(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
多本針環縫いミシンにおいて、縫製終了時に、生地送り方向と交差する方向に並設された複数の針と、前記複数の針にそれぞれ対応する複数のルーパとの間にある上糸及び下糸を切断するための糸切り装置であって、
前記多本針環縫いミシンのミシンベッドに取り付けられ、前記複数の針のそれぞれに対応する複数の針孔を有する針板を保持した土台と、
前記針板よりも下方であって前記複数の針孔よりも生地送り方向上流側に配置され、上糸及び下糸を切断し得る刃部を有する固定メスと、
各々が、前記針板及び前記固定メスよりも下方に配置された上糸及び下糸用の引掛部を有し、前記各針により運ばれる上糸及び前記各ルーパにより運ばれる下糸を前記引掛部に引っ掛け得るとともに、前記引掛部に引っ掛けられた状態の上糸及び下糸を前記固定メスと協働して切断し得るように生地送り方向に移動可能に設けられた複数の可動メスと、
前記複数の可動メスに連結されて、前記各可動メスの引掛部が上糸及び下糸を引っ掛けるように前記引掛部を前記複数の針孔よりも生地送り方向下流側に移動させ得るとともに、前記引掛部が引っ掛けた状態の上糸及び下糸を前記固定メスの刃部とかみ合って切断し得るように前記引掛部を前記刃部よりも生地送り上流側に移動させ得るアクチュエータと、
前記複数の可動メスの下方に配置されて、前記複数の可動メスを前記固定メス側へ付勢する付勢部材と、
前記複数の可動メスの下方で且つ前記複数のルーパよりも上方であって前記固定メス及び前記付勢部材よりも生地送り方向下流側に且つ前記複数の針よりも生地送り方向上流側に配置された案内部を有する案内部材とを備え、
前記案内部は、前記各可動メスが前記引掛部にて上糸及び下糸を前記固定メスの刃部に向かって運ぶ際に、前記各ルーパが下糸を支持する下糸支持部よりも生地送り方向下流側に位置して、前記引掛部と前記各ルーパの下糸支持部との間にある下糸が屈曲するように当該下糸に生地送り方向上流側から当接しつつこの下糸を当該案内部の上面で案内することを特徴とする糸切り装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の好ましい実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0019】
本発明の一実施形態に係る糸切り装置1は、多本針環縫いミシンに適用されている。
図1に示すように、前記多本針環縫いミシンは、筒形のミシンベッド2と、前記ミシンベッド2の上方に配置されたミシンヘッド(図示せず)とを備えている。前記ミシンベッド2内には、ミシン主軸を貫通させるための貫通孔3・4をそれぞれ有する隔壁5・6が所定間隔を隔てて設けられている。前記隔壁5・6間には、前記糸切り装置1を組み込むための組込用空間7が形成されている。
【0020】
前記多本針環縫いミシンは、生地送り方向(
図1に示す矢印8方向)と交差(直交)する方向に所定間隔を隔てて並設された複数(本実施形態においては4本)の針10・10・・・と、複数の針孔11・11・・・を有する針板12と、前記複数のルーパ13・13・・・と、糸寄せルーパ14とをさらに備え、前記各針10により運ばれる上糸及び前記各ルーパ13により運ばれる下糸を用いて複数列の縫目が形成されるように生地に環縫いを行うことができるように構成されている。
【0021】
前記多本針環縫いミシンにおいて、前記各針10は、前記ミシンヘッド側から前記針板12上の生地を貫きつつ前記針孔11を介して前記針板12の下方まで上糸を運び、前記針板12の下方で上糸ループを形成することができるように構成されている。前記各ルーパ13は、生地送り方向上流側(当該ミシンの手前側)又は下流側(当該ミシンの奥側)に揺動しつつ下糸を運び、この下糸を上糸ループ内を通過させることができるように構成されている。前記糸寄せルーパ14は、上糸ループ内を通過した下糸を受けることができるように構成されている。
【0022】
このような多本針環縫いミシンにおいて、前記糸切り装置1は、縫製終了時に、前記複数の針10・10・・・と、前記複数の複数のルーパ13・13・・・との間にある上糸及び下糸を切断し得るように構成されている。
【0023】
図1、
図2、
図3、
図4、
図5及び
図6に示すように、前記糸切り装置1は、土台21と、固定メス22と、複数の可動メス23と、アクチュエータ24・25と、付勢部材26と、案内部材27とを備えている。本実施形態においては、前記糸切り装置1は、第1ベース28と、第2ベース29とをさらに備えている。
【0024】
前記土台21は、前記多本針環縫いミシンのミシンベッド2に取り付けられて、前記針板12を保持するように構成されている。
【0025】
本実施形態において、前記土台21は、板状体で構成されており、一方の板面が上を向き且つ他方の板面が下を向くように前記隔壁5・6の上面等に固定されている。前記土台21は、上下方向に貫通する開口31を有し、前記針板12が前記開口31を閉塞するように当該針板12を保持し得るようになっている。
【0026】
詳しくは、前記針板12は、矩形板状体から構成され、その下面が前記組込用空間7内に臨むように前記土台21に支持されている。そして、前記針板12は、前記土台21の上面に上向きに開口するように形成された凹部32に上方から嵌め込まれて固定されている。
【0027】
また、前記土台21は、生地送り方向上流側に開放されたU字状に形成されており、一対の側部33・34と、中間繋ぎ部35とを有している。前記一対の側部33・34は、それぞれ生地送り方向に延設され、生地送り方向と直交する方向に所定間隔を隔てて対向配置されている。前記中間繋ぎ部35は、前記一対の側部33・34の生地送り方向下流側の端部間に跨るように、これらの端部に連結されている。
【0028】
前記各側部33・34における対向側部分及び生地送り方向下流側部分の上面、並びに前記中間繋ぎ部35の上面に、前記凹部32が形成されている。さらに、前記一対の側部33・34における前記針板12よりも生地送り方向上流側部分の上面に、それぞれ、上向きに開口する凹部36・37が形成されている。前記凹部36・37は、生地送り方向と直交する方向に延設されている。
【0029】
なお、本発明における土台は、本実施形態においては前記針板12とは別体の前記土台21としているが、これに限定するものではなく、多本針環縫いミシンに用いられる針板を一体化したものであってもよい。
【0030】
前記固定メス22は、刃部38を有している。前記刃部38は、上糸及び下糸を切断し得るものであり、前記針板12よりも下方であって前記複数の針孔11・11・・・の生地送り方向上流側に配置されている。
【0031】
本実施形態において、前記固定メス22は、平面視で前記土台21の開口31に対向するように前記針板12よりも生地送り方向上流側に配置された状態で、前記土台21に保持されている。詳しくは、前記固定メス22は、生地送り方向を短手方向とし且つ生地送り方向と直交する方向を長手方向とする帯板状体で構成され、前記土台21における前記一対の側部33・34の生地送り方向上流側の端部間に跨るように、これらの凹部36・37に嵌め込まれて固定されている。
【0032】
前記刃部38は、前記固定メス22の短手方向一側(生地送り方向下流側)に前記固定メス22の長手方向に沿って設けられている。前記刃部38は、前記針板12の下面よりも下方で生地送り方向下流側に臨むように配置されて、後述のように前記固定メス22の下面に当接した状態で生地送り方向に移動する前記複数の可動メス23・23・・・と交差してかみ合うことができるように構成されている。
【0033】
また、本実施形態においては、前記固定メス22の長手方向両端部が、それぞれ、生地送り方向に延びる長孔41・42を有している。そして、前記固定メス22が、前記長孔41・42にそれぞれ挿通されたボルト等の締結具43・44により前記土台21における前記一対の側部33・34に対して生地送り方向に位置調節可能に固定されている。
【0034】
前記第1ベース28は、前記土台21及び前記固定メス22の下方に所定間隔を隔てて配置され、前記土台21及び前記固定メス22に対して生地送り方向に移動可能に設けられている。前記第1ベース28は、板状体で構成されており、一方の板面が上を向き且つ他方の板面が下を向くように前記土台21に取り付けられている。前記第1ベース28は、上下方向に貫通する開口46を有し、前記開口46が前記土台21の開口31と上下方向に関し重なり合うように配置されている。
【0035】
前記第1ベース28は、本実施形態においては、生地送り方向下流側に開放されたU字状に形成されており、一対の側板部47・48と、中間繋ぎ板部49とを有している。前記一対の側板部47・48は、それぞれ、生地送り方向に延設され、前記土台21における前記一対の側部33・34の下方付近に配置されている。前記中間繋ぎ板部49は、前記固定メス22の刃部38よりも後方に配置され、前記一対の側板部47・48の生地送り方向上流側の端部間に跨るようにこれらの端部に連結されている。
【0036】
前記第1ベース28において、前記一対の側板部47・48は、それぞれ、生地送り方向に延びる長孔51・52有している。そして、前記第1ベース28は、前記土台21の下面に沿って配置された状態で、前記長孔51・52にそれぞれ嵌合されたガイドローラ53・53・54・54等により前記土台21に対して所定の範囲で生地送り方向に移動自在に保持されている。
【0037】
前記複数の可動メス23・23・・・は、それぞれ、前記針板12及び前記固定メス22よりも下方に配置された上糸及び下糸用引掛部61・62を有している。前記各可動メス23は、前記各針10により運ばれる上糸及び前記各ルーパ13により運ばれる下糸を前記引掛部61・62に引っ掛け得るとともに、前記引掛部61・62に引っ掛けられた状態の上糸及び下糸を前記固定メス22と協働して切断し得るように生地送り方向に移動可能に設けられている。
【0038】
本実施形態において、前記複数の可動メス23・23・・・は、前記針板12及び前記固定メス22よりも下方に配置された状態で前記第1ベース28に連結され、前記第1ベース28と一体的に生地送り方向に移動し得るように構成されている。前記複数の可動メス23・23・・・は、それぞれの一部が対応する前記針孔11の下方位置及び前記固定メス22の刃部38の下方位置を通過し得るように、前記第1ベース28における前記一対の側板部47・48間において生地送り方向と交差する方向に所定間隔を隔てて並設されている。
【0039】
前記各可動メス23は、生地送り方向を長手方向とする板状体で構成されており、生地送り方向上流側の端部(基端部)で前記第1ベース28の中間繋ぎ板部49に固定され、生地送り方向下流側の端部(先端部)を自由端部とされている。そして、前記各可動メス23の先端部に、前記引掛部61・62として、上糸を引っ掛けるための上糸用引掛部61と、下糸を引っ掛けるための下糸用引掛部62とが設けられている。
【0040】
前記各可動メス23の先端部においては、その先端側部分が尖状に形成されている。また、この先端部の前記一方の側板部47側部分がフック状に当該一方の側板部47へ向かって突出する前記上糸用引掛部61とされ、この先端部の前記他方の側板部48側部分がフック状に当該他方の側板部48側へ向かって突出する前記下糸用引掛部62とされている。前記下糸用引掛部62は、前記上糸用引掛部61よりも生地送り方向上流側にズレて配置されている。
【0041】
前記アクチュエータ24・25は、前記複数の可動メス23・23・・・に連結されている。前記アクチュエータ24・25は、前記各可動メス23の引掛部61・62が上糸及び下糸を引っ掛けるように前記引掛部61・62を前記複数の針孔11・11・・・よりも生地送り方向下流側に移動させ得るとともに、前記引掛部61・62が引っ掛けた状態の上糸及び下糸を前記固定メス22の刃部38とかみ合って切断するように前記引掛部61・62を前記刃部38よりも生地送り上流側に移動させ得るように構成されている。
【0042】
本実施形態において、前記アクチュエータ24・25は、前記第1ベース28を介して前記複数の可動メス23・23・・・に連結されている。前記アクチュエータ24・25は、生地送り方向に同期的に伸縮作動し得る2つのエアシリンダとされており、その一方のエアシリンダが第1の前記アクチュエータ24として前記第1ベース28における前記側板部47に連結され、他方のエアシリンダが第2の前記アクチュエータ25として前記第1ベース28における前記側板部48に連結されている。
【0043】
そして、前記アクチュエータ24・25は、その作動(前記2つのエアシリンダの伸縮作動)によって前記第1ベース28を介して前記複数の可動メス23・23・・・を生地送り方向に往復移動させる、具体的には、生地送り方向下流側に移動させて糸引掛作用位置に位置させ、又は、生地送り方向上流側に移動させて糸切断作用位置に位置させることができるようになっている。この前記アクチュエータ24・25の作動により、前記糸切り装置1の糸引掛作用状態と糸切断作用状態とが切り替えられるようになっている。
【0044】
ここで、前記糸引掛作用位置とは、
図2及び
図3に示すように、前記引掛部61・62にて上糸及び下糸を引っ掛け得るように、前記各可動メス23が前記土台21に対して生地送り方向下流側に移動した位置である。一方、前記糸切断作用位置とは、
図4及び
図5に示すように、前記引掛部61・62にて運んだ上糸及び下糸を前記固定メス22の刃部38との間に挟んで切断し得るように、前記各可動メス23が前記固定メス22の刃部38よりも生地送り方向上流側に移動した位置である。
【0045】
前記第2ベース29は、前記固定メス22よりも生地送り方向上流側に配置されて、前記土台21に保持されている。本実施形態においては、前記第2ベース29は、生地送り方向と直交する方向を長手方向とする板状体で構成され、前記土台21の一対の側部33・34における生地送り方向上流側の端部間に跨るようにこれらの端部の下面に固定されている。また、前記第2ベース29は、前記固定メス22の下面よりも下方に配置されている。
【0046】
前記付勢部材26は、前記複数の可動メス23・23・・・の下方に配置されて、前記複数の可動メス23・23・・・を前記固定メス22側へ付勢するように構成されている。
【0047】
本実施形態において、前記付勢部材26は、生地送り方向を長手方向とする2つのバネ板65・66を上下に重ね合わせてなるバネ67を複数備えたものとされている。前記複数のバネ67・67・・・は、前記複数の可動メス23・23・・・と同数(即ち、本実施形態においては4つ)備えられ、それぞれが対応する前記可動メス23の下方に位置するように、所定間隔を隔てて並設されている。
【0048】
前記各バネ67は、生地送り方向上流側の端部(基端部)で前記第2ベース29に固定され、生地送り方向下流側の端部(先端部)を自由端部とされている。前記各バネ67は、先端部が基端部よりも上方に位置するように斜設され、この先端部で前記各可動メス23を前記固定メス22の下面に弾性的に押圧するように構成されている。
【0049】
図7にも示すように、前記案内部材27は、案内部70を有している。前記案内部70は、前記複数の可動メス23・23・・・の下方であって、前記複数のルーパ13・13・・・よりも上方に配置されている。また、前記案内部70は、前記固定メス22及び前記付勢部材26よりも生地送り方向下流側であって、前記複数の針10・10・・・よりも生地送り方向上流側に配置されている。
【0050】
そして、前記案内部70は、前記各可動メス23が前記引掛部61・62にて上糸及び下糸を前記固定メス22の刃部38に向かって運ぶ際に、前記各ルーパ13が下糸を支持する下糸支持部71よりも生地送り方向下流側に位置して、前記引掛部61・62と前記各ルーパ13の下糸支持部71との間にある下糸が屈曲するように当該下糸に生地送り方向上流側から当接しつつこの下糸を当該案内部70の上面で案内するように構成されている。
【0051】
本実施形態において、前記案内部材27は、前記針板12及び前記複数の可動メス23・23・・・よりも下方に配置されている。前記案内部材27は、板状体で構成されており、一方の板面が上を向き且つ他方の板面が下を向くように前記第2ベース29を介して前記土台21(前記一対の側部33・34)に保持されている。前記案内部材27は、上下方向に貫通する開口72を有し、前記開口72が前記各可動メス23の一部と上下方向に関し重なり合うように配置されている。
【0052】
詳しくは、前記案内部材27は、生地送り方向上流側に開放されたU字状に形成されており、一対の連結部73・74と、前記案内部70とを有している。前記一対の連結部73・74は、それぞれ、生地送り方向に延設され、生地送り方向と直交する方向に所定間隔を隔てて対向に配置されている。前記案内部70は、前記一対の連結部73・74の生地送り方向下流側の端部(先端部)間に跨るように、これらの端部に連結されている。
【0053】
前記一対の連結部73・74は、生地送り方向上流側の端部(基端部)で前記第2ベース29に固定されている。前記一対の連結部73・74の間(前記開口72)には、前記複数のバネ67・67・・・(前記付勢部材26)が配置されている。また、前記一対の連結部73・74は、それぞれの先端部が基端部よりも上方に位置するように斜設されている。前記案内部70は、前記一対の連結部73・74の先端部間に跨るように、これらの先端部に連結されている。
【0054】
前記案内部70は、生地送り方向と直交する方向を長手方向とする板状体で構成され、一方の板面が上を向き且つ他方の板面が下を向くように前記各ルーパ13及び前記各可動メス23のそれぞれと所定間隔を隔てた状態に配置されている。前記案内部70は、生地送り方向と直交する方向に関し前記第1ベース28の開口46と同程度の幅(即ち、前記複数のルーパ13・13・・・のうちの最外側にある両ルーパ13・13間の幅よりも長い幅)を有し、その上方を前記複数のルーパ13・13全てが通過し得るように前記開口46の下方に配置されている。
【0055】
前記案内部70の上面は、前記生地送り方向中途部70aよりも生地送り方向上流側で前記案内部70と前記複数の可動メス23・23・・・との間に隙間が生じ得るように、当該上面の生地送り方向中途部70aから生地送り方向上流側に向かうに従って下降するように形成されている。また、本実施形態においては、前記案内部70の上面は、前記生地送り方向中途部70aと生地送り方向下流側端部(先端部)との間では前記複数の可動メス23・23・・・の下面に沿って広がるように形成されている。
【0056】
このような構成により、前記多本針環縫いミシンによる生地80の縫製が終了した場合に、前記糸切り装置1が糸切り動作を開始したとき、まず、
図3、
図7(a)及び(b)に示すように、前記各可動メス23が前記アクチュエータ24・25の作動により前記糸引掛作用位置に向かって生地送り方向下流側に移動させられる。これにより、前記針板12の下方で前記各針10と生地との間に形成されている上糸ループ81内に、前記各可動メス23の先端部が生地送り方向上流側から下流側に向かって突っ込んだ状態となる。
【0057】
この際には、また、前記下糸支持部71が前記案内部70よりも生地送り方向上流側に移動した状態となるように前記各ルーパ13が生地送り方向下流側に揺動されている。そして、前記各可動メス23の引掛部61・62が、それぞれ、前記上糸ループ81を形成している上糸83、及び、前記各ルーパ13と生地との間に前記各針孔11を介して延在している下糸84の一部よりも生地送り方向下流側に位置した状態となる。
【0058】
次に、
図6に示すように、前記各可動メス23が前記アクチュエータ24・25の作動により前記糸引掛作用位置から前記糸切断作用位置に向かって生地送り方向上流側に移動させられる。この際、前記各ルーパ13の位置は変わらず、上糸83が前記上糸用引掛部61に引っ掛けられ且つ下糸84が前記下糸用引掛部62に引っ掛けられた状態となって、上糸83及び下糸84の引っ掛けられた部分が前記各可動メス23の移動に伴って前記固定メス22の刃部38に向かって生地送り方向上流側に運ばれる。
【0059】
この移動途中で前記下糸用引掛部62が前記案内部70の先端部上を通過した後には、
図8(a)及び(b)にも示すように、下糸84は、前記案内部70の先端部に生地送り方向上流側から当接して上下に屈曲した部分を備えることとなる。すなわち、下糸84は、前記下糸用引掛部62と前記各ルーパ13の下糸支持部71との間において、その長さが最短となるように直線状には延在せず、前記案内部70よりも下方で生地送り方向に延在する下側部分84aと前記案内部70よりも上方で生地送り方向に延在する上側部分84bとを含むように屈曲した状態となる。
【0060】
そして、この状態で前記各可動メス23が生地送り方向上流側へ移動させられるときに、前記下糸84の上側部分84bが前記案内部70の上面で案内されることとなる。前記引掛部61・62が前記固定メス22の刃部38に至り、当該刃部38を超えて生地送り方向上流側へ移動しようとする際には、前記各可動メス23が前記固定メス22の刃部38と交差してかみ合い、
図5、
図9(a)及び(b)に示すように、前記引掛部61・62にて運ばれた上糸83及び下糸84のうちの引っ掛けられた部分が切断されることとなる。
【0061】
その結果、
図10(a)及び(b)に示すように、前記各ルーパ13側の下糸の切断端部85が自由端部となり、つづいて前記各ルーパ13が現在位置から生地送り方向下流側に揺動するのに伴い、この切断端部85を含む、前記各ルーパ13の下糸支持部71から延びる下糸の延出部分86(前記下側部分84a及び前記上側部分84bに相当)が、前記各可動メス23と前記案内部70との間から引き抜かれ、前記案内部70よりも生地送り方向下流側において前記下糸支持部71から自重で垂れ下がった状態で前記各ルーパ13に支持されることとなる。
【0062】
このように前記糸切り装置1の糸切り動作が終了した後、生地の縫製が新たに開始されると、まず、
図11(a)及び(b)に示すように、前記各針10により上糸ループ87が形成され、次に、
図12(a)及び(b)に示すように、形成された上糸ループ87に先端部を突っ込ませるようにして前記各ルーパ13が当該上糸ループ87をすくうこととなる。その後は所定の縫製順序で縫製が行われ、縫製終了時には、前述のように、前記糸切り装置1により上糸及び下糸が切断されることとなる。
【0063】
つまり、前記糸切り装置1においては、前記案内部70の存在によって、下糸の切断後に、前記各ルーパ13側の下糸の切断端部85が、前記各可動メス23と前記各バネ67(前記付勢部材26)との間に挟まれて保持されない。そのため、前記糸切り装置1による糸切り後に続いて行われる縫い始めに際し、
図11に示すように、前記各針10により形成される上糸ループ87の外側方に、前記各ルーパ13の下糸支持部71から自重で垂れ下がった下糸の前記延出部分86が存在するだけで、上糸ループ87を潰し得るような張力をもった下糸が存在することがない。よって、この際に上糸ループ87が下糸によって潰されることを防止できる。
【0064】
また、前記糸切り装置1による糸切り直前に、
図8に示すように、前記各可動メス23の引掛部62と前記各ルーパ13の下糸支持部71との間において、下糸が前記案内部70の先端部を迂回するように屈曲した状態となる。そのため、糸切り後に、
図9及び
図10に示すように、下糸における前記切断端部85と前記下糸支持部71による支持部との間の長さ、即ち前記各ルーパ13側の下糸の残糸量(前記延出部分86の長さ)を十分に確保することが可能となる。したがって、前記各ルーパ13側の下糸の残糸量を適度に保つことができる。よって、下糸が短いために前記各ルーパ13の下糸支持部71から外れてしまうことを防止できる。
【0065】
以上のことから、前記多本針間縫ミシンにおいて、前記糸切り装置1による糸切り後の縫い始めに際し、下糸を運ぶ前記複数のルーパ13・13・・・が前記複数の針10・10・・・が形成する上糸ループを前記複数の針10・10・・・全ての1針目からすくうことを確実なものとして、複数列のいずれてにおいても目飛びが発生することを有効に防止できる。したがって、前記糸切り装置1によれば、複数列の全てで1針目から確実に縫目を形成することができる。その結果、生地の縫い終わりの重なり部分を美しく仕上げることができる。
【0066】
また、本実施形態において、前記案内部70は、前記生地送り方向に関し前記複数の針10・10に対して位置調節可能に配設されている。具体的には、
図1、
図4、
図7及び
図13に示すように、前記案内部材27における前記一対の連結部73・74の生地送り方向上流側の端部(基端部)が、それぞれ、生地送り方向に延びる長孔75・76を有している。そして、前記一対の連結部73・74が、それぞれ、前記長孔75・76に挿通されたボルト等の締結部材77・78により前記第2ベース29に生地送り方向に位置調節可能に固定されている。
【0067】
この構成により、前記生地送り方向に関し前記案内部70と前記複数の針10・10・・・との間の距離79(
図4及び
図13参照)を変更して、前記糸切り装置1による糸切り後の前記ルーパ13側の下糸の残糸量を調節することが可能となる。例えば、
図4に示すように前記距離79を長い距離79aにした場合には、下糸の残糸量を小さくすることができ、
図13に示すように、前記距離79を短い距離79bにした場合には下糸の残糸量を大きくすることが可能となる。
【0068】
このように前記案内部70の位置を生地送り方向に関し調節することで、下糸の切断時における残糸量を調節することが可能となる。したがって、下糸の材質又は太さ等に応じて前記ルーパ13側の下糸の残糸量を適宜調節して、下糸の切断後に前記各ルーパ13の下糸支持部71から下糸が外れることをより確実に防止することができる。
【0069】
また、本実施形態においては、
図3及び
図5に示すように、前記案内部材27に関し前記案内部70が前記一対の連結部73・74を介して前記第2ベース29に保持されているので、前記各可動メス23に対する前記案内部70の上下動が許容されるようになっている。そこで、前記糸切り装置1には、前記案内部70と前記各可動メス23との間に所定の上下幅を有する間隙を確保するため、前記各可動メス23の生地送り方向への移動に伴い前記案内部70を押し下げ得る開閉板91・92をさらに備えることも可能である。
【0070】
具体的には、例えば、
図14、
図15及び
図16に示すように、前記開閉板91・92は、生地送り方向を長手方向とする2つの板状体で構成され、生地送り方向に直交する方向に関して前記複数の可動メス23・23を挟むように当該複数の可動メス23・23と並置される。前記開閉板91・92は、それぞれが、生地送り方向上流側の端部(基端部)で前記第1ベース28の中間繋ぎ板部49に固定され、生地送り方向下流側の端部(先端部)を自由端部とされる。
【0071】
前記開閉板91・92の先端部は、それぞれ、前記複数の可動メス23・23の先端部と生地送り方向に関し同じ位置又はこれらよりも生地送り方向下流側に配置される。そして、前記開閉板91・92の先端部側は、その下面が前記複数の可動メス23・23の下面よりも下方に配置されて、前記複数の可動メス23・23の下面が前記案内部70に当接しないように前記案内部70を所定の上下幅だけ下方へ押し得るように構成されている。
【0072】
この構成により、前記複数の可動メス23・23・・・が前記アクチュエータ24・25の作動により前記第1ベース28を介して
図14に示す前記糸引掛作用位置と
図15に示す糸切断作用位置との間で移動する際、前記開閉板91・92が前記複数の可動メス23・23・・・と一体的に移動して、前記開閉板91・92により前記案内部70が前記複数の可動メス23・23・・・の下面に当接しないように押し下げられて、前記複数の可動メス23・23・・・の下面と前記案内部70の上面と間に、所定の上下幅を有する間隔95が形成されることとなる。
【0073】
したがって、前記間隙95の上下幅を変更することで、上糸及び下糸に対する前記複数の可動メス23・23・・・及び前記案内部70の挟持力を調節することが可能となる。よって、特に、下糸の材質又は太さ等に応じて挟持力を適宜調節して、下糸の切断端部が前記各ルーパ13と前記案内部70とに挟まれて保持されることを確実に回避できる。その結果、糸切り後の縫い始めに際し、上糸ループを潰し得るような張力をもった下糸の発生を阻止して、下糸の材質又は太さ等にかかわらず目飛びの発生を確実に防止できる。
【0074】
また、本発明における案内部材は、本実施形態においては生地送り方向に延びる前記一対の連結部73・74を介して前記第2ベース29(前記土台21)に前記案内部70を保持する前記案内部材27としているが、これに限定されるものではなく、例えば、
図17(a)、(b)及び(c)に示すように、上下方向に延びる一対の連結部101・102と案内部103とを有するU字状の丸棒状体からなり、針板105の下面に前記一対の連結部101・102を介して前記案内部103を保持する案内部材100であってもよい。