転角度検出装置56からの信号に基づいてエンジン回転数(出力軸2の角速度)を計測することができる。よって、回転角度検出装置56は、エンジン運転状態の一例としてのエンジン回転数を検出する回転数検出装置としての機能を有し、エンジン運転状態を検出する運転状態検出装置55の一例でもある。
【0045】
制御装置60の入力側は、エンジン運転状態を検出する運転状態検出装置55とも接続されている。運転状態検出装置55には、ガスエンジン1の負荷又は制御装置60が負荷の推定演算を実行するために必要なパラメータを検出する負荷検出装置や、冷却水温を検出する水温検出装置や、排気温を検出する排気温検出装置や、過給圧を検出する過給圧検出装置や、ガス燃料の性状(例えば、元圧又はメタン価)又は制御装置60が燃料性状の推定演算を実行するために必要なパラメータを検出する燃料性状検出装置が含まれてもよい。すなわち、エンジン運転状態に、エンジン回転数、負荷、冷却水温、排気温、過給圧及び燃料性状が含まれてもよい。
【0046】
制御装置60は、弁状態検出装置51、回転角度検出装置56及び運転状態検出装置55による検出値を微小な所定制御周期(例えば、5msec)おきに逐次入力する。制御装置60は、弁状態検出装置51及び回転角度検出装置56からの信号に基づいて逆止弁19の動作状態を回転角度と対応付けて実動作状態を計測し、当該計測された実動作状態を目標動作状態に近付けるように副室燃料供給弁18の動作指令値を補正し、当該動作指令値に従って副室燃料供給弁18を駆動する。言い換えれば、制御装置60は、逆止弁19の動作状態について回転角度と関連付けしてフィードバック制御を実行するにあたり、副室燃料供給弁18を操作する。また、制御装置60は、運転状態検出装置55からの信号に基づいて、副室燃料供給弁18の補正前の動作指令値と、逆止弁19の目標動作状態とを設定する。
【0047】
制御装置60は、かかる制御を実行するための機能ブロックとして、指令値設定部61、計測部62、目標状態設定部63、目標状態記憶部64、比較部65、指令値決定部66及び駆動部67を有する。指令値設定部61、計測部62、目標状態設定部63、比較部65及び指令値決定部66は、制御装置60のソフトウェア要素(例えば、ROMに予め記憶されたプログラム)で実現される。目標状態記憶部64は、制御装置60のハードウェア要素(例えば、ROM)で実現され、駆動部67は、制御装置60の又はその出力側に接続されるハードウェア要素(例えば、副室燃料供給弁18のためのドライバ)で実現される。
【0048】
図5は、
図4に示す制御装置60により実行される燃料供給制御の手順を示すフローチャートである。以下、
図5に示す手順に沿って
図4に示すブロック61〜67の動作又は作用について説明し、ガスエンジン1及び燃料供給制御装置100の構成要素には
図1〜
図4に付された参照符号を適宜付す。
図5に示す一連の処理は、1エンジンサイクル毎に実行される。所定複数のエンジンサイクルが経過するたび1回ずつ実行されてもよいし、所定実時間が経時するたび1回ずつ実行されてもよい。
【0049】
図5に示すように、先ず、指令値設定部61が、運転状態検出装置55からの信号に応じて副室燃料供給弁18の動作指令値を設定する(ステップS11)。目標状態設定部63が、運転状態検出装置55からの信号に基づいて逆止弁19の目標動作状態を設定する(ステップS12)。計測部62が、弁状態検出装置51及び回転角度検出装置56からの信号に基づいて逆止弁19の動作状態を回転角度と対応付けて計測し、逆止弁19の実動作状態を得る(ステップS13)。ステップS11〜S13の順序は、適宜変更可能である。
【0050】
(補正前動作指令値の設定)
ステップS11において、動作指令値は、副室燃料供給弁18の開弁時期、閉弁時期及び開弁期間を含むが、これら3つのうち2つを設定すると残り1つが自ずと決まる。このため、指令値設定部61は、少なくとも2つの動作指令値を設定すればよい。ここでは説明の便宜上、動作指令値として開弁時期及び閉弁時期を設定するものとする。
【0051】
動作指令値は、前述のとおりガス燃料を副室24に適時適量供給し、副室24内で生成される混合気の空気過剰率を目標値とし且つ燃料濃度分布を副室24内で均一化すべく、エンジン運転状態に応じて決められる。図示省略するが、制御装置60はエンジン運転状態に応じた動作指令値の対応関係(例えば、マップ又は演算式)を予め記憶しており、指令値設定部61は当該対応関係に従って動作指令値を決める。
【0052】
(実動作状態の計測)
図6は、
図3に示す逆止弁19の実動作状態の一例と目標動作状態の一例とを概念的に示すグラフである。
図6では、回転角度が進行していくにつれてどのようにして逆止弁19のリフト量Lが推移するのかを示す移動量推移が、横軸に回転角度をとり縦軸にリフト量Lをとった二次元直交座標系で、直線及び/又は曲線として表されている。二点鎖線は、弁状態検出装置51の一例であるギャップセンサで検出されたリフト量を回転角度検出装置56の一例であるクランク角センサで検出されるクランク角と対応付けて計測することによって得られた実移動量推移Crの一例を表している。実線は、制御装置60が予め記憶し又はエンジン運転状態に応じて設定する目標移動量推移Ciの一例を表している。以降の説明では、上記直交座標系で表される直線及び/又は曲線を「リフトカーブ」と称する場合もある。
【0053】
ステップS13において、計測部62は、回転角度と対応付けた逆止弁19の実動作状態として、逆止弁19が閉弁状態から開弁状態に切り換わる実時期(回転角度)である実開弁時期Tr1と、逆止弁19が開弁状態から閉弁状態に切り換わる実時期(回転角度)である実閉弁時期Tr2とを計測する。後に詳述するが、計測部62は、実移動量推移Crを表す実リフトカーブの実積分値Sr(
図9参照)も計測する。
【0054】
弁状態検出装置51がリフト量Lを検出する構成となっているので、制御装置60は、実移動量推移Crの実積分値Srを計測することができる。逆に、弁状態検出装置51は開弁状態であるか否かを直接的に検出する構成とはなっていないが、制御装置60は、回転角度と対応付けられたリフト量Lを開弁判定のための閾値L1と閉弁判定のための閾値L2とそれぞれ比較することで、状態切換え時期(実開弁時期Tr1及び実閉弁時期Tr2)を計測することができる。
図6では、説明の便宜のため、2つの閾値L1,L2として、互いに異なるゼロよりも大きい一定値を例示しているが、閾値L1,L2は、一定値としてのゼロに設定されてもよく(
図8参照)、互いに同じ値に設定されてもよく(
図8参照)、エンジン運転状態に応じて可変的に設定されてもよい(図示省略)。
【0055】
計測部62は、増加傾向にあるリフト量Lが開弁閾値L1と等しく又はこれを上回った時期(回転角度)を実開弁時期Tr1として計測する。また、計測部62は、減少傾向にあるリフト量Lが閉弁閾値L2と等しく又はこれを下回った時期(回転角度)を実閉弁時期Tr2として計測する。例えば開弁閾値L1が一定値としてのゼロである場合(
図8参照)、計測部62は、リフト量Lがゼロから増加に転じてゼロを上回った時期Trs(すなわち、弁体41及び弁棒42が閉鎖位置から開き側に移動開始した時期)を実開弁時期Tr1として計測する。例えば閉弁閾値L2が一定値としてのゼロである場合(
図8参照)、計測部62は、リフト量Lが正からゼロに等しくなった時期Tre(すなわち、閉じ側に移動している弁体41及び弁棒42が閉鎖位置で停止した時期)を実閉弁時期Tr2として計測する。
【0056】
(目標動作状態の設定)
ステップS12において、目標状態設定部63は、目標動作状態を設定し、例えば目標動作状態には、目標開弁時期Ti1、目標閉弁時期Ti2及び目標積分値Si(
図9参照)が含まれる。
【0057】
目標開弁時期Ti1は、リフト量Lが実開弁時期Tr1の計測に用いる条件と同一の条件を充足するべき目標時期である。例えば開弁閾値L1がゼロであれば、目標開弁時期Ti1は、リフト量Lがゼロから増加に転じてゼロを上回るべき目標時期Tisである(
図8参照)。目標閉弁時期Ti2は、リフト量Lが実閉弁時期Tr2の計測に用いる条件と同一の条件を充足すべき目標時期である。例えば閉弁閾値L2がゼロであれば、目標閉弁時期Ti2は、リフト量Lが正からゼロに等しくなるべき目標時期Tieである(
図8参照)。
【0058】
図6に示す目標移動量推移Ciの一例によれば、リフト量Lは、目標開弁時期Ti1からの微小な期間内で開弁閾値L1から最大リフト量LMまで増加し、或る期間最大リフト量LMを維持し、副室燃料供給弁18の閉弁後これに応答するようにして目標閉弁時期Ti2までの微小な期間内で最大リフト量LMから閉弁閾値L2まで減少する。
図6では、最大リフト量LMへの増加傾向及び最大リフト量からの減少傾向として、線形を例示しているが、これらの傾向は非線形に変更可能である。
【0059】
指令値設定部61は副室燃料供給弁18の動作指令値をエンジン運転状態に応じて設定するところ、この副室燃料供給弁18の動作に逆止弁19の動作を適切に応答させるため、目標状態設定部63は、目標開弁時期Ti1及び目標閉弁時期Ti2をエンジン運転状態に応じて設定する。すなわち、目標移動量推移Ciの始期Tis及び終期Tieが、エンジン運転状態(ひいては副室燃料供給弁18の開弁時期、閉弁時期及び開弁期間)に応じて変更される。
【0060】
例えば、目標開弁時期Ti1は、エンジン運転状態に応じて決まる副室燃料供給弁18の開弁時期に、必要とされる応答性を加味した時期であり、副室燃料供給弁18の開弁時期と同時又はその直後の適時となるよう、エンジン運転状態に応じて設定される。目標閉弁時期Ti2も同様であり、副室燃料供給弁18の閉弁時期と同時又はその直後の適時となるよう、エンジン運転状態に応じて設定される。
【0061】
図7(a)は、目標動作状態の設定に用いる運転領域の一例を概念的に示すグラフ、
図7(b)は、目標動作状態の設定の一例を示すグラフ、
図7(c)は、目標動作状態の設定の他例を示すグラフである。目標状態設定部63は、運転状態検出装置55からの信号に基づいてエンジンの運転領域を特定する。
図7(a)に例示するように、運転領域は、エンジン回転数の領域a〜cと負荷の領域I〜IVとの組合せ(例えばI-a, II-bなど)で構成されてもよい。他のエンジン運転状態が用いられてもよい。
【0062】
図7(b)に示すように、目標状態記憶部64は、複数の運転領域それぞれに対応した複数の目標移動量推移Ciを予め記憶していてもよい。この場合、目標状態設定部63は、特定された運転領域に応じて、複数の目標移動量推移Ciから1つの目標移動量推移Ciを選択設定する。
図7(c)に示すように、目標状態記憶部64は、単一の目標移動量推移Ciを記憶していてもよい。この場合、目標状態設定部63は、特定された運転領域に応じて目標移動量推移Ciを補正し、それによりエンジン運転領域に応じた目標移動量推移Ciを設定する。例えば、運転領域が高負荷域又は高回転域であると、必要な燃料量が比較的多くなるので、目標開弁期間は比較的長くなるように設定される。
【0063】
なお、目標移動量推移Ci(目標リフトカーブ)は、説明の便宜のため図示されている。目標移動量推移Ciが実移動量推移Crと直接的に比較されない限りにおいては、目標状態記憶部64は、目標移動量推移Ciそのものを記憶していなくてもよい。本実施形態のように目標移動量推移Ciを表す目標リフトカーブの目標積分値Ciが実測値と比較対象となる場合であっても、目標積分値Ciは目標リフトカーブが定めれば事前に取得可能な値であるので、その目標積分値Ciを記憶しておけばよい。
【0064】
(動作指令値の補正)
図5に戻り、ステップS11〜S13の後、比較部65は、計測部62で計測された実動作状態を目標状態設定部63で設定された目標動作状態と比較し、比較結果に基づいて副燃料噴射弁18の開弁時期及び閉弁時期を補正する。
【0065】
比較部65は、実開弁時期Tr1の目標開弁時期Ti1に対する偏差が許容範囲ΔTp1(
図8参照)内にあるか否かを判定し(ステップS21)、偏差が許容範囲ΔTp1内になければ(S21:NO)、実開弁時期Tr1が目標開弁時期Ti1に対して進角しているのか否かを判定する(ステップS22)。この許容範囲ΔTp1はゼロを含む概念であり、ステップS21において、実開弁時期Tr1が目標開弁時期Ti1と一致しているか否かを判定してもよい。後述のステップS31でも同様である。
【0066】
実開弁時期Tr1が目標開弁時期Ti1に対して許容範囲ΔTp1を超えて進角している場合(S22:YES)、指令値決定部66が、指令値設定部61で設定された副室燃料供給弁18の開弁時期を遅角補正する(ステップS23)。実開弁時期Tr1が目標開弁時期Ti1に対して許容範囲ΔTp1を超えて遅角している場合(S22:NO)、指令値決定部66が、指令値設定部61で設定された副室燃料供給弁18の開弁時期を進角補正する(ステップS24)。進角及び遅角補正量は、偏差に関わらず予め定められた一定値であってもよく、偏差に応じて比例的に設定されてもよく、比例的に設定する場合には補正量上限を定めてもよい。後述のステップS33,S34でも同様である。
【0067】
開弁時期の補正後はステップS31に進む。また、実開弁時期Tr1が目標開弁時期Ti1に対して許容範囲ΔTp1内にあれば(S21:YES)、指令値決定部66は、指令値設定部61で設定された開弁時期を補正せず、ステップS31に進む。
【0068】
比較部65は、実閉弁時期Tr2の目標閉弁時期Ti2に対する偏差が許容範囲ΔTp2(
図8参照)内にあるか否かを判定し(ステップS31)、偏差が許容範囲内になければ(S31:NO)、実閉弁時期Tr2が目標閉弁時期Ti2に対して進角しているのか否かを判定する(ステップS32)。
【0069】
実閉弁時期Tr2が目標閉弁時期Ti2に対して許容範囲ΔTp2を超えて進角している場合(S32:YES)、指令値決定部66が、指令値設定部61で設定された副室燃料供給弁18の閉弁時期を遅角補正する(ステップS33)。実閉弁時期Tr2が目標閉弁時期Ti2に対して許容範囲ΔTp2を超えて遅角している場合(S32:NO)、指令値決定部66が、指令値設定部61で設定された副室燃料供給弁18の閉弁時期を進角補正する(ステップS34)。
【0070】
閉弁時期の補正後はステップS41に進む。また、実閉弁時期Tr2が目標閉弁時期Ti2に対して許容範囲ΔTp2内にあれば(S31:YES)、指令値決定部66は指令値設定部61で設定された閉弁時期を補正せず、ステップS41に進む。
【0071】
駆動部67は、指令値決定部66で決められた開弁時期で副室燃料供給弁18が開弁するように、指令値決定部66で決められた閉弁時期で副室燃料供給弁18が閉弁するように、副室燃料供給弁18を駆動する。なお、開弁時期の補正に関連するステップS21〜24は、閉弁時期の補正に関連するステップS31〜S34の後に実行されてもよい。
【0072】
図8(a)は、実開弁時期Tr1が目標開弁時期Ti1に対して遅角し且つ実閉弁時期Tr2が目標閉弁時期Ti2に対して進角している場合の一例を示すグラフ、
図8(b)は、実開弁時期Tr1が目標開弁時期Ti1に対して進角し且つ実閉弁時期Tr2が目標閉弁時期Ti2に対して遅角している場合の一例を示すグラフ、
図8(c)は、実動作状態が目標動作状態に略適合する場合の一例を示すグラフである。
【0073】
図8(a)に示すように、実開弁時期Tr1が目標開弁時期Ti1に対して遅角している場合には、逆止弁19の応答性が何らかの理由で当初の想定から悪くなり過ぎているものと考えられる。上記制御によれば、このような状況下で副室燃料供給弁18の開弁時期が進角補正されるので(
図5のステップS22,S24参照)、逆止弁19の応答性の変化が相殺され、逆止弁19の実開弁時期Tr1が進角するように修正される。これにより逆止弁19の実開弁時期Tr1を目標開弁時期Ti1に近付けることができる(
図8(c)参照)。実閉弁時期Tr2が目標閉弁時期Ti2に対して遅角している場合も、同様である(
図5のステップS32,S34、
図8(b)及び(c)参照)。
【0074】
図8(b)に示すように、実開弁時期Tr1が目標開弁時期Ti1に対して進角している場合には、逆止弁19の応答性が何らかの理由で当初の想定から良くなり過ぎているものと考えられる。上記制御によれば、このような状況下で副室燃料供給弁18の開弁時期が遅角補正されるので(
図5のステップS22,S23参照)、逆止弁19の応答性の変化が相殺され、逆止弁19の実開弁時期Tr1が遅角するように修正される。これによりお逆止弁19の実開弁時期Tr1を目標開弁時期Ti1に近付けることができる(
図8(c)参照)。実閉弁時期Tr2が目標閉弁時期Ti2に対して進角している場合も、同様である(
図5のステップS32,S33、
図8(a)及び(c)参照)。
【0075】
上記のように本実施形態に係る燃料供給制御装置100では、逆止弁19の実開弁時期Tr1及び実閉弁時期Tr2のフィードバック制御が実行され、当該フィードバック制御において副室燃料供給弁18が操作される。エンジンサイクルの経過に伴ってこのフィードバック制御は何度も繰り返される。逆止弁19の経年劣化や異物噛込みが生じても、また、逆止弁19がその開閉をアクティブに制御することができない動弁方式を採用していても、これに対応して逆止弁19の実開弁時期Tr1及び実閉弁時期Tr2を目標開弁時期Ti1及び目標閉弁時期Ti2それぞれに収束させることができ、副室24内にガス燃料を適時適量供給し続けることができる。したがって、副室24への実際の燃料供給開始時期、燃料供給終了時期を適切に制御できるため、副室24の燃焼状態を正常に維持し、ひいては主燃焼室23の燃焼効率や排ガス成分を改善することができる。
【0076】
また、現在稼働中の副室式ガスエンジンに関しても、エンジン本体(例えばシリンダヘッド周り)の大幅な形状変更を伴わずに(すなわち、弁状態検出装置51を逆止弁19付近に取り付け、計測部62、目標状態設定部63、比較部65及び設定値決定部66を実現するソフトウェア要素を制御装置60に追加すれば)、かかる作用をもたらす燃料供給制御装置100を製作することができる。本実施形態は、このように容易にレトロフィット可能である点に照らしても有益である。
【0077】
また、本実施形態に係る燃料供給制御装置100では、気筒4に個別対応する複数の副室燃料供給弁18それぞれに動作指令値を求め、各副室燃料供給弁18を互いに独立して駆動制御する。このため、副室燃料供給弁18に対する逆止弁19の応答性に気筒4間で個体差があっても、副室燃料供給弁18の開弁時期及び閉弁時期の補正によって当該個体差を相殺することができる。したがって、全ての気筒4においてガス燃料を副室24内に適時適量供給することができ、気筒4の負荷分担を均一化することができる。
【0078】
(積分値の比較)
図5に戻り、動作指令値の補正要否判定のため及び補正要の場合における補正量決定のためのステップS21〜S24,S31〜S34の後、計測部62が、逆止弁19の移動量推移の実積分値Sr(
図9参照)を計測し、目標状態設定部63が、逆止弁19の移動量推移の目標積分値Si(
図9参照)を設定する(ステップS41)。次に、比較部65が、実積分値Srを目標積分値Siと比較し、実積分値Srの目標積分値Siに対する比率又は偏差が許容範囲内にあるか否かを判定する(ステップS42)。例えば比較部65は、実積分値Srが目標積分値Siの所定割合α以上であるか否か(Sr≧Si×α,α<100%)を判定する。比率又は偏差が許容範囲内にあれば(S42:YES)、一連の処理を終了し、再びステップS11に戻って次回の処理が再開する。比率又は偏差が許容範囲内になければ(S42:NO)、制御装置60は異常信号を出力する(ステップS43)。
【0079】
図9は、
図3に示す逆止弁19の動作量推移の実積分値Srの一例と、目標積分値Siの一例とを概念的に示すグラフである。
図9では、
図6と同様、実移動量推移Cr及び目標移動量推移Ciの一例が、横軸に回転角度をとり縦軸にリフト量Lをとった二次元直交座標系でリフトカーブとして表されている。
【0080】
実積分値Srは、実移動量推移Crを表す実リフトカーブの時間積分値である(
図9の右下向きハッチ域を参照)。リフト量Lは微小な所定制御周期ΔT(例えば5msec)おきに制御装置60に逐次入力されることに照らして、計測部62は、リフト量Lがゼロから増加に転じた時期Trsからリフト量Lがゼロに戻った時期Treまでの期間Dr内に逐次入力されたリフト量Lを総積算することで求められてもよい。また、実積分値Srは、実リフトカーブを表す関数を同期間Dr内で積分することで求めてもよい。なお、開弁閾値L1がゼロであれば、実開弁時期Tr1が前記時期Trsと等しくなって積分区間の区間下端となる。閉弁閾値L2がゼロであれば、実閉弁時期Tr2が前記時期Treと等しくなって積分区間の区間上端となる。本実施形態では、弁状態検出装置51にリフト量Lを検出するギャップセンサを採用しているので、計測部62が実積分値Srを測定することができる。
【0081】
このように計測部62が実積分値Srを計測するので、制御装置60(例えば、目標状態記憶部64)は、移動量推移の目標積分値Siを予め記憶している。目標積分値Siは、目標移動量推移Ciを表す目標リフトカーブの時間積分値であり(
図9の左下向きハッチ域を参照)、目標移動量推移Ciを定めれば取得可能な値である。
【0082】
このようにして得られる積分値Sr,Siは、逆止弁19を通過して副室24に供給されるガス燃料量と正の相関を有している。一方、前述のとおり、逆止弁19の実開弁時期Tr1及び実閉弁時期Tr2は目標開弁時期Ti1及び目標閉弁時期Ti2それぞれに近付くように制御されている。このため、実積分値Srが目標積分値Siに対して顕著に小さい値であるときには、弁体41が正常に移動し得なかったり、燃料元圧が低下していたり、副室燃料ライン13bのうち副室燃料供給弁18と逆止弁19との間で燃料が漏れていたりする等、副室燃料供給弁18の動作指令値を補正するだけでは対処しきれない何らかの異常が発生している状況下にあると推定できる。このような状況下にあれば、副室24内の燃焼状態を正常に維持してガスエンジン1を稼働し続けることは困難である。本実施形態では実積分値Srの目標積分値Siに対する比率又は偏差が許容範囲内になければ、異常信号が出力される。つまり、制御装置60は、弁状態検出装置51及び回転角度検出装置56からの信号に基づいて、回転角度と対応付けた逆止弁19の弁体41の移動量に関する移動量推移の実積分値Srを計測し、この実積分値Srと移動量推移の目標積分値Siとの比較結果に基づいて逆止弁19が正常に働いているか否かを判断する。このように、本実施形態に係るガスエンジン1は、この異常信号に基づいてフェイルセーフ制御を開始したりガスエンジン1の運転を停止したりすることができ、上記のような状況にも好適に対処することができる。
【0083】
これまで実施形態について説明したが、上記構成は一例に過ぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜変更、削除及び追加することができる。例えば、上記実施形態では、副室燃料ラインに単一の逆止弁を設けているが、複数の逆止弁が直列に並んでいてもよい。この場合、最下流に配置された逆止弁の動作状態を上記同様にフィードバック制御すれば、上記同様の作用効果を得ることができる。