【文献】
MIZUTANI, Takayoshi, et al.,Advanced Structural Ceramics -From Research to Applications-,Journal of the Ceramic Society of Japan,2006年,114(1335),p.905-910
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記隔壁が、コージェライト、炭化珪素、酸化アルミニウム、チタン酸アルミニウム、ムライト、窒化アルミからなる群より選択される少なくとも一種を主成分として含む材料からなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0018】
(1)ハニカム構造体:
まず
、ハニカム構造体の一の実施形態について説明する。本実施形態のハニカム構造体は、
図1〜
図3に示すように、流体の流路となる第一端面11から第二端面12まで延びる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1と、この隔壁1を囲繞するように最外周に配設された外周壁3と、を備えたものである。そして、このハニカム構造体100は、隔壁1の40〜800℃における熱膨張係数が、1.0×10
−6〜7.0×10
−6/Kである。更に、ハニカム構造体100は、外周壁3の表面の表面粗さが、0.5〜4.0μmである。
【0019】
このようなハニカム構造体100は、熱応力によるハニカム構造体100の破損が有効に防止されたものである。即ち、本実施形態のハニカム構造体100は、外周壁3の表面の表面粗さが、0.5〜4.0μmであるため、ハニカム構造体100の外周壁3に対して、均等な面圧を掛けることができる。このため、例えば、ハニカム構造体100を、排ガス浄化装置の缶体内に収納して、排ガス中の有害成分を浄化するために用いた際に、ハニカム構造体100の外周壁3に対して、均等な面圧を掛けることができる。したがって、ハニカム構造体100の外周壁3に大きな面圧を掛けることが可能となり、隔壁1の熱膨張係数を高くしても、クラックなどの破損が生じ難くなる。即ち、このハニカム構造体100は、熱膨張によって破損し易い高熱膨張係数の隔壁1を有しているが、その一方で、外周壁3の表面粗さを小さくすることにより、熱膨張時に外周壁3に掛かる応力を均等に分散させて、ハニカム構造体100の破損を抑制できる。例えば、外周壁3の表面の表面粗さが4.0μmを超えるものであると、排ガス浄化装置の缶体内に収納して用いた際に、外周壁3の表面に均等に応力が加わらず、局所的な応力集中が生じることがある。そして、熱膨張係数が1.0×10
−6〜7.0×10
−6/Kのような高熱膨張係数の隔壁1では、温度が低くとも、その熱膨張量が大きくなるため、上述した応力集中によってハニカム構造体が破損してしまうことがある。なお、上述した外周壁3に加わる応力とは、例えば、外周壁3を缶体内に保持・固定するために用いられる保持材が、外周壁3の熱膨張を押さえ付けようとする際に生じる応力のことである。
【0020】
また、本実施形態のハニカム構造体100は、自動車のエンジンなどの内燃機関から排出される排ガス中の有害成分を浄化するための触媒を担持させるための触媒担体として好適に用いることができる。従来のハニカム構造体においては、隔壁の熱膨張係数と触媒の熱膨張係数との差が大きかったため、隔壁に担持させた触媒からなる触媒層が、隔壁の熱膨張により剥離してしまうことがあった。特に、アルミナや、ゼオライト、バナジウムなどの触媒を隔壁に担持させた場合には、上記触媒層の剥離が極めて顕著であった。アルミナや、ゼオライト、バナジウムなどの触媒の熱膨張係数は、従来のハニカム構造体における隔壁の熱膨張係数と比較して、高いものであった。そのため、隔壁の熱膨張係数を1.0×10
−6〜7.0×10
−6/Kとすることで、隔壁の熱膨張係数を、触媒の熱膨張係数に近づけ、隔壁に触媒を担持させた場合でも、当該触媒からなる触媒層の剥離を抑制するものとした。
【0021】
ここで、
図1は
、ハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図2は
、ハニカム構造体の一の実施形態の、第一端面を模式的に示す平面図である。
図3は
、ハニカム構造体の一の実施形態の、セルの延びる方向に平行な断面を模式的に示す断面図である。
【0022】
ハニカム構造体の形状については特に制限はない。例えば、ハニカム構造体の形状としては、ハニカム構造体の端面が円形の筒状(円筒形状)、上記端面がオーバル形状の筒状、上記端面が多角形の筒状の形状を挙げることができる。多角形としては、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等を挙げることができる。
図1〜
図3においては、ハニカム構造体の形状が、端面が円形の筒状である場合の例を示す。
【0023】
ハニカム構造体100は、上述したように、多孔質の隔壁1と、隔壁1を囲繞するように最外周に配設された外周壁3と、を備えたものである。外周壁3は、ハニカム構造体100を作製する過程において、ハニカム成形体を押出成形する際に、隔壁1とともに形成されたものであってもよい。また、押出成形時には外周壁を形成しなくともよい。例えば、セル2を区画形成する隔壁1の外周部分に、セラミック材料を塗工して外周壁3を形成することもできる。更に、ハニカム構造体100の外周部分を研削して一度除去し、隔壁1を囲繞するようにセラミック材料を塗工して外周壁3を形成することもできる。
【0024】
上述したように、外周壁3は、その表面の表面粗さが0.5〜4.0μmである。外周壁の表面粗さは、軸方向の算術平均粗さを、Taylor Hobson社製のPGI式粗さ測定機によって測定することによって求めることができる。軸方向とは、ハニカム構造体の第一端面から第二端面に向かう方向のことである。表面粗さの測定は、例えば、第一端面側の端部付近、上記軸方向の中央部付近、及び第二端面側の端部付近の3箇所で行うことが好ましい。具体的には、ハニカム構造体の周方向に45度ずつ、側面の第一端面側の端部、軸方向の中央部、及び第二端面側の端部の3箇所ずつ測定することがより好ましい。外周壁3の表面の表面粗さは、0.8〜3.0μmであることが好ましく、0.8〜2.6μmであることが更に好ましい。外周壁3の表面粗さが4.0μmを超えると、外周壁3の表面粗さが粗すぎて、外周壁3の表面に掛かる応力が均等に分散せず、大きな面圧が掛かった際に、外周壁3に破損を生じることがある。外周壁3の表面粗さは、より小さくすることが好ましいが、製造時の外周壁3の表面加工に要するコスト及び時間の観点から、0.5μmを下限値とした。
【0025】
外周壁3は、外周壁3の表面に研磨処理が施されたものであることが好ましい。研磨処理の具体的な方法については特に制限はなく、外周壁3の表面の表面粗さを、0.5〜4.0μmにすることができる研磨処理であればよい。例えば、研磨処理としては、サンドペーパー等で外壁表面を研磨する方法などを挙げることができる。
【0026】
本実施形態のハニカム構造体100においては、外周壁3の厚さが、1.0〜3.0mmであることが好ましく、1.0〜2.5mmであることが更に好ましく、1.5〜2.5mmであることが特に好ましい。このような厚さの外周壁3を備えることにより、隔壁1の熱膨張係数が大きくても、ハニカム構造体のアイソスタティック強度が向上し、熱衝撃によってより破損し難くなる。更に、ハニカム構造体のアイソスタティック強度を適度に維持しつつ、セル2内に流体(例えば、排ガス)を流した際における圧力損失の増大を防止することができる。例えば、外周壁3の厚さが、1.0mm未満であると、ハニカム構造体を、排ガス浄化装置の缶体内に収納する際に、大きな面圧を掛け難くなることがある。したがって、ハニカム構造体の耐熱性を向上させる効果が発現しにくいことがある。また、外周壁3の厚さが、3.0mmを超えると、質量の増加によって熱容量が増加してしまい、昇温性能が低下することがある。
【0027】
ハニカム構造体のアイソスタティック強度については特に制限はないが、1.5MPa以上が好ましく、2.0MPa以上が更に好ましく、3.0MPa以上が特に好ましい。なお、アイソスタティック強度の測定は、社団法人自動車技術会発行の自動車規格(JASO規格)のM505−87で規定されているアイソスタティック破壊強度試験に基づいて行うことができる。アイソスタティック破壊強度試験は、ゴムの筒状容器に、ハニカム構造体を入れてアルミ製板で蓋をし、水中で等方加圧圧縮を行う試験である。
【0028】
上述したように、隔壁1の40〜800℃における熱膨張係数は、1.0×10
−6〜7.0×10
−6/Kであり、1.0×10
−6〜5.0×10
−6/Kであることが好ましく、1.0×10
−6〜3.0×10
−6/Kであることが更に好ましい。以下、隔壁1の40〜800℃における熱膨張係数のことを、単に「隔壁1の熱膨張係数」ということがある。隔壁1の熱膨張係数が1.0×10
−6/K未満であると、隔壁1の表面に触媒を担持して触媒層を形成した場合に、触媒層が剥離し易くなる。また、隔壁1の熱膨張係数が7.0×10
−6/K超であると、隔壁1の熱膨張が過大となり、外周壁3の表面の表面粗さを上述した数値範囲としても、耐熱性の低下を十分に抑制できないことがある。
【0029】
本実施形態のハニカム構造体100においては、隔壁1が、コージェライト、炭化珪素、酸化アルミニウム、チタン酸アルミニウム、ムライト、窒化アルミからなる群より選択される少なくとも一種を主成分として含む材料からなることが好ましい。このような材料を用いることにより、耐熱性に優れたハニカム構造体となる。上述した「主成分」とは、隔壁1を構成する材料中に含まれる成分が30質量%以上の成分のことを意味する。隔壁が、上記群より選択される少なくとも一種を、40質量%以上含む材料からなることが好ましく、50質量%以上含む材料からなることが更に好ましい。また、例えば、このような材料からなる隔壁1は、所定の成形原料をハニカム形状に成形した成形体を焼成する際の焼成温度の調整により、その熱膨張係数を所望の値に調節することができる。
【0030】
隔壁1の厚さが、0.5〜4.0μmであることが好ましく、0.8〜3.0μmであることが更に好ましく、0.8〜2.6μmであることが特に好ましい。隔壁の厚さを上記数値範囲とすることにより、隔壁1の強度を維持しつつ、圧力損失を低減することができる。
【0031】
ハニカム構造体100のセル密度が、15〜140個/cm
2であることが好ましい。セル密度を上記数値範囲とすることで、圧力損失の増大を有効に防止することができる。また、ハニカム構造体100の隔壁1に触媒を担持した際に、高い浄化性能を得ることができる。ハニカム構造体のセル密度とは、セルの延びる方向に直交する断面における、単位面積当たりのセルの個数のことを意味する。ハニカム構造体のセル密度が、45〜125個/cm
2であることが更に好ましく、45〜65個/cm
2であることが特に好ましい。
【0032】
隔壁1の気孔率は、25〜70%であることが好ましく、35〜65%であることが更に好ましく、45〜60%であることが特に好ましい。気孔率が25%より小さいと、基材に十分な触媒量を充填できないことがある。気孔率が70%より大きいと、ハニカム構造体100の強度が低下することがある。隔壁1の気孔率は、水銀ポロシメータで測定することができる。水銀ポロシメータとしては、Micromeritics社製、商品名:Autopore 9500を挙げることができる。
【0033】
セルの延びる方向に直交する断面におけるセルの形状としては、四角形、六角形、八角形、円形、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。四角形の中でも、正方形、長方形が好ましい。
【0034】
ハニカム構造体100の第一端面11から第二端面12までの長さは、76.2〜203.2mmであることが好ましく、76.2〜152.4mmであることが更に好ましい。但し、ハニカム構造体100の第一端面11から第二端面12までの長さは、上記数値範囲に限定されることはなく、ハニカム構造体100を、種々の排ガス浄化装置に用いた際に、最適な浄化性能を得るように適宜選択すればよい。
【0035】
ハニカム構造体100の第一端面11から第二端面12に延びる方向に垂直な断面における大きさについては、特に制限はなく、ハニカム構造体100を、種々の排ガス浄化装置に用いた際に、最適な浄化性能を得るように適宜選択すればよい。なお、本実施形態のハニカム構造体100において、上記断面の形状が円形状である場合には、この断面の直径が、25.4〜330.2mmであることが好ましく、143.8〜266.7mmであることが更に好ましい。
【0036】
また、図示は省略するが、ハニカム構造体は、セグメント構造のハニカム構造体であってもよい。具体的には、セグメント構造のハニカム構造体としては、複数個のハニカムセグメントが、互いの側面同士が対向するように隣接して配置された状態で接合されたハニカム構造体を挙げることができる。ハニカムセグメントは、第一端面から第二端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁及び隔壁を取り囲むように配設された外壁を有するものである。複数個のハニカムセグメントを接合した接合体の最外周に、外周壁が配置される。また、複数個のハニカムセグメントを接合した接合体の外周部を研削等によって加工し、セルの延びる方向に垂直な断面の形状を円形等にした後、最外周にセラミック材料を塗工することによって外周壁を配置してもよい。このような、所謂、セグメント構造のハニカム構造体であっても、
図1〜
図3に示すような、所謂、一体型のハニカム構造体と同様の作用効果を得ることができる。なお、このようなセグメント構造のハニカム構造体は、断面の直径が266.7mm以上の場合に好適である。
【0037】
外周壁3は、隔壁1と同じ材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。例えば、外周壁3は、コージェライト、炭化珪素、酸化アルミニウム、チタン酸アルミニウム、ムライト、窒化アルミからなる群より選択される少なくとも一種を主成分として含む材料からなることが好ましい。このような材料を用いることにより、耐熱性に優れたハニカム構造体となる。
【0038】
次に、本発明のハニカム構造体の他の実施形態について説明する。本実施形態のハニカム構造体は、
図4〜
図6に示すように、隔壁1の表面に担持された、少なくともNO
Xを浄化する触媒成分を含む触媒層60を更に備えたハニカム構造体200である。多孔質の隔壁1、及び外周壁3の構成については、これまでに説明した
図1〜
図3に示すハニカム構造体100と同様に構成されている。即ち、隔壁1は、流体の流路となる第一端面11から第二端面12まで延びる複数のセル2を区画形成するものである。外周壁3は、隔壁1を囲繞するように最外周に配設されたものである。本実施形態のハニカム構造体200においても、隔壁1の40〜800℃における熱膨張係数が、1.0×10
−6〜7.0×10
−6/Kであり、外周壁3の表面の表面粗さが、0.5〜4.0μmである。
【0039】
ここで、
図4は、本発明のハニカム構造体の他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図5は、本発明のハニカム構造体の他の実施形態の、第一端面を模式的に示す平面図である。
図6は、本発明のハニカム構造体の他の実施形態の、セルの延びる方向に平行な断面を模式的に示す断面図である。
【0040】
図4〜
図6に示すハニカム構造体200は、これまでに説明した
図1〜
図3に示すハニカム構造体100の隔壁1の表面に触媒層60が配設されたものである。触媒の種類については特に制限はないが、上述したように、少なくとも炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NO
X)を浄化する触媒、又は、NO
Xを浄化するための触媒であることが好ましい。このような触媒としては、例えば、Pt、Rh、Pd等の貴金属からなる群より選択される少なくとも一種と、アルミナ、セリア、ジルコニアからなる群より選択される少なくとも一種を含む触媒、又は、ゼオライト、バナジウムからなる群より選択される少なくとも一種を含む触媒を挙げることができる。特に、本実施形態のハニカム構造体200においては、隔壁1の熱膨張係数と触媒層60の熱膨張係数との不釣り合い(ミスマッチ)を抑制する観点から、ゼオライト、バナジウムを好適例として挙げることができる。
【0041】
ハニカム構造体200の隔壁1に担持される触媒の量(以下、「触媒の担持量」という)については、特に制限はない。触媒の担持量は、50〜300g/Lであることが好ましく、100〜300g/Lであることが更に好ましく、150〜300g/Lであることが特に好ましい。
【0042】
触媒の担持量が300g/Lを超えると、ハニカム構造体200による浄化性能の向上を期待することができるが、その一方で、セル2の開口部分の面積が小さくなり、圧力損失が増大してしまうことがある。また、触媒の担持量が50g/L未満であると、ハニカム構造体200による浄化性能が十分に発現しないことがある。なお、本明細書中、担持量(g/L)とは、ハニカム構造体200の隔壁1の単位体積(1L)あたりに担持される触媒の量(g)のことである。触媒を、隔壁1に担持させる方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法に準じて行うことができる。
【0043】
次に、本実施形態のハニカム構造体の製造方法について説明する。
【0044】
ハニカム構造体を作製する際には、まず、セラミック原料を含有する成形原料を混合し混練して坏土を得る。セラミック原料としては、コージェライト、炭化珪素、酸化アルミニウム、チタン酸アルミニウム、ムライト、窒化アルミからなる群より選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。なお、コージェライト化原料とは、シリカが42〜56質量%、アルミナが30〜45質量%、マグネシアが12〜16質量%の範囲に入る化学組成となるように配合されたセラミック原料である。コージェライト化原料は、焼成されてコージェライトになるものである。
【0045】
また、成形原料は、上記セラミック原料に、分散媒、有機バインダ、無機バインダ、界面活性剤、造孔材等を更に混合して調製することが好ましい。各原料の組成比は、特に限定されず、作製しようとするハニカム構造体の構造、材質等に合わせた組成比とすることが好ましい。
【0046】
分散媒としては、水を用いることができる。分散媒の添加量は、セラミック原料100質量部に対して、10〜30質量部であることが好ましい。
【0047】
有機バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、又はこれらを組み合わせたものとすることが好ましい。また、有機バインダの添加量は、セラミック原料100質量部に対して、0.5〜5質量部が好ましい。
【0048】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、一種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の添加量は、セラミック原料100質量部に対して、0.5〜2質量部が好ましい。
【0049】
造孔材としては、樹脂粒子、デンプン、カーボン等を用いることができる。造孔材は、作製するハニカム構造体の隔壁に細孔を形成するためのものである。造孔材の添加量は、作製するハニカム構造体の隔壁の平均細孔径や気孔率を考慮して適宜調整することが好ましい。
【0050】
成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。
【0051】
次に、得られた坏土を成形して、円筒状のハニカム成形体を形成する。ハニカム成形体は、複数のセルを区画形成する隔壁と外周壁とを有するものである。坏土を成形してハニカム成形体を形成する方法としては特に制限はなく、押出成形、射出成形等の公知の成形方法を用いることができる。例えば、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する押出成形用口金を用いて押出成形する方法等を好適例として挙げることができる。
【0052】
次に、得られたハニカム成形体を乾燥する。乾燥方法は、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等を挙げることができる。なかでも、誘電乾燥、マイクロ波乾燥又は熱風乾燥を単独で又は組み合わせて行うことが好ましい。
【0053】
次に、ハニカム成形体を焼成する。ハニカム成形体を焼成する前には、このハニカム成形体を仮焼することが好ましい。仮焼は、脱脂のために行うものである。仮焼の方法については特に制限はない。例えば、ハニカム成形体中の有機物の少なくとも一部を除去することができればよい。上記有機物としては、有機バインダ、界面活性剤、造孔材等を挙げることができる。有機バインダの燃焼温度は100〜300℃程度である。このため、仮焼は、酸化雰囲気において、200〜1000℃程度で、10〜100時間程度加熱することが好ましい。
【0054】
ハニカム成形体の焼成は、仮焼した成形体を構成する成形原料を焼結させて緻密化し、所定の強度を確保するために行われるものである。焼成の条件は、成形原料の種類により異なるため、その種類に応じて適当な条件を選択すればよい。例えば、コージェライト化原料を使用している場合には、焼成温度は、1350〜1440℃が好ましい。また、焼成時間は、最高温度でのキープ時間として、3〜10時間が好ましい。仮焼、本焼成を行う装置としては、電気炉、ガス炉等を挙げることができる。このようにしてハニカム成形体を仮焼、焼成することにより、ハニカム構造体を得ることができる。隔壁の熱膨張係数の調節は、上述した焼成温度の調整によって行うことができる。例えば、昇温速度を穏やかにして焼成を行うことにより、得られるハニカム構造体の熱膨張係数が高くなる傾向にある。具体的には、昇温速度を5〜40℃/hrと穏やかにして、且つ焼成温度を1300〜1400℃とすることで、高熱膨張係数を有するハニカム構造体を得ることができる。昇温速度は5℃/hrが好ましく、焼成温度は1400℃が好ましい。
【0055】
次に、得られたハニカム構造体の外周壁の表面を研磨処理して、外周壁の表面の表面粗さを、0.5〜4.0μmにする。具体的には、例えば、サンドペーパーなどを用いて、外周壁の表面を研磨する。サンドペーパーの番手としては、100〜1000が好ましい。
【0056】
以上のようにして、隔壁の40〜800℃における熱膨張係数が、1.0×10
−6〜7.0×10
−6/Kであり、外周壁の表面の表面粗さが、0.5〜4.0μmであるハニカム構造体を作製することができる。
【0057】
(2)排ガス浄化装置:
次に、本発明の排ガス浄化装置の一の実施形態について説明する。本実施形態の排ガス浄化装置は、これまでに説明したハニカム構造体と、このハニカム構造体を収納し、排ガスが流入する流入口及び浄化された排ガスが流出する流出口を有する缶体と、を備えたものである。そして、本実施形態の排ガス浄化装置においては、ハニカム構造体が、ハニカム構造体の外周壁を覆うように配置された保持材により保持された状態で、上記缶体内に固定された状態で収納されている。
【0058】
本実施形態の排ガス浄化装置について、以下、
図7を参照しつつ、更に詳細に説明する。
図7は、本発明の排ガス浄化装置の一の実施形態の、セルの延びる方向に平行な断面を模式的に示す断面図である。排ガス浄化装置300は、
図4〜
図6に示すハニカム構造体200と、このハニカム構造体200を収納した缶体21と、を備えたものである。缶体21は、排ガスが流入する流入口22及び浄化された排ガスが流出する流出口23を有する。そして、ハニカム構造体200の外周壁3の表面には、ハニカム構造体200を缶体21内に保持するための保持材31が配設されている。ハニカム構造体200は、上記保持材31によって保持された状態で、缶体21内に圧入され、缶体21内に固定された状態で収納されている。以下、缶体21内にハニカム構造体200が収納される部分を、缶体21の胴部24という。また、ハニカム構造体200の第一端面11及び第二端面12の周囲に留め具32,32が配設されている。この留め具32,32によって、ハニカム構造体200は、缶体21内で、ガスGの流れ方向に動かないように固定されている。
【0059】
ハニカム構造体200は、流体の流路となる第一端面11から第二端面12まで延びる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1と、この隔壁1を囲繞するように最外周に配設された外周壁3と、を備えている。また、隔壁1の表面には、触媒層60が配設されている。これまでに説明したように、ハニカム構造体200は、隔壁1の熱膨張係数が、1.0×10
−6〜7.0×10
−6/Kであり、外周壁3の表面の表面粗さが、0.5〜4.0μmである。このように、ハニカム構造体200は、隔壁1の熱膨張係数が高く、触媒層60の熱膨張係数との差が小さくなるように構成されているため、ハニカム構造体200が高温に晒された場合でも、隔壁1からの触媒層60の剥離を有効に防止することができる。また、缶体21内に収納されたハニカム構造体100が高温に晒された場合、ハニカム構造体100が外周壁3の外側に向かって熱膨張しようとする。一方で、上述したように、ハニカム構造体100は、上記保持材31によって保持された状態で、缶体21内に圧入されているため、保持材31から外周壁3の表面に対して、ハニカム構造体100の熱膨張を押さえ付けようとする応力が働く。外周壁3の表面は、これまでに説明したように、非常に表面粗さが小さく、滑らかな面であるため、保持材31から加わる応力が、外周壁3の表面全域に均等に掛かることとなる。このため、保持材31から熱膨張を押さえ付けようとする応力が働いた場合であっても、ハニカム構造体200に破損が生じ難い。即ち、排ガス浄化装置300は、高熱膨張係数の隔壁1を有するハニカム構造体200を用いつつ、外周壁3の表面粗さを小さくすることで、熱膨張時に掛かる応力を均等に分散させて、ハニカム構造体200の破損を防止している。
【0060】
排ガス浄化装置300の缶体21内に収納されるハニカム構造体200は、
図4〜
図6に示すハニカム構造体200に限定されることはない。即ち、ハニカム構造体200は、隔壁1の熱膨張係数が、1.0×10
−6〜7.0×10
−6/Kであり、外周壁3の表面の表面粗さが、0.5〜4.0μmであればよい。
【0061】
缶体21は、エンジン排気マニホルドの口径、及び浄化済みの排ガスが排出される排気系の口径(例えば、上記の排気管、マフラー等の口径)に適合するように、流入口22及び流出口23が形成されている。
【0062】
缶体21の胴部24と、缶体21の流入口22及び流出口23とは、流入口22から口径が漸増する拡管部と、流出口23に向けて口径が漸減する狭管部とを更に有していてもよい。例えば、エンジン排気マニホルドや排気管、マフラー等の口径と、缶体21の胴部24の口径が同一の場合には、上述の拡管部や狭管部については特に有していなくてもよい。
【0063】
缶体21の材質としては、例えば、ステンレス製であることが好ましく、クロム系、クロム・ニッケル系のステンレス製であることが特に好ましい。
【0064】
ハニカム構造体200を缶体21の胴部24の内部に保持する方法としては、例えば、以下のような方法を挙げることができる。即ち、ハニカム構造体200の外周壁3の表面をセラミック繊維製マット等の保持材31で包み、缶体21の胴部24の内部に圧入する方法等を挙げることができる。セラミック繊維製マット等の保持材31を用いることにより、ハニカム構造体200を、外部からの衝撃から守るとともに、断熱することができる。また、このような保持材31を用いることにより、表面粗さの小さい外周壁3の表面に均等に応力が加わり易くなる。ハニカム構造体200を、缶体21の胴部24の内部に保持した後、あらかじめ製作しておいた拡管部または狭管部を胴部24に溶接してもよい。また、缶体21をスピニング加工等によって拡管部または狭管部を作成してもよい。缶体は、ステンレス等を用いて、従来公知の金属加工方法を用いて作製することができる。
【0065】
保持材31としては、上述したセラミック繊維製マットを好適例として挙げることができる。このようなセラミック繊維製マットは、その入手や加工が容易であるとともに、十分な耐熱性及びクッション性を有するものである。セラミック繊維製マットとしては、バーミュキュライトを実質上含まない非熱膨張性マット、又は少量のバーミュキュライトを含む低熱膨張性マット等を挙げることができる。なお、保持材31は、その表面が、外周壁の表面に密着するものであることが好ましい。例えば、上述したセラミック繊維製マットなどにおいては、繊維の目の細かいものや柔軟性に優れたものなどが好ましい。
【実施例】
【0066】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0067】
(実施例1)
実施例1では、ハニカム構造体と、このハニカム構造体を収納し、排ガスが流入する流入口及び浄化された排ガスが流出する流出口を有する缶体と、を備えた排ガス浄化装置を製造した。
【0068】
実施例1では、まず、排ガス浄化装置に使用するハニカム構造体を作製した。具体的には、まず、セラミック原料を含有する成形原料を用いて、ハニカム成形体を成形するための坏土を調製した。セラミック原料として、コージェライト化原料を用いた。コージェライト化原料に、分散媒、有機バインダ、分散剤、造孔材を添加して、成形用の坏土を調製した。分散媒の添加量は、コージェライト化原料100質量部に対して、10質量部とした。有機バインダの添加量は、コージェライト化原料100質量部に対して、10質量部とした。造孔材の添加量は、コージェライト化原料100質量部に対して、20質量部とした。得られたセラミック成形原料を、ニーダーを用いて混練して、坏土を得た。
【0069】
次に、得られた坏土を、真空押出成形機を用いて押出成形し、ハニカム成形体を得た。次に、ハニカム成形体を高周波誘電加熱乾燥した後、熱風乾燥機を用いて120℃で2時間乾燥した。その後、1350〜1440℃で10時間焼成してハニカム構造体を得た。
【0070】
その後、ハニカム構造体の外周壁の表面に研磨処理を施した。この研磨処理は、サンドペーパーなどを用いて、外周壁の表面を研磨して行った。
【0071】
得られたハニカム構造体は、ハニカム構造体の第一端面から第二端面までの長さが152.4mmで、第一端面から第二端面に延びる方向に垂直な断面の直径が143.8mmの円筒形状のものであった。また、このハニカム構造体は、隔壁の厚さが165μmで、セル密度が46.5個/cm
2のものであった。また、隔壁の気孔率が50%で、隔壁の熱膨張係数が3.5×10
−6/Kであった。隔壁の気孔率は、マイクロメリティクス社(Micromeritics社)製の「オートポアIII 9420(商品名)」によって測定した値である。また、ハニカム構造体の外周壁の厚さが2.1mmで、ハニカム構造体の外周壁の表面粗さが1.7μmであった。外周壁の表面粗さは、Taylor Hobson社製のPGI式粗さ測定機によって測定した値である。
【0072】
次に、得られたハニカム構造体の隔壁に、触媒を担持させた。触媒としては、ZSM−5ゼオライトを用いた。触媒の担持量としては、150g/Lとした。触媒の担持量(g/L)とは、ハニカム構造体の単位体積(1L)あたりに担持される触媒の量(g)のことである。
【0073】
次に、隔壁に触媒を担持させたハニカム構造体の外周壁を覆うように保持材を配設し、このハニカム構造体を、流入口、胴部、及び流出口を有する缶体の内部に収納した。その後、缶体の拡管部及び狭管部をスピニング加工によって形成して、実施例1の排ガス浄化装置を製造した。保持材としては、セラミック繊維製マットを用いた。缶体内にハニカム構造体を収納した際に、缶体の内表面からハニカム構造体の外周壁表面までの間隔は、0.6mmであった。すなわち、上述した間隔に、保持材(セラミック繊維製マット)が充填されていることとなる。缶体の胴部の内部には、ハニカム構造体の第一端面が、缶体の流入口側に位置し、ハニカム構造体の第二端面が、缶体の流出口側に位置するように配置した。
【0074】
表1に、実施例1の排ガス浄化装置に使用したハニカム構造体の構成を示す。すなわち、「隔壁の厚さ(μm)」、「セル密度(個/cm
2)」、「気孔率(%)」、「熱膨張係数(×10
−6/K)」、「外周壁の厚さ(mm)」、及び「外周壁の表面粗さ(μm)」について、表1に示す。
【0075】
また、実施例1の排ガス浄化装置について、以下の方法で、耐熱温度(℃)を測定した。更に、実施例1の排ガス浄化装置について、以下の方法で、耐振動試験を行った。耐熱温度(℃)の測定結果、及び耐振動試験の試験結果を、表1に示す。
【0076】
[耐熱温度(℃)]
缶体内のハニカム構造体を高温雰囲気とした電気炉内に1時間放置した後、室温雰囲気に取り出して、肉眼で亀裂の発生の有無を確認した。電気炉の加熱温度と室温との温度差から排ガス浄化装置のハニカム構造体の耐熱温度(℃)を測定した。
【0077】
[耐振動試験]
缶体内のハニカム構造体に15G、150Hzの振動を与えて、100℃で保持時間10分、500℃で保持時間10分を1サイクルとして加熱をした空気を担体(ハニカム構造体)内に流し、排ガス浄化装置の耐振動試験を100サイクル行った。昇降温速度は最大で10℃/秒とした。また、加熱した空気の流量は5Nm
3/minとした。ハニカム構造体の底部に受け皿を置き、耐振動試験後、触媒乖離の有無を確認した。触媒乖離しない場合を「良」とし、触媒乖離した場合を「不可」とした。
【0078】
【表1】
【0079】
(実施例2〜12、及び比較例1〜7)
隔壁の厚さ、セル密度、気孔率、熱膨張係数、外周壁の厚さ、及び外周壁の表面粗さが、表1に示す値となるように構成されたハニカム構造体を作製した以外は、実施例1と同様の方法で排ガス浄化装置を製造した。なお、実施例7〜9、及び比較例4〜6については、ムライトを主原料に使用することにより、隔壁の熱膨張係数を6.7×10
−6/Kとした。比較例1〜3については、コージェライトを使用することにより、隔壁の熱膨張係数を0.9×10
−6/Kとした。比較例7については、酸化アルミニウムを主原料に使用することにより、隔壁の熱膨張係数を8.0×10
−6/Kとした。また、外周壁の表面粗さについては、サンドペーパーの番手を変えることで調節した。
【0080】
実施例2〜12、及び比較例1〜7の排ガス浄化装置についても、実施例1と同様方法で、耐熱温度(℃)を測定し、また、耐振動試験を行った。耐熱温度(℃)の測定結果、及び耐振動試験の試験結果を、表1に示す。
【0081】
(結果)
表1に示すように、実施例1〜12の排ガス浄化装置においては、ハニカム構造体の耐熱温度が、全て600℃以上であった。ハニカム構造体の耐熱温度が600℃以上であれば、十分に耐熱性に優れたものであるといえる。また、実施例1〜12の排ガス浄化装置においては、耐振動試験の結果も全て「良」であり、良好な結果を得ることができた。また、外周壁の厚さに関しては、厚くすることで担体の面圧を上げることができる。面圧を上げることで、熱膨張によって生じる応力を緩和でき、耐熱性が向上するといった結果が得られた。なお、外周壁の厚さが薄すぎると強度が低下する傾向にあり、外周壁の厚さが厚すぎるとハニカム構造体を所定の温度まで昇温させるのに時間を要することがある。
【0082】
比較例1〜3の排ガス浄化装置では、耐振動試験後、ハニカム構造体の底部の受け皿に、当該ハニカム構造体の隔壁から剥がれた触媒層が見られた。これは隔壁の熱膨張係数が0.9×10
−6/Kと低く、触媒層との熱膨張係数差が大きいため耐振動試験によって、ハニカム構造体から触媒層が剥離したためである。そのため、耐振動試験は、「不可」という結果となった。また、比較例4〜6の排ガス浄化装置は、外周壁の表面粗さが大きいため、ハニカム構造体の耐熱温度が低いものであった。即ち、ハニカム構造体が熱膨張した際に、この熱膨張を押さえ付ける力が外周壁の表面に均等に加わらず、一部局所的に過大な面圧がかかったため、ハニカム構造体が破損してしまった。また、比較例7の排ガス浄化装置は、隔壁の熱膨張係数が8.0×10
−6/Kと高すぎるため、外周壁の表面粗さを小さくしても、ハニカム構造体の耐熱温度が低いものであった。即ち、ハニカム構造体が熱膨張しても、表面粗さが低いため、熱膨張の過程で、比較的均一に面圧がかかるようになっているが、それ以上に、隔壁の熱膨張係数が大きすぎて、ハニカム構造体の強度を超えた面圧がかかり、ハニカム構造体が破損してしまった。以上の比較例1〜7の結果により、隔壁の熱膨張係数のみの調整、或いは、外周壁の表面粗さのみの調整では、耐熱温度と耐振動試験とで共に良好な結果を得ることは困難であることが分かった。実施例1〜12のように、隔壁の熱膨張係数と外周壁の表面粗さとを所定の数値範囲とすることで、それぞれの弱点となる部分を補完して、熱応力による破損が有効に防止されたハニカム構造体を得ることができる。